(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015608
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ガス供給異常判定システム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/00 20060101AFI20220114BHJP
G01F 3/22 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01M3/00 C
G01F3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118552
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 研
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 真純
(72)【発明者】
【氏名】小西 良平
【テーマコード(参考)】
2F030
2G067
【Fターム(参考)】
2F030CB02
2F030CC13
2F030CE02
2F030CE09
2F030CF05
2F030CF11
2G067AA14
2G067BB25
2G067BB37
2G067CC04
2G067DD05
2G067EE10
(57)【要約】
【課題】検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図る。
【解決手段】所定の測定期間毎の測定時点において、超音波流量計50により測定されるガス流量と圧力センサS1により測定されるガス圧力とを判定情報とし、一のガス供給系統に設けられるすべてのガスメータMで測定されるガス流量が零である場合に、判定情報としてのガス圧力のうち少なくとも一のガス圧力が他のガス圧力と異なる値であるときに、一のガス供給系統においてガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第1供給異常判定を実行可能な供給異常判定部CS3を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給箇所へガスを導くガス管でのガス漏洩を含むガス供給異常を判定するガス供給異常判定システムであって、
前記ガス管により構成される一のガス供給系統において所定の前記ガス供給箇所へ供給されるガスの流量を測定する流量測定部を有すると共にガスの圧力を測定する圧力測定部を有するガスメータを複数備え、
所定の測定期間毎の測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報とし、一の前記ガス供給系統に設けられるすべての前記ガスメータで測定される前記ガス流量が零である場合に、前記判定情報としての前記ガス圧力のうち少なくとも一の前記ガス圧力が他の前記ガス圧力と異なる値であるときに、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第1供給異常判定を実行可能な供給異常判定部を備えるガス供給異常判定システム。
【請求項2】
前記供給異常判定部は、前記第1供給異常判定において、一の前記ガス供給系統に設けられるすべての前記ガスメータで測定される前記ガス流量が零である場合において、一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータにて測定される前記ガス圧力のすべてが互いに異なる値であるときに、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する請求項1に記載のガス供給異常判定システム。
【請求項3】
前記測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報として、前記ガス供給系統毎に記憶する第1記憶部を備え、
前記供給異常判定部は、前記測定期間よりも長い判定期間に亘って、前記第1供給異常判定を複数回実行する請求項1又は2に記載のガス供給異常判定システム。
【請求項4】
前記ガスメータの高さ情報を含む3次元的な配設情報に基づいて、前記圧力測定部により測定されるガス圧力を補正するガス圧力補正部を備え、
前記供給異常判定部は、前記ガス圧力補正部にて補正された前記ガス圧力に基づいて、前記第1供給異常判定を実行する請求項1~3の何れか一項に記載のガス供給異常判定システム。
【請求項5】
ガス供給箇所へガスを導くガス管でのガス漏洩を含むガス供給異常を判定するガス供給異常判定システムであって、
前記ガス管により構成される一のガス供給系統において所定の前記ガス供給箇所へ供給されるガスの流量を測定する流量測定部を有すると共にガスの圧力を測定する圧力測定部を有するガスメータを複数備え、
所定の測定期間毎の測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報とし、前記ガス供給系統毎に前記測定時点毎で記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された前記判定情報のうち、一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータに関し、すべての前記ガスメータの夫々で一の前記測定時点における前記ガス流量と他の前記測定時点における前記ガス流量とが同一となっているときで、一の前記測定時点での一の前記ガス供給系統における前記ガスメータの前記判定情報から導出される圧力分布と、他の前記測定時点での一の前記ガス供給系統における前記圧力分布とが異なる場合に、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第2供給異常判定を実行する供給異常判定部とを備えるガス供給異常判定システム。
【請求項6】
一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータの夫々は、前記測定期間よりも長い期間である送信期間毎に、当該送信期間で取得して前記ガスメータの第2記憶部に記憶されている前記判定情報を、ネットワーク回線を介して監視センターの前記第1記憶部へ送信する通信部を備えている請求項3又は5に記載のガス供給異常判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給箇所へガスを導くガス管でのガス漏洩を含むガス供給異常を判定するガス供給異常判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガス事業法に基づき、ガス使用者の敷地内の内管は定期保安巡回にて、敷地外の外管は漏洩検査にて、ガス管の漏洩確認を行っている。当該漏洩確認の方法としては、超音波検査装置によりガス管を検査する方法や、ガス管の遮断弁を閉止状態として遮断弁下流側でのガス未使用状態における圧力降下を確認する方法(特許文献1を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなガスの漏洩確認の方法では、いずれの方法においても、現地にガス事業者の検査員が赴く必要があるため、ガス事業者が多数の人員を投入して漏洩確認作業を行うことになるから、経済性の観点から問題があった。
また、圧力降下によるガス漏洩の確認方法では、遮断弁を閉止状態とする必要があるため、漏洩確認期間は、閉止状態とする遮断弁の下流側でガス使用者がガスを使用することができず、ガス使用者の利便性を損なうという問題もあった。
【0005】
本発明は、検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図り得るガス供給異常判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのガス供給異常判定システムは、
ガス供給箇所へガスを導くガス管でのガス漏洩を含むガス供給異常を判定するガス供給異常判定システムであって、その特徴構成は、
前記ガス管により構成される一のガス供給系統において所定の前記ガス供給箇所へ供給されるガスの流量を測定する流量測定部を有すると共にガスの圧力を測定する圧力測定部を有するガスメータを複数備え、
所定の測定期間毎の測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報とし、一の前記ガス供給系統に設けられるすべての前記ガスメータで測定される前記ガス流量が零である場合に、前記判定情報としての前記ガス圧力のうち少なくとも一の前記ガス圧力が他の前記ガス圧力と異なる値であるときに、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第1供給異常判定を実行可能な供給異常判定部を備える点にある。
【0007】
発明者らは、一のガス供給系統に設けられるすべてのガスメータにて測定されるガス流量が零である場合において、複数のガスメータにて測定されるガス圧力のうち少なくとも一のガス圧力が他のガス圧力と異なる値であるときに、ガス漏洩等のガス供給異常が発生している可能性があることを新たに見出し、上述の発明を完成させた。
上記特徴構成を有するガス供給異常判定システムによれば、検査員が現場に赴くことなく、一定の信頼度のあるガス供給異常に関する判定結果を得ることができるから、緊急保安に関する人員の削減を図ることができ、経済的メリットを享受できる。
更には、ガス供給異常の判定は、遮断弁を閉止状態とすることなく行うことができるから、長期間のガス供給停止が発生することを防止でき、従来の如く遮断弁を閉止状態としてガス漏洩の有無を判定する方法に比べ、ガス使用者の利便性の向上を図ることができる。
以上より、検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図り得る供給異常判定システムを実現できる。
【0008】
尚、当該実施形態において、ガス供給系統とは、当該技術分野において一般的にブロックと呼ばれる系統より小規模のガス供給系統であって、一つ以上のガス本管からガスが供給される供給系統で、その供給系統よりも下流へガスが供給されない供給系統を言うものとする。当該明細書においては、一の住戸区画(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統、マンション等の集合住戸(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統、及びマンション等の集合住戸の同一階の住戸(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統が主に該当する。
また、当該明細書において、ガス供給異常とは、ガス供給系統でのガス漏洩以外に、異物の混入を含むものとする。
【0009】
ガス供給異常判定システムの更なる特徴構成は、
前記供給異常判定部は、前記第1供給異常判定において、一の前記ガス供給系統に設けられるすべての前記ガスメータで測定される前記ガス流量が零である場合において、一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータにて測定される前記ガス圧力のすべてが互いに異なる値であるときに、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、一のガス供給系統に設けられるすべてのガスメータで測定されるガス流量が零である場合において、一のガス供給系統に設けられるガスメータにて測定されるガス圧力のすべてが互いに異なる値であるときに、一のガス供給系統においてガス供給異常が発生している可能性があると判定するから、例えば、一のガスメータの圧力センサが故障により正常な計測値を出力していないような状況であっても、ガス漏洩が発生していることを比較的精度良く判定できる。
【0011】
ガス供給異常判定システムの更なる特徴構成は、
前記測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報として、前記ガス供給系統毎に記憶する第1記憶部を備え、
前記供給異常判定部は、前記測定期間よりも長い判定期間に亘って、前記第1供給異常判定を複数回実行する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、一時点での第1供給異常判定のみでなく、測定期間よりも長い判定期間に亘って実行される複数回の第1供給異常判定の結果に基づいて、ガス供給異常の判定を行うから、例えば、測定期間毎の測定時点において、すべてのガスメータで測定されるガス流量が零にならない場合であっても、測定期間よりも長い判定期間に含まれる複数の測定時点の何れかにおいて、すべてのガスメータで測定されるガス流量が零になれば第1供給異常判定を実行でき、当該第1供給異常判定に基づいてガス供給異常が良好に判定できる。
【0013】
ガス供給異常判定システムの更なる特徴構成は、
前記ガスメータの高さ情報を含む3次元的な配設情報に基づいて、前記圧力測定部により測定されるガス圧力を補正するガス圧力補正部を備え、
前記供給異常判定部は、前記ガス圧力補正部にて補正された前記ガス圧力に基づいて、前記第1供給異常判定を実行する点にある。
【0014】
供給するガスがメタン等を主成分にする場合、空気より比重が小さいため、同じガス供給圧力源であっても、高い場所ほど、圧力が高くなってしまう
上記特徴構成の如く、ガスメータの高さ情報を含む3次元的な配設情報に基づいて、夫々のガス圧力から高低差による変化分を補正して、当該補正後のガス圧力に基づいて第1供給異常判定を実行するから、供給異常の判定をより精度良く行うことができる。
【0015】
上記目的を達成するためのガス供給異常判定システムは、
ガス供給箇所へガスを導くガス管でのガス漏洩を含むガス供給異常を判定するガス供給異常判定システムであって、その特徴構成は、
前記ガス管により構成される一のガス供給系統において所定の前記ガス供給箇所へ供給されるガスの流量を測定する流量測定部を有すると共にガスの圧力を測定する圧力測定部を有するガスメータを複数備え、
所定の測定期間毎の測定時点において、前記流量測定部により測定されるガス流量と前記圧力測定部により測定されるガス圧力とを判定情報とし、前記ガス供給系統毎に前記測定時点毎で記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された前記判定情報のうち、一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータに関し、すべての前記ガスメータの夫々で一の前記測定時点における前記ガス流量と他の前記測定時点における前記ガス流量とが同一となっているときで、一の前記測定時点での一の前記ガス供給系統における前記ガスメータの前記判定情報から導出される圧力分布と、他の前記測定時点での一の前記ガス供給系統における前記圧力分布とが異なる場合に、一の前記ガス供給系統において前記ガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第2供給異常判定を実行する供給異常判定部とを備える点にある。
【0016】
発明者らは、すべてのガスメータの夫々で一の測定時点におけるガス流量と他の測定時点におけるガス流量とが同一となっているときで、一の測定時点での一のガス供給系統におけるガスメータの判定情報から導出される圧力分布と、他の測定時点での一のガス供給系統における圧力分布とが異なる場合に、ガス漏洩等のガス供給異常が発生している可能性があることを新たに見出し、上述の発明を完成させた。
上記特徴構成を有するガス供給異常判定システムによれば、検査員が現場に赴くことなく、一定の信頼度のあるガス供給異常に関する判定結果を得ることができるから、緊急保安に関する人員の削減を図ることができ、経済的メリットを享受できる。
更には、ガス供給異常の判定は、遮断弁を閉止状態とすることなく行うことができるから、長期間のガス供給停止が発生することを防止でき、従来の如く遮断弁を閉止状態としてガス漏洩の有無を判定する方法に比べ、ガス使用者の利便性の向上を図ることができる。
また、各ガス供給箇所のガス使用量に関わらず判定情報を取得し続けて、すべてのガスメータの夫々で一の測定時点におけるガス流量と他の測定時点におけるガス流量とが同一となっている条件に合致する判定情報を用いて第2供給異常判定を実行できるから、すべてのガスメータでのガス流量が零となっている等の条件に比べて緩い条件で、供給異常判定が実行できるから、供給異常判定を実行できる頻度を向上できる。
以上より、検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図り得る供給異常判定システムを実現できる。
【0017】
ガス供給異常判定システムの更なる特徴構成は、
一の前記ガス供給系統に設けられる前記ガスメータの夫々は、前記測定期間よりも長い期間である送信期間毎に、当該送信期間で取得して前記ガスメータの第2記憶部に記憶されている前記判定情報を、ネットワーク回線を介して監視センターの前記第1記憶部へ送信する通信部を備えている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、測定期間毎に取得した判定情報はガスメータの第2記憶部に記憶すると共に、測定期間よりも長い期間である送信期間毎に、当該送信期間で取得した判定情報を監視センターの第1記憶部へ送信するから、ガスメータから監視センターへ測定期間毎に送信する必要がなくなるため、ガスメータでの電力消費を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るガス供給異常判定システムの概略構成図である。
【
図2】ガス供給系統におけるガス管及びガスメータの配設状態と、ガス漏洩発生個所とを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るガス供給異常判定システム100は、検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図り得るものに関する。
以下、
図1、2に基づいて、当該実施形態に係るガス供給異常判定システム100について説明する。
【0021】
〔ガスメータ〕
ガスメータMは、超音波流量計として構成されており、ガス管から住居等のガス供給箇所(図示せず)へ供給されるガスの流量を計測するものである。
当該ガスメータMには、
図1の一部断面図に示すように、一次側のガス配管に連通接続されるガス流入口11と、二次側のガス配管に連通接続されるガス流出口12と、当該ガス流入口11とガス流出口12とを接続するガス流路Lが形成されている。
ガス流路Lには、整流流路を形成する筒状部材20が配設されると共に、当該筒状部材20の内部には、筒軸心に沿って延びる整流板21が複数設けられている。
詳細な図示は省略するが、当該ガスメータMには、筒状部材20の内部に形成される整流流路に超音波を伝播させる一対の送受波器SJ1、SJ2とが備えられている。
より詳細には、ガス流路Lを通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、第1方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に第2方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器SJ1、SJ2を有すると共に、第1方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第1伝搬時間と第2方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、計測された第1伝搬時間及び第2伝搬時間と所定伝搬距離とからガス流路を通流するガスのガス流速を導出し、当該ガス流速とガス流路L(整流流路)の流路断面積とからガス流量を導出する制御装置Cを有する超音波流量計50(流量計測部の一例)を備える。
【0022】
制御装置Cは、ガスメータMの内部の中央に形成される中央空間Kに制御基板として実装されており、ソフトウェア群と演算装置や第2記憶部C3等のハードウェア群とが協働する状態で設けられている。更に、制御装置Cでは、ガスメータMにおいて、ガス流量の演算等を行う制御部C1や、制御部C1からの各種信号をガスメータMの外部の監視センターCSへネットワーク回線N等を介して送信する第2通信部C2(通信部の一例)等の機能部位が備えられる。
また、図示は省略するが、ガスメータMには、制御部C1にて演算されたガス流量を外部から視認可能な状態で表示する表示部(図示せず)が設けられている。
【0023】
筒状部材20にて構成される整流流路の上流側には、ガスメータMの上流側のガス圧が著しく低下したときに安全上の観点からガス流路Lを遮断する遮断弁30が設けられており、当該遮断弁30は、弁体31がガス流路L内に突出形成される弁座部32に着座する形態で、ガス流路Lの開閉部位LKを閉止して、ガス流路Lを閉止する。
【0024】
ガス流路Lとしての整流流路には、その流路軸心に略直交する方向に開口LRが形成されると共に、整流流路の内部と連通する状態で連通空間SKが併設されている。当該連通空間SKは、整流流路の流れが阻害されないように、整流流路から外れた位置で且つガスメータMの内部に形成されている。当該連通空間SKの内部には、圧力測定部としての圧力センサS1が配設されており、当該圧力センサS1は整流流路を通流するガスの圧力を測定し、測定された圧力を、制御部C1が受信する。
【0025】
さて、当該実施形態に係るガス供給異常判定システム100は、一のガス供給系統GK(
図2に図示)でのガス漏洩等のガス供給異常が発生している可能性があるか否かを判定するべく、以下のように構成されている。
まずもって、ガスメータMに設けられる第2記憶部C3は、所定の測定期間毎の測定時点において同一タイミングで、自身に設けられる超音波流量計50により測定されるガス流量と自身に設けられる圧力センサS1により測定されるガス圧力とを判定情報として記憶する。尚、同一タイミングとは、測定期間より短い時間幅を有するタイミングを意味するものとし、ガス流量とガス圧力が計測されるタイミングは、測定期間に対して十分に短い時間幅であれば、多少のずれがあっても構わない。
【0026】
更に、一のガス供給系統に設けられるガスメータMの夫々は、第2通信部C2及びネットワーク回線Nを介して、測定期間よりも長い期間である送信期間毎に、当該送信期間で取得して第2記憶部C3に記憶している判定情報を監視センターCSへ送信し、監視センターCS側では、当該判定情報を第1通信部CS1にて受信して第1記憶部CS2へ記憶する。
これにより、第1記憶部CS2は、所定の測定期間毎の測定時点において同一タイミングで、ガスメータM毎の超音波流量計50により測定されるガス流量と圧力センサS1により測定されるガス圧力とを判定情報として、ガス供給系統GK毎に測定時点毎で記憶することになる。
【0027】
監視センターCSは、第1記憶部CS2に記憶された判定情報のうち、一のガス供給系統GKに設けられるすべてのガスメータM(
図2では、M1~M5)に関し、所定の測定期間毎の測定時点において同一タイミングで、超音波流量計50により測定されるガス流量と圧力センサS1により測定されるガス圧力とを判定情報とし、一のガス供給系統GKに設けられるすべてのガスメータMで測定されるガス流量が零である場合に、判定情報としてのガス圧力のうち少なくとも一のガス圧力が他のガス圧力と異なる値であるときに、一のガス供給系統GKにおいてガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第1供給異常判定を実行可能な供給異常判定部CS3を備える。
【0028】
尚、当該実施形態において、ガス供給系統GKとは、当該技術分野において一般的にブロックと呼ばれる系統より小規模のガス供給系統であって、一つ以上のガス本管からガスが供給される供給系統で、その供給系統よりも下流へガスが供給されない供給系統を言うものとする。当該明細書においては、一の住戸区画(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統、マンション等の集合住戸(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統、及びマンション等の集合住戸の同一階の住戸(2以上の住戸を含む)へガスを供給する供給系統が主に該当する。
また、当該明細書において、ガス供給異常とは、ガス供給系統でのガス漏洩以外に異物の混入を含むものとする。
【0029】
ここで、
図2に示すように、ガス供給本管L2に対し、上流側から順に、ガス供給支管L3aを介して連通接続される第1ガスメータM1、ガス供給支管L3bを介して連通接続される第2ガスメータM2、ガス供給支管L3cを介して連通接続される第3ガスメータM3、ガス供給支管L3dを介して連通接続される第4ガスメータM4、ガス供給支管L3eを介して連通接続される第5ガスメータM5が設けられる構成例において、ガス供給支管L2における第4ガスメータM4と第5ガスメータM5との間で、破損が発生してガス漏洩箇所RHが形成されている場合を考える。
この場合、一のガス供給系統GKに含まれるすべてのガスメータM(
図2では、M1~M5)にて測定されるガス流量が零の場合、ガスメータMにて測定されるガス圧力は、第1ガスメータM1で測定されるガス圧力をP1、第2ガスメータM2で測定されるガス圧力をP2、第3ガスメータM3で測定されるガス圧力をP3、第4ガスメータM4で測定されるガス圧力をP4、第5ガスメータM5で測定されるガス圧力をP5とすると、ガス供給本管L2での圧損も考慮して、以下の〔式1〕に示す関係となる。
【0030】
〔式1〕
P1>P2>P3>P4>P5
【0031】
更に、前提として、一のガス供給系統GKに設けられるガスメータMの判定情報を用いて上述のガス供給異常に関する判定を行う場合、当該ガスメータMの圧力センサS1が故障等により正確な圧力を示していないことも考えられる。
【0032】
そこで、供給異常判定部CS3は、第1供給異常判定において、一のガス供給系統GKに含まれるすべてのガスメータMで測定されるガス流量が零である場合において、一のガス供給系統GKに含まれるガスメータMにて測定されるガス圧力のすべてが互いに異なる値であるときに、一のガス供給系統GKにおいてガス供給異常が発生している可能性があると判定する。これにより、ガス供給異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0033】
尚、これまで説明してきた第1供給異常判定では、一のガス供給系統GKに含まれるガスメータMにて測定されるガス流量のすべてが零である条件が満たされる必要があり、時間帯によっては、測定時点において当該条件が満たされない場合もある。
そこで、例えば、供給異常判定部CS3は、測定期間よりも長い判定期間に亘って、第1供給異常判定を複数回に亘って実行して、それらの複数回の判定結果に基づいて、ガス供給異常の判定を行っても構わない。
【0034】
また、監視センターCSでは、ガスメータMの高さ情報を含む3次元的な配設情報を第1記憶部CS2に記憶し、当該ガスメータMの3次元的な配置情報に基づいて、圧力センサS1により測定されるガス圧力を補正するガス圧力補正部CS4を備えると共に、供給異常判定部CS3は、当該ガス圧力補正部CS4にて補正されたガス圧力に基づいて、第1供給異常判定を実行するよう構成されている。
より詳細には、ガス圧力補正部CS4は、ガスメータMが高い位置に配設されているほど、当該ガスメータMの圧力センサS1にて測定される圧力を高い側へ補正する。
これにより、第1供給異常判定の判定精度を向上できる。
【0035】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ガスメータMが流量測定部として超音波流量計50を有する構成例を示したが、例えば、流量測定部として膜式メータを備える構成を採用しても構わない。即ち、ガス流量(m3/h)は、一定時間毎のガス通過量(m3)を計測し、当該計測したガス通過量及びガスの通過に要した時間に基づいて、ガス流量(m3/h)に換算することも可能である。
【0036】
(2)上記実施形態では、監視センターGKでは、測定時点毎の判定情報を第1記憶部CS2に記憶する構成例を示したが、当該第1記憶部CS2に記憶することなく、測定時点毎に判定を行う構成を採用しても構わない。
この場合、上記実施形態にて規定した測定期間と送信期間は同一となる。
【0037】
(3)上記実施形態では、監視センターCSには、ガス圧力補正部CS4が設けられる構成例を示したが、当該ガス圧力補正部CS4を設けない構成を採用しても構わない。
【0038】
(4)供給異常判定部CS3は、第1記憶部CS2に記憶される判定情報としての測定時点、ガス流量、ガス圧力が、経時的に蓄積されれば、一のガス供給系統GKに含まれるガスメータMで計測されるガス流量が零でない場合でも、供給異常判定を実行することできる。
説明を追加すると、供給異常判定部CS3は、例えば、第1記憶部CS2に記憶された判定情報のうち、一のガス供給系統GKに設けられるガスメータMに関し、すべてのガスメータMの夫々で一の測定時点におけるガス流量と他の測定時点におけるガス流量とが同一となっているときで、一の測定時点での一のガス供給系統GKにおけるガスメータMの判定情報から導出される圧力分布と、他の測定時点での一のガス供給系統GKにおける圧力分布とが異なる場合に、一のガス供給系統GKにおいてガス供給異常が発生している可能性があると判定する供給異常判定としての第2供給異常判定を実行するよう構成できる。
この場合、すべてのガスメータMにて計測されるガス流量が零でない場合であっても、供給異常判定を実行できる。
また、供給異常判定部CS3は、一のガス供給系統GKの圧力分布をみることで、圧力が低い箇所(ガスメータMの設置箇所)の近傍にてガス漏洩が発生している虞が高いと判定することができる。
尚、当該別実施形態にあっては、ガス供給系統GKは、マンション等の集合住戸の異なる階層の住戸へガスを供給する供給系統も含むものとする。
【0039】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のガス供給異常判定システムは、ガス供給異常に対する対応を早期に行うことができながらも、検査員が現地に赴くことなくガス供給異常を検知できると共に、従来に比べガス使用者の利便性の向上を図り得るガス供給異常判定システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
50 :超音波流量計
100 :ガス供給異常判定システム
C1 :制御部
C2 :第2通信部
C3 :第2記憶部
CS :監視センター
CS1 :第1通信部
CS2 :第1記憶部
CS3 :供給異常判定部
CS4 :ガス圧力補正部
GK :ガス供給系統
L2 :ガス供給本管
L3a :ガス供給支管
M :ガスメータ
N :ネットワーク回線
S1 :圧力センサ