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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156094
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20221006BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20221006BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/14 D
H01L21/203 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059617
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 昌平
【テーマコード(参考)】
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
4K029BA02
4K029CA05
4K029DA04
4K029DA10
4K029DB03
4K029DC16
4K029DC34
4K029FA06
4K029FA09
4K029GA02
4K029JA02
4K029JA06
4K029KA09
5F103AA08
5F103BB34
5F103BB38
5F103DD28
5F103KK10
5F103PP01
5F103RR10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置の複雑化を招くことなく、チャンバ内の水分除去を促進できる成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】実施形態の成膜装置1の制御部80は、ワークWを保持し、円周軌跡LでワークWを循環搬送させる回転テーブル30を、ワークWが保持されていない状態で回転させる。また、制御部80は、ワークWを保持せずに回転テーブル30が回転している状態で、成膜処理部40のイットリウムを成膜材料として含むターゲット412に電圧を印加させる。これにより、ワークWが保持されていない回転テーブル30に向けてイットリウム粒子が叩き出され、回転テーブル30又は回転テーブル30に設置されるトレイ60等の構造物にイットリウム膜が成膜され、チャンバ10内を循環搬送されるゲッター材となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、ワークを保持し、円周の軌跡で前記ワークを循環搬送させる回転テーブルと、
イットリウムを含む成膜材料により成るターゲットと、前記ターゲットに電圧を印加し、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されるスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記回転テーブルに向けて前記ターゲットからイットリウム粒子を叩き出し、前記回転テーブルに保持された前記ワークにイットリウム膜を成膜する成膜処理部と、
酸素ガスを導入する酸素ガス導入部と、酸素ガスをプラズマ化するプラズマ発生器を有し、前記ワークに成膜されたイットリウム膜を酸化させる膜処理部と、
前記回転テーブル、前記成膜処理部及び前記膜処理部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ワークが保持されていない状態で前記回転テーブルを回転させ、前記ターゲットに電圧を印加させ、前記ワークが保持されていない前記回転テーブルに向けてイットリウム粒子を叩き出させること、
を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ワークが保持されている状態で前記成膜処理部及び前記膜処理部の動作を制御する本稼働モードと、前記ワークが保持されていない状態で前記成膜処理部及び前記膜処理部の動作を制御するゲッター材作製モードとを有すること、
を特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記回転テーブル上に載置され、前記ワークを保持するトレイを備え、
前記制御部は、前記ワークを保持していない状態の前記トレイが載置された前記回転テーブルを回転させ、前記ターゲットに電圧を印加させ、前記トレイにイットリウム膜を成膜させること、
を特徴とする請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記トレイは、前記ワークが嵌め込まれる凹部を有し、
前記制御部は、前記トレイにイットリウム膜を成膜させる際、前記ワークの代わりに平板が前記凹部に嵌め込まれた前記トレイが載置された前記回転テーブルを回転させること、
を特徴とする請求項3記載の成膜装置。
【請求項5】
表面にイットリウム膜が成膜され、且つ前記ワークを保持した状態の前記トレイを前記回転テーブルに載せ、前記成膜処理部で前記ワークにイットリウム膜を成膜し、前記膜処理部で前記ワークに成膜されたイットリウム膜を酸化させること、
を特徴とする請求項3又は4記載の成膜装置。
【請求項6】
内部を真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、ワークを保持し、円周の軌跡で前記ワークを循環搬送させる回転テーブルと、
イットリウムを含む成膜材料により成るターゲットと、前記ターゲットに電圧を印加し、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されるスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記回転テーブルにより循環搬送される前記ワークに向けて前記ターゲットからイットリウム粒子を叩き出し、前記ワークにイットリウム膜を成膜する成膜処理部と、
酸素ガスを導入する酸素ガス導入部と、酸素ガスをプラズマ化するプラズマ発生器を有し、成膜されたイットリウム膜を酸化させる膜処理部と、
を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記ワークが保持されていない状態で前記回転テーブルを回転させ、前記ターゲットに電圧を印加させ、前記ワークが保持されていない前記回転テーブルに向けてイットリウム粒子を叩き出させること、
を特徴とする成膜方法。
【請求項7】
表面にイットリウム膜が成膜され、且つ前記ワークを保持した状態の前記トレイを前記回転テーブルに載せ、前記成膜処理部で前記ワークにイットリウム膜を成膜し、前記膜処理部で前記ワークに成膜されたイットリウム膜を酸化させること、
を特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスが半導体装置、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、光ディスクなど各種の製品の製造工程において、例えばウエーハやガラス基板等のワーク上に光学膜等の薄膜を作成することがある。薄膜は、ワークに対して金属等の膜を形成する成膜処理や、形成した膜に対してエッチング、酸化又は窒化等の膜処理等を行うことによって作成することができる。
【0003】
成膜処理あるいは膜処理は様々な方法で行うことができるが、その一つとして、所定の真空度まで減圧したチャンバでプラズマを発生させ、そのプラズマを用いて処理を行う方法がある。成膜処理では、成膜材料から構成されたターゲットを配置したチャンバに不活性ガスを導入し、ターゲットに直流電圧を印加する。プラズマ化した不活性ガスのイオンをターゲットに衝突させ、ターゲットから叩き出された成膜材料をワークに堆積させて成膜を行う。このような成膜処理は、スパッタリングと呼ばれる。膜処理では、電極を配置した真空チャンバにプロセスガスを導入し、電極に高周波電圧を印加する。プラズマ化したプロセスガスのイオン、ラジカル等の活性種をワーク上の膜に衝突させる。
【0004】
このような成膜と膜処理を連続して行えるように、一つのチャンバの内部に回転体である回転テーブルを取り付け、回転テーブル上方の周方向に、成膜処理部と膜処理部を複数配置した成膜装置がある。成膜処理部と膜処理部は、それぞれチャンバ内の区画に分かれて配置され、回転テーブルに保持されたワークが成膜処理部と膜処理部の直下を通過することで、ワークに光学膜等の薄膜が形成される。
【0005】
上記のような成膜装置のチャンバ内の種々の箇所には、成膜処理を継続して行うに従って、成膜用のユニットから飛散した成膜材料が堆積していく。このように堆積した成膜材料が剥離すると、成膜対象となるワークが汚染されることになる。しかし、チャンバの内壁や回転テーブルに直接膜が付着した場合には、これを除去することは非常に困難である。このため、チャンバの内壁、回転テーブルの表面等を覆うように、防着板が着脱可能に設けられている。防着板は、成膜処理時に飛散する成膜材料が付着することにより、チャンバの内壁や回転テーブルの表面に成膜材料が付着することを防止する。
【0006】
このような防着板は、継続して成膜処理を行った後に、付着した膜が剥離してワークを汚染することを防止するため、取り外して洗浄を行う(メンテナンスを行う)必要がある。例えば、チャンバを大気開放して、チャンバから防着板を取り外した後、表面に堆積した膜をサンドブラストによって除去し、さらに純水で洗浄する。洗浄後、乾燥させた後、真空パックした状態で成膜装置まで搬送し、開封して再び成膜装置に取り付けて、成膜を行う。洗浄、乾燥後の防着板を取り付けた時点では、防着板の内部には水分が残留しており、チャンバ内が減圧されるに従って、防着板から大量の水分が発生し続けることによる。
【0007】
これに限らず、チャンバ内には様々な要因で水分が浸入する。例えば、メンテナンス等でチャンバ内を大気開放すると、大気中に含まれる水分がチャンバ内の壁や各種の部材に吸着する。ワークや当該ワークを保持するトレイ等のような、チャンバ内に搬入された搬入物に水分が付着している場合もある。
【0008】
水分はチャンバ内を減圧することで徐々に蒸発し、排気されるため、このような状態は成膜を継続して行うに従って、改善されて行く。しかし、チャンバ内に装着される防着板を含めて、水分を含む部材の数量や面積は非常に大きいため、発生する水分量も多くなる。このため、短時間で完全に水分を除去して、処理に必要な真空度を得ることは困難である。例えば、成膜にとって好ましい状態になるまでには、数日から数週間かかることになる。すると、チャンバ内を大気開放してメンテナンスをした後や、防着板を交換した後は、成膜ができない期間が長期間続くことになり、生産性が低下する。
【0009】
これに対処するため、チャンバ内に赤外線ランプ等の加熱装置を設ける方法(特許文献1)や、加熱したガスを導入してチャンバ内の部材を加熱して、水分の蒸発を促進させる方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-352018号公報
【特許文献2】特開2010-225847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電子デバイスの製造工程には、ドライエッチングのような、プラズマや腐食性の高いフッ素系ガスを用いたプラズマ処理装置を使用する工程が含まれる。電子デバイスを製造するチャンバ内をプラズマによるダメージやフッ素系ガスによる腐食から保護するために、プラズマ処理装置の部材、例えばチャンバ内壁や電極等の部材にイットリアとも呼ばれる酸化イットリウム(Y)を成膜する方法が用いられる。
【0012】
イットリア膜でプラズマ処理装置の部材をコーティングするために、イットリウムを含むターゲットが配置された成膜装置を用いることが検討されている。即ち、スパッタリングによりプラズマ処理装置の部材にイットリウム膜を成膜し、部材上のイットリウム膜に酸素原子を衝突させて酸化させることで、部材表面にイットリア膜を形成することが検討されている。
【0013】
ここで、スパッタリングによる成膜を行う際は、成膜装置のチャンバ内の雰囲気を高真空域に減圧する。これにより、チャンバ内に存在する不純物を減少させ、かつ平均自由行程が大きくなるように気体分子を減少させることができる。その結果、ターゲットから叩き出された成膜材料がワークに届き、安定して緻密な膜質となる。しかしながら、成膜装置のチャンバ内に水分が残った状態だと、チャンバ内の真空度が上がらない状態となり、緻密な膜質が得られなくなる虞がある。これにより、プラズマ処理装置の部材のコーティング膜として必要な耐腐食性が悪化する虞がある。
【0014】
特許文献1の加熱装置を設ける方法や、特許文献2の加熱したガスを導入する方法では、成膜装置が備える複数の処理室ごとに加熱装置を設けたり、加熱した不活性ガスを導入したりする必要があり、装置構成の複雑化を招き、コストがかかるため、現実的ではない。
【0015】
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、装置の複雑化を招くことなく、チャンバ内の水分除去を促進できる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本実施形態の成膜装置は、内部を真空とすることが可能なチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、ワークを保持し、円周の軌跡で前記ワークを循環搬送させる回転テーブルと、イットリウムを含む成膜材料により成るターゲットと、前記ターゲットに電圧を印加し、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されるスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記回転テーブルに向けて前記ターゲットからイットリウム粒子を叩き出し、前記回転テーブルに保持された前記ワークにイットリウム膜を成膜する成膜処理部と、酸素ガスを導入する酸素ガス導入部と、酸素ガスをプラズマ化するプラズマ発生器を有し、前記ワークに成膜されたイットリウム膜を酸化させる膜処理部と、前記回転テーブル、前記成膜処理部及び前記膜処理部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ワークが保持されていない状態で前記回転テーブルを回転させ、前記ターゲットに電圧を印加させ、前記ワークが保持されていない前記回転テーブルに向けてイットリウム粒子を叩き出させること、を特徴とする。
【0017】
また、本発明の成膜方法は、内部を真空とすることが可能なチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、ワークを保持し、円周の軌跡で前記ワークを循環搬送させる回転テーブルと、イットリウムを含む成膜材料により成るターゲットと、前記ターゲットに電圧を印加し、前記ターゲットと前記回転テーブルとの間に導入されるスパッタガスをプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、前記回転テーブルにより循環搬送される前記ワークに向けて前記ターゲットからイットリウム粒子を叩き出し、前記ワークにイットリウム膜を成膜する成膜処理部と、酸素ガスを導入する酸素ガス導入部と、酸素ガスをプラズマ化するプラズマ発生器を有し、成膜されたイットリウム膜を酸化させる膜処理部と、を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、前記ワークが保持されていない状態で前記回転テーブルを回転させ、前記ターゲットに電圧を印加させ、前記ワークが保持されていない前記回転テーブルに向けてイットリウム粒子を叩き出させること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置の複雑化を招くことなく、チャンバ内の水分除去を促進できる成膜装置及び成膜方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す透視平面図である。
図2図1中のA-A断面図であり、図1の実施形態の成膜装置の側面から見た内部構成の詳細図である。
図3】ゲッター材作製時のトレイを示す平面図である。
図4】ゲッター材作製のための成膜動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る成膜装置及び成膜方法の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面においては、理解を容易にするため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0021】
(構成)
図1の成膜装置1の透視平面図及び図2の断面図に示すように、成膜装置1は、スパッタリングによりワークW上にイットリア膜を成膜する装置である。ワークWは、プラズマやフッ素系ガス等の腐食性ガスに晒されるために、表面をイットリア膜で保護する被処理物を指し、例えば電子デバイスに対するドライエッチングが実行されるチャンバの内壁等が挙げられる。但し、イットリア膜の成膜対象となるものであれば、形状や材質を問わず、ワークWとすることができる。
【0022】
この成膜装置1は、チャンバ10、回転テーブル30、成膜処理部40、膜処理部50、移送チャンバ70及び制御部80を有する。また、チャンバ10には排気部20が接続され、また、回転テーブル30にはトレイ60が着脱自在に設置され、移送チャンバ70にはロードロック部71が接続されている。
【0023】
チャンバ10は、内部を真空とすることが可能な円柱形状の容器であり、円盤状の天井10a、円盤状の内底面10b、及び環状の内周面10cにより形成されている。チャンバ10には排気部20が接続されている。排気部20は配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。排気部20による排気により、チャンバ10内は減圧されて真空になる。
【0024】
回転テーブル30は、ワークWをその上面に載せて、円周軌跡Lに沿って巡回搬送する搬送手段であり、チャンバ10の内底面10bに確保された円柱状の空間に配置されている。回転テーブル30は、チャンバ10と同心円状に拡がる円盤形状を有し、内周面10cと接触しない程度に、チャンバ10内に大きく拡がっている。この回転テーブル30はモータ31に軸支され、回転テーブル30の円中心を回転軸として、所定の回転速度で連続的に回転する。
【0025】
回転テーブル30は、金属製であり、例えばステンレス鋼の板状部材の表面に酸化アルミニウムを溶射したものとすることができる。回転テーブル30の上面には、円周等配位置で複数の保持部32が配設されている。保持部32は、溝、穴、突起、治具、ホルダ等であり、ワークWを載せたトレイ60をメカチャック、粘着チャック等によって保持する。例えば、トレイ60は、回転テーブル30上に60°間隔で6つ配設される。但し、同時に搬送されるワークW、トレイ60の数は、これには限定されない。ワークWが載置されたトレイ60は、移送チャンバ70から搬入されて、この回転テーブル30に設置される。
【0026】
移送チャンバ70は、ワークWを保持したトレイ60がチャンバ10に搬入される前に収容される通路である。移送チャンバ70は、ゲートバルブGV1を介してチャンバ10に接続されている。移送チャンバ70の内部空間には、図示はしないが、ワークWをチャンバ10との間で搬入、搬出するための搬送手段が設けられている。移送チャンバ70は、図示しない真空ポンプの排気によって減圧されており、搬送手段によってチャンバ10の真空を維持した状態で、未処理のワークWを搭載したトレイ60を、チャンバ10内に搬入し、処理済みのワークWを搭載したトレイ60をチャンバ10から搬出する。
【0027】
移送チャンバ70には、ゲートバルブGV2を介して、ロードロック部71が接続されている。ロードロック部71は、移送チャンバ70の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、外部から未処理のワークWを搭載したトレイ60を、移送チャンバ70内に搬入し、処理済みのワークWを搭載したトレイ60を移送チャンバ70から搬出する装置である。なお、ロードロック部71は、図示しない真空ポンプの排気によって減圧される。移送チャンバ70から回転テーブル30上に載せられたワークWは、回転テーブル30の回転に伴って円周軌跡Lに沿って、成膜処理部40と膜処理部50を通過する。
【0028】
成膜処理部40は、円周軌跡Lに沿って三箇所に配置されている。各成膜処理部40は、プラズマを生成し、ターゲット412を該プラズマに曝す。これにより、成膜処理部40は、プラズマに含まれるイオンをターゲット412に衝突させて、ターゲット412から叩き出された粒子をワークW上に堆積させる成膜を行う。この成膜処理部40は、ターゲット412、バッキングプレート413及び電極414で構成されるスパッタ源と、電源部416とスパッタガス導入部419で構成されるプラズマ発生器を備える。
【0029】
ターゲット412は、イットリウムを含む成膜材料で構成された板状部材である。ターゲット412は、ワークWが搬送される円周軌跡Lに、離隔して設けられている。ターゲット412の表面は、回転テーブル30に載置されたワークWに対向するように、チャンバ10の天井10aに保持されている。ターゲット412は、平面視で三角形の頂点上に並ぶ位置に3つ設けられている。
【0030】
バッキングプレート413はターゲット412を保持する支持部材である。このバッキングプレート413は各ターゲット412を個別に保持する。電極414は、チャンバ10の外部から各ターゲット412に個別に電力を印加するための導電性の部材であり、ターゲット412と電気的に接続されている。各ターゲット412に印加する電力は、個別に変えることができる。その他、スパッタ源には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
【0031】
電源部416は、例えば、高電圧を印加するDC電源であり、電極414と電気的に接続されている。電源部416は、電極414を通じてターゲット412に電圧を印加する。回転テーブル30は、接地されたチャンバ10と同電位であり、ターゲット412側に高電圧を印加することにより、電位差が発生する。なお、電源部416は、高周波スパッタを行うためにRF電源とすることもできる。
【0032】
スパッタガス導入部419は、チャンバ10にスパッタガスG1を導入する。スパッタガス導入部419は、図示しないボンベ等のスパッタガスG1の供給源と、配管418と、ガス導入口417を有する。配管418は、スパッタガスG1の供給源に接続されてチャンバ10を気密に貫通し、チャンバ10の内部に延び、その端部がガス導入口417として開口している。ガス導入口417は、回転テーブル30とターゲット412との間に開口し、回転テーブル30とターゲット412との間に形成された処理空間41に成膜用のスパッタガスG1を導入する。スパッタガスG1としては希ガスが採用でき、アルゴン(Ar)ガス等が好適である。
【0033】
このような成膜処理部40では、スパッタガス導入部419からスパッタガスG1を導入し、電源部416が電極414を通じてターゲット412に高電圧を印加する。すると、処理空間41に導入されたスパッタガスG1がプラズマ化し、イオン等の活性種が発生する。プラズマ中のイオンは、ターゲット412と衝突して成膜材料のイットリウム粒子を叩き出す。ターゲット412から叩き出されたイットリウム粒子は、ワークWが回転テーブル30の回転に伴って成膜処理部40の真下を通過するときにワークW上に堆積していく。これにより、イットリウム粒子による膜がワークW上に形成される。ワークWは、回転テーブル30によって循環搬送され、成膜処理部40を繰り返し通過することで成膜処理が行われていく。
【0034】
尚、各成膜処理部40の処理空間41は、ターゲット412の孔が開けられたボックス型シールド部材11によって囲まれており、ボックス型シールド部材11は、成膜材料及びスパッタガスG1がチャンバ10内に拡散することを抑制している。ボックス型シールド部材11は、回転テーブル30の平面と平行に配置された環状扇形(annular sector)の板状体を天井とした環状扇型の箱であり、回転テーブル30に向けて、環状扇形の天井の外周孤から延びる外周壁と、環状扇形の天井の内周孤から延びる内周壁と、環状扇形の天井の半径に沿った辺から延びる側面壁とによって画成され、天井とは反対の回転テーブル30に向く面が開口している。ボックス型シールド部材11の下端と回転テーブル30との間には、回転テーブル30上に載せたワークWが通過可能な間隔が形成されている。
【0035】
膜処理部50は、円周軌跡L上の一箇所に割り当てられている。この膜処理部50は、筒状体51、窓部材52、アンテナ53、RF電源54、マッチングボックス55及び酸素ガス導入部56により構成されるプラズマ発生器を有する。
【0036】
筒状体51は、膜処理が行われる空間である処理空間59の周囲を覆う部材である。筒状体51は、図1及び図2に示すように水平断面が角丸長方形状の筒であり、開口を有する。筒状体51は、その開口が回転テーブル30側に離隔して向かうように、チャンバ10の天井10aに嵌め込まれ、チャンバ10の内部空間に突出している。筒状体51は、回転テーブル30と同様の金属製である。処理空間59は、回転テーブル30と筒状体51の内部との間に形成される。処理空間59を、回転テーブル30によって循環搬送されるワークWが繰り返し通過することで、膜処理が行われる。
【0037】
窓部材52は、筒状体51の水平断面と略相似形の石英等の誘電体の平板である。この窓部材52は、筒状体51の開口を塞ぐように設けられ、チャンバ10内のプロセスガスG2が導入される処理空間59と筒状体51の内部とを仕切る。なお、窓部材52は、アルミナ等の誘電体であってもよいし、シリコン等の半導体であってもよい。
【0038】
アンテナ53は、コイル状に巻回された導電体であり、窓部材52によってチャンバ10内の処理空間59とは隔離された筒状体51の内部空間に配置され、交流電流が流されることで電界を発生させる。アンテナ53から発生させた電界が窓部材52を介して処理空間59に効率的に導入されるように、アンテナ53は窓部材52の近傍に配置されることが望ましい。アンテナ53には、高周波電圧を印加するRF電源54が接続されている。RF電源54の出力側には整合回路であるマッチングボックス55が接続されている。マッチングボックス55は、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。
【0039】
酸素ガス導入部56は、処理空間59にプロセスガスG2を導入する。酸素ガス導入部56は、図示しないボンベ等のプロセスガスG2の供給源と、配管57とを有する。配管57は、プロセスガスG2の供給源に接続されて、チャンバ10を気密に封止しつつ貫通してチャンバ10の内部に延び、その端部がガス導入口58として開口している。ガス導入口58は、窓部材52と回転テーブル30との間の処理空間59に開口し、プロセスガスG2を導入する。プロセスガスG2は、酸素(O)ガスとアルゴンガス等の希ガスを含む混合ガスである。
【0040】
このような膜処理部50では、RF電源54からアンテナ53に高周波電圧が印加される。これにより、アンテナ53に高周波電流が流れ、電磁誘導による電界が発生する。電界は、窓部材52を介して処理空間59に発生し、プロセスガスG2をプラズマ化し、誘導結合プラズマを発生させる。このプラズマによって、酸素イオンを含む酸素の化学種が発生し、ワークW上のイットリウム膜に衝突することにより、イットリウム原子と結合する。その結果、ワークW上のイットリウム膜は酸化されてイットリア(酸化イットリウム)膜となる。ワークWは、回転テーブル30によって循環搬送されてチャンバ10内を何度も周回することで、成膜処理部40と膜処理部50を交互に巡回して通過することになり、ワークW上で成膜と膜処理が交互に繰り返されて所望の厚みの膜が成長していく。
【0041】
このような成膜装置1では、チャンバ10内に防着板12が着脱可能に設けられている。防着板12は、成膜処理部40から飛散する成膜材料のチャンバ10内への付着を防止している。防着板12は、例えば、金属製の板である。防着板12の表面には、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金のプラズマ溶射膜が形成され、表面がサンドブラスト等により粗面化されている。これにより、付着して堆積した膜との密着性を高めて、膜材料の剥離を抑制している。
【0042】
防着板12は、複数を組み合わせることによって、例えば、チャンバ10の内周面10cを覆うように配置されている。また、図示はしないが、回転テーブル30上にも、トレイ60以外の箇所に、防着板12が配置されている。ボックス型シールド部材11の周面にも防着板12が配置されている。更に、成膜処理部40の処理空間41のターゲット412の周辺にも、防着板12が設けられている。このように、防着板12は、成膜材料が付着する可能性のある場所に適宜配置されている。
【0043】
この防着板12は、チャンバ10を開放することで取り外され、メンテナンスされる。チャンバ10の天井10aは、側壁10cに着脱可能に設けられている。天井10aは、図示しないOリング等の封止部材を介して装着されることにより、チャンバ10内が密閉される。天井10aを取り外すことにより、チャンバ10の内部の清掃等を含むメンテナンスが可能となる。即ち、この防着板12を取り外し、表面に堆積した膜をサンドブラストによって除去し、さらに純水で洗浄する。洗浄後、乾燥させた後、防着板12は真空パックされた状態で成膜装置1まで搬送され、開封されて再び成膜装置1に取り付けられる。
【0044】
このような成膜装置1の各種要素は、制御部80によって制御される。この制御部80は、PLC(Programmable Logic Controller)や、CPU(Central Processing Unit)を含む処理装置であり、制御内容を記述したプログラム、設定値、しきい値等が記憶されている。
【0045】
制御部80の制御態様としては、少なくとも本稼働モード及びゲッター材作製モードがあり、制御部80はモードに応じて、排気部20、スパッタガス導入部419、酸素ガス導入部428、電源部416、RF電源424、回転テーブル30、移送チャンバ70など、成膜装置1を構成する各種要素を制御する。本稼働モードとゲッター材作製モード以外の動作モードがあってもよい。
【0046】
本稼働モードは、ワークWに対してイットリア膜を成膜する。ゲッター材作製モードは、ワークWがチャンバ10内に未搬入の状態で実行され、チャンバ10内にゲッター材を作製する。ゲッター材は、水分を吸着するゲッター効果が生じる部材であり、成膜装置1が制御部80の制御下で回転テーブル30上に作製する。このゲッター材は、例えば、ワークWにイットリア膜を成膜する際に回転テーブル30に設置されるトレイ60である。ワークWを未保持のトレイ60に対して、ワークWに対する成膜材料と同じイットリウム膜を成膜することにより、トレイ60はゲッター材となる。
【0047】
但し、トレイ60の模式的な斜視図である図3に示すように、トレイ60の表面にはワークWの形状に合致した凹部61が形成されている。ワークWは、この凹部61に嵌め込まれることで、トレイ60に保持される。トレイ60に対してイットリウム膜を成膜する際には、トレイ60の凹部61に平板62が嵌め込まれる。平板62は凹部61と同形同大であり、凹部61との間にイットリウム粒子が入り込む余地を与えない。この平板62が凹部61に嵌め込まれることにより、ワークWと接触する凹部61にはイットリウム膜が成膜されない。そのため、イットリウム膜が成膜されたトレイ60の凹部61にワークWを嵌め込んだときに、イットリア膜を成膜することを目的とするワークWがイットリウムで金属汚染されずに済む。
【0048】
図4は、ゲッター材作製モードで各種要素を制御する制御部80の制御を含む成膜動作を示すフローチャートである。まず、ゲッター材作製モードに移る前に、チャンバ10内のメンテナンスが実行される(ステップS01)。メンテナンスでは、チャンバ10が大気開放され、チャンバ10から防着板12が取り外され、チャンバ10内に新たな防着板12又は洗浄後の防着板12が設置される。
【0049】
次に、平板62を凹部61に嵌め込む(ステップS02)。そして、ワークWを設置せずに平板62を嵌め込んだトレイ60を、移送チャンバ70を介してチャンバ10内に搬入する(ステップS03)。そして、これらトレイ60を回転テーブル30上に円周等配位置で並べていく(ステップS04)。即ち、回転テーブル30は、空の保持部32を、順次、移送チャンバ70からの搬入箇所に移動させる。保持部32は、搬送手段により搬入されたトレイ60を、それぞれ個別に保持する。このようにして、ワークWの代わりに平板62が嵌め込まれたトレイ60が、回転テーブル30上に全て載置される。
【0050】
ここから制御部80のゲッター材作製モードに移り、制御部80は、排気部20を稼働させてチャンバ10を所定の圧力まで減圧させる(ステップS05)。そして、制御部80は、回転テーブル30を制御し、トレイ60を載せた回転テーブル30を所定の回転速度で回転させる(ステップS06)。
【0051】
回転テーブル30の回転が所定の回転速度に達すると、制御部80は、成膜処理部40のスパッタガス導入部419を制御し、成膜処理部40の処理空間41が所定の処理圧力に到達するまで、ガス導入口417を通じてアルゴンガス等のスパッタガスG1を、ターゲット412と回転テーブル30の間に供給させる(ステップS07)。
【0052】
成膜処理部40の処理空間41内がスパッタガスG1によって所定の処理圧力に達すると、制御部80は、電源部416を制御し、電極414を通じて、イットリウムを成膜材料として含むターゲット412に電圧を印加する(ステップS08)。これにより、スパッタガスG1をプラズマ化させる。プラズマにより発生したイオンは、ターゲット412に衝突してイットリウム粒子を叩き出す。成膜処理部40を通過するトレイ60の表面には、その通過毎にイットリウム粒子が堆積して、イットリウム膜が成膜される。尚、このゲッター材作製モードにおいては、膜処理部50は稼働させない。すなわち、トレイ60は、膜処理部50によって膜処理されることなく、膜処理部50が配置された区画を通過する。
【0053】
制御部80は、トレイ60に成膜されるイットリウム膜が所定の膜厚に到達したか判断する(ステップS09)。所定の膜厚は、これに限られないが200nm以上300nm未満が好ましい。
【0054】
所定の膜厚について、トレイ60上に成膜したイットリウム膜の膜厚と、チャンバ10内の真空度との関係は、下表1の通りである。表1中、チャンバ10内の各真空度は、メンテナンス後再度真空引きし、0nm~300nmの各膜厚のイットリウム膜が成膜された各トレイ60をチャンバ10内に放置し、放置開始から12時間程度経過したタイミングで測定された。表1中、0nmとは、イットリウム膜が未成膜のトレイ60をチャンバ10内に放置したことを示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、200nm以上の膜厚の方が、200nm未満の膜厚よりもチャンバ10内の圧力が下がった、換言すると真空度が高くなった。即ち、チャンバ10内の水分分圧が下がった。また、300nm以上の膜厚でイットリウム膜が成膜されたトレイ60をチャンバ10内に配置しても、これ以上真空度は高くならなかった。したがって、イットリウム膜の膜厚は、200nm以上が好ましく、ターゲット412の消耗を防ぐために300nm未満が好ましい。
【0057】
イットリウム膜の膜厚は、例えば、目標膜厚に到達するまでの成膜時間を予めシミュレーション、演算又は段差計による実測等により求めておいて、成膜累積時間に基づいて推定してもよい。
【0058】
トレイ60に成膜されるイットリウム膜が所定の膜厚に到達すると(ステップS09,Yes)、制御部80は、電源部416を制御し、電極414を通じたターゲット412への電圧印加を停止させる(ステップS10)。そして、成膜処理部40のスパッタガス導入部419を制御し、ガス導入口417を通じたスパッタガスG1の供給を停止させる(ステップS11)。更に、制御部80は、回転テーブル30を制御し、トレイ60を載せた回転テーブル30の回転を停止させる(ステップS12)。尚、トレイ60に成膜されるイットリウム膜が所定の膜厚に満たない間は(ステップS09,No)、ターゲット414への電圧印加の停止、スパッタガスG1の供給の停止及び回転テーブル30の回転停止の制御は行わない。即ち、ターゲット414への電圧印加、スパッタガスG1の供給及び回転テーブル30の回転を維持させておく。
【0059】
これにより、トレイ60と当該トレイ60に成膜されたイットリウム膜により成るゲッター材が作製される。このゲッター材はO、H、HO等の水分関連成分をゲッター効果により吸着し、チャンバ10内の水分分圧を下げる機能を有する。ゲッター効果とは、真空中の化学反応により気体分子を吸着する効果である。チャンバ10内の回転テーブル30上に、このようなゲッター材が保持されていることにより、成膜処理部40だけでなく、膜処理部50や他の箇所に亘って、チャンバ10内の水分分圧を下げることができる。
【0060】
また、このトレイ60は、平板62が外され、本稼働モードでワークWにイットリア膜を成膜する際に使用される。即ち、ワークWは、凹部61を除いてイットリウム膜が成膜されたトレイ60に保持されてチャンバ10内に搬入され、成膜処理部40及び膜処理部50を通過し、イットリア膜が成膜される。
【0061】
尚、このゲッター材作製のための成膜動作において、大気開放してメンテナンスを行った後、ゲッター材の作製に移る前にチャンバ10内の予備加熱を行ってもよい。まず、ゲートバルブGV2を閉じた状態で、チャンバ10と移送チャンバ70との間のゲートバルブGV1が開き、排気部20による排気を開始させる。これにより、チャンバ10内と移送チャンバ70内が減圧される。移送チャンバ70は冷却機構を備え、冷却機構は氷点下の極低温まで冷却されている。そして、膜処理部50の酸素ガス導入部56が、アルゴンガスと酸素ガスの導入を開始し、プラズマ発生器のRF電源54がONになり、処理空間59に導入されたプロセスガスG2がプラズマ化する。プラズマの熱により、処理空間59を通過する回転テーブル30が輻射熱によって加熱され、更に回転テーブル30を通じてチャンバ10内が加熱される。この予備加熱により、チャンバ10内の部材に吸着した水分が脱離し、移送チャンバ70の冷却機構に吸着することで、チャンバ10内から水分を排出し、チャンバ10内の水分分圧を減少させることができる。
【0062】
(作用効果)
以上のように、本実施形態の成膜装置1は、チャンバ10と回転テーブル30と成膜処理部40と膜処理部50と制御部80を備えるようにした。チャンバ10は、内部を真空とすることが可能となっている。回転テーブル30は、チャンバ10内に設けられ、ワークWを保持し、円周軌跡LでワークWを循環搬送させる。成膜処理部40は、イットリウムを含む成膜材料により成るターゲット412と、ターゲット412と回転テーブル30との間に導入されるスパッタガスG1をプラズマ化するプラズマ発生器とを有し、ターゲット412に電圧を印加し、回転テーブル30に向けてターゲット412からイットリウム粒子を叩き出し、回転テーブル30に保持されたワークWにイットリウム膜を成膜する。膜処理部50は、酸素ガスを導入する酸素ガス導入部56と、酸素ガスをプラズマ化するプラズマ発生器を有し、ワークWに成膜されたイットリウム膜を酸化させる。
【0063】
そして、制御部80は、回転テーブル30、成膜処理部40及び膜処理部50の動作を制御する。この制御部80は、ワークWが保持されていない状態で回転テーブル30を回転させ、成膜処理部40のプラズマ発生器にスパッタガスをプラズマ化させ、ターゲット412に電圧を印加させ、ワークWが保持されていない回転テーブル30に向けてイットリウム粒子を叩き出させるようにした。
【0064】
これにより、ワークWを保持していない状態で、回転テーブル30に設置されているトレイ60にイットリウム膜が成膜される。このトレイ60は、水分を吸着するゲッター材となり、ワークWにイットリア膜を成膜する前にチャンバ10内を循環搬送される。そのため、チャンバ10内の各所に加熱部を配置することで装置構成の複雑化を招くこと無く、チャンバ10内の各所で水分を除去でき、チャンバ10内の真空度を高くすることができる。尚、回転テーブル30に設置可能な部材であれば、トレイ60に限らず、イットリウム膜を成膜してゲッター材にしてもよい。例えば、回転テーブル30の表面にイットリウム膜を成膜し、回転テーブル30をゲッター材にしてもよい。また、例えば、ゲッター材は、トレイのようなワークWを保持する部材ではなく、単に板状の部材としてもよい。
【0065】
また、トレイ60には、ワークWが嵌め込まれる凹部61が形成されている。トレイ60をゲッター材として用いる場合、凹部61には平板62を嵌め込んでおき、制御部80は、ワークWの代わりに平板62が凹部61に嵌め込まれたトレイ60が載置された回転テーブル30を回転させるようにした。これにより、ワークWが嵌め込まれる凹部61にはイットリウム膜は成膜されない。そのため、ワークWをトレイ60に嵌め込んだとき、イットリウム膜とワークWが接触して、ワークWが金属汚染される虞を低減できる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 成膜装置
10 チャンバ
10a 天井
10b 内底面
10c 内周面
11 ボックス型シールド部材
12 防着板
20 排気部
30 回転テーブル
31 モータ
32 保持部
40 成膜処理部
41 処理空間
412 ターゲット
413 バッキングプレート
414 電極
416 電源部
417 ガス導入口
418 配管
419 スパッタガス導入部
50 膜処理部
51 筒状体
52 窓部材
53 アンテナ
54 RF電源
55 マッチングボックス
56 酸素ガス導入部
57 配管
58 ガス導入口
59 処理空間
60 トレイ
61 凹部
62 平板
70 移送チャンバ
71 ロードロック部
80 制御部
図1
図2
図3
図4