(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156107
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】防湿コート剤、防湿コート層、及び電子基板
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20221006BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20221006BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20221006BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20221006BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C09D175/04
H05K3/28 C
C08G18/65 011
C08G18/75
C08G18/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059638
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
5E314
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC26
4J034CC45
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4J034RA05
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4J038DG051
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5E314AA24
5E314AA38
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5E314GG01
(57)【要約】
【課題】防湿性を有する層を形成できる防湿コート剤を提供すること。
【解決手段】電子基板に用いられる防湿コート剤であって、水酸基価が10mgKOH/g以上であるポリウレタン樹脂(A)、低分子ポリオール(B)、脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)を含む防湿コート剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子基板に用いられる防湿コート剤であって、
水酸基価が10mgKOH/g以上であるポリウレタン樹脂(A)、低分子ポリオール(B)、脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)を含むことを特徴とする防湿コート剤。
【請求項2】
前記脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)の割合が、前記(A)~(C)成分の合計において、40質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の防湿コート剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防湿コート剤から形成されることを特徴とする防湿コート層。
【請求項4】
請求項3に記載の防湿コート層を備えることを特徴とする電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿コート剤、防湿コート層、及び電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、通常、電子回路と、該電子回路を支える電子基板とを有する。このような電子基板には、水分による回路ショートを防ぐ目的で、防湿コート組成物(防湿コート剤)が塗布される(特許文献1)。また、電子基板の配線保護用の樹脂組成物として、ポリウレタン樹脂等の水酸基価を有する樹脂、ブロックイソシアネート等のポリイソシアネートを含む組成物が知られている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169302号公報
【特許文献2】特開2017-183465号公報
【特許文献3】特開2018-92965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術とは異なる配合設計にて、防湿性を有する層を形成できる防湿コート剤を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、前記防湿コート剤から形成される防湿コート層、及び防湿コート層を備える電子基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、電子基板に用いられる防湿コート剤であって、水酸基価が10mgKOH/g以上であるポリウレタン樹脂(A)、低分子ポリオール(B)、脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)を含む防湿コート剤に関する。
【0007】
また、本発明は、前記防湿コート剤から形成される防湿コート層に関する。
【0008】
また、本発明は、前記防湿コート層を備える電子基板に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防湿コート剤における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定されない。
【0010】
本発明の防湿コート剤は、電子基板に用いられ、水酸基価が10mgKOH/g以上であるポリウレタン樹脂(A)、低分子ポリオール(B)、脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)を含む。ポリウレタン樹脂(A)は、水酸基価が一定以上であるため、ポリイソシアネート(C)と架橋反応できる。また、低分子ポリオール(B)は、硬化反応において塗膜凝集力が大きいため、本発明の防湿コート剤から得られる防湿コート層は、防湿性に加え基板を保護することができる。さらに、ポリイソシアネート(C)は、脂環骨格を有するため、防湿コート層の水蒸気透過率を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の防湿コート剤は、電子基板に用いられ、水酸基価が10mgKOH/g以上であるポリウレタン樹脂(A)、低分子ポリオール(B)、脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)を含む。
【0012】
<ポリウレタン樹脂(A)>
前記ポリウレタン樹脂(A)は、水酸基価が10mgKOH/g以上であれば、特に制限なく使用できるが、例えば、ジイソシアネート化合物とジオール化合物を反応させて得られたウレタンプレポリマーが挙げられる。前記ポリウレタン樹脂(A)は、硬化時の架橋点を一定濃度確保する観点から、水酸基価が12mgKOH/g以上であることが好ましく、14mgKOH/g以上であることがより好ましく、そして、塗膜の物性を柔軟にする観点から、水酸基価が50mgKOH/g以下であることが好ましく、45mgKOH/g以下であることがより好ましい。前記ポリウレタン樹脂(A)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0013】
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。前記ジイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の低分子ジオール類;ポリエステルジオール化合物、ポリエーテルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、ポリブタジエングリコール化合物等の高分子ジオール類が挙げられる。前記ジオール化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0015】
前記高分子ジオール化合物の数平均分子量は、良好な皮膜特性を有する防湿コート層が得られる観点から、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、そして、ジイソシアネート化合物との反応性を高める観点から、10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましい。
【0016】
前記ジイソシアネート化合物とジオール化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーの製造において、ジイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)は、0.5~1程度で反応させることが好ましく、0.6~0.9程度で反応させることがより好ましい。
【0017】
前記ポリウレタン樹脂(A)の含有量は、塗膜の柔軟性の観点から、防湿コート剤中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、そして、防湿性を確保する観点から、防湿コート剤中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
<低分子ポリオール(B)>
本発明の低分子ポリオール(B)は、1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を有する化合物である。上記の「低分子」は、所謂、高分子を含まないことを意味するものであり、特に分子量が限定されるものではないが、例えば、前記低分子ポリオール(B)の分子量は、60以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、そして、防湿性の観点から、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。前記低分子ポリオール(B)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記低分子ポリオール(B)としては、例えば、エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、メチルプロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の3官能以上のポリオール等が挙げられる。これらの中でも、貯蔵時の増粘を防止する観点から、ジオールが好ましい。
【0020】
前記低分子ポリオール(B)の含有量は、防湿性付与の観点から、防湿コート剤中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜の割れを防止する観点から、防湿コート剤中、12質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
<ポリイソシアネート(C)>
本発明のポリイソシアネート(C)は、1分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、脂環骨格を有すれば、特に制限なく使用できるが、脂環骨格を有するジイソシアネート及び/又はこの誘導体が好ましい。前記脂環骨格を有するポリイソシアネート(C)は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。なお、イソシアネート基はブロック剤等で保護されていてもよい。イソシアネート基のブロック剤としては、公知のイソシアネート基ブロック剤を用いることができ、例えば、オキシム系、ピラゾール系、アルコール系、フェノール系、メルカプタン系、酸アミド系、活性メチレン系、イミド系、尿素系、カルバミン酸、アミン系、イミン系化合物などが挙げられ、これらの中でも解離温度が比較的低いピラゾール系、活性メチレン系化合物が好ましい。
【0022】
前記脂環骨格を有するジイソシアネートとしては、例えば、ジシクロヘキシルメタン4,4‘-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、前記誘導体としては、例えば、上記の脂環骨格を有するジイソシアネートを出発原料として合成されたもので、ビウレット体、トリメチロールプロパンとのアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等が挙げられる。これらの中でも、防湿性付与の観点から、イソシアヌレート体が好ましい。
【0023】
前記ポリイソシアネート(C)の含有量は、防湿性付与の観点から、防湿コート剤中、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜の割れ防止の観点から、防湿コート剤中、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
前記ポリウレタン樹脂(A)の割合は、前記(A)~(C)成分の合計において、塗膜の柔軟性の観点から、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、そして、防湿性を確保する観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
前記低分子ポリオール(B)の割合は、前記(A)~(C)成分の合計において、防湿性付与の観点から、5質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜の割れを防止するする観点から、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
前記ポリイソシアネート(C)の割合は、前記(A)~(C)成分の合計において、防湿性付与の観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜の割れ防止の観点から、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
前記ポリイソシアネート(C)のNCOと、前記ポリウレタン樹脂(A)及び前記低分子ポリオール(B)の合計のOHのモル当量比((C)成分のNCOのモル当量/(A)+(B)のOHのモル当量)は、防湿性付与の観点から、0.7以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0028】
<有機溶剤>
本発明の防湿コート剤は、上記の各成分(材料)を溶解あるいは分散させる観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、ケトン系有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル系有機溶剤(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等)、脂肪族炭化水素系有機溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等)、芳香族炭化水素系有機溶剤(トルエン、キシレン等)、脂環族炭化水素系有機溶剤(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等)、アルコール系有機溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ジオール化合物とその誘導体(エチレングリコール、プロピレングリコール等)等が挙げられる。有機溶剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0029】
<添加剤>
本発明の防湿コート剤には、上記の各成分のほか、目的に応じて公知の界面活性剤、消泡剤、難燃剤、蛍光増白剤等の添加剤を用いてもよい。
【0030】
<防湿コート剤の製造>
前記防湿コート剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記の成分を、ディスパー等で撹拌混合することにより製造できる。
【0031】
<防湿コート層>
本発明の防湿コート層は、前記防湿コート剤から形成される。前記防湿コート層は、通常、電子基板等の支持体に塗布した後、加熱硬化することで形成できる。塗布方法は、公知の方法が適用でき、例えば、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。加熱条件としては、例えば、80~120℃で、30~60分が例示できる。
【0032】
<電子基板>
本発明の電子基板は、前記防湿コート層を備える。前記電子基板としては、例えば、プリント配線基板等が挙げられる。
【実施例0033】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0034】
<ポリウレタン(A)の製造>
<製造例1>
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、ジオール化合物として、ポリカーボネートジオール(東ソー製、商品名:「ニッポラン965」、分子量:1,000)97.0質量部、1,3-プロパンジオール3.0質量部、有機溶媒として酢酸ブチル17.6質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら60℃に昇温した。次いで、内部を60℃に保ちながら、ジイソシアネート化合物として、水添キシリレンジイソシアネート18.2質量部を15分かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで昇温させFT-IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失するまで4時間攪拌した。次いで、酢酸ブチルを21.8質量部加え、ポリウレタン樹脂(A)を75質量%含有する溶液を製造した。なお、上記のジイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)は、0.7であり、得られたポリウレタン樹脂(A)の理論水酸基価は40.5mgKOH/gであった。
【0035】
<製造例2>
水添キシリレンジイソシアネート18.2質量部の替わりに、キシリレンジイソシアネート17.9質量部を用いたこと以外は、製造例1と同様の操作にて、ポリウレタン樹脂(A)を75質量%含有する溶液を製造した。なお、上記のジイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)は、0.7であり、得られたポリウレタン樹脂(A)の理論水酸基価は40.7mgKOH/gであった。
【0036】
<実施例1-7、比較例1-2>
<防湿コート剤の製造>
表1の組成になるように、各成分を混合、攪拌して、各実施例及び比較例の防湿コート剤を製造した。
【0037】
得られた各実施例及び比較例の防湿コート剤を用い、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<防湿性の評価>
防湿性の評価は、防湿コート剤をメアバーにて、乾燥塗膜厚みが30μmとなるように、フタムラ製プレーンセロファン(20μm)に印刷後、25℃で15分予備乾燥させた後、120℃2時間加熱硬化させ、カップ法にて40℃90%R.H.24時間の条件で測定した。値はセロファンのバリア値(WVTR)を750g/25μmとして実測値から100μm当たりの換算値で評価した。50(g/m2・day)以下を合格基準とした。
【0039】
<塗装性の評価>
塗膜の状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
〇:はじきがない。
△:若干はじきがみられる。
×:はじきが多く見られる。
【0040】
【0041】
表1中、タケネート B-820NPは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体のブロックイソシアネート(三井化学製、商品名:「タケネート B-820NP」、ブロック剤:ジメチルピラゾール、固形分:60質量%);
デュラネート SBN-70Dは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ製、商品名:「デュラネート SBN-70D」、ブロック剤:ジメチルピラゾール、固形分:70質量%);
DOWSIL57は、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング製、商品名:「DOWSIL57」);を示す。
なお、比較例2は硬化が不十分であったため、評価出来なかった。