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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156126
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】工作機械の切削液タンク
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059663
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】楢本 博昭
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB34
(57)【要約】
【課題】 大型化することなく、作業者による清掃の手間を削減し、メンテナンス性の向上を図った工作機械の切削液タンクを提供する。
【解決手段】 タンク本体2内に、タンク中央部からタンク外周部に至る渦巻き状の切削液流路4が流路形成板5によって形成されている。蓋3の外周部に、加工室内からの切削液が流入する流入口16が設けられており、蓋3の中央部に、タンク本体2内の切削液を外部に取り出すための流出口17が設けられている。流出口17に、切削液を吸い上げて加工室に供給するポンプ8が設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面より見て略方形の底壁および底壁の周縁から立ち上がった4つの側壁を有するタンク本体と、タンク本体の上方開口を塞いでいる蓋とを備えており、
タンク本体内に、タンク中央部からタンク外周部に至る渦巻き状の切削液流路が流路形成板によって形成されており、
蓋の中央部および外周部のいずれか一方に、加工室内からの切削液が流入する流入口が、同他方に、タンク本体内の切削液を外部に取り出すための流出口が設けられており、
流出口に、切削液を吸い上げて加工室に供給するポンプが設けられている、工作機械の切削液タンク。
【請求項2】
蓋の中央部に流入口が、蓋の外周部に流出口が設けられている、請求項1の工作機械の切削液タンク。
【請求項3】
切削液流路の幅が同じとなるように流路形成板が形成されている、請求項1または2の工作機械の切削液タンク。
【請求項4】
タンク本体の底壁における流入口に対向する部分に、切削液の進行方向に進むに連れて低くなる傾斜板が設けられている、請求項1から3までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【請求項5】
切削液流路内に、切削液の進行方向に切削液を吐出する複数のノズルが設けられている、請求項1から4までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【請求項6】
複数のノズルのうち少なくとも1つは、切削液の流れが変わるタンク本体の角部に設けられている、請求項5の工作機械の切削液タンク。
【請求項7】
複数のノズルのうち少なくとも1つは、切削液流路の内側部に設けられている、請求項5の工作機械の切削液タンク。
【請求項8】
ノズルから吐出する切削液として、ポンプで吸い上げた後、ろ過装置を通過した切削液が使用されている、請求項5から7までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マシニングセンタ、旋盤等の工作機械に用いられる切削液タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマシニングセンタや旋盤のような切削加工を行う工作機械では、工具の潤滑および冷却ならびにスラッジの排出を目的として、切削液(クーラント)が一般に用いられている。ワークの切削加工が行われる加工室に吐出された切削液は、ワークから削り取られた切粉等とともに加工室から排出され、排出された切削液は、タンク本体に流入して一時的に貯留され、ここからクーラントポンプにより再び加工室へ供給される。
【0003】
近年、工作機械の省スペース化により一般的に切削液タンクの一部は工作機械の中に潜り込んでいる。よって、切削液タンクを清掃する場合、切削液タンクを機外へ引き出して清掃する必要がある。また切削液タンク内に切粉が充満しているため、タンクの蓋を全て外さなければ綺麗に清掃することは困難である。
【0004】
作業者による清掃の手間を削減し、メンテナンス性の向上を図った工作機械の切削液タンクとして、特許文献1には、タンク本体内におけるスラッジ含有切削液の流速が相対的に速い箇所に設置され上向きの吸込口を有する第1循環ポンプと、第1循環ポンプにより抜き出された切削液を回収ポンプに向かって吐出するスラッジ移送ノズルと、タンク本体内における切削液の流速が相対的に遅い箇所に設置されタンク本体の底に臨んだ吸込口を有する第2循環ポンプと、第2循環ポンプにより抜き出された切削液をタンク本体内の所定箇所に向かって吐出する第1撹拌ノズルとを備えているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-62728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の切削液タンクによると、タンク本体内の切削液を加工室へ供給するために流出口に設けられたクーラントポンプとは別に、2つの循環ポンプなどの装置を使用して切削液を流出口に移送するものとなっており、切削液タンクが大型化するという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、循環ポンプなどを使用することなく、切削液タンク内の切粉を切削液の流れにより流出口まで移送することで、大型化することなく、作業者による清掃の手間を削減し、メンテナンス性の向上を図った工作機械の切削液タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)平面より見て略方形の底壁および底壁の周縁から立ち上がった側壁を有するタンク本体と、タンク本体の上方開口を塞いでいる蓋とを備えており、
タンク本体内に、タンク中央部からタンク外周部に至る渦巻き状の切削液流路が流路形成板によって形成されており、
蓋の中央部および外周部のいずれか一方に、加工室内からの切削液が流入する流入口が、同他方に、タンク本体内の切削液を外部に取り出すための流出口が設けられており、
流出口に、切削液を吸い上げて加工室に供給するポンプが設けられている、工作機械の切削液タンク。
【0010】
2)蓋の中央部に流入口が、蓋の外周部に流出口が設けられている、前記1)の工作機械の切削液タンク。
【0011】
3)切削液流路の幅が同じとなるように流路形成板が形成されている、前記1)または2)の工作機械の切削液タンク。
【0012】
4)タンク本体の底壁における流入口に対向する部分に、切削液の進行方向に進むに連れて低くなる傾斜板が設けられている、前記1)から3)までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【0013】
5)切削液流路内に、切削液の進行方向に切削液を吐出する複数のノズルが設けられている、前記1)から4)までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【0014】
6)複数のノズルのうち少なくとも1つは、切削液の流れが変わるタンク本体の角部に設けられている、前記5)の工作機械の切削液タンク。
【0015】
7)複数のノズルのうち少なくとも1つは、切削液流路の内側部に設けられている、前記5)の工作機械の切削液タンク。
【0016】
8)ノズルから吐出する切削液として、ポンプで吸い上げた後、ろ過装置を通過した切削液が使用されている、前記5)から7)までのいずれかに記載の工作機械の切削液タンク。
【発明の効果】
【0017】
前記1)の工作機械の切削液タンクによると、渦巻状の切削液流路を形成して、流出口にポンプ(クーラントポンプ)を設けることで、切削液が流入口から流出口へと渦巻き状に流れ、渦巻状であることで、切粉の堆積の原因となる急激な流れ方向の変化を低減することができる。したがって、クーラントポンプとは別のポンプ(循環ポンプなど)を使用しなくても、切粉を含んだ切削液が淀みなく移送されるので、大型化することなく、作業者による清掃の手間を削減し、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0018】
前記2)の工作機械の切削液タンクによると、切粉が溜まりやすい流出口付近がタンク本体の外周部になるので、メンテナンスがより一層しやすいものとなる。
【0019】
前記3)の工作機械の切削液タンクによると、渦巻状の切削液流路でかつ流路幅を同じにすることで、切削液が均一に流れるようになり、切削液の淀みが少なくなり、切粉の堆積をより一層低減することができる。
【0020】
前記4)の工作機械の切削液タンクによると、流入口における切削液の流れが一方向になり、その進行方向に加速されるので、流入口付近での切削液の淀みが少なくなり、流入口付近での切粉の堆積をより一層低減することができる。
【0021】
前記5)の工作機械の切削液タンクによると、切削液の流れがノズルによって助勢されて、淀みができにくくなり、切削液流路全体に渡って切粉の堆積を低減することができる。
【0022】
前記6)の工作機械の切削液タンクによると、淀みが生じやすい角部にノズルを設けることで、角部での切粉の堆積をより一層低減することができる。なお、全ての角部に設ける必要はなく、1または複数の適宜な数の角部にノズルを設ければよい。
【0023】
前記7)の工作機械の切削液タンクによると、渦巻の内側は流速が遅くなり、切粉が堆積しやすいことから、この内側部にノズルを設けることで、切粉の堆積をより一層低減することができる。
【0024】
前記8)の工作機械の切削液タンクによると、ろ過装置を通過して切粉を除去された切削液は、加工室に供給されるだけでなく、タンク本体内における切粉堆積防止用として使用されるノズルにも供給されるので、効率の良いシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、この発明による工作機械の切削液タンクの第1実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の蓋を取り外した状態を示す平面図である。
図3図3は、図2のA-A線に沿う垂直断面図である。
図4図4は、図1の蓋に設けられている構成要素の相互関係を示す回路図である。
図5図5は、この発明による工作機械の切削液タンクの第2実施形態を模式的に示す図で、第1実施形態の図1に対応する斜視図である。
図6図6は、第1実施形態の図2に対応する平面図である。
図7図7は、第1実施形態の図3に対応する垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明において、図2および図5の左右を左右といい、下を前、上を後というものとする。
【0027】
図1から図4までに、この発明による工作機械の切削液タンクの第1実施形態を示す。
【0028】
第1実施形態に係る工作機械の切削液タンク(1)は、工作機械の加工室(図示略)から排出された切粉を含む切削液を貯留して切粉を除去した後に加工室に送るための装置で、図1および図2に示すように、平面より見て略方形の底壁(11)および底壁(11)の周縁から垂直に立ち上がった4つの側壁(左壁(12)、後壁(13)、右壁(14)および前壁(15))を有するタンク本体(2)と、タンク本体(2)の上方開口を塞いでいる蓋(3)と、タンク本体(2)内に渦巻状の切削液流路(4)を形成するための流路形成板(5)、複数(図示は6つ)のノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)および複数(図示は3つ)の配管(7a)(7b)(7c)と、蓋(3)の上に配置されたクーラントポンプ(8)、ろ過装置(9)およびバルブ装置(10)とを備えている。
【0029】
蓋(3)には、切削液の流入口(16)および流出口(17)が設けられている。
流入口(16)には、加工室内から排出されて加工時に生じる切粉を含んだ切削液が供給される。
【0030】
クーラントポンプ(8)は、流出口(17)に設けられており、クーラントポンプ(8)により、タンク本体(2)内の切削液が吸い上げられて、加工室に向かって排出される。
【0031】
ろ過装置(9)は、クーラントポンプ(8)と流入側配管(18)を介して接続されるとともに、加工室と流出側配管(19)を介して接続されて、クーラントポンプ(8)で抜き出された切削液を加工室に供給する前にろ過するものであり、これにより、加工室には切粉が除去された切削液が供給される。
【0032】
ろ過装置(9)を通過した切削液は、別途、分岐配管(20)を介してバルブ装置(10)に送られ、バルブ装置(10)は、各ノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)に通じている配管(7a)(7b)(7c)に接続されていることで、各配管(7a)(7b)(7c)ごとに切削液の供給または停止を制御することができる。
【0033】
この第1実施形態は、切削液の流入口(16)が蓋(3)の角部(左壁(12)と前壁(15)とに挟まれた部分)に設けられるとともに、クーラントポンプ(8)が設けられた流出口(17)が蓋(3)の中央部に設けられて、流路形成板(5)によってタンク本体(2)内に外周部から中央部に至る渦巻状の切削液流路(4)が形成されている点に特徴を有している。
【0034】
図2に示すように、流路形成板(5)は、最外周部の構成として、左壁(12)と後壁(13)とに挟まれた角部に設けられた第1コーナー部(21)と、後壁(13)と右壁(14)とに挟まれた角部に設けられた第2コーナー部(22)と、右壁(14)と前壁(15)とに挟まれた角部に設けられた第3コーナー部(23)と、前壁(15)と左壁(12)に平行な第1ストレート部(25)の前端部とに挟まれた角部に設けられた第4コーナー部(24)とを有している。
各コーナー部(21)(22)(23)(24)と各側壁(12)(13)(14)(15)および第1ストレート部(25)との接続部分は、平面より見て曲面状に形成されている。
【0035】
上記の流路形成板(5)の最外周部の構成により、渦巻状の切削液流路(4)の最外周壁は、左壁(12)の後端部を除いた部分、第1コーナー部(21)、後壁(13)の中間部分、第2コーナー部(22)、右壁(14)の中間部分、第3コーナー部(23)、前壁(15)の中間部分および第4コーナー部(24)によって形成されている。
【0036】
流路形成板(5)は、最外周部の内側の構成として、左壁(12)の中間部分に平行な第1ストレート部(25)に加えて、第1コーナー部(21)の中間部分に平行な第5コーナー部(26)と、後壁(13)の中間部分に平行な第2ストレート部(27)と、第2コーナー部(22)の中間部分に平行な第6コーナー部(28)と、右壁(14)の中間部分に平行な第3ストレート部(29)と、第3コーナー部(23)の中間部分に平行な第7コーナー部(30)と、前壁(15)の中間部分に平行な第4ストレート部(31)と、第4コーナー部(24)の中間部分に平行な第8コーナー部(32)と、第1ストレート部(25)の中間部分に平行な第5ストレート部(33)と、第5コーナー部(26)の中間部分に平行な第9コーナー部(34)と、第2ストレート部(27)の中間部分に平行な第6ストレート部(35)とを有している。
各コーナー部(26)(28)(30)(32)(34)と各ストレート部(25)(27)(29)(31)(33)(35)との接続部分は、平面より見て曲面状に形成されている。
【0037】
第8コーナー部(32)、第5ストレート部(33)、第9コーナー部(34)および第6ストレート部(35)は、クーラントポンプ(8)の吸込み口を囲むように形成された最内周部の構成となっている。
【0038】
上記において、流路形成板(5)の各部(21)(22)(23)(24)(25)(26)(27)(28)(29)(30)(31)(32)(33)(34)(35)は、切削液流路(4)の幅が同じとなるように形成されている。
【0039】
流路形成板(5)は、さらに、流入口(16)から落下した切削液を受ける構成として、図3に示すように、タンク本体(2)の底壁(11)における流入口(16)に対向する部分に配置された傾斜板(36)を有している。傾斜板(36)は、切削液の進行方向である後方に進むに連れて低くなるように形成されており、流入口(16)から流入した切削液は、図3に矢印で示すように、傾斜板(36)に案内されて一方向に流れるとともに、その進行方向に加速される。
【0040】
図4は、切削液タンク(1)に設けられている機器の相互関係を示す回路図で、同図に示すように、バルブ装置(10)は、複数(図示の例では3つ)のクーラントバルブ(10a)(10b)(10c)を有しており、各バルブ(10a)(10b)(10c)は、各配管(7a)(7b)(7c)に対して1つずつ設けられている。クーラントポンプ(8)は、モーター(8a)に駆動されることで、タンク本体(2)内の切削液を吸い上げ、これをろ過装置(9)を介して加工室内洗浄用として加工室に供給する。加工室に供給される切削液は、ろ過装置(9)を通過することで切粉などを除去される。ろ過装置(9)を通過した切削液は、別途、バルブ装置(10)のクーラントバルブ(10a)(10b)(10c)を介して、複数のノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)に通じている配管(7a)(7b)(7c)にも供給される。各配管(7a)(7b)(7c)には、ノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)が2つずつ接続されており、各クーラントバルブ(10a)(10b)(10c)が個別に開閉されることで、6つ(3対)のノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)は、3対全てをオンにしたり、特定の対をオンにしたり、必要に応じて選択的にオン・オフされる。
【0041】
図2に示すように形成された流路形成板(5)により、流入口(16)からタンク本体(2)内に流入した切削液は、図2に矢印で示すように、各側壁(12)(13)(14)(15)および流路形成板(5)の最外周部の構成(21)(22)(23)(24)と流路形成板(5)の内側の構成(25)(26)(27)(28)(29)(30)(31)とに案内されて、切削液流路(4)を外側から内側に渦巻状に流れ、流路形成板(5)の最内周部の構成(32)(33)(34)(35)に案内されて、流出口(17)に到達する。
【0042】
6つのノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)は、切削液の流れを助勢するためのもので、この実施形態では、図2に示すように、第1コーナー部(21)と第5コーナー部(26)との間で流路の内側、第2コーナー部(22)の後部の上流側、第2コーナー部(22)と第6コーナー部(28)との間で流路の内側、第3コーナー部(23)の右部の上流側、第4コーナー部(24)と第8コーナー部(32)との間で流路の内側、および第5コーナー部(26)の左部の上流側に1つずつ設けられている。
【0043】
上記実施形態の工作機械の切削液タンク(1)によると、ポンプとしては、加工室に切削液を供給するために必須のクーラントポンプ(8)だけを使用し、別途の循環ポンプなどを使用していないので、切削液タンク(1)を小型化することができる。別途のポンプを使用しない場合には、切粉の堆積が懸念されるが、渦巻状の切削液流路(4)を形成して、切削液が渦巻き状に流れるようにすることで、切粉の堆積の原因となる急激な流れ方向の変化を低減することができるので、切粉を含んだ切削液が淀みなく移送される。こうして、大型化することなく、作業者による清掃の手間を削減し、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0044】
上記実施形態の工作機械の切削液タンク(1)によると、また、ろ過装置(9)を通過して切粉を除去された切削液は、加工室に供給されるだけでなく、タンク本体(2)内における切粉堆積防止用として使用されるノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)にも供給されるので、効率の良いシステムを構築することができる。
【0045】
また、上記実施形態の流路形成板(5)によると、渦巻状とされた切削液流路(4)の流路幅が同じにされていることで、切削液が均一に流れるようになり、切削液の淀みが少なくなり、切粉の堆積をより一層低減することができる。また、その傾斜板(36)によると、流入口(16)における切削液の流れが一方向になり、切削液がその進行方向に加速されるので、流入口(16)付近での切削液の淀みが少なくなり、流入口(16)付近での切粉の堆積をさらに低減することができる。
【0046】
また、切削液流路(4)内に複数のノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)を配置して切削液の流れを助勢することで、切削液が均一に流れるようになり、切削液の淀みが少なくなり、切粉の堆積をより一層低減することができる。
【0047】
切削液流路(4)内に複数のノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)を配置するに際しては、淀みが生じやすい角部(角部の上流側)にいくつかのノズル(6b)(6d)(6f)を設けることで、角部での切粉の堆積をより一層低減することができ、また、渦巻の内側は流速が遅くなり、切粉が堆積しやすいことから、この内側部にノズル(6a)(6c)(6e)を設けることで、切粉の堆積をより一層低減することができる。
【0048】
図5から図7までに、この発明による工作機械の切削液タンク(1)の第2実施形態を示す。
【0049】
この第2実施形態は、切削液の流入口(51)が蓋(3)の中央部に設けられ、クーラントポンプ(8)が設けられた流出口(52)が蓋(3)の角部(左壁(12)と前壁(15)とに挟まれた部分)に設けられて、流路形成板(5)によってタンク本体(2)内に中央部から外周部に至る渦巻状の切削液流路(53)が形成されている点に特徴を有している。
【0050】
流路形成板(5)自体は、第1実施形態と同じ形状とされており、第1実施形態と相違しているのは、流入口(51)および流出口(52)の位置、渦巻状の切削液流路(53)を切削液が流れる方向および複数のノズル(54a)(54b)(54c)(54d)(54e)(54f)の配置位置となっている。以下では、第1実施形態と同一の構成には同じ符号を付してその説明を省略し、相違点のみを説明する。
【0051】
流入口(51)および流出口(52)が第1実施形態と逆にされたことにより、流入口(51)からタンク本体(2)内に流入した切削液は、図6に矢印で示すように、まず、流路形成板(5)の最内周部の構成(35)(34)(33)(32)に案内された後、流路形成板(5)の内側の構成(31)(30)(29)(28)(27)(26)(25)と各側壁(15)(14)(13)(12)および流路形成板(5)の最外周部の構成(24)(23)(22)(21)とに案内されて、切削液流路(53)を中央部から外周部へと外向きに渦巻状に流れて、クーラントポンプ(8)が設けられた流出口(52)に到達する。
【0052】
6つのノズル(54a)(54b)(54c)(54d)(54e)(54f)は、この実施形態では、図6に示すように、第5コーナー部(26)と第9コーナー部(34)との間で流路の内側、第4コーナー部(24)の後部の上流側、第3コーナー部(23)と第7コーナー部(30)との間で流路の内側、第2コーナー部(22)の右部の上流側、第2コーナー部(22)と第6コーナー部(28)との間で流路の内側、および第1コーナー部(21)の右部の上流側に1つずつ設けられている。
【0053】
なお、傾斜板(36)は、図7に示すように、タンク本体(2)の底壁(11)における流入口(51)に対向する部分に配置されるとともに、切削液の進行方向である後方に進むに連れて低くなるように形成されており、流入口(51)から流入した切削液は、図7に矢印で示すように、傾斜板(36)に案内されて一方向に流れるとともに、その進行方向に加速される。第1実施形態の図4に対応する第2実施形態の回路図は、図4と同様のものになる。
【0054】
第2実施形態の工作機械の切削液タンク(1)によると、図1から図4までに示した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、切粉が溜まりやすい流出口(52)付近がタンク本体(2)の外周部にあることで、メンテナンスがより一層しやすいという効果が第1実施形態のものに付加されている。
【0055】
なお、第1および第2のいずれの実施形態においても、渦巻状の切削液流路(4)(53)を形成するための流路形成板(5)の形状、ノズル(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f)(54a)(54b)(54c)(54d)(54e)(54f)の配置位置などは、図示したものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
(1):工作機械の切削液タンク
(2):タンク本体
(3):蓋
(4):切削液流路
(5):流路形成板
(6a)(6b)(6c)(6d)(6e)(6f):ノズル
(8):クーラントポンプ(ポンプ)
(9):ろ過装置
(10):バルブ装置
(10a)(10b)(10c):クーラントバルブ
(16):流入口
(17):流出口
(36):傾斜板
(51):流入口
(52):流出口
(53):切削液流路
(54a)(54b)(54c)(54d)(54e)(54f):ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7