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特開2022-156137電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156137
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059679
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA03
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】清浄度を適正に確保した環境下で電極を製造することができる電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電池用電極製造装置100は、内部INが大気圧よりも減圧されたチャンバー110と、チャンバー110の内部INに設けられ、基材フィルム31A上に粉体状の活物質32Aを供給して電極30を形成する電極形成部100Aと、チャンバー110の外部OUから内部INに空気を導入可能である吸入開口部141と、チャンバー110の内部INに設けられ、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制する規制部材142と、チャンバー110の内部INの空気を排気する排気装置143とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、
前記チャンバーの内部に設けられ、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給して電極を形成する電極形成部と、
前記チャンバーの外部から内部に空気を導入可能である吸入開口部と、
前記チャンバーの内部に設けられ、前記吸入開口部側から前記電極形成部側への空気の流れを規制する規制部材と、
前記チャンバーの内部の空気を排気する排気装置とを備える、
電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記吸入開口部は、前記チャンバーの外部から内部に前記基材フィルムを搬入可能な搬入開口部によって兼用され、
前記規制部材は、前記チャンバーの内部において、前記搬入開口部によって兼用される前記吸入開口部と前記電極形成部との間で、かつ、前記吸入開口部と対向する位置に設けられ、前記基材フィルムが通過可能な貫通部を有する、
請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記規制部材は、前記吸入開口部から前記チャンバーの内部に導入した空気の流れを当該チャンバーの内面に沿う流れにかえる、
請求項1又は請求項2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
前記電極形成部は、前記基材フィルム上に前記活物質を供給する活物質供給装置、及び、前記活物質供給装置によって前記基材フィルム上に供給した前記活物質を当該基材フィルムに定着させるロールプレスによって構成され、
前記排気装置は、前記チャンバーの内部に設けられ、前記活物質供給装置から前記ロールプレスへの前記基材フィルムの搬送方向に対して当該ロールプレスの下流側に位置する吸引口部を有する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
前記チャンバーの内部に設けられ、前記電極形成部に向けて搬送される前記基材フィルムを載置し当該基材フィルムを吸引して姿勢を保持する吸引ステージを備え、
前記排気装置と前記吸引ステージとは、吸引源が兼用される、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項6】
内部が大気圧よりも減圧され、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給して電極を形成する電極形成部を内部に収容するチャンバーに設けられ、当該チャンバーの外部から内部に空気を導入可能である吸入開口部と、
前記チャンバーの内部に設けられ、前記吸入開口部側から前記電極形成部側への空気の流れを規制する規制部材と、
前記チャンバーの内部の空気を排気する排気装置とを備える、
チャンバー内清浄構造。
【請求項7】
内部が大気圧よりも減圧され、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給して電極を形成する電極形成部を内部に収容するチャンバーの外部から内部に吸入開口部を介して空気を導入する空気導入工程と、
前記チャンバーの内部で、前記吸入開口部側から前記電極形成部側への空気の流れを規制する空気規制工程と、
前記チャンバーの内部で、前記電極形成部において前記電極を形成する電極形成工程と、
前記チャンバーの内部の空気を排気する空気排気工程とを含む、
電池用電極製造方法。
【請求項8】
内部が大気圧よりも減圧され、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給して電極を形成する電極形成部を内部に収容するチャンバーの外部から内部に吸入開口部を介して空気を導入する空気導入工程と、
前記チャンバーの内部で、前記吸入開口部側から前記電極形成部側への空気の流れを規制する空気規制工程と、
前記チャンバーの内部の空気を排気する空気排気工程とを含む、
チャンバー内清浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部で様々な処理を行うチャンバーに関する技術として、例えば、特許文献1には、チャンバー内を清掃する清掃装置が開示されている。この清掃装置は、窒素ガス等の乾燥ガスをノズルから噴射することによってチャンバー内を清掃する。また、例えば、特許文献2には、廃物真空流を受けるチャンバーを備えた真空ライン清掃システムが開示されている。この真空ライン清掃システムは、チャンバー内にサイクロン流を生じさせ、廃物流に存在する液体/ごみを排出口へ押しやり、清浄な真空流を真空出口へと導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-184708号公報
【特許文献2】特表2010-505611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年注目されているリチウムイオン電池は、一般に、集電体の表面に活物質層が形成された複数の電極を、セパレータを介して積層させることで構成される。このようなリチウムイオン電池用の電極を、例えば、上記のようなチャンバー内において、集電体の上に活物質を供給し定着させることで製造するという考え方がある。この場合に、電極の製造に伴って内部で活物質の微小粒子等が飛散することで、当該電極の製造に供するチャンバーの内部空間が汚染されてしまうおそれがある。これに対して、例えば、チャンバーの内部空間で製造される電極の性能を確保すべく内部の清浄度を適正な状態で維持しようとした場合、上述の特許文献1に開示された乾燥ガスを要する技術や上述の特許文献2に開示されたサイクロン流を要する技術が必ずしも適した構成であるとは言えず、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、清浄度を適正に確保した環境下で電極を製造することができる電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池用電極製造装置は、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、前記チャンバーの内部に設けられ、基材フィルム上に粉体状の活物質を供給して電極を形成する電極形成部と、前記チャンバーの外部から内部に空気を導入可能である吸入開口部と、前記チャンバーの内部に設けられ、前記吸入開口部側から前記電極形成部側への空気の流れを規制する規制部材と、前記チャンバーの内部の空気を排気する排気装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、清浄度を適正に確保した環境下で電極を製造することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る単電池の概略構成を表す模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態に係る製造装置の概略構成を表す模式的なブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る製造装置の概略構成を表す模式的な部分斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る製造装置の概略構成を表す模式的な部分斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る製造装置の概略構成を表す模式的な部分断面図である。
図6図6は、実施形態に係る製造方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図2に示す本実施形態に係る製造装置100は、図1に示す単電池10に適用される電極30を製造するための電池用電極製造装置である。以下では、まず、図1を参照して単電池10、電極30の基本的な構成について説明した後、図2等を参照して製造装置100について詳細に説明する。
【0011】
<単電池>
図1に示す本実施形態の単電池(電池セル、単セルともいう。)10は、非水電解質二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池とは、正極30aと負極30bとの間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、以下の説明では、「正極30a」と「負極30b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極30」という場合がある。
【0012】
単電池10は、正極30aと、負極30bと、セパレータ40と、枠体50とを備える。正極30aは、正極集電体層31a、及び、正極活物質層32aを含んで構成される。一方、負極30bは、負極集電体層31bと、負極活物質層32bを含んで構成される。単電池10は、正極集電体層31a、正極活物質層32a、セパレータ40、負極活物質層32b、及び、負極集電体層31bがこの順で積層される。つまり、単電池10は、正極集電体層31a及び負極活物質層32bが最外層に配置される。そして、単電池10は、正極集電体層31a及び負極集電体層31bの縁部において、枠体50により正極活物質層32a、負極活物質層32b及びセパレータ40の外周が封止され、電解液が封入される。この状態で、単電池10は、正極活物質層32aと負極活物質層32bとの間にセパレータ40が介在し、当該セパレータ40が正極30aと負極30bとの間の隔壁として機能する。単電池10は、例えば、複数を組み合わせてモジュール化した組電池、あるいは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用することが可能である。
【0013】
なお、以下の説明では、「正極集電体層31a」と「負極集電体層31b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「集電体層31」という場合がある。同様に、「正極活物質層32a」と「負極活物質層32b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極活物質層32」という場合がある。
【0014】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層31aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層31aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0015】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0016】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。例えば、導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0017】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0018】
正極集電体層31aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層31aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層31aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0019】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層32aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層32aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層32aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層32aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層32aは、正極活物質層32aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層32aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0020】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物及び金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0021】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0022】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0023】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層31aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0024】
正極活物質層32aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0025】
正極活物質層32aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0026】
正極活物質層32aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層31aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0027】
正極活物質層32aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0028】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層31bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層31bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層31bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0029】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層32bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層32bを得る方法等は、正極活物質層32aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層32aを得る方法と同様である。
【0030】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0031】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0032】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0033】
負極活物質層32bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層32aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0034】
負極活物質層32bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層32aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0035】
負極活物質層32bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層32aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0036】
負極活物質層32bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0037】
<セパレータの具体例>
セパレータ40に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などが挙げられる。セパレータ40は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ40の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0038】
<枠体の具体例>
枠体50としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体50を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体50としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0039】
<製造装置の基本構成>
次に、図2図5を参照して製造装置100の概略構成について説明する。製造装置100は、上述した電極30を製造するものである。この製造装置100は、例えば、単電池10を製造する電池製造装置に組み込まれて実現されてもよい。なお、以下で説明する集電体31Aは、上述した集電体層31(正極集電体層31a、負極集電体層31b)を構成するものである。一方、活物質32Aは、上述した電極活物質層32(正極活物質層32a、負極活物質層32b)を構成するものである。
【0040】
ここで一般に、大気圧中において、基材フィルムである集電体31Aの一方の面に粉体状の活物質32Aを塗布して電極30を形成する場合、活物質32Aの内部に空気が残留する場合がある。そして、この状態のまま活物質32Aに対してプレス成型を行うと、プレス終了後に圧縮された空気が膨張し、活物質32Aが弾け飛んだり、活物質32Aの表面が凹凸になったりする等の現象が発生するおそれがある。
【0041】
これに対して、本実施形態の製造装置100は、大気圧よりも減圧されたチャンバー110の内部INにおいて、帯状の集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給して電極30を製造する構成となっている。
【0042】
この構成により、本実施形態の製造装置100は、活物質32Aの内部への空気の残留を抑制し、集電体層31上に形成される電極活物質層32の均一性向上を実現している。以下、これを実現するための製造装置100の各部の具体的な構成について説明する。
【0043】
なお、以上で説明したように、正極30aと負極30bとは、集電体層31(正極集電体層31a、負極集電体層31b)、電極活物質層32(正極活物質層32a、負極活物質層32b)を構成する物質について異なる点があるものの、それぞれ集電体層31の一方の面に電極活物質層32が電気的に結合された構成である点では差異はない。このため、以下の説明でも、「正極30a」の製造と「負極30b」の製造とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極30」の製造として説明する。
【0044】
具体的には、製造装置100は、図2に示すように、チャンバー110と、活物質供給装置120と、ロールプレス130とを備える。活物質供給装置120の一部とロールプレス130とは、電極形成部100Aを構成する。電極形成部100Aは、製造装置100において、集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給して電極30を形成する部位であり、活物質32Aを集電体31A上に塗布し、当該活物質32Aを圧縮して電極活物質層32を成形し電極30を形成する。上述したように、本実施形態では、電極形成部100Aは、チャンバー110の内部INの減圧環境下に設けられる。
【0045】
なお、以下の説明では、製造装置100において、集電体31Aを搬送する方向を「搬送方向D1」という場合がある。搬送方向D1は、典型的には、略水平方向に沿っており、帯状の集電体31Aの長手方向に沿った方向に相当する。製造装置100は、チャンバー110の内において、搬送方向D1の上流側から下流側に向かって、活物質供給装置120、ロールプレス130の順で配置されている。
【0046】
チャンバー110は、内部INが大気圧よりも減圧される容器である。本実施形態のチャンバー110は、内部INで粉体状の活物質32Aを扱う。チャンバー110は、隔壁111によって空洞状に区画され、内部INの空間が大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋として機能する。チャンバー110の内部INは、減圧ポンプ等によって大気圧よりも減圧される。チャンバー110の内部INの圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調整されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調整されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。ここで、標準大気圧は、約1013hPa(約10Pa)である。チャンバー110は、この内部INの空間に電極形成部100Aを収容する。
【0047】
チャンバー110は、隔壁111に搬入開口部112が形成されている。搬入開口部112は、チャンバー110の外部OUから内部INに帯状の集電体31Aを搬入(挿入)可能な略矩形状のスリットである。搬入開口部112は、搬送方向D1の上流側において搬送方向D1に沿って隔壁111を貫通し、チャンバー110の外部OUと内部INとを連通する。ここでは、搬入開口部112は、チャンバー110の内部INの減圧環境を維持した状態で、集電体31Aを外部OUから内部INに搬入可能な大きさ、形状に形成される。帯状の集電体31Aは、例えば、チャンバー110の外部OUの常圧下に設けられた集電体ロール31Rから引き出されながら、搬入開口部112を介して内部INに連続的に供給、搬入される。チャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aは、コンベアや搬送ローラ等によって搬送方向D1に沿って搬送され、電極30の製造の過程において、適宜のタイミングで切断されることで個別の集電体31Aとなる。また、チャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aは、当該チャンバー110の内部INにおいて枠体50が設けられる。この場合、枠体50は、例えば、内部INにおいて、枠体設置装置等によって、活物質供給装置120の前段で集電体31Aに設けられてもよいし、活物質供給装置120とロールプレス130との間で集電体31Aに設けられてもよいし、ロールプレス130の後段で集電体31Aに設けられてもよい。図2図3は、一例として、活物質供給装置120の前段で枠体50が集電体31Aに設けられる場合を例示している。
【0048】
活物質供給装置120は、帯状の集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給する装置である。活物質供給装置120は、少なくとも一部がチャンバー110の内部INに設けられ、ロールプレス130と共に電極形成部100Aを構成する。活物質供給装置120は、少なくとも供給口120a(図5参照)、及び、シャッタユニット120b(図5参照)がチャンバー110の内部INに配置され、電極形成部100Aを構成する。活物質供給装置120は、シャッタユニット120bが動作することで、チャンバー110の内部INにおいて、供給口120aから集電体31A上に紛体状の活物質32Aを供給する。
【0049】
ロールプレス130は、活物質供給装置120によって集電体31A上に供給した活物質32Aを当該集電体31Aに定着させる装置である。ロールプレス130は、チャンバー110の内部INに設けられ、上述したように、活物質供給装置120の一部(供給口120a、シャッタユニット120b等)と共に電極形成部100Aを構成する。ロールプレス130は、例えば、上述の工程で活物質32Aが供給され、搬送されてきた集電体31Aの上に載置されている当該活物質32Aを、一対のローラによって集電体31Aと共に挟み込んでプレス成形する。これにより、ロールプレス130は、活物質32Aを帯状の集電体31Aに定着させる。
【0050】
上記のように構成される製造装置100は、搬入開口部112を介してチャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aを電極形成部100A側に搬送し、当該搬送される帯状の集電体31Aに対して、活物質供給装置120の供給口120aから粉体状の活物質32Aを供給する。このとき、製造装置100は、搬送されてくる集電体31Aに所望量の活物質32Aが供給されるように、シャッタユニット120bによる供給口120aの開閉が調節される。そして、製造装置100は、活物質32Aが供給された集電体31Aを、ロールプレス130に搬送し、当該ロールプレス130によって集電体31A上の活物質32Aをプレス成形し、活物質32Aを帯状の集電体31Aに定着させる。その後、製造装置100は、帯状の集電体31Aを枠体50の間隔に合わせ適宜切断することで、電極30を形成することができる。なお、製造装置100は、電極30の形成後の後工程として、さらに、上述の工程により形成された電極30(すなわち、正極30a、及び、負極30b)を適宜積層させて単電池10や組電池を製造する工程等を続けて実行してもよい。
【0051】
上述したように、本実施形態の製造装置100は、チャンバー110の内部INの減圧環境下において電極30を形成するものである。この構成により、本実施形態の製造装置100は、集電体31Aに粉体状の活物質32Aを供給した後、当該活物質32Aの内部に空気が残留することを抑制することができ、その上で、活物質32Aを集電体31Aに定着させることができる。この結果、製造装置100は、ロールプレス130によるプレス終了後に、残留空気に起因して活物質32Aが弾け飛んだり、活物質32Aの表面が凹凸になったりする等の現象が発生することを抑制することができる。
【0052】
リチウムイオン電池に用いる電極30は、集電体31A上に供給された活物質32Aを含む電極活物質層32が均質に形成されることで、より安定した電池性能を発揮する傾向にある。このため、本実施形態の製造装置100は、上述したように、電極活物質層32に空気が含まれることを抑制し、電極活物質層32の均一性を向上させた電極30を製造することができるので、より安定した性能を発揮することができる単電池10を製造することができる。
【0053】
以上、本実施形態に係る製造装置100の全体構成の概略について説明した。
【0054】
<チャンバー内清浄構造>
このような構成のもと、本実施形態に係る製造装置100は、図2図3に示すように、さらに、チャンバー内清浄構造140を備えることで、活物質32Aを扱うチャンバー110の内部INにおいて飛散する当該活物質32Aの微小粒子を清浄し、電極30の製造に供する空間の清浄度の確保を実現している。
【0055】
具体的には、本実施形態のチャンバー内清浄構造140は、吸入開口部141と、規制部材142と、排気装置143とを備える。
【0056】
吸入開口部141は、チャンバー110に設けられ、チャンバー110の外部OUから内部INに空気(外気)を導入可能な開口部である。吸入開口部141は、チャンバー110の隔壁111を貫通し、チャンバー110の外部OUと内部INとを連通する。吸入開口部141は、チャンバー110の内部INの減圧環境を維持した状態で、内部INに空気を導入可能な大きさ、形状に形成される。本実施形態の吸入開口部141は、上述した搬入開口部112によって兼用される。吸入開口部141は、大気圧よりも減圧されたチャンバー110の内部INの負圧を利用して、当該チャンバー110の内部INに空気を吸入する。
【0057】
規制部材142は、チャンバー110の内部INに設けられ、吸入開口部141から導入した空気の流れを変える部材であり、エアシールドなどとも呼ばれる。ここでは、規制部材142は、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制する。つまり、規制部材142は、吸入開口部141から導入した空気が搬送方向D1に沿って直接的に電極形成部100A側へ向かう流れを規制する。これにより、規制部材142は、電極形成部100Aにおいて集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給する位置への空気の流れを規制する。
【0058】
より具体的には、本実施形態の規制部材142は、チャンバー110の内部INにおいて、搬入開口部112によって兼用される吸入開口部141と電極形成部100Aとの間で、かつ、吸入開口部141と対向する位置に設けられる。ここでは、規制部材142は、板状で、かつ、吸入開口部141側に突出するように湾曲した曲面状(ドーム状)に形成される。そして、規制部材142は、搬送方向D1に対して、吸入開口部141と活物質供給装置120との間に位置して、チャンバー110の内面に支持される。
【0059】
そして、規制部材142は、集電体31Aが通過可能な貫通部142aを有する。貫通部142aは、規制部材142を搬送方向D1に沿って貫通し、規制部材142の吸入開口部141側と電極形成部100A側とを連通する。貫通部142aは、集電体31Aが通過可能な大きさ、形状に形成される。ここでは、貫通部142aは、搬入開口部112によって兼用される吸入開口部141と同様に、略矩形状のスリットである。この構成により、規制部材142は、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制しつつ、吸入開口部141として兼用されている搬入開口部112からチャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aを、貫通部142aを介して電極形成部100A側に搬送することを許容する。
【0060】
また、規制部材142は、吸入開口部141と対向する位置に支持された状態で、チャンバー110の内面との間に空気流路142bを形成する。この構成により、規制部材142は、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制した上で、当該吸入開口部141からチャンバー110の内部INに導入した空気の流れを、当該空気流路142bを介してチャンバー110の内面に沿う流れにかえる。
【0061】
排気装置143は、チャンバー110の内部INの空気を排気する装置である。ここでは、排気装置143は、例えば、吸入開口部141からチャンバー110の内部INに導入した空気を排気する。排気装置143は、典型的には、チャンバー110の内部INの空気と共に当該空気中に飛散した活物質32Aの微小粒子もチャンバー110の外部OUに排気する。
【0062】
具体的には、排気装置143は、吸引口部143a、排気配管143b、フィルタ装置143c、及び、吸引源143dを有する。
【0063】
吸引口部143aは、チャンバー110の内部INに設けられ、当該チャンバー110の内部INの空気を吸引するための開口部である。吸引口部143aは、空気と共に当該空気中の活物質32Aの微小粒子を吸い込み易いように、広がった吸い込み口形状となっている。そして、本実施形態の吸引口部143aは、活物質供給装置120からロールプレス130への集電体31Aの搬送方向D1に対して当該ロールプレス130の下流側に位置する。ここでは、吸引口部143aは、ロールプレス130の下流側において、当該ロールプレス130によって活物質32Aが定着された後、搬送方向D1に沿って搬送される集電体31Aの3方を囲うように3つ設けられる。ここでは、吸引口部143aは、集電体31Aに定着された活物質32Aに対向して1つ、搬送方向D1の側方にそれぞれ1つずつ、合計3つが設けられる。
【0064】
排気配管143bは、チャンバー110の内部INで吸引口部143aから吸引された空気、及び、活物質32Aの微小粒子を、チャンバー110の外部OUに排気するための排気流路を構成する配管である。排気配管143bは、チャンバー110の内部INと外部OUとに渡って設けられる。排気配管143bは、一端側がチャンバー110の内部INにおいて吸引口部143aに接続されており、他端側がチャンバー110から導出され外部OUに至る。排気配管143bは、複数の吸引口部143aに対してそれぞれ接続されており、途中で合流している。
【0065】
フィルタ装置143cは、チャンバー110の内部INで吸引口部143aから吸引された空気を外部OUに排気する際に、空気から活物質32Aの微小粒子を除去する装置である。フィルタ装置143cは、チャンバー110の外部OUにおいて、排気配管143b上に設けられる。
【0066】
吸引源143dは、吸引口部143aから空気を吸引するための源となる装置である。吸引源143dは、チャンバー110の外部OUにおいて、排気配管143b上で、かつ、フィルタ装置143cより排気方向下流側に設けられる。吸引源143dは、例えば、吸引ポンプ等によって構成される。ここでは、吸引源143dは、例えば、チャンバー110の内部INを減圧する減圧ポンプとは別体で設けられる。吸引源143dは、典型的には、チャンバー110の内部INを大気圧よりも減圧するために要する負圧よりも大きな負圧で吸引する。
【0067】
上記のように構成される排気装置143は、吸引源143dが駆動することで、吸引口部143aからチャンバー110の内部INの空気を吸引する。このとき、排気装置143は、電極30の製造の際に当該空気中に飛散した活物質32Aの微小粒子も空気と共に吸引口部143aから吸引する。そして、排気装置143は、吸引口部143aから吸引した空気、及び、活物質32Aの微小粒子を排気配管143b介してチャンバー110の外部OUに導出し、フィルタ装置143cで活物質32Aの微小粒子を除去した後、外部OUに排気する。
【0068】
<吸引ステージ>
ここで、本実施形態に係る製造装置100は、図2図3図4図5に示すように、さらに、吸引ステージ150を備える。吸引ステージ150は、チャンバー110の内部INに設けられ、集電体31Aの搬送を補助する装置である。吸引ステージ150は、電極形成部100Aに向けて搬送される集電体31Aを載置し当該集電体31Aを吸引して姿勢を保持する。
【0069】
具体的には、吸引ステージ150は、多数の吸引孔151aが形成された定盤(水平台)151の上面151bに集電体31Aを載置する。定盤151は、内部が空洞状に形成されると共に、上面151bが集電体31Aを沿わすための平面状に形成されている。多数の吸引孔151aは、この定盤151の上面151bに形成されており、定盤151の内部と連通している。定盤151は、吸引配管152を介して吸引源143dと接続されており、吸引源143dが駆動することで内部が負圧とされる。定盤151は、内部が負圧とされることで、多数の吸引孔151aを介して、上面151bに載置した集電体31Aを当該上面151b側に吸引して姿勢を保持する。
【0070】
この構成により、製造装置100は、電極形成部100Aに向けて搬送している集電体31Aを、吸引ステージ150によって吸引して姿勢を保持することができる。そして、製造装置100は、吸引ステージ150によって集電体31Aの姿勢を適正に保持した状態で、電極形成部100Aにおいて活物質供給装置120から集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給することができる。このため、製造装置100は、図5に示すように、設計的に予め決められた所望厚さTの活物質32Aを精度よく集電体31A上に載置することができ、この結果、所望の性能の電極30を精度よく形成することができる。
【0071】
そして、本実施形態では、排気装置143と吸引ステージ150とは、吸引源143dが兼用される。つまりここでは、吸引配管152は、排気配管143bと合流し、当該排気配管143bを介して吸引源143dと接続される。吸引配管152は、フィルタ装置143cの排気方向上流側で排気配管143bと合流している。
【0072】
なお、上述した定盤151の上面151bは、図4に示すように、搬送方向D1の上流側の端部が所定の曲面を有する傾斜面151Rとして形成されている。この構成により、吸引ステージ150は、当該傾斜面151Rが、搬送方向D1の上流側から搬送されてくる集電体31Aの拾い面として機能することで、当該集電体31Aを滑らかに上面151bに載置した状態とすることができる。
【0073】
<電極の製造方法>
次に、図6のフローチャートを参照して電極30の製造方法(電池用電極製造方法)について説明する。以下で説明する電極30の製造方法は、製造装置100によって行われるものとして説明する。この電極30の製造方法は、チャンバー内清浄方法を含むものであり、より具体的には、空気導入工程(ステップS1)、空気規制工程(ステップS2)、電極形成工程(ステップS3)、及び、空気排気工程(ステップS4)を含む。なお、ここでは、説明を分かり易くするため、各工程を順を追って説明するが、実際にはこれらの各工程が相互に並行して継続して行われている。
【0074】
製造装置100は、空気導入工程として、チャンバー110の外部OUから内部INに吸入開口部141を介して空気を導入する(ステップS1)。ここでは、製造装置100は、大気圧よりも減圧されたチャンバー110の内部INの負圧を利用して、搬入開口部112によって兼用される吸入開口部141を介して当該チャンバー110の内部INに空気を吸入する。
【0075】
そして、製造装置100は、空気規制工程として、チャンバー110の内部INで、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制する(ステップS2)。ここでは、製造装置100は、規制部材142によって吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制した上で、当該空気の流れを、当該空気流路142bを介してチャンバー110の内面に沿う流れにかえる。
【0076】
この間、製造装置100は、電極形成工程として、チャンバー110の内部INで、電極形成部100Aにおいて電極30を形成する(ステップS3)。ここでは、製造装置100は、シャッタユニット120bによって、集電体31Aに所望量の活物質32Aを供給し、ロールプレス130によって当該活物質32Aを集電体31A上に定着させて電極30を形成する。製造装置100は、搬入開口部112からチャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aに対して上記処理を行っていき、順次、電極30を形成していく。
【0077】
そして、製造装置100は、空気排気工程として、チャンバー110の内部INの空気を排気装置143によって排気する(ステップS4)。典型的には、排気装置143は、吸入開口部141からチャンバー110の内部INに導入した空気を排気する。このとき、製造装置100は、電極形成工程(ステップS3)等で空気中に飛散した活物質32Aの微小粒子も空気と共にチャンバー110の内部INから外部OUに吸引し、活物質32Aの微小粒子を除去した後の空気を外部OUに排気する。
【0078】
<実施形態の作用効果>
以上で説明した製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、吸入開口部141を介してチャンバー110の内部INに吸入した空気を利用してチャンバー110の内部INを清浄することができる。
【0079】
すなわち、製造装置100は、大気圧よりも減圧されたチャンバー110の内部INの負圧を利用して吸入開口部141を介して内部INに空気を吸入することができる。このとき、製造装置100は、吸入開口部141から直接的に電極形成部100A側へ向かう空気の流れを規制部材142によって規制することができる。これにより、製造装置100は、内部INに吸入した空気が電極形成部100Aにあたることで活物質32Aを飛散させること自体を抑制することができる。
【0080】
その上で、製造装置100は、電極形成部100Aで集電体31A上に粉体状の活物質32Aを供給して電極30を形成する際に空気中に飛散した活物質32Aの微小粒子を、排気装置143によって空気と共にチャンバー110の内部INから排気し外部OUに除去することができる。
【0081】
このように、製造装置100は、チャンバー110の内部INで電極30を形成する際に活物質32Aの微小粒子が空気中に飛散し内部INの空間を汚染しても、当該チャンバー110の内部INの清浄度を適正に確保することができる。この結果、製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、清浄度を適正に確保した環境下で電極30を製造することができ、例えば、所望の性能の電極30を精度よく製造することができる。
【0082】
また、以上で説明した製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、チャンバー110の内部INに集電体31Aを搬入するための搬入開口部112によって吸入開口部141を兼用することができる。この構成により、製造装置100は、吸入開口部141を別個で設ける必要がないので、例えば、製造コストを抑制することができる。そして、製造装置100は、規制部材142が吸入開口部141と対向する位置に設けられた上で、当該規制部材142に集電体31Aが通過可能な貫通部142aを有する。この構成により、製造装置100は、規制部材142において、吸入開口部141側から電極形成部100A側への空気の流れを規制しつつ、吸入開口部141として兼用されている搬入開口部112からチャンバー110の内部INに搬入された集電体31Aを、貫通部142aを介して電極形成部100A側に搬送することを許容することができる。この結果、製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、吸入開口部141として兼用する搬入開口部112から効果的に空気を取り込み内部INを清浄しつつ、これらを兼用することによって生じ得る背反を解消することができる。
【0083】
さらに、以上で説明した製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、吸入開口部141からチャンバー110の内部INに導入した空気の流れを、規制部材142によって、当該チャンバー110の内面に沿う流れにかえる。この構成により、製造装置100は、チャンバー110の内面に沿う空気の流れによって、活物質32Aの微小粒子が付着し易い当該チャンバー110の内面を清掃することができると共に、内部INの空間全域に空気の流れを行き渡らせ易くすることができる。この結果、製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、チャンバー110の内部INに導入した空気によって、当該内部INの空間全域をより効果的に清浄することができる。
【0084】
また、以上で説明した製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、集電体31Aの搬送方向D1に対してロールプレス130の下流側に排気装置143の吸引口部143aが位置する。この配置により、製造装置100は、チャンバー110の内部INにおいて、活物質32Aの微小粒子が最も飛散し易い電極形成部100Aの後工程で、微小粒子と共に集電体31Aに定着していない活物質32Aも吸引し除去することができる。この結果、製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、清浄度をより適正に確保した環境下で電極30を製造することができ、例えば、所望の性能の電極30をより精度よく製造することができる。
【0085】
ここでは、以上で説明した製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、吸引ステージ150を備えた上で、排気装置143と吸引ステージ150とによって吸引源143dが兼用される。この構成により、製造装置100、チャンバー内清浄構造140、製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、活物質32Aを精度よく集電体31A上に載置し所望の性能の電極30を精度よく形成した上で、チャンバー110の内部INの清浄度を適正に確保するための構成の一部を吸引ステージ150と兼用して構成することができる。
【0086】
<変形例>
なお、上述した本発明の実施形態に係る電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0087】
以上の説明では、電極形成部100Aは、基材フィルムとしての集電体31Aの一方の面に直接、粉体状の活物質32Aを供給して電極30を形成するものとして説明したがこれに限らない。例えば、電極形成部100Aは、集電体31Aとは異なる基材フィルムである転写用フィルムに、一旦、活物質32Aを供給して定着させた後に、当該転写用フィルムに粉成型された活物質32Aを、集電体31Aの一方の面に転写し定着させることで電極30を形成してもよい。この場合、電極形成部100Aは、転写用フィルムから集電体31Aに活物質32Aを転写するための転写部を含んで構成されてもよい。また、基材フィルムは、セパレータ40であってもよい。つまり、基材フィルムは、集電体31A、セパレータ40、又は、転写用フィルムを用いることができる。基材フィルムが例えば転写用フィルムである場合は、上述のように当該フィルム上に形成された活物質層(電極組成物層)を集電体上に、例えば転写することで、リチウムイオン電池用電極を得ることができる。
【0088】
以上の説明では、枠体50は、チャンバー110の内部INで集電体31Aに設けられるものとして説明したがこれに限らず、外部OUで設けられる構成であってもよい。枠体50は、例えば、外部OUにおいて、枠体設置装置等によって、搬入開口部112の前段で集電体31Aに設けられてもよい。この場合、帯状の集電体31Aは、搬入開口部112の手前で枠体50が取り付けられた状態で搬入開口部112から内部INに搬入される。またこの場合、吸入開口部141として兼用される搬入開口部112は、チャンバー110の内部INの減圧環境を維持した状態で、集電体31Aと共に枠体50も一緒に外部OUから内部INに搬入可能な大きさ、形状に形成されればよい。同様に、貫通部142aは、集電体31Aと共に枠体50も一緒に通過可能な大きさ、形状に形成されればよい。また、枠体50は、例えば、枠体設置装置等によって、ロールプレス130の後段であってチャンバー110の外部OUで集電体31Aに設けられてもよい。また、本実施形態に係る電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、又は、チャンバー内清浄方法は、枠体設置装置又は枠体設置工程を含まなくてもよい。例えば、集電体31Aに代えて転写用フィルムが用いられる場合には、転写用フィルム上に電極組成物層(電極活物質層32)が形成された後(つまり、電極形成工程を終了した後)、当該電極組成物層が転写された集電体31A上に、又は、当該電極組成物層が転写される前の集電体31A上に、枠体50が配置されてもよい。
【0089】
また、以上の説明では、帯状の集電体31Aは、例えば、チャンバー110の外部OUの常圧下に設けられた集電体ロール31Rから引き出されながら搬入開口部112を介して内部INに搬入されるものとして説明したがこれに限らず、チャンバー110の内部INの減圧下に設けられた集電体ロール31Rから引き出されるものであってもよい。また、活物質供給装置120も、その全体がチャンバー110の内部INに設けられていてもよい。
【0090】
また、以上の説明では、吸入開口部141は、搬入開口部112によって兼用されるものとして説明したがこれに限らず、搬入開口部112とは別個に設けられてもよい。
【0091】
また、以上の説明では、規制部材142は、貫通部142aを有すると共に当該吸入開口部141からチャンバー110の内部INに導入した空気の流れを当該チャンバー110の内面に沿う流れにかえるものとして説明したがこれに限らない。
【0092】
また、以上の説明では、吸引口部143aは、搬送方向D1に対してロールプレス130の下流側に位置するものとして説明したがこれに限らず、他の位置に設けられていてもよい。
【0093】
また、以上の説明では、排気装置143の吸引源143dは、チャンバー110の内部INを減圧する減圧ポンプとは別体で設けられるものとして説明したがこれに限らず、両者が兼用されてもよい。すなわち、排気装置143は、例えば、チャンバー110の内部INを減圧する減圧ポンプであってもよい(すなわち減圧ポンプと兼用されてもよい)し、減圧ポンプとは別体の吸引源を有する排気装置であってもよい。また、製造装置100は、吸引ステージ150を備えた上で、排気装置143と吸引ステージ150とによって吸引源143dが兼用されるものとして説明したがこれに限らない。製造装置100は、吸引ステージ150を備えていたとしても、排気装置143と吸引ステージ150とによって吸引源143dが兼用されなくてもよい。例えば、製造装置100は、上記のように排気装置143の吸引源がチャンバー110の内部INを減圧する減圧ポンプと兼用される場合には、当該排気装置の吸引源と、吸引ステージ150の吸引源143dとは別体に設けられてもよい。また、製造装置100は、そもそも吸引ステージ150を備えなくてもよい。
【0094】
本実施形態に係る電池用電極製造装置、チャンバー内清浄構造、電池用電極製造方法、及び、チャンバー内清浄方法は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 単電池
30 電極
31A 集電体(基材フィルム)
32A 活物質
40 セパレータ
50 枠体
100 製造装置(電池用電極製造装置)
100A 電極形成部
110 チャンバー
112 搬入開口部
120 活物質供給装置
120a 供給口
120b シャッタユニット
130 ロールプレス
140 チャンバー内清浄構造
141 吸入開口部
142 規制部材
142a 貫通部
142b 空気流路
143 排気装置
143a 吸引口部
143b 排気配管
143c フィルタ装置
143d 吸引源
150 吸引ステージ
D1 搬送方向
IN 内部
OU 外部
図1
図2
図3
図4
図5
図6