(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156138
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64F 3/00 20060101AFI20221006BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221006BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C39/02
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059684
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陰山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】小野 郁宏
(72)【発明者】
【氏名】益池 孝治
(72)【発明者】
【氏名】元吉 浩之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】飛行体の安定化を図る。
【解決手段】機体に浮力発生部5を備える飛行体であって、前記飛行体は可動接続部12,16を備え、該可動接続部12,16から線状材料14を介して外部と接続するとともに、前記線状材料14に張力が加わった際に、前記可動接続部12,16により張力の方向が前記飛行体の重心方向に変更されることを特徴とする飛行体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に浮力発生部を備える飛行体であって、
前記飛行体は可動接続部を備え、該可動接続部から線状材料を介して外部と接続するとともに、前記線状材料に張力が加わった際に、前記可動接続部により張力の方向が前記飛行体の重心方向に変更されることを特徴とする飛行体。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行体であって、
前記浮力発生部は、前記機体の所定位置から同心円状に複数備えられていることを特徴とする飛行体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の飛行体であって、
前記可動接続部は、前記線状材料に張力が加わった際に前記飛行体へ回転モーメントがかからない位置まで前記線状材料を移動することを特徴とする飛行体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体であって、
飛行体の重心を曲率中心とする位置で水平方向に固定された水平円弧状レールと、水平円弧状レール上を自由に移動可能な線状材料結合部と、によって可動接続部が構成されることを特徴とする飛行体。
【請求項5】
請求項4に記載の飛行体であって、
前記水平円弧状レールは、水平方向に固定された飛行体の長さおよび幅より直径が小さいことを特徴とする飛行体。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体であって、
飛行体の重心を曲率中心とする位置で水平方向に延びる回転軸によって飛行体と可動接続された水平円弧状レールと、水平円弧状レール上を自由に移動可能な線状材料結合部とによって、可動接続部が構成されることを特徴とする飛行体。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体であって、
飛行体の重心に設けられた鉛直方向に延びる回転軸によって飛行体と可動接続された剛性体によって、可動接続部が構成されることを特徴とする飛行体。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体であって、
飛行体の重心に設けられた鉛直方向に延びる回転軸によって飛行体と可動接続され飛行体の重心を曲率中心とする鉛直方向の鉛直円弧状レールと、鉛直円弧状レール上を自由に移動可能な線状材料結合部と、から構成されることを特徴とする飛行体。
【請求項9】
請求項8に記載の飛行体であって、
前記鉛直円弧状レールは、前記機体より上部に形成されていることを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルや紐などの線状材料で外部と接続され、その線状材料によって移動可能範囲に制限が加わる飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ施設の点検に用いられる飛行体が実用化されつつある。飛行体が落下した場合に人が回収のためその場まで行くことが困難なインフラ施設、たとえば下水管の場合、飛行体に接続された線状材料を地上から牽引することで落下した飛行体を引っ張り上げて回収することが可能となる。
【0003】
飛行体が吸気部を有する場合、線状材料が吸気部に吸い込まれることを防止するためある程度の張力を線状材料に持たせることが有用である。張力を持たせることにより、線状材料の繰り出し長に基づいて飛行体の飛行位置を概ね推定することもできる。線状材料の張力が加わる延長線に対して飛行体の重心がずれていると、張力によって飛行体に回転モーメントが加わり、操縦が難しくなって飛行安定性が低下する課題が生じる。
【0004】
この課題に関連し、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1では、同心円上に平面配置された複数の揚力発生部の中心において、揚力発生部とアーム部との接点部より上部で地上へ垂れ下がるケーブルが接続されている。この構造を取ることで、ケーブル張力による飛行体の回転モーメントの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は揚力発生部とアーム部との接点部より上部でケーブルが固定して接続されているため、地上からマンホールを経由して地下の下水管内を飛行する飛行体に線状材料を接続する場合には使えない。また、飛行体が下水管の管軸方向など水平方向へ飛行する場合には線状材料が横方向へ引っ張られることになり、ケーブルが固定して接続されているため線状材料が機体に引っかからざるを得ず、鉛直方向の回転モーメントが加わって飛行体が前傾し、操縦が困難となり安定飛行に支障が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のことから本発明においては、「機体に浮力発生部を備える飛行体であって、
前記飛行体は可動接続部を備え、該可動接続部から線状材料を介して外部と接続するとともに、前記線状材料に張力が加わった際に、前記可動接続部により張力の方向が前記飛行体の重心方向に変更されることを特徴とする飛行体。」としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線状材料に張力が与えられた状態で飛行体を操縦する場合、水平方向あるいは鉛直方向のどの位置から線状材料が伸びていても接続部が可動であるため線状材料の張力は飛行体の重心方向へ自動的に向き、飛行体の向きを変えようとする回転モーメントが最小化される。その結果として飛行体が回転せず、操縦が容易となり安定飛行を実現できる。線状材料結合部がレールあるいは剛性体を経由して飛行体と接続されているため、飛行体の真横や上から線状材料に張力を与えても飛行体に引っかかる問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図2】本発明の実施例2に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図3】本発明の実施例3に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図4】本発明の実施例4に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図5】本発明の実施例5に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図6】本発明の実施例5の変形例に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図7】本発明の実施例6に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図8】本発明の実施例7に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図9】本発明の実施例8に係る飛行体の上面図および側面図。
【
図10】下水管点検時の飛行体とマンホールとの位置関係を示した上面図。
【
図11】下水管点検時の飛行体とマンホールとの位置関係を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお本発明の飛行体としては下水管点検用の飛行体が挙げられるが、農業用水トンネルなど作業者が容易に内部へ入れないインフラの点検用飛行体、電力や信号を電線で受給する飛行体、荷物をロープで牽引する飛行体点検用の飛行体であっても良い。
【0011】
本発明の実施例の説明の前に、本発明に係る飛行体の利用場面例とここでの課題について、
図10、
図11を用いてより具体的に明らかにしておく。
図10、
図11は、下水管点検時の飛行体とマンホールとの位置関係を示した上面図、並びに側面図である。ここでは、一例として下水管内に飛行体を飛行させて、内部の点検映像を撮影する場合のイメージを上面図、側面図として示したものである。
【0012】
これらの図に示すように、管渠(下水管)102に設けられたマンホール101a、101bは、その壁面に接続して足掛け金物が入口から下水管102の管底まで並んでいることが一般的である。ここでの点検作業は、作業員が地上にいて飛行体10をマンホール101aから管渠内に導入し、マンホール101bの方向に管渠内飛行させることで行う。このとき、万一飛行体10が管渠内に落下した場合にも地上へ飛行体10を引き上げることができるよう、飛行体10には回収紐14を接続して地上から延長することが望ましい。この回収紐14の繰り出し長を地上で確認することで飛行体10の飛行位置を推測するためには、回収紐14が弛まないようある程度の張力をかける必要がある。また、回収紐14が壁面に対して平行とならない位置を飛行体10が飛行する場合、回収紐14は真後ろではなく斜め後ろから飛行体1に対して張力を与えることになる。
【0013】
飛行体10を安定飛行させるためには、飛行体10の進行方向に対して前後、左右、上下の3方向を適正に制御する必要がある。これに対し、飛行体10に回収紐14を接続しているということは、その張力により上記3方向の少なくともいずれかの安定性を乱すことになることを意味している。
【0014】
本発明においては、以下の示す
図1から
図9で示したいずれかの構造を取ることにより、斜め後ろから加わる張力があっても飛行体10の安定飛行を実現することを可能とするものである。なお以下の
図1から
図9は、左側に上面図、右側に側面図を示している。
【実施例0015】
図1は、本発明の実施例1に係る飛行体の上面図および側面図である。ここで飛行体10は少なくとも4組の回転部5(揚力発生部)が、機体6上にある中心位置(重心位置)から同心円上に平面配置されて構成されている。
【0016】
各回転部5は飛行のための揚力を発生する機能を有し、飛行体10の機体6には、機体6が形成する平面と同一平面上に、水平円弧状レール12が備えられる。水平円弧状レール12は、直線部分12aと円弧状部分12bを含んでおり、直線部分12aの中央が同心円上に平面配置された4組の回転部5(揚力発生部)の同心円の中心位置、従って重心位置となるように水平に固定されている。
【0017】
水平円弧状レール12の円弧部分12bには、円弧形状のレール上を自由に移動できる線状材料結合部16が備えられ、線状材料結合部16には線状材料14が結合される。水平円弧状レール12は線状材料14に張力が加わっても形状が大きく変形しない樹脂や金属製であることが望ましい。線状材料結合部16はレール上を自由に移動できるようフックやカラビナであっても良いし、プーリーであっても良い。プーリーの場合には、軸の部分にベアリングを内蔵することが望ましい。
【0018】
この水平円弧状レール12と線状材料結合部16が揃って可動接続部としての機能を果たす。
図1の構成の場合、可動接続部は水平円弧状レール12の円弧部分12bと線状材料結合部16により構成される1個所であり、このことは自由度が1であることを意味している。
図1の場合に、この構成は飛行体1の制御すべき左右、前後、上下の3方向のうち、左右回り方向の安定性に貢献し、従って飛行体操作者の制御すべき方向は前後、上下の2方向でよいことになり、これが自由度1の意味するところである。
【0019】
自由度1とできることについてさらに詳細に説明する。
図1の上面図では左下から張力が加わっている様子を示している。水平円弧状レール12の曲率中心が飛行体の重心と合致しているため、線状材料結合部16は水平円弧状レール12上を左側へ自動的に移動し、張力が加わる延長線上に飛行体の重心が来ることになる。その結果として機体10に右旋回や左旋回など水平方向の回転モーメントが加わらない。飛行体は一般的にピッチ、ラダー、ロール、スロットルをプロポのレバーで操作する。水平方向の回転モーメントが加わる場合にはラダーの操作が常に必要となり操縦が困難となるが、水平方向の回転モーメントが加わらない場合にはラダーの操作が容易となる。その結果、飛行安定性の向上に寄与することが可能となる。
【0020】
なお実施例1において、回転部における羽根は機体6の下部に接地された例を示しているが、これは機体上部に設置されたものであってもよい。これは以降の実施例でも同じである。
水平円弧状レール12の円弧部分12bにはレール上を自由に移動できる線状材料結合部16が備えられ、線状材料結合部16には線状材料14が結合される。水平円弧状レール12は線状材料14に張力が加わっても形状が大きく変形しない樹脂や金属製であることが望ましい。線状材料結合部16はレール上を自由に移動できるようフックやカラビナであっても良いし、プーリーであっても良い。プーリーの場合には、軸の部分にベアリングを内蔵することが望ましい。