(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015615
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】コンクリートの打設工法及び型枠
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20220114BHJP
E04G 9/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
E04G9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118565
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】頃安 研吾
【テーマコード(参考)】
2E150
2E172
【Fターム(参考)】
2E150AA12
2E150BA02
2E150BA17
2E150BA27
2E150BA28
2E150CA01
2E150MA16X
2E172AA05
2E172DD04
(57)【要約】
【課題】簡素化された工程によりコンクリートの打継面を形成できるコンクリートの打設工法及び型枠を提供する。
【解決手段】表面に凹凸を有するシート体により形成された袋体と、前記袋体に設けられ前記袋体の内部に気体を充填するためのエアバルブと、を備えるエアチューブの前記エアバルブから気体を充填して形成された棒状体を複数個連続して配置して型枠を形成し、前記型枠によりコンクリートが充填される第1充填空間を形成する工程と、前記第1充填空間にコンクリートを打設する工程と、前記エアバルブから空気を排出し前記エアチューブを取り外し凹凸が形成されたコンクリートの打継面を形成する工程と、を備えることを特徴とする、コンクリートの打設工法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有するシート体により形成された袋体と、前記袋体に設けられ前記袋体の内部に気体を充填するためのエアバルブと、を備えるエアチューブの前記エアバルブから気体を充填して形成された棒状体を複数個連続して配置して型枠を形成し、前記型枠によりコンクリートが充填される第1充填空間を形成する工程と、
前記第1充填空間にコンクリートを打設する工程と、
前記エアバルブから空気を排出し前記エアチューブを取り外し凹凸が形成されたコンクリートの打継面を形成する工程と、を備えることを特徴とする、
コンクリートの打設工法。
【請求項2】
前記型枠を用いて前記打継面を含むコンクリートが充填される第2充填空間を形成する工程と、
前記第2充填空間にコンクリートを打設する工程と、を備える、
請求項1に記載のコンクリートの打設工法。
【請求項3】
コンクリートの打継ぎのために用いられる型枠であって、
表面に凹凸を有するシート体により形成された袋体と、
前記袋体に設けられ前記袋体の内部に気体を充填するためのエアバルブと、
備えることを特徴とする、型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打継ぎのためのコンクリートの打設工法及び型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化したコンクリートの表面に更にコンクリートを打設する打継ぎが行われている。このとき、硬化したコンクリートの表面を荒らす等の加工をしないまま新たなコンクリートを打設すると、硬化したコンクリートと新たに打継ぎをしたコンクリートとが十分に一体化せずに強度が不足する虞がある。
【0003】
硬化したコンクリートの鉛直面に対する打継ぎについて、土木学会発刊2017年制定コンクリート標準示方書[施工編]に「既に打ち込まれ硬化したコンクリートの打継面は、ワイヤブラシで表面を削るか、チッピング等により粗にして十分吸水させた後、新しいコンクリートを打継がなければならない」と規定されているように、コンクリートの表面を荒らすことが必要とされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コンクリートの鉛直方向の打継面を形成する方法が記載されている。この方法によれば、型枠に格子点状に設けられた複数の固定部にシート体により形成されたバルーン部を固定する工程と、型枠を組み立てる工程と、型枠とバルーン部との間に気体を充填して複数のバルーンを膨張させる工程と、型枠内にコンクリートを打設する工程と、バルーン部を減圧して型枠を取り外す工程とを備えている。この方法によれば、硬化したコンクリートの表面に凹凸を有する打継目が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法によれば、型枠にバルーン部を固定するために複数の固定部にシート体を固定する手間がかかり、コストが嵩み工期が増大する虞がある。発明者は、コンクリートの打継ぎの効率化について鋭意研究を進めてきた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素化された工程によりコンクリートの打継面を形成できるコンクリートの打設工法及び型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、本発明は、表面に凹凸を有するシート体により形成された袋体と、前記袋体に設けられ前記袋体の内部に気体を充填するためのエアバルブと、を備えるエアチューブの前記エアバルブから気体を充填して形成された棒状体を複数個連続して配置して型枠を形成し、前記型枠によりコンクリートが充填される第1充填空間を形成する工程と、前記第1充填空間にコンクリートを打設する工程と、前記エアバルブから空気を排出し前記エアチューブを取り外し凹凸が形成されたコンクリートの打継面を形成する工程と、を備えることを特徴とする、コンクリートの打設工法である。
【0009】
本発明によれば、エアチューブにより型枠を簡便に形成できる。また、本発明によれば、コンクリートを打設して硬化後に、エアチューブの空気を抜くことで、脱型の工程の期間を短縮できる。また、本発明によれば、型枠を形成するエアチューブの表面が凹凸に形成されているため、脱型後にコンクリートの表面に凹凸を有する打継面を形成できる。
【0010】
また、本発明は、前記型枠を用いて前記打継面を含むコンクリートが充填される第2充填空間を形成する工程と、前記第2充填空間にコンクリートを打設する工程と、を備えていてもよい。
【0011】
本発明によれば、エアチューブにより形成されたコンクリートの打継面を含んでコンクリートを打継いだ場合、一体化したコンクリートの強度を向上することができる。
【0012】
上記の目的を達するために、本発明は、コンクリートの打継ぎのために用いられる型枠であって、表面に凹凸を有するシート体により形成された袋体と、前記袋体に設けられ前記袋体の内部に気体を充填するためのエアバルブと、備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、コンクリートの打設用の型枠を簡便に形成できる。また、本発明によれば、コンクリートを打設して硬化後に、型枠の空気を抜くことで、脱型の工程の期間を短縮できる。また、本発明によれば、型枠の表面が凹凸に形成されているため、脱型後にコンクリートの表面に凹凸を有する打継面を形成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素化された工程によりコンクリートの打継面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアチューブの構成を示す図である。
【
図2】膨張時のエアチューブの状態を示す図である。
【
図3】エアチューブにより鉄筋内に型枠を形成する状態を示す図である。
【
図4】エアチューブにより形成された鉄筋コンクリートに打継ぎを行うための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るコンクリートの打設工法及び型枠の実施形態について説明する。
【0017】
図1に示されるように、エアチューブ1(型枠)は、シート体により形成された袋体2と、袋体2に設けられたエアバルブ3と、を備える。袋体2は、気体の透過性が低いシート体により形成されている。袋体2は、例えば、可撓性を有するポリプロピレン等の樹脂製材料を用いたシート体により形成されている。袋体2は、シート体を溶着や接着により加工して形成されている。袋体2は、例えば、有底の筒状に形成されたシート体の一端2A側を密封することにより形成されている。
【0018】
袋体2の一端2A側には、密封のためのシール部2Fが形成されている。シール部2Fは、例えば、溶着や接着により形成されている。袋体2の他端2B側には、底部2Cが形成されている。底部2Cは、例えば、円形のシート体を袋体2に溶着や接着することにより形成されている。底部2Cは、後述のようにシート体の膨張時に底面が形成されるのであれば上記加工方法に限らず、袋体2の一端2A側を内側に折り曲げて溶着する等、他の溶着や接着方法により形成されていてもよい。
【0019】
シート体の表面は、例えば、エンボス加工により凹凸に形成されている。凹凸は、例えば、高さが2mm以上の凹凸差を有する凸部Tが数ミリ間隔で配列されて形成されている。凸部Tは、例えば、四角柱状に形成されている。袋体2の一端2A側には、エアバルブ3が設けられている。
【0020】
エアバルブ3は、袋体2の内部に気体を充填し、又は袋体の内部の気体を排出するためのバルブ装置である。エアバルブ3には、例えば、圧縮空気を生成するコンプレッサ(不図示)が配管(不図示)を介して接続され、袋体2の内部に空気が充填される。袋体2の内部には、空気の他、ボンベ等から圧縮ガスが充填されてもよい。
【0021】
図2に示されるように、エアチューブ1にエアバルブから空気が充填されると棒状体が形成される。棒状体の表面には、凹凸が形成される。エアチューブ1により形成された棒状体は、弾力性及び可撓性を有する。
【0022】
次に、エアチューブ1を用いたコンクリートの打設工法の各工程について説明する。
【0023】
図3に示されるように、コンクリートを打設する位置において予め鉄筋Rが組まれる。エアチューブ1のエアバルブ3(
図1参照)から気体を充填して棒状体を形成し、鉄筋Rの間に生じた隙間に縦置きに配置する。エアチューブ1は、複数個連続して配置され型枠Kが形成される。エアチューブ1は、膨張前に鉄筋Rの隙間に挿入され、その後、空気が充填されて膨張するようにしてもよい。エアチューブ1は、気体を充填して棒状体の形状がある程度保たれる状態にしてから鉄筋Rの隙間に複数個挿入し、その後、各エアチューブ1に空気を充填して各エアチューブ1同士の密着度を高めて型枠Kを形成するようにしてもよい。
【0024】
エアチューブ1は、複数個を連ねた状態で鉄筋Rの隙間に挿入され、その後、空気が充填されて型枠Kが形成されるようにしてもよい。エアチューブ1は、複数個連ねた型枠Kの状態で鉄筋Rの隙間に挿入されてもよい。エアチューブ1の設置方法は、鉄筋Rの配置の状態や、コンクリートが打設される位置の状態に応じて適宜変更される。
【0025】
型枠Kの内部には、コンクリートが打設される第1充填空間S1が形成される。複数のエアチューブ1同士は、弾性変形して隙間なく密着する。このとき、隣接するエアチューブ1の間に鉄筋Rが存在しても隣接するエアチューブ1同士が鉄筋Rの形状に馴染み、隙間が無くなる。複数のエアチューブ1は、横置きに配置されてもよい。
【0026】
複数のエアチューブ1同士は、ロープや針金を用いて連結される。次に、第1充填空間S1にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化した後、エアバルブ3から空気を排出する。空気が排出されて萎んだ複数のエアチューブ1を取り外す。空気が抜けたエアチューブ1は、可撓性を有するため、作業者が引っ張る等の作業により硬化したコンクリートの表面から容易に剥がすことができる。
【0027】
図4に示されるように、エアチューブ1が取り外されると、鉄筋コンクリートCの鉛直方向にコンクリートの打継面C1が現れる。コンクリートの打継面C1は、複数のエアチューブ1により波形に形成される。波形のコンクリートの打継面C1には、エアチューブ1の表面に形成された複数の凸部T(
図1参照)により凹凸を有する打継目が形成されている。従って、コンクリートの打継面C1は、荒らす等の工程が必要なくなり工期が短縮される。
【0028】
次に、エアチューブ1により形成された型枠Kを用いて打継面C1を含むコンクリートの第2充填空間S2が形成される。この時、型枠Kは、次のコンクリートの打継ぎが予定されている場合はエアチューブ1が用いられるが、次のコンクリートの打継が無い場合は、コンクリートパネルが用いられてもよい。第2充填空間S2には、コンクリートが打設される。第2充填空間S2に打設されたコンクリートが硬化すると、型枠Kが取り外される。
【0029】
第1充填空間S1に形成されたコンクリートと第2充填空間S2に形成されたコンクリートとは、打継面C1を介して一体化する。第2充填空間S2に打設されたコンクリートは、打継面C1の凸部Tに入り込むので、一体化したコンクリートの強度が向上する。エアチューブ1は、型枠Kを形成するために再利用され施工コストが低減される。
【0030】
上述したようにコンクリートの打設工法によれば、鉄筋を組み立てた後でもエアチューブ1を任意の位置に設置でき、容易に、短い工期において鉛直方向の打継面を形成することが可能となる。また、エアチューブ1は、表面に凹凸が形成されているため取外し後のコンクリート表面が「粗」となり、水密性や構造性能を向上させた打継目を形成できる。コンクリートの打設工法によれば、全長が長い構造物等を構築する際に各コンクリートの打重ね時間の間隔を短縮できる。コンクリートの打設工法によれば、同日におけるコンクリート打設において異なる配合のコンクリートを打設することができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、エアチューブ1の表面に形成された凸部Tは、四角柱状だけでなく、円柱状、半球状、三角柱状、或いはこれらの組合せ等のコンクリートの打継に適した突起が形成されるのであればどのような形状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 エアチューブ
2 袋体
2A 一端
2B 他端
2C 底部
2F シール部
3 エアバルブ
C 鉄筋コンクリート
C1 打継面
K 型枠
R 鉄筋
S1 第1充填空間
S2 第2充填空間
T 凸部