IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 三和テッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-架空線点検装置用回収装置 図1
  • 特開-架空線点検装置用回収装置 図2
  • 特開-架空線点検装置用回収装置 図3
  • 特開-架空線点検装置用回収装置 図4
  • 特開-架空線点検装置用回収装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156171
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】架空線点検装置用回収装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059728
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】向井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AH02
5G352AH03
5G352AH09
5G352AM05
(57)【要約】
【課題】架空線点検装置との連結可能範囲が広く、連結状態を確認しつつ連結部の位置合わせ可能で、走行時の架空線点検装置の姿勢変化に柔軟に対応できる架空線点検装置用の回収装置を提供する。
【解決手段】回収装置1は、架空線W上の架空線点検装置101に向かって無線制御の走行体2で架空線W上を自走し、架空線点検装置101を連結して回収可能な位置まで牽引又は推進して移動させる。走行体2のフレーム5にコイルばね6を介して磁石7が設けられ、これが、架空線点検装置101の磁気吸着部103に吸着する。コイルばね6は、基端側において、フレーム5に上下動可能に設けられたばね受け座9に支持され、磁石7を全方向首振り自在に支持する。磁石7と磁気吸着部103の相互位置を位置確認カメラ8からの画像で確認しつつ、ばね受け座9を無線操作の駆動手段10で移動し、磁石7の上下位置を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線上を延線方向前後に自走し前記架空線又はこれと並行する他の架空線を撮影して画像データを遠隔の記憶装置へ無線送信する架空線点検装置が前記架空線上で自走不能となったとき、当該架空線上を前記架空線点検装置に向かって無線制御の走行体により自走し、当該架空線点検装置を回収可能な位置まで移動させる回収装置であって、
前記走行体のフレームの前後方向少なくとも一端側にコイルばねを介して取り付けられ前記架空線点検装置の前後方向少なくとも一端に設けられた磁気吸着部に吸着するように設けられた磁石と、
前記フレームに取り付けられ前記磁石と前記磁気吸着部を撮影して相互位置を確認可能な画像データを遠隔の受信装置へ無線送信する位置確認カメラとを具備し、
前記コイルばねは、基端側において前記フレームに上下動可能に設けられたばね受け座に支持され、前記架空線に対してほぼ平行に延び、先端側において前記磁石を所定角度範囲で全方向首振り自在に支持し、
前記ばね受け座は、無線操作可能な駆動手段により、前記磁石の上下位置を調整可能に設けられることを特徴とする架空線点検装置用回収装置。
【請求項2】
前記ばね受け座は、前記フレームに設けられたガイド部材に上下動自在に支持され、
前記駆動手段は、前記フレームに設けられた送りねじナット機構と、当該送りねじナット機構を操作するように前記フレームに設けられた無線操作可能な駆動モータとを具備することを特徴とする請求項1に記載の架空線点検装置用回収装置。
【請求項3】
前記コイルばねは、一端が当該コイルばねの先端部に係止され、斜め上方に延び、他端が前記フレームに係止された引張りばねにより、前記架空線に対する平行状態を維持するように弾性的に保持されることを特徴とする請求項1に記載の架空線点検装置用回収装置。
【請求項4】
架空線上を延線方向前後に自走して前記架空線又はこれと並行する他線を撮影して画像データを遠隔の記憶装置へ無線送信する架空線点検装置が前記架空線上で自走不能となったとき、無線制御の走行体により前記架空線点検装置に向かう前方へ当該架空線上を自走し、当該走行体に支持された磁気吸着手段により前記架空線点検装置を吸着し、回収可能な位置まで移動させる回収装置であって、
前記走行体は、前端面、後端面及びこれらと直交方向の左右側面を有するフレームと、当該フレームに支持され前記架空線およびそれに固着された支障部材の上部を受け入れ可能な凹部を有し当該架空線上を前後に移動自在の無線制御のクローラと、前記フレームの後端側に枢着され後方へ延出するブラケットの先端に軸支され前記架空線上を転動する脱線防止ローラとを具備し、
前記磁気吸着手段は、前記フレームの前端面にコイルばねを介して上下位置調整自在に取り付けられ前記架空線点検装置の前後方向少なくとも一端に設けられた磁気吸着部に吸着するように設けられた磁石と、前記フレームに取り付けられ前記磁石と前記磁気吸着部を撮影して相互位置を確認可能な画像データを遠隔の受信装置へ無線送信する位置確認カメラとを具備し、
前記コイルばねは、基端側において前記フレームに上下動可能に設けられたばね受け座に支持され、前記架空線に対してほぼ平行に延び、先端側において前記磁石を所定角度範囲で全方向首振り自在に支持し、
前記ばね受け座は、無線操作可能な駆動手段により、前記磁石の上下位置を調整可能に設けられることを特徴とする架空線点検装置用回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線上を自走しながら当該架空線又はこれと並行する他線を撮影して画像データを遠隔の受信装置へ送る架空線点検装置が、架空線上で走行不能に陥ったとき、同じ架空線上を自走して架空線点検装置を連結し、これを牽引又は推進して、作業者が待機する鉄塔等まで移送する回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空線上を自走しながら当該架空線又はこれと並行する他線を撮影して画像データを遠隔の受信装置へ送る架空線点検装置が知られている(例えば特許文献1,2)。また、そのような架空線点検装置が架空線上で走行不能に陥ったとき、同じ架空線上を自走して架空線点検装置を連結し、これを牽引又は推進して、作業者が待機する鉄塔等まで移送する回収装置も知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-60286公報
【特許文献2】特開2013-62946公報
【特許文献3】実開昭62-125310公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に記載された回収装置は、架空線点検装置に連結する相互チャッキング機構を有するが、このチャッキング機構は、相互の連結可能範囲が小さく、連結部の位置合わせ操作ができず、また装置相互間の姿勢変化に柔軟に対応することができない。このため、架空線点検装置が、架空線上に取り付けられているダンパのような支障物の上に乗り上げて停止しているような場合、チャッキング機構の連結が困難となる。また、回収装置と架空線点検装置を連結して支障物を乗り越えるとき、装置間の姿勢変化に対応できず、走行を阻害し、あるいは無理な反力による連結部の離脱、損傷を生じるおそれがある。
したがって、本発明は、回収装置と架空線点検装置との連結可能範囲が広く、必要に応じて連結状態を確認しつつ連結部の位置合わせ操作を行うことができ、また、走行時の回収装置と架空線点検装置との間の姿勢変化に柔軟に対応できる架空線点検装置用の回収装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の架空線点検装置用の回収装置1は、架空線W上で自走不能となった架空線点検装置101に向かって無線制御の走行体2により架空線W上を自走し、架空線点検装置101を連結して回収可能な位置まで牽引又は推進して移動させる回収装置である。回収装置1は、走行体2のフレーム5の前後方向少なくとも一端側にコイルばね6を介して取り付けられた磁石7を具備し、この磁石7が、架空線点検装置101の前後方向一端に設けられた磁気吸着部103に吸着するように構成される。フレーム5には、磁石7と磁気吸着部103を撮影して相互位置を確認可能な画像データを遠隔の受信装置へ無線送信する位置確認カメラ8が取り付けられる。コイルばね6は、基端側において、フレーム6に上下動可能に設けられたばね受け座9に支持され、架空線Wに対してほぼ平行に延び、先端側において磁石7を所定角度範囲で全方向首振り自在に支持する。ばね受け座9は、無線操作可能な駆動手段10により、磁石7の上下位置を調整可能に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、架空線点検装置と回収装置との連結が、磁石7の吸着によるであり、しかも磁石7が全方向首振り自在にコイルばね6に支持されるため、相互の連結可能範囲が広く、また走行時の回収装置1と架空線点検装置101との間の姿勢変化に柔軟に対応できる。位置確認カメラ8からの画像を確認しつつ、コイルばね6のばね受け座9を遠隔操作で上下動させることで、架空線点検装置101に対する磁石の吸着位置を調整し、あるいは走行中の回収装置1と架空線点検装置101との上下方向相対位置を変化させることができるので、相互の連結部に無理な応力がかからず、また安定して支障物を乗り越えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の回収装置と回収対象である架空線点検装置の使用状態の正面図である。
図2図1の回収装置と架空線点検装置の平面図である。
図3図1の回収装置の正面図である。
図4図1の回収装置の平面図である。
図5図1の回収装置の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1,2において、101は架空線点検装置であり、架空線W上を走行体102により延線方向前後に自走して架空線W又はこれと並行する図示しない他線をカメラ104で撮影して画像データを遠隔の記憶装置へ無線送信するものである。走行体102の前後方向一端には、平板状の磁気吸着部103を備える。
【0009】
回収装置1は、架空線点検装置101が架空線W上で自走不能となったとき、これに向かって無線制御の走行体2により架空線W上を自走し、架空線点検装置101を連結して、例えば作業者が待機する鉄塔のような回収可能な位置まで架空線点検装置101を牽引又は推進して移動させるものである。
【0010】
回収装置1は、架空線Wの上に装着される走行体2の下方に、吊支部3を介して、駆動モータ、バッテリ、受送信装置等の付属機器4を吊って、架空線W上を走行する。
【0011】
走行体2のフレーム5の前後方向一端側にコイルばね6を介して取り付けられた磁石7を具備する。以下、走行体2について、磁石7が取り付けられた側を前方として説明する。この磁石7が、架空線点検装置101の磁気吸着部103に吸着して回収装置1と架空線点検装置101とを連結するように構成される。
【0012】
図3ないし図5によく示すように、フレーム5には、磁石7と磁気吸着部103とを撮影して相互位置を確認可能な画像データを遠隔の受信装置へ無線送信する位置確認カメラ8が取り付けられる。
【0013】
コイルばね6は、基端側において、フレーム5に上下動可能に設けられたばね受け座9に支持され、架空線Wに対してほぼ平行に延び、先端側において磁石7を所定角度範囲で全方向首振り自在に支持する。
【0014】
ばね受け座9は、フレーム5に設けられたガイド部材24に上下動自在に支持され無線操作可能な駆動手段10により、磁石7の上下位置を調整可能に設けられる。コイルばね6は、それの先端部とフレーム5の上部(フレーム5に固定されたガイド部材24の上部)との間に斜めに張られた引張りばね11により、磁石7の重量による撓みを補正して架空線に対する平行状態を維持するように弾性的に保持される。
【0015】
駆動手段10は、フレーム5に設けられた送りねじナット機構12と、これを駆動するモータ13とを具備する。モータ13は、遠隔位置から位置確認カメラ8の画像を見ながら無線操作される。
【0016】
走行体2は、フレーム5の前後に設けられたプーリ14,15に掛け回されたクローラ16を架空線Wの上で転動させて走行する。駆動プーリ15は、走行体2の下方に吊られたバッテリ駆動のモータ17(図5)に伝動機構18を介して接続され、無線操作により駆動される。
【0017】
図5によく示すように、クローラ16は、V字状の凹部を有する多数のラグ19を具備し、この凹部に架空線W及びこれに装着されているスリーブS、ダンパDの把持部等の支障物を受け入れて架空線W上を転動する。
【0018】
走行体2の後部には、後方へ延出するブラケット20の先端部に軸支された脱線防止ローラ21が設けられる。ブラケット20は、基端部において、走行体2のフレーム5に枢着され、起立倒伏自在である。ブラケット20は、走行体2の走行時に倒伏し、脱線防止ローラ21を架空線W上で転動させるが、非走行時には、起立状態でローラキャッチ22に保持される。脱線防止ローラ21は、ブラケット20により、クローラ16から後方へ所定距離離れた位置に配置される。脱線防止ローラ21は、架空線W及びこれに装着された支障物であるスリーブS、ダンパD等を受け入れる概略V字状の環状凹部21aを具備する。
【0019】
脱線防止ローラ21は、スリーブS、ダンパD等の支障物にぶつかると、上下動して円滑にこれを受け入れて通過できる。走行時に、脱線防止ローラ21がクローラ16から離れた位置において架空線Wに嵌まりながら転動することで、クローラ16が支障物を通過する際に、装置の姿勢を矯正し、脱線を防止する。クローラ16が支障物を通過する際には、脱線防止ローラ21は必ず支障物から離れた位置にある。
【0020】
架空線W上で走行不能となった架空線点検装置101を回収装置1を用いて回収する作業について説明する。
【0021】
架空線W上の架空線点検装置101の磁気吸着部103側の鉄塔上から架空線W上に、磁石7を架空線点検装置101に向けて、回収装置1を装着する。無線操作で回収装置1を自走させ、架空線点検装置101に接近させる。架空線点検装置101との距離は位置確認カメラ8からの画像で確認できる。
【0022】
回収装置1が架空線点検装置101に所定位置まで接近したら、位置確認カメラ8からの画像により、磁石7と磁気吸着部103の相対位置を確認しながら、無線操作でばね受け座9を上下動させることにより、磁石7を磁気吸着部103の最適な位置に配置する。この状態で、回収装置1をさらに架空線点検装置101に接近させ、磁石7を磁気吸着部103に吸着させて、両装置1,101を連結する。
【0023】
連結後、状況に応じて、回収装置1で、架空線点検装置101を図において左後方へ牽引するか、右前方へ推進するか、いずれかの方法で、作業者が待機する鉄塔まで移動させる。
【0024】
例えば、牽引中に架空線点検装置101が支障物を乗り越える際、磁石7はコイルばね6の弾性撓みで上下左右に動作することで、架空線点検装置101の上下左右への挙動に対応できる。また、その際、回収装置1と架空線点検装置101が連結状態にあることで、架空線点検装置101が支障物を乗越えようと前方を持ち上げようとする動きを回収装置1が抑え込んでしまう可能性がある。この場合には、磁石7を遠隔操作によって上方へ動かし、架空線点検装置101の前方を持上げることで、スムーズに支障物を通過させることができる。架空線W上に取り付けられることがある図示しない難着雪リングが、装置の走行中に架空線Wから離脱することも予想されるが、これは、落下防止ネット23に受け止められ、落下することがない。
【符号の説明】
【0025】
1 回収装置
2 走行体
3 吊支部
4 付属機器
5 フレーム
6 コイルばね
7 磁石
8 位置確認カメラ
9 ばね受け座
10 駆動手段
11 引張りばね
12 送りねじナット機構
13 モータ
14 プーリ
15 プーリ
16 クローラ
17 モータ
18 伝動機構
19 ラグ
20 ブラケット
21 脱落防止ローラ
21a 環状凹部
22 ローラキャッチ
23 落下防止ネット
24 ガイド部材
101 架空線点検装置
102 走行体
103 磁気吸着部
104 カメラ
D ダンパ
S スリーブ
W 架空線
図1
図2
図3
図4
図5