(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156175
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】運動訓練システム、運動訓練装置、表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20221006BHJP
A63B 21/005 20060101ALI20221006BHJP
A63B 23/12 20060101ALI20221006BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61H1/02 K
A63B21/005
A63B23/12
A63B24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059733
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 達也
(72)【発明者】
【氏名】日原 康太
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA04
4C046AA05
4C046AA09
4C046AA42
4C046AA45
4C046BB04
4C046BB05
4C046DD02
4C046DD14
4C046DD33
4C046EE02
4C046EE06
4C046FF12
4C046FF22
4C046FF25
(57)【要約】
【課題】運動訓練システムや運動訓練装置において、更なる訓練効果が得られるように表示の仕方を工夫することが求められている。
【解決手段】操作部は、XY平面で移動可能である。駆動部は、X軸およびY軸方向駆動モータを有し、操作部をXY平面で駆動する。力センサは、操作部を操作する使用者から操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する。PCは、X軸およびY軸方向駆動モータを制御する。モニターは、力センサにより検出されるX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F
0の方向と大きさを同時に表示可能である。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XY平面で移動可能な操作部と、
X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、
前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、
前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、
前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能な表示部と、
を備えたことを特徴とする運動訓練システム。
【請求項2】
前記表示部は、同一の中心を有し半径が異なる複数の円からなるチャートを表示可能であり、
前記中心からの周方向の位置が前記合成力F0の方向を示し、前記中心からの距離が前記合成力の大きさを示すように、前記力センサの検出結果がプロットされる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の運動訓練システム。
【請求項3】
前記XY平面における前記操作部の位置を検出する位置検出手段を備え、
前記表示部は、前記合成力F0の方向と大きさを同時に表示する第1チャートと、前記位置検出手段により検出された前記操作部の位置を示す第2チャートとを、同じ時系列で表示可能である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の運動訓練システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記第1チャートの或る位置を指定した場合に、その位置に対応した時間における前記操作部の位置と速度を前記第2チャートに表示可能である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の運動訓練システム。
【請求項5】
前記表示部は、前記第2チャートの或る位置を指定した場合に、その位置に対応した時間における前記合成力F0の方向と大きさを前記第1チャートに表示可能である、
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載の運動訓練システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記使用者により操作されて前記XY平面を移動する前記操作部の位置が所定の領域内にあることを前記位置検出手段が検出するとき、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさに基づいた第1速度ベクトルに応じて前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御し、前記使用者により操作されて前記XY平面を移動する前記操作部の位置が前記所定の領域から外れていることを前記位置検出手段が検出するとき、前記第1速度ベクトルと、前記操作部を前記所定の領域内に戻すように作用する第2速度ベクトルとに応じたアシスト方向に前記操作部を移動させるアシスト力FAを発生させるように、前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御するアシストモードを実行可能であり、
前記表示部は、前記アシストモードを実行した場合に、前記第2チャートに前記アシスト力FAが発生した個所と発生していない個所とを区別して表示する、
ことを特徴とする、請求項3ないし5の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項7】
前記表示部は、前記アシストモードを実行した場合に、前記第1チャートに前記アシスト力FAが発生した個所と発生していない個所とを区別して表示する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の運動訓練システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさが所定の範囲内である場合に、前記操作部を所定の軌道に沿って移動させるように前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御し、前記合成力F0の大きさが前記所定の範囲を超える場合に、前記操作部を現在位置から前記所定の軌道上の次の目標位置に向かわせる大きさの第1速度ベクトルと、前記合成力F0の大きさに基づいた大きさの第2速度ベクトルとに応じて、前記操作部を現在位置から移動させるように前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する自動モードを実行可能であり、
前記表示部は、前記自動モードで前記所定の軌跡に沿って前記操作部を移動させる訓練を複数回繰り返して行った場合に、所定回数以上同じ位置で前記合成力F0の大きさが前記所定の範囲を超える場合、その位置が他の位置と区別できるように表示する、
ことを特徴とする、請求項1ないし7の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさが所定の範囲内である場合に、前記操作部を所定の軌道に沿って移動させるように前記X軸およびY軸方向駆動モータを駆動し、前記合成力F0の大きさが前記所定の範囲を超える場合に、前記操作部を現在位置から前記所定の軌道上の次の目標位置に向かわせる大きさの第1速度ベクトルと、前記合成力F0の大きさに基づいた大きさの第2速度ベクトルとに応じて、前記操作部を現在位置から移動させるように前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する自動モードを実行可能であり、
前記表示部は、前記自動モードで前記所定の軌跡に沿って前記操作部を移動させる訓練を複数回繰り返して行った場合に、訓練の最初にある位置で前記合成力F0の大きさが前記所定の範囲を超えており、回数が進むにつれてその位置における前記合成力F0の大きさが小さくなっていた場合、その訓練が正しかった旨を表示する、
ことを特徴とする、請求項1ないし7の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項10】
前記表示部は、所定の訓練を行っている場合に、前記操作部の位置に応じて前記合成力F0の方向又は大きさが異常である場合に、その旨を表示する、
ことを特徴とする、請求項1ないし9の何れか1項に記載の運動訓練システム。
【請求項11】
XY平面で移動可能な操作部と、
X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、
前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、
前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、表示部に対し、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能である、
ことを特徴とする運動訓練装置。
【請求項12】
XY平面で移動可能な操作部と、
X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、
前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、
前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、
表示部と、を備えた運動訓練システムにおいて、前記表示部に情報を表示する表示方法であって、
前記力センサにより前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0を検出する第1工程と、
前記第1工程で前記力センサにより検出された前記合成力F0の方向と大きさを、前記表示部に同時に表示する第2工程と、を有する、
ことを特徴とする表示方法。
【請求項13】
XY平面で移動可能な操作部と、
X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、
前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、
前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、
表示部と、を備えた運動訓練システムに用いられるプログラムであって、
前記力センサにより前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0を検出する第1工程と、
前記第1工程で前記力センサにより検出された前記合成力F0の方向と大きさを、前記表示部に同時に表示する第2工程と、をコンピュータにより実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の平面運動を支援可能な運動訓練システム、運動訓練装置、及び、運動訓練システムに用いられる表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動機能を向上させるために様々な運動訓練が行われている。例えば、机上を拭くような動作で肩や肘を屈伸させるワイピング訓練や傾斜したボード上で手を上下方向に滑動させるサンディング訓練が広く行われている。そして、これらの運動訓練を支援するために種々の運動訓練装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し操作部をXY平面で駆動する駆動部と、操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、力センサで検出されたX軸およびY軸方向の力Fx,Fyに基づいてX軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部とを備えた運動訓練装置が開示されている。また、特許文献1には、使用者の運動訓練中または訓練後の操作部の軌跡や負荷変動をモニターに表示可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、運動訓練システムや運動訓練装置において、更なる訓練効果が得られるように表示の仕方を工夫することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運動訓練システムは、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能な表示部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の運動訓練装置は、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、表示部に対し、前記力センサにより検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の表示方法は、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、表示部と、を備えた運動訓練システムにおいて、前記表示部に情報を表示する表示方法であって、前記力センサにより前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0を検出する第1工程と、前記第1工程で前記力センサにより検出された前記合成力F0の方向と大きさを、前記表示部に同時に表示する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプログラムは、XY平面で移動可能な操作部と、X軸およびY軸方向駆動モータを有し、前記操作部をXY平面で駆動する駆動部と、前記操作部を操作する使用者から前記操作部に作用するX軸およびY軸方向の力Fx,Fyを検出する力センサと、前記X軸およびY軸方向駆動モータを制御する制御部と、表示部と、を備えた運動訓練システムに用いられるプログラムであって、前記力センサにより前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0を検出する第1工程と、前記第1工程で前記力センサにより検出された前記合成力F0の方向と大きさを、前記表示部に同時に表示する第2工程と、をコンピュータにより実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、更なる訓練効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の運動訓練装置の装置本体の斜視図。
【
図3】第1アクチュエータ機構の詳細を示す断面図。
【
図4】第2アクチュエータ機構の詳細を示す断面図。
【
図7】自動モードにおいて、操作部から力センサへの入力値が所定の範囲内の場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図8】自動モードにおいて、操作部から力センサへの入力値が所定の範囲を超える場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図9】自動モードにおいて、操作部から力センサへの入力値が所定の範囲を超える場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図10】自動モードにおいて、操作部から力センサへの入力値が所定の範囲を超える場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図11】自動モードにおいて、操作部から力センサへの入力値が所定の範囲を超えかつ所定の値を超える場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図12】アシストモードの運動訓練開始時において操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図13】アシストモードで使用者により操作される操作部の位置が所定の目標領域内にある場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図14】アシストモードで使用者により操作される操作部の位置が所定の目標領域から外れた場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図15】アシストモードで使用者により操作される操作部の位置が所定の目標領域から外れた後、所定の目標領域内に戻った場合に、操作部に作用する力と速度ベクトルとの関係を説明する図。
【
図16】力センサにより検出される合成力の大きさや方向を示す第1チャートと、エンコーダにより検出された操作部3の位置を軌跡と共に示す第2チャートを示す図。
【
図17】モニターに表示される画面の一例を示す図。
【
図18】モニター内の設定表示エリアのみを示す図。
【
図19】モニター内の軌道表示エリアのみを示す図。
【
図20】モニター内の力覚表示エリアのみを示す図。
【
図21】第1チャート及び第2チャートにおいて、クリックした位置に情報を表示した状態を示す図。
【
図22】(a)アシストモードにおける合成力の方向と大きさを示す図、(b)同じく操作部の位置を示す図。
【
図23】(a)自動モードにおける合成力の方向と大きさを示す図、(b)同じく操作部の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明が適用可能な実施形態の運動訓練装置について説明する。なお、本実施形態の運動訓練装置は略水平な載置面に載置され、例えば、使用者(運動訓練者)の上肢の運動機能向上を目的として行われる運動訓練に使用される(
図1参照)。運動訓練装置1は、
図1に示すように、操作部3を有し、使用者Uは運動訓練装置1の前側に位置し、例えば上肢運動訓練を行うために、右腕ULを前方に伸ばして操作部3を右手で把持している。尚、本明細書中では、
図1の運動訓練装置1における使用者Uの手前側を前側、奥側を後側と称することとする。
【0013】
運動訓練装置1は、装置本体100と、PC(パーソナルコンピューター)70とを有する。また、本実施形態では、これら装置本体100及びPC70に加えて、運動訓練装置1の情報を表示するモニター76を含めて運動訓練システム1000を構成している。なお、PC70は、運動訓練システム1000全体を制御する制御部であり、制御プログラムがインストールされた汎用性のあるPCでも良いし、運動訓練装置1専用のものであっても良い。いずれにしても、制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0014】
装置本体100は、XY平面(載置面および基台2と平行な水平面)で移動可能な操作部3、操作部3をXY平面で駆動する駆動部200などを有する。これら操作部3や駆動部200は、基台2上に配置されている。駆動部200は、X軸およびY軸方向駆動モータとしての第1モータ6及び第2モータ30を有する。具体的には、駆動部200は、第1モータ6を有し、操作部3をX軸方向(
図2の矢印Xの方向)に移動させる第1アクチュエータ機構AXと、第2モータ30を有し、操作部3及び第1アクチュエータ機構AXをY軸方向(
図2の矢印Yの方向)に移動させる第2アクチュエータ機構AYとを備えている。
【0015】
操作部3は、ハンドル部材62に作用するX軸およびY軸方向の力を検出する力センサ60(
図5参照)を備えている。PC70は、力センサ60、モータ制御部27,31及びモニター76に接続されている。X軸およびY軸方向駆動モータ6,30は、XY平面での操作部3の位置を検出する位置検出手段としてのエンコーダ6a、30a(
図6)と一体に構成されている。
【0016】
これらの構成により、制御部としてのPC70は、力センサ60やエンコーダ6a、30aからの入力値に基づいて、モータ制御部27,31を介して第1モータ6及び第2モータ30の駆動を制御し、操作部3をXY平面上で移動させ、訓練情報や操作部3の移動軌跡等をモニター76に表示する。
【0017】
以下、
図2~
図5に基づいて各構成について詳細に説明する。操作部3は、第1スライダーブロック4(第1保持部材)に取付プレート5を介して取り付けられており、第1スライダーブロック4と一体となって移動するように構成されている。第1スライダーブロック4は、XY平面上のX軸方向に延設した第1ガイドロッド9aおよび9bに沿ってスライド可能に設けられている。そして、第1ベルト10の一部は、ベルト固定プレート28とビス29によって第1スライダーブロック4に固定されている。これにより、第1ベルト10が第1モータ(X軸方向駆動モータ)6によって回転駆動すると、第1スライダーブロック4は第1ガイドロッド9a,9bに沿ってX軸方向にスライド移動する。
【0018】
図3に示す通り、第1アクチュエータ機構AXの第1モータ6の駆動は、軸13、プーリー14、ベルト15、プーリー17および軸16を介してプーリー18に伝達される。第1モータ6は支持板21に設けられており、支持板21は支持板11に固定されている。支持板11は、軸16を回転可能に支持し、第2スライダーブロック7とモータ制御部27を固定支持している。なお、支持板11及び第2スライダーブロック7を併せて第1ガイドロッド9a,9bの一端およびプーリー18を保持する第2保持部材という。
【0019】
X軸方向において第1モータ6の反対側には、支持板12,24が設けられている。支持板12,24は、軸19を回転可能に支持し、第3スライダーブロック8を固定支持している。軸19にはプーリー20が設けられており、プーリー18とプーリー19との間に第1ベルト10が架け渡されている。また、第1ガイドロッド9a,9bの一端は第2スライダーブロック7に固定支持され、第1ガイドロッド9a,9bの他端は第3スライダーブロック8に固定支持されている。なお、支持板12,24及び第3スライダーブロック8を併せて第1ガイドロッド9a,9bの他端およびプーリー20を保持する第3保持部材という。
【0020】
上述した通り、第1スライダーブロック4は、第1ベルト10の一部が固定されており、第1モータ6を駆動するとプーリー18が回転してプーリー19と共に第1ベルト10が回転する。このため、第1スライダーブロック4は、第1ガイドロッド9a,9bに沿ってX軸方向にスライド移動する。なお、第1ベルト10と第1ガイドロッド9a,9bは、それぞれX軸方向に平行で且つ第1ベルト10の両側に第1ガイドロッド9aと9bが配置され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0021】
図2に示す様に、第1アクチュエータ機構AXが有する第2スライダーブロック7と第3スライダーブロック8は、第2ガイドロッド55と第3ガイドロッド48に対してY軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第2ベルト53と第3ベルト46が回転することで、第1アクチュエータ機構AX全体がY軸方向に移動可能となっている。
図3に示す通り、第2ベルト53の一部は、第2スライダーブロック7に固定された支持板21に設けられたベルト固定プレートにビス23によって固定されている。また、第3ベルト46の一部は、第3スライダーブロック8に固定された支持板24に設けられたベルト固定プレート25にビス26によって固定されている。そして、第2アクチュエータ機構AYの第2モータ(Y軸方向駆動モータ)30が回転駆動することによって第3ベルト46および第2ベルト53が回転し、それにより第1アクチュエータ機構AXはY軸方向にスライド移動する。
【0022】
次に、
図2と
図4を用いて第2アクチュエータ機構AYについて説明する。第2アクチュエータ機構AYは、第1アクチュエータ機構AXをY軸方向に移動させるための機構である。第2モータ30およびモータ制御部31は、基台2に設けられた支持板34,支柱33および支持板32からなる支持フレームの上部に設けられている。この支持フレームは使用者Uと反対の装置奥側(基台2のモニター76側)の中央部に固定されている。
【0023】
第2モータ30には不図示の軸およびプーリーが設けられており、プーリー36との間でベルト37が架け渡されている。支持板32と34との間には軸35が回転可能に支持され、この軸35にはプーリー37,38および39が設けられており、プーリー36の回転力が軸35を通じてプーリー38および39に伝達される。
【0024】
支持フレーム32~34のX軸方向の両側には、コの字に形成された支持板45a,52aが設けられている。支持板45aは、軸43を回転可能に支持しており、軸43にプーリー42と44aが設けられている。プーリー38とプーリー42にはベルト40が架け渡されており、第2モータ30の回転駆動をベルト37,プーリー36,軸35,プーリー38,ベルト40,プーリー42および軸43を介してプーリー44aに伝達する。つまり、ベルト40は、第2モータ30の駆動を第3ベルト46に伝達するための第5ベルトである。
【0025】
支持板45a近傍にはガイド支持部47aが設けられており、第3ガイドロッド48の一端を支持している。また、基台2上で支持板45aのY軸方向における反対側(装置右手前側)には、支持板45aの対となる支持板45bとガイド支持部47aの対となるガイド支持部47bとが配置されている。
【0026】
支持板45bは、軸43bを回転可能に支持し、軸43bにはプーリー44aの対となるプーリー44bが設けられている。第3ベルト46はプーリー44aと44bとの間で架け渡されており、上述した通りその一部が第3スライダーブロック8と一体に移動するベルト固定プレート25に固定されている。また、ガイド支持部47bは、第3ガイドロッド48の他端を支持し、ガイド支持部47aと共に第3ガイドロッド48を固定支持している。第3ベルト46と第3ガイドロッド48とはそれぞれY軸方向に平行に延設され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0027】
X軸方向において支持フレームに対して支持板45aの反対側(基台2の左奥側)には、支持板52aが配置されている。支持板52aは、軸49を回転可能に支持しており、軸49にプーリー50と51aが設けられている。プーリー39とプーリー50には、ベルト41が架け渡されており、第2モータ30の回転駆動をベルト37,プーリー36,軸35,プーリー39,ベルト41,プーリー50および軸49を介してプーリー51aに伝達する。つまり、ベルト41は、第2モータ30の駆動を第2ベルト53に伝達するための第4ベルトである。
【0028】
支持板52a近傍にはガイド支持部54aが設けられており、第2ガイドロッド55の一端を支持している。また、基台2上で支持板52aのY軸方向における反対側(装置左手前側)には支持板52aの対となる支持板52bとガイド支持部54aの対となるガイド支持部54bとが配置されている。
【0029】
支持板52bは軸49bを回転可能に支持し、軸49bにはプーリー51aの対となるプーリー51bが設けられている。第2ベルト53は、プーリー51aと51bとの間で架け渡されており、上述した通りその一部が第2スライダーブロック7と一体に移動するベルト固定プレート22に固定されている。また、ガイド支持部54bは、第2ガイドロッド55の他端を支持し、ガイド支持部54aと共に第2ガイドロッド55を固定支持している。第3ベルト46と第3ガイドロッド48とは、それぞれY軸方向に平行に延設され、基台2からの高さ位置は略同一となっている。
【0030】
上述した通り、第2モータ30の回転駆動はプーリー44aとプーリー51aに伝達され、第3ベルト46と第2ベルト53が回転する。これにより、第3ベルト46と第2ベルト53にそれぞれ固定された第3スライダーブロック8と第2スライダーブロック7(つまり第1アクチュエータ機構AX全体)が第2ガイドロッド8と第2ガイドロッド55に沿ってY軸方向にスライド移動する。
【0031】
ここで、
図4を参照するとベルト40とベルト41とは、X軸方向に平行に延設しているが、高さ方向の位置(基台2からの距離)が異なっている。具体的には、ベルト40の下方にベルト41が配置されている。そして、この高さ方向において、第3ベルト46、第3ガイドロッド48、第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、ベルト40とベルト41との間で略同一高さに配置されている。
【0032】
また、
図2及び
図3を参照すると、操作部3をX軸方向に移動させるための第1ガイドロッド9a,9bおよび第1ベルト10は、操作部3および第1アクチュエータ機構AXをY軸方向に移動させるための第3ガイドロッド48と第2ガイドロッド55との間で、且つ、Y軸方向に平行に配置された第3ガイドロッド48,第3ベルト46,第2ガイドロッド55および第2ベルト53に対して直交するX軸方向に延設するように配置されている。そして、これらの第1ベルト10,第1ガイドロッド9a・9b,第3ベルト46,第3ガイドロッド48,第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、高さ方向においてベルト40とベルト41との間に配置されている。これにより、運動訓練装置の高さ方向の寸法を薄く構成することができる。
【0033】
言い換えると、
図4において基台2からプーリー44a,51aの上端までの距離(XY平面と直交する方向、つまり高さ)をL1、基台2からプーリー44a,51aの下端までの距離をL2、基台2からプーリー38,42の下端までの距離をL3、基台2からプーリー39,50までの距離をL4としたときに、以下の関係が成り立つように各部材が配置されている。「L1>L2」「L3>L1」「L2>L4」。よって、「L3>L1>L2>L4」となり、プーリー44aとプーリー51aとはL3とL4との間に配置されている。そして、ベルトはそれぞれプーリーの上端と下端との間で架け渡されており、第3ベルト46,第2ベルト53の高さ方向における中央と第3ガイドロッド48,第2ガイドロッド55の高さ方向の中央とが略同一で、第3ガイドロッド48の上端がベルト40に干渉せず、第2ガイドロッド55の下端がベルト41に干渉しないように配置されている。
【0034】
また、
図3において基台2とプーリー18,19の上端までの距離がL1、基台2とプーリー18,19の下端までの距離がL2となるように配置されている。以上から、第1ベルト10、第1ガイドロッド9a,9b、第3ベルト46、第3ガイドロッド48、第2ベルト53および第2ガイドロッド55は、高さ方向においてL3とL4との間、すなわちプーリー38,42の下端とプーリー39,50の上端との間で重複して配置されている。
【0035】
また、第1ベルト10は第1ガイドロッド9a,9bに挟まれるように配置されている。よって、使用者Uが操作部3に力を加えた際に第1ガイドロッド9aまたは9bを中心に回転する力を受けることができ、回転方向の移動を抑えることができる。
【0036】
操作部3は、
図1に示すように第1スライダーブロック4の前方向に配置され、
図5に示すように、比較的短い垂直な操作ロッド61と、その上端に設けられたハンドル部材62とからなる。本実施形態のハンドル部材62は、使用者Uの上肢ULの運動機能を訓練するために片手で掴むことができるように、比較的厚い小型の円形ディスク状に形成されている。ハンドル部材62は、使用者Uが掴んだ手で回すことができるように、操作ロッド61を中心に回動可能に取り付けられる。
【0037】
また、操作部3は、操作ロッド61に一体に設けられた力センサ60を有する。力センサ60は、取付プレート5を介して、第1アクチュエータ機構AXのスライダーブロック4に一体に固定されている。力センサ60は、使用者Uが自力で操作部3を動かす能動訓練モード及び操作部3の力で上肢又は下肢を動かす受動訓練モードのいずれにおいても、ハンドル部材62から操作ロッド61に作用する使用者Uの力を検出する。本実施形態では、力センサ60として、歪みゲージを用いた6軸力覚センサが採用されている。
【0038】
一般に、6軸力覚センサは、直交する3軸方向x,y,zの力(Fx,Fy,Fz)とx,y,z3軸周りのモーメント(Mx,My,Mz)とを検出することができる。本実施形態では、6軸力覚センサを、そのX軸及びY軸が、第1アクチュエータ機構AXの左右方向(第1ガイドロッド9a,9bと平行な方向)及び前後方向(第3ガイドロッド48および第3ガイドロッド53と平行な方向)とそれぞれ一致するように配向する。
【0039】
これにより、力センサ60は、使用者Uの上肢又は下肢が操作部3を動かし又は該操作部により動かされるとき、操作ロッド61が使用者Uの上肢又は下肢から直接受ける力を、前後方向の力成分と左右方向の力成分とそれらに直交する垂直方向の力成分とに分けて、更に前後方向、左右方向及び垂直方向の各軸周りにそれぞれ作用するモーメントとして、検出することができる。
【0040】
実際の運動訓練装置1の使用において、力センサ60が検出する前後方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)及び垂直方向(XY平面と直交する高さ方向)の力成分は、第1及び/又は第2駆動モータ6、30の回転力と使用者Uが操作部3に及ぼす力との差分、即ち操作部3が使用者Uの上肢又は下肢から受ける抗力として検出される。
【0041】
上述のように、運動訓練装置1は、第1モータ6及び第2モータ30を制御するための制御部としてのPC70を備える。PC70は、
図6に示すように、駆動制御部71と、信号制御部72と、表示制御部73と、メモリ74と、それらを制御管理するための制御CPU75とを備える。
【0042】
駆動制御部71は、モータ制御部27,31を介して第1モータ6及び第2モータ30に接続され、それらの駆動を制御する。モータ制御部27,30は、PC70の中に組み込んでもよい。信号制御部72は、力センサ60及びエンコーダ6a、30aに接続され、力センサ60及びエンコーダ6a、30aから出力される信号を受信する。表示制御部73は、モニター76に接続され、該モニター76の表示を制御する。メモリ74は、運動訓練装置1を動作させるためのプログラムに加えて、例えば使用者Uの個人データや訓練履歴等の訓練に関するデータを保存する。
【0043】
制御CPU75は、力センサ60、エンコーダ6a,30a、および不揮発性のメモリ74から入力される情報に基づいて操作部3の速度を求め、駆動制御部71に電流値(出力電流Ii、デューティ)を出力して、第1モータ6及び第2モータ30への電力供給を制御する。
【0044】
なお、本実施形態では、操作部3を取付プレート5を介して第1スライダーブロック4と高さ方向において重複する位置に設け、操作部3の下端が基台2から浮いている状態で固定する態様を示したが、取付プレート5の下面に自由回転するコロなどの摺動部材を設けて基台2上で滑らかに動くようにした上で取付プレート5の下面と基台2とが接触するように構成してもよい。これにより、使用者Uによる下方にかかる力を基台2で受けることができる。また、操作部3を第1スライダーブロック4の上部に取り付けるようにしてもよい。そうすることで操作部3の可動領域がより装置奥側に広げることができる。
【0045】
次に、本実施形態の運動訓練装置1を含む運動訓練システム1000の動作について説明する。運動訓練装置1により使用者Uが運動訓練を行う際には、例えば、使用者Uが操作部3を掴みその上から訓練指導者が使用者Uの手をとって使用者Uの上肢状況に応じた動作範囲で操作部3を移動させることで、操作部3が辿る軌跡を設定するための軌跡設定モードと、使用者Uのみが操作部3を掴み軌跡設定モードで設定された軌跡を辿ることで、使用者Uによる操作部3の位置(軌跡)とそのときに操作部3が受ける負荷とを検出するための負荷検出モードと経て、運動訓練モードで行われる。
【0046】
[運動訓練モード]
まず、運動訓練モードには、使用者Uが自ら軌跡設定モードで設定された軌跡をなぞるように操作部3を移動させる能動訓練モード(アシストモード、トレーニングモード)と、自動的に軌跡を辿る操作部3に引っ張られて運動する受動訓練モード(自動モード)とがある。受動訓練モードは主としてリハビリ中の人を対象とする運動訓練モード、能動訓練モードはリハビリ最終段階の人や健常者を対象とする運動訓練モードとして想定されている。
【0047】
[自動モード]
上述の運動訓練モードのうち、自動モードについて説明する。自動モードとは、使用者Uが操作する操作部3を所定の軌道に沿って移動させるモードであって、使用者Uが操作する操作部3が所定の軌道からずれた場合に所定の軌道上の次の目標位置に導くように、第1モータ6及び第2モータ30を制御するモードである。
【0048】
即ち、本実施形態において、PC70の制御CPU75は、操作部3から力センサ60への入力値(X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさ)が予め設定した所定の範囲内にある場合と、所定の範囲を超える場合とで、操作部3の駆動制御を切り替えて行う。所定の範囲は、所定の軌道(目標軌跡TL)に沿って移動するように駆動される操作部3を、使用者Uから受ける抵抗力を無視して、強制的に第1モータ6及び第2モータ30によって移動させても、使用者Uへの過度な負担を生じさせないように、比較的小さい値に設定される。
【0049】
具体的には、自動モードでは、制御CPU75は、力センサ60により検出されるX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさが所定の範囲内である場合には、操作部3を所定の軌道に沿って移動させるように第1モータ6及び第2モータ30を制御する。一方、合成力F0の大きさが所定の範囲を超える場合には、操作部3を現在位置から所定の軌道上の次の目標位置に向かわせる大きさの第1速度ベクトルと、合成力F0の大きさに基づいた大きさの第2速度ベクトルとに応じて、操作部3を現在位置から移動させるように第1モータ6及び第2モータ30を制御する。
【0050】
このような自動モードの一例について、
図7~
図11を用いて説明する。ここでは、制御CPU75が事前に設定した操作部3の自動モードにおける所定の軌道を目標軌跡TLとし、訓練を行う使用者Uの操作によって、目標軌跡TLから外れて操作部3が実際に移動する軌道を操作軌跡AL(不図示)とする。
【0051】
また、各図において、操作軌跡AL(不図示)上に符号LP0~LP4で示す小円は、実際に移動する操作部3の軌跡位置をそれぞれ示している。各軌跡位置LP0~LP4から延びる二重線の矢印K0~K4は、実際の操作部3に作用する速度ベクトルを示している。また、目標軌跡TL上に符号TP0で示す小円は、操作部3の現在位置を、符号TP1~TP4で示す各小円は、それぞれ操作部3の現在位置に対する次の目標位置、即ち軌跡位置LP1~LP4にそれぞれ対応する次の目標位置を示している。目標軌跡TL上の位置TP0,TP1~TP4から延びる破線の矢印R0~R4は、目標軌跡TLに沿って移動する操作部3に作用する速度ベクトルを示している。
【0052】
本実施形態において、操作部3の目標軌跡TL上の各位置TP0,TP1~TP4は、現在位置TP0を運動訓練の開始点として、一定の時間間隔で設定される。この時間間隔Δtは、自動訓練モード及び後述するアシストモードにおいて使用者のスムーズな運動訓練に支障を生じさせないように事前に設定する。制御CPU75は、運動訓練の開始と同時に、内蔵するカウンタにより現在位置TP0(LP0)を時刻t0として計時を開始し、かつΔtを加算して算出される各位置TP1~TP4の時刻t1~t4毎に、エンコーダ6a,30aから入力するパルス数に基づいて、操作部3の操作軌跡AL上の現在位置LP1~LP4を決定する。尚、各図では、目標位置TP1~TP4および軌跡位置LP1~LP4を4つずつ記載したが、これは単に説明を簡単にするためのものであって、実際には、目標軌跡上により多くの目標位置が設定される。
【0053】
図7は、操作軌跡AL上の軌跡位置LP0において、操作部3から力センサ60への入力値が所定の範囲内にある場合を示している。同図において、操作部3の現在位置である操作軌跡AL上の軌跡位置LP0は、目標軌跡TL上の位置TP0と同一である。所定の範囲は、その外郭を操作部3の中心Oを中心とする円Dで表している。操作部3の中心Oから延びる太い矢印FSは、使用者Uから操作部3に加えられる抵抗力の向きおよび大きさを表しており、その大きさ|FS|とその向きを表すX軸方向およびY軸方向成分は、力センサ60への入力値として検出される。
【0054】
図7に示すように、操作部3からの抵抗力FSが円D内にあるとき、操作部3から力センサ60への入力値の大きさ|FS|は、所定の範囲内にある。このとき、制御CPU75は、使用者Uから操作部3を介して作用する抵抗力FSを無視して、操作部3の駆動を制御する。具体的には、目標軌跡TL上の現在位置LP0(=TP0)にある操作部3には、目標軌跡TLの接線方向を向いた速度ベクトルR0のみが生じ、目標軌跡TLに沿って移動するように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。従って、操作部3を掴んだ使用者Uの手は、操作部3と共に目標軌跡TLに沿って運動訓練する。
【0055】
図8は、操作部3の現在位置LP0が、
図7と同様に目標軌跡TL上の位置TP0にあって、操作部3からの抵抗力FSが円Dの外側まで延長している場合を示している。この場合、操作部3から力センサ60への入力値の大きさ|FS|は、所定の範囲を超えているので、制御CPU75は、該入力値の大きさを考慮して、操作部3の駆動を制御する。
【0056】
具体的には、現在位置LP0=TP0にある操作部3を目標軌跡TL上から外れさせるように作用する抵抗力FSに抗して、目標軌跡TL上の位置に戻す向きに作用する復帰力FRが発生するように、第1モータ6及び第2モータ30を駆動させる。この復帰力FRは抵抗力FSよりも小さく、操作部3が目標軌跡TL上にあるので、抵抗力FSと同じ作用線上で逆向きに発生する。
【0057】
このとき、抵抗力FSと復帰力FRとの差は、抵抗力FSと同じ向きの速度ベクトルM0で表すことができる。その結果、操作部3には、目標軌跡TLに沿って移動させるようにその接線方向を向いた速度ベクトルR0と速度ベクトルM0との合成ベクトルである速度ベクトルK0が発生する。従って、操作部3は、現在位置LP0=TP0から次の目標位置TP1に向かう向きではなく、速度ベクトルK0の向きに、その大きさに対応する速度で移動する。
【0058】
図9は、操作部3が
図8の現在位置=軌跡位置LP0から次の軌跡位置LP1に移動したときに、操作部3からの抵抗力FSが円Dの外側まで延長している場合を示している。この場合も、操作部3から力センサ60への入力値の大きさ|FS|が、所定の範囲を超えているので、制御CPU75は、該入力値の大きさを考慮して、操作部3の駆動を制御する。
【0059】
具体的には、軌跡位置LP1にある操作部3を更に目標軌跡TL上から外れさせるように作用する抵抗力FSに抗して、軌跡位置LP1に対応する目標軌跡TL上の目標位置TP1、即ち操作部3が目標軌跡TLに沿って移動していれば現在あるべき位置に戻す向きに作用する復帰力FRが発生するように、第1モータ6及び第2モータ30を駆動させる。この復帰力FRは、抵抗力FSよりも小さいが、軌跡位置LP1とそれに対応する目標位置TP1との距離が大きくなるほど大きく、操作部3から目標軌跡TL上の目標位置TP1に向かう向きに発生する。
【0060】
このとき、操作部3には、現在位置する軌跡位置LP1から次の目標位置TP2を向いた速度ベクトルR1と、抵抗力FSと復帰力FRとの合力による速度ベクトルM1とが発生する。その結果、操作部3には、
図9に示すように、速度ベクトルR1と速度ベクトルM1との合成ベクトルである速度ベクトルK1が発生する。従って、操作部3は、現在位置する軌跡位置LP1から次の目標位置TP2に向かう向きではなく、速度ベクトルK1の向きに、その大きさに対応する速度で移動する。
【0061】
図10は、操作部3が
図9の現在位置LP1から次の軌跡位置LP2に移動したときに、操作部3からの抵抗力FSが円Dの外側まで延長している場合を示している。この場合も、操作部3から力センサ60への入力値の大きさ|FS|が、前記所定の範囲を超えているので、制御CPU75は、該入力値の大きさを考慮して、操作部3の駆動を制御する。
【0062】
具体的には、軌跡位置LP1にある操作部3を更に目標軌跡TL上から外れさせるように作用する抵抗力FSに抗して、軌跡位置LP2に対応する目標軌跡TL上の目標位置TP2、即ち操作部3が目標軌跡TLに沿って移動していれば現在あるべき位置に戻す向きに作用する復帰力FRが発生するように、第1モータ6及び第2モータ30を駆動させる。この復帰力FRは、抵抗力FSよりも小さいが、軌跡位置LP2とそれに対応する目標位置TP2との距離が、
図9における軌跡位置LP1と目標位置TP1との距離より大きいので、
図9の場合によりも大きく、操作部3から目標軌跡TL上の目標位置TP2に向かう向きに発生する。同図の例では、復帰力FRが、抵抗力FSと同じ作用線上で逆向きに発生している。
【0063】
このとき、操作部3には、現在位置する軌跡位置LP2から次の目標位置TP3を向いた速度ベクトルR2と、抵抗力FSと復帰力FRとの合力による速度ベクトルM2とが発生する。その結果、操作部3には、
図10に示すように、速度ベクトルR2と速度ベクトルM2との合成ベクトルである速度ベクトルK2が発生する。従って、操作部3は、現在位置する軌跡位置LP2から次の目標位置TP3に向かう向きではなく、速度ベクトルK2の向きに、その大きさに対応する速度で移動する。
【0064】
次に、
図11は、操作部3が
図34と同じ軌跡位置LP2に位置しているが、操作部3から作用する抵抗力FSが円Dの外側へ延長しているだけでなく、予め設定した所定の閾値を超えた場合を示している。このとき、
図10の場合と同様に軌跡位置LP2と目標位置TP2との距離に応じて発生させた復帰力FRに比して、抵抗力FSが過大なため、それらの差により発生する速度ベクトルM2も過大となって、操作部3の動きが速くなり過ぎる虞があり、かかる運転状態は使用者にとって危険である。
【0065】
そこで、本実施形態では、操作部3の動きが速くなっても、使用者にとって危険な運転状態とならない抵抗力FSの大きさに、所定の閾値を設定する。そして、制御CPU75は、抵抗力FSの大きさが所定の閾値を超えたとき、復帰力FRおよび軌跡位置LP2から次の目標位置TP3に向かう速度ベクトルR2を0にする。更に制御CPU75は、操作部3に対して、軌跡位置LP2と目標位置TP2との距離に応じて発生させる復帰力FRよりも大きい制動力を、抵抗力FSと逆向きに作用させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。それにより、操作部3の速度ベクトルKSを小さくし、操作部3をゆっくりと抵抗力FSの向きに移動させることができるので、使用者への危険が回避される。
【0066】
図11の場合において、上述した実施形態では、復帰力FRおよび速度ベクトルR2を0にしたが、別の実施形態では、復帰力FRを軌跡位置LP2と目標位置TP2との距離に応じて発生させる場合よりも小さく、かつ速度ベクトルR2を軌跡位置LP2から次の目標位置TP3に向かう場合よりも小さくすることができる。これによっても、同様に、操作部3の速度ベクトルKSを小さくし、操作部3をゆっくりと移動させ、使用者への危険を回避することができる。
【0067】
[アシストモード]
次に、アシストモードについて、
図12~
図15を用いて説明する。アシストモードとは、使用者Uが操作部3を操作している際に、操作部3の位置が所定の領域から外れた場合に、操作部3を所定の領域に戻すアシスト力F
Aを発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する能動訓練モードの1つである。
【0068】
即ち、本実施形態において、PC70の制御CPU75は、使用者Uにより操作される操作部3の位置が、予め設定した所定の領域内にある場合と、所定の領域から外れた場合とで、操作部3の駆動制御を切り替えて行う。所定の領域は、予め設定した目標軌跡上の各点から一定の距離の範囲であり、この一定の距離は、運動訓練の観点から操作部3が実質的に目標軌跡をなぞるように操作されていると見なすことができる大きさに設定される。本実施形態では、PC70は、このようなアシストモードを実行可能である。
【0069】
具体的には、アシストモードでは、PC70の制御CPU75は、使用者Uにより操作されてXY平面を移動する操作部3の位置が所定の領域内にあることをエンコーダ6a、30aが検出するとき、力センサ60により検出されるX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の大きさに基づいた第1速度ベクトルに応じて第1モータ6及び第2モータ30を制御する。即ち、操作部3の位置が所定の領域内にある場合には、アシスト力FAを発生させない。
【0070】
一方、制御CPU75は、使用者Uにより操作されてXY平面を移動する操作部3の位置が所定の領域から外れていることをエンコーダ6a、30aが検出するとき、第1速度ベクトルと、操作部3を所定の領域内に戻すように作用する第2速度ベクトルとに応じたアシスト方向に操作部3を移動させるアシスト力FAを発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。
【0071】
図12は、アシストモードの運動訓練開始時において、操作部3の中心Oが目標軌跡TL上の開始位置TP0に一致するように配置されている場合を示している。所定の領域は、その外郭を目標軌跡TL上の点(
図12では、開始位置TP0)を中心とする円TRで表している。操作部3の中心Oから延びる太い矢印FAは、使用者Uから操作部3に加えられる操作力の向きおよび大きさを表しており、その大きさ|FA|と、その向きを表す操作力FAのX軸方向およびY軸方向成分は、力センサ60への入力値として検出される。操作力FAは、同図に示すように、操作部3に発生する速度ベクトルNで表すことができる。
【0072】
図12の運動訓練開始時には、操作部3の中心Oが目標軌跡TL上に位置して、目標領域(所定の領域)TR内にあるので、制御CPU75は、使用者Uからの操作力FAに対応する力センサ60への入力値に基づいて、速度ベクトルNに等しい速度ベクトルQを操作部3に発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。別言すれば、使用者Uの操作を妨げたり操作力FA以外の余計な力を発揮させることなく、操作部3を動かすことができるように、第1モータ6及び第2モータ30を駆動する。
【0073】
図13は、使用者Uの操作により
図12の開始位置TP0から移動した操作部3の現在位置LPにおいて、その中心Oが目標軌跡TL上の目標位置TPから逸れているが、目標領域TR内にある場合を示している。この場合、制御CPU75は、
図12の場合と同様に、使用者Uからの操作力FAに対応する力センサ60への入力値に基づいて、速度ベクトルNに等しい速度ベクトルQを操作部3に発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。従って、操作部3は、使用者Uからの操作力FAに対応する力センサ60への入力値に基づいて、使用者Uが動かす向きに移動する。
【0074】
図14は、使用者Uの操作により
図13の位置から移動した操作部3の現在位置LPにおいて、その中心Oが目標領域TRから外れた場合を示している。この場合、制御CPU75は、使用者Uからの操作力FAに対応する力センサ60への入力値に基づく速度ベクトルNに加えて、操作部3を目標領域TRに戻す向きに働く速度ベクトルWを発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御する。それにより、操作部3には、速度ベクトルNと速度ベクトルWとの合成ベクトルである速度ベクトルQが発生する。従って、操作部3は、使用者Uからの操作力FAに速度ベクトルWを加えて補助することにより、使用者Uが動かす向きを目標領域TRに戻すように調節して移動させることができる。
【0075】
制御CPU75は、操作部3の中心Oが、
図14のように目標領域TRから外れた位置から目標領域TRに戻ると、操作力FAを補助する速度ベクトルWを0または小さくして、操作部3の移動速度を遅らせる。それにより、操作部3が目標領域TRを通り過ぎて、反対側の外れた位置まで移動することを未然に回避することができる。
【0076】
図15は、操作部3の中心Oが目標領域TR内に戻ったとき、速度ベクトルWを0にした場合を示している。速度ベクトルWによる補助が無くなることにより、操作部3に作用する力及び速度ベクトルは、上述した
図13の状態と同じになる。即ち、制御CPU75は、使用者Uからの操作力FAに対応する力センサ60への入力値に基づいて、速度ベクトルNに等しい速度ベクトルQを操作部3に発生させるように、第1モータ6及び第2モータ30を制御し、操作部3は、使用者Uからの操作力FAに対応して、使用者Uが動かす向きに移動する。
【0077】
[画面表示]
ここで、前述の特許文献1には、使用者の運動訓練中または訓練後の操作部の軌跡や負荷変動をモニターに表示可能な構成が開示されている。しかしながら、訓練効果を高めるためには、表示の仕方をさらに工夫することが求められる。即ち、訓練は、通常、訓練指導者が使用者Uの訓練状況を判断しながら行うが、操作部の軌跡や負荷変動の表示だけでは、訓練時に使用者Uが操作部3に実際にどのような力をどの方向に加えたかが分からない。一方、これらが分かると、例えば、或る位置では加わる力は小さいが、力の方向が異常である場合などを判別でき、使用者Uが操作部3を動かしにくい位置或いは動作を判定し易くできる。これにより、その後の指導の方法を判断し易くなる。
【0078】
そこで、本実施形態では、表示部としてのモニター76に、力センサ60により検出されるX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能としている。なお、表示部は、モニターに限らず、合成力F0の方向と大きさが分かれば、ランプなどで表示するものであっても良い。以下、モニター76に表示する場合について説明する。
【0079】
図16に示すように、モニター76に、力センサ60により検出される合成力の大きさや方向を示す第1チャートと、位置検出手段としてのエンコーダ6a、30aにより検出された操作部3の位置を軌跡と共に示す第2チャートとを、同じ時系列で表示可能である。
【0080】
第1チャートは、同一の中心を有し半径が異なる複数の円からなるチャートであり、中心からの周方向の位置が合成力の方向を示し、中心からの距離が合成力の大きさを示すように、力センサ60の検出結果がプロットされる。
図16に示す第2チャートは、使用者Uが操作部3を移動させる目標軌跡と共に操作部3の位置をその移動軌跡と共に表示するチャートである。図示の例では、目標軌跡を円としているが、目標軌跡の形はこの限りではない。
【0081】
また、実際には、モニター76には、
図17に示す画面が表示される。
図17の左側部分には各種の設定画面である設定表示エリア300が、
図17の中央部分には上述の第2チャートを示す画面である軌道表示エリア400が、
図17の右側部分には上述の第1チャート、スケールの設定及び各種数値を表す画面である力覚表示エリア500が、それぞれ表示されている。なお、モニター76内の画面配置はこれに限らず、適宜変更可能である。また、上述の各種情報のうち、少なくとも第1チャート及び第2チャートが表示されていれば、その他は、例えば、表示を切り替えて表示する別画面、或いは、別の表示部に表示するようにしても良い。また、第1チャート及び第2チャートは、画面を切り替えることで表示させるようにしても良いが、同一画面上に同時に表示することが好ましい。以下、
図17の各部分の画面表示について説明する。
【0082】
図18は、
図17の左側部分に表示される各種の設定画面である設定表示エリア300のみを示している。この画面では、各種モードの設定、軌道の設定、カスタム設定、力覚の設定などの各種設定の入力や表示を行う。各種モードとしては、トレーニングモード、アシストモード、自動モードなどがあり、図示の例では、これらのモードを選択可能な複数の設定ボタンが表示されたモード選択エリア301が配置されており、この選択エリア301に表示されている何れかの設定ボタンをクリックすることでそのモードが実行される。なお、トレーニングモードは、アシストモードのようなアシスト力がない能動訓練モードである。
【0083】
軌道の設定としては、目標軌跡の作成、操作軌跡の録画、再生などがある。図示の例では軌跡設定エリア302内に、軌跡の形状を選択するボタン、軌跡を録画するボタンが表示されている。これらの何れかのボタンをクリックすることで、各種の設定或いは動作が実行される。例えば、軌跡を録画するボタン(REC)をクリックして、何れかの運動訓練モードを実行することで、後述する、軌道表示エリア400や力覚表示エリア500で表示される内容を保存でき、後で、そのモードで実行した内容を再生することができる。
【0084】
カスタムの設定としては、モードの実行時間、操作部3の移動速度、アシストのレベルなどがあり、カスタム設定エリア内には、各種モードに応じて設定をカスタムできる各種ボタンが表示されている。これらの何れかのボタンをクリックすることで、各種モードにおける設定を変更可能である。
【0085】
力覚の設定は、操作部3をどのようなパラメータで制御するかである。図示の例では、力覚設定エリア304に、操作部に模擬的にどのような負荷或いは動作を実行させるかを設定できるボタンが表示されている。例えば、「Weight」は、特許文献1に記載されているような「静止摩擦力と動摩擦力」を模擬したパラメータであり、「Slip」は、その運動が維持されるような力(例えば、慣性力)を模擬したパラメータである。上述のボタンの何れかをクリックすることで、これらのパラメータの大きさなどを設定可能としており、使用者Uに適した訓練を選択できるようにしている。
【0086】
図18の画面では、その他、実行ボタン(RUN)、停止ボタン(Stop)、訓練における動作を右回りで行うか左回りで行うかの選択ボタンなどが表示されている。また、設定表示エリア300で表示可能な内容はこれに限らず、表示方法もその他の方法であっても良い。
【0087】
図19は、
図17の中央部分に表示される第2チャートを示す画面である軌道表示エリア400のみを示している。この画面では、第2チャートを示している。具体的には、目標軌跡TLを破線で、操作部3の位置の軌跡、即ち、操作軌跡ALを実線で、現在の操作部3の位置LPを黒丸で示している。即ち、軌道表示エリア400では、使用者Uにトレースさせたい軌道(目標軌跡TL)と、実際に操作部3が動いた軌道(操作軌跡AL)及び操作部3の現在の位置LPとを同時に表示可能としている。操作軌跡AL及び現在の位置LPは、エンコーダ6a、30aにより検出された情報に基づいて表示している。なお、表示方法はこれに限らず、目標軌跡TL、操作軌跡AL、現在の位置LPが区別できれば、線の色を変えたり、太さを変えたりして表示しても良い。
【0088】
図20は、
図17の右側部分に表示される第1チャートなどを示す画面である力覚表示エリア500のみを示している。この図面では、操作部3を上から見た状態、即ち、XY平面に直交する方向から見た状態で、操作部3にかかる力及びその向きを示す第1チャート(Force Ladar)を示している。第1チャートは、
図16で説明したように、同一の中心を有し半径が異なる複数の円(破線、鎖線)からなるチャートであり、中心からの周方向の位置が、力センサ60により検出されるX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F
0の方向を示し、中心からの距離が合成力F
0の大きさを示す。
【0089】
図20に示すように、第1チャートには、実線で表示されるように、そのモードにおいて実際に操作部3にかかる力(合成力F
0)及びその方向(合成力F
0の方向)の推移が軌跡FLとして示される。
図20の黒丸は、現在の操作部3に係る力及びその方向を示す位置FPである。なお、表示方法はこれに限らず、軌跡FL、現在の位置FPが区別できれば、線の色を変えたり、太さを変えたりして表示しても良い。また、第1チャートの半径が異なる複数の円は、軌跡FLや位置FPが判別できれば、複数の円の線種、太さ、色は同じとしても良いし、複数の円同士でこれらの少なくとも何れかを変えても良い。
【0090】
また、この画面には、第1チャートの力のスケールの設定画面、基台2の角度(Table Angle)、第1チャート上の黒丸の位置における操作部3の位置のXY座標(Position)及びその位置において力センサ60が検出したFx,Fyの値などを表示可能としている。第1チャートの力のスケールは、第1チャートの円のそれぞれの大きさに対応しており、この設定を変えることで第1チャートに示す力の大きさのスケールを変更可能である。また、基台2の角度については、XY平面が水平となる位置で使用する場合や、使用者Uや訓練状況などの条件によっては水平から傾けて使用する場合などがあり、その時の基台2の角度を表示するようにしている。
【0091】
また、本実施形態では、
図19に示した第2チャートと、
図20に示した第1チャートは、同じ時系列で表示可能としている。即ち、第2チャートに示す操作軌跡ALと、第1チャートに示す軌跡FLとは対応しており、この操作軌跡ALを移動している際に操作部3に係る力及びその方向が、リアルタイムに軌跡FLで表示される。また、第2チャートの位置LPと第1チャートの位置FPも対応しており、操作部3が第2チャートの位置LPにあるときには、操作部3には第1チャートの位置FPで示される方向の力が作用していることを示している。
【0092】
また、本実施形態において、
図21に示すように、第1チャートの軌跡FL上の或る位置を指定した(本実施形態ではクリックした)場合に、その位置(図の黒丸)に対応した時間における合成力F
0の方向と大きさを第1チャート上に表示可能としても良い。
図21では、第1チャートの中心に対する黒丸の位置が合成力F
0の方向を示している。また、第2チャートの操作軌跡AL上の或る位置を指定した(本実施形態ではクリックした)場合に、その位置(図の黒丸)に対応した時間における操作部3の位置と速度を第2チャート上に表示可能としても良い。
【0093】
ここで、第1チャートと第2チャートのどちらかのある位置を指定した場合でも、両方のチャートに上述のそれぞれの情報が表示されるようになっている。即ち、本実施形態の場合、上述の
図17に示したように、第1チャートと第2チャートとが同じ画面上に同じ時系列で表示される。このため、何れかのチャートの或る位置をクリックした場合には、両方のチャートに情報を表示しても、同じ画面上で確認できる。
【0094】
言い換えれば、第1チャートの或る位置を指定した場合に、その位置に対応した時間における操作部3の位置と速度を第2チャートに表示可能であり、第2チャートの或る位置を指定した場合に、その位置に対応した時間における合成力F0の大きさを第1チャートに表示可能としても良い。
【0095】
また、この際、
図20に示した力覚表示エリア500において説明した、第1チャート上の黒丸の位置における操作部3の位置のXY座標(Position)及びその位置において力センサ60が検出したFx,Fyの値なども、何れかのチャートの或る位置をクリックすることで同時に表示するようにしても良い。また、クリックした位置における合成力F
0の方向も数値で表示するようにしても良い。例えば、腕をまっすぐ前に伸ばした方向を0度とし、右側にプラス、左側にマイナスで表現するようにしても良い。
【0096】
本実施形態では、このように、モニター76に、力センサ60により検出される前記X軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0の方向と大きさを同時に表示可能である。このため、例えば、或る位置では加わる力は小さいが、力の方向が異常である場合など、力の大きさだけを見ただけではわかりにくい状態を同じ画面上で確認でき、使用者Uが操作部3を動かしにくい位置或いは動作を判定し易くできる。これにより、その後の指導の方法を判断し易くなり、更なる訓練効果を得られ易くできる。また、合成力F0の方向と大きさを上述の第1チャートに表示することで、視覚的にも感覚的にも分かり易くでき、状況の把握を容易にできる。
【0097】
また、本実施形態では、第1チャートに加えて、操作部3の位置を示す第2チャートを同じ時系列で表示可能としているため、操作部3の位置と、この位置に対応する合成力F0の方向と大きさと確認し易い。特に、これらを同一画面上に表示することで、訓練状態を把握し易くでき、例えば、訓練指導者が使用者Uに説明する際、或いは、訓練指導者が使用者Uの訓練状況を把握する際などに視覚的に分かり易くでき、その後の訓練効果を高めることができる。
【0098】
この際、第1チャート又は第2チャートの一方のチャートの或る位置を指定することで、他方のチャートに、この指定した位置に対応する情報を表示させることが可能であるため、訓練指導者の使用者Uに対する説明や使用者Uの訓練状況の把握を、より行い易くできる。このように本実施形態の構成によれば、更なる訓練効果を得やすくできる。
【0099】
[アシストモードにおける画面表示]
本実施形態において、
図22(a)に示すように、上述のアシストモードを実行した場合に、第1チャートにアシスト力F
Aが発生した個所と発生していない個所とを区別して表示可能としても良い。また、この際、
図22(b)に示すように、第2チャートにも、アシスト力F
Aが発生した個所と発生していない個所とを区別して表示可能としても良い。図示の例では、第1チャートの軌跡FL及び第2チャートの操作軌跡AL上で、アシスト力F
Aが発生した個所、即ち、使用者Uが操作部3を移動している際にアシストされている領域を破線で示し、アシスト力F
Aが発生していない個所を実線で示している。
【0100】
このような表示は、例えば、設定画面においてアシスト力がかかっている個所とかかっていない個所を区別して表示させるボタンをクリックするなどして、表示させるようにしても良い。また、表示のさせ方は、図示のように実線と破線に限らず、アシストされている個所とされていない個所で色を変える、線の太さを変えるなど、視覚的に違いが分かる方法であれば良い。
【0101】
このように、第1チャート及び第2チャートにアシスト力がかかっている個所とかかっていない個所を区別して表示することで、使用者Uがどの位置又は領域で操作部3を動かしにくいか、また、その時、操作部3にどの方向のどれくらいの大きさの力がかかっているかを分かり易くできる。このため、訓練指導者による使用者Uに対する指導方法の策定などに役立てることができ、訓練効果を高めることができる。
【0102】
[自動モードにおける画面表示]
本実施形態において、
図23(a)、(b)に示すように、上述の自動モードで所定の軌跡(目標軌跡TL)に沿って操作部3を移動させる訓練を複数回繰り返して行った場合に、所定回数以上同じ位置で合成力F
0の大きさが所定の範囲を超える場合、その位置が他の位置と区別できるように表示可能としても良い。例えば、
図23(b)に示すように、自動モードにおいて使用者Uが操作部3を目標軌跡TLに沿って5周させるように動かした場合、
図23(a)に示すように、破線で示す個所が所定回数以上同じ位置で合成力F
0の大きさが所定の範囲を超えた個所となる。
【0103】
図示の例の場合、
図23(b)の第2チャートから明らかなように、操作部3を目標軌跡TLに沿って5周させた場合に、操作軌跡ALは目標軌跡TLに対して殆どずれていない。但し、
図23(a)の第1チャートを見ると、軌跡FL上の一部の領域だけ、他と違う方向且つ大きさの力がかかっていることが分かる。このため、この領域を点線で示し、他の領域を実線で示すことで、自動モードで軌跡通りに操作部3が動いているが、操作者が動かしにくい位置或いは動作があることが明確となる。このため、訓練指導者による使用者Uに対する指導方法の策定などに役立てることができ、訓練効果を高めることができる。
【0104】
このような表示は、例えば、設定画面において上述のような領域を区別して表示させるボタンをクリックするなどして、表示させるようにしても良い。また、表示のさせ方は、図示のように実線と破線に限らず、所定回数以上同じ位置で合成力F0の大きさが所定の範囲を超えた個所とそうでない個所で色を変える、線の太さを変えるなど、視覚的に違いが分かる方法であれば良い。また、第1チャートの破線部分(所定回数以上同じ位置で合成力F0の大きさが所定の範囲を超えた個所)をクリックした場合に、対応する部分を第2チャートに他の部分と区別するように、例えば、破線と実線或いは色分けなどをして、表示させるようにしても良い。
【0105】
また、上述のように、自動モードで所定の軌跡に沿って操作部3を移動させる訓練を複数回繰り返して行った場合に、訓練の最初にある位置で合成力F0の大きさが所定の範囲を超えているが、回数が進むにつれてその位置における合成力F0の大きさが小さくなっていた場合、その訓練が正しかった旨を表示するようにしても良い。
【0106】
例えば、目標軌跡TLを5周させる訓練を1回とした場合、訓練の1回目、或いは、最初の数回は、
図23(a)のように、一部で他と違う方向且つ大きさの力がかかっている状態であったとする。そして、訓練を続け行くにつれて、この部分でかかっている力が小さくなり、合成力F
0の大きさが所定の範囲以下、或いは、この所定の範囲よりも小さい閾値以下となった場合、他と違う方向且つ大きさの力がかかっている状態が徐々に解消されていると判断できる。この場合、モニター76に訓練が正しかった旨、例えば、「訓練は順調です」などの文字、或いは、笑顔を示すマークなどを表示する。
【0107】
このように、訓練を繰り返した場合に、一部で異常な力がかかっていたが、その力が小さくなっていったと装置側で判断し、訓練が正しかった旨を自動で表示することで、訓練指導者の参考にすることができると共に、使用者Uの励みにもなり、訓練効果を高めることができる。
【0108】
[異常の表示]
上述の自動モードやアシストモードに限らず、所定の訓練を行っている場合に、操作部3の位置に応じて合成力F0の方向又は大きさが異常である場合に、その旨を表示するようにしても良い。例えば、或る位置で、上限値以上の力或いは許容範囲から外れた方向の力が力センサ60により検出された場合、異常であるとして、訓練中或いは訓練後に訓練内容を再生しているときに、モニター76の画面にその旨を表示、或いは、異常表示用のランプがある場合にはこれを点灯させる。モニター76の画面表示としては、画面の背景の色を通常時と異ならせたり、画面を点滅させたり、異常である旨の警告を表示させたりすることなどが挙げられる。
【0109】
また、このように異常があると判断された場合、異常となった個所を第1チャートと第2チャートの一方又は両方に、他の個所と区別がつくように表示させるようにしても良い。そして、その個所をクリックすることで、その位置に対応した時間における操作部3の位置と速度を第2チャートに、その位置に対応した時間における合成力F0の大きさを第1チャートに表示するようにしても良い。
【0110】
例えば、訓練中に、予め設定されていた上限値以上の合成力F0が力センサ60により検出された場合、或いは、或る位置で予め設定された許容範囲から外れた方向に合成力F0がかかっていた場合、異常である旨の表示を行う。この場合、装置の動作を自動で停止させるようにしても良い。
【0111】
また、訓練後に訓練内容を再生しているときには、異常となった個所を第1チャートと第2チャートの一方又は両方に、他の個所と区別がつくように表示させる。例えば、前述したように、実線と破線で分けたり、色分けをする。或いは、これと共に、背景の色を変えたり、画面を点滅させたり、異常である旨の警告を表示させても良い。このような背景色の変更などは、再生開始時にこの訓練が異常であったことが分かるように行っても良いし、第1チャート又は第2チャートの該当箇所をクリックした際に行うようにしても良い。
【0112】
これにより、訓練中に異常な動作が行われたかを明確に判別でき、例えば、この使用者はまだこの訓練の段階ではないなどの訓練の適性の判断など、訓練指導者の参考にすることができ、訓練効果を高めることができる。
【0113】
[他の実施形態]
上述の運動訓練システム1000は、モニター76を備え、例えば、予めPC70に、上述の制御が可能なプログラムがインストールされているが、モニター76を備えていない運動訓練装置1に上述のプログラムをインストールしておき、既に設置された、或いは、別途購入したモニター76に、上述したような表示を行うようにしても良い。或いは、既に設置されている運動訓練装置や運動訓練システムが備えるコンピュータにこのプログラムをインストールするようにしても良い。即ち、本発明は、上述の運動訓練システム1000に用いられるプログラムであっても良い。
【0114】
このプログラムは、以下のような表示方法をコンピュータに実行させるプログラムでもある。即ち、表示方法及びプログラムは、次の2つの工程を有する。まず、第1工程では、力センサ60によりX軸およびY軸方向の力Fx,Fyの合成力F0を検出する。第2工程では、第1工程で力センサ60により検出された合成力F0の方向と大きさを、モニター76などの表示部に同時に表示する。なお、表示方法及びプログラムは、更に、上述したような様々な表示をモニター76などの表示部に表示させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0115】
1・・・運動訓練装置
3・・・操作部
6・・・第1モータ(X軸方向駆動モータ)
6a・・・エンコーダ(位置検出手段)
30・・・第2モータ(Y軸方向駆動モータ)
30a・・・エンコーダ(位置検出手段)
60・・・力センサ
70・・・PC(制御部)
76・・・モニター(表示部)
200・・・駆動部