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特開2022-156176吸収性物品用シート及びそれを備えた吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156176
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】吸収性物品用シート及びそれを備えた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20221006BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61F13/514 100
A61F13/514 320
A61F13/514 310
A61F13/514 210
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059734
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】露木 智咲
(72)【発明者】
【氏名】小森 康浩
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA05
3B200BA07
3B200BB03
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA02
3B200DD02
3B200DD04
3B200DD07
4L047AB03
4L047AB08
4L047BA05
4L047BA09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA12
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】不織布から構成されているにもかかわらず防漏性が高い吸収性物品用シートを提供すること。
【解決手段】複数の不織布層が積層されてなる吸収性物品用シート10である。吸収性物品用シート10は少なくとも一方の面21が凹凸構造を有している。吸収性物品用シート10は、表面張力が60mN/mの液に対して撥水性を有する。前記凹凸構造における凸部11の幅Wが0.5mm以上8mm以下であることが好適である。前記不織布層が、繊維径1μm以下の繊維を構成繊維とするナノファイバ層14を含むことが好適である。ナノファイバ層14が凹凸構造をなしていることも好適である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の不織布層が積層されてなる吸収性物品用シートであって、
前記シートは少なくとも一方の面が凹凸構造を有しており、
表面張力が60mN/mの液に対して撥水性を有する、吸収性物品用シート。
【請求項2】
前記凹凸構造における凸部の幅が0.5mm以上8mm以下である、請求項1に記載の吸収性物品用シート。
【請求項3】
ナノファイバ層を含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品用シート。
【請求項4】
前記ナノファイバ層が凹凸構造をなしている、請求項3に記載の吸収性物品用シート。
【請求項5】
繊維径1μm以下の繊維を構成繊維とする前記ナノファイバ層を含む、請求項3又は4に記載の吸収性物品用シート。
【請求項6】
前記ナノファイバ層がメルトブローン層からなり、
前記メルトブローン層が一対のスパンボンド層間に配されている、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品用シート。
【請求項7】
エアスルー層を有する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の吸収性物品用シート。
【請求項8】
前記エアスルー層が捲縮繊維を含む、請求項7に記載の吸収性物品用シート。
【請求項9】
吸収体、及び請求項1ないし8のいずれか一項に記載の吸収性物品用シートを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品用シートは、該吸収性物品用シートにおける前記凹凸構造を有する面が前記吸収体に対向するように配置されている、吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性物品用シートがナノファイバ層を有し、
前記ナノファイバ層よりも非肌対向面側に肌対向面よりも平坦な不織布層を有する、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記ナノファイバ層よりも肌対向面側にエアスルー層を有する、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収性物品用シートが、前記吸収体の非肌対向面側に配置されている、請求項9ないし11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品用シートに関する。また本発明は、吸収性物品用シートを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に凹凸形状を有する不織布を吸収性物品の構成部材として用いる技術が知られている。例えば特許文献1には、第1の実質的に非伸縮性の層と、第2の層とによって構成された積層材料が記載されている。第2の層と第1の層とは、複数の間隔を設けた接着領域で取り付けられている。それによって積層材料は、複数の接着領域と非接着領域を有し、該積層材料には嵩のあるピロー部が形成されている。この積層材料は、吸収性物品の裏面シートとして用いられる。
【0003】
特許文献2には、スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド不織布に、エンボス加工によってハニカム形状柄(亀甲凹柄)を付与し、亀甲凹柄の中央を盛り上げることが記載されている。この不織布は、吸収性物品のレッグカフとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-255006号公報
【特許文献2】特開2004-129810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、特許文献1及び2に記載の不織布は、吸収性物品の構成部材のうち防漏性が求められる部材に用いられるものである。しかし、これらの文献に記載の不織布は、吸収性物品が着用者に着用された状態で該着用者が動作した場合などの液漏れが生じやすい場面では防漏性が十分とは言えなかった。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の不織布層が積層されてなる吸収性物品用シートであって、
前記シートは少なくとも一方の面が凹凸構造を有しており、
表面張力が60mN/mの液に対して撥水性を有する、吸収性物品用シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品用シートは、不織布から構成されているにもかかわらず防漏性が高いものである。したがってこの吸収性物品用シートを備えた吸収性物品を着用した状態で着用者が動作しても、該吸収性物品用シートを通じての液の染み出しが起こりづらい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の吸収性物品用シートにおける凸部の幅、ピッチ及び高さを示す説明図である。
図2図2は、本発明の吸収性物品用シートの一実施形態を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の吸収性物品用シートの別の実施形態を示す斜視図である。
図4図4(a)ないし(c)は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図5図5は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図6図6(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図7図7(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図8図8は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図9図9(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図10図10は、本発明の吸収性物品用シートの厚み方向の断面構造を示す模式図である。
図11図11は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる好適な装置の一例を示す模式図である。
図12図12は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる別の好適な装置の一例を示す模式図である。
図13図13(a)ないし(d)は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる別の好適な装置の一例を示す模式図、及び該装置を用いたシートの製造工程を示す模式図である。
図14図14(a)ないし(e)は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる別の好適な装置の一例を示す模式図、及び該装置を用いたシートの製造工程を示す模式図である。
図15図15は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる別の好適な装置の一例を示す模式図である。
図16図16は、本発明の吸収性物品用シートを製造するために用いられる別の好適な装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の吸収性物品用シート(以下、単に「シート」ともいう。)は不織布から構成されている繊維シートである。本発明のシートは吸収性物品の構成部材として用いられる。本発明のシートは繊維シートであり、液不透過性層のフィルムを有していない。
本発明のシートが用いられる吸収性物品は、一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。そして吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0010】
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを備える。表面シートとしては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シートは、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シートを形成することもできる。一方、裏面シートとしては、例えば液難透過性の不織布などを用いることができる。
【0011】
吸収体は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。後述するとおり、本発明のシートは裏面シートとして好適に用いられる。
【0012】
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。本発明のシートは防漏カフとして好適に用いられる。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0013】
吸収性物品は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品の着用状態において、該吸収性物品を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
【0014】
以上の構成を有する吸収性物品としては、例えば展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が挙げられるが、これらに限られない。
【0015】
本発明のシートは、その防漏性の高さから、吸収性物品の構成部材のうち、防漏性が要求される部材に好適に用いられる。例えば裏面シートとして本発明のシートを用いることができる。あるいは防漏カフとして本発明のシートを用いることができる。
【0016】
本発明のシートは、複数の不織布層が積層された構造を有している。更に本発明のシートは、少なくとも一方の面が凹凸構造を有していることが好ましい。
本発明のシートは、その撥水性の高さを特徴の一つとするものである。詳細には、本発明のシートは、表面張力が60mN/mの液(以下「低表面張力液」ともいう。)に対して撥水性を有することが好ましく、表面張力が50mN/mの液に対して撥水性を有することがより好ましく、表面張力が40mN/mの液に対して撥水性を有することが更に好ましい。このような撥水性を有することによって、本発明のシートは高い防漏性を発現する。本発明のシートがこのような撥水性を発現するためには、上述したとおり、該シートの少なくとも一方の面が凹凸構造を有していることが好ましい。また、本発明のシートがこのような撥水性を発現するためには、該シートが後述するナノファイバ層を有することが有利である。撥水性を一層高めることを目的として、本発明のシートに撥水剤を付与してもよい。撥水剤の詳細については後述する。
なお、表面張力は温度に依存するところ、上述した表面張力の値は25℃でのものである。
【0017】
本発明のシートが低表面張力液に対して撥水性を有するか否かは以下の方法で判断する。
低表面張力液として、関東化学株式会社から入手可能な「ぬれ張力試験用混合液」を用意する。
直径7cmの濾紙の上に、該濾紙の全域を覆うことが可能な面積を有する本発明のシートを載置する。本発明のシートの上に、該シートと同サイズに切り出した乾式パルプシート(坪量44g/m)を載置する。乾式パルプシートの中央に、低表面張力液を1g滴下し、滴下位置に直径6cmアクリル樹脂製プレートを載置する。このプレート上に錘を載せて、本発明のシートに2kPaの圧力が加わるようにする。この圧力を1時間加えた後に、濾紙を取り出し、該濾紙に付着した低表面張力液の面積を測定する。面積の測定には、例えば濾紙を写真撮影するか又はスキャナーでスキャンし、それによって得られた画像を、画像解析ソフトウエアによって二値化する方法を採用できる。このようにして測定された面積を濾紙の面積で除し、それに100を乗じて得られた面積率(%)が5%未満である場合には、当該シートは撥水性を有すると判断する。面積率の測定は異なる10枚のシートを対象として行い、それらの算術平均値をもって面積率の値とする。
【0018】
本発明のシートにおいては、少なくとも一方の面に形成されている凹凸構造における凸部の幅が特定の範囲に設定されていることが好ましい。このようなシートは、液の透過を阻止する能力に優れることを本発明者は見出した。
凹凸構造の凸部の幅とは、凹凸構造の形態に応じて定義される。例えば後述する図2に示すとおり、凸部が散点状に配置されている場合には、凸部の幅とは、凸部と凸部との間に位置する最も窪んだ箇所を始点とし、シートの平面視において凸部の頂部を通り、当該始点と対向する位置にある窪んだ箇所を終点としたとき、当該始点と当該終点との直線距離(シートを平面視したときの直線距離)のことを意味する。
一方、例えば後述する図3に示すとおり、凸部が一方向に沿って連続的に延びる筋状に形成されている場合には、凸部の幅とは、該凸部が延びる方向と直交する方向において凸部と凸部との間に位置する厚み方向に最も窪んだ箇所を始点とし、シートの平面視において凸部の頂部を通り、当該始点と対向する位置にある窪んだ箇所を終点としたとき、当該始点と当該終点との直線距離(シートを平面視したときの直線距離)のことを意味する。
【0019】
凹凸構造の形態によらず、凸部の幅は0.5mm以上であることが、凹凸構造の形成のしやすさから好ましく、この観点から、凸部の幅は1mm以上であることが更に好ましく、1.5mm以上であることが一層好ましい。
一方、凸部の幅は8mm以下であることが、凸部が潰れにくくなり凹凸構造を安定的に維持し得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、凸部の幅は6mm以下であることが更に好ましく、4mm以下であることが一層好ましい。
以上のことを総合すると、凸部の幅は0.5mm以上8mm以下であることが好ましく、1mm以上6mm以下であることが更に好ましく、1.5mm以上4mm以下であることが一層好ましい。
【0020】
凸部の幅Wは次の方法で測定される。
図1に示すとおり、凸部11と凹部12とが交互に並ぶようにシートをその厚み方向に沿って切断し、切断したシートを、凸部11が上方を向くように平滑な台の上に置く。シートの上に平らなプレートを載置し、49Paの圧力を加えた状態で、凹部12の最も凹んでいる箇所から凸部頂部を通り、隣接する凹部12の最も窪んでいる箇所までの最短直線距離(台と平行な線分の長さ)をマイクロスコープによって測定する。凹部12がエンボス部(融着部)である場合は、凸部11に最も近接するエンボス部の縁から対向するエンボス部の縁(凸部に最も近接するエンボス部の縁)までの距離とする。異なる5つの断面を測定対象とし、1断面あたり3箇所の位置で距離を測定する。合計15の測定値の算術平均を算出し、その値を凸部11の幅Wとする。算出は、ミリメートルオーダーで行い、小数点以下第一位を四捨五入する。
【0021】
本発明のシートにおいて、凹凸構造は、該シートに圧力を加えない状態で観察される。これに加えて、本発明のシートに49Paの圧力を加えた状態でも凹凸構造が観察されることが、防漏性を高める点から好ましい。
【0022】
本発明のシートは、少なくとも一方の面に凹凸構造を有していれば、液の透過を十分に阻止することが可能である。したがって他方の面は平坦面でもよく、あるいは凹凸構造を有する面でもよい。
【0023】
本発明のシートは例えば、該シートの一方の面に散点状に凸部が配置され、隣り合う凸部間に凹部が位置する形態のものであり得る。具体的には、本発明のシートは、その一方の面内において、一方向に沿って凸部と凹部とが交互に配置されているとともに、該一方向に直交する方向に沿って凸部と凹部とが交互に配置されている形態であり得る。このような形態のシートの一例が図2に示されている。同図に示すシート10において、凸部が符号11で示され、凹部は符号12で示されている。
【0024】
図2に示す形態のシート10において、平面視での凸部11の形状は例えば円形及び楕円形;三角形、四角形及び六角形などの多角形;並びにそれらの組み合わせなどが挙げられる。各凸部11の平面視での形状はすべて同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
一方、図2に示す形態のシート10において、平面視での凹部12の形状は例えば円形及び楕円形;三角形、四角形及び六角形などの多角形;十文字形;並びにそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0025】
本発明のシートの別の実施形態として、該シートの一方の面において、その面内における一方向に沿って筋状に連続して延びる凸部と、該一方向に沿って筋状に連続して延びる凹部とが、該一方向と直交する方向に沿って交互に配された形態が挙げられる。このような形態のシートの一例が図3に示されている。同図に示すシート10において、凸部が符号11で示され、凹部は符号12で示されている。
【0026】
本発明のシートが図2及び図3に示す実施形態のいずれの場合であっても、凸部のピッチは、1mm以上であることが、凹凸構造の形成のしやすさから好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、凸部のピッチは1.5mm以上であることが更に好ましく、2mm以上であることが一層好ましい。
一方、凸部のピッチは10mm以下であることが、単位面積当たりに設けることができる複数の凹凸を十分に多くすることができ、且つ、凸部が潰れにくくなり凹凸構造を安定的に維持し得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、凸部のピッチは9mm以下であることが更に好ましく、8mm以下であることが一層好ましい。
以上のことを総合すると、凸部のピッチは1mm以上10mm以下であることが好ましく、1.5mm以上9mm以下であることが更に好ましく、2mm以上8mm以下であることが一層好ましい。
【0027】
本発明のシートが図2及び図3に示す実施形態のいずれの場合であっても、凸部のピッチとは、隣り合う凸部の頂点間の距離のことをいう。ピッチが一定でない場合には、算術平均値をもって凸部のピッチとする。
【0028】
凸部のピッチPは次の方法で測定される。
図1に示すとおり、凸部11と凹部12とが交互に並ぶようにシートをその厚み方向に沿って切断し、切断したシートを、凸部11が上方を向くように平滑な台の上に置く。シートの上に平らなプレートを載置し、49Paの圧力を加えた状態で、凸部11の最も高い箇所から凹部12を挟んで隣接する凸部11の最も高い箇所までの最短直線距離(台と平行な線分の長さ)をマイクロスコープによって測定する。異なる5つの断面を測定対象とし、1断面あたり3箇所の位置で距離を測定する。合計15の測定値の算術平均を算出し、その値を凸部11のピッチPとする。算出は、ミリメートルオーダーで行い、小数点以下第一位を四捨五入する。
【0029】
本発明のシートが図2及び図3に示す実施形態のいずれの場合であっても、該シートにおける凸部は、その内部が中実又は中空であり得る。凸部の内部が中実であるとは、凸部の内部が繊維で満たされていることを意味する。凸部の内部が中空であるとは、凸部の内部に空間が存在することを意味する。
凸部の内部が中空である場合には、凸部の内部の空間が、液の透過を阻止するので、本発明のシートの防漏性が向上するという利点がある。一方、凸部の内部が中実である場合には、本発明のシートにクッション感が付与されという利点、及び凸部が潰れにくいという利点がある。
【0030】
本発明のシートにおける凸部が中実及び中空のいずれの場合であっても、該シートにおける凸部の高さは、該シートに高い防漏性を付与する観点から、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましく、0.9mm以上であることが一層好ましい。
凸部の高さは5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることが更に好ましく、3mm以下であることが一層好ましい。凸部をこの値よりも低くすることで、吸収性物品の着用状態において、着用者の耐圧によって凸部が過度に潰れてしまうことを効果的に抑制できる。
以上の観点を総合すると、凸部の高さは0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、0.7mm以上4mm以下であることが更に好ましく、0.9mm以上3mm以下であることが一層好ましい。
【0031】
凸部の高さHは次の方法で測定される。
図1に示すとおり、凸部11と凹部12とが交互に並ぶようにシートをその厚み方向に沿って切断し、切断したシートを、凸部11が上方を向くように平滑な台の上に置く。シートの上に平らなプレートを載置し、49Paの圧力を加えた状態で、凹部12の上部を通り、プレート及び台と平行に仮想線を引く。仮想線とプレート下面との間の距離をマイクロスコープによって測定する。異なる5つの断面を測定対象とし、1断面あたり3箇所の位置で距離を測定する。合計15の測定値の算術平均を算出し、その値を凸部11の高さHとする。算出は、ミリメートルオーダーで行い、小数点以下第一位を四捨五入する。
【0032】
本発明のシートは、上述のとおり、複数の不織布層が積層された構造を有しているところ、複数の不織布層は少なくともナノファイバ層を含んでいることが好ましい。ナノファイバ層とは、ナノファイバが堆積して形成された層のことである。本明細書においてナノファイバとは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に0.01μm以上3μm以下の繊維のことである。
【0033】
ナノファイバ層は、例えばメルトブローン層であり得る。また、ナノファイバ層は、例えばエレクトロスピニング層であり得る。
メルトブローン層とは、メルトブローン法によって製造される不織布の層のことであり、詳細には、繊維形成能を有する原料樹脂の溶融液を熱風で引き延ばすことで繊維を形成し、該繊維を捕集体上に堆積させることで製造される不織布の層である。
エレクトロスピニング層とは、エレクトロスピニング法によって製造される不織布の層のことであり、詳細には、繊維形成能を有する樹脂の溶液又は溶融液を帯電させて電界中に吐出し、該電界によって吐出液を引き延ばすことで繊維を形成し、該繊維を捕集体上に堆積させることで製造される不織布の層である。
メルトブローン法及びエレクトロスピニング法のいずれの方法によっても、上述した太さのナノファイバを容易に製造することができる。
【0034】
ナノファイバ層は、好ましくは繊維径1μm以下の繊維を構成繊維としていることが好ましい。特に表面が凹凸構造をなしているナノファイバ層を備えた不織布からなるシートは、液の透過を阻止する能力に一層優れることを本発明者は見出した。この理由は、細い繊維から構成されるナノファイバ層と、凹凸構造の表面との相乗作用によって、液の透過が阻止されるからであると本発明者は考えている。尤も本発明はこの理論に拘束されない。
【0035】
防漏性を一層高める観点から、ナノファイバ層の構成繊維の繊維径は上述のとおり1μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることが更に好ましい。繊維径の下限値に特に制限はなく、細いほど本発明のシートの防漏性は高まるが、0.4μm程度に繊維が細ければ十分な防漏性が発現する。
以上の点を勘案すると、ナノファイバ層の構成繊維の繊維径は0.4μm以上1μm以下であることが好ましく、0.4μm以上0.9μm以下であることが更に好ましい。
繊維径1μm以下の繊維からなるナノファイバ層を例えばメルトブローン法で製造するには、製造時の樹脂の温度及び吐出量、熱風の温度、風量及び風速、紡糸ダイの温度、並びにノズル径などの条件を適切に調整すればよく、それらの条件の設定は当業者の技術常識の範囲である。
【0036】
ナノファイバ層の構成繊維の繊維径は次の方法で測定される。
ナノファイバ層からランダムに小片サンプル5個を採取する。次に、走査型電子顕微鏡を用い、視野にナノファイバ層の繊維が20~60本映るよう1000~10000倍に拡大した写真を撮影する。視野内のすべての繊維について、それぞれ1回ずつカウントするよう100本以上の繊維について繊維径を測定し、その平均値をマイクロメートルオーダーで算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。このようにして得られた値を、ナノファイバ層の構成繊維の繊維径とする。
【0037】
本発明のシートがナノファイバ層を有する場合、該シートの防漏性を一層高める観点から、ナノファイバ層はその坪量が1g/m以上であることが好ましく、1.5g/m以上であることが更に好ましく、2g/m以上であることが一層好ましい。ナノファイバ層はその坪量が大きいほど防漏性が高くなるが、シートの肌触りや経済性の点から、10g/m以下であることが好ましく、9g/m以下であることが更に好ましく、8g/m以下であることが一層好ましい。
これらを総合すると、ナノファイバ層はその坪量が1g/m以上10g/m以下であることが好ましく、1.5g/m以上9g/m以下であることが更に好ましく、2g/m以上8g/m以下であることが一層好ましい。
【0038】
ナノファイバ層の坪量は次の方法で測定される。
剃刀を用いて10cm×10cmの試験片を本発明のシートから切り出す。この寸法の試験片を切り出すことができない場合は、できるだけ大きな面積の試験片を切り出す。試験片から手やピンセットなどでナノファイバ層を丁寧に取り出す。ナノファイバの質量を測定し、試験片の面積で除した値をナノファイバ層の坪量とする。
【0039】
上述した坪量と関連して、本発明のシートの防漏性を一層高める観点から、ナノファイバ層はその厚みが3μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上120μm以下であることが更に好ましく、15μm以上100μm以下であることが一層好ましい。
【0040】
ナノファイバ層の厚みは次の方法で測定される。
凸部と凹部が交互に並ぶように剃刀などで本発明のシートをその厚み方向に沿って切断し、走査型電子顕微鏡で視野中央にナノファイバ層、及びその上下にナノファイバ層に隣接する層が写り込むように150~1000倍に拡大した写真を撮影する。
繊維径の違いに基づき、ナノファイバ層と、それに隣接する層との間に境界線を引く。
ナノファイバ層を挟んだ2つの境界線の最短直線距離を測定する。
この操作を異なる10断面に対して行い、1断面あたり1点、合計10点の測定値の算術平均値を算出する。平均値はマイクロメートルオーダーで算出し、小数点以下第一位を四捨五入する。
【0041】
ナノファイバ層の構成繊維は、繊維形成能を有する熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましい。ナノファイバ層の構成繊維は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどから構成されることが好ましい。細い繊維径のナノファイバ層を容易に製造する観点からは、ポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0042】
本発明のシートは、ナノファイバ層に加えて他の不織布層を備えていることが好ましい。他の不織布層は、例えば本発明のシートに良好な肌触りを付与したり、本発明のシートの表面に凹凸構造を付与したり、ナノファイバ層を支持したりする目的で用いられる。他の不織布層としては、例えばスパンボンド層、エアスルー層、エアレイド層、スパンレース層、ニードルパンチ層など、種々の不織布製造方法で製造された層が挙げられる。また、本発明のシートを備えた吸収性物品を着用した状態において、着用者が動作した場合の追従性を向上させ得る点から、他の不織布層は伸縮性を有していることも好ましい。
【0043】
本発明のシートがナノファイバ層を有する場合、該シートにおいて、該ナノファイバ層がメルトブローン層であり、且つ、メルトブローン層は、その少なくとも一方の面にスパンボンド層が配置されていることが好ましい。上述のとおりメルトブローン層は細い繊維で構成されていることから強度が低くなりやすい。そこでメルトブローン層の少なくとも一方の面に、該メルトブローン層と隣接してスパンボンド層を配置することで、メルトブローン層の強度が維持される。この観点から、メルトブローン層は、その両面に、該メルトブローン層と隣接してスパンボンド層が配置されていることが更に好ましい。
【0044】
以下の説明においては、メルトブローン層やエレクトロスピニング層などのナノファイバ層と、その両面に、該ナノファイバ層と隣接して配置された一対のスパンボンド層との積層構造のことを「SNS層」ともいう。
【0045】
本発明のシートがSNS層を有する場合、SNS層における各スパンボンド層は、その坪量及び/又は厚みが同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。また、SNS層における各スパンボンド層は、構成繊維の樹脂の種類が同種であってもよく、あるいは異種であってもよい。
SNS層における各スパンボンド層は、その坪量がそれぞれ独立に、3g/m以上50g/m以下であることが好ましく、4g/m以上40g/m以下であることが更に好ましく、5g/m以上30g/m以下であることが一層好ましい。
SNS層における各スパンボンド層は、その厚みがそれぞれ独立に、50μm以上500μm以下であることが好ましく、60μm以上400μm以下であることが更に好ましく、70μm以上300μm以下であることが一層好ましい。スパンボンド層の厚みは、上述したナノファイバ層の厚みの測定方法と同様の方法で測定される。
SNS層における各スパンボンド層は、構成繊維の樹脂が、それぞれ独立に、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどから構成されることが好ましい。
【0046】
本発明のシートが、SNS層を有する場合、該SNS層は、(a)本発明のシートにおける凹凸構造を構成していてもよく、(b)凹凸構造以外の部位に存在していてもよく、あるいは(c)凹凸構造を構成しており且つ凹凸構造以外の部位に存在していてもよい。
(a)の場合には、シート自体が引っ張られてもSNS層自体は引っ張られにくいという利点がある。したがって、本発明のシートを備えた吸収性物品を着用した状態において、着用者が動作した場合であっても、SNS層の防漏性が維持されやすい。
(b)の場合には、SNS層の繊維構造を破壊することなく簡便にシートを製造できるという利点がある。
(c)の場合には、シートを製造する際に凹凸構造を構成するSNS層の繊維構造が破壊されたとしても、凹凸構造以外の部位に存在するSNS層が防漏性を担保できるという利点がある。
【0047】
図4(a)には、本発明のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面22は平坦面になっている。
シート10における第1面21側には、単層のスパンボンド層13が位置している。スパンボンド層13は、凸部11及び凹部12を構成している。凸部11の内部は中空になっている。
シート10における第2面22側には、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなるSNS層15が位置している。SNS層15はその各面が平坦面になっている。
第1面21側に位置するスパンボンド層13は、その凹部12において、第2面22側に位置するSNS層15におけるスパンボンド層13と接合されている。この接合によって接合部16が形成されている。接合部16の平面視での形状は、凸部11の平面視での形状に応じて種々の形状をとり得る。凸部11が例えば図2に示す形状である場合には、接合部16は散点状に配置された、例えば円形、楕円形、多角形、十文字形などであり得る。凸部11が例えば図3に示す形状である場合には、接合部16は直線状、曲線状、破線状などであり得る。
接合部16は、例えば融着や接着などの各種の接合手段によって形成されている。
図4(a)に示す実施形態のシート10は、凸部11を有し且つナノファイバ層14を有しているので、高い防漏性を発現する。
【0048】
図4(b)に示すシート10においては、第1面21側に、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなるSNS層15が位置している。SNS層15は、凸部11及び凹部12を構成している。凸部11の内部は中空になっている。
シート10における第2面22側には単一のスパンボンド層13が位置している。このスパンボンド層13はその各面が平坦面になっている。
SNS層15は、その凹部12において、第2面22側に位置するスパンボンド層13と接合されている。この接合によって接合部16が形成されている。
これら以外の構成は、図4(a)に示す実施形態と同様である。
図4(b)に示す実施形態のシート10は、凸部11を有し且つ凸部11にメルトブローン層14が位置しているので、図4(a)に示す実施形態に比べて一層高い防漏性を発現する。
【0049】
図4(c)に示すシート10は、第1面21側に、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなる第1SNS層15aが位置している。第1SNS層15aは、凸部11及び凹部12を構成している。凸部11の内部は中空になっている。
シート10における第2面22側には第2SNS層15bが位置している。第2SNS層15bも、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなる。第2SNS層15bはその各面が平坦面になっている。
これ以外の構成は、図4(a)に示す実施形態と同様である。
図4(c)に示す実施形態のシート10によれば、凸部11にナノファイバ層14が位置していることに加えて、第2面22側にもナノファイバ層14が位置しているので、図4(b)に示す実施形態に比べて防漏性が一層高くなる。
【0050】
本発明のシートは、エアスルー層を備えていることが好ましい。エアスルー層は、本発明のシートに良好な肌触りを付与する目的で用いられる。後述する図11に示す方法で本発明のシートを製造する場合には、エアスルー層は、本発明のシートの表面に凹凸形状を付与する目的で用いられる。
【0051】
本発明のシートがエアスルー層を含む場合、エアスルー層は、ナノファイバ層と隣接して配置することができる。例えばナノファイバ層の一方の面に、該ナノファイバ層と隣接してエアスルー層を配置することができる。これに代えて、ナノファイバ層の各面に、該ナノファイバ層と隣接してエアスルー層を配置することもできる。
【0052】
ナノファイバ層の各面にエアスルー層が配置されている場合、各エアスルー層は、その坪量及び/又は厚みが同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。また、各エアスルー層は、構成繊維の樹脂の種類が同種であってもよく、あるいは異種であってもよい。
各エアスルー層は、その坪量がそれぞれ独立に、6g/m以上70g/m以下であることが好ましく、8g/m以上60g/m以下であることが更に好ましく、10g/m以上50g/m以下であることが一層好ましい。
各エアスルー層は、その厚みがそれぞれ独立に、0.3mm以上5mm以下であることが好ましく、0.4mm以上4mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以上3mm以下であることが一層好ましい。エアスルー層の厚みは、上述したナノファイバ層の厚みの測定方法と同様の方法で測定される。
各エアスルー層は、構成繊維の樹脂が、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどから構成されることが好ましい。各エアスルー層の構成繊維の樹脂の種類は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。また各エアスルー層は、これらの樹脂を含む芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維から構成されていてもよい。
【0053】
図5には、本発明のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面22は平坦面になっている。
図5に示すシート10は、ナノファイバ層14の各面にエアスルー層17a,17bが配置された構造を有している。ナノファイバ層14及び一対のエアスルー層17a,17bはいずれも、第1面21側に向けて突出して凸部11を形成している。凸部11の内部は中実になっている。凸部11の内部は、主として第2面22側に位置するエアスルー層17bの構成繊維によって満たされている。
一対のエアスルー層17a,17bのうち、第2面22側に位置するエアスルー層17bは、その外面(すなわち露出面)が平坦になっている。
ナノファイバ層14及び一対のエアスルー層17a,17bは、シート10の凹部12において圧密化され且つ一体的に接合されている。
これら以外の構成は、先に述べた図4(a)に示す実施形態と同様である。
図5に示す実施形態のシート10は、凸部11を有し且つ凸部11にナノファイバ層14が位置しているので、高い防漏性を発現する。
【0054】
本発明のシートが、SNS層を有する場合、該SNS層における一対のスパンボンド層のうちの少なくとも一方のスパンボンド層の外面(すなわちナノファイバ層との対向面と反対の面)に、エアスルー層が配置されていることも好ましい。つまり、本発明のシートは、SNS層と、該SNS層における少なくとも一方のスパンボンド層の外面に隣接して配置されたエアスルー層とを有することが好ましい。以下の説明においては、SNS層と、該SNS層における少なくとも一方のスパンボンド層の外面に隣接して配置されたエアスルー層との積層構造のことを「〔SNS+AT〕層」ともいう。
【0055】
本発明のシートが、〔SNS+AT〕層を有する場合、該〔SNS+AT〕層におけるエアスルー層は、(a)本発明のシートにおける凹凸構造を構成していてもよく、あるいは(b)凹凸構造以外の部位に存在していてもよい。
(a)の場合には、凹凸面が肌対向面である場合は凹凸構造によって吸収体との接触面積を低減でき、且つ、SNS層への体液の付着を抑制できる利点がある。一方、凹凸面が非肌対向面である場合はシートの外観に意匠性を付与できるという利点がある。この場合のエアスルー層の好適な坪量は上述したとおりである。
(b)の場合には、エアスルー層が肌対向面に位置する場合には、吸収体とSNS層との接触面積を低減することができるという利点がある。エアスルー層が非肌対向面に位置する場合には肌触りを向上できるという利点がある。この場合のエアスルー層の好適な坪量は上述したとおりである。
【0056】
図6(a)には、〔SNS+AT〕層を有する本発明のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面は平坦面になっている。
図6(a)に示すシート10においては、第1面21側に、エアスルー層17が位置している。エアスルー層17は、凸部11及び凹部12を構成している。凸部11の内部は中実になっている。
シート10における第2面22側にはSNS層15が位置している。SNS層15はその各面が平坦面になっている。
エアスルー層17は、その凹部12において、第2面22側に位置するSNS層15と圧密化され且つ一体的に接合されている。この接合によって接合部16が形成されている。
これら以外の構成は、図4(a)に示す実施形態と同様である。
図6(a)に示すシート10は、凸部11を有し且つナノファイバ層14を有しているので、高い防漏性を発現する。
【0057】
図6(b)に示すシート10は、エアスルー層17によって形成されている凸部11の内部が中空になっている。これ以外の構成は、図6(a)に示す実施形態と同様である。
図6(b)に示すシート10は、凸部11の内部が中空になっているので、液の透過の阻止性が図6(a)に示すシートよりも高くなる。
【0058】
図7(a)には、〔SNS+AT〕層を有する本発明の別の実施形態のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面は平坦面になっている。
図7(a)に示すシート10においては、第1面21側に、SNS層15が位置している。SNS層15は、凸部11及び凹部12を構成している。
シート10における第2面22側にはエアスルー層17が位置している。エアスルー層17はその外面(すなわち露出面)が平坦面になっている。エアスルー層17におけるSNS層15との対向面は凹凸構造になっている。この凹凸構造は、SNS層15によって形成される凹凸構造と相補形状になっている。したがって、凸部11の内部は中実になっており、凸部11の内部は、エアスルー層17の構成繊維で満たされている。
SNS層15は、その凹部12において、第2面22側に位置するエアスルー層17と圧密化され且つ一体的に接合されている。この接合によって接合部16が形成されている。
これら以外の構成は、図4(a)に示す実施形態と同様である。
図7(a)に示すシート10は、凸部11を有し且つナノファイバ層14を有しているので、高い防漏性を発現する。
【0059】
図7(b)に示すシート10は、凸部11の内部にエアスルー層17の構成繊維が存在している。しかしエアスルー層17の構成繊維は、凸部11の内部を完全に満たしておらず、凸部11の内部に空間が存在し、凸部の内部が中空になっている。これ以外の構成は、図7(a)に示す実施形態と同様である。
図7(b)に示すシート10は、凸部11の内部が中空になっているので、液の透過の阻止性が図7(a)に示すシートよりも高くなる。
【0060】
図8には、〔SNS+AT〕層を有する本発明の更に別の実施形態のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21は凹凸構造になっている。一方、第2面22は平坦面になっている。
図8に示すシート10は、SNS層15の各面にエアスルー層17a,17bが配置された構造を有している。SNS層15及び一対のエアスルー層17a,17bはいずれも、第1面21側に向けて突出して凸部11を形成している。凸部11の内部は中実になっている。凸部11の内部は、主として第2面22側に位置するエアスルー層17bの構成繊維によって満たされている。
一対のエアスルー層17a,17bのうち、第2面22側に位置するエアスルー層17bは、その外面(すなわち露出面)が平坦になっている。
SNS層15及び一対のエアスルー層17a,17bは、シート10の凹部12において圧密化され且つ一体的に接合されている。
これら以外の構成は、先に述べた図4(a)に示す実施形態と同様である。
図8に示す実施形態のシート10は、凸部11を有し且つ凸部11にナノファイバ層14が位置しているので、高い防漏性を発現する。
【0061】
図9(a)には、〔SNS+AT〕層を有する本発明の更に別の実施形態のシートの厚み方向の断面構造が模式的に示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面は平坦面になっている。
図9(a)に示すシート10は、第1面21側に、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなる第1SNS層15aが位置している。第1SNS層15aは、凸部11及び凹部12を構成している。
シート10における第2面22側には第2SNS層15bが位置している。第2SNS層15bも、スパンボンド層13、ナノファイバ層14及びスパンボンド層13からなる。第2SNS層15bはその各面が平坦面になっている。
第1SNS層15aと第2SNS層15bとの間にはエアスルー層17が配置されている。エアスルー層17は、第1SNS層15aと第2SNS層15bとによって画成される凸部11の空間の全域を満たすように、凸部11内に位置している。したがって、凸部11の内部は中実になっており、凸部11の内部は、エアスルー層17の構成繊維で満たされている。
図9(a)に示す実施形態のシート10によれば、凸部11にナノファイバ層14が位置していることに加えて、第2面22側にもナノファイバ層14が位置しているので、防漏性が一層高くなる。
【0062】
図9(b)に示すシート10では、第1SNS層15aと第2SNS層15bとによって画成される凸部11の内部に、エアスルー層17の構成繊維が存在している。しかしエアスルー層17の構成繊維は、凸部11の内部を完全に満たしておらず、凸部11の内部に空間が存在し、凸部の内部が中空になっている。これ以外の構成は、図9(a)に示す実施形態と同様である。
図9(b)に示すシート10は、凸部11の内部が中空になっているので、液の透過の阻止性が図9(a)に示すシートよりも高くなる。
【0063】
図10には、本発明のシート10の更に別の実施形態が示されている。同図に示すシート10は、第1面21と、その反対側に位置する第2面22とを有する。シート10における第1面21側は凹凸構造になっている。一方、第2面22は平坦面になっている。シート10は、第1面21側に、凹凸構造を有する第1不織布層23が位置している。第2面22側には、第2不織布層24が位置している。両不織布層23,24は接合部16において接合されている。
【0064】
シート10における第1不織布層23は、凸部11及び凹部12を構成している。凸部11の内部は中空になっている。
第1不織布層23はナノファイバ層からなるか、又はナノファイバ層を含む不織布層からなる。
第1不織布層23がナノファイバ層からなる場合、該ナノファイバ層は、メルトブローン層であるか、又はエレクトロスピニング層であることが好ましい。
一方、第1不織布層23がナノファイバ層を含む不織布層からなる場合、第1不織布層23は、ナノファイバ層の一方の面又は両方の面に、スパンボンド不織布やエアスルー不織布が積層された積層不織布であることが好ましい。ナノファイバ層は、メルトブローン層であるか、又はエレクトロスピニング層であることが好ましい。
【0065】
図10に示すシート10における第2面22側に位置する第2不織布層24は、その各面が平坦面になっている。
第2不織布層24は弾性フィラメントを含む不織布であることが好ましく、とりわけ好ましく用いられる不織布は、弾性フィラメント及び非弾性繊維を含む不織布である。
第2不織布層24は、弾性フィラメント25が、実質的に非伸長状態で、非弾性繊維を含む不織布26,26に接合されていることが好ましい。また、2枚の不織布26,26に複数の弾性フィラメント25が接合された構成を有していることが好ましい。
複数の弾性フィラメント25は、互いに交差せずに一方向Xに延びるように配列していることが好ましく、こうすることにより前記一方向Xに伸縮可能になる。各弾性フィラメント25は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、あるいは蛇行しながら延びていてもよい。
また、複数の弾性フィラメント25は、X方向と直交する方向(すなわち紙面と直交する方向)に間隔をあけて配置されていることが好ましい。
【0066】
第2不織布層24を構成する不織布26,26はいずれも伸長可能であることが好ましい。不織布26,26は、典型的には実質的に非弾性の繊維を含んでなるものであり、実質的に非弾性である。
弾性フィラメント25の「弾性」及び不織布26の非弾性の「弾性」とは、伸ばすことができ且つ元の長さに対して50%伸ばした状態(元の長さの150%、すなわち1.5倍の長さにした状態)から力を解放したときに、元の長さの110%以下の長さまで戻る性質である。
不織布26,26は、弾性フィラメント25の延びるX方向と同方向に伸長可能となっていることが好ましい。
本明細書において、「伸長可能」とは、(イ)不織布26,26の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。
各不織布26,26は、弾性フィラメント25と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメント25と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント25と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。不織布26を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。後述するシート10の好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント25を、不織布26に溶着させるときの該不織布26の搬送性が良好になる等の点から、該不織布26はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
【0067】
第2不織布層24を構成する複数の弾性フィラメント25は、それぞれ、第2不織布層24の全長にわたって実質的に連続していることが好ましい。各弾性フィラメント25は典型的には弾性樹脂を含んでいる。
【0068】
弾性フィラメント25は、糸状の合成ゴムや天然ゴムであり得る。あるいは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。弾性フィラメント25は、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。また、弾性フィラメント25は、未延伸糸を延伸して得られたものであることが好ましい。
また、弾性フィラメント25は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。これにより、弾性フィラメント25を、非伸長状態で不織布26に接合させることが容易となる。
延伸の具体的な操作としては、(a)弾性フィラメント25の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(b)弾性フィラメント25の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述するシート10の好適な製造方法においては、弾性フィラメント25は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することにより得られる。
【0069】
各弾性フィラメント25は、その全長にわたって不織布26,26に接合されていることが好ましい。
「その全長にわたって接合されている」とは、弾性フィラメント25と接触しているすべての繊維(不織布26の構成繊維)が、該弾性フィラメント25と接合されていることを要せず、弾性フィラメント25に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント25と不織布26の構成繊維とが接合されていることをいう。
弾性フィラメント25と不織布26,26との接合の様式としては、例えば溶着、接着剤による接着などが挙げられる。溶融紡糸により得られた弾性フィラメント25の固化前に、該弾性フィラメント25を不織布26に溶着させることも好ましい。この場合、不織布26と弾性フィラメント25とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。あるいは、各不織布26と弾性フィラメント25とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。
不織布26と弾性フィラメント25との接合は、溶融又は軟化した状態の弾性フィラメント25が、不織布26と接触した状態で固化することのみによって達成されていること、すなわち接着剤を用いずに接合されていることが、第2不織布層24の柔軟性の向上の点から好ましい。
【0070】
第2不織布層24の伸縮性は、弾性フィラメント25の弾性に起因して発現する。第2不織布層24を、弾性フィラメント25の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント25及び不織布26,26が伸長する。そして第2不織布層24の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント25が収縮し、その収縮に連れて不織布26が引き伸ばし前の状態に復帰する。
【0071】
第2不織布層24としては、非伸縮性の不織布26,26に非伸長状態の弾性フィラメント25を接合して非伸長性の複合材を作製した後、この複合材を原反シートとして、凸条部と溝とを交互に有し互いに噛み合う一対の凹凸面間、具体的には、歯溝を有する一対のロール間に通過させることによって伸縮性を発現させたものを使用することが好ましい。この製造方法の詳細については後述する。
【0072】
本発明のシートは、厚み方向の半分よりも一方の側にナノファイバ層の一部又は全部が位置していることが好ましい。これによって本発明のシートは防漏性が一層高くなる。特に、本発明のシートを吸収性物品の構成部材として吸収性物品に組み込んだ状態において、該シートの厚み方向の半分よりも吸収体寄りの位置にナノファイバ層の一部又は全部が位置していることが、とりわけナノファイバ層の全部が位置していることが、防漏性を一層高める点から好ましい。この観点から、例えば図4(b)、図4(c)、図5図7(a)、図7(b)、図8図9(a)、図9(b)及び図10に示す実施形態において、第1面21が吸収体に対向するようにシート10を配置することが好ましく、図4(a)、図6(a)及び図6(b)に示す実施形態においては、第2面22が吸収体に対向するようにシート10を配置することが好ましい。
上述した「厚み方向の半分」とは、本発明のシートに49Paの圧力を加えた状態で測定された厚みの半分のことである。
【0073】
本発明のシートが上述した図4ないし図10のいずれの実施形態である場合であっても、本発明のシートを吸収性物品の構成部材として用いる場合には、該シートにおける凹凸構造を有する面を、吸収体に対向するように配置することが好ましい。例えば本発明のシートを、吸収体の非肌対向面に配置し且つ該シートにおける凹凸構造を有する面が吸収体に対向するように配置して、該シートを裏面シートとして用いることができる。また、本発明のシートを、該シートにおける凹凸構造を有する面が内面(すなわち吸収体対向面)となるように、防漏カフとして用いることができる。このように本発明のシートを配置することで、該シートの防漏性を一層高めることが可能となる。
【0074】
本発明のシートにおける凹凸構造を有する面を、吸収体に対向するように配置する場合、該シートは、ナノファイバ層よりも非肌対向面側に、肌対向面よりも平坦な不織布層を有することが好ましい。これによって、凹凸構造を維持しやすくなる。したがって、本発明のシートを備えた吸収性物品を着用した状態において、着用者が動作した場合であっても、本発明のシートと吸収体との接触面積を安定的に低減できるという効果が奏される。肌対向面よりも平坦な不織布層は、ナノファイバ層以外の層であることが好ましいが、ナノファイバ層であってもよく、あるいはナノファイバ層を含む層であってもよい。この観点から、例えば図4(b)、図4(c)、図5図7(a)、図7(b)、図8図9(a)、図9(b)及び図10に示す実施形態において、第1面21が吸収体に対向するようにシート10を配置することが好ましい。
【0075】
本発明のシートにおける凹凸構造を有する面を、吸収体に対向するように配置する場合、該シートは、ナノファイバ層よりも非肌対向面側にエアスルー層を有することも好ましい。これによって、エアスルー層が有するクッション感が顕著なものとなり、吸収性物品の肌触りが良好になる。
例えば図5図7(a)、図7(b)、図8図9(a)、図9(b)及び図10に示す実施形態において、第1面21を肌対向面として用い、第2面22を非肌対向面として用いることが好ましい。
【0076】
本発明のシートにおける凹凸構造を有する面を、吸収体に対向するように配置する場合、該シートは、ナノファイバ層よりも肌対向面側にエアスルー層を有することも好ましい。これによって、エアスルー層が有するクッション感が顕著なものとなり、吸収性物品の肌触りが良好になる。
例えば図5に示す実施形態において、第1面21を肌対向面として用い、第2面22を非肌対向面として用いることが好ましい。
【0077】
本発明のシートが上述した図4ないし図10のいずれの実施形態である場合であっても、本発明のシートは、伸縮性を有していてもよく、あるいは伸縮性を有していなくてもよい。本発明のシートが伸縮性を有する場合には、本発明のシートを備えた吸収性物品を着用した状態において、着用者が動作した場合の追従性が向上するという利点がある。本明細書において伸縮性とは、所定方向に伸長可能であり且つ伸長を解除すると収縮する性質のことである。
【0078】
次に本発明のシートの好適な製造方法について説明する。図11には、本発明のシートを製造するために用いられる好適な装置の一例が模式的に示されている。同図に示す装置40は、例えば図7(a)、図7(b)及び図8に示すシート10の製造に好適に用いられる。
【0079】
図11に示す装置30は、カード機31を備えている。カード機31においては、カードウエブ32が製造される。カードウエブ32は、熱の付与によって収縮が可能な熱収縮性繊維を含んでいることが好ましい。熱収縮性繊維として潜在捲縮繊維を用いると、明瞭な凸部を有するシートが得られる観点から好ましい。
【0080】
カード機31から繰り出されたカードウエブ32は、その搬送過程においてSNSウエブ33と重ね合わされる。SNSウエブ33は、メルトブローン層の各面にスパンボンド層が配置されてなる3層構造の積層ウエブである。SNSウエブ33においては、3つの層がヒートエンボスや接着剤などの各種接合手段によって接合され、一体化されていてもよい。あるいは3つの層が接合されずに積層されていてもよい。なお、SNSウエブ33に代えて、メルトブローンウエブを用いたり、メルトブローン層の一面にスパンボンド層が配置されてなる2層構造の積層ウエブを用いたりすることもできる。
【0081】
カードウエブ32及びSNSウエブ33は、エンボスロール34aとアンビルロール34bとを備えた熱エンボスロール装置34に導入されて熱エンボス加工される。熱エンボス加工によって両ウエブ32,33は部分的に接合されて一体化される。これによって、目的とするシートの前駆体35が得られる。
【0082】
得られたシート前駆体35は、その搬送経路に配置された熱処理装置36内に導入されて熱処理が施される。熱処理は、カードウエブ32に含まれている熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で行う。
熱処理によって、カードウエブ32中の熱収縮性繊維が熱収縮し、カードウエブ32はその面方向の寸法が短くなる。一方、SNSウエブ33には熱収縮性繊維が含まれていないので、SNSウエブ33の熱収縮は生じない。カードウエブ32の面方向の寸法が短くなっても、SNSウエブ33の面方向の寸法は変化しないので、SNSウエブ33を構成する繊維は、行き場を失い厚み方向に移動する。その結果、SNSウエブ33が隆起する。SNSウエブ33の隆起は、カードウエブ32とSNSウエブ33との接合部間に生じる。これによってSNSウエブ33に多数の凸部が生じる。接合部は、凸部間に位置する凹部となる。このようにして、目的とするシート10が得られる。
熱処理装置36における熱処理は、熱風をエアスルー方式で吹き付ける方法の他、マイクロウェーブの照射、蒸気の吹き付け、赤外線の照射、ヒートロールの接触等の方法を採用することもできる。
熱処理中は、シート前駆体35をピンテンターで固定することが、明瞭な凸部11の形成の観点から好ましい。
【0083】
熱処理装置36における熱処理の条件を適切に制御して、カードウエブ32の収縮の程度を大きくすると、図7(a)に示すとおり、凸部11の内部が繊維で満たされたシート10が得られる。一方、カードウエブ42の収縮の程度が小さい場合には、図7(b)に示すとおり、凸部11の内部に空間を有するシート10が得られる。
【0084】
図12には、本発明のシートを製造するために用いられる好適な装置の一例が模式的に示されている。同図に示す装置40は、例えば図4(a)、図4(b)、図4(c)、図6(b)及び図7(b)に示すシート10の製造に好適に用いられる。
【0085】
図12に示す装置40を用いたシート10の製造においては、凹凸賦形された第1繊維シート41の一方の面側に、第2繊維シート42を重ね合わせる工程と、第1繊維シート41と第2繊維シート42とを接合する工程とが行われる。接合工程前には、第1繊維シート41を凹凸賦形する工程が行われる。
第1繊維シート41は、シート10における第1面21側に位置する不織布層の原反であり、例えば図4(a)に示すシート10においては、凹凸構造を有するスパンボンド層13の原反である。
第2繊維シート42は、シート10における第2面22側に位置する不織布層の原反であり、例えば図4(a)に示すシート10においては、SNS層15の原反である。
【0086】
図12に示す装置40を用いたシート10の製造について詳述する。先ず、第1繊維シート41の凹凸賦形について説明する。第1繊維シート41の凹凸賦形は、周面が凹凸形状となっている第1ロール43と、第1ロール43の凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール44とを備えた賦形装置45によって行うことが好ましい。
第1ロール43及び第2ロール44はいずれも、ロールの回転軸に沿って延びる凸条部46Aと凹条部46Bとを、ロールの回転方向に沿って交互に有する構造をしていることが好ましい。
第1ロール43と第2ロール44とは、両ロールの周面を噛み合わせた状態下に互いに反対方向に回転するように構成されている。
【0087】
両ロール43,44が噛み合っている状態下に、両ロール43,44の噛み合い部に第1繊維シート41を供給して、第1繊維シート41を凹凸賦形する。両ロール43,44の噛み合い部においては、第1繊維シート41の複数箇所が、第2ロール44の凸条部によって第1ロール43の凹条部に押し込まれ、その押し込まれた部分が、目的とするシート10の凸部11となる。
【0088】
凹凸賦形に際しては、第1ロール43の周面において該周面の外部からロール43の内部に向けて空気を吸引して、該周面に第1繊維シート41を密着させることが、第1繊維シート41を確実に凹凸賦形する点から好ましい。この目的のために、第1ロール43に設けられた凹条部に吸引孔(図示せず)を設けておき、該吸引孔を通じて、ロール43の外部から内部に向けて空気を吸引することが好ましい。
【0089】
凹凸賦形された第1繊維シート41は、第1ロール43の周面に保持された状態で搬送され、噛み合い部分から移動することが好ましい。
一方、第2繊維シート42はその原反から繰り出され、凹凸賦形された第1繊維シート41と重ね合わされる。両シート41,42の重ね合わせと同時に、又は重ね合わせの後に、両シート41,42は接合装置47へ導入される。接合装置47は、例えば図示のとおりヒートロールであり得る。あるいは接合装置47は、超音波ホーンを備えた超音波シール装置(図示せず)であり得る。
接合装置47においては、第1繊維シート41と第2繊維シート42との間が部分的に接合されて上述した接合部16が形成される。
【0090】
図12に示す装置40を用いたシート10の製造においては、第1繊維シート41の供給速度V1を、第2繊維シート42の供給速度V2よりも速くすることが好ましい。これによって、第1繊維シート41が凹凸賦形されるときに、該第1繊維シート41が損傷を受けづらくなる。このことは、特に、第1繊維シート41にメルトブローン層が含まれている場合に効果的である。この理由は、メルトブローン層は比較的強度が低く、凹凸賦形によって損傷を受けやすいからである。第1繊維シート41の供給速度V1は、凹凸賦形が可能な程度に、第2繊維シート42の供給速度V2よりも速くすればよく、その程度は凹凸構造の程度に応じて適切に設定すればよい。
【0091】
図13(a)ないし(d)には、本発明のシートを製造するために用いられる好適な装置の別の一例が示されている。同図に示す装置50は、例えば図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示すシート10の製造に好適に用いられる。
【0092】
図13(a)に示す装置50においては、平坦な基板51の主面上に、複数の仕切壁52が、一定の間隔を置いて平行に配置されている。この装置50は、シートの凹凸賦形部材として用いられる。
【0093】
図13(a)に示す装置50における仕切壁52上には、図13(b)に示すとおり第1繊維シート53が載置される。第1繊維シート53は、例えばスパンボンド層やSNS層であり得る。
【0094】
次いで図13(c)に示すとおり、押し込み部材54を用いて、第1繊維シート53を仕切壁52間の空間に押し込んで、第1繊維シート53を凹凸賦形する。押し込み部材54は、第1繊維シート53を仕切壁52間の空間に押し込むことが可能な材料であればその種類に特に制限はない。したがって押し込み部材54は、例えば糸状体であり得る。勿論、押し込み部材54は棒状体のような剛直体であってもよい。
【0095】
第1繊維シート53が凹凸賦形されたら、図13(d)に示すとおり、第1繊維シート53上に第2繊維シート55を配置する。上述したとおり第1繊維シート53は凹凸賦形されていることから、第1繊維シート53における凸部の頂部が、第2繊維シート55と当接することになる。第2繊維シート55は、例えばスパンボンド層やSNS層であり得る。
第1繊維シート53上に第2繊維シート55が配置された状態下に、両シート53,55に熱を付与して、両シート53,55が接触している部位において両シート53,55を接合する。熱の付与には、例えば加熱体の第2繊維シート55への押し当て、熱風の吹き付け、及び赤外線の照射などの方法を採用できる。
【0096】
図14(a)ないし(e)には、本発明のシートを製造するために用いられる好適な装置の別の一例が示されている。同図に示す装置60は、例えば図4(a)、図4(b)及び図4(c)並びに図6(b)に示すシート10の製造に好適に用いられる。
【0097】
図14(a)に示す装置60においては、平坦な基板61の主面上に、複数の柱状部材62が、該主面の縦方向及び横方向に一定の間隔を置いて配置されている。この装置60は、シートの凹凸賦形部材として用いられる。柱状部材62は円柱であってもよく、あるいは角柱であってもよい。
装置60には、図14(b)に示すとおり、隣り合う柱状部材62の間に、賦形規制部材63が配置される。賦形規制部材63は、後述する図14(d)に示す工程において、第1繊維シート64に施される凹凸賦形の程度を調整する目的で配置される。
図14(b)に示す状態下、装置60における柱状部材62上に、図14(c)に示すとおり第1繊維シート64を載置する。第1繊維シート64は、例えばスパンボンド層やSNS層であり得る。あるいは第1繊維シート64は、カードウエブであり得る。
【0098】
次いで図14(d)に示すとおり、押し込み部材65を用いて、第1繊維シート64を柱状部材62間の空間に押し込んで、第1繊維シート64を一次凹凸賦形する。押し込み部材65は棒状体のような剛直体であり得る。押し込み部材65による第1繊維シート64の押し込みは、賦形規制部材63によって一定の程度に調整される。
【0099】
第1繊維シート64が一次凹凸賦形されたら、押し込み部材65を待避させるとともに賦形規制部材63を除去する。次いで、図14(e)に示すとおり第1繊維シート64に熱風を吹き付けて二次凹凸賦形する。熱風の吹き付けは1回のみ行ってもよく、あるいは2回以上行ってもよい。2回以上熱風の吹き付けを行う場合には、1回目と2回目以降とで、熱風の温度を同一に設定し且つ2回目以降の熱風の風速を1回目よりも遅く設定することが、明瞭な凹凸賦形が可能である点から好ましい。
【0100】
このようにして第1繊維シート64が凹凸賦形されたら、上述した図13(d)に示す手順と同様にして、第1繊維シート64上に第2繊維シート(図示せず)を配置する。第2繊維シートは、例えばスパンボンド層やSNS層であり得る。その後は、上述した図13(d)に示す手順と同様に、第1繊維シートと第2繊維シートを接合することで、目的とするシートが得られる。なお、第1繊維シートと第2繊維シートとの接合には、ホットメルト接着剤を用いることもできる。
【0101】
図15及び図16には、本発明のシートを製造するために用いられる、好適な装置の別の一例が示されている。図16に示す装置70は、例えば図10に示すシート10の製造に好適に用いられる。
本製造装置70を用いたシート10の製造方法は、図16に示すとおり、第1不織布層23の原反である第1繊維シート23Aと、第2不織布層24の原反である第2繊維シート24Aとを部分的に接合してシート10を得る接合工程とを具備する。具体的に説明すると、本製造方法は、伸縮性を有する第2繊維シート24Aを伸長させた状態で、第1繊維シート23Aの一方の面側に第2繊維シート24Aを重ね合わせる工程と、両シート23A,24Aを部分的に接合する工程とを有することが好ましい。
【0102】
また、製造装置70を用いたシート10の製造方法は、第2不織布層24の原反として、図15に示すとおり、第2繊維シート24Aの前駆体である複合材24Bを製造する前駆体製造工程と、図16に示すとおり、前記複合材24Bに延伸加工を施して第2不織布層24の原反である、伸縮性を有する第2繊維シート24Aを得る伸縮性発現処理工程とを有することが好ましい。
【0103】
前駆体製造工程においては、図15に示すとおり、複数本の弾性フィラメント25を、一方向に延びるように且つ実質的に非伸長状態下に、不織布26,26に接合して、第2繊維シート24Aの前駆体である複合材24Bを得ることが好ましい。より具体的には、紡糸ノズル86から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント25を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント25の固化前に、該弾性フィラメント25が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント25を2枚の不織布26,26に溶着させることが好ましい。これにより、複数の弾性フィラメント25が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたって不織布26,26に接合されている、第2繊維シート24Aの前駆体としての複合材24Bを製造する。
【0104】
本実施形態における伸縮性発現処理工程においては、歯溝延伸装置75を用いて、第2繊維シート24Aの前駆体としての複合材24Bに延伸処理を施す。
この延伸処理は、複合材24Bを、弾性フィラメント25の延びる方向に沿って延伸して、両不織布26,26に伸長性を付与する処理である。ここでいう、伸長性の付与には、多少の伸長性を有する不織布26の伸長性を大きく向上させる場合も含まれる。
【0105】
歯溝延伸装置75は、軸方向に延びる凸条部である歯と、歯と歯との間に形成され軸方向に延びる溝とを周方向に交互に有しており、互いに噛み合う一対の歯溝ロール76,77を備えていることが好ましい。
歯溝延伸装置75を用いた伸縮性発現処理工程においては、一対の歯溝ロール76,77間に、前駆体製造工程で得られた複合材24Bを供給し、複合材24Bを延伸させることで、複合材24Bに含まれる不織布26,26が伸長可能となった第2繊維シート24Aを得る。延伸を効果的に行うことを目的として、歯溝延伸装置75の上流側に第1ニップロール88を配し且つ歯溝延伸装置75の下流側に第2ニップロール89を配して、複合材24Bに張力を与えた状態下に伸縮性発現処理工程を行うことが好ましい。
歯溝ロール76,77の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられ、特にこれらの歯幅を細くしたものが好ましい。
【0106】
このようにして、複合材24Bが一対の歯溝ロール76,77等によって部分的に延伸させることで、第2繊維シート24Aが得られる。得られた第2繊維シート24Aは、弾性フィラメント25の延びる方向に沿って伸縮性が発現したものとなる。
なお図15及び図16には、複合材24Bをロール状に巻き取ってロール状物24Rとした後、ロール状物24Rから巻き出した複合材24Bに延伸処理を施す場合を示したが、製造した複合材24Bを、ロール状に巻き取ることなく、歯溝ロール76,77を用いた歯溝延伸装置に導入してもよい。
また、第1繊維シート23Aに関しては、図16に示すとおり、該第1繊維シート23Aのロール状物23Rから該第1繊維シート23Aを巻き出して使用することができる。
以上、歯溝ロール76,77によって複合材24Bを延伸し、複合材24Bに伸縮性を付与させる方法を示したが、この方法に代えて、歯溝ロールを使わず、第2繊維シートとして伸縮性のある不織布を使用し、該不織布を伸長状態で貼り合わせて、第2繊維シート24Aを製造してもよい。
【0107】
本実施形態における接合工程においては、伸長状態の第2繊維シート24Aと第1繊維シート23Aとが重ねられた積層シート10Aに対して、第1繊維シート23Aと第2繊維シート24Aとを部分的に接合する接合加工が施されることが好ましい。
接合加工には、第1繊維シート23Aと第2繊維シート24Aとを部分的に接合させることができる任意の装置を用いることができる。例えば、ヒートシール装置、超音波シール装置、高周波シール装置等を用いることができる。
図16には、超音波シール装置71Aを用いて、第1繊維シート23Aと第2繊維シート24Aとを部分的に接合する状態が示されている。超音波シール装置71Aは、超音波ホーン72及び該ホーン72に対向する位置に配置されたアンビルロール71を備えている。積層シート10Aは、アンビルロール71の周面に沿って搬送される。積層シート10Aは、搬送過程において、超音波ホーン72によって超音波が照射され、それによって第2繊維シート24Aと第1繊維シート23Aとが部分的に接合される。
【0108】
以上の図11ないし図16に示す装置30,40,50,60,70を用いた本発明のシートの製造においては、製造後のシート10に撥水剤を付与することができる。あるいは、製造前の原反に撥水剤を付与することができる。撥水剤の付与によって、本発明のシートの防漏性が一層高まる。スパンボンド不織布、メルトブローン不織布又はエレクトロスピニング不織布を紡糸するときに用いる樹脂に撥水剤を内添してもよい。樹脂に内添された撥水剤がブリードアウトすることで、繊維表面に撥水性が付与される。
撥水剤としては、ノニオン系撥水剤、アニオン系撥水剤、カチオン系撥水剤、両性系撥水剤、シリコーン系撥水剤、フッ素化合物系撥水剤、油脂などが挙げられる。本発明の効果が奏される限りにおいてこれらの撥水剤に限られないが、撥水性の観点からフッ素化合物系撥水剤及び油脂を用いることが好ましい。油脂としてはトリグリセリドが好ましく、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、パーム極度硬化油、ハイエルシン菜種硬化油がより好ましい。
【0109】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば図4ないし図10に示す実施形態においては、シート10の第1面21が凹凸構造を有し且つ第2面22は平坦面になっているが、これに代えて第1面21及び第2面22の双方が凹凸構造を有していてもよい。
【0110】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品用シートを開示する。
<1>
複数の不織布層が積層されてなる吸収性物品用シートであって、
前記シートは少なくとも一方の面が凹凸構造を有しており、
表面張力が60mN/mの液に対して撥水性を有する、吸収性物品用シート。
【0111】
<2>
前記表面張力が好ましくは50mN/mの液に対して、更に好ましくは40mN/mの液に対して撥水性を有する、前記<1>に記載の吸収性物品用シート。
<3>
前記シートの一方の面内において、一方向に沿って凸部と凹部とが交互に配置されているとともに、該一方向に直交する方向に沿って凸部と凹部とが交互に配置されている、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品用シート。
<4>
前記シートの一方の面内における一方向に沿って筋状に連続して延びる凸部と、該一方向に沿って筋状に連続して延びる凹部とが、該一方向と直交する方向に沿って交互に配されている、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品用シート。
<5>
前記凹凸構造における凸部の幅が0.5mm以上8mm以下である、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<6>
前記凹凸構造における凸部の幅は、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、
前記凹凸構造における凸部の幅は、6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることが更に好ましい、前記<5>に記載の吸収性物品用シート。
【0112】
<7>
前記凹凸構造における凸部のピッチは、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、2mm以上であることが一層好ましく、
前記凹凸構造における凸部のピッチは、10mm以下であることが好ましく、9mm以下であることが更に好ましく、8mm以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<6>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<8>
前記凹凸構造における凸部の高さは、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましく、0.9mm以上であることが一層好ましく、
前記凹凸構造における凸部の高さは、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることが更に好ましく、3mm以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<7>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<9>
前記凹凸構造における凸部の内部が中実である、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<10>
前記凹凸構造における凸部の内部が中空である、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<11>
ナノファイバ層を含む、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0113】
<12>
前記ナノファイバ層が凹凸構造をなしている、前記<11>に記載の吸収性物品用シート。
<13>
厚み方向の半分よりも一方の側に前記ナノファイバ層の一部又は全部が位置している、前記<11>又は<12>に記載の吸収性物品用シート。
<14>
厚み方向の半分よりも一方の側に前記ナノファイバ層の全部が位置している、前記<13>に記載の吸収性物品用シート。
<15>
繊維径1μm以下の繊維を構成繊維とする前記ナノファイバ層を含む、前記<11>ないし<14>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<16>
前記ナノファイバ層の構成繊維の繊維径は、1μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることが更に好ましく、
前記ナノファイバ層の構成繊維の繊維径は、0.4μm以上であることが好ましい、前記<11>ないし<15>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0114】
<17>
前記ナノファイバ層はその厚みが3μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上120μm以下であることが更に好ましく、15μm以上100μm以下であることが一層好ましい、前記<11>ないし<16>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<18>
前記ナノファイバ層に加えて他の不織布層を有し、
前記他の不織布層が伸縮性を有している、前記<11>ないし<17>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<19>
前記ナノファイバ層がメルトブローン層からなり、
前記メルトブローン層が一対のスパンボンド層間に配されている、前記<11>ないし<18>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<20>
前記メルトブローン層が一対の前記スパンボンド層間に配されてなるSNS層が前記凹凸構造を構成している、前記<19>に記載の吸収性物品用シート。
<21>
エアスルー層を有する、前記<1>ないし<20>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0115】
<22>
ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層を有し、
前記SNS層における一対の前記スパンボンド層のうちの少なくとも一方のスパンボンド層の外面に、エアスルー層が配置されている、前記<21>に記載の吸収性物品用シート。
<23>
前記エアスルー層が、前記凹凸構造を構成していている、前記<21>又は<22>に記載の吸収性物品用シート。
<24>
前記エアスルー層が、前記凹凸構造以外の部位に存在している、前記<21>又は<22>に記載の吸収性物品用シート。
<25>
ナノファイバ層の各面に前記エアスルー層が配置されており、
前記ナノファイバ層及び前記エアスルー層はいずれも、前記シートの一方の面側に向けて突出して凸部を形成しており、
前記凸部の内部は中実になっている、前記<21>ないし<24>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<26>
前記エアスルー層が捲縮繊維を含む、前記<21>ないし<25>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0116】
<27>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側が凹凸構造になっており、
前記第2面が平坦面になっており、
前記第1面側には、単層のスパンボンド層が位置しており、
前記スパンボンド層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記凸部の内部は中空になっており、
前記第2面側に、スパンボンド層、ナノファイバ層及びスパンボンド層からなるSNS層が位置しており、
前記SNS層はその各面が平坦面になっている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<28>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側に、スパンボンド層、ナノファイバ層及びスパンボンド層からなるSNS層が位置しており、
前記SNS層は、凸部11及び凹部12を構成しており、
前記凸部の内部は中空になっており、
前記第2面側に単一のスパンボンド層が位置しており、
前記スパンボンド層はその各面が平坦面になっている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<29>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側に、スパンボンド層、ナノファイバ層及びスパンボンド層からなる第1SNS層が位置しており、
前記第1SNS層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記凸部の内部は中空になっており、
前記第2面側に、スパンボンド層、ナノファイバ層及びスパンボンド層からなる第2SNS層が位置しており、
前記第2SNS層はその各面が平坦面になっている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<30>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
ナノファイバ層の各面にエアスルー層が配置された構造を有しており、
前記ナノファイバ層及び一対の前記エアスルー層はいずれも、第1面側に向けて突出して凸部を形成しており、
前記凸部の内部は中実になっており、
前記凸部の内部は、主として前記第2面側に位置する前記エアスルー層の構成繊維によって満たされており、
一対の前記エアスルー層のうち、前記第2面側に位置するエアスルー層は、その外面が平坦になっており、
前記ナノファイバ層及び一対の前記エアスルー層は、前記シートの凹部において圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<31>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、エアスルー層が位置しており、
前記エアスルー層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記凸部の内部は中実になっており、
前記第2面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層が位置しており、
前記SNS層はその各面が平坦面になっており、
前記エアスルー層は、凹部において、前記第2面側に位置する前記SNS層と圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0117】
<32>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、エアスルー層が位置しており、
前記エアスルー層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記凸部の内部は中空になっており、
前記第2面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層が位置しており、
前記SNS層はその各面が平坦面になっており、
前記エアスルー層は、凹部において、前記第2面側に位置する前記SNS層と圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<33>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層が位置しており、
前記SNS層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記第2面側に、エアスルー層が位置しており、
前記エアスルー層はその外面が平坦面になっており、
前記エアスルー層における前記SNS層との対向面が凹凸構造になっており、
前記凹凸構造は、前記SNS層によって形成される凹凸構造と相補形状になっており、
前記凸部の内部は中実になっており、
前記凸部の内部は、前記エアスルー層の構成繊維で満たされており、
前記SNS層は、凹部において、前記第2面側に位置する前記エアスルー層と圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<34>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層が位置しており、
前記SNS層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記第2面側に、エアスルー層が位置しており、
前記エアスルー層はその外面が平坦面になっており、
前記エアスルー層における前記SNS層との対向面が凹凸構造になっており、
前記凸部の内部に前記エアスルー層の構成繊維が存在しており、
前記エアスルー層の構成繊維は、前記凸部の内部を完全に満たしておらず、該凸部の内部に空間が存在し、該凸部の内部が中空になっており、
前記SNS層は、凹部において、前記第2面側に位置する前記エアスルー層と圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<35>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなるSNS層と、該SNS層15の各面に配置されたエアスルー層を有しており、
前記SNS層及び一対の前記エアスルー層はいずれも、前記第1面側に向けて突出して凸部を形成しており、
前記凸部の内部は中実になっており、
前記凸部の内部は、主として前記第2面側に位置する前記エアスルー層の構成繊維によって満たされており、
前記第2面側に位置する前記エアスルー層は、その外面が平坦になっており、
前記SNS層及び一対の前記エアスルー層は、前記シートの凹部において圧密化され且つ一体的に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<36>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなる第1SNS層が位置しており、
前記第1SNS層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記第2面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなる第2SNS層が位置しており、
前記第2SNS層はその各面が平坦面になっており、
前記第1SNS層と前記第2SNS層との間に、エアスルー層が配置されており、
前記エアスルー層は、第1SNS層と第2SNS層とによって画成される凸部の空間の全域を満たすように、該凸部内に位置しており、
前記凸部の内部は中実になっており、
前記凸部の内部は、前記エアスルー層の構成繊維で満たされている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
【0118】
<37>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなる第1SNS層が位置しており、
前記第1SNS層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記第2面側に、ナノファイバ層が一対のスパンボンド層間に配されてなる第2SNS層が位置しており、
前記第2SNS層はその各面が平坦面になっており、
前記第1SNS層と前記第2SNS層との間に、エアスルー層が配置されており、
前記エアスルー層は、第1SNS層と第2SNS層とによって画成される凸部の内部に、前記エアスルー層の構成繊維が存在しており、
前記エアスルー層の構成繊維は、前記凸部の内部を完全に満たしておらず、該凸部の内部に空間が存在し、該凸部の内部が中空になっている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<38>
第1面と、その反対側に位置する第2面とを有し、
前記第1面側は凹凸構造になっており、
前記第2面は平坦面になっており、
前記第1面側に、凹凸構造を有する第1不織布層が位置しており、
前記第2面側に、第2不織布層24が位置しており、
前記第1不織布層は、凸部及び凹部を構成しており、
前記凸部の内部は中空になっており、
前記第1不織布層はナノファイバ層からなるか、又はナノファイバ層を含む不織布層からなり、
前記第2不織布層は、その各面が平坦面になっており、
前記第2不織布層は、弾性フィラメント及び非弾性繊維を含む不織布であり、
前記第2不織布層は、前記弾性フィラメントが、実質的に非伸長状態で、前記非弾性繊維を含む不織布に接合されている、前記<1>ないし<26>のいずれか一に記載の吸収性物品用シート。
<39>
吸収体、及び前記<1>ないし<38>のいずれか一に記載の吸収性物品用シートを備えた吸収性物品であって、
前記吸収性物品用シートは、該吸収性物品用シートにおける前記凹凸構造を有する面が前記吸収体に対向するように配置されている、吸収性物品。
<40>
前記吸収性物品用シートがナノファイバ層を有し、
前記ナノファイバ層よりも非肌対向面側に肌対向面よりも平坦な不織布層を有する、前記<39>に記載の吸収性物品。
<41>
前記ナノファイバ層よりも肌対向面側にエアスルー層を有する、前記<40>に記載の吸収性物品。
<42>
前記吸収性物品用シートが、前記吸収体の非肌対向面側に配置されている、前記<39>ないし<41>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【実施例0119】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0120】
〔実施例1〕
本実施例では図11に示す装置を用い、図2及び図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを製造した。
(1)カードウエブの製造
芯が低密度ポリエチレン(以下「LDPE」ともいう。)からなり、鞘がポリエチレン(以下「PE」ともいう。)からなる偏芯芯鞘型複合繊維を用いて坪量が27g/mのカードウエブを製造した。この偏芯芯鞘型複合繊維は、繊度2.3dtexであり、繊維長51mmであった。この偏芯芯鞘型複合繊維は、熱の付与によって捲縮が発現する潜在捲縮繊維である。
(2)SNSウエブの製造
平均繊維径20μmのポリプロピレン(以下「PP」ともいう。)繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布の上に、PP繊維からなる坪量5g/mのメルトブローン不織布を積層し、更にその上に平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布を積層して、3層構造からなるSNSウエブを製造した。メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径は0.8μmであった。
(3)カードウエブとSNSウエブとの接合
一方向に連続搬送されるカードウエブ上に、同方向に連続搬送されるSNSウエブを重ね合わせ、両者を超音波エンボス加工によって接合した。超音波エンボス加工の線圧は60N/cmに設定した。これによってシート前駆体を得た。接合部の形状は十文字形であった。
(4)シート前駆体の熱処理
一方向に連続搬送されるシート前駆体の両側縁をピンテンターで固定した状態下に該シート前駆体にエアスルー方式で熱風を吹き付けた。これによってカードウエブを構成する偏芯芯鞘型複合繊維に捲縮を発現させて収縮させた。その結果、SNSウエブに多数の凸部が形成された。このようにして図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを得た。この吸収性物品用シートは伸縮性を有するものであった。
熱風の温度は105℃に設定し、熱風の風速は1.7m/secに設定した。シート前駆体の収縮率は、搬送方向が80%、搬送方向と直交する方向が90%であった。
(5)撥水剤の付与
AGC株式会社から入手可能なフッ素系撥水・撥油加工剤であるAsahi Guard AG-E082のエタノール溶液を準備した(濃度1%)。(4)で得られた吸収性物品用シートをこのエタノール溶液に浸漬した後、80℃で2時間アニール乾燥させて、該シートに撥水剤を付与した。
【0121】
〔実施例2〕
実施例1において、SNSウエブにおけるメルトブローン不織布の構成繊維の繊維径を2μmとした。これ以外は実施例1と同様にして図2及び図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを得た。この吸収性物品用シートは伸縮性を有するものであった。
【0122】
〔実施例3〕
本実施例では図11に示す装置を用い、図2及び図5に示す構造の吸収性物品用シートを製造した。
(1)カードウエブの製造
実施例1と同様とした。
(2)メルトブローン複合ウエブの製造
芯がポリエチレンテレフタレートからなり、鞘がPEからなる芯鞘型複合繊維からなる坪量9g/mのエアスルー不織布の上に、PP繊維からなる坪量5g/mのメルトブローン不織布を積層して、2層構造からなるメルトブローン複合ウエブを製造した。メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径は0.8μmであった。
エアスルー不織布を構成する芯鞘型複合繊維の繊度は2.4dtexであり、繊維長は51mmであった。
(3)カードウエブとメルトブローン複合ウエブとの接合
一方向に連続搬送されるカードウエブ上に、同方向に連続搬送されるメルトブローン複合ウエブを重ね合わせた。重ね合わせは、メルトブローン複合ウエブにおけるメルトブローン不織布が、カードウエブと対向するように行った。それ以外は実施例1と同様とした。
(4)シート前駆体の熱処理
実施例1と同様とした。
(5)撥水剤の付与
実施例1と同様とした。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有するものであった。
【0123】
〔実施例4〕
本実施例では図13に示す装置を用い、図3及び図4(b)に示す構造の吸収性物品用シートを製造した。
(1)SNSウエブの製造
平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布の上に、PP繊維からなる坪量5g/mのメルトブローン不織布を積層し、更にその上に平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布を積層して、3層構造からなるSNSウエブを製造した。メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径は0.8μmであった。三者を超音波エンボス加工によって接合した。超音波エンボス加工の線圧は60N/cmに設定した。
(2)SNSウエブの凹凸賦形
図13(a)に示す装置50を用い、図13(b)及び図13(c)に示す手順でSNSウエブを凹凸賦形した。
(3)スパンボンドウエブの重ね合わせ
図13(d)に示す手順で、平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンドウエブを、凹凸賦形したSNSウエブの上に載置した。次いで、155℃に加熱された加熱体をスパンボンド不織布に押し当てて、スパンボンドウエブとSNSウエブとを接合した。
(4)撥水剤の付与
実施例1と同様とした。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有さないものであった。
【0124】
〔実施例5〕
本実施例では図14に示す装置を用い、図2及び図6(b)に示す構造の吸収性物品用シートを製造した。
(1)カードウエブの製造
繊度1.8dtexの芯鞘型複合繊維を用いてカードウエブを製造した。芯鞘型複合繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ともいう。)からなり、鞘がPEからなるものであった。芯と鞘との質量比は5:5であった。
(2)カードウエブの一次凹凸賦形
図14(a)及び図14(b)に示す装置60を用い、図14(c)及び図14(d)に示す手順でカードウエブを一次凹凸賦形した。押し込み部材65の押し込み深さは2mmとした。
(3)カードウエブの二次凹凸賦形
図14(e)に示す手順でカードウエブに熱風を吹き付けて二次凹凸賦形した。熱風の吹き付けは2回行った。1回目の吹き付けは、温度160℃、風速68m/秒、吹き付け時間5秒の条件で行った。2回目の吹き付けは、温度160℃、風速6.0m/秒、吹き付け時間5秒の条件で行った。凹凸賦形後のカードウエブは、構成繊維の繊度が1.8dtexであり、坪量が40g/mであった。
(4)SNSウエブの重ね合わせ
平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布の上に、PP繊維からなる坪量5g/mのメルトブローン不織布を積層し、更にその上に平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布を積層して、3層構造からなるSNSウエブを製造した。メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径は0.8μmであった。上述したカードウエブにホットメルト接着剤を塗布した後、塗布面上に、SNSウエブを載置し、SNSウエブとカードウエブとを接合した。
(5)撥水剤の付与
実施例1と同様とした。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有さないものであった。
【0125】
〔実施例6〕
実施例1において、カードウエブとSNSウエブとの接合パターンを変更し、凸部の幅及び凸部のピッチを変更した。これ以外は実施例1と同様にして図2及び図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを得た。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有するものであった。
【0126】
〔実施例7〕
実施例1において、カードウエブの製造に用いる繊維として、熱の付与によって捲縮が発現しない繊維を用いた。これ以外は実施例1と同様にして図2及び図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを得た。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有さないものであった。
【0127】
〔実施例8〕
実施例1において、カードウエブとSNSウエブとの接合パターンを変更し、凸部の幅及び凸部のピッチを変更した。これ以外は実施例1と同様にして図3及び図7(b)に示す構造の吸収性物品用シートを得た。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有するものであった。
【0128】
〔実施例9〕
本実施例では図15及び図16に示す方法に従い、図10に示す構造のシートを製造した。
(1)第1繊維シートの準備
平均繊維径が15μmで、坪量が18g/mである、PP樹脂からなるスパンボンド不織布を準備した。
(2)第1繊維シートの製造
前記のスパンボンド不織布の一面に、エレクトロスピニング法によってPP樹脂からなるナノファイバ層を形成した。ナノファイバ層の坪量は3g/mであり、平均繊維径は500nmであった。
(3)第2繊維シートの製造
平均繊維径が18μmで、坪量が18g/mである、PP樹脂からなるスパンボンド不織布を2枚用い、両不織布間に直径100μmの弾性フィラメントを複数本配置し、図15に示す複合材24Bを製造した。弾性フィラメントの全坪量は、複合材24Bの面積に対して9g/mであった。この複合材24Bを、図16に示す一対の歯溝ロール76,77間に通して伸縮性を発現させて第2繊維シート24Aを製造した。
(4)シートの製造
図16に示す方法に従い、第2繊維シート24Aを伸長させた状態下に、ナノファイバ層を有する第1繊維シート23Aと第2繊維シート24Aとを重ね合わせて接合することで、シートを製造した。
【0129】
〔比較例1〕
(1)SNSウエブの製造
平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布の上に、PP繊維からなる坪量5g/mのメルトブローン不織布を積層し、更にその上に平均繊維径20μmのPP繊維からなる坪量9g/mのスパンボンド不織布を積層して、3層構造からなるSNSウエブを製造した。メルトブローン不織布の構成繊維の繊維径は0.8μmであった。三者を超音波エンボス加工によって接合した。超音波エンボス加工の線圧は60N/cmに設定した。
(2)撥水剤の付与
実施例1と同様とした。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有さないものであった。
【0130】
〔比較例2〕
比較例1で得られたSNSウエブを、互いに噛み合う一対の賦形板を備えた凹凸賦形プレス機でプレスした。プレス圧は0.4MPaとした。これ以外は比較例1と同様にして吸収性物品用シートを得た。このようにして得られた吸収性物品用シートは伸縮性を有さないものであった。
【0131】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた吸収性物品用シートについて、上述した方法で、凸部の幅W、高さH及びピッチPを測定した。また、低表面張力液に対する撥水性を上述した方法で評価した。その結果を表1に示す。
更に、低表面張力液のメルトブローン層への滲み込みの程度を後述する方法で評価した。その結果を表1に示す。
更に、実施例及び比較例で得られた吸収性物品用シートを生理用ナプキンに組み込み、動的滲み出し試験を以下の手順で行い、以下の基準で防漏性を評価した。その結果を表1に示す。
【0132】
〔動的滲み出し試験〕
花王株式会社の生理用ナプキンである「ロリエ(登録商標)エフしあわせ素肌超スリム昼用」(2019年製、22.5cm)の裏面シートを、コールドスプレーを用いて丁寧に取り除いた。取り除いた裏面シートの代わりに、実施例及び比較例で得られた吸収性物品用シートを、ホットメルトによって吸収体に接着した。吸収性物品用シートは、凹凸構造を有する第1面が吸収体に対向するように配置された。吸収性物品用シートの非肌側面に、ナプキンをショーツに固定するためのホットメルト接着剤を施した。
このようにして得られた生理用ナプキンを、表面シートが鉛直上方を向くように水平に載置し、この状態下に、表面シート上に楕円形注入口(長径50mm、短径23mm)を載置した。この楕円形注入口から粘度を調整した脱繊維馬血6.0gを注入し、1分間静置した。脱繊維馬血は、日本バイオテスト(株)製のものであり且つ液温25℃における粘性が8cpに調整されたものである。粘度は、東機産業株式会社製TVB-10M形粘度計において、ロータ名称L/AdP(ロータコード19)のロータを用い、回転速度12rpmにて測定したときの値である。
脱繊維馬血が注入された生理用ナプキンを、特開平9-187476号公報の図9に記載の可動式女性腰部モデルに装着し、その上にショーツを装着した。このモデルを100歩/分の速度で1時間歩行させた後、ショーツと生理用ナプキンを取り出し、ショーツに馬血の滲み出しが生じているか否かを目視観察した。
なお、実施例及び比較例で得られた吸収性物品用シートをナプキンに組み込むに際しては、該シートにおける凹凸賦形面が吸収体に対向するようにした。ただし、実施例6で得られた吸収性物品用シートについては、凹凸賦形面がナプキンの外面を向くようにした。
【0133】
〔メルトブローン層への滲み込みの程度〕
上述した動的滲み出し試験後に、生理用ナプキンをショーツから取り外した。取り外した生理用ナプキンにおける吸収性物品用シートの非肌側面を目視観察した。吸収性物品用シートの非肌側面の表面まで馬血が達しているスポットが確認された場合は、そのスポット数を目視で数えた。吸収性物品用シートの非肌側面の表面まで馬血が達していない場合は、吸収性物品用シートをその非肌側面から目視観察したときに、馬血の赤みが周囲に比べて濃く見える部位を10箇所選んだ。各箇所を非肌面側から剃刀などで厚み方向に切断し、断面をマイクロスコープで観察した。メルトブローン層の厚み方向の全域に馬血が滲み込んでいる場合は、メルトブローン層への滲み込みスポット数を数えた。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた吸収性物品用シートは、低表面張力液に対する撥水性を有することが分かる。
また、各実施例で得られた吸収性物品用シートを生理用ナプキンの裏面シートとして用いると、液の滲み出しが阻止されることが分かる。
【符号の説明】
【0136】
10 吸収性物品用シート
11 凸部
12 凹部
13 スパンボンド層
14 メルトブローン層
15 SNS層
16 接合部
17 エアスルー層
21 第1面
22 第2面
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