IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱造船株式会社の特許一覧

特開2022-156205船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法
<>
  • 特開-船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法 図1
  • 特開-船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法 図2
  • 特開-船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法 図3
  • 特開-船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法 図4
  • 特開-船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156205
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B63B25/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059785
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドライアイスの生成を抑え、タンクの運用を円滑に行うことができることができる船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法を提供する。
【解決手段】船舶は、船体と、前記船体に設けられ、液化二酸化炭素を貯留するタンク10と、前記船体に設けられ、前記タンク10内の二酸化炭素よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスを前記タンク10内に注入可能な二酸化炭素注入部20と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられ、液化二酸化炭素を貯留するタンクと、
前記船体に設けられ、前記タンク内の二酸化炭素よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入可能な二酸化炭素注入部と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記二酸化炭素注入部は、
前記二酸化炭素ガスを、前記タンク内の二酸化炭素の気相に注入する
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記二酸化炭素注入部は、
前記二酸化炭素ガスを、前記タンク内の二酸化炭素の液相に注入する
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記二酸化炭素注入部は、
前記タンク内の圧力が、前記液化二酸化炭素の三重点圧力以上に設定された圧力下限値以下となった場合に、前記二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入する
請求項1から3の何れか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記二酸化炭素注入部は、
前記タンク内に貯留された前記液化二酸化炭素の揺れが、所定レベルとなった場合に、前記二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入する
請求項1から4の何れか一項に記載の船舶。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の船舶におけるタンクの圧力調整方法であって、
前記タンク内の圧力に関する情報、および前記タンク内に貯留された前記液化二酸化炭素の揺れに関する情報の少なくとも一方を取得する工程と、
取得された前記情報に基づき、前記二酸化炭素注入部で前記二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入する工程と、を含む
船舶におけるタンクの圧力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体二酸化炭素を船倉内で噴霧することで析出させたドライアイスを輸送する構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、15kg/cmのタンク圧下で、常温(例えば0~30°C)において、二酸化炭素を、圧縮二酸化炭素ガスの状態で運搬することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-180394号公報
【特許文献2】特開2004-125039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船体に設けられたタンク内に液化二酸化炭素を収容する場合、以下のような理由により、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成されてしまうことがある。すなわち、タンク内における液化二酸化炭素の圧力は、タンク運用圧に応じたものとなる。液化二酸化炭素は、気相、液相、固相が共存する三重点の圧力(三重点圧力)が、液化ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)や液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)の三重点圧力に比較して高く、運用時にタンクが減圧されると三重点に到達する可能性がある。
【0006】
液化二酸化炭素の圧力が三重点圧力以下となると、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発が生じることがある。すると、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発の蒸発潜熱により、蒸発せずに残った液化二酸化炭素の温度低下が生じ、タンク内で液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。そのため、液化二酸化炭素の圧力が三重点圧力以下とならないように、タンク運用圧(タンクの設計圧力)を設定している。しかし、タンク運用圧を液化二酸化炭素の三重点圧力よりも大幅に高く設定すると、タンク自体やタンクに接続される配管を、タンク運用圧(タンクの設計圧力)に応じた耐圧構造としなければならず、コスト上昇に繋がる。
【0007】
また例えば、船体の揺動にともなってタンク内の液化二酸化炭素が揺れた場合、液化二酸化炭素の流速に応じて液化二酸化炭素の動圧が上昇するとともに、液化二酸化炭素の静圧が低下する。このようにして生じるタンク内の液化二酸化炭素の静圧の低下により、タンク内で液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。
そして、ドライアイスの密度は液化二酸化炭素よりも大きいことから、タンク内でドライアイスが発生してしまうと、タンク底部に沈降して堆積するため、タンク内の圧力が回復した後も、ドライアイスの昇華に時間がかかる可能性がある。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ドライアイスの生成を抑え、タンクの運用を円滑に行うことができることができる船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、タンクと、二酸化炭素注入部と、を備える。前記タンクは、前記船体に設けられている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留する。前記二酸化炭素注入部は、前記船体に設けられている。前記二酸化炭素注入部は、前記タンク内の二酸化炭素よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入可能である。
【0010】
本開示に係る船舶におけるタンクの圧力調整方法は、上記したような船舶におけるタンクの圧力調整方法であって、情報を取得する工程と、二酸化炭素ガスをタンク内に注入する工程と、を含む。前記情報を取得する工程では、前記タンク内の圧力に関する情報、および前記タンク内に貯留された前記液化二酸化炭素の揺れに関する情報の少なくとも一方を取得する。前記二酸化炭素ガスをタンク内に注入する工程では、取得された前記情報に基づき、前記二酸化炭素注入部で前記二酸化炭素ガスを前記タンク内に注入する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の船舶、船舶におけるタンクの圧力調整方法によれば、ドライアイスの生成を抑え、タンクの運用を円滑に行うことができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る二酸化炭素注入部の概略構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る二酸化炭素注入部の制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図4】本開示の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図5】本開示の実施形態に係る船舶におけるタンクの圧力調整方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。
(船舶の全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す平面図である。図2は、本開示の実施形態に係る二酸化炭素注入部の概略構成を示す図である。
図1図2に示すように、この実施形態の船舶1は、船体2と、タンク10と、二酸化炭素注入部20と、を主に備えている。船舶1は、液化二酸化炭素を運搬する。
【0014】
図1に示すように、船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示せず)と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底(図示せず)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示せず)により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0015】
船体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板5を更に備えている。この上甲板5上には、上部構造7が形成されている。上部構造7内には、居住区等が設けられている。本実施形態の船舶1では、例えば、上部構造7よりも船首尾方向FAの船首2a側に、貨物を搭載するカーゴスペース8が設けられている。
【0016】
(タンクの構成)
タンク10は、船体2に設けられている。タンク10は、カーゴスペース8内に、船首尾方向FAに沿って、複数が配置されている。本開示の実施形態において、タンク10は、船首尾方向FAに間隔を空けて二個配置されている。図2に示すように、タンク10は、その内部に液化二酸化炭素Lを貯留する。タンク10内の圧力は、例えば、約0.55~2.0MPaGである。タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの温度は、例えば約-50~-20℃である。
【0017】
タンク10は、例えば、水平方向に延びる円筒状をなしている。タンク10は、筒状部12と、端部球面状部13と、を備えている。筒状部12は、水平方向を長手方向として延びている。本実施形態において、筒状部12は、長手方向に直交する断面形状が円形の、円筒状に形成されている。端部球面状部13は、筒状部12の長手方向の両端部にそれぞれ配置されている。各端部球面状部13は、半球状で、筒状部12の長手方向両端の開口を閉塞している。なお、タンク10は、円筒状に限られるものではなく、タンク10は球形、方形等であってもよい。
【0018】
(二酸化炭素注入部の構成)
図2に示すように、二酸化炭素注入部20は、タンク10内の二酸化炭素(液相10a、及び気相10b)よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスGを、タンク10内に注入可能に構成されている。この二酸化炭素注入部20は、船体2に設けられている。二酸化炭素注入部20は、ガスタンク21と、第一注入配管22と、第二注入配管23と、圧力センサー24と、加速度センサー25と、制御装置60と、を備えている。
【0019】
ガスタンク21は、二酸化炭素ガスGを収容する。ガスタンク21に貯留される二酸化炭素ガスGの圧力は、例えば5~15.7MPaGである。ガスタンク21に貯留される二酸化炭素ガスGの温度は常温、例えば、約15~45℃である。ガスタンク21は、常温の二酸化炭素ガスGを収容するので、必ずしも防熱仕様である必要は無い。ガスタンク21は、カーゴスペース8内に設けられていてもよいし、上甲板5上等、適宜他の場所に設けられていてもよい。
【0020】
第一注入配管22、第二注入配管23は、それぞれガスタンク21内の二酸化炭素ガスGを、タンク10内に注入する流路を形成している。第一注入配管22の基端部と、第二注入配管23の基端部とは、それぞれガスタンク21に接続されている。第一注入配管22の先端部22sは、タンク10内の上部で、タンク10内の気相10b中に開口している。第二注入配管23の先端部23sは、タンク10の底部で、タンク10内の液相10a(液化二酸化炭素L)中に開口している。
【0021】
第一注入配管22は、開閉弁22vを備え、第二注入配管23は、開閉弁23vを備えている。開閉弁22vを開閉することで、第一注入配管22による二酸化炭素ガスGのタンク10内への注入が断続され、開閉弁23vを開閉することで、第二注入配管23による二酸化炭素ガスGのタンク10内への注入が断続される。この実施形態では、開閉弁22v、23vの開閉動作は、制御装置60により自動的に制御される。なお、開閉弁22v、23vの開閉動作は、例えば作業員が手動で行うようにしてもよい。
【0022】
圧力センサー24は、タンク10内の圧力に関する情報を取得する。より具体的には、圧力センサー24は、タンク10内の気相10bの圧力を検出する。圧力センサー24は、検出した圧力データを、制御装置60に向けて出力する。
【0023】
加速度センサー25は、タンク10内における液相10aの揺れ(スロッシング)に関する情報を取得する。この実施形態では、加速度センサー25は、タンク10内における液相10aの揺れに関する情報として、船体2の揺れによって生じる加速度を検出する。加速度センサー25は、例えば、船体2の船首尾方向FAの揺れ(ピッチング)、船体2の船幅方向の揺れ(ローリング)によって生じる加速度を検出する。加速度センサー25は、船体2の複数個所に設けられていてもよい。加速度センサー25は、検出した加速度データを、制御装置60に向けて出力する。
【0024】
(ハードウェア構成図)
図3に示すように、制御装置60は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール65を備えるコンピュータである。信号受信モジュール65は、圧力センサー24、加速度センサー25からの検出信号を受信する。
【0025】
(機能ブロック図)
図4に示すように、制御装置60のCPU61は予めHDD64やROM62等に記憶されたプログラムを実行することにより、信号入力部70、判定部71、開閉制御部72、出力部75の各機能構成を実現する。
信号入力部70は、信号受信モジュール65を介して、圧力センサー24、加速度センサー25からの検出信号、つまり、タンク10内の気相10bの圧力の検出値のデータ、及び、船体2の揺れによって生じる加速度の検出値のデータを受信する。
【0026】
判定部71は、信号入力部70で受信した圧力センサー24、加速度センサー25からの検出信号に基づき、ガスタンク21からタンク10への二酸化炭素ガスGの注入の要否を判定する。
開閉制御部72は、判定部71における二酸化炭素ガスGの注入の要否の判定結果に基づき、開閉弁22vの開閉と、開閉弁23vの開閉とを制御する。開閉制御部72は、開閉弁22v、23vを開閉させるための制御信号を、出力部75に送る。
出力部75は、開閉制御部72から送られてきた制御信号を、開閉弁22v、開閉弁23vに出力する。
【0027】
(タンクの圧力調整方法の手順)
図5に示すように、本開示の実施形態に係るタンク10の圧力調整方法S1は、情報を取得する工程S2と、注入の要否を判定する工程S3と、二酸化炭素ガスをタンクに注入する工程S4と、二酸化炭素ガスの注入を停止する工程S5と、を含む。
【0028】
情報を取得する工程S2では、制御装置60は、圧力センサー24、加速度センサー25からの検出信号を取得する。圧力センサー24、加速度センサー25からの検出信号は、信号入力部70により受信される。制御装置60は、タンク10内の圧力に関する情報として、圧力センサー24から、タンク10内の気相10bの圧力の検出値を取得する。制御装置60は、加速度センサー25から、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れに関する情報として、船体2の揺れによる加速度の検出値を取得する。
【0029】
注入の要否を判定する工程S3では、制御装置60は、判定部71によりガスタンク21からタンク10への二酸化炭素ガスGの注入の要否を判定する。この判定部71では、工程S2で取得されたタンク10内の圧力に関する情報、およびタンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れに関する情報の少なくとも一方に基づいて、二酸化炭素ガスGの注入の要否が判定される。
【0030】
判定部71では、例えば、タンク10内の圧力が、予め定められた圧力下限値以下となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要があると判定する。予め定められた圧力下限値は、液化二酸化炭素Lの三重点圧力以上に設定される。さらに、判定部71は、例えば、船体2に生じた加速度が、予め定められた閾値以上となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要があると判定する。
【0031】
ここで、船体2に生じた加速度が予め定められた閾値以上になる状態とは、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れが、所定レベル以上となる状態である。このようにタンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れが所定レベル以上となる状態では、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れによりタンク内の静圧低下が生じてタンク内の液化二酸化炭素Lが凝固する可能性がある。言い換えれば、例えば、船体2に生じた加速度が予め定められた閾値よりも小さい場合には、実質的にタンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れに起因した液化二酸化炭素Lの凝固は生じない。
【0032】
つまり、判定部71は、例えば、タンク10内の圧力が、圧力下限値以下ではなくとも、船体2に生じた加速度が閾値以上となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要があると判定する。そして、判定部71は、船体2に生じた加速度が閾値以上でなくても、タンク10内の圧力が圧力下限値以下であれば、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要があると判定する。なお、判定部71は、タンク10内の圧力が圧力下限値以下であり、かつ、船体2に生じた加速度が閾値以上である場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要があると判定するようにしてもよい。また、判定部71は、タンク10内の圧力と、船体2に生じた加速度との相関に基づいて予め設定されるマップ、テーブル、数式等に基づいて、二酸化炭素ガスGの注入の要否を判定するようにしてもよい。
【0033】
上記工程S3の判定の結果、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要がない、と判定された場合(図5において「No」)、上述した工程S2に戻る。一方で、上記工程S3の判定の結果、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する必要がある、と判定された場合(図5において「Yes」)、二酸化炭素ガスをタンクに注入する工程S4に戻る。
【0034】
二酸化炭素ガスをタンクに注入する工程S4では、ガスタンク21からタンク10へ二酸化炭素ガスGを注入する。これには、開閉制御部72で、開閉弁22v、23vを開くための制御信号を、出力部75を介して開閉弁22v、23vに出力する。
【0035】
ここで、開閉制御部72は、開閉弁22v、23vの双方を開き、第一注入配管22、第二注入配管23の双方を通して、ガスタンク21からタンク10へ二酸化炭素ガスGを注入してもよい。また、開閉制御部72は、開閉弁22vのみを開き、第一注入配管22のみを通して、ガスタンク21からタンク10の気相10bに二酸化炭素ガスGを注入してもよい。開閉制御部72は、更に、開閉弁23vのみを開き、第二注入配管23のみを通して、ガスタンク21からタンク10の底部の液相10aに二酸化炭素ガスGを注入してもよい。
【0036】
二酸化炭素ガスGがタンク10内に注入されると、二酸化炭素ガスGは、タンク10内の二酸化炭素(液相10a、及び気相10bの双方を含む)よりも高温かつ高圧であるので、タンク10内の温度、及び圧力が上昇する。タンク10内にドライアイスDが生成されていた場合、タンク10内の温度、及び圧力が上昇することによってドライアイスDが昇華される。
【0037】
二酸化炭素ガスの注入を停止する工程S5では、予め設定した注入終了条件が満足された場合、ガスタンク21からタンク10への二酸化炭素ガスGの注入を停止させる。例えば、制御装置60は、圧力センサー24で検出されるタンク10内の圧力が、圧力下限値を超えた場合、又は圧力下限値以上に設定された設定値を超えた場合に、二酸化炭素ガスGの注入を停止させる。二酸化炭素ガスGの注入を停止させる際、開閉制御部72は、開閉弁22v、23vを閉じるための制御信号を、出力部75を介して開閉弁22v、23vへ出力する。開閉弁22v、23vが閉じた状態になると、ガスタンク21からタンク10へ二酸化炭素ガスGの注入が停止する。上記工程S5による二酸化炭素ガスGの注入が停止すると、上記工程S2に戻り、上述した一連の工程を繰り返す。
【0038】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1は、船体2と、船体2に設けられ、液化二酸化炭素Lを貯留するタンク10と、船体2に設けられ、タンク10内の二酸化炭素(液相10a、及び気相10b)よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入可能な二酸化炭素注入部20と、を備えている。
【0039】
このような船舶1によれば、タンク10内に貯留した液化二酸化炭素LにドライアイスDが生成されてしまうような状態となった場合に、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入することができる。そして、二酸化炭素ガスGは、タンク10内の二酸化炭素(液相10a、及び気相10bの双方を含む)よりも高温かつ高圧であるので、タンク10内の圧力低下を抑えることができる。また、タンク10内にドライアイスDが生成されていた場合には、二酸化炭素ガスGによってドライアイスDを昇華させることができる。
したがって、ドライアイスDの生成を抑え、タンク10の運用を円滑に行うことができることができる。
【0040】
上記実施形態の船舶1では、更に、二酸化炭素注入部20は、二酸化炭素ガスGを、タンク10内の二酸化炭素の気相10bに注入可能に構成されている。
したがって、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内の二酸化炭素の気相10bに注入することによって、タンク10内の圧力を即座に高めることができる。
【0041】
上記実施形態の船舶1では、更に、二酸化炭素注入部20は、二酸化炭素ガスGを、タンク10内の二酸化炭素の液相10aに注入可能に構成されている。
したがって、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内の二酸化炭素の液相10aに注入することによって、二酸化炭素の液相10a中にドライアイスDが生成されている場合、ドライアイスDの周囲に二酸化炭素ガスGを送り込むことができる。そして、注入された二酸化炭素ガスGによって、ドライアイスDの周囲の二酸化炭素の液相10aがガス化することで、タンク10内の圧力を高めるとともに、ドライアイスDの昇華を促進させることができる。
【0042】
上記実施形態では、更に、二酸化炭素注入部20の第二注入配管23の先端部23sが、タンク10の底部で、タンク10内の液相10a(液化二酸化炭素L)中に開口している。
例えば、タンク10内にドライアイスDが生成された場合、ドライアイスDは液化二酸化炭素より密度が高いことからタンク10の底部に堆積する傾向がある。これに対し、上記の通り二酸化炭素注入部20の第二注入配管23の先端部23sがタンク10の底部で開口していることで、底部に堆積したドライアイスDにより近い位置に二酸化炭素ガスGを噴射して、底部に堆積したドライアイスDを迅速に昇華させることが可能となる。
【0043】
上記実施形態の船舶1では、更に、二酸化炭素注入部20は、タンク10内の圧力が液化二酸化炭素Lの三重点圧力以上に設定された圧力下限値以下となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入している。
このようにすることで、タンク10内の圧力が圧力下限値以下となり、タンク10内でドライアイスDが生成されやすい状態となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入してタンク10内でのドライアイスDの生成を抑えることができる。
【0044】
上記実施形態の船舶1では、更に、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れが、所定レベル以上となった場合、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入している。
したがって、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れが、所定レベル以上となった場合にタンク10内の圧力を高めることができ、これにより、タンク10内でのドライアイスDの生成を抑えることができる。
【0045】
上記実施形態のタンク10の圧力調整方法S1は、タンク10内の圧力に関する情報、およびタンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れに関する情報の少なくとも一方を取得する工程S2と、取得された情報に基づき、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する工程S4と、を含んでいる。
このようにすることで、タンク10内の圧力、タンク10内に貯留された液化炭素の揺れの状態に基づいて、二酸化炭素ガスGのタンク10内への注入を行うことができるため、ドライアイスDの生成を抑えて、タンク10の運用を円滑に行うことができることが可能となる。
【0046】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態の船舶1では、第一注入配管22、第二注入配管23を設けるようにしたが、第一注入配管22、第二注入配管23の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態の船舶1では、タンク10内の圧力に関する情報を取得するため、圧力センサー24を備えていたが、タンク10内の圧力だけでなく、タンク10内の気相10bの温度を検出し、タンク10内の圧力及び温度に基づいて、タンク10内への二酸化炭素ガスGの注入の要否を判定するようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態の船舶1では、タンク10内における液相10aの揺れ(スロッシング)に関する情報を取得するため、加速度センサー25を備えていたが、タンク10内の液相10aの揺れを検出できる構成であればよく、例えば、タンク10内の液相10aの液面レベルの変位を検出するようにしてもよい。
【0049】
上記のタンクの圧力調整方法の手順は、具体的な判定内容、手順の順序等を適宜変更することが可能である。
【0050】
<付記>
実施形態に記載の船舶1、船舶1におけるタンク10の圧力調整方法S1は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る船舶1は、船体2と、前記船体2に設けられ、液化二酸化炭素Lを貯留するタンク10と、前記船体2に設けられ、前記タンク10内の二酸化炭素よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスGを前記タンク10内に注入可能な二酸化炭素注入部20と、を備える。
【0052】
この船舶1によれば、二酸化炭素注入部20が、タンク10内の二酸化炭素よりも高温かつ高圧の二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入可能である。タンク10内に貯留した液化二酸化炭素LにドライアイスDが生成されてしまうような状態となった場合に、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入する。二酸化炭素ガスGは、タンク10内の二酸化炭素(液相10a、及び気相10bの双方を含む)よりも高温かつ高圧であるので、タンク10内の圧力低下を抑えることができる。また、タンク10内にドライアイスDが生成されていた場合、二酸化炭素ガスGによってドライアイスDを昇華させることができる。
したがって、ドライアイスDの生成を抑え、タンク10の運用を円滑に行うことができることができる。
【0053】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記二酸化炭素注入部20は、前記二酸化炭素ガスGを、前記タンク10内の二酸化炭素の気相10bに注入する。
【0054】
これにより、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内の二酸化炭素の気相10bに注入することによって、タンク10内の圧力を即座に高めることができる。
【0055】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、前記二酸化炭素注入部20は、前記二酸化炭素ガスGを、前記タンク10内の二酸化炭素の液相10aに注入する。
【0056】
これにより、二酸化炭素注入部20で二酸化炭素ガスGをタンク10内の二酸化炭素の液相10aに注入することによって、二酸化炭素の液相10a中にドライアイスDが生成されている場合、ドライアイスDの周囲に二酸化炭素ガスGを送り込むことができる。注入された二酸化炭素ガスGによって、ドライアイスDの周囲の二酸化炭素の液相10aがガス化することで、タンク10内の圧力を高めるとともに、ドライアイスDの昇華を促進させることができる。
【0057】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(1)から(3)の何れか一つの船舶1であって、前記二酸化炭素注入部20は、前記タンク10内の圧力が、前記液化二酸化炭素Lの三重点圧力以上に設定された圧力下限値以下となった場合に、前記二酸化炭素ガスGを前記タンク10内に注入する。
【0058】
これにより、タンク10内の圧力が圧力下限値以下となり、タンク10内でドライアイスDが生成されやすい状態となった場合に、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入することで、タンク10内でのドライアイスDの生成を抑えることができる。
【0059】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(1)から(4)の何れか一つの船舶1であって、前記二酸化炭素注入部20は、前記タンク10内に貯留された前記液化二酸化炭素Lの揺れが、所定レベル以上となった場合に、前記二酸化炭素ガスGを前記タンク10内に注入する。
【0060】
これにより、タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れが、所定レベル以上となった場合、二酸化炭素ガスGをタンク10内に注入し、タンク10内の圧力を高めることで、タンク10内でのドライアイスDの生成を抑えることができる。
タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れは、船体2の揺れによって生じる加速度を検出すること、タンク10内の液化二酸化炭素Lの液面レベルの変位を検出することによって検出される。
【0061】
(6)第6の態様に係る船舶1におけるタンク10の圧力調整方法S1は、(1)から(5)の何れか一つの船舶1におけるタンク10の圧力調整方法S1であって、前記タンク10内の圧力に関する情報、および前記タンク10内に貯留された前記液化二酸化炭素Lの揺れに関する情報の少なくとも一方を取得する工程S2と、取得された前記情報に基づき、前記二酸化炭素注入部20で前記二酸化炭素ガスGを前記タンク10内に注入する工程S4と、を含む。
【0062】
これにより、タンク10内の圧力、タンク10内に貯留された液化炭素の揺れの状態に基づいて、二酸化炭素ガスGのタンク10内への注入を行うことによって、ドライアイスDの生成を抑え、タンク10の運用を円滑に行うことができることができる。
タンク10内の圧力に関する情報としては、タンク10内の圧力値、タンク10内の気相10bの温度が挙げられる。
タンク10内に貯留された液化二酸化炭素Lの揺れに関する情報としては、船体2の揺れによって生じる加速度の検出値、タンク10内の液化二酸化炭素Lの液面レベルの変位の検出値が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1…船舶 2…船体 2a…船首 3A、3B…舷側 5…上甲板 7…上部構造 8…カーゴスペース 10…タンク 10a…液相 10b…気相 12…筒状部 13…端部球面状部 20…二酸化炭素注入部 21…ガスタンク 22…第一注入配管 22s…先端部 22v…開閉弁 23…第二注入配管 23s…先端部 23v…開閉弁 24…圧力センサー 25…加速度センサー 60…制御装置 61…CPU 62…ROM 63…RAM 64…HDD 65…信号受信モジュール 70…信号入力部 71…判定部 72…開閉制御部 75…出力部 FA…船首尾方向 D…ドライアイス G…二酸化炭素ガス L…液化二酸化炭素
図1
図2
図3
図4
図5