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  • 特開-防振構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156217
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】防振構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221006BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20221006BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/08 W
B60K1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059801
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀俊
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
【Fターム(参考)】
3D235BB23
3D235CC13
3D235DD17
3D235FF32
3D235HH44
3J048AA02
3J048AD07
3J048BA02
3J048BF02
3J048CB21
3J048EA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来よりも優れた防振性能を発揮して起振源から伝達される振動に基づく音の発生を効果的に抑制する防振構造を提供する。
【解決手段】本発明は、トランスミッション2とパワーコントロールユニット3との間に防振ゴム4が配置された防振構造であって、トランスミッション2とパワーコントロールユニット3のそれぞれから延出して防振ゴム4を挟み込む突起部8,9を有し、防振ゴム4は、突起部8,9に挟持される挟持部13と、突起部8,9に挟持されていない非挟持部14と、を有し、非挟持部14とトランスミッション2との間、及び非挟持部14とパワーコントロールユニット3との間には、空隙6,7が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションとパワーコントロールユニットとの間に防振ゴムが配置された防振構造であって、
前記トランスミッションと前記パワーコントロールユニットのそれぞれから延出して前記防振ゴムを挟み込む突起部を有し、
前記防振ゴムは、前記突起部に挟持される挟持部と、前記突起部に挟持されていない非挟持部と、を有し、
前記非挟持部と前記トランスミッションとの間、及び前記非挟持部と前記パワーコントロールユニットとの間のうち、少なくとも一方の間には、空隙が形成されていることを特徴とする防振構造。
【請求項2】
前記トランスミッションの前記非挟持部との対向面、及び前記パワーコントロールユニットの前記非挟持部との対向面のうち、少なくとも一方の対向面には、前記非挟持部のストッパが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振構造。
【請求項3】
前記トランスミッションと前記パワーコントロールユニットとの間における前記防振ゴムの肉厚は、前記挟持部よりも前記非挟持部のほうが厚いことを特徴とする請求項1に記載の防振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パワーコントロールユニットは、トランスミッション上にボルトにて締結される場合が多い。このパワーコントロールユニットのケーシングは、起振源としてのトランスミッションから伝達される振動によって音を発生させる。また、このようなケーシングからの放射音は、隣接する起振源(トランスミッション)のケーシングに共鳴音を発生させることも考えられる。
従来、トランスアクスル上に配置された電力変換器の防振構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この防振構造は、トランスアクスルの上面に設けられたブラケットに電力変換器が防振ゴムを介して取り付けられている。具体的には、防振ゴムは、円筒形状を呈しており、電力変換器の側面から延出する軸部材に挿通されるとともに、ブラケットに連結されたカラー部材に内嵌されている。
このような防振構造によれば、ブラケットを介して電力変換器に伝達される振動は、防振ゴムによって減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-107898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防振構造(例えば、特許文献1参照)においては、防振ゴムが、起振源(トランスアクスル)からの振動伝達経路となるカラーと軸部材との間にのみ配置されているために、十分な防振性能を発揮することができない問題があった。
【0005】
本発明の課題は、従来よりも優れた防振性能を発揮して起振源から伝達される振動に基づく音の発生を効果的に抑制する防振構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した防振構造は、トランスミッションとパワーコントロールユニットとの間に防振ゴムが配置された防振構造であって、前記トランスミッションと前記パワーコントロールユニットのそれぞれから延出して前記防振ゴムを挟み込む突起部を有し、前記防振ゴムは、前記突起部に挟持される挟持部と、前記突起部に挟持されていない非挟持部と、を有し、前記非挟持部と前記トランスミッションとの間、及び前記非挟持部と前記パワーコントロールユニットとの間のうち、少なくとも一方の間には、空隙が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防振構造によれば、従来よりも優れた防振性能を発揮して起振源から伝達される振動に基づく音の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る防振構造の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施する形態(本実施形態)の防振構造について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の防振構造1は、トランスミッション2とパワーコントロールユニット3との間に防振ゴム4を備えて構成されている。
なお、図1は、本実施形態の防振構造1を模式的に表しており、以下に説明する防振構造1の構成要素は、作図の便宜上、誇張して描かれており、実際の形状及び大きさと異なっている。
【0010】
本実施形態でのトランスミッション2は、ハイブリッド車両用のものを想定しているが、起振源となり得るものであればこれに限定されるものではない。
本実施形態でのトランスミッション2は、図示は省略するが、エンジンの左側面に連結されている。
トランスミッション2のケーシング11(図1参照)は、エンジン側からフライホイールケーシング、本体ケーシング及びカバーに分割されている。フライホイールケーシング及び本体ケーシングの右ハーフ内に変速機構やフライホイールを収納するギヤ室が区画されている。そして、本体ケーシングの左ハーフ及びカバー内に電動モータを収納する電動モータ室が区画されている。この電動モータは、単独であるいはエンジンと協働して自動車の走行駆動力を発生する。
【0011】
パワーコントロールユニット3は、ケーシング12内に、パワードライブユニットや、電圧変換ユニット、ECU(Engine Control Unit)などを備えて構成されている。
パワードライブユニットは、前記の電動モータの駆動回路である。
電圧変換ユニットは、電動モータとこれに電力を供給するバッテリとの間において、直流・交流電圧変換を行うインバータや、交流電圧の昇降圧を行うDC/DCコンバータなどを含んでいる。
【0012】
ECUは、電動車両の駆動を統括的に制御する。ECUは、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、インターフェイス回路などを含む電子回路ユニットである。
このような本実施形態でのパワーコントロールユニット3は、起振源に対する隣接機器としてトランスミッション2の上方に配置されている。
【0013】
また、本実施形態の防振構造1は、図1に示すように、トランスミッション2側からパワーコントロールユニット3に向けて延出する第1の突起部8と、パワーコントロールユニット3側からトランスミッション2に向けて延出する第2の突起部9と、を備えている。これらの突起部8,9は、特許請求の範囲にいう「突起部」に相当する。
【0014】
第1の突起部8は、トランスミッション2におけるケーシング11の上面に形成されたスタッドボルト15と、このスタッドボルト15に噛み合うねじ山を有する円柱形状の突起部本体16とで構成されている。
なお、本実施形態での突起部本体16は、後記するように、予め防振ゴム4と加硫接着されて一体となっている。したがって、スタッドボルト15に対する突起部本体16の取り付けは、防振ゴム4と一体に行われる。
【0015】
第2の突起部9は、パワーコントロールユニット3のケーシング12を貫通するボルト17と、このボルト17に噛み合うねじ山を有する円柱形状の突起部本体18とで構成されている。
なお、この突起部本体18は、予め防振ゴム4と加硫接着されて一体となっている。したがって、ボルト17は、トランスミッション2に取り付けられた防振ゴム4と一体になった突起部本体18に対して締結されることとなる。
なお、本実施形態での突起部本体16と、突起部本体18とは、ともに同径であって互いに同軸に配置されている。これらの突起部本体16,18は、アルミニウム合金などの金属からなるものを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0016】
次に、防振ゴム4について説明する。
本実施形態での防振ゴム4は、略円盤状のものを想定している。
このように防振ゴム4は、図1に示すように、防振ゴム4の中央部で第1の突起部8と第2の突起部9との間に挟み込まれる挟持部13と、この挟持部13の周囲に形成されて第1の突起部8と第2の突起部9との間に挟み込まれていない非挟持部14と、を有している。
【0017】
挟持部13は、トランスミッション2(起振源)からパワーコントロールユニット3(隣接機器)に向けて振動が伝達される振動伝達経路となる第1の突起部8と第2の突起部9との間に配置されている。
【0018】
非挟持部14は、パワーコントロールユニット3のケーシング12との間に空隙7を有している。また、非挟持部14は、トランスミッション2のケーシング11との間、具体的には後記するストッパ5との間に空隙6を有している。
本実施形態での空隙6,7は、5mm程度のものを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、非挟持部14は、挟持部13と一体となるように挟持部13の径方向外側に形成されている。つまり、非挟持部14は、挟持部13の径方向外側に質量体を形成する。これにより非挟持部14は、慣性力により挟持部13の振動と相対的に逆位相にて振動するマスダンパを構成する。
ちなみに、本実施形態での非挟持部14は、挟持部13よりも肉厚に形成されることで、挟持部13の径方向外側にマス(mass)を偏在させている。
【0020】
防振ゴム4の材料としては、例えば、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
防振ゴム4は、第1の突起部8と第2の突起部9とを配置した所定の金型内で前記の材料を加硫成形することによって得られる。なお、図示は省略するが、非挟持部14には、マス(mass)を稼ぐ錘となる芯材をインサート成形することもできる。
【0021】
また、本実施形態の防振構造1は、図1に示すように、トランスミッション2におけるケーシング11の上面21(非挟持部14との対向面)に、ストッパ5を有している。
ストッパ5は、非挟持部14との間に所定間隔を開けて配置されるゴム板にて形成されている。
このストッパ5の材料としては、防振ゴム4の前記した材料と同様のものを使用することができる。また、ストッパ5の材料は、防振ゴム4と同じ種類のものを選択して使用することができるし、互いに異なったものを選択して使用することもできる。
【0022】
なお、図示は省略するが、ストッパ5は、パワーコントロールユニット3のケーシング12の下面22(非挟持部14との対向面)に設けることもできる。
このようなストッパ5は、トランスミッション2とパワーコントロールユニット3との間で、非挟持部14が相対的に変位した場合に、ケーシング11,12に対する非挟持部14の直接的な接触を防止する。
【0023】
<作用効果>
次に、本実施形態に係る防振構造1の奏する作用効果について説明する。
本実施形態に係る防振構造1においては、トランスミッション2からパワーコントロールユニット3へと向かう振動伝達経路上に配置される防振ゴム4(挟持部13)と、振動伝達経路上には配置されていない防振ゴム4(非挟持部14)とを備えている。
挟持部13は、振動伝達経路上を伝わる振動を直接的に減衰する。
【0024】
これに対して非挟持部14は、トランスミッション2との間、及びパワーコントロールユニット3との間に空隙6,7を形成することで、慣性力により挟持部13の振動と相対的に逆位相にて振動するマスダンパを構成する。
【0025】
このような防振構造1によれば、従来の防振構造(例えば、特許文献1参照)と異なって、マスダンパを構成する非挟持部14をさらに備えているので、従来よりも優れた防振性能を発揮して起振源から伝達される振動に基づく音の発生を効果的に抑制することができる。
【0026】
また、この防振構造1においては、トランスミッション2の上面(非挟持部14との対向面)、及びパワーコントロールユニット3の下面(非挟持部14との対向面)のうち、少なくとも一方には、非挟持部14のストッパ5が設けられている。
このような防振構造1によれば、トランスミッション2とパワーコントロールユニット3との間で、非挟持部14がこれらと相対的に変位した場合に、ストッパ5がケーシング11,12に対する非挟持部14の直接的な接触を防止する。
このような防振構造1によれば、非挟持部14のトランスミッション2やパワーコントロールユニット3に対する直接的な接触が防止されることで、非挟持部14の耐久性を向上させることができる。ストッパ5は、緩衝部材として機能させることができる。
【0027】
また、この防振構造1においては、防振ゴム4の肉厚は、挟持部13よりも非挟持部14のほうが厚くなっている。
このような防振構造1によれば、挟持部13の径方向外側にマス(mass)を偏在させることができ、非挟持部14のマスダンパとしての機能をさらに向上させることができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、非挟持部14は、トランスミッション2との間に空隙6を有するとともに、パワーコントロールユニット3との間に空隙7を有している。しかしながら、非挟持部14は、トランスミッション2との間の空隙6、又はパワーコントロールユニット3との間の空隙7のいずれか一方のみを有する構成とすることもできる。このような防振構造1は、非挟持部14が空隙6側、又は空隙7側のいずれかに変位するように振動することで、パワーコントロールユニット3側に伝わる振動を減衰する。
【0029】
前記実施形態の防振構造1は、一組の第1の突起部8と第2の突起部9と防振ゴム4とを有するものを想定しているが、これらを複数組有する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 防振構造
2 トランスミッション
3 パワーコントロールユニット
4 防振ゴム
5 ストッパ
6 空隙
7 空隙
8 第1の突起部
9 第2の突起部
13 挟持部
14 非挟持部
21 トランスミッションの上面(非挟持部の対向面)
22 パワーコントロールユニットの下面(非挟持部の対向面)
図1