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特開2022-156239温度分布計測方法、空調制御システム、サーバ室及び熱分布撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156239
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】温度分布計測方法、空調制御システム、サーバ室及び熱分布撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20221006BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221006BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20221006BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01J5/48 A
F24F7/06 B
F24F11/62
H05K7/20 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059828
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌弘
【テーマコード(参考)】
2G066
3L058
3L260
5E322
【Fターム(参考)】
2G066AC20
2G066BA14
2G066BC15
3L058BG04
3L260CA13
5E322AB10
5E322BA03
5E322BA04
5E322BA05
5E322BB08
5E322CA06
5E322EA11
(57)【要約】
【課題】より広範囲のサーバラックを対象として吸気側の温度分布を計測する。
【解決手段】本温度分布計測方法は、所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室の温度分布計測方法であって、金属製の半球体と、半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置を、上記球面を所定空間に向けた状態で、所定空間に冷気が供給される被供給口に設けるステップと、サーモカメラが球面を撮影した熱分布画像を取得するステップと、を含む。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室の温度分布計測方法であって、
金属製の半球体と、前記半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置を、前記球面を前記所定空間に向けた状態で、前記所定空間に冷気が供給される被供給口に設けるステップと、
前記サーモカメラが前記球面を撮影した熱分布画像を取得するステップと、を含む、
温度分布計測方法。
【請求項2】
前記所定空間には、空調機から前記所定空間に供給される冷気の流量を調整する整流体が設けられ、
前記設けるステップでは、前記熱分布撮像装置は前記整流体に設けられる、
請求項1に記載の温度分布計測方法。
【請求項3】
前記熱分布画像を取得する前に、前記サーバラックの吸気側全面を通気性を有する遮熱シートで被うステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の温度分布計測方法。
【請求項4】
所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室の空調制御システムであって、
前記所定空間に冷気を供給する空調機と、
金属製の半球体と、前記半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置であって、前記球面を前記所定空間に向けた状態で前記所定空間に冷気が供給される被供給口に設けられる熱分布撮像装置と、
前記サーモカメラが前記球面を撮影した熱分布画像を取得し、取得した前記熱分布画像を基に前記空調機を制御する制御装置と、を備える、
空調制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記サーバ室内に人を検知している間は前記空調機の制御を抑制する、
請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記熱分布画像には、前記サーバ室に設けられた入退室扉を撮影した画像が含まれており、
前記制御装置は、前記熱分布画像から前記入退室扉を除外して前記空調機を制御する、
請求項4または5に記載の空調制御システム。
【請求項7】
所定空間に吸気側を向けたサーバラックと、
前記所定空間に冷気を供給する空調機と、
金属製の半球体と、前記半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置であって、前記球面を前記所定空間に向けた状態で前記所定空間に冷気が供給される被供給口に設けられる熱分布撮像装置と、
前記サーモカメラが前記球面を撮影した熱分布画像を取得し、取得した前記熱分布画像を基に前記空調機を制御する制御装置と、を備える、
サーバ室。
【請求項8】
所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室に設けられる熱分布撮像装置であって、
金属製の半球体と、
前記半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラと、を備え、
前記球面を前記所定空間に向けた状態で前記所定空間に冷気が供給される被供給口に設けられ、前記サーモカメラが前記球面を撮影して熱分布画像を生成する、
熱分布撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度分布計測方法、空調制御システム、サーバ室及び熱分布撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモカメラを利用して温度分布を計測したり計測した温度分布を利用して測定対象物の状態を判定したりする技術が提案されている(特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5729993号
【特許文献2】特開平11-023478号公報
【特許文献3】特開2020-035113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
効率的に空間を空調する空調制御技術の開発が行われている。ここで、空間を効率的に空調するためには、空調の対象となる空間の温度分布状況を正確に把握する必要がある。
【0005】
例えば、空調の対象となる空間としては、多数の情報処理機器が設置されたサーバ室等がある。サーバ室内のラックの前面側(吸気側)や、二重床上の冷気送出口などに温度センサを設置して、サーバ室内の温度を計測することで、温度分布を把握する方法が用いられている。しかし、このような方法は、温度センサを設置した点のみしか計測されないため、サーバ室内の正確な温度分布を把握するには不十分である。また、正確な温度分布を取得しようとすると、多数の温度センサを設置する必要があり、コストや作業時間が増大するという問題があった。また、温度センサに代えてサーモカメラを採用した場合においても、温度分布を取得できるのはサーモカメラの撮影範囲内に限定されることから、温度センサと同様の問題が生じ得る。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、より広範囲のサーバラックを対象として吸気側の温度分布を計測できる温度分布計測方法、空調制御システム及びサーバ室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような温度分布計測方法によって例示される。本温度分布計測方法は、所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室の温度分布計測方法であって、金属製の半球体と、半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置を、上記球面を所定空間に向けた状態で、所定空間に冷気が供給される被供給口に設けるステップと、サーモカメラが球面を撮影した熱分布画像を取得するステップと、を含む。
【0008】
本温度分布計測方法では、熱分布撮像装置の周囲360度の範囲内に配置されたサーバラックの吸気側の温度分布が半球体の球面に反映される。サーモカメラが当該球面を撮影することで、多数の温度センサを設置しなくとも、より広範囲のサーバラックを対象として、サーバラックの吸気側の温度分布を撮影することができる。すなわち、本温度分布計測方法によれば、多数の温度センサを設置するコストや作業時間を抑制しつつ、より広範囲のサーバラックを対象として、サーバラックの吸気側の温度分布を撮影することができ
る。
【0009】
ここで、上記所定空間には、上記空調機から上記所定空間に供給される冷気の流量を調整する整流体が設けられ、上記設けるステップでは、上記熱分布撮像装置は上記整流体に設けられてもよい。整流体近傍では上記空調機から供給される冷気の流速が速いことから、暖気通路の暖気が回り込む蓋然性が高いと考えられる。熱分布撮像装置が整流体に設けられることで、暖気が回り込みやすい領域を高精細に監視することができる。
【0010】
本温度分布計測方法は、さらに、上記熱分布画像を取得する前に、上記サーバラックの吸気側全面を通気性を有する遮熱シートで被うステップをさらに含んでもよい。遮熱シートによって、サーバラック内のブランクパネルやサーバの熱がさえぎられる。そのため、このようなステップを含むことで、本温度分布計測方法は、所定空間に供給される冷気の温度分布をより正確に把握することが可能となる。
【0011】
また、開示の技術は、空調制御システム及びこのような空調制御システムを備えたサーバ室として把握することも可能である。このような空調制御システムは、所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室の空調制御システムであって、所定空間に冷気を供給する空調機と、金属製の半球体と、半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラとを含む熱分布撮像装置であって、球面を所定空間に向けた状態で空調機の吹き出し口に設けられる熱分布撮像装置と、サーモカメラが球面を撮影した熱分布画像を取得し、取得した熱分布画像を基に空調機を制御する制御装置と、を備える。
【0012】
そして、上記制御装置は、サーバ室内に人を検知している間は空調機の制御を抑制してもよい。制御装置は、このような制御を行うことで、サーバ室内に人がいることで検知した高温領域を冷気の供給不足によるものとする誤検知を抑制することができる。
【0013】
ここで、上記熱分布画像には、上記サーバ室に設けられた入退室扉を撮影した画像が含まれており、上記制御装置は、上記熱分布画像から上記入退室扉を除外して上記空調機を制御してもよい。入退室扉は人が出入りするたびに開放されるため、入退室扉近傍は温度が安定しないと考えられる。このような入退室扉を空調機の制御から除外することで、空調機の制御をより安定したものとすることができる。
【0014】
また、開示の技術は、熱分布撮像装置として把握することも可能である。このような熱分布撮像装置は、所定空間に吸気側を向けたサーバラックが整列したサーバ室に設けられる熱分布撮像装置である。本熱分布撮像装置は、金属製の半球体と、上記半球体の球面に撮影方向を向けたサーモカメラと、を備える。そして、本熱分布撮像装置は、上記球面を上記所定空間に向けた状態で上記所定空間に冷気が供給される被供給口に設けられ、上記サーモカメラが上記球面を撮影して熱分布画像を生成する。
【発明の効果】
【0015】
開示の技術によれば、より広範囲のサーバラックを対象として吸気側の温度分布を計測測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る空調制御システムに用いられる熱分布撮像装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態において温度分布の測定対象となるサーバ室を示す平面図である。
図3図3は、冷気の流れを模式的に示す図である。
図4図4は、暖気の流れを模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態において熱分布撮像装置を設ける位置を例示する図である。
図6図6は、実施形態におけるラックの側面断面図の一例である。
図7図7は、実施形態において、熱分布撮像装置が撮影した熱分布画像の一例を示す図である。
図8図8は、図7に例示した熱分布画像を平面展開した図の第1の例を示す図である。
図9図9は、図7に例示した熱分布画像を平面展開した図の第2の例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る空調制御システムのシステム構成を例示する図である。
図11図11は、実施形態における空調制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る空調制御システムの制御フローの一例を示す図である。
図13図13は、実施形態における空調制御装置の処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。図1は、実施形態に係る空調制御システムに用いられる熱分布撮像装置の一例を示す図である。熱分布撮像装置100は、サーモカメラ110、SUS半円球120及びサーモカメラ110とSUS半円球とを接続する接続部材130を備える。
【0018】
サーモカメラ110は、赤外線を検知することにより温度分布を計測可能なカメラである。サーモカメラ110は、本体部111及び鏡筒112を有する。鏡筒112は、円柱状に形成される。鏡筒112内には、1または複数の光学レンズが設けられる。本体部111は、イメージセンサやプロセッサを有する。イメージセンサとしては、例えば、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)イメージセンサを挙げることができる。サーモカメラ110では、例えば、鏡筒112の光学レンズを介して入射した赤外線がイメージセンサに入射して、温度分布を示す熱分布画像が生成される。なお、サーモカメラ110の画角は、例えば、25度である。すなわち、サーモカメラ110単体では、サーモカメラ110の周囲360度を撮影範囲とすることは困難である。
【0019】
SUS半円球120は、サーモカメラ110の撮影方向に設けられる。SUS半円球120は、例えば、ステンレススチール等の金属で形成された半球体の球面反射鏡である。SUS半円球120は、中実であっても中空であってもよい。SUS半円球120は、例えば、周囲の物体から放射される赤外線を受けることで、球面121上に周囲の温度分布が反映される。
【0020】
接続部材130は、サーモカメラ110の鏡筒112とSUS半円球120とを接続する円筒形の部材である。接続部材130の内径は、鏡筒112及びSUS半円球120の外径と等しい。接続部材130は、赤外線が透過可能な部材で形成される。赤外線が透過可能な部材としては、例えば、アクリル板を挙げることができる。接続部材130は、一方の端部からは鏡筒112が挿入され、他方の端部からはSUS半円球120がその球面121を接続部材130に向けた状態で挿入される。すなわち、サーモカメラ110は、接続部材130によって、その撮影方向をSUS半円球120の球面121に向けた状態
で固定される。なお、接続部材130の長さは、サーモカメラ110のレンズの画角に応じて適宜決定される。例えば、サーモカメラ110の撮影範囲内にSUS半円球120の球面121が収まるように、接続部材130の長さが決定されればよい。より好ましくは、サーモカメラ110の撮影範囲の大部分をSUS半円球120の球面121が占めるように接続部材130の長さが決定される。
【0021】
図2は、実施形態において温度分布の測定対象となるサーバ室を示す平面図である。サーバ室1には、空調ユニット11が備えられている。また、サーバ室1には複数のラック列9が設置されており、夫々のラック列9には、1または複数の情報処理機器91が搭載されたラック90が横に並べられている。なお、図2では、1のラック列9に5つのラック90が並べられ、サーバ室1にはラック列9が2列並べられているが、1のラック列9に並べられるラック90の数、及びサーバ室1に並べられるラック列9の数は、特に限定されない。ラック90は、「サーバラック」の一例である。
【0022】
サーバ室1では、ラック列9は、互いに前面(情報処理機器91の吸気側)を向けるように配置される。そして、空調ユニット11は、ラック列9の前面側の通路に対して冷気を供給する。冷気が供給される通路は、冷気通路(コールドアイル)とも称される。情報処理機器91は、冷気通路に供給された冷気を吸気し、機器内部の熱によって暖められた暖気を後面に排気することで、機器内部を冷却する。暖気が排気されるラック列9の後方の通路は、暖気通路(ホットアイル)とも称される。
【0023】
図3は、冷気の流れを模式的に示す図である。図3は、冷気通路を側面から見た図となっている。冷気通路を挟むラック列9の両端間や上端間には、図2及び図3に例示するように、メッシュ状に形成された整流体12が設けられる。整流体12は、空調ユニット11から吹出る空気の流速が速いことにより、ラック90の吸気面側で静圧が低下したり乱流が形成されたりしてラック90内への冷気の吸込み不良が生じるのを防ぐ目的で設置される。整流体12が設けられることで、空調ユニット11から冷気通路へ略均一の流量の冷気が流れるようにすることができる。なお、整流体12は、空調ユニット11から冷気通路へ流れる冷気の通路に通気抵抗を生じさせ得るものであればよい。整流体12は、例えば、フィルタやパンチング板、金網、布、あるいはこれらの積層体、並びに空調の吹出し口等に用いられるレジスタなどを適用できる。
【0024】
図4は、暖気の流れを模式的に示す図である。図4は、暖気通路を側面から見た図となっている。また、暖気通路の両端やラック列9の暖気通路側の上端と天井13との間には、図2及び図4に例示するように、暖気通路と冷気通路とを隔離する仕切り板16が設けられる。仕切り板16によって、暖気通路から冷気通路に暖気が回り込むことが抑制される。
【0025】
空調ユニット11は、図4に例示するように、上面に設けられた開口より天井裏14から各ラック90の排気を吸引して冷却する。そして、空調ユニット11は、冷却した空気をサーバ室1に供給する。サーバ室1に供給された冷気は、図3に例示するように、整流体12を介して冷気通路に供給される。空調ユニット11は、「空調機」の一例である。
【0026】
図5は、実施形態において熱分布撮像装置を設ける位置を例示する図である。熱分布撮像装置100は、サーモカメラ110の撮像方向を整流体12に向けた状態で、ラック列9の上端間に設けられた整流体12の下面に取り付けられる。すなわち、熱分布撮像装置100のSUS半円球120の球面121が冷気通路の床側(下方)を向くように熱分布撮像装置100が取り付けられる。このように熱分布撮像装置100が取り付けられることで、ラック列9の前面から放射される赤外線がSUS半円球120の球面121に照射されることで、ラック列9の前面の温度分布がSUS半円球120の球面121に反映さ
れる。そして、熱分布撮像装置100は、サーモカメラ110によってSUS半円球120の球面121を撮影することで、その周囲360度の範囲内に設置されたラック列9前面の温度分布を撮影することができる。整流体12は、「被供給口」の一例である。
【0027】
さらに、図5では、シート保持枠(図示略)によって、冷気通路の長手方向と通気シート17の法線方向とが略一致するように配置された通気シート17も例示される。通気シート17の幅は、冷気通路の幅(ラック列9の両端間の距離)と略等しい。また、通気シート17の高さは、冷気通路の高さ(床からラック列9の上端間に設けられた整流体12までの距離)と略等しい。通気シート17は、通気性を有し、冷気通路における冷気の流れを阻害しないものが好ましい。通気シート17としては、例えば、特許第5729993号に記載のシートを採用することができる。このような通気シート17を採用することで、冷気通路の空間における温度分布を通気シート17に反映させることができる。
【0028】
図6は、実施形態におけるラックの側面断面図の一例である。ラック90の前面(情報処理機器91の吸気側)には、複数の孔が設けられた多孔板で形成されたラック扉901が設けられる。ラック90の背面は開放されていてもよい。ラック90では、水平方向に延びるラックレールが縦方向に複数設けられる。情報処理機器91の夫々は、ラック90のラックレール上に設置される。情報処理機器91が設けられていないラックレールの前面には、暖気通路の暖気が冷気通路に回り込むことを抑制するため、板状のブランクパネル902が設けられる。ブランクパネル902が暖気によって温められると、熱分布撮像装置100によってその熱が検知される虞がある。
【0029】
そこで、ラック扉901の背面には、通気性を有する遮熱シート903が設けられることが好ましい。遮熱シート903によって、暖められたブランクパネル902の熱が熱分布撮像装置100によって検知されることを抑制することができる。遮熱シート903としては、例えば、株式会社くればぁの「サランネット」を採用することができる。なお、図6では、遮熱シート903はラック扉901の背面に設けられたが、遮熱シート903はラック扉901の前面に設けられてもよい。なお、遮熱シート903は、熱分布撮像装置100による撮影を行わないときはラック扉901から取り外されてもよい。
【0030】
図7は、実施形態において、熱分布撮像装置が撮影した熱分布画像の一例を示す図である。図7では、理解を助けるために、熱分布画像300のうち、ラック列9の前面が写る領域と通気シート17の表面が写る領域とを例示する。図7を参照すると理解できるように、熱分布画像300では、熱分布撮像装置100が設けられた上方の画像(ラック列9の上部の画像)の方が、下方の画像(ラック列9の下部の画像)よりも幅広に映る。そのため、ラック列9の上部に対応する領域を描画する画素数は、ラック列9の下部に対応する領域を描画する画素数よりも多い。すなわち、熱分布画像300では、ラック列9の上部の方がラック列9の下部よりも高精細に熱分布を示すことができることになる。熱分布画像300では、ラック列9の前面と通気シート17とが一枚の画像で撮影される。すなわち、熱分布撮像装置100は、360度の範囲を撮影できることから、ラック列9の前面における温度分布と通気シート17に反映された冷気通路の空間おける温度分布とを、一度の撮影で測定することができる。
【0031】
図8は、図7に例示した熱分布画像を平面展開した図の第1の例を示す図である。図8では、熱分布画像300のうち、通気シート17が映された範囲を平面展開した状態を例示する。なお、図8では、冷気通路の上方から供給される冷気の流れを矢印で模式的に示している。図9は、図7に例示した熱分布画像を平面展開した図の第2の例を示す図である。図9では、熱分布画像300のうち、ラック列9の前面が映された範囲を平面展開した状態を例示する。このように平面展開を行うことで、ラック列9の前面や通気シート17における熱分布を詳細に分析することが可能となる。
【0032】
図10は、実施形態に係る空調制御システムのシステム構成を例示する図である。空調制御システム500では、熱分布撮像装置100及びPAC11が空調制御装置510に接続される。空調制御装置510は、例えば、情報処理装置である。図11は、実施形態における空調制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。空調制御装置510は、Central Processing Unit(CPU)51、主記憶部52、補助記憶部53及び通信部54を備える。CPU51、主記憶部52、補助記憶部53及び通信部54は、接続バスによって相互に接続される。
【0033】
CPU51は、マイクロプロセッサユニット(MPU)、プロセッサとも呼ばれる。CPU51は、プロセッサと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。空調制御装置510では、CPU51が補助記憶部53に記憶されたプログラムを主記憶部52の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。主記憶部52及び補助記憶部53は、空調制御装置510が読み取り可能な記録媒体である。
【0034】
主記憶部52は、CPU51から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部52は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0035】
補助記憶部53は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部53は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部53には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部54を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。
【0036】
補助記憶部53は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0037】
通信部54は、例えば、外部装置を接続するインターフェースである。空調制御装置510は、通信部54を介してPAC11や熱分布撮像装置100との通信を行う。
【0038】
空調制御装置510は、熱分布画像300を熱分布撮像装置100から取得する。空調制御装置510は、取得した熱分布画像300を基に空調ユニット11の制御を行う。
【0039】
例えば、空調制御装置510は、熱分布画像300を解析して冷気通路の各箇所における温度を算出し、算出した冷気通路の各箇所における温度を基に、空調ユニット11が送出する冷気の増強または減少を空調ユニット11に対して指示すればよい。また、例えば、空調制御装置510は、熱分布画像300を解析して冷気通路中の最も高い温度を検出し、検出した温度を基に、空調ユニット11の制御を行ってもよい。
【0040】
ここで、サーバ室1には、各種作業のため作業員が立ち入ることがある。空調制御装置510は、サーバ室1に立ち入った作業員を検知している間は、空調ユニット11の制御を行わなくともよい。また空調制御装置510は、ラック90が設置されていないことからサーバ室1の入退室扉の近傍については、熱分布画像300の解析から除いてもよい。
【0041】
<空調制御システム500の制御フロー>
図12は、実施形態に係る空調制御システムの制御フローの一例を示す図である。図1
2では、サーバ室1の空調制御を行うものとする。以下、図12を参照して、空調制御システムの制御フローの一例について説明する。
【0042】
S1では、熱分布撮像装置100がサーバ室1に設置される。熱分布撮像装置100は、SUS半円球120の球面121が冷気通路側(下方)を向くように、天井13に設けられた整流体12の下面に取り付けられる。さらに、通気シート17が冷気通路に配置されてもよい。S2では、遮熱シート903が、ラック扉901の背面に設けられる。なお、S1の前にS2の手順が行われてもよい。
【0043】
S3では、S1で設置された熱分布撮像装置100のサーモカメラ110が、SUS半円球120の撮影を開始する。上記の通り、SUS半円球120にはラック列9の前面の温度分布が反映される。そのため、熱分布撮像装置100は、サーモカメラ110によってSUS半円球120を撮影することで、ラック列9の前面の温度分布を撮影した熱分布画像を生成することができる。ステップS1からS3までの処理は、「温度分布計測方法」の一例である。
【0044】
S4では、空調制御装置510は、S2で生成された熱分布画像を熱分布撮像装置100から取得する。S5では、空調制御装置510は、S4で取得した熱分布画像を基に、空調ユニット11の制御を行う。
【0045】
<空調制御装置510の処理フロー>
図13は、実施形態における空調制御装置の処理フローの一例を示す図である。図13は、図12のS5の処理をより詳細に説明する図である。以下、図13を参照して、空調制御装置の処理フローの一例を示す図である。
【0046】
S51では、空調制御装置510は、熱分布撮像装置100から取得した熱分布画像を解析する。空調制御装置510は、熱分布画像中におけるサーバ室1への入退室扉の熱分布画像中における領域を補助記憶部53に予め記憶している。空調制御装置510は、取得した熱分布画像から入退室扉の領域を除外した上で、熱分布画像の解析を行う。
【0047】
S52では、空調制御装置510は、S51での解析結果に基づき、熱分布画像中に作業員を含む人がいるか否かを判定する。なお、空調制御装置510は、熱分布画像によらず、サーバ室1内に人感センサ等の他の検知手段を設け、当該検知手段からの検知信号によって人がいるか否かを判定してもよい。人が検知された場合(S42でYES)、処理は終了される。人が検知されていない場合(S52でNO)、処理はS53に進められる。
【0048】
S53では、空調制御装置510は、S51での解析結果に基づいて、空調ユニット11の制御を行う。
【0049】
<実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、熱分布撮像装置100の周囲360度範囲内に配置されたラック90の吸気側の温度分布がSUS半円球120の球面121に反映される。サーモカメラ110がSUS半円球120の球面121を撮影することで、熱分布撮像装置100の周囲360度の範囲内に配置されたラック90の吸気側の温度分布を撮影することができる。また、本実施形態によれば、温度分布を点ではなく面で(熱分布画像として)取得することができるため、多数の温度センサを設置した場合と同様の効果を1台の熱分布撮像装置100で達成することができる。
【0050】
本実施形態において、整流体12の近傍(ラック列9の上側)は、空調ユニット11か
ら供給される冷気の流速が速いことから、暖気通路の暖気が回り込む蓋然性が高いと考えられる。本実施形態では、このような整流体12の近傍に熱分布撮像装置100を設けることで、図7を参照して説明したように、ラック列9の上側における熱分布を高精細に取得することができる。
【0051】
本実施形態では、通気性を有する遮熱シート903がラック扉901の背面には、通気性を有する遮熱シート903が設けられる。遮熱シート903は、暖められたブランクパネル902の熱が熱分布撮像装置100によって検知されることを抑制する。そのため、本実施形態に係る熱分布撮像装置100は、ラック90内のブランクパネルやサーバの熱による影響を抑制することができ、所定空間に供給される冷気の温度分布をより正確に計測することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、サーバ室1内に人がいることを検知している間は、空調ユニット11の制御を行わない。このような制御が行われることで、サーバ室1内に人がいることで検知した高温領域を空調ユニット11からの冷気の供給不足によるものとする誤検知を抑制すること、ひいては誤検知に基づく空調ユニット11の制御を抑制することができる。
【0053】
<変形例>
実施形態では、サーバ室1の空調ユニット11は、床上で冷気通路に冷気を供給した。しかしながら、空調ユニット11はこのような形態に限定されない。例えば、サーバ室1には床下空間が設けられ、冷気通路の床には床下空間と冷気通路とを連通するように整流体12が配置されてもよい。空調ユニット11は、当該床下空間に冷気を吹き出すことで、冷気通路の床に設けられた整流体12を介して冷気通路に冷気を供給してもよい。このような場合、熱分布撮像装置100は、サーモカメラ110の撮像方向を冷気通路の床に設けられた整流体12に向けた状態で、整流体12の上面に取り付けられればよい。換言すれば、SUS半円球120の球面121が冷気通路側(上方)を向くように熱分布撮像装置100が設けられればよい。このように熱分布撮像装置100が設けられることで、暖気通路の暖気が回り込みやすい整流体12近傍における熱分布を高精細に取得することができる。
【0054】
実施形態では、熱分布画像を取得する際に通気シート17を設置したが、冷気通路の空間における温度分布を測定しなくともよい場合、通気シート17の設置は省略することができる。
【0055】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0056】
1、1a、1b:サーバ室
100:熱分布撮像装置
110:サーモカメラ
111:本体部
112:鏡筒
12:整流体
120:半円球
121:球面
13:天井
130:接続部材
14:天井裏
14:作業スペース
15:床
151:床下
16:仕切り板
17:通気シート
21:外壁
22:内壁
221、222:壁部
23:ラック設置スペース
24:作業スペース
300:熱分布画像
500:空調制御システム
510:空調制御装置
51:CPU
52:主記憶部
53:補助記憶部
54:通信部
9:ラック列
90:ラック
901:ラック扉
902:ブランクパネル
903:遮熱シート
91:情報処理機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13