(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156258
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】プラスチック容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/72 20060101AFI20221006BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20221006BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65D85/72 100
B65D1/02 110
B65D65/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059851
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】磯野 晃
(72)【発明者】
【氏名】青木 達郎
【テーマコード(参考)】
3E033
3E035
3E086
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA30
3E033BB04
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA04
3E033FA03
3E033GA02
3E035AA19
3E035AB07
3E035BA04
3E035BC02
3E035CA02
3E086AD04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB55
3E086BB59
3E086BB74
3E086CA01
3E086CA40
3E086DA01
(57)【要約】
【課題】滑落性に優れ、且つ滑落性の持続性が高いプラスチック容器を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、内容物を収容するためのプラスチック容器であって、前記内容物と接する最内層は、ポリオレフィン系樹脂にシリコーンと、オレイン酸アミド又は乳化剤とを添加した樹脂組成物で構成されることを特徴とする、プラスチック容器が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するためのプラスチック容器であって、
前記内容物と接する最内層は、ポリオレフィン系樹脂にシリコーンと、オレイン酸アミド又は乳化剤とを添加した樹脂組成物で構成されることを特徴とする、プラスチック容器。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチック容器であって、
前記乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルである、プラスチック容器。
【請求項3】
請求項1に記載のプラスチック容器であって、
前記乳化剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルである、プラスチック容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンである、プラスチック容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである、プラスチック容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
調味料等の内容物を収容するために、容器の内面をポリオレフィン系樹脂で構成した容器が一般に使用されている。このような容器に対しては、内容物をロスなく使い切るために、内容物が容器の内面上を速やかに落下する滑落性が要求される。特許文献1には、プラスチック容器の最内層を構成するポリオレフィン系樹脂に不飽和脂肪族アミド及び飽和脂肪族アミドを滑剤として添加することにより、滑落性を向上させたプラスチック容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プラスチック容器の滑落性は、内容物の充填直後に良好であったとしても、その後の保存期間の経過とともに低下する場合がある。従って、滑落性の持続性が高く、長期保存した場合でも滑落性の低下が少ないプラスチック容器が望まれている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ソースやマヨネーズといった調味料等の内容物を収容するためのプラスチック容器であって、滑落性に優れ、且つ滑落性の持続性が高いプラスチック容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、内容物を収容するためのプラスチック容器であって、前記内容物と接する最内層は、ポリオレフィン系樹脂にシリコーンと、オレイン酸アミド又は乳化剤とを添加した樹脂組成物で構成されることを特徴とする、プラスチック容器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
内容物と接する最内層を、ポリオレフィン系樹脂にシリコーンと、オレイン酸アミド又は乳化剤とを添加した樹脂組成物で構成することにより、内容物を収容した場合に優れた滑落性を示し、且つ20日超の長期保存後においても滑落性の低下が少ないことを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルである。
好ましくは、前記乳化剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルである。
好ましくは、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレンである。
好ましくは、前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラスチック容器1の正面図である。
【
図2】プラスチック容器1の容器本体2の層構成の一例を示す図である。
【
図3】プラスチック容器1の容器本体2の層構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.プラスチック容器の構成
図1は、本発明の実施形態に係るプラスチック容器1の構成の一例を示す図である。プラスチック容器1に収容される内容物は特に限定されないが、プラスチック容器1は、水性の内容物を収容した場合に特に好適である。なお、本発明における水性の内容物とは、内容物中の水分が30質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であるものを指し、例えば、ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース等のソースが挙げられる。プラスチック容器1は、上記の水性の内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高く、とりわけ水分が50質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であり、粘度が150mPa・s以上の比較的粘性の高い内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高い。
【0012】
本発明の実施形態に係るプラスチック容器1は、容器本体2及びキャップ3を備える。容器本体2は、内容物を収容する収容部21、及び収容部21から内容物を吐出するための開口部を有する口部22を備える。
【0013】
キャップ3は、キャップ本体32及びキャップカバー31を備える。キャップ本体32とキャップカバー31は連結部33において連結されていて、キャップカバー31が開閉可能になっている。キャップ本体32は、上部32aと、上部32aに設けられた吐出口32bと、及び上部32aの外周から筒状に延びる筒部32cを備える。
【0014】
筒部32cの内面には、口部22の外面と係合可能な係合部(不図示)が形成され、キャップ3を口部22に対して上方から打栓することによって、口部22の外面と当該係合部が係合し、キャップ3が容器本体2に装着される。なお、キャップ3の容器本体2への装着方法は、上記の打栓式に限定されるものではなく、ネジ式であってもよい。
【0015】
図2は、容器本体2の層構成の一例を示す図である。容器本体2は、複数の層を含む多層構成を有し、内側から順に、最内層4、中間層5、接着樹脂層6、バリア層7、接着樹脂層8、及び最外層9を備える。各層の厚さの比率は、例えば、以下の通りである。
最内層4:10~40%
中間層5:30~60%
接着樹脂層6:1~10%
バリア層7:5~10%
接着樹脂層8:1~15%
最外層9:20~60%
以下、各層について説明する。
【0016】
(最内層4)
最内層4は、内容物と接する層であり、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成される。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等が例示される。また、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよく、さらには、いわゆる環状オレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo-Olefin Polymer))や環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo-Olefin Copolymer))等であってもよい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
例示されたポリオレフィン系樹脂の中では、ポリエチレン又はポリプロピレンを使用することが好ましく、ポリエチレンやポリプロピレンを樹脂成分中の主成分とすること、つまり、樹脂組成物全体の50質量%以上とすることが好ましい。また、ポリエチレンとしては、透明性やスクイズ性(絞り性)等を考慮し、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
【0018】
当該ポリオレフィン系樹脂には、滑剤としてシリコーン(シリコーン化合物を含む)が添加される。シリコーンを添加することにより、最内層4の滑落性が良好となる。添加されるシリコーンとしては、例えば、オルガノポリシロキサン(ポリオルガノシロキサン)が挙げられ、分子構造は直鎖状(線状)又は一部分岐状のものを使用することができ、オルガノポリシロキサンの中でも、ジオルガノポリシロキサンを使用することが好ましい。
【0019】
ジオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシキロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が例示される。この中では、アルキル基、特にメチル基が好ましい。ジオルガノポリシロキサンの末端には水酸基やアルコキシ基が結合していてもよい。このようなジオルガノポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、片末端がシラノール基で封鎖され、もう一方の片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体等が例示される。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
シリコーンの重量平均分子量(Mw)は、100万(1000000)以上であることが好ましく、100万(1000000)~1000万(10000000)とすることがより好ましく、150万(1500000)~1000万(10000000)とすることがさらに好ましく、500万(5000000)~1000万(10000000)とすることが特に好ましい。シリコーンの重量平均分子量が上記範囲である場合にはシリコーンがブリードアウトしにくく、内容物に移行することなく良好な滑落性を維持することができる。なお、重量平均分子量の測定は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー等の従来公知の方法で行うことができる。
【0021】
また、シリコーンの粘度は、600万(6000000)cS以上であることが好ましく、600万(6000000)~1000万(10000000)cSであることが特に好ましい。
【0022】
シリコーンの添加量は、最内層4を構成する樹脂組成物全体に対して2.5~10.0質量%とすることが好ましく、5~10質量%とすることがより好ましく、8~10質量%とすることが特に好ましい。滑剤の添加量を上記範囲とすることにより、滑落性が良好に発揮される一方、シリコーンの添加量が多すぎることで成形性の低下や樹脂組成物の白濁といった問題も生じにくい。なお、シリコーンはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂やこれ以外の樹脂からなるベース樹脂と混合されたマスターバッチ(MB)を使用して添加される場合もあり、その場合、マスターバッチとシリコーンの配合比(通常、マスターバッチ全体に対してシリコーンは10~70質量%)に応じてシリコーンの含有量を上記範囲に調整するようにすればいい(目安としては、最内層4を構成する樹脂組成物全体に対してマスターバッチを0.01~20質量%添加することが好ましく、0.5~8.0質量%添加することが特に好ましいが、この範囲に特に制限されるものではない)。
【0023】
最内層4を構成するポリオレフィン系樹脂には、さらにオレイン酸アミド又は乳化剤が添加される。オレイン酸アミドをシリコーンと組み合わせて使用することにより、滑落性の持続性が向上し、長期保存した場合でも最内層4の滑落性が低下しにくくなる。オレイン酸アミドの添加量は、特に限定されないが、例えば、最内層4を構成する樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%とすることが好ましく、0.1~5質量%とすることがさらに好ましい。
【0024】
乳化剤をシリコーンと組み合わせて使用することにより、シリコーンの添加による最内層4の滑落性が、長期保存した場合でも低下しにくくなる。乳化剤としては、例えば、多価アルコール脂肪酸エステルが挙げられ、多価アルコール脂肪酸エステルの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、又はソルビタン脂肪酸エステルを使用することが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノジベヘネート(HLB値4.2)、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート(HLB値3.4)、及びグリセリンモノベヘネート(HLB値2.8)が例示される。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンオレート(HLB値5.7)、ジグリセリンステアレート(HLB値5.7)、ジグリセリンラウレート(HLB値7.3)、及びジグリセリンモノラウレート(HLB値9.4)等のジグリセリン脂肪酸エステルの他、デカグリセリンステアレート(HLB値12)、デカグリセリンラウレート(HLB値15.5)、及びポリグリセリンポリリシノレート(HLB値0.5)が例示される。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンステアレート(HLB値5.4)が例示される。
【0025】
上記の例示物質の中でも、グリセリン脂肪酸エステル又はジグリセリン脂肪酸エステルを使用することが好ましく、ジグリセリン脂肪酸エステルを使用することがさらに好ましい。また、ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンオレート又はジグリセリンラウレートを使用することが特に好ましい。また、異なる複数種類の乳化剤を組み合わせて使用してもよい。乳化剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、最内層4を構成する樹脂組成物全体に対して0.1~5.0質量%とすることが好ましく、0.3~1.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0026】
また、最内層4を構成するポリオレフィン系樹脂には、シリコーンに加えて、オレイン酸アミド及び乳化剤の両方を添加してもよい。
【0027】
(最外層9)
最外層9は、容器本体2の最も外側に配置される層であり、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成される。好ましいポリオレフィン系樹脂は、最内層4と同様であり、最内層4及び最外層9を構成するポリオレフィン系樹脂が同一であることがより好ましい。
【0028】
当該ポリオレフィン系樹脂には、滑剤として脂肪酸アミドを添加することが好ましい。脂肪酸アミドの添加により、プラスチック容器1の成形から、内容物の充填、移送、包装の各工程において、様々な環境温度に応じた滑り性を発揮できるようになり、各工程においてプラスチック容器1表面の滑り不良等による問題をなくすことができる。最外層9には、例えば、主としてステンレス等の金属材料で構成されている食品充填ライン等での滑り性を付与するために、滑剤(特に、後記する脂肪酸アミド系滑剤)をポリオレフィン系樹脂中に添加、混合して練りこんだ樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0029】
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドや不飽和脂肪酸アミドを使用することができる。飽和脂肪酸アミドとしては、ブチルアミド、ヘキシルアミド、デシルアミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。これらの飽和脂肪酸アミドの中では、ステアリン酸アミドを使用することが好ましい。これらの飽和脂肪酸アミドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
不飽和脂肪酸アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、イソクロトンアミド、ウンデシレン酸アミド、セトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルエルカミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド等が挙げられる。この中で、炭素数が14~24の範囲にあるもの、例えばセトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド等を使用することが好ましく、中でもオレイン酸アミドを使用することが特に好ましい。これらの不飽和脂肪酸アミドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
最外層9における脂肪酸アミドの含有量は、最外層9を構成する樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。脂肪酸アミドの添加量を上記範囲とすることにより、良好な滑り性を発揮することができる。脂肪酸アミドは、最外層9を構成する樹脂組成物全体に対して0.1~5質量%とすることが特に好ましい。
【0032】
(中間層5)
中間層5は、最内層4と最外層9との間に配置される層であり、熱可塑性樹脂含む樹脂組成物で構成される。中間層5は、プラスチック容器1の成形時に発生するスクラップを再生して得られるリプロ材料を含む樹脂組成物で構成されることが好ましい。スクラップにはプラスチック容器1の全層が含まれているため、リプロ材料は各層を構成する樹脂組成物を混合したものとなる。
【0033】
中間層5を構成する樹脂組成物は、リプロ材料とバージンの熱可塑性樹脂の混合物であることが好ましい。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、リプロ材料の量は、バージンの熱可塑性樹脂(例えば、最内層4又は最外層9のポリオレフィン系樹脂)100重量部当り10~60重量部程度にすることが好ましい。
【0034】
(バリア層7)
バリア層7は、最内層4と最外層9との間に配置される層であり、ガスバリア性が高い樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す)や芳香族ポリアミド等が挙げられる。バリア層7を設けることによって、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0035】
バリア層7は、
図2に示すように中間層5と最外層9との間に配置されてもよいし、
図3に示すように最内層4と中間層5との間に配置されてもよい。バリア層7を中間層5と最外層9との間、つまり中間層5よりも最外層9に近い位置に配置した場合、内容物の水分によってバリア層7の相対湿度が高まることが抑制される。EVOHは相対湿度が高くなると酸素透過速度が大きくなるので、バリア層7を中間層5よりも最外層9に近い位置に配置することによって、酸素透過速度の増大を抑制することができる。
【0036】
(接着樹脂層6,8)
接着樹脂層6,8は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層6,8を設けることによってバリア層7と、最内層4、中間層5、又は最外層9との接着性が向上する。接着樹脂層6,8を設ける代わりに、バリア層7に接着性樹脂を配合してもよい。
【0037】
なお、前記した各層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、増核剤、離型剤、着色剤及び中和剤等、樹脂材料の分野で一般に使用される各種添加剤を添加してもよい。
【0038】
2.プラスチック容器1の製造方法
プラスチック容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによってプラスチック容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
【0039】
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、プラスチック容器1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。
【実施例0040】
1.サンプルの製造
図1に示す形状を有し、
図3に示すように内側から順に最内層4、接着樹脂層6、バリア層7、接着樹脂層8、中間層5、及び最外層9を備える層構成を有するプラスチック容器1(容量500ml)を製造した。プラスチック容器1は、容器本体2をブロー成形によって、キャップ3を射出成形によって形成することによって製造した。
【0041】
【0042】
最内層4の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂として、実施例1,2及び比較例1,2においてはポリプロピレン(PP)を、実施例3~5及び比較例3~5においては低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた。具体的には、以下を用いた。
実施例1,2、比較例1,2:住友化学株式会社製、ノーブレン(登録商標)FSX16E9
実施例3~5、比較例3~5:旭化成株式会社製、サンテック(登録商標)M2206
【0043】
最内層4には、シリコーン及びベース樹脂(実施例1,2、及び比較例1,2においてはポリプロピレン、実施例3~5、及び比較例3~5においては低密度ポリエチレン)が50質量%:50質量%の割合で配合されたマスターバッチを使用して、シリコーンを添加した。シリコーンの添加量は、最内層4を構成する樹脂組成物全体に対して0.5質量%とした。用いたシリコーンは、重量平均分子量(Mw)は、100万(1000000)以上であり、粘度は600万(6000000)cS以上である。具体的には、以下のマスターバッチを用いた。
実施例1,2、比較例1,2:株式会社ヘキサケミカル製、ML-950
実施例3~5、比較例3~5:株式会社ヘキサケミカル製、ML-950
【0044】
実施例3~5、及び比較例2においては最内層4にオレイン酸アミドを、比較例4においては最内層4にエルカ酸アミドを、ベース樹脂(実施例3~5及び比較例4においては低密度ポリエチレン、比較例2においてはポリプロピレン)とオレイン酸アミド又はエルカ酸アミドとが所定の割合で配合されたマスターバッチを使用して添加した。具体的には、以下を用いた。
実施例3~5:住友化学株式会社製、A-10(オレイン酸アミド1.7%マスターバッチ)
比較例2:住友化学株式会社製、MS02(オレイン酸アミド5%マスターバッチ)
比較例4:株式会社プライムポリマー製、ESQ-4(エルカ酸アミド4%マスターバッチ)
【0045】
実施例1,4においては、最内層4に乳化剤としてジグリセリンラウレートを、実施例2,5、及び比較例5においては、ジグリセリンオレートを添加した。具体的には、以下を用いた。
実施例1,4:理研ビタミン株式会社製、リケマールL-71-D
実施例2,5、比較例5:理研ビタミン株式会社製、リケマールO-71-D(E)
【0046】
最外層9を構成するポリオレフィン系樹脂として、全ての実施例及び比較例において低密度ポリエチレンを用いた。具体的には、旭化成株式会社製、サンテック(登録商標)F2206を用いた。
【0047】
中間層5は、プラスチック容器1の成形時に発生するスクラップを再生して得られるリプロ材料及び最外層9を構成するポリオレフィン系樹脂の混合物により構成した。
【0048】
バリア層7を構成する樹脂として、全ての実施例及び比較例においてエチレンビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、SF7503B)を用いた。
【0049】
接着樹脂層6は、以下の接着性樹脂を用いて構成した。
実施例1,2、比較例1,2:三菱ケミカル株式会社製、P674V
実施例3~5、比較例3~5:三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)L522
【0050】
接着樹脂層8は、以下の接着性樹脂を用いて構成した。
実施例1,2、比較例1,2:三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)L522
実施例3~5、比較例3~5:三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)L522
【0051】
2.評価
2.1.滑落性試験
まず、製造したプラスチック容器1に対し、滑落性の試験を行った。プラスチック容器1に、ウスターソース類に分類されるお好みソース(オタフクソース株式会社製、含水率:約60%、粘度:840mPa・s(23℃)、原材料:野菜、果実、香辛料等)を内容物としてプラスチック容器1の容量の約1/3の量充填し、キャップ3を装着した。プラスチック容器1を回転及び倒立(キャップ3が容器本体2に対して鉛直下側にある状態)させ、内容物を容器本体2の内面の全体に付着させ、且つ内容物の大部分を口部22側に移動させた後、プラスチック容器1を正立(キャップ3が容器本体2に対して鉛直上側にある状態)した状態で静置し、内容物の滑落を観察した。正立した状態の容器本体2のうち内容物が充填されていない部分の内面上に付着している内容物を目視で確認し、当該内面のうち80%以上の部分において内容物が付着していないと確認できる状態になるまでの時間t[h]を測定した。測定結果を以下の基準に基づき評価し、その結果を表1に示した。
A:t≦1[h]
B:1[h]<t≦3[h]
C:3[h]<t
【0052】
2.2.保存試験
上記の滑落性試験を行った後、滑落性の持続性を評価するための保存試験を行った。プラスチック容器1に対して、回転等させて内容物を容器本体2の内面の全体に付着させた後にプラスチック容器1を倒立した状態で静置する操作を、1日1回、毎日(すなわち、24時間毎に)行った。当該操作の直前(すなわち、前日に当該操作を行ってから24時間経過後)に、プラスチック容器1の容器本体2のうち内容物が充填されていない部分の内面上に付着している内容物を目視で確認した。当該内面のうち80%以上の部分において内容物が付着していないと確認できる場合には、保存試験を続行し、そうでない場合(当該内面のうち内容物が付着していない部分が80%未満であると目視で確認できる場合)は、保存試験を終了した。滑落性試験を行った日を0日目とした場合において、容器本体2のうち内容物が充填されていない部分の内面の80%以上の部分において内容物が付着していないと確認された日数を、滑落性の持続性を示す指標とし、その結果を表1に示した。
【0053】
2.3.評価結果
滑落性試験においては、実施例1~5、及び比較例2~4において同等の滑落性が認められた。低密度ポリエチレンに乳化剤のみを添加した樹脂組成物で最内層4を構成した比較例5の滑落性は低かった。なお、比較例5については、滑落性が当初から低かったため、その後の保存試験は実施していない。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂に、シリコーンと、オレイン酸アミド及び/又は乳化剤とを添加した実施例1~5において、比較例1~4と比較して、滑落性の持続性の向上が認められた。また、脂肪酸アミドとしてオレイン酸アミドを添加した実施例3と、エルカ酸アミドを添加した比較例4とを比較すると、実施例3において、滑落性の持続性の向上が認められた。
1:プラスチック容器、2:容器本体、3:キャップ、4:最内層、5:中間層、6:接着樹脂層、7:バリア層、8:接着樹脂層、9:最外層、12:グリセリンモノ、21:収容部、22:口部、31:キャップカバー、32:キャップ本体、32a:上部、32b:吐出口、32c:筒部、33:連結部