(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156260
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 3/011 20060101AFI20221006BHJP
H03K 3/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H03K3/011
H03K3/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059854
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 征一郎
【テーマコード(参考)】
5J300
【Fターム(参考)】
5J300AA02
5J300BB01
5J300DD02
5J300DD05
5J300DD15
5J300FF04
(57)【要約】
【課題】発振周波数の電源電圧依存を抑えることが可能な発振回路を提供する。
【解決手段】定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力電位と閾値との比較結果を示す第1信号を出力する第1の電圧比較部と、定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力電位と閾値との比較結果を示す第2信号を出力する第2の電圧比較部と、リセット端子に第1信号、セット端子に第2信号の入力を受け、第1及び第2の発振信号を出力するRSフリップフロップ回路と、第1の発振信号に基づいて第1コンデンサを充放電する第1の充放電部と、第2の発振信号に基づいて第2コンデンサを充放電する第2の充放電部と、第2の発振信号に応じてオンオフ制御され第1ノードに所定容量を付加する第1のダミースイッチと、第1の発振信号の信号レベルに応じてオンオフ制御され第2ノードに所定容量を付加する第2のダミースイッチと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力端子に入力される電位が閾値を超えている場合に論理レベル0の第1信号を出力し、入力端子に入力される電位が閾値以下である場合に論理レベル1の第1信号を出力する第1の電圧比較部と、
第2の定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力端子に入力される電位が閾値を超えている場合に論理レベル0の第2信号を出力し、入力端子に入力される電位が閾値以下である場合に論理レベル1の第2信号を出力する第2の電圧比較部と、
リセット端子に前記第1信号の入力を受け、セット端子に前記第2信号の入力を受け、前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、第1の発振信号及び前記第1の発振信号を反転した第2の発振信号を出力するRSフリップフロップ回路と、
一端が接地電位に接続された第1コンデンサと、
一端が接地電位に接続された第2コンデンサと、
各々のドレイン同士が接続されるとともに第1のノードを介して前記第1コンデンサの他端及び前記第1の電圧比較部の入力端に接続され且つ前記第1の発振信号に応じて相補的にオン及びオフとなる第1導電型の第1トランジスタ及び第2導電型の第2トランジスタを含み、前記第1の発振信号に基づいて前記第1コンデンサを充放電する第1の充放電部と、
各々のドレイン同士が接続されるとともに第2のノードを介して前記第2コンデンサの他端及び前記第2の電圧比較部の入力端に接続され且つ前記第2の発振信号に応じて相補的にオン及びオフとなる第1導電型の第3トランジスタ及び第2導電型の第4トランジスタを含み、前記第2の発振信号に基づいて前記第2コンデンサを充放電する第2の充放電部と、
前記第1のノードに接続され、前記第2の発振信号の信号レベルに応じてオン及びオフに制御され、オン状態時に前記第1ノードに所定容量を付加する第1のダミースイッチと、
前記第2のノードに設けられ前記第1の発振信号の信号レベルに応じてオン及びオフに制御され、オン状態時に前記第2ノードに所定容量を付加する第2のダミースイッチと、
を有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記第1のダミースイッチは、ソース及びドレインが互いに接続されるとともに前記第1ノードに接続され、ゲートに前記第2の発振信号の印加を受ける第2導電型のトランジスタから構成され、
前記第2のダミースイッチは、ソース及びドレインが互いに接続されるとともに前記第2ノードに接続され、ゲートに前記第1の発振信号の印加を受ける第2導電型のトランジスタから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記第1のダミースイッチは、縦続接続された第2導電型の複数のトランジスタを含み、
前記第2のダミースイッチは、縦続接続された第2導電型の複数のトランジスタを含み、
前記第1のダミースイッチを構成する前記複数のトランジスタの各々は、ソース及びドレインが互いに接続され、ゲートに前記第1の発振信号を反転した信号の印加を選択的に受け、
前記第2のダミースイッチを構成する前記複数のトランジスタの各々は、ソース及びドレインが互いに接続され、ゲートに前記第2の発振信号を反転した信号の印加を選択的に受けることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1のダミースイッチを構成する前記複数のトランジスタのいずれかを選択する選択信号と前記第1の発振信号との論理積を前記第1のダミースイッチに供給する第1のNANDゲートと、
前記第2のダミースイッチを構成する前記複数のトランジスタのいずれかを選択する選択信号と前記第2の発振信号との論理積を前記第2のダミースイッチに供給する第1のNANDゲートと、
を有することを特徴とする請求項3に記載の発振回路。
【請求項5】
前記第1の電圧比較部は、入力端が前記第1ノードに接続され、前記第1ノードの電位と閾値とを比較した比較結果を反転して出力する第1のインバータから構成され、
前記第2の電圧比較部は、入力端が前記第2ノードに接続され、前記第2ノードの電位と閾値とを比較した比較結果を反転して出力する第2のインバータから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の発振回路。
【請求項6】
前記第1の充放電部は、定電流源を介して前記第1トランジスタのソースに電源電圧の印加を受け、前記定電流源からの電流を前記第1ノードを介して前記第1コンデンサに供給することにより前記第1コンデンサを充電し、
前記第2の充放電部は、定電流源を介して前記第3トランジスタのソースに電源電圧の印加を受け、前記定電流源からの電流を前記第2ノードを介して前記第2コンデンサに供給することにより前記第2コンデンサを充電することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路、特にコンパレータを用いた弛張発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIに搭載されるクロック発生回路として、キャパシタを充放電することにより発振動作を行う弛張発振回路が用いられている。弛張発振回路では、キャパシタの両端の電圧を基準電圧と比較するコンパレータの製造プロセスや動作時の電源電圧・温度等のばらつきに起因して出力されるクロックの周波数が変動するという問題がある。そこで、周波数が一定のクロックを発生することを目的とした弛張発振回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の弛張発振回路では、定電流源を用いて電流制限を行うことにより、コンパレータの閾値変動を抑えている。しかしながら、かかる構成ではコンパレータの出力をH(ハイレベル)にする際に電流制限が働くため、コンパレータの出力がHになるまでに時間を要してしまう。その要する時間は電源電圧が高くければ高いほど遅くなり、その結果、コンパレータ及びRSラッチの応答遅延によって、発振周波数に電源電圧依存が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、発振周波数の電源電圧依存を抑えることが可能な発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発振回路は、第1の定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力端子に入力される電位が閾値を超えている場合に論理レベル0の第1信号を出力し、入力端子に入力される電位が閾値以下である場合に論理レベル1の第1信号を出力する第1の電圧比較部と、第2の定電流源を介して電源電圧の供給を受け、入力端子に入力される電位が閾値を超えている場合に論理レベル0の第2信号を出力し、入力端子に入力される電位が閾値以下である場合に論理レベル1の第2信号を出力する第2の電圧比較部と、リセット端子に前記第1信号の入力を受け、セット端子に前記第2信号の入力を受け、前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、第1の発振信号及び前記第1の発振信号を反転した第2の発振信号を出力するRSフリップフロップ回路と、一端が接地電位に接続された第1コンデンサと、一端が接地電位に接続された第2コンデンサと、各々のドレイン同士が接続されるとともに第1のノードを介して前記第1コンデンサの他端及び前記第1の電圧比較部の入力端に接続され且つ前記第1の発振信号に応じて相補的にオン及びオフとなる第1導電型の第1トランジスタ及び第2導電型の第2トランジスタを含み、前記第1の発振信号に基づいて前記第1コンデンサを充放電する第1の充放電部と、各々のドレイン同士が接続されるとともに第2のノードを介して前記第2コンデンサの他端及び前記第2の電圧比較部の入力端に接続され且つ前記第2の発振信号に応じて相補的にオン及びオフとなる第1導電型の第3トランジスタ及び第2導電型の第4トランジスタを含み、前記第2の発振信号に基づいて前記第2コンデンサを充放電する第2の充放電部と、前記第1のノードに接続され、前記第2の発振信号の信号レベルに応じてオン及びオフに制御され、オン状態時に前記第1ノードに所定容量を付加する第1のダミースイッチと、前記第2のノードに設けられ前記第1の発振信号の信号レベルに応じてオン及びオフに制御され、オン状態時に前記第2ノードに所定容量を付加する第2のダミースイッチと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る発振回路によれば、発振周波数の電源電圧依存を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る発振回路の構成を示す回路図である。
【
図2】RSフリップフロップ回路の真理値表を示す図である。
【
図3】実施例1の発振回路における各信号及び電位の変化を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の実施例2に係る発振回路の構成を示す回路図である。
【
図5】実施例2の発振回路における可変容量部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0010】
図1は、本発明の実施例1に係る発振回路100の構成を示す回路図である。発振回路100は、RSフリップフロップ回路10、第1インバータINV1A、第2インバータINV1B、第1コンデンサC1A、第2コンデンサC1B、定電流源I1A、定電流源I2A、定電流源I1B、定電流源I2B、トランジスタMP1A、トランジスタMN1A、トランジスタMP1B、トランジスタMN1B、ダミースイッチMN2A及びダミースイッチMN2Bを含む。
【0011】
RSフリップフロップ回路10は、リセット端子RにインバータINV1Aの出力信号、セット端子SにインバータINV1Bの出力信号の入力をそれぞれ受け、出力端子Q及び出力端子QBから信号を出力する。出力端子QBの出力は、発振信号foutとして発振回路100の外部に出力される。発振信号foutは、信号レベルが論理レベル0及び論理レベル1に変化する2値の信号である。出力端子Qからの出力信号は、発振信号foutは逆相で論理レベル0及び論理レベル1に変化する信号(すなわち、発振信号foutを反転した信号レベルを有する信号)である。
【0012】
図2は、RSフリップフロップ回路10の真理値表を示すテーブルである。セット端子S及びリセット端子Rの入力がともに論理レベル0である場合、出力端子Q及び出力端子QBの出力は現在の状態に維持される。セット端子Sの入力が論理レベル0、リセット端子Rの入力が論理レベル1である場合、出力端子Qからは論理レベル0、出力端子QBからは論理レベル1の信号が出力される。セット端子Sの入力が論理レベル1、リセット端子Rの入力が論理レベル0である場合、出力端子Qからは論理レベル1、出力端子QBからは論理レベル0の信号が出力される。
【0013】
再び
図1を参照すると、第1インバータINV1Aは、入力端がノードn1Aに接続され、出力端がRSフリップフロップ回路10のリセット端子Rに接続されている。第1インバータINV1Aは、コンパレータとしての機能を有し、入力信号の電位レベル、すなわちノードn1Aの電位VC1Aが閾値Thを超えると、入力信号を反転した反転信号を出力する。出力された信号は、リセット信号としてRSフリップフロップ回路10のリセット端子Rに入力される。
【0014】
第1インバータINV1Aは、定電流源I2Aを介して電源電圧VDDの供給を受けて動作を行う。電源電圧VDDの供給ラインに定電流源I2Aが挿入されているため、電源電圧VDDの供給に電流制限がなされる。これにより、電源電圧VDDの変動による閾値Thの変動が抑制されている。
【0015】
第2インバータINV1Bは、入力端がノードn1Bに接続され、出力端がRSフリップフロップ回路10のセット端子Sに接続されている。第2インバータINV1Bは、コンパレータとしての機能を有し、入力信号の電位レベル、すなわちノードn1Bの電位VC1Bが閾値Thを超えると、入力信号を反転した反転信号を出力する。出力された信号は、セット信号としてRSフリップフロップ回路10のセット端子Sに入力される。
【0016】
第2インバータINV1Bは、定電流源I2Bを介して電源電圧VDDの供給を受けて動作を行う。電源電圧VDDの供給ラインに定電流源I2Bが挿入されているため、電源電圧VDDの供給に電流制限がなされる。これにより、電源電圧VDDの変動による閾値Thの変動が抑制されている。
【0017】
トランジスタMP1A及びトランジスタMN1Aは、コンデンサC1Aを充放電する充放電部11を構成するトランジスタ対である。トランジスタMP1Aは、Pチャネル型MOSFETから構成されている。トランジスタMN1Aは、Nチャネル型MOSFETから構成されている。トランジスタMP1A及びトランジスタMN1Aは、CMOSスイッチの構成を有し、相補的にオン及びオフとなるように制御される。
【0018】
トランジスタMP1Aのソースには、定電流源I1Aを介して電源電圧VDDが供給される。トランジスタMN1Aのソースには、接地電位が供給される。トランジスタMP1Aのドレイン及びトランジスタMN1Aのドレインは、互いに接続されている。
【0019】
トランジスタMP1A及びトランジスタMN1Aの各々のゲートは、互いに接続されるとともに、RSフリップフロップ回路10の出力端子QBから出力された発振信号foutの印加を受ける。発振信号foutが論理レベル0(すなわち、Lレベル)の場合、トランジスタMP1Aはオン、トランジスタMN1Aはオフとなる。一方、発振信号foutが論理レベル1(すなわち、Hレベル)の場合、トランジスタMP1Aはオフ、トランジスタMN1Aはオンとなる。
【0020】
トランジスタMP1B及びトランジスタMN1Bは、コンデンサC1Bを充放電する充放電部12を構成するトランジスタ対である。トランジスタMP1Bは、Pチャネル型MOSFETから構成されている。トランジスタMN1Bは、Nチャネル型MOSFETから構成されている。トランジスタMP1B及びトランジスタMN1Bは、CMOSスイッチの構成を有し、相補的にオン及びオフとなるように制御される。
【0021】
トランジスタMP1Bのソースには、定電流源I1Bを介して電源電圧VDDが供給される。トランジスタMN1Bのソースには、接地電位が供給される。トランジスタMP1Bのドレイン及びトランジスタMN1Bのドレインは、互いに接続されている。
【0022】
トランジスタMP1B及びトランジスタMN1Bの各々のゲートは、互いに接続されるとともに、RSフリップフロップ回路10の出力端子Qから出力された信号の印加を受ける。出力端子Qからの出力信号が論理レベル0(すなわち、Lレベル)の場合、トランジスタMP1Bはオン、トランジスタMN1Bはオフとなる。一方、出力端子Qからの出力信号が論理レベル1(すなわち、Hレベル)の場合、トランジスタMP1Bはオフ、トランジスタMN1Bはオンとなる。
【0023】
コンデンサC1Aは、一端がノードn1Aに接続され、他端が接地されている。コンデンサC1Aは、トランジスタMP1A及びトランジスタMN1AからなるCMOSスイッチのオン及びオフにより充放電される。トランジスタMP1Aがオン、トランジスタMN1Aがオフの状態において、定電流源I1Aからの定電流がノードn1Aを介してコンデンサC1Aに供給されることにより、コンデンサC1Aが充電される。トランジスタMP1Aがオフ、トランジスタMN1Aがオンの状態では、接地ラインを介してコンデンサC1Aが放電される。コンデンサC1Aが充電されることによりノードn1Aの電位が上昇し、コンデンサC1Aが放電されることによりノードn1Aの電位が低下する。
【0024】
コンデンサC1Bは、一端がノードn1Bに接続され、他端が接地されている。コンデンサC1Bは、トランジスタMP1B及びトランジスタMN1BからなるCMOSスイッチのオン及びオフにより充放電される。トランジスタMP1Bがオン、トランジスタMN1Bがオフの状態において、定電流源I1Bからの定電流がノードn1Bを介してコンデンサC1Bに供給されることにより、コンデンサC1Bが充電される。トランジスタMP1Bがオフ、トランジスタMN1Bがオンの状態では、接地ラインを介してコンデンサC1Bが放電される。コンデンサC1Bが充電されることによりノードn1Bの電位が上昇し、コンデンサC1Bが放電されることによりノードn1Bの電位が低下する。
【0025】
ダミースイッチMN2Aは、ソース及びドレインが互いに接続されたNチャネル型MOSFETから構成されている。ダミースイッチMN2Aのソース及びドレインは、トランジスタMP1A及びMN1Aの各々のドレインに接続されるとともに、ノードn1Aに接続されている。ダミースイッチMN2Aのゲートは、トランジスタMP1B及びMN1BのゲートとともにRSフリップフロップ回路10の出力端子Qに接続され、出力端子Qからの出力信号の印加を受ける。
【0026】
ダミースイッチMN2Aは、RSフリップフロップ回路10の出力端子Qからの出力信号が論理レベル1の場合にはオンとなり、出力端子Qからの出力信号が論理レベル0の場合にはオフとなる。出力端子Qからの出力信号は出力端子QBからの発振信号foutと逆相の信号であるため、ダミースイッチMN2Aは、発振信号foutの印加を受けるトランジスタMN1Aとは逆相でオン及びオフに制御される。
【0027】
ダミースイッチMN2Aがオンになると、ダミースイッチMN2Aを構成するトランジスタの容量がノードn1Aに付加された状態となる。これにより、その容量分の電圧が上乗せされた状態から、コンデンサC1Aの充電に応じたノードn1Aの電位VC1Aの上昇が開始する。
【0028】
ダミースイッチMN2Bは、ソース及びドレインが互いに接続されたNチャネル型MOSFETから構成されている。ダミースイッチMN2Bのソース及びドレインは、トランジスタMP1B及びMN1Bの各々のドレインに接続されるとともに、ノードn1Bに接続されている。ダミースイッチMN2Bのゲートは、トランジスタMP1A及びMN1AのゲートとともにRSフリップフロップ回路10の出力端子QBに接続され、発振信号foutの印加を受ける。
【0029】
ダミースイッチMN2Bは、発振信号foutが論理レベル1の場合にはオンとなり、発振信号foutが論理レベル0の場合にはオフとなる。発振信号foutは出力端子Qからの出力信号と逆相の信号であるため、ダミースイッチMN2Bは、出力端子Qからの出力信号の印加を受けるトランジスタMN1Bとは逆相でオン及びオフに制御される。
【0030】
ダミースイッチMN2Bがオンになると、ダミースイッチMN2Bを構成するトランジスタの容量がノードn1Bに付加された状態となる。これにより、その容量分の電圧が上乗せされた状態から、コンデンサC1Bの充電に応じたノードn1Bの電位VC1Bの上昇が開始する。
【0031】
次に、本実施例の発振回路100の動作について説明する。
【0032】
図3は、発振信号foutの信号レベルの変化とノードn1Aの電位VC1Aの電圧レベルの変化との関係を示すタイムチャートである。
【0033】
発振信号foutが論理レベル1である期間T1において、トランジスタMP1Aはオフ、トランジスタMN1Aはオンとなる。トランジスタMN1Aがオンであるため、コンデンサC1Aは放電され、リセット状態となる。ノードn1Aの電位VC1Aは、これに応じて接地電位レベル(すなわち、Lレベル)となる。
【0034】
発振信号foutが論理レベル0になると、トランジスタMP1Aはオンとなり、トランジスタMN1Aはオフとなる。これにより、定電流源I1Aからの電流I1がトランジスタMP1A及びノードn1Aを介してコンデンサC1Aに供給され、コンデンサC1Aの充電が開始される。
【0035】
その際、出力端子Qからの出力信号は論理レベル1となり、ダミースイッチMN2Aに印加される。ダミースイッチMN2Aはオンとなり、ダミースイッチMN2Aの容量分の電圧がノードn1Aの電位VC1Aに加算される。したがって、
図3に示す期間T2において、ノードn1Aの電位VC1Aは、設定電位よりもダミースイッチMN2Aの容量分の電圧(図中、ΔVとして示す)だけ高い状態を初期状態として、コンデンサC1Aの充電に応じて電圧レベルが上昇する。
【0036】
ノードn1Aの電位VC1Aの電圧レベルが閾値Thを超えると、インバータINV1Aは論理レベル0の信号を出力する。RSフリップフロップ回路10のリセット端子Rには、論理レベル0の信号が供給される。
【0037】
一方、トランジスタMP1B、トランジスタMN1B及びダミースイッチMN2Bは、上記のトランジスタMP1A、トランジスタMN1A及びダミースイッチMN2Aの動作とは逆相(換言すると、半相遅れ)の動作でそれぞれオン及びオフとなる。これにより、コンデンサC1Bが放電されてノードn1Bの電位VC1BはLレベルとなり、インバータINV1Bは論理レベル1の信号を出力する。RSフリップフロップ回路10のセット端子Sには、論理レベル1n信号が供給される。RSフリップフロップ回路10は、論理レベル1の発振信号foutを出力する。
【0038】
このように、本実施例の発振回路100では、ダミースイッチMN2AをトランジスタMN1Aと逆相でオン及びオフに制御することによって生じる所謂チャージインジェクション効果により、ノードn1Aの電位VC1Aの電圧上昇時(充電時)の初期値ΔVが高くなる。
【0039】
この初期値ΔVは、電源電圧VDDの電圧値に比例して大きくなる。このため、電源電圧VDDの電圧値の大きさが大きいほど、ノードn1Aの電位VC1AがコンパレータINV1Aの閾値Thを超えるまでに要する時間(以下、電圧上昇時間の短縮と称する)が短くなる。
【0040】
本実施例の発振回路100では、かかる電圧上昇時間の短縮により、コンパレータ及びRSフリップフロップ回路の応答遅延を相殺し、発振周波数の電源電圧依存を低減することが出来る。
【0041】
すなわち、電源電圧VDDの供給ラインに定電流源I2A及びI2Bが設けられた構成では、電流制限のためコンパレータINV1A及びINV1Bの出力がLレベルからHレベルになるタイミングが遅くなり、コンパレータINV1A、INV1B及びRSフリップフロップ回路10の応答遅延が生じる。そして、電源電圧VDDの電圧値が大きければ大きいほど、かかる応答遅延の遅延量は大きい。このため、本実施例のようなダミースイッチMN2A及びMN2Bを有しない構成では、発振周波数に電源電圧依存が生じる。
【0042】
これに対し、本実施例の発振回路100では、電位VC1Aが閾値Thを超えるまでに要する時間を短縮することにより、コンパレータ及びRSフリップフロップの応答遅延を相殺することができる。また、コンパレータ及びRSフリップフロップの応答遅延が電源電圧VDDに比例するのに対し、電位VC1Aが閾値Thを超えるまでに要する時間は電源電圧VDDに反比例するため、発振周波数の電源電圧依存を低減することができる。
【0043】
以上のように、本実施例の発振回路100によれば、発振周波数の電源電圧依存を抑えることが可能となる。
ダミースイッチMN3Aは、ソース及びドレインが互いに接続された複数のNチャネル型MOSFETから構成されている。当該複数のNチャネル型MOSFETは、NANDゲート13の出力信号の印加を受け、これに応じてオン及びオフに制御される。
ダミースイッチMN3Bは、ダミースイッチMN3Aと同様の構成を有する。すなわち、ダミースイッチMN3Bは、ソース及びドレインが互いに接続された複数のNチャネル型MOSFETから構成され、NANDゲート14の出力信号の印加を受けに応じてオン及びオフに制御される。
NANDゲート14は、第1入力端がRSフリップフロップ回路10の出力端子QBに接続され、発振信号foutの入力を受ける。また、NANDゲート13の第2入力端には、イネーブル信号enが入力される。NANDゲート14は、出力端子Qからの出力信号とイネーブル信号enとの否定論理積の信号を出力する。
イネーブル信号enは、ダミースイッチMN3A及びMN3Bをそれぞれ構成する複数のトランジスタのうち、RSフリップフロップ回路10からの信号供給によりオン及びオフの制御の対象とするトランジスタを選択するための選択信号として機能する。
例えば、ダミースイッチMN3Aを構成するトランジスタのうちのトランジスタMN3-1のみを選択するイネーブル信号enがNANDゲート13に供給されると、NANDゲート13は、発振信号foutとは逆相でトランジスタMN3-1をオン及びオフに制御する信号を出力する。当該信号は、トランジスタMN3-1のゲートに供給される。また、NANDゲート14には同じイネーブル信号enが供給されるため、NANDゲート14の出力信号により、ダミーゲートMN3Bを構成する複数のトランジスタのうち、トランジスタMN3-1に対応するトランジスタが選択的にオン及びオフに制御される。なお、イネーブル信号enをLレベルにすると、ダミースイッチMN3A及びダミースイッチMN3Bのゲートは固定され、ノードn1A及びノードn1Bに付加される容量値が固定される。
ダミーゲートMN3Aは、トランジスタMN1Aと逆相でオン及びオフに制御される。したがって、実施例1と同様、所謂チャージインジェクション効果により、ノードn1Aの電位VC1Aの電圧上昇時(充電時)の初期値ΔVが高くなる。同様に、ダミーゲートMN3BはトランジスタMN1Bと逆相でオン及びオフに制御され、ノードn1Bの電位VC1Bの電圧上昇時(充電時)の初期値ΔVが高くなる。これにより、実施例1と同様、コンパレータ及びRSフリップフロップ回路の応答遅延を相殺し、発振周波数の電源電圧依存を低減することが出来る。
また、本実施例の発振回路200では、イネーブル信号enの供給により、RSフリップフロップ回路10からの出力信号に応じてオン及ぶオフに制御するトランジスタを選択することが可能である。したがって、本実施例の発振回路200によれば、電源電圧VDDの電圧値に応じて、ノードn1A及びn1Bの各々の電圧上昇時の初期値ΔVを調整することが出来る。例えば、発振回路200を製品として出荷する際に調整を行うことにより、初期値ΔVを適切な値に設定し、発振周波数の電源電圧依存の低減を精度よく行うことが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では第1インバータINV1A及び第2インバータINV1Bを用いて、ノードn1Aの電位及びノードn1Bの電位と閾値Thとを比較し、比較結果に基づいてリセット信号及びセット信号を出力する構成を例として説明した。しかし、第1インバータINV1A及び第2インバータINV1Bの代わりにコンパレータアンプを用いて当該部分を構成してもよい。すなわち、各ノードの電位と閾値とを比較し、閾値を超えている場合には論理レベル0、閾値以下である場合には論理レベル1の信号を出力する電圧比較部として機能するものであればよい。
また、上記実施例では、充放電部11に定電流源I1Aを介して電源電圧VDDが供給され、充放電部12に定電流源I1Bを介して電源電圧VDDが供給される場合を例として説明したが、この構成に限られず、充放電部11及び12に共通の定電流源を介して電源電圧VDDが供給される構成としてもよい。
また、上記実施例では、ダミースイッチがNチャネル型MOSFETから構成されている場合を例として説明した。しかし、この構成に限られず、ダミースイッチはPチャネル型MOSFETや容量素子から構成されていてもよい。
また、上記実施例では、コンデンサC1A及びC1Bが放電された状態をリセット状態としたが、これとは異なり、充電された状態をリセット状態として定電流によりコンデンサC1A及びC1Bを充電する構成としてもよい。
また、上記実施例2では、製品の出荷前等に調整を行うことができるとして説明したが、例えば発振信号fout及び電源電圧VDDの変化に基づいてイネーブル信号enを出力する調整部を発振回路200の外部に設け、動的に調整を行うことが可能な構成としてもよい。