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<図1>
  • 特開-光透過シートおよび光学部品 図1
  • 特開-光透過シートおよび光学部品 図2
  • 特開-光透過シートおよび光学部品 図3
  • 特開-光透過シートおよび光学部品 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156262
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】光透過シートおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20221006BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20221006BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221006BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/118
B32B7/023
B32B3/30
B32B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059856
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】塩本 健悟
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009BB22
2K009BB24
2K009BB28
2K009CC21
2K009CC22
2K009CC24
2K009CC34
4F100AJ05A
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100AK00C
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK45A
4F100AK46A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA26A
4F100BA26B
4F100BA26C
4F100DD01B
4F100DD01C
4F100EJ40B
4F100EJ40C
4F100GB71
4F100HB21B
4F100HB21C
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JA05C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN18A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】加熱下において加工を施したり、もしくは施されていたとしても、リタデーションの低下もしくは解消が的確に防止された光透過シート、および、かかる光透過シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供すること。
【解決手段】本発明の光透過シート10は、リタデーションを有する樹脂基材13と、樹脂基材13の一方の面側に設けられた第1樹脂層11と、樹脂基材13の他方の面側に設けられた第2樹脂層12とを備えている。この光透過シート10において、第1樹脂層11は、樹脂基材13と反対側の表面が凹凸パターン110にパターニングされており、前記表面における凹凸パターン110のパターニング性を保持する第2熱可塑性樹脂を含有し、樹脂基材13は、樹脂基材13にリタデーションを付与するために、配向性を有する第1熱可塑性樹脂を含有し、前記樹脂層のガラス転移点は、前記樹脂基材のガラス転移点よりも低くなっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面から入射された入射光を出射面から出射光を出射させる光透過シートであって、
平板状をなし、リタデーションを有する樹脂基材と、該樹脂基材の前記出射面側と前記入射面側との少なくとも一方に積層され、前記樹脂基材と反対側の表面がパターニングされている樹脂層とを備え、
前記樹脂基材は、該樹脂基材に前記リタデーションを付与するために、配向性を有する第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記樹脂層は、前記樹脂基材と反対側の表面におけるパターニング性を保持する第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記樹脂層のガラス転移点は、前記樹脂基材のガラス転移点よりも低いことを特徴とする光透過シート。
【請求項2】
前記樹脂基材のガラス転移点をTg1[℃]とし、前記樹脂層のガラス転移点をTg2[℃]としたとき、Tg1-Tg2は、10℃以上80℃以下である請求項1に記載の光透過シート。
【請求項3】
前記ガラス転移点Tg1は、100℃以上170℃以下である請求項2に記載の光透過シート。
【請求項4】
当該光透過シートは、その全光線透過率が90%以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光透過シート。
【請求項5】
前記第1熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂およびセルロース系樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光透過シート。
【請求項6】
前記第2熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光透過シート。
【請求項7】
前記樹脂層は、前記樹脂基材と反対側の表面が微細凹凸構造をなしてパターニングされている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光透過シート。
【請求項8】
前記樹脂基材は、2000nm以上6000nm以下のリタデーションを有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光透過シート。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光透過シートを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過シートおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
透明フィルムの表面をパターニングすることで、透明フィルムに各種特性を付与し得ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、リタデーションを有する樹脂基材の両面のうち少なくとも一方が、樹脂層で被覆された構成をなす光透過シートにおいて、この樹脂層の表面をパターニングすることで、光透過シートに各種特性を付与することができ、さらに、この光透過シートを、眼鏡用レンズが備える構成とすることで、眼鏡用レンズを、各種特性を発揮するものとし得る。
【0004】
この場合、各種特性が付与された眼鏡用レンズは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0005】
まず、リタデーションを有する樹脂基材と、この樹脂基材の両面のうち少なくとも一方を被覆する樹脂層とを有する光透過シートを用意し、その後、この光透過シートが備える樹脂層を、ナノインプリント法等を用いることで、その表面がパターニングされたものとする。これにより、表面がパターニングされた樹脂層を備える光透過シートが得られる。
【0006】
次いで、得られた光透過シートの両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、光透過シートを打ち抜く。その後、この光透過シートに加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲形状とされた光透過シートとする。
【0007】
そして、光透過シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲形状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と光透過シートの凸部とが当接するようにして、光透過シートを吸着させた状態で、インサート射出成形法を用いて、この光透過シートの凹面にポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成されるレンズ層を形成することにより製造される。
【0008】
このような眼鏡用レンズの製造方法では、ナノインプリント法を用いた光透過シートが備える樹脂層の表面におけるパターニング、および、光透過シートに対する熱曲げがともに加熱下において加工が実施される。したがって、光透過シートの加熱に起因して、光透過シートが備える樹脂基材におけるリタデーションが低下もしくは解消してしまうと言う問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-151379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、加熱下において加工を施したり、もしくは施されていたとしても、リタデーションの低下もしくは解消が的確に防止された光透過シート、および、かかる光透過シートを備える信頼性に優れた光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 入射面から入射された入射光を出射面から出射光を出射させる光透過シートであって、
平板状をなし、リタデーションを有する樹脂基材と、該樹脂基材の前記出射面側と前記入射面側との少なくとも一方に積層され、前記樹脂基材と反対側の表面がパターニングされている樹脂層とを備え、
前記樹脂基材は、該樹脂基材に前記リタデーションを付与するために、配向性を有する第1熱可塑性樹脂を含有し、
前記樹脂層は、前記樹脂基材と反対側の表面におけるパターニング性を保持する第2熱可塑性樹脂を含有し、
前記樹脂層のガラス転移点は、前記樹脂基材のガラス転移点よりも低いことを特徴とする光透過シート。
【0012】
(2) 前記樹脂基材のガラス転移点をTg1[℃]とし、前記樹脂層のガラス転移点をTg2[℃]としたとき、Tg1-Tg2は、10℃以上80℃以下である上記(1)に記載の光透過シート。
【0013】
(3) 前記ガラス転移点Tg1は、100℃以上170℃以下である上記(2)に記載の光透過シート。
【0014】
(4) 当該光透過シートは、その全光線透過率が90%以上である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光透過シート。
【0015】
(5) 前記第1熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂およびセルロース系樹脂のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光透過シート。
【0016】
(6) 前記第2熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光透過シート。
【0017】
(7) 前記樹脂層は、前記樹脂基材と反対側の表面が微細凹凸構造をなしてパターニングされている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光透過シート。
【0018】
(8) 前記樹脂基材は、2000nm以上6000nm以下のリタデーションを有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光透過シート。
【0019】
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光透過シートを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、ナノインプリント法を用いた光透過シートが備える樹脂層の表面におけるパターニングや、光透過シートに対する熱曲げ等の加熱下における加工が、光透過シートに対して実施されていたり、もしくは実施したとしても、光透過シートが備える樹脂基材における、リタデーションの低下もしくは解消を的確に防止することができる。したがって、かかる光透過シートを備える光学部品を、優れた信頼性を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の光透過シートを有する眼鏡用レンズを備える眼鏡の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の光透過シートを有する眼鏡用レンズの製造方法を説明するための模式図である。
図3】本発明の光透過シートを有する眼鏡用レンズの製造方法を説明するための模式図である。
図4】本発明の光透過シートの実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光透過シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本発明の光透過シートは、入射面から入射された入射光を出射面から出射光を出射させるものであり、平板状をなし、リタデーションを有する樹脂基材と、この樹脂基材の前記出射面側と前記入射面側との少なくとも一方に積層され、樹脂基材と反対側の表面がパターニングされている樹脂層とを備え、樹脂基材は、この樹脂基材にリタデーションを付与するために、配向性を有する第1熱可塑性樹脂を含有し、樹脂層は、樹脂基材と反対側の表面におけるパターニング性を保持する第2熱可塑性樹脂を含有しており、樹脂層のガラス転移点は、樹脂基材のガラス転移点よりも低くなっている。
【0024】
これにより、ナノインプリント法を用いた光透過シートが備える樹脂層の表面におけるパターニングや、光透過シートに対する熱曲げ等の加熱下における加工が、光透過シートに対して実施されていたり、もしくは実施したとしても、光透過シートが備える樹脂基材における、リタデーションの低下もしくは解消を的確に防止することができる。したがって、かかる光透過シートを備える光学部品を、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0025】
本発明の光透過シートは、光透過シートが備える樹脂層の表面に形成されたパターニングにより付与された特性を、光学部品が光透過シートを有することで、かかる光学部品に対しても付与するために用いられるものである。そして、本発明の光透過シートを有する光学部品、すなわち、本発明の光学部品として、眼鏡が備える眼鏡用レンズに、好適に適用することができる。そこで、以下では、本発明の光透過シートを説明するのに先立って、まず、本発明の光学部品が適用された眼鏡レンズを備える眼鏡について説明する。
【0026】
<眼鏡>
図1は、本発明の光透過シートを有する眼鏡用レンズを備える眼鏡の実施形態を示す斜視図である。なお、図1において、眼鏡を使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0027】
眼鏡100は、図1に示すように、フレーム20と、眼鏡用レンズ30とを備えている。
【0028】
なお、本明細書中において、「眼鏡用レンズ」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0029】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、眼鏡用レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0030】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0031】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側に眼鏡用レンズ30が装着される。これにより、使用者は、眼鏡用レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0032】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0033】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0034】
ノーズパッド部24は、眼鏡100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0035】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0036】
眼鏡用レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。この眼鏡用レンズ30は、光透過性を有し、外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、レンズ層35と、光透過シート10(本発明の光透過シート)とを有している。
【0037】
レンズ層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、眼鏡用レンズ30に、集光機能を付与する際には、このレンズ層35が集光機能を有している。
【0038】
レンズ層35の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料が用いられ、特に限定されるものではないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する光透過シート10が備える第1樹脂層11を構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、レンズ層35と、光透過シート10との密着性の向上を図ることができる。
【0040】
レンズ層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、10mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、眼鏡用レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0041】
光透過シート10は、レンズ層35の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に、かかる形状に対応して湾曲形状をなして接合されており、これにより、眼鏡用レンズ30ひいては眼鏡100に光透過シート10が有する特性が付与される。その結果、眼鏡100を、かかる特性に特化された眼鏡として用いることができる。この光透過シート10が、本発明の光透過シートで構成され、本実施形態では、第1樹脂層11と樹脂基材13と第2樹脂層12とを備え、これらがこの順で積層された積層体で構成されるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0042】
なお、前述の通り、眼鏡100が備える眼鏡用レンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0043】
また、眼鏡100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、本発明の光学部品を、眼鏡100が備える眼鏡用レンズ30に適用することとしたが、眼鏡用レンズ30は、眼鏡100が備える場合に限定されず、例えば、サングラス、度付きサングラス、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等が備えていてもよい。
【0045】
以上のような構成をなす眼鏡100において、眼鏡100が備える眼鏡用レンズ30は、例えば、以下に示すような、眼鏡用レンズ30の製造方法を適用して製造することができる。
【0046】
<眼鏡用レンズの製造方法>
図2図3は、本発明の光透過シートを有する眼鏡用レンズの製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図2図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0047】
以下、光透過シート10を備える眼鏡用レンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、第1樹脂層11と樹脂基材13と第2樹脂層12とを備え、これらがこの順で積層された、全体形状が平板状をなす光透過シート10を用意する(図2(a)参照)。
【0048】
この光透過シート10は、例えば、以下のようにして用意することができる。
すなわち、まず、シート状をなす、第1樹脂層11、樹脂基材13および第2樹脂層12を、それぞれ、例えば、押出成形法等を用いて形成する。その後、樹脂基材13を、加熱しつつ、一軸延伸することにより、樹脂基材13にリタデーション(複屈折率×厚さ)を付与する。
【0049】
この際の樹脂基材13の加熱温度は、樹脂基材13に含まれる構成材料の種類によっても若干異なるが、通常、好ましくは140℃以上200℃以下程度、より好ましくは170℃以上190℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、樹脂基材13に対して、確実にリタデーションを付与することができる。
【0050】
なお、樹脂基材13を一軸延伸する延伸倍率は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1.2倍以上5.0倍以下、より好ましくは1.5倍以上3.0倍以下に設定される。これにより、樹脂基材13に付与するリタデーションを、所望の大きさに設定することができる。
【0051】
次いで、第1樹脂層11、樹脂基材13および第2樹脂層12を、この順で積層した状態で、第1樹脂層11と樹脂基材13との間、樹脂基材13と第2樹脂層12との間を、それぞれ、接着剤で接合することで、光透過シート10を用意することができる。
【0052】
この光透過シート10は、上記のような方法の他、例えば、第1樹脂層11と、樹脂基材13と、第2樹脂層12とが、この順で積層された、シート状をなす積層体を、共押出成形法を用いて成形した後に、この積層体を、加熱しつつ、一軸延伸することで、樹脂基材13にリタデーションを付与することによっても用意することができる。
【0053】
[2]次に、光透過シート10が備える第1樹脂層11の表面に、パターニングを施す。これにより、第1樹脂層11の表面が、パターニングされたものとされる。
【0054】
この第1樹脂層11の表面におけるパターニングは、例えば、ナノインプリント法を用いて、以下に示すようにして実施することができる。
【0055】
まず、図2(b)に示すように、第1樹脂層11の表面にパターニングすべき凹凸パターン110に対して対称をなす凹凸形状210を有する金型200を用意する。
【0056】
次いで、光透過シート10を、加熱して、第1樹脂層11を溶融状態としつつ、図2(c)に示すように、光透過シート10が備える第1樹脂層11の表面に、凹凸形状210を光透過シート10側として、金型200を押し当てる。
【0057】
この際の光透過シート10の加熱温度は、第1樹脂層11に含まれる構成材料の種類によっても若干異なるが、通常、好ましくは150℃以上190℃以下程度、より好ましくは160℃以上180℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、第1樹脂層11を、確実に溶融状態とすることができる。
【0058】
その後、光透過シート10を冷却することで、第1樹脂層11を固化させた後に、金型200を取り除く。これにより、図2(d)に示すように、第1樹脂層11の表面に凹凸パターン110がパターニングされた光透過シート10を得ることができる。
【0059】
なお、前記工程[1]および本工程[2]により、光透過シート10(本発明の光透過シート)を製造する製造方法が構成される。
【0060】
[3]次に、第1樹脂層11の表面がパターニングされた光透過シート10の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、光透過シート10の両面に保護フィルム50が貼付された多層積層体150とする(図3(a)参照)。
【0061】
[4]次に、図3(b)に示すように、用意した多層積層体150を、すなわち、光透過シート10の両面に保護フィルム50を貼付した状態で光透過シート10を、その厚さ方向に打ち抜くことで、多層積層体150を平面視で円形状をなすものとする。
【0062】
[5]次に、図3(c)に示すように、円形状とされた多層積層体150に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、多層積層体150を、第1樹脂層11側が湾曲凹面とされ、第2樹脂層12側が湾曲凸面とされた湾曲形状をなすものとする。これにより、平板状をなす光透過シート10を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす光透過シート10とすることができる。
【0063】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の多層積層体150(光透過シート10)の加熱温度(成形温度)は、光透過シート10が樹脂層11、12を備え、樹脂層11、12の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上170℃以下程度、より好ましくは140℃以上160℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、光透過シート10の変質・劣化を防止しつつ、光透過シート10を軟化または溶融状態として、光透過シート10を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす光透過シート10とすることができる。
【0064】
[6]次に、熱曲げがなされた光透過シート10から、保護フィルム50を剥離させる。その後、図3(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と光透過シート10の湾曲凸面とが当接するようにして、光透過シート10を吸着させた状態で、インサート射出成形法を用いて、この光透過シート10の湾曲凹面に、樹脂材料で構成されるレンズ層35を射出成形する。これにより、熱曲げがなされた光透過シート10と、レンズ層35とを備える眼鏡用レンズ30が製造される。
【0065】
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中にレンズ層35を形成するための樹脂材料を低圧で射出した後、金型40を高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としてのレンズ層35ひいては眼鏡用レンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高いレンズ層35を得ることができる。
【0066】
以上のような工程を経ることで、光透過シート10を備える眼鏡用レンズ30が得られる。
【0067】
この眼鏡用レンズ30において、光透過シート10が本発明の光透過シートで構成され、本実施形態では、光透過シート10は、リタデーションを有する樹脂基材13と、この樹脂基材13の入射面側に積層された第1樹脂層11と、樹脂基材13の出射面側に積層された第2樹脂層12とを備え、第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面がパターニングされており、樹脂基材13は、この樹脂基材13にリタデーションを付与するために、配向性を有する第1熱可塑性樹脂を含有し、第1樹脂層11は、樹脂基材13と反対側の表面におけるパターニング性を保持する第2熱可塑性樹脂を含有しており、第2熱可塑性樹脂を含有する樹脂層のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材のガラス転移点よりも低くなっている。
【0068】
これにより、前記工程[2]において、ナノインプリント法を用いた、加熱下での第1樹脂層11の表面におけるパターニングの際に、樹脂基材13において、前記工程[1]で付与したリタデーションが低下もしくは解消するのを的確に防止することができる。さらに、前記工程[5]において、加熱下における光透過シート10に対する熱曲げ加工の際に、樹脂基材13において、リタデーションが低下もしくは解消するのを的確に防止することができる。したがって、光透過シート10を備える眼鏡用レンズ30を、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0069】
以下、この光透過シート10について説明する。
<光透過シート10>
図4は、本発明の光透過シートの実施形態を示す縦断面図である。なお、図4では、光透過シートの出射面側にレンズ層が形成されている状態、すなわち、眼鏡用レンズが備える光透過シートについて記載している。また、以下では、説明の都合上、図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0070】
(第1樹脂層11および第2樹脂層12)
第1樹脂層11および第2樹脂層12は、図4に示すように、それぞれ、樹脂基材13の上面側(入射面側)および下面側(出射面側)に設けられ、これにより、樹脂基材13を保護する保護層として機能する。
【0071】
また、これらのうち第1樹脂層11は、その樹脂基材13と反対側の表面に凹凸パターン110がパターニングされており、このパターニングにより各種特性を付与する機能層としての機能も発揮する。
【0072】
これら第1樹脂層11および第2樹脂層12は、光透過性を有し、前記保護層としての機能、特に、第1樹脂層11には、機能層としての機能を発揮し得るように、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル系樹脂、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612のようなポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンのようなフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリアリレート系樹脂等の熱可塑性樹脂(第2熱可塑性樹脂)のうちの少なくとも1種を主材料として構成され、この第2熱可塑性樹脂は、第1樹脂層11のガラス転移点が、後述する、第1熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材13のガラス転移点よりも低く設定し得るものが選択される。第2熱可塑性樹脂は、上記のものの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これにより、第1樹脂層11および第2樹脂層12に、前記保護層としての機能を確実に発揮させることができる。特に、第1樹脂層11に、機能層としての機能を確実に発揮させることができる。すなわち、第2熱可塑性樹脂に、第1樹脂層11の表面に形成された凹凸パターン110を保持するパターニング性を確実に発揮させることができる。
【0073】
また、第1樹脂層11および第2樹脂層12には、主材料として含まれる第2熱可塑性樹脂以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料等の着色剤、充填材、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0074】
この場合、第1樹脂層11または第2樹脂層12中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第1樹脂層11または第2樹脂層12の100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、特に、第1樹脂層11に、その表面に形成された凹凸パターン110を保持するパターニング性を確実に発揮させることができる。
【0075】
なお、第1樹脂層11および第2樹脂層12を構成する構成材料は、それぞれ、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0076】
かかる構成をなす第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、第1樹脂層11は、前述の通り、その樹脂基材13と反対側の表面に、凹凸パターン110がパターニングされており、これにより、第1樹脂層11に各種特性が付与されている。
【0077】
換言すれば、第1樹脂層11に付与する特性に応じて、第1樹脂層11の表面にパターニングする凹凸パターン110の形状が選択される。
【0078】
具体的には、第1樹脂層11の入射面側の表面を、微細凹凸構造にパターニングする場合が挙げられ、より具体的には、モスアイ構造、蓮の葉構造またはルーバー形状をなす凹凸パターン110にパターニングする場合が挙げられる。
【0079】
このように、凹凸パターン110を、モスアイ構造をなすものとすることで、第1樹脂層11側から入射して第2樹脂層12側から出射する透過光が、第1樹脂層11の表面(入射面)において反射してしまうのを防止する反射防止層としての機能を、第1樹脂層11に発揮させることができる。そのため、光透過シート10ひいては眼鏡用レンズ30における、光透過性の向上を図ることができる。
【0080】
このモスアイ(Motheye、蛾の目)構造は、第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面に形成された、微細にパターニングされた表面微細構造であり、具体的には、その基端から先端に向けて縮径し、先端で径が0となる、全体形状が針状または錐状をなす微細な突起を複数有し、この突起が第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面に、ランダムに配列して設けられている。
【0081】
そして、このモスアイ構造をなしている凹凸パターン110の周期(ピッチ)を、第1樹脂層11(光透過シート10)を透過させる光(可視光)の波長以下、好ましくは波長/2以下に設定し、また、突起(凸部)の高さを、第1樹脂層11を透過させる光の波長以上、好ましくは波長/2以上に設定することで、この光が第1樹脂層11において反射するのを的確に抑制または防止して、光透過シート10における光透過性の向上を図ることができる。
【0082】
このように、モスアイ構造における、複数の突起、すなわち、凹凸パターンは、第1樹脂層11(光透過シート10)を透過させる光(可視光)の波長に応じて適宜設定されるが、具体的には、その凸部の平均高さが、好ましくは100nm以上1600nm以下、より好ましくは150nm以上1100nm以下の範囲内に設定され、その凸部間の平均ピッチが、好ましくは100nm以上800nm以下、より好ましくは130nm以上600nm以下の範囲内に設定される。
【0083】
以上のような構成をなす第1樹脂層11は、モスアイ構造を有することで、表面の反射率が低下して、優れた光透過性を発揮するが、具体的には、この第1樹脂層11を備える光透過シート10は、全光線透過率が90%以上程度であるのが好ましく、92%以上程度であるのがより好ましく、94%以上程度であるのがさらに好ましい。これにより、光透過シート10を、優れた光透過性を発揮するものと言うことができる。
【0084】
また、凹凸パターン110を、蓮の葉構造をなすものとすることで、第1樹脂層11の表面(入射面)において水滴や汚れが付着してしまうのを防止する撥水層としての機能を、第1樹脂層11に発揮させることができる。そのため、光透過シート10ひいては眼鏡用レンズ30における、防曇性および防汚性の向上を図ることができる。
【0085】
この蓮の葉構造(ロータス構造)は、第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面に形成された、微細にパターニングされた表面微細構造であり、具体的には、その基端から先端に向けて縮径するが、その途中で拡径した後に再び縮径し、先端で径が0となる、先端部が粒子状をなす微細な突起を複数有し、この突起が第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面に、ランダムに配列して設けられている。
【0086】
凹凸パターン110を、このような蓮の葉構造をなすものとすることで、ロータス効果、すなわち、Cassie-Baxter理論で説明される通り、毛細管現象により液滴が複数の突起間における底まで到達することができず、液滴の下に空隙が生じる。これに起因して、液滴と複数の突起とが点接触することで、凹凸パターン110が撥液性を発現する効果を得ることができる。そのため、第1樹脂層11に撥水層としての機能が付与される。
【0087】
このような蓮の葉構造における、複数の突起、すなわち、凹凸パターンは、第1樹脂層11に撥水性を発揮させ得るように、具体的には、その凸部の平均高さが、好ましくは10nm以上3000nm以下、より好ましくは100nm以上1000nm以下の範囲内に設定され、その凸部間の平均ピッチが、好ましくは10nm以上3000nm以下、より好ましくは100nm以上1000nm以下の範囲内に設定される。
【0088】
以上のような構成をなす第1樹脂層11は、蓮の葉構造を有することで、優れた撥水性を発揮するが、具体的には、表面の水に対する接触角が、好ましくは90°以上170°以下程度、より好ましくは130°以上170°以下程度に設定される。これにより、光透過シート10を、優れた防曇性および防汚性を発揮するものと言うことができる。
【0089】
なお、前述の通り、第1樹脂層11の表面にパターニングする凹凸パターン110の形状は、第1樹脂層11に付与する特性に応じて、適宜、選択されることから、前記モスアイ構造および蓮の葉構造に、限定されるものではない。
【0090】
第1樹脂層11および第2樹脂層12の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、3.0μm以上15μm以下であることがより好ましい。樹脂層11、12の厚さが薄くなりすぎると、樹脂層11、12を構成する構成材料の種類によっては、樹脂層11、12の強度が低下して、樹脂層11、12に割れやクラック等が生じるおそれがあり好ましくない。また、第1樹脂層11の表面に優れたパターニング精度で凹凸パターン110を形成することができる。一方、第1樹脂層11の厚さが厚すぎると、第1樹脂層11を構成する構成材料の種類によっては、光透過シート10の光透過率の低下、柔軟性の低下を招くおそれがあることから好ましくない。
【0091】
なお、本実施形態では、第1樹脂層11および第2樹脂層12のうち、第1樹脂層11の樹脂基材13と反対側の表面に凹凸パターン110をパターニングする場合について説明したが、これに限定されず、第2樹脂層12の樹脂基材13と反対側の表面がパターニングされていてもよい。このように、第2樹脂層12の樹脂基材13と反対側の表面をパターニングすることで、第2樹脂層12とレンズ層35との間の密着性の向上を図ることができる。
【0092】
また、第2樹脂層12に、保護層および機能層としての機能を発現させる必要がない場合には、第2樹脂層12の形成を省略することができる。
【0093】
さらに、第2樹脂層12の樹脂基材13と反対側の表面がパターニングされ、かつ、第1樹脂層11に、保護層および機能層としての機能を発現させる必要がない場合には、第1樹脂層11の形成を省略することができる。
【0094】
(樹脂基材13)
樹脂基材13は、光透過性を有し、かつ、リタデーションを有するものであり、光透過シート10における主層として機能する。
【0095】
この樹脂基材13は、光透過性およびリタデーションを有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、トリアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂)を主材料として構成され、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリアミド系樹脂またはポリカーボネート系樹脂を主材料として構成されていることが好ましい。
【0096】
ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、光透過シート10の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、光透過シート10の軽量化が図られる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を向上させることができる。
【0097】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、光透過シート10を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する光透過シート10とすることができる。
【0098】
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
【0099】
【化1】
(ただし、式(1B)中のRおよびRは、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
【0100】
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
【0101】
また、上記式(1B)中のR、Rのうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
【0102】
【化2】
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
【0103】
これにより、光透過シート10の加工性をより優れたものとし得る。また、樹脂基材13にリタデーションを付与する場合には、樹脂基材13の延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0104】
上記式(1B)中のR、Rのうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
これにより、光透過シート10の加工性をより優れたものとし得る。
【0105】
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、光透過シート10の加工性をより優れたものとし得る。また、延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0106】
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
【0107】
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
【0108】
【化3】
(ただし、式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
【0109】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、光透過シート10の強度をより優れたものとし得る。
【0110】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0111】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0112】
【化4】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0113】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、光透過シート10は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
【0115】
また、樹脂基材13には、主材料として含まれる第1熱可塑性樹脂以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料等の着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0116】
この場合、樹脂基材13中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、樹脂基材13の100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光透過シート10を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0117】
樹脂基材13は、リタデーションを有するが、第1樹脂層11にパターニングされた凹凸パターン110がモスアイ構造を形成している場合、樹脂基材13がリタデーションを有することで、光透過シート10を光が透過する際に、光透過シート10において、虹ムラが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
【0118】
また、第1樹脂層11にパターニングされた凹凸パターン110が蓮の葉構造を形成している場合、樹脂基材13がリタデーションを有することで、タッチパネル画面のような液晶モニタの映像を透過させる光学板として使用した際に、透過映像の虹ムラが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
【0119】
さらに、樹脂基材13のリタデーションは、光透過シート10の用途に応じて設定され、特に限定されないが、例えば、好ましくは2000nm以上6000nm以下程度、より好ましくは3000nm以上5000nm以下程度に設定される。リタデーションの大きさがかかる範囲内に設定されている樹脂基材13を備える光透過シート10に対して、本発明を適用することで、前記工程[2]において、ナノインプリント法を用いた、加熱下での第1樹脂層11の表面におけるパターニングの際に、樹脂基材13においてリタデーションが低下もしくは解消するのをより的確に防止することができる。さらに、前記工程[5]において、加熱下における光透過シート10に対する熱曲げ加工の際に、樹脂基材13においてリタデーションが低下もしくは解消するのをより的確に防止することができる。
【0120】
なお、樹脂基材13のリタデーションの大きさは、層中に含まれる構成材料や、厚さ、さらには、延伸倍率等を異ならせることにより、適宜設定することができる。
【0121】
樹脂基材13の平均厚さは、特に限定されず、例えば、0.05mm以上0.5mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上0.4mm以下であるのがより好ましい。
【0122】
ここで、以上のような構成をなしている、樹脂層11、12と、樹脂基材13とを備える光透過シート10において、本発明では、第1熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材13と、第2熱可塑性樹脂を含有する樹脂層11、12とは、樹脂層11、12のガラス転移点が樹脂基材13のガラス転移点よりも低くなっている。
【0123】
これにより、前記工程[2]において、ナノインプリント法を用いた、加熱下での第1樹脂層11の表面におけるパターニングの際に、樹脂基材13において、前記工程[1]で付与したリタデーションが低下もしくは解消するのを的確に防止することができる。さらに、前記工程[5]において、加熱下における光透過シート10に対する熱曲げ加工の際に、樹脂基材13において、リタデーションが低下もしくは解消するのを的確に防止することができる。したがって、光透過シート10を備える眼鏡用レンズ30を、優れた信頼性を有するものとし得る。
【0124】
この場合、具体的には、第1熱可塑性樹脂を含有する樹脂基材13のガラス転移点をTg1[℃]とし、第2熱可塑性樹脂を含有する樹脂層11、12のガラス転移点をTg2[℃]としたとき、Tg1-Tg2は、10℃以上80℃以下であることが好ましく、25℃以上70℃以下であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0125】
また、ガラス転移点Tg1は、100℃以上170℃以下であることが好ましく、130℃以上160℃以下であることがより好ましい。これにより、前記Tgの差(Tg1-Tg2)を、前記範囲内に比較的容易に設定することができる。また、前記工程[1]において、樹脂基材13の加熱下で、樹脂基材13に対してリタデーションを確実に付与することができる。
【0126】
さらに、ガラス転移点Tg2は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。これにより、前記Tgの差(Tg1-Tg2)を、前記範囲内に比較的容易に設定することができる。また、前記工程[2]において、ナノインプリント法を用いて、加熱下で第1樹脂層11の表面に凹凸パターン110を、確実にパターニングすることができる。
【0127】
なお、樹脂基材13のガラス転移点Tg1および樹脂層11、12のガラス転移点Tg2は、それぞれ、JIS K 7121に準拠して、樹脂基材13および樹脂層11、12の示差走査熱量測定DSC(昇温速度10℃/分、測定温度域30℃~170℃、使用ガス種:窒素)により得られるDSC曲線にてベースライン階段状変化が発生した変異点温度として求めることができる。
【0128】
(接着剤層)
また、樹脂基材13と第1樹脂層11との間、および、樹脂基材13と第2樹脂層12との間には、それぞれ、図示しない接着剤層が設けられている。これにより、光透過シート10の耐久性の向上を図ることができる。
【0129】
接着剤層を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、接着剤層の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとし得る。
【0130】
この接着剤層の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、接着剤層としての機能を、確実に付与することができる。
【0131】
なお、接着剤層は、第1樹脂層11、第2樹脂層12および樹脂基材13の構成等によっては、その形成を省略することもできる。
【0132】
また、上記のような層構成をなす光透過シート10は、その総厚が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましい。
【0133】
以上、本発明の光透過シートおよび光学部品について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0134】
例えば、本発明の光透過シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0135】
また、本発明の光透過シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0136】
より具体的には、例えば、本発明の光透過シートは、中間層や、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。
【0137】
また、前記実施形態では、本発明の光学部品を、眼鏡用レンズに適用する場合について説明したが、これに限定されず、例えば、カメラ用レンズ、各種表示装置が備える表示部が有するカバー部材、赤外線等の光学センサカバー等に用いることができる。
【実施例0138】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0139】
1.光透過シートの製造
(実施例1)
まず、第1熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「ユーピロンE2000」、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ガラス転移点:150℃)を用い、ベント式単軸押出機による押出成形により、厚さ0.8mmの第1シートとし、その後、この第1シートが180℃となるように加熱しながら2.0倍に一軸延伸することにより、厚さ0.39mmのシート状の樹脂基材13を得た。
【0140】
また、第2熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート系樹脂(SK.Chemicals社製、「SKYGREEN J2003」、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ガラス転移点:80℃)を用い、ベント式単軸押出機による押出成形により厚さ0.01mmの第1樹脂層11および第2樹脂層12をそれぞれ得た。
【0141】
なお、樹脂基材13のガラス転移点Tg1および樹脂層11、12のガラス転移点Tg2を、それぞれ、JIS K 7121に準拠して、樹脂基材13および樹脂層11、12の示差走査熱量測定DSC(昇温速度10℃/分、測定温度域30℃~170℃、使用ガス種:窒素)により得られるDSC曲線にてベースライン階段状変化が発生した変異点温度として求めたところ、それぞれ、150℃および80℃であった。
【0142】
次いで、第1樹脂層11および第2樹脂層12の一方の面上に、それぞれ、接着剤(第1接着剤および第2接着剤)として二液型湿気硬化型ポリウレタン接着剤(主剤:三井化学社製 「タケラック A-520」、硬化剤:三井化学社製 「タケネート A-50」)をバーコーターにて乾燥後の厚さが20μmになるように塗布した。
【0143】
次いで、接着剤がそれぞれ塗布された第1樹脂層11および第2樹脂層12を、オーブンに入れ、第1接着剤および第2接着剤中の溶剤分が乾燥するまで加熱した。これにより、第1樹脂層11の一方の面上に接着剤層が積層された第1積層体を得るとともに、第2樹脂層12の一方の面上に接着剤層が積層された第2積層体を得た。
【0144】
その後、樹脂基材13の一方の面上に、接着剤層が接触するように、第1積層体を樹脂基材13に積層し、樹脂基材13の他方の面上に、接着剤層が接触するように、第2積層体を樹脂基材13に積層して光透過シート10を得た。この際、ラミネーター機のゴムロールを用いて、第1積層体、樹脂基材13および第2積層体をそれぞれ圧着させて、光透過シート10の総厚を0.4mmとした。
【0145】
次いで、円筒状をなすアルミニウム基材(外径50mm、内径40mm、長さ100mm)を用意し、このアルミニウム基材に対して、シュウ酸水溶液中における陽極酸化処理工程と、リン酸水溶液中における細孔径拡大処理工程とを繰り返して実施することにより、平均ピッチ250nm、平均深さ250nmの円錐状をなす細孔、すなわち、パターニングすべき凹凸パターンに対して対称をなすモスアイ構造を有する陽極酸化アルミナを表面に備えるロール状をなす反転転写型を用意した。
【0146】
次いで、用意した反転転写型に対して、フッ素系離形剤(ダイキン工業社製、「UD-509」)を塗布して離形処理を行った後に、ロール状をなす反転転写型を回転させるとともに、反転転写型の外周面に沿って反転転写型の回転方向に、この光透過シート10が110℃となるように加熱しつつ、第1樹脂層11と反転転写型とが接触する状態で、光透過シート10を走行させた。その後、光透過シート10を冷却することにより、第1樹脂層11の表面に、モスアイ構造をなす凹凸パターン110がパターニングされた、実施例1の光透過シート10を得た。
【0147】
(実施例2~実施例6、比較例1)
光透過シート10の形成に用いた、第2熱可塑性樹脂、ならびに、凹凸パターン110を形成する際の光透過シート10の加熱温度を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~実施例6、比較例1の光透過シート10を得た。
【0148】
2.評価
各実施例および比較例の光透過シート10について、それぞれ、以下の評価を行った。
【0149】
2-1.全光線透過率評価
各実施例および比較例の光透過シート10について、JIS K 7361-1に準拠して、全光線透過率を測定した。そして、測定された全光線透過率を用いて、以下の評価基準に従って評価した。
【0150】
<評価基準>
A:全光線透過率が94%以上
B:全光線透過率が92%以上94%未満
C:全光線透過率が90%以上92%未満
D:全光線透過率が90%未満
【0151】
2-2.リタデーション評価
各実施例および比較例の光透過シート10について、それぞれ、モスアイ構造をなす凹凸パターン110のパターニング前後についてのリタデーションを測定した。
【0152】
なお、各実施例および比較例の光透過シート10のリタデーションは、位相差測定装置(Axometrics社製、「Axoscan」)を用いて、測定波長550nmにおける平面位相差を測定した。
【0153】
そして、モスアイ構造をなす凹凸パターン110のパターニング前後において、それぞれ、測定されたリタデーションの比の値(Re(後)/Re(前)×100 [%])を用いて、以下の評価基準に従って評価した。
【0154】
<評価基準>
リタデーションの比の値(Re(後)/Re(前)×100 [%])が
A:95%以上
B:90%以上%95%未満
C:80%以上90%未満
D:80%未満
【0155】
以上のようにして得られた各実施例および比較例の光透過シート10における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1に示すように、各実施例の光透過シート10では、加熱前後のリタデーションの変化を抑えつつ、モスアイ構造を形成することができた。
【0158】
これに対して、比較例1の光透過シート10では、モスアイ構造を形成することができたものの、加熱前後のリタデーションの変化を抑えることができない結果を示した。
【符号の説明】
【0159】
10 光透過シート
11 第1樹脂層
12 第2樹脂層
13 樹脂基材
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
30 眼鏡用レンズ
35 レンズ層
40 金型
50 保護フィルム
100 眼鏡
110 凹凸パターン
150 多層積層体
200 金型
210 凹凸形状
図1
図2
図3
図4