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特開2022-156263免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び免疫測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156263
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び免疫測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01N33/531 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059857
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伴野 由季
(57)【要約】
【課題】 保存安定性に優れる免疫測定用試薬、該免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット及び該キットを使用する免疫測定方法を提供することにある。
【解決手段】 物質(FC)と、ジギトニン、ククルビタシンB、ウアバイン及びサポニンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)とを含有する免疫測定用試薬(X)であって、物質(FC)が物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質であり、物質(F)が測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であり、(X)中の(D)の含有量が(X)の重量を基準として0.51~1.50重量%である免疫測定用試薬(X)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質(FC)と、ジギトニン、ククルビタシンB、ウアバイン及びサポニンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)とを含有する免疫測定用試薬(X)であって、物質(FC)が物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質であり、物質(F)が測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であり、(X)中の(D)の含有量が(X)の重量を基準として0.51~1.50重量%である免疫測定用試薬(X)。
【請求項2】
物質(F)が抗プロトロンビンモノクローナル抗体である請求項1に記載の免疫測定用試薬。
【請求項3】
標識試薬(A)及び固相担体試薬(E)を含む免疫測定用キットであって、標識試薬(A)が請求項1又は2に記載の免疫測定用試薬(X)であり、固相担体試薬(E)が固相担体(B)の表面に物質(F)が固定化された固相担体(BF)を含有するものである免疫測定用キット。
【請求項4】
さらにルミノール発光試薬(K)及び過酸化物水溶液(L)を含む免疫測定用キットであって、標識物質(C)がペルオキシダーゼである請求項3に記載の免疫測定用キット。
【請求項5】
固相担体(B)が磁性シリカ粒子(B1)である請求項3又は4に記載の免疫測定用キット。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の免疫測定用キットを使用する免疫測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫測定用試薬、免疫測定用キット及び前記の試薬を使用する免疫測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定試薬においては、主要構成要素として、標識物質により標識されてなる物質がある(特許文献1)。免疫測定試薬においては、標識物質により標識されてなる物質が一定の活性を維持していることが望まれる。経時的に物質の活性が低下したり、保存状態によって物質の活性が変化したのでは正確な測定結果は期待できず、免疫測定試薬としては、大きな問題である。多数検体同時迅速検査を目的とした自動化免疫測定装置の開発において、さらなる保存安定性の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-127827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、保存安定性に優れた免疫測定用試薬、該免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット及び該キットを使用する免疫測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。
即ち本発明は、物質(FC)と、ジギトニン、ククルビタシンB、ウアバイン及びサポニンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)であって、物質(FC)が物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質であり、物質(F)が測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であり、(X)中の(D)の含有量が(X)の重量を基準として0.51~1.50重量%である免疫測定用試薬(X);標識試薬(A)及び固相担体試薬(E)を含む免疫測定用キットであって、標識試薬(A)が該免疫測定用試薬(X)であり、固相担体試薬(E)が固相担体(B)の表面に物質(F)が固定化された固相担体(BF)を含有するものである免疫測定用キット;該免疫測定用キットを使用する免疫測定方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の免疫測定用試薬及び免疫測定用キットを用いれば、長期間試薬を保管することができ、有効期間切れによる試薬ロスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<免疫測定用試薬>
本発明の免疫測定用試薬(X)は、物質(FC)と、ジギトニン、ククルビタシンB、ウアバイン及びサポニンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)とを含有する免疫測定用試薬(X)であって、物質(FC)が物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質であり、物質(F)が測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であり、(X)中の(D)の含有量が(X)の重量を基準として0.51~1.50重量%である免疫測定用試薬である。
【0008】
本発明における物質(FC)は、上述の通り、物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質である。物質(F)としては、測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質が含まれる。
本発明における測定対象物質(F1)は、生物由来の試料[生体体液(血清、血液、リンパ液、腹水及び尿等)、各種細胞類及び培養液等)に含まれる物質等が挙げられる。
具体的には、タンパク質[アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、プロテインA、C反応性蛋白質(CRP)、脂質蛋白質、酵素、免疫グロブリン、免疫グロブリンの断片、血液凝固関連因子、抗体、抗原及びホルモン等]、
核酸[デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)等]、
薬物[抗てんかん薬、抗生物質、テオフィリン等]、
ウイルス[C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス、アデノウイルス、ラブドウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、オソミクソウイルス等]、
細菌[O-157、ピロリ菌、サルモネラ菌等]、
細胞[脂肪細胞、ES細胞、肝細胞、幹細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、内分泌細胞、外分泌細胞、神経細胞、腫瘍細胞、IPS細胞等]等が挙げられる。
前記の酵素としては、アルカリ性ホスファターゼ、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)、リパーゼ、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、レニン、プロテインキナーゼ(PK)、チロシンキナーゼ等が挙げられる。
前記の脂質蛋白質としては、高比重リポ蛋白質(HDL)、低比重リポ蛋白質(LDL)、超低比重リポ蛋白質等が挙げられる。
前記の免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等が挙げられる。
前記の免疫グロブリンの断片としては、Fc部、Fab部、F(ab)部等が挙げられる。
前記の血液凝固関連因子としては、フィブリノーゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プロトロンビン、トロンビン等が挙げられる。
前記の抗体としては、抗ストレプトリジンO抗体、抗ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原抗体(HBs抗原)、抗ヒトC型肝炎ウイルス抗体、抗リュウマチ因子等が挙げられる。
前記の抗原としては、癌胎児性抗原(CEA)等が挙げられる。
前記のホルモンとしては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT3、FT4、T3、T4)、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、エストラジオール(E2)等が挙げられる。
なお、前記の抗原及び抗体としては、癌マーカー[PIVKA-II抗原、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9、前立腺特異抗原(PSA)等]及び心疾患マーカー[トロポニンT(TnT)、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)等]として知られている物質等も挙げられる。
上記に例示したものの中でも、商業的ニーズの観点から、抗体、ホルモン、癌マーカー及び心疾患マーカーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0009】
本発明における測定対象物質の類似物質(アナログ)(F2)は、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」が有する「測定対象物質(F1)との結合部位」と結合し得るもの、言い換えれば、「測定対象物質(F1)」が有する「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」との結合部位を有するもの、更に言い換えれば、「測定対象物質(F1)」と「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」との反応時に共存させると、該反応と競合し得るものであれば何れでもよい。
【0010】
本発明における「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」としては、例えば「抗原」-「抗体」間反応、「糖鎖」-「タンパク質」間反応、「糖鎖」-「レクチン」間反応、「酵素」-「インヒビター」間反応、「タンパク質」-「ペプチド鎖」間反応、「染色体又はヌクレオチド鎖」-「ヌクレオチド鎖」間反応、「ヌクレオチド鎖」-「タンパク質」間反応等の相互反応によって、「測定対象物質又はその類似物質(F2)」と結合するもの等が挙げられる。
上記各組合せにおいて何れか一方が「測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)」である場合、他の一方がこの「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」となる。
例えば、「測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)」が「抗原」であるときは、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」は「抗体」であり、「測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)」が「抗体」であるときは、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」は「抗原」である(以下、その他の上記各組合せにおいても同様である)。
【0011】
(F3)としては、前記の測定対象物質(F1)として例示した物質及びこれらに対する抗体等が挙げられる。
尚、本発明において用いられる抗体には、パパインやペプシン等の蛋白質分解酵素、或いは化学的分解により生じるFab、F(ab’)フラグメント等の分解産物も包含される。
また、測定対象物質(F1)がPIVKA-II抗原である場合は、(F3)としては、抗プロトロンビンモノクローナル抗体(抗PIVKA-IIモノクローナル抗体等)であることが好ましい。
【0012】
上記の測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)としては、「抗原」-「抗体」間反応或いは「糖鎖-タンパク質」間反応によって、測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)と結合するものが、入手が容易であることから好ましい。
具体的には、測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)に対する抗体、測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)が結合する抗原及び測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)に結合するタンパク質が好ましく、測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)に対する抗体及び測定対象物質(F1)又はその類似物質(F2)に結合するタンパク質が更に好ましい。
【0013】
前記の物質(F)としては、保存安定性の観点から、抗プロトロンビンモノクローナル抗体が好ましい。
【0014】
本発明に用いられる標識物質(C)は、物質(F)を標識するために用いられるものであり、例えば酵素免疫測定法(EIA)において用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ(以下においてPODと略記することがある)、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素類;
例えば放射免疫測定法(RIA)において用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;
例えば蛍光免疫測定法(FIA)において用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン又はこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質;
例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質;
例えばフェノール、ナフトール、アントラセン又はこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質;
例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
これらのうち、保存安定性の観点から、酵素及び蛍光性物質が好ましく、さらに好ましいのはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼであり、特に好ましいのはペルオキシダーゼである。
(C)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明において物質(FC)は、上記物質(F)が標識物質(C)により標識されてなる物質である。標識物質(C)を物質(F)に結合させて物質(FC)とする方法としては、一般的にこの分野で用いられる方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等]等を利用すればよい。
【0016】
本発明において、免疫測定用試薬(X)中の物質(FC)の含有量は、免疫測定用試薬(X)の重量を基準として、保存安定性の観点から、0.05~0.4重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~0.3重量%である。
【0017】
本発明における化合物(D)は、前記の通り、ジギトニン、ククルビタシンB、ウアバイン及びサポニン(ステロイドサポニン及びトリテルペノイドサポニン等)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0018】
本発明において、免疫測定用試薬(X)中の化合物(D)の含有量は、保存安定性の観点から、免疫測定用試薬(X)の重量を基準として、0.51~1.50重量%であり、0.75~1.50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.95~1.50重量%である。
【0019】
免疫測定用試薬(X)中には、さらにタンパク質を含有してもよい。タンパク質を含有すると、測定毎の測定値のぶれを抑制できる(同時再現性の向上)ため、好ましい。
タンパク質としては、同時再現性の観点から、カゼインが好ましい。
(X)中のタンパク質の含有量は、免疫測定用試薬(X)の重量を基準として、同時再現性の観点から、0.005~1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~0.03重量%である。
また、同時再現性を更に高める観点からは、カゼインの重量と前記の(D)の重量との比率[カゼインの重量/(化合物(D)の合計重量)]が、0.8~5.0であることが好ましい。
【0020】
本発明の免疫測定用試薬(X)は、保存安定性が高いので、免疫測定における標識試薬(A)として好ましく用いることができる。
【0021】
本発明の免疫測定用キットは、標識試薬(A)及び固相担体試薬(E)を含む免疫測定用キットであって、標識試薬(A)が上記本発明の免疫測定用試薬(X)であり、固相担体試薬(E)が固相担体(B)の表面上に物質(F)が固定化された固相担体(BF)を含有するものである免疫測定用キットである。
【0022】
本発明において、固相担体(B)は、一般的にこの分野で使用されるものであれば特に限定されないが、例えばガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、磁性シリカ粒子(B1)、マイクロプレート、ラテックス等が代表的なものとして挙げられる。
磁性シリカ粒子(B1)としては、特開2014-210680号公報及び特開2013-019889号公報等に記載の公知の磁性シリカ粒子等が挙げられる。
これらのうち、短時間で測定できる観点から、磁性シリカ粒子(B1)が好ましい。
【0023】
前記の磁性シリカ粒子(B1)は、シリカのマトリックス中に体積平均粒子径が1~15nmで超常磁性を有する金属酸化物を分散されているものである。超常磁性とは、外部磁場の存在下で物質の個々の原子磁気モーメントが整列し誘発された一時的な磁場を示し、外部磁場を取り除くと、部分的な整列が損なわれ磁場を示さなくなることをいう。
なお、金属酸化物の体積平均粒子径は、任意の200個の粒子について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」等)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0024】
体積平均粒子径が1~15nmで超常磁性を示す超常磁性金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金等の酸化物が挙げられるが、磁界に対する感応性が優れていることから、酸化鉄が特に好ましい。超常磁性金属酸化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
酸化鉄としては、公知の種々の酸化鉄を用いることができる。酸化鉄の内、特に化学的
な安定性に優れることから、マグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄及びγ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄が好ましく、大きな飽和磁化を有し、外部磁場に対する感応性が優れていることから、マグネタイトが更に好ましい。
【0026】
前記の磁性シリカ粒子(B1)中の超常磁性金属酸化物の含有量の下限は、60重量%が好ましく、さらに好ましくは65重量%であり、上限は95重量%が好ましく、さらに好ましくは80重量%である。
超常磁性金属酸化物の含有量が60重量%以上であると、得られた磁性シリカ粒子(B1)の磁性が十分であるため、実際の用途面における分離操作に時間がかからないので好ましい。また95重量%以下であると、合成が容易であるので好ましい。
【0027】
超常磁性金属酸化物の製造方法は、特に限定されないが、Massartにより報告されたものをベースとして水溶性鉄塩及びアンモニアを用いる共沈殿法(R.Massart,IEEE Trans.Magn.1981,17,1247)や水溶性鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた方法により合成することができる。
【0028】
前記の磁性シリカ粒子(B1)の体積平均粒子径は、好ましくは1~5μm、更に好ましくは1~3μmである。体積平均粒子径が1μm以上であると、分離回収の際に時間がかからない傾向にある。また、5μm以下であると、表面積が比較的大きくなる結果、固定化する物質(測定対象物質、測定対象物質の類似物質又は測定対象物質と特異的に結合する物質)の結合量も多くなり、結合効率が上昇する傾向にある。
【0029】
前記の磁性シリカ粒子(B1)の体積平均粒子径は、任意の200個の磁性シリカ粒子について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0030】
前記の磁性シリカ粒子(B1)の体積平均粒子径は、後述の水中油型エマルションを作製する際の混合条件(せん断力等)を調節して水中油型エマルションの粒子径を調整することにより制御することができる。また、磁性シリカ粒子製造時の水洗工程の条件変更や一般的な分級等の方法によっても平均粒子径を所望の値とすることができる。
【0031】
前記の磁性シリカ粒子(B1)は、例えば、体積平均粒子径が1~15nmの超常磁性金属酸化物粒子の重量に基づいて、30~500重量%の(アルキル)アルコキシシラン及び分散剤を含有する分散液と、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を含有する溶液とを混合して水中油型エマルションを形成後、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行い、超常磁性金属酸化物がシリカに包含された磁性シリカ粒子の水性分散体が得た後、磁性シリカ粒子の水性分散体を遠心分離及び/又は集磁により固液分離し、水及びメタノール等で洗浄することにより得られる。
上記及び以下において、(アルキル)アルコキシシランとは、アルキルアルコキシシラン及び/又はアルコキシシランを意味する。
【0032】
前記の磁性シリカ粒子(B1)は、超常磁性金属酸化物がシリカに包含され、粒子表面に存在しないことから、多くの測定対象物質、測定対象物質の類似物質、又は測定対象物質と特異的に結合する物質をその表面に固定化することができる。
【0033】
本発明において、固相担体(B){好ましくは磁性シリカ粒子(B1)}に、測定対象物質(F1)、測定対象物質の類似物質(F2)及び測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を固定化し、固相担体(B)の表面に
物質(F)が固定化された固相担体(BF)を製造する方法としては、上述の(B)に測定対象物質(F1)等を物理吸着させる方法が挙げられるが、より効率良く測定対象物質(F1)等を固定化させる観点から、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン及び官能基を有するアルキルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を(B)表面に結合させ、それらを介して測定対象物質(F1)等を(B)に固定化させる方法が好ましい。
(B)表面に結合させる有機化合物の内、特定の測定対象物質(F1)等を結合させる観点から、官能基(エチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基及びイソシアネート基等)を有するアルキルアルコキシシランが更に好ましい。
このような官能基を有するアルキルアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
固相担体試薬(E)は、上記固相担体(B)の表面上に物質(F)が固定化された固相担体(BF)を含有するものである。
前記の固相担体(B)の表面上に固定化する物質(F)としては、物質(FC)の説明の際に例示した物質(F)が挙げられる。
前記の固相担体(B)の表面上に固定化する物質(F)として好ましいものは、標識試薬(A)における物質(FC)の種類にもよるが、標識試薬(A)における物質(FC)がPOD標識抗プロトロンビンモノクローナル抗体である場合は、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体が好ましい。
【0035】
本発明の免疫測定用キットは、上記固相担体試薬(E)及び標識試薬(A)以外に、さらに緩衝液、ルミノール発光試薬(K)及び過酸化物水溶液(L)を含んでいてもよい。
ルミノール発光試薬(K)は、上記標識試薬(A)中に含まれる物質(FC)を標識するものとして用いられている標識物質(C)に基づいて選択され、例えば、標識物質(C)がペルオキシダーゼである場合、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及び化学発光増強剤を必須構成成分としてなるルミノール発光試薬等が挙げられる。
過酸化物水溶液(L)は、過酸化物及び水を必須構成成分としてなる過酸化物水溶液である。
【0036】
本発明の免疫測定用キットに用いる緩衝液としては、一般的に免疫測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等が挙げられ、そのpHは、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
また、このような緩衝液中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、塩(塩化ナトリウム等)、アルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の
安定化剤、界面活性剤及び糖類等を含有させておいてもよい。
【0037】
ルミノール発光試薬(K)において、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物としては、例えば、特開平2-291299号公報、特開平10-319015号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物並びにこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、ルミノール、イソルミノール、N-アミノヘキシル-N-エチルイソルミノール(AHEI)、N-アミノブチル-N-エチルイソルミノール(ABEI)及びこれらの金属塩(アルカリ金属塩等)が好ましく、更に好ましいのはルミノール及びその金属塩、特に好ましいのはルミノールのナトリウム塩である。
【0038】
化学発光増強剤としては、例えば、特開昭59-500252号公報、特開昭59-171839号公報及び特開平2-291299号公報等に記載の公知の化学発光増強剤並びにこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、化学発光増強効果等の観点から、フェノール(フェノール誘導体を含む)が好ましく、更に好ましいのはP-ヨードフェノール、4-(シアノメチルチオ)フェノール及び4-シアノメチルチオ-2-クロロフェノールであり、特に好ましいのは4-(シアノメチルチオ)フェノールである。
【0039】
ルミノール発光試薬(K)には、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物及び化学発光増強剤以外に、緩衝液及び/又はキレート剤等を含むことができる。
【0040】
ルミノール発光試薬(K)が含有する緩衝液としては、例えば、特開平10-319015号公報及び特開2003-279489号公報等に記載の公知の緩衝液並びにこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液及びピペラジニル-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)・2水和物/水酸化ナトリウム緩衝液が好ましく、更に好ましいのは3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液及び2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液であり、特に好ましいのは3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液である。
【0041】
ルミノール発光試薬(K)が含有するキレート剤としては、例えば、特開平9-75099号公報及び特開2003-279489号公報等に記載の公知のキレート剤並びにこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、4配位キレート剤が好ましく、更に好ましいのはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム及びエチレンジアミン四酢酸三カリウム等)並びにトランス-1,2ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)であり、特に好ましいのはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩である。
【0042】
ルミノール発光試薬(K)は、液体であることが好ましく、また、酵素の蛍光強度の観点からはアルカリ性であることが好ましい。
ルミノール発光試薬(K)のpHは、7~11が好ましく、更に好ましくは8~10である。尚、pHは、JIS K0400-12-10:2000に準拠して測定される(測定温度25℃)。
【0043】
ルミノール発光試薬(K)は、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン化合物、化学発光増強剤並びに必要により緩衝液及び/又はキレート剤を均一混合することにより容易に得ることができる。
【0044】
過酸化物水溶液(L)が含有する過酸化物としては、例えば、特開平8-261943号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の酸化剤等[無機の過酸化物(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウム等)、有機過酸化物(過酸化ジアルキル及び過酸化アシル等)、ペルオキソ酸化合物(ペルオキソ硫酸及びペルオキソリン酸等)等]の水溶液が挙げられる。
これらの内、保存安定性等の観点から、過酸化水素水溶液、過ホウ酸ナトリウム水溶液及び過ホウ酸カリウム水溶液が好ましく、更に好ましいのは過酸化水素水溶液である。
【0045】
過酸化物水溶液(L)が含有する水としては、蒸留水、逆浸透水及び脱イオン水等が挙げられる。これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、蒸留水及び脱イオン水が好ましく、更に好ましいのは脱イオン水である。
【0046】
過酸化物水溶液(L)は、過酸化物及び水以外にキレート剤等を含むことができる。
キレート剤としては、上述のルミノール発光試薬(K)に含むことができるキレート剤として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
過酸化物水溶液(L)は、過酸化物、水及び必要によりキレート剤を均一混合することにより容易に得られる。
【0047】
本発明の免疫測定用キットは、試料中の測定対象物質(F1)を定量する免疫測定方法としてこの分野で一般的に行われる方法に用いることができ、例えば、文献[例えば、酵素免疫測定法第2版(石川栄治ら編集、医学書院)1982年]記載のサンドイッチ法、競合法及び特開平6-130063号公報記載の測定法に準じて行えばよい。
【0048】
サンドイッチ法は、例えば、「測定対象物質(F1)」を含む試料と、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を磁性シリカ粒子(B1)の表面に固定化した磁性シリカ粒子(B1F3)と、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)表面に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と、「測定対象物質(F1)」と、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」との標識複合体{(F3)/(F1)/(F3C)}を形成させ、該標識複合体をB/F分離して、複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質(F1)を定量することによりなされる。
【0049】
具体的には例えば、「測定対象物質(F1)を含む試料」と、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)を磁性シリカ粒子(B1)の表面に固定化した磁性シリカ粒子(B1F3)」とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)表面に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と「測定対象物質(F1)」との複合体を形成させ、更に該複合体に「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」を接触させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と、「測定対象物質(F1)」と、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」との標識複合体{(F3)/(F1)/(F3C)}を形成させ、該標識複合体をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質を定量すればよい。
該方法においては、「測定対象物質(F1)」と「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」が固定化された磁性シリカ粒子(B1F3)とを反応させた後、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」を反応させているが、「標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」と「測定対象物質(F1)」とを反応させた後に「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」が固定化された磁性シリカ粒子(B1F3)とを反応させても、これら3つを同時に反応させても構わない。
【0050】
上記サンドイッチ法におけるB/F分離とは、上記標識複合体{(F3)/(F1)/(F3C)}と、標識複合体の形成に関与しなかった「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」との分離を意味し、具体的には、「磁性シリカ粒子(B1)に担持された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」、「磁性シリカ粒子(B1)に担持された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)と測定対象物質(F1)との複合体{(F3)/(F1)}」及び上記の「標識複合体{(F3)/(F1)/(F3C)}」と、他の成分(試料中の測定対象物質(F1)以外の成分、標識複合体の形成に関与しなかった標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)等)との分離を意味する。
また、B/F分離工程は標識複合体{(F3)/(F1)/(F3C)}の形成後には必須の工程であるが、磁性シリカ粒子(B1)表面に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と「測定対象物質(F1)」との複合体{(F3)/(F1)}を形成させた後においても実施することができる。
【0051】
競合法としては、「測定対象物質(F1)」を含む試料、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」、及び、「測定対象物質(F1)及び/又は測定対象物質の類似物質(F2)」をその表面に固定化している磁性シリカ粒子(B1F1/F2)とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」と「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」との標識複合体{(F1)/(F3C)及び/又は(F2)/(F3C)}を形成させ、該標識複合体を担持した磁性シリカ粒子をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質を定量することによりなされる。
【0052】
具体的には例えば、「測定対象物質(F1)」を含む試料と、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」と、「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」を担持した磁性シリカ粒子(B1F1/F2)とを接触させて、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」に、試料中の「測定対象物質(F1)」と磁性シリカ粒子(B1)表面に担持された「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」とを競合反応させて、磁性シリカ粒子(B1)表面に担持された「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」と「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」との標識複合体{(F1)/(F3C)及び/又は(F2)/(F3C)}を形成させ、該標識複合体を担持した磁性シリカ粒子をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質(F1)を定量すればよい。
該方法においては、「測定対象物質(F1)」、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」、並びに磁性シリカ粒子(B1)表面に固定化された「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」を同時に競合反応させているが、「測定対象物質(F1)」と磁性シリカ粒子(B1)表面に固定化された「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」とを接触させた後に、「標識対象物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」を加えて競合反応させても、「測定対象物質(F1)」と「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」を接触させた後に、「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)」を担持した磁性シリカ粒子(B1F1/F2)を加えて競合反応させてもよい。
【0053】
上記競合法におけるB/F分離とは、上記標識複合体{(F1)/(F3C)及び/又は(F2)/(F3C)}と、標識複合体の形成に関与しなかった、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」、及び「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)と測定対象物質(F1)との複合体{(F1)/(F3C)}」との分離を意味し、具体的には、「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)を担持した磁性シリカ粒子」、並びに、「測定対象物質(F1)及び/又はその類似物質(F2)を担持した磁性シリカ粒子と標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)との複合体{(B1F1/F2)/(F3C)}」と、他の成分(試料中の測定対象物質(F1)以外の成分、「標識物質により標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)」、複合体{(F1)/(F3C)}等)との分離を意味する。
【0054】
また、競合法の別の態様としては、「測定対象物質(F1)」を含む試料と、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」と、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持した磁性シリカ粒子(B1F3)とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」との標識複合体{(F3)/(F1/F2C)}とを形成させ、該標識複合体を担持した磁性シリカ粒子をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質を測定することによりなされる。
【0055】
具体的には例えば、「測定対象物質(F1)」を含む試料と、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」と、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持させた磁性シリカ粒子(B1F3)とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」に、「試料中の測定対象物質(F1)」と「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」とを競合反応させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」と試料中の「測定対象物質(F1)」との複合体{(F3)/(F1)}、並びに、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」との標識複合体{(F3)/(F1/F2C)}とを形成させ、該複合体又は標識複合体を担持した磁性シリカ粒子をB/F分離して、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質(F1)を測定すればよい。
該競合法においては、「測定対象物質(F1)」、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」、並びに「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持させた磁性シリカ粒子(B1F3)を同時に競合反応させているが、「測定対象物質(F1)」と「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持させた磁性シリカ粒子とを接触させた後{複合体(F3)/(F1)を形成させた後}に、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」を加えて競合反応{磁性シリカ粒子(B1F3)において、試料中の測定対象物質(F1)が反応しなかった(F3)に、(F1/F2C)を反応}させても、「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」と「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持させた磁性シリカ粒子(B1F3)とを接触させた後{複合体(F3)/(F1/F2C)を形成させた後}に、「測定対象物質(F1)」を加えて競合反応{磁性シリカ粒子(B1F3)において、(F1/F2C)が反応しなかった(F3)に、試料中の測定対象物質(F1)を反応}させてもよい。
【0056】
上記競合法におけるB/F分離とは、上記標識複合体と、標識複合体の形成に関与しなかった「標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)」との分離を意味し、具体的には、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)を担持させた磁性シリカ粒子(B1F3)」、「磁性シリカ粒子(B1)上の測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)と、測定対象物質(F1)との複合体{(F3)/(F1)}」、及び「磁性シリカ粒子(B1)上の測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)と、標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)との複合体{(F3)/(F1/F2C)}」と、他の成分(試料中の測定対象物質(F1)以外の成分、標識複合体の形成に関与しなかった標識物質により標識された測定対象物質及び/又はその類似物質(F1/F2C)等)との分離を意味する。
また、B/F分離工程は標識複合体の形成後には必須の工程であるが、「測定対象物質(F1)」と「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」を担持させた磁性シリカ粒子とを接触させた後においても実施することができる。
【0057】
また、「測定対象物質(F1)」が酵素の場合には、上記サンドイッチ法や競合法以外の酵素活性方法を用いる方法、例えば、「測定対象物質(F1)」を含む試料と、「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)(例えば、抗体等の酵素と結合し得る物質)」を表面に固定化した磁性シリカ粒子(B1F3)とを接触させて、磁性シリカ粒子(B1)に担持された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」との複合体{(F3)/(F1)}を形成させ、複合体を担持した磁性シリカ粒子をB/F分離した後、酵素の種類に応じた基質及び発色剤、要すれば更に共役酵素を添加し、その基質の変化又は発色剤の発色結果に基づいて試料中の酵素量を測定する方法により、測定してもよい。
尚、基質、発色剤、共役酵素は、公知のものを用いればよく、例えば酵素がペルオキシダーゼの場合には、過酸化水素とルミノール発光試薬等を用いればよい。これらの使用量も一般的にこの分野で用いられる範囲であればよい。上記方法におけるB/F分離とは、「測定対象物質(F1)」と、磁性シリカ粒子上に固定化された「測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)」との複合体{(F3)/(F1)}と、その他の成分(試料中の測定対象物質(F1)以外の成分等)との分離を意味する。
【0058】
本発明の免疫測定方法において、試料、物質(F)が固定化された磁性シリカ粒子(B1F)、標識された測定対象物質と特異的に結合する物質(F3C)、標識された測定対象物質(F1C)又はその類似物質(F2C)等を接触させる方法としては、一般的になされる撹拌、混合等の処理により、磁性シリカ粒子が分散されればよい。反応時間は、測定対象物質(F1)、用いられる測定対象物質と特異的に結合する物質(F3)、サンドイッチ法、競合法等の違いに応じて適宜設定されればよいが、1~10分が好ましく、さらに好ましくは1~5分である。
【0059】
本発明の免疫測定方法におけるB/F分離は、例えば、磁性シリカ粒子の磁性を利用し、反応槽の外側等から磁石等により磁性シリカ粒子を集めて、反応液を排出し、洗浄液を加えた後、磁石を取り除き、磁性シリカ粒子を混合して分散させ、洗浄することによりなされる。上記操作を1~3回繰り返してもよい。洗浄液としては、一般的にこの分野で用いられるもの(生理食塩水等)等を用いることができる。
【実施例0060】
以下、実施例により、本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
以下に示す方法により、固相担体試薬(E)[抗PIVKA-IIモノクローナル抗体
を固定化した磁性シリカ粒子(BF)を含有]、標識試薬(A1)(POD標識抗プロトロンビンモノクローナル抗体試薬)、免疫反応緩衝液、ルミノール発光試薬(K)及び過酸化水素液(L)から構成される本発明の免疫測定用キット(S1)を得た。
【0062】
固相担体試薬(E)の作製:
1重量%γ-アミノプロピルトリエトキシシラン含有水溶液40mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に製造した磁性シリカ粒子(商品名:マグラピッド、三洋化成工業(株)製)40mgを加え、25℃で1時間反応させ、ネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去した。次いで脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌した後、ネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性シリカ粒子を洗浄した。この洗浄操作を5回行った。次いで、この洗浄後の磁性シリカ粒子を2重量%グルタルアルデヒド含有水溶液40mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。そして、脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌したのち、ネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を集磁後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性シリカ粒子を洗浄した。この洗浄操作を10回行った。更にこの洗浄後の磁性シリカ粒子を、物質(F)として抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(コスモ・バイオ(株)製)10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリスチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。反応後、ネオジウム磁石で物質(F)が固定化された磁性シリカ粒子(BF)を集磁後、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(F)含有リン酸緩衝液を除去した。次いで、得られた磁性シリカ粒子(BF)を1重量%のブロックエース(DSファーマバイオメディカル(株)製)含有の0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に40mg加え、25℃で12時間浸漬させた。これにより、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(F)を固定化した磁性シリカ粒子(BF)を含有する固相担体試薬(E)を得て、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0063】
標識試薬(A1)の作製:
抗プロトロンビンモノクローナル抗体(コスモ・バイオ(株)製)、西洋ワサビ由来POD(東洋紡(株)製)を用い、文献(エス・ヨシタケ、エム・イマガワ、イー・イシカワ、エトール;ジェイ.バイオケム,Vol.92,1982,1413-1424)に記載の方法を用いて、PODで標識された抗プロトロンビンモノクローナル抗体(FC)を調製した。これを、(D)として0.95重量%ジギトニン(ナカライテスク(株)製)含有の0.02Mリン酸緩衝液で、POD標識抗プロトロンビンモノクローナル抗体(FC)濃度として2.0μg/mLとなるように希釈し、標識試薬(A1)を調製した。
標識試薬(A1)は、4℃で7日間保存したものと、35℃で7日間保存したものをそれぞれ準備した。
なお、標識試薬(A1)中のジギトニンの含有量は、標識試薬(A1)の重量を基準として、0.95重量%である。
【0064】
免疫反応緩衝液の作製:
ウシ血清アルブミン(Boval Campany製)を0.1重量%、エマルミンL-90-S(三洋化成工業(株)製)を1重量%、塩化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)を0.85重量%含有した0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保管した。
【0065】
ルミノール発光試薬(K)の作製:
ルミノールのナトリウム塩[シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製]0.7g及び4-(シアノメチルチオ)フェノール0.1gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(10mM、pH8.6)を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合してルミノール発光試薬(K)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0066】
過酸化水素液(L)の作製:
過酸化水素[富士フィルム和光純薬(株)製、試薬特級、濃度30重量%]6.6gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。脱イオン水を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して過酸化水素液(L)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0067】
<実施例2~12>
実施例1の「標識試薬(A1)の作製」において、0.02Mリン酸緩衝液中の化合物(D)の種類及び濃度を表1に記載のものとする以外は実施例1と同様にして標識試薬(A2)~(A12)を作製し、実施例1と同じ固相担体試薬(E)、免疫反応緩衝液、ルミノール発光試薬(K)及び過酸化水素液(L)と組み合わせて免疫測定用キット(S2)~(S12)とした。
【0068】
<比較例1~3>
実施例1の「標識試薬(A1)の作製」において、0.02Mリン酸緩衝液中の化合物(D)の種類及び濃度を表1に記載のものとする以外は実施例1と同様にして標識試薬(A’1)~(A’3)を作製し、実施例1と同じ固相担体試薬(E)、免疫反応緩衝液、ルミノール発光試薬(K)及び過酸化水素液(L)と組み合わせて免疫測定用キット(S’1)~(S’3)とした。
【0069】
なお、表1中、各成分は下記を用いた。
ジギトニン:富士フイルム和光純薬(株)製
ククルビタシンB:東京化成工業(株)製
ウアバイン:富士フイルム和光純薬(株)製
サポニン:富士フイルム和光純薬(株)製
【0070】
以下の方法により免疫測定用試薬(S1)~(S12)及び(S’1)~(S’3)を用いて、免疫測定を行い、免疫測定用キットの保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<実施例13~24及び比較例4~6>
<免疫測定方法>
○工程(1)
実施例及び比較例で得た免疫測定用キットの固相担体試薬(E)をそれぞれ0.025mL、試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、免疫反応緩衝液0.2mLと、測定対象物質(F1)であるPIVKA-II抗原の濃度が3000mAU/mLになるように調製したプール血清0.025mLとを試験管に入れて混合、試験管中で37℃3分間反応させ、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体固定化磁性シリカ粒子上に抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(F)/PIVKA―II抗原(F1)の複合体を形成させた。反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を3回行った。
【0072】
○工程(2)
続いて、それぞれの免疫測定用キットの標識試薬0.1mL[4℃で7日間保存した標識試薬又は35℃で7日間保存した標識試薬をそれぞれ使用]をそれぞれ試験管に注入し、試験管中で37℃3分間反応させ、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体固定化磁性シリカ粒子上に抗PIVKA-II抗体(F)/PIVKA―II抗原(F1)/POD標識抗プロトロンビンモノクローナル抗体(FC)の複合体を形成させた。反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性シリカ粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性シリカ粒子を分散させて集磁後、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0073】
○化学発光・検出工程
最後に、ルミノール発光試薬(K)0.1mLと過酸化水素液(L)0.1mLとを同時に加え、37℃で発光反応させ、ルミノール発光試薬(K)及び過酸化水素液(L)を添加後40~45秒の一秒当たりの平均発光量をルミノメーター[ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」]で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
<保存安定性の評価方法>
保存安定性については、以下の基準で判定した。
○:(35℃で7日間保存した標識試薬(A)を用いた場合の平均発光量/4℃で7日間保存した標識試薬(A)を用いた場合の平均発光量)×100=90%~110%
×:(35℃で7日間保存した標識試薬(A)を用いた場合の平均発光量/4℃で7日間保存した標識試薬(A)を用いた場合の平均発光量)×100<90%、又は>110%
なお、測定濃度/実際の測定濃度が100%に近いほど、保存安定性が高いことを意味する。
【0075】
実施例13~24及び比較例4~6の免疫測定方法で評価した保存安定性の結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の免疫測定用キット及び免疫測定方法は、保存安定性に優れることから、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法及び化学発光免疫測定法等の臨床検査に幅広く適用できる。