(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156281
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】密封容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B65D43/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059881
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙司
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB11
3E084DC03
3E084GA08
3E084HA04
3E084HB04
3E084HB09
3E084HC02
3E084HC03
3E084HD04
3E084JA05
3E084LB02
3E084LD07
3E084LD21
(57)【要約】
【課題】容器内の圧力に応じて、容器本体と蓋との間を封止する封止部材にかかる与圧を調整することができる密封容器を提供すること。
【解決手段】密封容器1は、上方に開口する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の上部開口側の端部にはめ込まれる筒部6を有し、容器本体2の上部開口を開閉可能に閉じる蓋3と、筒部6に設けられ、筒部6と容器本体2との間の隙間を気密に封止する環状の封止部材4と、を備える。容器本体2における封止部材4が接触する接触面5は、テーパ面である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の上部開口側の端部にはめ込まれる筒部を有し、前記容器本体の上部開口を開閉可能に閉じる蓋と、
前記筒部に設けられ、前記筒部と前記容器本体との間の隙間を気密に封止する環状の封止部材と、を備え、
前記容器本体における前記封止部材が接触する接触面は、テーパ面である、密封容器。
【請求項2】
前記筒部における前記接触面と対向する対向面は、前記接触面の傾斜方向とは逆方向に傾斜するテーパ面である、請求項1に記載の密封容器。
【請求項3】
前記封止部材は、弾性変形しない部材である、請求項1又は2に記載の密封容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電子顕微鏡用試料などの酸化を防止する試料保存用真空容器が開示されている。この真空容器は、開口を蓋で閉じる際、蓋によってOリングが上方から容器に押し付けられる。これにより、Oリングが押し潰されるように弾性変形して、容器と蓋との間の隙間が封止される。
【0003】
特許文献1に開示された真空容器の場合、上方からOリングが押し潰されるため、Oリングにはそれを必要以上に押し潰す与圧がかかる。その状態で真空容器内の圧力が変化すると、Oリングは、与圧がかかった状態の位置で維持されつつ、弾性変形する。このようにして、特許文献1に開示された真空容器は、内部の圧力が変化した際に、Oリングによって密封される。従って、特許文献1に開示された真空容器では、内部の圧力が変化しても、Oリングには必要以上に与圧がかかったままである。そこで、真空容器内の圧力が変化した際に、Oリングに必要以上の与圧がかからないようにすることが望まれている。
【0004】
また、上述したように開口がOリングによって密封される容器において、中空状の容器本体に蓋がねじ込まれて固定される構成が知られている。この場合、容器本体の外周面にはねじが形成されており、短円筒状の蓋の内周面がねじ孔とされている。従って、容器本体に蓋をねじ込んで取り付けることができる。このような構成の場合、蓋が最後までねじ込まれることで、蓋によってOリングが上方から容器本体に押し付けられ、これにより、Oリングが押し潰されるように弾性変形して、容器本体と蓋との間の隙間が封止される。
【0005】
このような構成の場合、蓋のねじ込みが緩いと、Oリングに必要な与圧がかかっておらず、シールされていない状態となっている。その状態で、例えば真空容器内を減圧しても、真空容器が密封されていないので、適切に減圧できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容器内の圧力に応じて、容器本体と蓋との間を封止する封止部材にかかる与圧を調整することができる密封容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、上方に開口する有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部開口側の端部にはめ込まれる筒部を有し、前記容器本体の上部開口を開閉可能に閉じる蓋と、前記筒部に設けられ、前記筒部と前記容器本体との間の隙間を気密に封止する環状の封止部材と、を備える。前記容器本体における前記封止部材が接触する接触面は、テーパ面である。
【0009】
(2)本発明は、上記(1)において、前記筒部における前記接触面と対向する対向面は、前記接触面の傾斜方向とは逆方向に傾斜するテーパ面であってもよい。
【0010】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)において、前記封止部材は、弾性変形しない部材であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器内の圧力に応じて、容器本体と蓋との間を封止する封止部材にかかる与圧を調整することができる密封容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る密封容器を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の密封容器の主要部を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の密封容器の変形例を示す縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る密封容器を示す縦断面図である。本実施形態の密封容器1は、上方に開口する有底筒状の容器本体2と、容器本体2の上部開口を開閉可能に閉じる蓋3と、容器本体2と蓋3との間の隙間を封止する環状の封止部材4とを備える。
【0015】
容器本体2は、密封容器1の底壁及び周側壁を構成する部材である。容器本体2は、上方にのみ開口する有底円筒状である。容器本体2において、後述する封止部材4が接触する接触面5は、テーパ面である。本実施形態では、容器本体2の上部開口側の端部の内周面が接触面5である。この接触面5は、上方に行くに従って拡径するテーパ状である。
【0016】
蓋3は、下方に開口する短円筒状である。蓋3は、容器本体2の上部開口側の端部にはめ込まれる筒部6を有する。筒部6は、軸方向が上下方向に沿う円筒状で、蓋3の中央部下面に下方に延出して一体形成されている。筒部6の外径は、蓋3の周側壁の内径よりも小さい。そのため、筒部6の外周面と蓋3の周側壁の内周面との間には、円筒状隙間7が形成される。筒部6の外周面には、径方向外側に開口する溝8が周方向に沿って形成される。
【0017】
蓋3は、容器本体2の上部開口を閉じるように、容器本体2に取り付けられる。具体的には、蓋3の下面が容器本体2の周側壁の上端面に当接するまで、容器本体2の周側壁の上端部が円筒状隙間7に差し込まれる。この状態において、蓋3の筒部6は、容器本体2の上部開口内に差し込まれている。
【0018】
蓋3の筒部6が容器本体2内に差し込まれている場合、容器本体2の接触面5がテーパ面であるので、容器本体2の接触面5と筒部6に形成された溝8の底面9との間の距離が上下位置で異なる。本実施形態では、接触面5が上方に行くに従って拡径するテーパ状であるので、容器本体2の接触面5と溝8の底面9との間の距離は、下方に行くにしたがって小さくなる。
【0019】
封止部材4は、縦断面円形状のOリングであり、弾性変形可能な部材である。封止部材4は、蓋3の筒部6に設けられる。図示例では、封止部材4は、蓋3の筒部6の溝8に装着される。封止部材4が溝8に装着された状態で、前述したように容器本体2の上部開口が蓋3によって閉じられると、筒部6と容器本体2との間の隙間が封止部材4によって気密に封止される。図示例では、筒部6が容器本体2の上部開口内に差し込まれる構成であるので、封止部材4は、筒部6の外周面と容器本体2の周側壁の内周面との間の隙間を封止する。筒部6と容器本体2との間の隙間が封止部材4によって封止された状態では、封止部材4は、容器本体2の接触面5に接触すると共に、筒部6の溝8の底面9に接触している。なお、封止部材4の直径は、溝8の幅よりも小さい。
【0020】
筒部6と容器本体2との間の隙間を封止部材4により封止することで、容器1内が密封される。本実施形態では、その密封状態において、容器1内の気体を外部に吸引排出して、容器1内が減圧される。容器1内の減圧は、図示しない真空ポンプなどの減圧手段によってなされる。減圧手段は、図示しない排気路を介して、密封容器1に接続される。排気路は、蓋3に設けられるボール弁10に接続される。ボール弁10は、排気路を開閉する弁である。従って、ボール弁10を開くとともに減圧手段を作動させることで、排気路を介して容器1内の気体を外部へ吸引排出して、容器1内を減圧することができる。容器1内の圧力は、蓋3に設けられる負圧計11により検出される。
【0021】
図2は、
図1の密封容器の主要部を示す縦断面図である。具体的には、
図2は、容器本体2と蓋3との封止部分を示す概略拡大縦断面図である。
図2の(a)、(b)、(c)及び(d)はそれぞれ、容器1内の圧力が異なる。
図2の(a)、(b)、(c)及び(d)の順に、容器1内の圧力が低くなる。
【0022】
図2に示すように、容器1内の圧力を低下させることで、封止部材4が下方に移動する。従って、容器1内の圧力が異なると、封止部材4の上下位置が異なる。すなわち、封止部材4の接触面5への接触位置が上下に異なる。この場合、前述したように容器本体2の接触面5と溝8の底面9との間の距離が異なるので、封止部材4にかかる与圧が異なる。このように、本実施形態の密封容器1によれば、容器1内の圧力が変化した際に、封止部材4にかかる与圧を調整することができる。よって、容器1内の圧力をある一定の圧力にして長期間放置すると、容器1内の圧力が抜けるなどして容器1内の圧力が変化するが、その変化に対応して封止部材4が移動することで、封止部材4にかかる与圧を調整することができる。なお、接触面5の傾斜角度は、予め、容器1内の圧力に応じた与圧が封止部材4にかかるように形成される。従って、容器1内の減圧状態に応じて、最適な与圧を封止部材4にかけることができる。
【0023】
また、本実施形態の密封容器1の場合、従来のような蓋を容器本体にねじ込む構成とは異なり、ねじ構造を必要としない。従って、本実施形態の密封容器1によれば、ねじ構造の分だけ小型化することができる。さらに、本実施形態の密封容器1の場合、容器本体2の接触面5がテーパ面であるので、接触面が垂直の場合と比較して、容器本体2に蓋3を取り付ける際に、封止部材4と接触面5との接触による封止部材4のねじれを抑制できる。しかも、本実施形態の場合、多少のねじれが生じても、容器1内を減圧することによって封止部材4が移動するので、そのねじれを解消することができる。
【0024】
図3は、本発明の密封容器の変形例を示す縦断面である。この図では、容器本体2と蓋3との封止部分のみを示している。なお、本変形例では、その特徴部分を説明するものとし、上記実施形態で説明した事項については、説明を省略する。
【0025】
本変形例の密封容器1aでは、筒部6における接触面5と対向する対向面がテーパ面である。本変形例では、溝8の底面9が対向面である。この対向面9は、容器本体2の接触面5の傾斜方向とは逆方向に傾斜するテーパ面である。本変形例では、筒部6の対向面9は、上方に行くに従って縮径するテーパ状である。
【0026】
本変形例の場合も、容器本体2に蓋3が取り付けられることで、容器本体2と筒部6との間の隙間が封止部材4によって封止される。この際、容器本体2の接触面5に封止部材4の外周面が接触するとともに、筒部6の対向面9に封止部材4の内周面が接触した状態で、容器本体2の内周面と筒部6の外周面との間の隙間が封止部材4により封止される。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0028】
例えば上記実施形態では、容器本体2の接触面5は、上方に行くにしたがって拡径するテーパ面とされたが、これとは逆に、上方に行くに従って縮径するテーパ面であってもよい。この場合、筒部6の対向面9は、上記変形例とは逆に、上方に行くにしたがって拡径するテーパ面とされる。このような構成では、密封容器は、減圧した空間内で使用される。
また上記実施形態では、封止部材4は、弾性変形可能なOリングとされたが、弾性変形しない部材であってもよい。例えば、封止部材は、弾性変形しない金属製であってもよい。この場合、封止部材は、容器内の圧力に応じて、より移動し易い。
また上記変形例では、筒部6の対向面9の縦断面は、直線のテーパ形状とされたが、曲線のテーパ形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1,1a 密封容器
2 容器本体
3 蓋
4 封止部材
5 接触面
6 筒部
9 対向面