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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156282
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車体側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221006BHJP
   B62D 25/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B62D25/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059882
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竿尾 周太郎
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB13
3D203BB56
3D203BC10
3D203CA55
3D203CA65
(57)【要約】
【課題】セパレータと車体壁との隙間からの液状の発泡剤の漏れを抑制できる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造は、第1セパレータと、注入口とを有する。第1セパレータは、中空構造の上方に配置された上部材と、中空構造の下方に配置された下部材と、上部材と下部材との間に形成された第1中間部とを備える。注入口は、第1中間部に連通し、第1車体壁に形成されている。第1セパレータは、ガイド部を有する。ガイド部は、下部材に形成され、注入口に向かい合い、注入口に注入される発泡剤を第1中間部と第1中間部の外側とに誘導する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車体壁が結合して形成された中空構造と、
前記中空構造の上方に配置された上部材と、前記中空構造の下方に配置された下部材と、前記上部材と前記下部材との間に形成された第1中間部とを備える第1セパレータと、
前記第1中間部に連通し、前記複数の車体壁のうち車内側に位置する第1車体壁に形成された注入口と、
を備え、
前記第1セパレータは、
前記下部材に形成され、前記注入口に向かい合い、前記注入口に注入される液状の発泡剤を誘導するガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記発泡剤を、前記下部材から前記上部材に向かう方向、かつ、前記第1中間部の外側に向く方向に誘導する、
車体側部構造。
【請求項2】
前記下部材は、前記上部材に面するガイド面を有し、
前記ガイド部は、前記下部材の前記ガイド面の上方に向けて突出する傾斜面、または、前記下部材の前記ガイド面に形成された曲面である、
請求項1の車体側部構造。
【請求項3】
前記第1セパレータは、
前記上部材と前記下部材とを連結する連結部とを有するセパレータ組立体で構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記複数の車体壁の一つであって、前記第1車体壁に結合された第2車体壁と、
前記第2車体壁に前記第1セパレータを固定する固定部材と、
を備える、
請求項3の車体側部構造。
【請求項5】
前記下部材は、周縁部を有し、
前記下部材の前記周縁部に、シール材が配置されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記複数の車体壁の一つであって、前記第1車体壁に結合された第2車体壁を有し、
前記第1セパレータは、前記上部材、前記下部材、及び前記上部材と前記下部材とを連結する連結部で囲まれたセパレータ開口を有し、
前記第2車体壁は、前記第1セパレータが固定される第1隔壁と、前記第1隔壁に形成された第1連通口とを有し、
前記第1連通口の位置は、前記セパレータ開口の位置に対応しており、
前記発泡剤は、前記第1中間部及び前記第1連通口を通じて、前記第1中間部の隣りに位置する第1充填空間に充填される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記第2車体壁は、前記第1隔壁とは異なる第2隔壁と、前記第2隔壁に形成された第2連通口と、前記第1充填空間の隣りに位置して前記第2隔壁に面する第2充填空間とを有し、
前記発泡剤は、前記第2充填空間に充填される、
請求項6の車体側部構造。
【請求項8】
前記複数の車体壁は、リアホイールハウス、リアホイールハウス補強部材、及びリアホイールハウスアウタパネルから構成され、
前記リアホイールハウス及び前記リアホイールハウス補強部材によって、クランク状断面を有する第1発泡剤収容部が形成され、
前記リアホイールハウス補強部材及び前記リアホイールハウスアウタパネルによって、矩形断面を有する第2発泡剤収容部が形成され、
前記第1発泡剤収容部には、前記第1セパレータと、前記第1セパレータとは異なる第2セパレータとが配置され、
前記第2発泡剤収容部には、前記第1セパレータとは異なる第3セパレータが配置されており、
前記第1発泡剤収容部及び前記第2発泡剤収容部は、前記発泡剤で充填されている、
請求項1の車体側部構造。
【請求項9】
前記リアホイールハウス補強部材は、前記リアホイールハウスに接合されるフランジを有し、
前記フランジは、前記注入口に相当する位置に形成された切り欠きを有する、
請求項8の車体側部構造。
【請求項10】
前記第1セパレータは、前記上部材と前記下部材とを連結する連結部とを有するセパレータ組立体で構成されており、
前記セパレータ組立体は、前記ガイド部の下方に位置する固定部材によって、前記リアホイールハウス補強部材に固定されている、
請求項9の車体側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造として、ホイールハウスの前方に位置する空間の内部に、ウレタン等の発泡剤が充填された構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この構造においては、路面側からの振動・騒音の伝達が抑制されており、車体の強度・剛性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-175823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡剤をホイールハウスの空間に充填する際には、ホイールハウスの内部と外部とを連通する注入口を通じて、液状の発泡剤(発泡材料、スプレーフォーム)を高圧で噴射することにより、ホイールハウスの空間の内部に発泡剤が充填される。充填後の発泡剤は、硬化する。
【0005】
しかしながら、液状の発泡剤が高圧で空間の内部に注入される際、発泡剤が空間の内部の壁面に当たり飛散し、ホイールハウスの内部に設けられたセパレータ(バルクヘッド)と車体壁との間の隙間から発泡剤が漏れるという問題がある。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、セパレータと車体壁との隙間からの液状の発泡剤の漏れを抑制できる車体側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車体側部構造(例えば、実施形態の車体側部構造10)は、複数の車体壁が結合して形成された中空構造(例えば、実施形態の中空構造50)と、前記中空構造の上方に配置された上部材(例えば、実施形態の上部材40U)と、前記中空構造の下方に配置された下部材(例えば、実施形態の下部材40L)と、前記上部材と前記下部材との間に形成された第1中間部(例えば、実施形態の第1中間部40R)とを備える第1セパレータ(例えば、実施形態のセパレータ40)と、前記第1中間部に連通し、前記複数の車体壁のうち車内側に位置する第1車体壁(例えば、実施形態のリアホイールハウス13)に形成された注入口(例えば、実施形態の注入口52)と、を備える。前記第1セパレータは、前記下部材に形成され、前記注入口に向かい合い、前記注入口に注入される液状の発泡剤(例えば、実施形態の発泡剤55)を誘導するガイド部(例えば、実施形態のガイド部40G)を有する。前記ガイド部は、前記発泡剤を、前記下部材から前記上部材に向かう方向、かつ、前記第1中間部の外側に向く方向に誘導する。
【0008】
この構成によれば、ガイド部は、注入口に注入された液状の発泡剤を、下部材から上部材に向かう方向、かつ、第1中間部の外側に向く方向に誘導する。これによって、車体壁と下部材との間の隙間から液状の発泡剤が垂れ落ちることを抑制できる。
さらに、液状の発泡剤が注入される注入口の位置を制限されることがないため、車体側部構造の設計の自由度を向上させることができる。発泡剤が充填される発泡剤充填部(発泡剤収容部)の形状が複雑になった場合であっても、液状の発泡剤の流路を形成することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る車体側部構造においては、前記下部材は、前記上部材に面するガイド面(例えば、実施形態のガイド面40LG)を有する。前記ガイド部は、前記下部材の前記ガイド面の上方に向けて突出する傾斜面(例えば、実施形態の傾斜面40I)、または、前記下部材の前記ガイド面に形成された曲面(例えば、実施形態の曲面40B)である。
【0010】
この構成によれば、下部材のガイド面にガイド部を容易に形成できる。
【0011】
本発明の一態様に係る車体側部構造においては、前記第1セパレータは、前記上部材と前記下部材とを連結する連結部(例えば、実施形態の連結部40C)とを有するセパレータ組立体で構成されている。
【0012】
この構成によれば、上部材、下部材、及び連結部を一体に形成することができる。このため、セパレータ組立体の生産性の向上に寄与する。
【0013】
本発明の一態様に係る車体側部構造は、前記複数の車体壁の一つであって、前記第1車体壁に結合された第2車体壁(例えば、実施形態のリアホイールハウス補強部材16)と、前記第2車体壁に前記第1セパレータを固定する固定部材(例えば、実施形態の固定部材43)と、を備えている。
【0014】
この構成によれば、第1セパレータを第2車体壁に容易に取り付けることができる。このため、第1セパレータを第2車体壁に取り付ける作業効率の向上に寄与する。
【0015】
本発明の一態様に係る車体側部構造においては、前記下部材は、周縁部(例えば、実施形態の周縁部40LE)を有する。前記下部材の前記周縁部に、シール材(例えば、実施形態のシール材45)が配置されている。
【0016】
この構成によれば、シール材を配置したことによって、下部材と車体壁との間の隙間から液状の発泡剤が垂れ落ちることを抑制できる。
【0017】
本発明の一態様に係る車体側部構は、前記複数の車体壁の一つであって、前記第1車体壁に結合された第2車体壁(例えば、実施形態のリアホイールハウス補強部材16)を有する。前記第1セパレータは、前記上部材、前記下部材、及び前記上部材と前記下部材とを連結する連結部で囲まれたセパレータ開口(例えば、実施形態のセパレータ開口40A)を有する。前記第2車体壁は、前記第1セパレータが固定される第1隔壁(例えば、実施形態の第1隔壁16F)と、前記第1隔壁に形成された第1連通口(例えば、実施形態の第1連通口16FA)とを有する。前記第1連通口の位置は、前記セパレータ開口の位置に対応している。前記発泡剤は、前記第1中間部及び前記第1連通口を通じて、前記第1中間部の隣りに位置する第1充填空間(例えば、実施形態の第1充填空間16RS)に充填される。
【0018】
この構成によれば、液状の発泡剤は、第1中間部、セパレータ開口、第1連通口、及び第1充填空間の順に流動する。このため、液状の発泡剤を第1充填空間に充填することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る車体側部構においては、前記第2車体壁は、前記第1隔壁とは異なる第2隔壁(例えば、実施形態の第2隔壁16S)と、前記第2隔壁に形成された第2連通口(例えば、実施形態の第2連通口16SA)と、前記第1充填空間の隣りに位置して前記第2隔壁に面する第2充填空間(例えば、実施形態の第2充填空間16RT)とを有する。前記発泡剤は、前記第2充填空間に充填される。
【0020】
この構成によれば、第2充填空間に発泡剤を充填することができるので、車体側部構造の外部からの騒音が侵入することを抑制できる。さらに、第2充填空間に発泡剤を充填することによって、車体の剛性向上に寄与する。
【0021】
本発明の一態様に係る車体側部構においては、前記複数の車体壁は、リアホイールハウス(例えば、実施形態のリアホイールハウス13)、リアホイールハウス補強部材(例えば、実施形態のリアホイールハウス補強部材16)、及びリアホイールハウスアウタパネル(例えば、実施形態のリアホイールハウスアウタパネル部17c)から構成されている。前記リアホイールハウス及び前記リアホイールハウス補強部材によって、クランク状断面を有する第1発泡剤収容部(例えば、実施形態の第1発泡剤収容部53)が形成されている。前記リアホイールハウス補強部材及び前記リアホイールハウスアウタパネルによって、矩形断面を有する第2発泡剤収容部(例えば、実施形態の第2発泡剤収容部54)が形成されている。前記第1発泡剤収容部には、前記第1セパレータと、前記第1セパレータとは異なる第2セパレータ(例えば、実施形態の第2セパレータ40S)とが配置されている。前記第2発泡剤収容部には、前記第1セパレータとは異なる第3セパレータ(例えば、実施形態の第3セパレータ40T)が配置されている。前記第1発泡剤収容部及び前記第2発泡剤収容部は、前記発泡剤で充填される。
【0022】
この構成によれば、第1発泡剤収容部及び第2発泡剤収容部に発泡剤を充填することができるので、車体側部構造の外部からの騒音が侵入することを抑制できる。さらに、第2充填空間に発泡剤を充填することによって、車体の剛性向上に寄与する。
【0023】
本発明の一態様に係る車体側部構においては、前記リアホイールハウス補強部材は、前記リアホイールハウスに接合されるフランジ(例えば、実施形態のフランジ16L)を有する。前記フランジは、前記注入口に相当する位置に切り欠き(例えば、実施形態の切り欠き16LC)を有する。
【0024】
この構成によれば、第1発泡剤収容部が狭い場合でも、リアホイールハウスに注入口を形成することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る車体側部構においては、前記第1セパレータは、前記上部材と前記下部材とを連結する連結部とを有するセパレータ組立体で構成されている。前記セパレータ組立体は、前記ガイド部の下方に位置する固定部材(例えば、実施形態の固定部材43)によって、前記リアホイールハウス補強部材に固定されている。
【0026】
この構成によれば、セパレータ組立体である第1セパレータの第1中間部に液状の発泡剤を注入した際において、ガイド部によって液状の発泡剤の流動方向が偏向され、発泡剤の圧力がガイド部に加わる。この場合であっても、ガイド部の下方に固定部材が位置し、固定部材が第1セパレータを固定するので、ガイド部によって規制される発泡剤の流動方向がずれてしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様に係る車体側部構造によれば、セパレータと車体壁との隙間からの液状の発泡剤の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る車体側部構造を示す分解斜視図である。
図2図1のII部を拡大した斜視図である。
図3図2のIII部を拡大した斜視図である。
図4図2に示すセパレータを示す斜視図である。
図5】セパレータを示す斜視図であって、図4におけるA-A線に沿う図である。
図6】セパレータを示す斜視図であって、図4におけるB-B線に沿う図である。
図7図4に対応する図であって、セパレータの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る車体側部構造を図面に基づいて説明する。
図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。車体側部構造は、略左右対称の構成であり、以下、左側構成について説明して右側構成の説明を省略する。
【0030】
(車体側部構造10)
図1図2に示すように、車体側部構造10は、サイドシル12と、リアホイールハウス13(第1車体壁)と、クオータピラー14と、ルーフサイドレール15と、リアホイールハウス補強部材16(第2車体壁)、サイドパネルアウタ17と、を備えている。リアホイールハウス補強部材16は、後述するセパレータ40を有する。
【0031】
また、車体側部構造10において、車体側部11にはドア開口部18が形成されている。ドア開口部18のうちコーナ部22は、サイドシル12とリアホイールハウス13(具体的には、後述するインナパネル前部31)とにより、側面視V字状に形成されている。後述するように、リアホイールハウス13は、リアホイールハウス13の車内側(車内の内側空間に近い位置)に位置する内側壁31b(第1車体壁)を有する。内側壁31bは、後述する注入口52が形成される面を有する。
【0032】
クオータピラー14は、リアホイールハウス13の上部13aからルーフサイドレール15へ向けて車体前方で、かつ上方へ向けて傾斜状に延びている。ルーフサイドレール15は、クオータピラー14の上端部14aに接合され、車体前後方向へ延びている。
サイドパネルアウタ17は、車幅方向外側の意匠面を形成するパネルである。サイドパネルアウタ17は、サイドシルアウタパネル部17a(サイドシルアウタパネル)と、リアホイールアウタ部17bと、リアホイールハウスアウタパネル部17c(リアホイールハウスアウタパネル)を有する。
【0033】
リアホイールハウス13は、リアタイヤ24の上方を覆うように形成されている。リアホイールハウス13は、インナパネル26と、リアホイールハウスインナ27と、を備えている。インナパネル26は、リアタイヤ24の上方外側を覆うように形成されている。インナパネル26は、ドア開口部18の後傾斜部を形成するインナパネル前部31を有する。インナパネル前部31は、サイドシル12の後端部12aに接合されている。
【0034】
(リアホイールハウス補強部材16)
図2に示すように、リアホイールハウス補強部材16は、インナパネル前部31に結合されている。リアホイールハウス補強部材16は、車体前方で、かつ、斜め上からインナパネル前部31に重ねられている。これにより、インナパネル前部31とリアホイールハウス補強部材16との間に空間51(図3参照)が形成されている。
【0035】
リアホイールハウス補強部材16は、前端部16aを有する。前端部16aは、サイドシル12の後端部12aに結合されている。リアホイールハウス補強部材16は、インナパネル前部31に沿って車体後上方へ向けて傾斜状に延びている。リアホイールハウス補強部材16は、アーチ補強頂部42と、アーチ補強外フランジ44と、を有する。アーチ補強頂部42は、インナパネル前部31の前端部31aからクオータピラー14の下端部14b(図2参照)まで車体後上方へ向けて傾斜状に延びている。
【0036】
リアホイールハウス補強部材16は、リアホイールハウス13の内側壁31bに接合されるフランジ16Lを有する。内側壁31bには、後述する注入口52が形成されている。フランジ16Lは、注入口52に相当する位置に切り欠き16LCを有する。
【0037】
図1に示すように、サイドパネルアウタ17(車体壁)がサイドシル12及びリアホイールハウス13(車体壁)に結合されることで、車体側部構造10には図2に示す中空構造50が形成されている。
【0038】
(注入口52)
注入口52は、リアホイールハウス13の内側壁31bに形成されており、後述するセパレータ40の第1中間部40Rに連通している。
注入口52は、液状の発泡剤55(充填剤)が中空構造50の内部に供給される際に用いられる。注入口52を通じて中空構造50の内部に発泡剤55が充填された後には、不図示の孔塞ぎ部材によって注入口52は閉塞される。発泡剤55としては、例えば、硬質ウレタンフォーム、スプレーフォーム等の公知の発泡材料が採用される。
【0039】
(セパレータ40)
次に、図3図6を参照し、セパレータ40の構造について具体的に説明する。
図3図4に示すように、セパレータ40は、リアホイールハウス補強部材16に結合されている。セパレータ40は、固化される前の液状の発泡剤55の流動を規制する機能を有する。セパレータ40(第1セパレータ)は、中空構造50の上方に配置された上部材40Uと、中空構造50の下方に配置された下部材40Lと、上部材40Uと下部材40Lとの間に形成された第1中間部40Rとを備える。上部材40Uと下部材40Lとは互いに対向している。セパレータ40を構成する材料としては、公知の樹脂材料が採用される。
【0040】
さらに、セパレータ40は、上部材40Uと下部材40Lとを連結する連結部40Cを有する。換言すると、セパレータ40は、上部材40U、下部材40L、及び連結部40Cで構成されたセパレータ組立体である。
セパレータ40(セパレータ組立体)は、固定部材43によってリアホイールハウス補強部材16に固定されている。セパレータ組立体は、射出成型法等の公知の成型法によって形成されている。
【0041】
固定部材43は、ガイド部40Gの下方に位置する。固定部材43は、例えば、クリップ等の部材である。固定部材43によって、リアホイールハウス補強部材16に対するセパレータ40の取り付けが容易になっている。
下部材40Lは、周縁部40LEを有する。下部材40Lの周縁部40LEには、シール材45が配置されている。シール材45は、例えば、加熱発泡する発泡剤である。
【0042】
(ガイド部45G)
図4に示すように、セパレータ40は、ガイド部40Gを有する。ガイド部40Gは、下部材40Lに形成されており、注入口52に向かい合っている。ガイド部40Gは、注入口52に注入される液状の発泡剤55の流動方向を規定する。
具体的に、ガイド部45Gは、液状の発泡剤55を、下部材40Lから上部材40Uに向かう方向、かつ、第1中間部40Rの外側に向く方向に誘導する。ここで、「第1中間部40Rの外側」とは、空間51である。
セパレータ40の下部材40Lは、上部材40Uに面するガイド面40LGを有する。ガイド部40Gは、下部材40Lのガイド面40LGの上方に向けて突出する傾斜面40Iである。
【0043】
セパレータ40は、連結部40C、上部材40U、及び下部材40Lで囲まれたセパレータ開口40Aを有する。
リアホイールハウス補強部材16は、セパレータ40が固定される第1隔壁16Fと、第1隔壁16Fに形成された第1連通口16FAとを有する。第1連通口16FAの位置は、セパレータ開口40Aの位置に対応している。
【0044】
発泡剤55は、第1中間部40R及び第1連通口16FAを通じて、第1中間部40Rの隣りに位置する第1充填空間16RSに充填される。つまり、第1充填空間16RSは、空間51に相当する。換言すると、第1中間部40Rと第1充填空間16RSとの間にリアホイールハウス補強部材16が配置されている。
【0045】
リアホイールハウス補強部材16は、第1隔壁16Fとは異なる第2隔壁16Sを有する。第2隔壁16Sは、第1隔壁16Fに対して直交する方向に沿う隔壁である。リアホイールハウス補強部材16の第2隔壁16Sには、第2連通口16SAが形成されている。第1充填空間16RSの隣りには第2充填空間16RTが位置する。第2充填空間16RTは、第2隔壁16Sに面する領域である。第2連通口16SAを通じて、第1充填空間16RSは、第2充填空間16RTに連通している。第2充填空間16RTは、例えば、ピラーを形成する発泡剤収容部である。
【0046】
このような構造においては、注入口52から中空構造50に供給された発泡剤55は、第1中間部40R、第1連通口16FA、及び第2連通口16SAを通じて、第2充填空間16RTに充填される。
【0047】
図6に示すように、サイドシルアウタパネル部17a及びリアホイールハウス補強部材16によって、クランク状断面を有する第1発泡剤収容部53が形成されている。また、リアホイールハウス補強部材16及びリアホイールハウスアウタパネル部17cによって、矩形断面を有する第2発泡剤収容部54が形成されている。
【0048】
図5図6に示すように、第1発泡剤収容部53には、セパレータ40と、セパレータ40(第1セパレータ)とは異なる第2セパレータ40Sとが配置されている。第2発泡剤収容部54には、セパレータ40(第1セパレータ)とは異なる第3セパレータ40Tが配置されている。第1発泡剤収容部53及び第2発泡剤収容部54は、発泡剤55で充填される。
【0049】
図6に示すように、第2セパレータ40Sは、中空構造50の上方に配置された上部材40SUと、中空構造50の下方に配置された下部材40SLと、上部材40SUと下部材40SLとの間に形成された中間部40SRとを備える。上部材40SUと下部材40SLとは互いに対向している。中間部40SRは、第2充填空間16RTに相当する。さらに、第2セパレータ40Sは、上部材40SUと下部材40SLとを連結する連結部40SCを有する。換言すると、第2セパレータ40Sは、上部材40SU、下部材40SL、及び連結部40SCで構成されたセパレータ組立体である。
【0050】
図5に示すように、第3セパレータ40Tは、中空構造50の上方に配置された上部材40TUと、中空構造50の下方に配置された下部材40TLと、上部材40TUと下部材40TLとの間に形成された中間部40TRとを備える。上部材40TUと下部材40TLとは互いに対向している。中間部40TRは、第1充填空間16RSに相当する。さらに、第3セパレータ40Tは、上部材40TUと下部材40TLとを連結する連結部40TCを有する。換言すると、第3セパレータ40Tは、上部材40TU、下部材40TL、及び連結部40TCで構成されたセパレータ組立体である。
第2セパレータ40S及び第3セパレータ40Tは、例えば、上述したセパレータ40と同様の材料を用いて形成される。
【0051】
次に、上述した構造を有する車体側部構造10の効果を説明する。
車体側部構造10において、液状の発泡剤55が注入口52に注入されると、液状の発泡剤55の流動方向は、ガイド部40Gを備えるセパレータ40によって規制される。すなわち、液状の発泡剤55は、ガイド部45Gに衝突し、上部材40Uに衝突し、さらに、セパレータ開口40Aに向けて流れるように誘導される。ガイド部40Gによって、注入口52に注入された液状の発泡剤55を、下部材40Lから上部材40Uに向かう方向、かつ、第1中間部40Rの外側に向く方向に誘導することができる。
【0052】
これによって、車体壁と下部材40Lとの間の隙間から液状の発泡剤55が垂れ落ちることを抑制できる。さらに、液状の発泡剤55が注入される注入口52の位置を制限されることがないため、車体側部構造10の設計の自由度を向上させることができる。発泡剤55が充填される発泡剤充填部(発泡剤収容部)の形状が複雑になった場合であっても、液状の発泡剤55の流路を形成することができる。
【0053】
また、ガイド部40Gは、下部材40Lのガイド面40LGに形成された傾斜面40Iであるので、ガイド部40Gを下部材40Lに容易に形成することができる。
【0054】
セパレータ40は、上部材40U、下部材40L、及び連結部40Cで構成されたセパレータ組立体であるので、上部材40U、下部材40L、及び連結部40Cを一体に形成することができ、セパレータ組立体の生産性の向上に寄与する。
【0055】
セパレータ40を固定する固定部材43がリアホイールハウス補強部材16に設けられているので、セパレータ40をリアホイールハウス補強部材16に容易に取り付けることができる。このため、セパレータ40をリアホイールハウス補強部材16に取り付ける作業効率の向上に寄与する。
【0056】
下部材40Lの周縁部40LEに、シール材45が配置されているので、下部材40Lと車体壁との間の隙間から液状の発泡剤55が垂れ落ちることを抑制できる。
【0057】
セパレータ40は、セパレータ開口40Aを有している。リアホイールハウス補強部材16は、セパレータ開口40Aの位置に対応する位置に形成された第1連通口16FAを有している。第1連通口16FAを介して第1中間部40Rの隣りに第1充填空間16RSが形成されている。このため、液状の発泡剤55は、第1中間部40R、セパレータ開口40A、第1連通口16FA、及び第1充填空間16RSの順に流動するので、発泡剤55を第1充填空間16RSに充填することができる。
【0058】
第2充填空間16RTに発泡剤55を充填することができるので、車体側部構造10の外部からの騒音が侵入することを抑制できる。さらに、第2充填空間16RTに発泡剤55を充填することによって、車体の剛性向上に寄与する。
【0059】
第1発泡剤収容部53及び第2発泡剤収容部54に発泡剤55を充填することができるので、車体側部構造10の外部からの騒音が侵入することを抑制できる。さらに、第2充填空間16RTに発泡剤55を充填することによって、車体の剛性向上に寄与する。
【0060】
リアホイールハウス補強部材16は、リアホイールハウス13に接合されるフランジ16Lを有する。フランジ16Lは注入口52に相当する位置に切り欠き16LCを有する。このため、第1発泡剤収容部53が狭い場合でも、リアホイールハウス13に注入口52を形成することができる。
【0061】
セパレータ40は、上部材40Uと下部材40Lとを連結する連結部40Cとを有するセパレータ組立体で構成されている。セパレータ組立体は、ガイド部40Gの下方に位置する固定部材43によって、リアホイールハウス補強部材16に固定されている。
セパレータ組立体であるセパレータ40の第1中間部40Rに液状の発泡剤55を注入した際において、ガイド部40Gによって液状の発泡剤55の流動方向が偏向され、発泡剤55の圧力がガイド部40Gに加わる。この場合であっても、ガイド部40Gの下方に固定部材43が位置し、固定部材43がセパレータ40を固定するので、ガイド部40Gによって規制される発泡剤55の流動方向がずれてしまうことを抑制できる。
【0062】
(セパレータ40の変形例)
図7は、本実施形態の係るセパレータの変形例を示す。
図7において、上述した実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図7に示すように、セパレータ41は、下部材40Lに形成されたガイド部40Gをする。このガイド部40Gは、下部材40Lのガイド面40LGに形成された曲面40Bである。これによって、ガイド部40Gを下部材40Lに容易に形成することができる。
このようなセパレータ41においても、上述した実施形態と同一又は類似する効果をえることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0064】
10 車体側部構造
11 車体側部
12 サイドシル
12a 後端部
13 リアホイールハウス
13a 上部
14 クオータピラー
14a 上端部
14b 下端部
15 ルーフサイドレール
16 リアホイールハウス補強部材
16a 前端部
16F 第1隔壁
16FA 第1連通口
16L フランジ
16LC 切り欠き
16RS 第1充填空間
16RT 第2充填空間
16S 第2隔壁
16SA 第2連通口
17 サイドパネルアウタ
17a サイドシルアウタパネル部
17b リアホイールアウタ部
17c リアホイールハウスアウタパネル部
18 ドア開口部
22 コーナ部
24 リアタイヤ
26 インナパネル
27 リアホイールハウスインナ
31 インナパネル前部
31a 前端部
31b 内側壁
40 セパレータ
40A セパレータ開口
40B 曲面
40C 連結部
40G ガイド部
40I 傾斜面
40L 下部材
40LE 周縁部
40LG ガイド面
40R 第1中間部
40S 第2セパレータ
40SC 連結部
40SL 下部材
40SR 中間部
40SU 上部材
40T 第3セパレータ
40TC 連結部
40TL 下部材
40TR 中間部
40TU 上部材
40U 上部材
41 セパレータ
42 アーチ補強頂部
43 固定部材
44 アーチ補強外フランジ
45 シール材
50 中空構造
51 空間
52 注入口
53 第1発泡剤収容部
54 第2発泡剤収容部
55 発泡剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7