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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156294
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】水平変形拘束装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20221006BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059894
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】前田 信之
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139CA02
2E139CB04
3J048AA01
3J048BA08
3J048CB07
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】施工時の積層ゴムの水平方向の変形を拘束しつつ、積層ゴムの収縮変形を許容できる水平変形拘束装置を提供する。
【解決手段】下部構造体12に固定された下側フランジ21(第2フランジ)と、上部構造体13に固定された上側フランジ22(第1フランジ)と、下側フランジ21と上側フランジ22との間に設けられた積層ゴム23と、を有する免震装置2に取り付けられ、下側フランジ21に固定される下側フランジ固定部3(第2フランジ固定部)と、下側フランジ固定部3と連結されて上側フランジ22に固定される上側フランジ固定部4(第1フランジ固定部)と、を有し、上側フランジ固定部4は、上側フランジ22との水平方向の相対変位が拘束され、上側フランジ22との上下方向の相対変位は許容され、下側フランジ固定部3は、下側フランジ21との水平方向および上下方向の相対変位が拘束される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に相対変位可能な下部構造体と上部構造体との間に設けられ、前記下部構造体に固定された下側フランジと、前記上部構造体に固定された上側フランジと、前記下側フランジと前記上側フランジとの間に設けられた積層ゴムと、を有する免震装置に取り付けられ、
前記下側フランジに固定される下側フランジ固定部と、
前記下側フランジ固定部と連結されて前記上側フランジに固定される上側フランジ固定部と、を有し、
前記下側フランジ固定部および前記上側フランジ固定部のうちの一方の第1フランジ固定部は、前記下側フランジおよび前記上側フランジのうちの前記第1フランジ固定部と固定される第1フランジとの水平方向の相対変位が拘束され、前記第1フランジとの上下方向の相対変位は許容され、
前記下側フランジ固定部および前記上側フランジ固定部のうちの他方の第2フランジ固定部は、前記下側フランジおよび前記上側フランジのうちの前記第2フランジ固定部と固定される第2フランジとの水平方向および上下方向の相対変位が拘束される水平変形拘束装置。
【請求項2】
前記第1フランジ固定部を前記第1フランジに固定する第1ボルトと、
前記第2フランジ固定部を前記第2フランジに固定する第2ボルトと、
を有し、
前記第1ボルトは、前記第1フランジに螺合され、前記第1フランジ固定部に形成された上下方向に貫通する孔部に上下方向に移動可能に挿入されている請求項1に記載の水平変形拘束装置。
【請求項3】
前記第1フランジ固定部を前記第1フランジに固定する第1ボルトと、
前記第2フランジ固定部を前記第2フランジに固定する第2ボルトと、
を有し、
前記第1ボルトは、前記第1フランジ固定部に螺合され、前記第1フランジに形成された上下方向に延びる孔部に上下方向に移動可能に挿入されている請求項1に記載の水平変形拘束装置。
【請求項4】
前記下側フランジ固定部と前記上側フランジ固定部とを連結する連結部を有し、
前記下側フランジ固定部は、平板状に形成されて、前記下側フランジの上面に沿って設けられ、
前記上側フランジ固定部は、平板状に形成されて、前記上側フランジの下面に沿って設けられ、
前記連結部は、前記積層ゴムの側面に沿って設けられ、下端部が前記下側フランジ固定部と接合され、上端部が前記上側フランジ固定部と接合されている請求項1から3のいずれか一項に記載の水平変形拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平変形拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免震建物に設置される免震装置としてゴムと鋼板とが積層された積層ゴムを利用した免震装置が知られている。免震建物の施工時には、安全性確保のため、積層ゴムの水平変形を拘束する場合がある。特許文献1-4には、免震建物の施工時などに使用され積層ゴムの水平変形を拘束する拘束装置が開示されている。拘束装置は、積層ゴムの上下のフランジに固定され、積層ゴムの上側のフランジと、積層ゴムの下側のフランジとの相対変位を拘束するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-317216号公報
【特許文献2】特開2003-278407号公報
【特許文献3】特開平10-115104号公報
【特許文献4】特開2002-317571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免震建物の施工時には、施工が進むことで上部の荷重が増加するため、積層ゴムが収縮変形することになる。しかしながら、特許文献1-4に開示された拘束装置は、上側フランジと下側フランジの上下方向の相対変位を拘束しているため、積層ゴムの収縮変形が進むことで、拘束装置に付加荷重がかかり、拘束装置の取り外しが不能になる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、施工時の積層ゴムの水平方向の変形を拘束しつつ、積層ゴムの収縮変形を許容できる水平変形拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る水平変形拘束装置は、水平方向に相対変位可能な下部構造体と上部構造体との間に設けられ、前記下部構造体に固定された下側フランジと、前記上部構造体に固定された上側フランジと、前記下側フランジと前記上側フランジとの間に設けられた積層ゴムと、を有する免震装置に取り付けられ、前記下側フランジに固定される下側フランジ固定部と、前記下側フランジ固定部と連結されて前記上側フランジに固定される上側フランジ固定部と、を有し、前記下側フランジ固定部および前記上側フランジ固定部のうちの一方の第1フランジ固定部は、前記下側フランジおよび前記上側フランジのうちの前記第1フランジ固定部と固定される第1フランジとの水平方向の相対変位が拘束され、前記第1フランジとの上下方向の相対変位は許容され、前記下側フランジ固定部および前記上側フランジ固定部のうちの他方の第2フランジ固定部は、前記下側フランジおよび前記上側フランジのうちの前記第2フランジ固定部と固定される第2フランジとの水平方向および上下方向の相対変位が拘束される。
【0007】
本発明では、第1フランジ固定部と第1フランジとの水平方向の相対変位が拘束され、第1フランジ固定部と連結された第2フランジ固定部と第2フランジとの水平方向の相対変位が拘束される。これにより、第1フランジと第2フランジの水平方向の相対変位を拘束することができ、第1フランジと第2フランジとの間の積層ゴムの水平方向の変形を拘束することができる。また、第1フランジ固定部と第1フランジとの上下方向の相対変位が許容されるため、第1フランジと第2フランジとの上下方向の相対変位が許容されることになる。これにより、積層ゴムの収縮変形を許容することができる。例えば、免震装置が設置された免震建物の施工時に、施工が進むことで上部の荷重が増加し積層ゴムのゴムに収縮する力が作用しても、水平変形拘束装置に付加荷重がかかることを防止できる。
【0008】
また、本発明に係る水平変形拘束装置では、前記第1フランジ固定部を前記第1フランジに固定する第1ボルトと、前記第2フランジ固定部を前記第2フランジに固定する第2ボルトと、を有し、前記第1ボルトは、前記第1フランジに螺合され、前記第1フランジ固定部に形成された上下方向に貫通する孔部に上下方向に移動可能に挿入されていてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、第1フランジと第1フランジ固定部とが、第1ボルトに沿って上下方向に相対変位することができる。また、水平変形拘束装置を第1ボルトおよび第2ボルトで第1フランジおよび第2フランジ(上側フランジおよび下側フランジ)に容易に取り付けることができる。
【0010】
また、本発明に係る水平変形拘束装置では、前記第1フランジ固定部を前記第1フランジに固定する第1ボルトと、前記第2フランジ固定部を前記第2フランジに固定する第2ボルトと、を有し、前記第1ボルトは、前記第1フランジ固定部に螺合され、前記第1フランジに形成された上下方向に延びる孔部に上下方向に移動可能に挿入されていてもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、第1フランジと第1フランジ固定部とが、第1ボルトに沿って上下方向に相対変位することができる。また、水平変形拘束装置を第1ボルトおよび第2ボルトで第1フランジおよび第2フランジ(上側フランジおよび下側フランジ)に容易に取り付けることができる。
【0012】
また、本発明に係る水平変形拘束装置では、前記下側フランジ固定部と前記上側フランジ固定部とを連結する連結部を有し、前記下側フランジ固定部は、平板状に形成されて、前記下側フランジの上面に沿って設けられ、前記上側フランジ固定部は、平板状に形成されて、前記上側フランジの下面に沿って設けられ、前記連結部は、前記積層ゴムの側面に沿って設けられ、下端部が前記下側フランジ固定部と接合され、上端部が前記上側フランジ固定部と接合されていてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、水平変形拘束装置を下側フランジと上側フランジとの間にコンパクトな形状で設置することができる。また、水平変形拘束装置を簡便かつコンパクトな形状とすることができるため、水平変形拘束装置を容易かつ安価に製作することができるとともに、免震装置に対して容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工時の積層ゴムの水平方向の変形を拘束しつつ、積層ゴムの収縮変形を許容できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による水平変形拘束装置が取り付けられた免震装置の正面図である。
図2】本発明の実施形態による水平変形拘束装置が取り付けられた免震装置の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5】免震装置への水平変形拘束装置の取付方法を説明する図である。
図6】本発明の実施形態の変形例による水平変形拘束装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による水平変形拘束装置について、図1図5に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による水平変形拘束装置1は、免震建物11(図1参照)の施工時に免震装置2の水平方向の変位を拘束するために設置される。免震装置2は、免震建物11の下部構造体12と上部構造体13との間に配置されている。免震装置2は、下部構造体12の上に設置され、上部構造体13を支持している。下部構造体12と上部構造体13とは水平方向に相対変位可能に構成されている。
【0017】
免震装置2は、下部構造体12に固定された下側フランジ21(第2フランジ)と、上部構造体13に固定された上側フランジ22(第1フランジ)と、下側フランジ21と上側フランジ22との間に設けられた積層ゴム23と、を有している。
下側フランジ21は、円板状に形成され、下部構造体12の上面に沿って固定される。上側フランジ22は、円板状に形成され、上部構造体13の下面に沿って固定される。
積層ゴム23は、ゴムと鋼板とが積層され、円柱状に形成されている。下側フランジ21、積層ゴム23および上側フランジ22は、同軸に配置されている、上下方向から見た平面視において、下側フランジ21および上側フランジ22は、積層ゴム23よりも大きく形成されている。本実施形態では、下側フランジ21上側フランジ22が円板状であり、積層ゴム23が円柱状であるが、これに限定されず、例えば、下側フランジ21上側フランジ22が矩形の板状であり、積層ゴム23が角柱状であってもよい。
【0018】
水平変形拘束装置1は、1つの免震装置2に対して、免震装置2の軸線回りに間隔をあけて複数設置される。
図1-4に示すように、水平変形拘束装置1は、下側フランジ21に固定される下側フランジ固定部3(第2フランジ固定部)と、上側フランジ22に固定される上側フランジ固定部4(第1フランジ固定部)と、下側フランジ固定部3と上側フランジ固定部4とを連結する連結部5と、を有している。
【0019】
図3に示すように、下側フランジ固定部3は平板状に形成され、積層ゴム23の側方において下側フランジ21の上面に沿って配置されている。下側フランジ固定部3は、下側ボルト6で下側フランジ21に固定されている。下側フランジ21には、下側ボルト6が挿入される下側フランジボルト孔211が形成されている。下側フランジ固定部3には、下側ボルト6が貫通する下側フランジ固定部ボルト孔31が形成されている。下側フランジボルト孔211と下側フランジ固定部ボルト孔31とは上下方向に重なる位置に配置される。
【0020】
下側ボルト6は、ネジ部61と頭部62を有している。下側ボルト6は、ネジ部61が下側、頭部62が上側となる向きで、ネジ部61が下側フランジ固定部ボルト孔31および下側フランジボルト孔211に上側から挿入される。下側ボルト6のネジ部61は、下側フランジ固定部ボルト孔31および下側フランジボルト孔211それぞれに螺合している。下側ボルト6の頭部62は、下側フランジ固定部3上面に押圧されている。下側ボルト6は、下側フランジ21と下側フランジ固定部3との水平方向および上下方向それぞれの相対変位を拘束するように固定している。
【0021】
上側フランジ固定部4は平板状に形成され、積層ゴム23の側方において上側フランジ22の下面に沿って配置されている。上側フランジ固定部4の上面と上側フランジ22の下面との間には間隔が設けられている。上側フランジ固定部4は、上側ボルト7で上側フランジ22に固定されている。上側フランジ22には、上側ボルト7が挿入される上側フランジボルト孔221が形成されている。上側フランジ固定部4には、上下方向に貫通し上側ボルト7が挿入される上側フランジ固定部ボルト孔41(孔部)が形成されている。上側フランジボルト孔221と上側フランジ固定部ボルト孔41とは上下方向に重なる位置に配置される。
【0022】
上側ボルト7は、ネジ部71と頭部72を有している。上側ボルト7は、ネジ部71が上側、頭部72が下側となる向きで、ネジ部71が上側フランジ固定部ボルト孔41および上側フランジボルト孔221に下側から挿入される。上側ボルト7のネジ部71は、上側フランジボルト孔221に螺合している。上側フランジ固定部ボルト孔41の内径は、上側ボルト7の外径よりもやや大きく、上側フランジ固定部4と上側ボルト7とは、上下方向に相対変位可能に構成されている。すなわち、上側ボルト7は上側フランジ固定部ボルト孔41に対して上下方向にルーズになっている。上側ボルト7の頭部72は、上側フランジ固定部4の下側に間隔をあけて配置される。また、上述しているように、上側フランジ固定部4と上側フランジ22とは、上下方向に間隔をあけて配置されている。上側ボルト7と上側フランジ固定部4とは、上側フランジ22と上側フランジ固定部4との間隔、および上側フランジ固定部4と上側ボルト7の頭部72との間隔の間で、上下方向に相対変位可能である。すなわち、上側ボルト7は、上側フランジ22と上側フランジ固定部4との水平方向の相対変位を拘束し、上側フランジ22と上側フランジ固定部4との上下方向の相対変位は許容するように固定している。
【0023】
連結部5は、平板状に形成され、積層ゴム23の側方に配置されている。連結部5は、下端部51が下側フランジ固定部3の積層ゴム23側の縁部32と接合され、上端部52が上側フランジ固定部4の積層ゴム23側の縁部42と接合されている。下側フランジ固定部3と上側フランジ固定部4とは、連結部5によって上下方向および水平方向いずれにも相対変位しないように連結されている。上側フランジ固定部4、下側フランジ固定部3および連結部5は、側方から見てC字形となるように接合されている。
【0024】
本実施形態では、下側フランジ固定部3の側縁部と、連結部5の側縁部とを連結するリブ8が設けられている。水平変形拘束装置1の下側フランジ固定部3、上側フランジ固定部4、連結部5およびリブ8を合わせた部分を本体部9とする。
【0025】
本体部9は、下側フランジ固定部3、上側フランジ固定部4および連結部5がC字形状に接合されていることにより、水平方向に外力が作用したとしても、連結部5が水平方向の変形を拘束することで、下側フランジ固定部3と下側フランジ21との水平方向の相対変位、および上側フランジ固定部4と上側フランジ22との水平方向の相対変位を抑えることができて、上側ボルト7および下側ボルト6の抜けを防止することができる。
【0026】
水平変形拘束装置1は、免震建物11の施工時や、免震装置2のメンテナンス時など、免震装置2の水平方向の変形(積層ゴム23の水平方向の変形)を拘束する際に、本体部9を下側ボルト6で下側フランジ21に固定し、上側ボルト7で上側フランジ22に固定する。施工やメンテナンスが完了し、免震装置2の水平方向の変形を拘束する必要がなくなったら、下側ボルト6および上側ボルト7を外して本体部9を免震装置2から取り外す。下側ボルト6および上側ボルト7の締結は、図5に示すようにソケットレンチ14を用いて免震装置の側方から行ってもよい。取り外した水平変形拘束装置1を他の免震建物に転用することも可能である。
【0027】
次に、上記の本実施形態による水平変形拘束装置の作用・効果について説明する。
本実施形態による水平変形拘束装置1では、下側フランジ固定部3と下側フランジ21との水平方向の相対変位が拘束され、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との水平方向の相対変位が拘束されるため、上側フランジ22と下側フランジ21の水平方向の相対変位を拘束することができる。これにより、上側フランジ22と下側フランジ21との間の積層ゴム23の水平方向の変形を拘束することができる。また、上側ボルト7が上側フランジ固定部ボルト孔41に対して上下方向にルーズになっていることにより、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との上下方向の相対変位が許容されるため、上側フランジ22と下側フランジ21との上下方向の相対変位が許容されることになる。これにより、積層ゴム23の収縮変形を許容することができる。例えば、免震装置2が設置された免震建物11の施工時に、施工が進むことで上部の荷重が増加し積層ゴム23のゴムに収縮する力が作用しても、水平変形拘束装置1に付加荷重がかかることを防止できる。
【0028】
また、本実施形態による水平変形拘束装置1では、下側フランジ固定部3を下側フランジ21に固定する下側ボルト6と、上側フランジ固定部4を上側フランジ22に固定する上側ボルト7と、を有し、上側ボルト7は、上側フランジ22に螺合され、上側フランジ固定部4に形成された上下方向に貫通する上側フランジ固定部ボルト孔41に上下方向に移動可能に挿通されている。
このような構成とすることにより、上側フランジ22と上側フランジ固定部4とが、上側ボルト7に沿って上下方向に相対変位することができる。また、水平変形拘束装置1を下側ボルト6および上側ボルト7で下側フランジ21および上側フランジ22に容易に取り付けることができる。
【0029】
また、本実施形態による水平変形拘束装置1では、下側フランジ固定部3と上側フランジ固定部4とを連結する連結部5を有し、下側フランジ固定部3は、平板状に形成されて、下側フランジ21の上面に沿って設けられ、上側フランジ固定部4は、平板状に形成されて、上側フランジ22の下面に沿って設けられ、連結部5は、積層ゴム23の側面に沿って設けられ、下端部51が下側フランジ固定部3と接合され、上端部52が上側フランジ固定部4と接合されている。
このような構成とすることにより、水平変形拘束装置1を下側フランジ21と上側フランジ22との間にコンパクトな形状で設置することができる。また、水平変形拘束装置1を簡便かつコンパクトな形状とすることができるため、水平変形拘束装置1を容易かつ安価に製作することができるとともに、免震装置2に対して容易に取り付けることができる。また、水平変形拘束装置1を他の免震建物に転用することも可能となる。
【0030】
以上、本発明による水平変形拘束装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、下側フランジ固定部3が下側フランジ21との水平方向および上下方向の相対変位が拘束され、上側フランジ固定部4が上側フランジ22との水平方向の相対変位が拘束され、上側フランジ22との上下方向の相対変位は許容されている。これに対し、上側フランジ固定部4が上側フランジ22との水平方向および上下方向の相対変位が拘束され、下側フランジ固定部3が下側フランジ21との水平方向の相対変位が拘束され、下側フランジ21との上下方向の相対変位は許容されていてもよい。すなわち、上側フランジ固定部、上側フランジ22が本発明の第2フランジ固定部、第2フランジとなり、下側フランジ固定部3、下側フランジ21が本発明の第1フランジ固定部、第1フランジとなってもよい。
【0031】
上記の実施形態では、下側フランジ固定部3を下側フランジ21に固定する下側ボルト6と、上側フランジ固定部4を上側フランジ22に固定する上側ボルト7と、を有し、上側ボルト7は、上側フランジ22に形成された上側フランジボルト孔221螺合され、上側フランジ固定部4に形成された上下方向に貫通する上側フランジ固定部ボルト孔41に上下方向に移動可能に挿通されている。これに対し、下側フランジ固定部3と下側フランジ21との水平方向の相対変位が拘束され、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との水平方向の相対変位が拘束され、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との上下方向の相対変位が許容されるように構成されていれば、下側フランジ固定部3と下側フランジ21との固定、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との固定は、上記のような下側ボルト6および上側ボルト7以外を用いた固定接合であってもよい。
【0032】
例えば、図6に示す水平変形拘束装置1Bのように、上側ボルト7Bが、上側フランジ固定部4と固定され、上側フランジ22Bと上下方向に移動可能であり、上側フランジ固定部4と上側フランジ22との上下方向の相対変位が許容されるように構成されていてもよい。具体的には、上側ボルト7Bのネジ部71Bは、先端側にはネジ山が形成されておらず、頭部72側にネジ山が形成されている。ネジ部71Bの先端側(ネジ山が形成されていない部分)は、頭部72側(ネジ山が形成されている部分)の谷径よりも径が小さい。上側フランジ固定部4Bの上側フランジ固定部ボルト孔41Bは、内周面に上側ボルト7Bのネジ山と螺合するネジ山が形成されている。上側フランジ22に形成された上側フランジボルト孔221Bの内径は、上側ボルト7Bのネジ部71Bの先端側(ネジ山が形成されていない部分)の外径よりも大きい。そして、上側ボルト7Bは、上側フランジ固定部ボルト孔41Bに螺合され、上側フランジ22に形成された上側フランジボルト孔221B(孔部)に上下方向に移動可能に挿通されている。
【0033】
また、上記の実施形態では、下側フランジ固定部3と上側フランジ固定部4とを連結する連結部5を有し、下側フランジ固定部3は、平板状に形成されて、下側フランジ21の上面に沿って設けられ、上側フランジ固定部4は、平板状に形成されて、上側フランジ22の下面に沿って設けられ、連結部5は、積層ゴム23の側面に沿って設けられ、下端部51が下側フランジ固定部3と接合され、上端部52が上側フランジ固定部4と接合されている。これに対し、下側フランジ固定部3と上側フランジ固定部4との連結は、上記連結部5以外の形状の部材で連結されていてもよい。
また、上記の実施形態では、本体部9には、下側フランジ固定部3の側縁部と、連結部5の側縁部とを連結するリブ8が設けられているが、水平変形拘束装置1の性能を確保できればリブ8が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,1B 水平変形拘束装置
2 免震装置
3 下側フランジ固定部(第2フランジ固定部)
4 上側フランジ固定部(第1フランジ固定部)
5 連結部
6 下側ボルト(第2ボルト)
7,7B 上側ボルト(第1ボルト)
12 下部構造体
13 上部構造体
21 下側フランジ(第2フランジ)
22 上側フランジ(第1フランジ)
23 積層ゴム
41 上側フランジ固定部ボルト孔(孔部)
51 下端部
52 上端部
221B 上側フランジボルト孔(孔部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6