(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156296
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コイル挿入装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/06 20060101AFI20221006BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02K15/06
H02K15/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059897
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】金中 湧泉
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP13
5H615PP14
5H615PP19
5H615QQ02
5H615QQ12
5H615QQ18
5H615RR04
5H615SS09
5H615SS10
5H615TT03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産性を向上する、コイル挿入装置を提供する。
【解決手段】ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル線が環状に巻きつけられたコイル10を、軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル挿入装置100であって、ステータコアの軸方向一側に配置されるコイル保持機構150を備え、コイル保持機構の一側端部は、コイル挿入装置を構成する他の部材に取り付けられるとともに、コイル保持機構の他側端部は、コイルの軸方向一側端部を保持し、コイル保持機構は、コイルの軸方向一側から他側への移動に伴って、移動する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイル線が環状に巻きつけられたコイルを、軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル挿入装置であって、
前記ステータコアの軸方向一側に配置されるコイル保持機構を備え、
前記コイル保持機構の一側端部は、前記コイル挿入装置を構成する他の部材に取り付けられるとともに、前記コイル保持機構の他側端部は、前記コイルの軸方向一側端部を保持し、
前記コイル保持機構は、前記コイルの軸方向一側から他側への移動に伴って、移動する、コイル挿入装置。
【請求項2】
前記コイル保持機構は、軸方向一側に傾斜する状態に配置される、請求項1に記載のコイル挿入装置。
【請求項3】
前記コイルの挿入方向に対し、前記コイル保持機構が前記ステータコアに近付くことが可能である、請求項1または2に記載のコイル挿入装置。
【請求項4】
前記コイル保持機構において、他側端部は、一側端部に対して、径方向外側に90度を超える角度で傾斜する、請求項3に記載のコイル挿入装置。
【請求項5】
前記コイル保持機構の他側端部は、
前記コイルの周方向一側を保持する第1周方向端と、
1以上の前記スロットを挟んで配置される前記コイルの周方向他側を保持する第2周方向端と、
を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項6】
前記コイル保持機構は、径方向外側に移動する移動機構を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項7】
前記移動機構は、付勢機構及び回転機構の少なくとも一方を有する、請求項6に記載のコイル挿入装置。
【請求項8】
前記ステータコアの径方向内側において、周方向に配置され、軸方向に延び、前記コイルを保持する複数のブレードをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【請求項9】
前記複数のブレードの径方向内側に配置され、軸方向に移動し、前記コイルを移動するコイル移動機構をさらに備える、請求項8に記載のコイル挿入装置。
【請求項10】
前記複数のブレードの軸方向一側端部を保持するブレードホルダをさらに備え、
前記コイル保持機構の一側端部は、前記ブレードホルダに取り付けられる、請求項8または9に記載のコイル挿入装置。
【請求項11】
前記ブレードを保持するアライメントツールをさらに備える、請求項8~10のいずれか1項に記載のコイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアのスロットに挿入されたコイルを成形するコイル成形装置が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のコイル成形装置は、1台の装置で中間成形と拡張成形との両工程を完全に実施することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のコイル成形装置では、コイルを挿入した後に、中間成形工程及び拡張成形工程を実施する。本発明者は、上記特許文献1に開示の技術よりも、生産性を向上することを課題とした。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、生産性を向上する、コイル挿入装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点からのコイル挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに、コイル線が環状に巻きつけられたコイルを、軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル挿入装置であって、ステータコアの軸方向一側に配置されるコイル保持機構を備え、コイル保持機構の一側端部は、コイル挿入装置を構成する他の部材に取り付けられるとともに、コイル保持機構の他側端部は、コイルの軸方向一側端部を保持し、コイル保持機構は、コイルの軸方向一側から他側への移動に伴って、移動する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、生産性を向上する、コイル挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ステータの軸方向に垂直な断面の断面図である。
【
図2】
図2は、ステータの軸方向一方側から見たときの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態のコイル挿入方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、変形例のコイル挿入装置及び方法の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本開示の例示的な実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロットの貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下側、他側を上側とする。上下方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0011】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。径方向に沿った一側を内側、他側を外側とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0012】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法および比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0013】
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル10を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、ウェッジ30と、絶縁紙40と、を備える。
【0014】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0015】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きけられてなる。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0016】
コイル10は、二つのコイル辺部11と、
図2に示すコイルエンド12と、を有する。二つのコイル辺部11は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部11が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部11が収納されるスロット21とは、
図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0017】
コイルエンド12は、二つのコイル辺部11を繋ぐ。またコイルエンド12は、ステータコア20の軸方向両側に配置される。具体的には、軸方向一側に位置するコイルエンド12は、二つのコイル辺部11の一側端部を連結する。軸方向他側に位置するコイルエンド12は、コイル辺部11の他側端部を連結する。
【0018】
図2に示すように、コイルエンド12は、コイル辺部11と軸方向に重なる第1コイルエンド12aと、第1コイルエンド12aを周方向に繋ぐ第2コイルエンド12bと、を有する。第1コイルエンド12aは、コイルエンド12の根元部分である。第2コイルエンド12bは、コイルエンド12の先端部分、すなわち渡り部である。
【0019】
<ウェッジ>
ウェッジ30は、スロット21内に配置されたコイル10と、スロットオープン22との間に配置される。ウェッジ30は、スロットオープン22を塞ぐ。ウェッジ30は、ステータコア20とコイル10とを絶縁する。ウェッジ30の軸方向長さは、スロット21の軸方向長さよりも大きい。
【0020】
本実施形態のウェッジ30は、軸方向視においてU字形状である。詳細には、周方向に延びる周方向部と、周方向部の両端部から径方向外側に向けて延びる2つの径方向部と、を含む。周方向部及び径方向部は、1つの部材で構成されてもよく、互いに異なる部材が接続されてもよい。
【0021】
<絶縁紙>
図1に示すように、絶縁紙40は、スロット21に挿入されるコイル10を被覆する。絶縁紙40は、スロット21において径方向内側を除く空間を区画するティースに沿って配置される。本実施形態の絶縁紙40は、U字形状である。
図1では、絶縁紙40の開口とウェッジ30の開口とは、互いに反対の方向である。
【0022】
なお、絶縁紙40は、
図2に示すように、ステータコア20の軸方向一側の端面から突出して折り返されたカフス部41を有してもよく、絶縁紙40は、ステータコア20の軸方向他側の端面から突出して折り返されたカフス部を有してもよい。
【0023】
【0024】
図3~
図9に示すように、コイル挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル線が環状に巻き付けられたコイル10を、軸方向一側から他側(
図3~
図9では、左側から右側)に向けて挿入する。詳細には、コイル挿入装置100は、ステータコア20の複数のスロット21を跨ぐようにそれぞれのスロットオープン22からコイル10を挿入する。
【0025】
コイル挿入装置100は、ブレード110と、コイル移動機構としてのストリッパ120と、ブレードホルダ130と、ウェッジガイド140と、コイル保持機構150と、アライメントツール160と、を備える。
【0026】
<ブレード>
図3に示すように、ブレード110は、コイル10を保持する。ブレード110は、ステータコア20の径方向内側かつストリッパ120の径方向外側に、ステータコア20の周方向に配置され、ステータコア20の軸方向に延びる。ブレード110により、コイル10をスロット21に容易に挿入できる。
【0027】
ブレード110は、軸方向に移動する。本実施形態のブレード110は、軸方向に移動する可動ブレードである。
【0028】
ブレード110は、ステータコア20の周方向に並んで配置される。ここでは、ブレード110は、複数のティース23を介して配置される。詳細には、複数のブレード110は、ティース23に対応して、同一円周上に配設される。
【0029】
2つのブレード110で、1つのコイル辺部11を保持する。ブレード110は、後述するストリッパ120に引っ掛けられたコイル10を軸方向及び径方向に沿ってスロット21まで導く。
【0030】
ブレード110は、スロットオープン22に配置される形状を有する。ブレード110は、軸方向に延びる棒状の部材である。
【0031】
本実施形態のブレード110の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0032】
<ストリッパ>
ストリッパ120は、コイル10を移動させるコイル移動機構である。ストリッパ120は、ブレード110の径方向内側に配置され、軸方向に移動する。ストリッパ120により、ブレード110及びストリッパ120に保持されたコイル10を軸方向に移動することができる。
【0033】
詳細には、ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて挿入する。ストリッパ120は、コイル10に接触する。ストリッパ120により、コイル10がステータコア20の径方向内側を軸方向に移動しつつ、コイル10の一部がスロットオープン22からスロット21内部に挿入される。具体的には、ストリッパ120は、コイル10の径方向の内側を引っ掛けて、ブレード110に沿ってコイル10を引き上げる。ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動してもよく、ブレード110とともに軸方向他側に移動しなくてもよい。後者の場合、ブレード110がストリッパ120よりも先に軸方向他側に移動する。
【0034】
ストリッパ120には、環状のコイル10の径方向の内側が引っ掛けられる。ストリッパ120においてコイルが引っ掛けられる部分の径は、コイル10を保持するブレード110間の距離である。
【0035】
本実施形態のストリッパ120の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0036】
ストリッパ120は、スロットオープン22に配置される形状を有する。本実施形態では、ストリッパ120の軸方向他側の端部は、半球状である。ストリッパ120の軸方向他側の端面は、曲面である。
【0037】
<ブレードホルダ>
図4~
図7に示すブレードホルダ130は、ステータコア20の軸方向一側に配置される。ブレードホルダ130は、ブレード110を保持する。ここでは、ブレードホルダ130は、複数のブレード110の軸方向一端部を保持する。
【0038】
ブレードホルダ130と複数のブレード110とは、1つの部材で構成されてもよく、別の部材で構成されてもよい。
【0039】
<ウェッジガイド>
ウェッジガイド140は、ウェッジ30を収容する。ウェッジガイド140は、ウェッジ30をスロット21に案内する。
【0040】
ウェッジガイド140は、ステータコア20の軸方向一側に配置され、隣り合うスロット21間に配置される。ウェッジガイド140は、軸方向に延びる。
【0041】
<コイル保持機構>
コイル保持機構150は、ステータコア20の軸方向一側に配置される。コイル保持機構150の一側端部150aは、コイル挿入装置100を構成する他の部材に取り付けられるとともに、コイル保持機構150の他側端部150bは、コイル10の軸方向一側端部を保持する。コイル保持機構150は、コイル10の軸方向一側から他側への移動に伴って、移動する。
【0042】
コイル保持機構150の一側端部150aは、コイル挿入装置100を構成する部材に取り付けられるので、取り付けられた位置を起点として移動する。コイル保持機構150の他側端部150bは、コイル10の軸方向一側端部を保持するとともに、コイル10の軸方向の移動に伴って移動する。このため、コイル10をスロット21に挿入するために移動する際に、コイル保持機構150によって、コイル10の一側端部に力を加えることができる。これにより、ステータコア20の軸方向一側において、コイル10の軸方向一側のコイルエンドを径方向外側に広げることができる。すなわち、コイル挿入工程を実施することによって、中間成形工程が実施される。このため、ステータコア20のスロット21にコイル10を設置するための工程を減らすことができる。したがって、コイル挿入装置100は、生産性を向上することができる。
【0043】
また、コイル保持機構150によってコイル10の一側端部の撓みを防止することによって、ステータコア20の軸方向他側端面から他側に突出するコイルエンド12を短縮できる。
【0044】
なお、コイル保持機構150の一側端部150a及び他側端部150bは、
図6及び
図7に示すように、コイル10をスロット21に挿入した時点での軸方向位置である。詳細には、コイル保持機構150の一側端部150aは、
図6及び
図7に示すようにコイル10をスロット21に挿入した状態で、コイル保持機構150において軸方向一側に位置する端部である。コイル保持機構150の他側端部150bは、
図6及び
図7に示すようにコイル10をスロット21に挿入した状態で、コイル保持機構150において軸方向他側に位置する端部である。
【0045】
コイル保持機構150が取り付けられるコイル挿入装置100を構成する他の部材は、特に限定されないが、移動しない部材であることが好ましい。他の部材は、例えば、ブレードホルダ130、ウェッジガイド140等であり、本実施形態では、コイル保持機構150の移動領域を考慮して、ブレードホルダ130である。すなわち、コイル保持機構150の一側端部は、ブレードホルダ130に取り付けられる。これにより、軸方向一側のコイルエンドを径方向外側に容易に広げることができる。
【0046】
図5に示すように、コイル保持機構150は、軸方向一側に傾斜する状態に配置される。コイル保持機構150をコイル10の挿入方向と反対側に倒すことによって、コイル10をスロット21に挿入したときに、コイルエンドを短くすることができる。
【0047】
図4~
図7に示すように、本実施形態のコイル保持機構150は、棒状部材151と、移動機構152と、を含む。ここでは、コイル保持機構150は、棒状部材151と、移動機構152と、からなる。棒状部材151と移動機構152とは、連結される。
【0048】
棒状部材151は、コイル10を保持する。詳細には、棒状部材151の他側端部は、コイル10を保持する。棒状部材151の一側端部は、移動機構152に連結される。
【0049】
移動機構152は、コイル挿入装置100を構成する他の部材(ここでは、ブレードホルダ130)に取り付けられる。詳細には、移動機構152の一側端部は他の部材に取り付けられる。移動機構152の他側端部は、棒状部材151に連結される。
【0050】
図7に示すように、コイル10の挿入方向(軸方向)に対し、コイル保持機構150がステータコア20に近付くことが可能である。この場合、コイル保持機構150の他側端部150b(ここでは棒状部材151の他側端部)により、軸方向一側のコイルエンドを径方向外側に容易に広げることができる。
【0051】
棒状部材151は、可動ピンである。本実施形態では、棒状部材151は、一側端部150aに位置する第1部材151aと、他側端部150bに位置する第2部材151bと、を有する。一側端部150aの第1部材151aと、他側端部150bの第2部材151bとは、連結される。第1部材151aと第2部材151bとは、別の部材であってもよいが、本実施形態では、単一の部材の異なる部分である。第1部材151aの延びる方向と、第2部材151bの延びる方向とは、異なる。
【0052】
具体的には、
図6に示すように、コイル保持機構150において、一側端部150a(ここでは第1部材151a)が軸方向に延びる配置のときに、他側端部150b(ここでは第2部材151b)は、軸方向他側に向かうにつれて、径方向外側に傾斜する。また、
図7に示すように、コイル保持機構150において、他側端部150b(ここでは第2部材151b)が軸方向に延びる配置のときに、一側端部150a(ここでは第1部材151a)は、軸方向他側に向かうにつれて、径方向内側に傾斜する。
【0053】
図4に示すように、コイル保持機構150において、他側端部150bは、一側端部150aに対して、径方向外側に90度を超える角度θで傾斜する。ここでは、第1部材151aの延びる方向と、第2部材151bの延びる方向とは、90度を超える角度θをなす。これにより、コイル10のスロット21への挿入時に、コイル保持機構150がコイル10から外れやすくなる。
【0054】
なお、角度θは、90度を超えて180度未満であり、110度以上160度以下であることが好ましい。
【0055】
移動機構152は、コイル保持機構150を径方向外側に移動する。これにより、コイル10の移動に伴って、コイル保持機構150が移動するコイル挿入装置100を実現できる。
【0056】
移動機構152は、付勢機構及び回転機構の少なくとも一方を有する。これにより、軸方向一側のコイルエンドを径方向外側に容易に広げることができる。
【0057】
本実施形態の移動機構152は、例えば、ばねを有する。ばねとして、例えば、コイルばねを用いる。移動機構152は、ばねの弾性力を利用して、
図4~
図7に示すように、棒状部材151と他の部材(ここではブレードホルダ130)との傾きを適宜変更する。
【0058】
コイル保持機構150の他側端部150bは、コイル10の周方向一側13(
図2参照)を保持する第1周方向端と、1以上のスロット21を挟んで配置されるコイル10の周方向他側14(
図2参照)を保持する第2周方向端と、を有する。これにより、コイルエンド(コイル渡り部)を容易に成形することができる。
【0059】
本実施形態では、複数のコイル保持機構150が配置される。第1のコイル保持機構150の他側端部が第1周方向端を有し、第2のコイル保持機構150の他側端部が第2周方向端を有する。第1のコイル保持機構150と第2のコイル保持機構150とは、1以上のスロット21を挟んで配置される。
【0060】
<アライメントツール>
図3に示すように、アライメントツール160は、ブレード110を保持する。詳細には、アライメントツール160は、複数のブレード110の軸方向他側を保持する。アライメントツール160は、ブレード110とともに軸方向他側に移動する。アライメントツール160により、ブレード110の撓みを抑制できる。
【0061】
(コイル挿入方法)
続いて、
図1~
図10を参照して、本実施形態のコイル挿入方法を説明する。本実施形態のコイル挿入方法は、上述したコイル挿入装置100を用いたコイル10の挿入方法である。なお、
図3~
図9では、絶縁紙40の図示を省略している。
【0062】
まず、
図10に示すように、コイル10を成形する(ステップS1)。このステップS1では、コイル線を巻き付けて、コイル10を形成する。
【0063】
次に、コイル挿入装置100をステータコア20に設置する(ステップS2)。このステップS1では、
図3及び
図4に示すように、ステータコア20の軸方向一側にコイル10及びコイル挿入装置100を配置する。
【0064】
詳細には、複数のブレード110間に保持されるようにコイル10を配置する。また、複数のブレード110の径方向の中央であって軸方向一側に、ストリッパ120を配置する。さらに、ウェッジガイド140及びウェッジプッシャ(図示せず)に支持されるようにウェッジ30を配置する。
【0065】
また、
図4に示すように、コイル保持機構150の一側端部150aを、コイル挿入装置100を構成する他の部材に取り付けるとともに、コイル保持機構150の他側端部150bに、コイル10の軸方向一側端部を保持させる。
【0066】
具体的には、
図4に示すように、保持機構150を挿入方向に沿うように倒して、棒状部材151の第2部材151bにコイル10を引っ掛ける。その後、
図5に示すように、コイル10を保持したコイル保持機構150を、軸方向一側に傾斜する状態に配置する。詳細には、移動機構152により、棒状部材151を回転させて、棒状部材151を軸方向一側に向けて径方向外側に傾斜するように配置する。このように、ステップS2では、コイル保持機構150をコイル10の挿入方向と反対側に倒す。これにより、ウェッジガイド140内のコイル10を減らすことができる。
【0067】
次に、
図10に示すように、ストリッパ120を軸方向一側から他側に向けて移動する(ステップS3)。このステップS3では、ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動する。また、ストリッパ120の移動に伴って、ウェッジガイド140を軸方向一側から他側に向けて移動する。
【0068】
ブレード110及びストリッパ120を移動することによって、コイル10を、
図3に示す軸方向位置から、
図8及び
図9に示す軸方向位置に移動する。これにより、ステータコア20のスロット21にコイル10を挿入することができる(ステップS4)。またウェッジプッシャ(図示せず)を移動することによって、スロット21にウェッジ30を挿入することができる。
【0069】
また、ステップS3及びS4では、ブレード110及びストリッパ120を移動することによって、コイル10を、
図5に示す軸方向位置から、
図6及び
図7に示す軸方向位置に順次移動する。このコイル10の軸方向一側から他側への移動に伴って、コイル保持機構150は移動する。詳細には、コイル10の軸方向一側から他側への移動に追随して、コイル保持機構150の移動機構152により、コイル保持機構150が取り付けられた位置を起点にして、挿入方向に向かって棒状部材151が回転する。そして、棒状部材151に引っかかった状態で、コイル10がスロット21に挿入される。このため、
図6及び
図7に示す状態において、コイル保持機構150によって、コイル10の一側端部に力を加えることができる。これにより、ステータコア20の軸方向一側において、コイル10の軸方向一側のコイルエンドを径方向外側に広げることができる。
【0070】
また、ステップS3及びS4を実施することによって、コイルエンドを径方向外側に移動する中間成形工程が実施される。このため、本実施形態のコイル挿入装置100を用いることにより、中間成形工程を省略することができる。また、コイルが挿入されてないスロット21に別のコイル10を挿入する際に、挿入されたコイル10のコイルエンドが障害となることを抑制できる。
【0071】
次に、コイル挿入装置100をステータコア20から取り外す(ステップS5)。具体的には、ストリッパ120を軸方向一側に向かって移動する。なお、コイル10を挿入すると、コイル10の一側端部に引っ掛かったコイル保持機構150の他側端部150bは、取り外れる。
【0072】
以上の工程(ステップS1~S5)を実施することにより、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10及びウェッジ30を挿入することができる。その結果、
図1に示すステータ1を製造できる。
【0073】
なお、
図3~
図9において絶縁紙40を図示していないが、スロット21に挿入されるコイル10を絶縁紙40で被覆する工程をさらに備える。この工程では、スロット21に予め絶縁紙40を配置して、コイル10をスロット21に挿入してもよい。また、絶縁紙40を被覆したコイル10をスロット21に挿入してもよい。
【0074】
(変形例)
上述した実施形態では、
図4~
図7に示すように、互いに交差する第1部材151aと第2部材151bとを有する棒状部材151を備えるコイル保持機構150を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形では、
図11に示すように、棒状部材151は、一方向に延びる1つの部材である。
【0075】
また、上述した実施形態では、コイル10を挿入する2つのスロット21は、スロット21を4つ挟んだ一のスロット21と他のスロット21とされるが、これに限定されない。
【0076】
また、上述した実施形態では、2つのスロット21に1つのコイル10を挿入する方法を例に挙げて説明した。4以上のスロット21に、複数のコイル10を同時に挿入してもよい。
【0077】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 :ステータ
10 :コイル
20 :ステータコア
21 :スロット
100 :コイル挿入装置
110 :ブレード
120 :ストリッパ
130 :ブレードホルダ
140 :ウェッジガイド
150 :コイル保持機構
150a :一側端部
150b :他側端部
151 :棒状部材
152 :移動機構
160 :アライメントツール
θ :角度