(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156297
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コイル成形装置及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20221006BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059898
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】金中 湧泉
(72)【発明者】
【氏名】千葉 弘人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP07
5H615PP12
5H615QQ02
5H615QQ20
5H615QQ27
5H615SS04
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産性を向上する、コイル成形装置及びステータの製造方法を提供する。
【解決手段】コイル成形装置2は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロットに挿入されたコイル10の少なくとも一部を成形するコイル成形装置2であって、ステータコア20の軸方向一側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材110と、ステータコア20の軸方向他側に配置され、径方向に移動する第2拡径部材210と、第1拡径部材110及び第2拡径部材210を径方向外側に移動する移動機構と、を備え、第1拡径部材110と第2拡径部材210とは、別の部材である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに挿入されたコイルの少なくとも一部を成形するコイル成形装置であって、
ステータコアの軸方向一側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材と、
前記ステータコアの軸方向他側に配置され、径方向に移動する第2拡径部材と、
前記第1拡径部材及び前記第2拡径部材を径方向外側に移動する移動機構と、
を備え、
前記第1拡径部材と前記第2拡径部材とは、別の部材である、コイル成形装置。
【請求項2】
前記第1拡径部材及び前記第2拡径部材は、第1部と、第2部と、を含み、
前記第1部は、前記第2部よりも径方向内側に前記コイルと接触する部分を有し、
前記第2部は、前記第1部よりも径方向外側に前記コイルと接触する部分を有する、請求項1に記載のコイル成形装置。
【請求項3】
前記第2部の少なくとも一部は、前記ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜する、請求項2に記載のコイル成形装置。
【請求項4】
前記第1部の少なくとも一部及び前記第2部の少なくとも一部は、前記ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜する、請求項2または3に記載のコイル成形装置。
【請求項5】
前記第1拡径部材は、前記第1部及び前記第2部からなり、
前記第2拡径部材は、前記第1部及び前記第2部からなり、
前記第1部は、
前記ステータコアと軸方向において最も近い根元部と、
前記ステータコアと軸方向において前記根元部よりも遠い第1中間部と、
からなり、
前記第2部は、
前記ステータコアと軸方向において最も遠い先端部と、
前記ステータコアと軸方向において前記先端部よりも近い第2中間部と、
からなり、
前記第1中間部及び前記第2中間部の少なくとも一部は、前記ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜する、請求項2~4のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項6】
前記第1中間部及び前記第2中間部の径方向外側全体は、前記ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜する、請求項5に記載のコイル成形装置。
【請求項7】
前記第1部における前記第2部側の端面の周方向幅と、前記第2部における前記第1部側の端面の周方向幅とは、同じである、請求項5または6に記載のコイル成形装置。
【請求項8】
前記第2部における前記第1部側の端面の周方向幅は、前記第1部における前記第2部側の端面の周方向幅よりも小さい、請求項5または6に記載のコイル成形装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記第1部の径方向外側に移動する速度と、前記第2部の径方向外側に移動する速度とを異ならせる、請求項2~8のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項10】
前記移動機構は、前記第1部の径方向外側に移動する速度と、前記第2部の径方向外側に移動する速度とを同じにする、請求項2~8のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項11】
前記移動機構は、前記第1部及び前記第2部の少なくとも一方を径方向外側に移動する、請求項2~10のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項12】
前記第1拡径部材及び前記第2拡径部材において、前記ステータコアと軸方向に重なる部分の少なくとも一部は、前記ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜する、請求項1~11のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項13】
前記第1拡径部材の径方向外側形状と、前記第2拡径部材の径方向外側形状とは、同じである、請求項1~12のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項14】
前記第1拡径部材の径方向外側への移動と、前記第2拡径部材の径方向外側への移動とを同時に行うように制御する制御部をさらに備える、請求項1~13のいずれか1項に記載のコイル成形装置。
【請求項15】
ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに挿入されたコイルを有するステータの製造方法であって、
前記スロット内に収容される二つのコイル辺部と、前記二つのコイル辺部を繋ぎ、ステータコアの軸方向両側に配置されるコイルエンド部と、を含む前記コイルを形成する工程と、
前記コイルを前記スロットに挿入する工程と、
前記ステータコアの軸方向一側かつ前記コイルエンド部の径方向内側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材によって、前記ステータコアの軸方向一側に位置する前記コイルエンド部を径方向外側に移動する第1移動工程と、
前記ステータコアの軸方向他側かつ前記コイルエンド部の径方向内側に配置され、径方向に移動し、前記第1拡径部材と別の第2拡径部材によって、前記ステータコアの軸方向他側に位置する前記コイルエンド部を径方向外側に移動する第2移動工程と、
を備え、
前記第1移動工程と前記第2移動工程とを、同じタイミングで実施する、ステータの製造方法。
【請求項16】
前記コイルエンド部を径方向外側に移動する中間成形工程と、
前記中間成形工程の後に実施され、前記コイルエンド部を塑性変形する拡張成形工程と、
を備え、
前記第1移動工程及び前記第2移動工程により、前記中間成形工程及び前記拡張成形工程を同じタイミングで実施する、請求項15に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル成形装置及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロットに挿入されたコイル束を成形するコイル成形装置が知られている。例えば、特許文献1には、1台の装置で中間成形と拡張成形との両工程を完全に実施することができるコイル成形装置が開示されている。特許文献1のコイル成形装置では、ブレード部材の径方向外向きの迫り出し動作によりコイルの中間成形を行い、第1拡張部材及び第2拡張部材の径方向外向きの迫り出し操作によりコイルの拡張成形を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のコイル成形装置では、中間成形を実施するためにブレード部材を動作させるとともに、拡張成形を実施するために第1拡張部材及び第2拡張部材を動作させる必要がある。このように、中間成形及び拡張成形を別の部材で実施するため、生産性が悪い。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、生産性を向上する、コイル成形装置及びステータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点からのコイル成形装置は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに挿入されたコイルの少なくとも一部を成形するコイル成形装置であって、ステータコアの軸方向一側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材と、ステータコアの軸方向他側に配置され、径方向に移動する第2拡径部材と、第1拡径部材及び第2拡径部材を径方向外側に移動する移動機構と、を備え、第1拡径部材と第2拡径部材とは、別の部材である。
【0007】
本開示の第2の観点からのステータの製造方法は、ステータコアの軸方向に貫通する複数のスロットに挿入されたコイルを有するステータの製造方法であって、スロット内に収容される二つのコイル辺部と、二つのコイル辺部を繋ぎ、ステータコアの軸方向両側に配置されるコイルエンド部と、を含むコイルを形成する工程と、コイルをスロットに挿入する工程と、ステータコアの軸方向一側かつコイルエンド部の径方向内側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材によって、ステータコアの軸方向一側に位置するコイルエンド部を径方向外側に移動する第1移動工程と、ステータコアの軸方向他側かつコイルエンド部の径方向内側に配置され、径方向に移動し、第1拡径部材と別の第2拡径部材によって、ステータコアの軸方向他側に位置するコイルエンド部を径方向外側に移動する第2移動工程と、を備え、第1移動工程と第2移動工程とを、同じタイミングで実施する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、生産性を向上する、コイル成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1におけるステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1におけるコイル成形装置の一部を断面視した時の模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態1における軸方向一側または他側のコイル成形装置の断面の模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1における軸方向一側または他側のコイル成形装置の断面の模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1のステータの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の変形例における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態2におけるコイル成形装置の一部を断面視した時の模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態2におけるステータの斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態2における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態2における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態2における第1拡径部材または第2拡径部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本開示の例示的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロット21の貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下(後)側、他側を上(前)側とする。上下(前後)方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0012】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0013】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0014】
[第1実施形態]
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル10を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、を備える。
【0015】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0016】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きけられてなる。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0017】
図2に示すように、コイル10は、二つのコイル辺部11と、コイルエンド部12と、を有する。二つのコイル辺部11は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部11が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、
図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0018】
コイルエンド部12は、二つのコイル辺部11を繋ぐ。またコイルエンド部12は、ステータコア20の軸方向両側に配置される。具体的には、軸方向一側に位置するコイルエンド部12は、二つのコイル辺部11の一側端部を連結する。軸方向他側に位置するコイルエンド部12は、コイル辺部11の他側端部を連結する。
【0019】
(コイル成形装置)
図1~
図4を参照して、本実施形態のコイル成形装置2について説明する。なお、
図3及び
図4は、
図2における第1装置100及び第2装置200の一方を示す。
【0020】
コイル成形装置2は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に挿入されたコイル10の少なくとも一部を成形する。詳細には、コイル成形装置2は、軸方向一側及び他側のコイルエンド部12を径方向外側に拡径するように成形する装置である。
【0021】
コイル成形装置は、第1装置100と、第2装置200と、を含む。第1装置100は、ステータコア20の軸方向一側に配置される。第2装置200は、ステータコア20の軸方向他側に配置される。第1装置100と第2装置200とは、別の部材である。また第1装置100と第2装置200とは、分離して配置される。
【0022】
図2~
図4に示すように、コイル成形装置2は、第1拡径部材110と、第2拡径部材210と、移動機構120、220と、を備える。本実施形態では、第1装置100は、第1拡径部材110と、移動機構120と、を有する。第2装置200は、第2拡径部材210と、移動機構220と、を有する。第1拡径部材110及び移動機構120は、第1装置100の筐体に配置される。第2拡径部材210及び移動機構220は、第2装置200の筐体に配置される。
【0023】
第1拡径部材110は、ステータコア20の軸方向一側に配置され、径方向に移動する。第1拡径部材110は、コイルエンド部12の径方向内側に配置される。ここでは、第1拡径部材110は、ステータコア20の軸方向一側端面から、軸方向一側に突出するコイルエンド部12の径方向内側に配置される。第1拡径部材110は、このコイルエンド部12を径方向外側に移動する。
【0024】
第2拡径部材210は、ステータコア20の軸方向他側に配置され、径方向に移動する。第2拡径部材210は、コイルエンド部12の径方向内側に配置される。ここでは、第2拡径部材210は、ステータコア20の軸方向他側端面から、軸方向他側に突出するコイルエンド部12の径方向内側に配置される。第2拡径部材210は、このコイルエンド部12を径方向外側に移動する。
【0025】
第1拡径部材110と第2拡径部材210とは、別の部材である。このため、ステータコア20の軸方向一側及び他側に配置される第1拡径部材110及び第2拡径部材210のそれぞれが、ステータコア20の軸方向一側及び他側のコイルエンド部12のそれぞれを径方向外側に移動することが可能である。このため、第1拡径部材110及び第2拡径部材210で、コイルエンド部12を径方向外側に移動する中間成形と、コイルエンド部12の復元力(スプリングバック)が生じないように塑性変形させる拡張成形と、を実施することができる。したがって、生産性を向上することができる。
【0026】
第1拡径部材110の径方向外側形状と、第2拡径部材210の径方向外側形状とは、同じである。形状が同じであることで、コイル10の軸方向のズレを抑制することができる。本実施形態では、第1拡径部材110の形状と、第2拡径部材210の形状とは、同じである。
図2では、第1拡径部材110と第2拡径部材210とは、ステータコア20の軸方向中央を横切る径方向線に対して、対称の形状を有する。なお、第1拡径部材110の径方向外側形状と、第2拡径部材210の径方向外側形状とが同じであることに限定されず、径方向の幅が同じでもよい。なお、後述する第2実施形態の第1部113、213の径方向外側形状と、第2部114、214の径方向外側形状とが同じでもよい。
【0027】
図3及び
図4に示すように、第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向内側面111、211は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。すなわち、径方向内側面111、211は、テーパ形状を有する。径方向内側面111、211は、移動機構120、220と接触する。
【0028】
図3及び
図4に示す移動機構120、220は、第1拡径部材110及び第2拡径部材210を径方向外側に移動する。移動機構120、220により、第1拡径部材110及び第2拡径部材210が径方向外側に移動することによって、コイルエンド部12を径方向外側に移動させることができる。
【0029】
本実施形態の移動機構120は、第1拡径部材110の軸方向一側、かつ、第1拡径部材110の径方向内側に配置される。移動機構220は、第2拡径部材210の軸方向他側、かつ、第2拡径部材210の径方向内側に配置される。
【0030】
移動機構120、220は、ステータコア20に近づくにつれて幅が狭くなる形状を有する。すなわち、移動機構120、220の側面121、221は、第1拡径部材110の径方向内側面111及び第2拡径部材210の径方向内側面211と反対に傾斜するテーパ形状を有する。
【0031】
移動機構120、220は、軸方向に移動する。詳細には、移動機構120が軸方向一側から他側に移動すると、移動機構120の側面121が第1拡径部材110の径方向内側面111を摺動するので、第1拡径部材110を径方向外側に移動する。移動機構220が軸方向他側から一側に移動すると、移動機構220の側面221が第2拡径部材210の径方向内側面211を摺動するので、第2拡径部材210を径方向外側に移動する。
【0032】
なお、本実施形態の移動機構120、220は、第1装置100及び第2装置200のそれぞれに配置される別の部材であるが、これに限定されない。移動機構は、第1拡径部材110及び第2拡径部材210を同時に移動させる1つの部材であってもよい。
【0033】
コイル成形装置2は、第1拡径部材110の径方向外側への移動と、第2拡径部材210の径方向外側への移動とを同時に行うように制御する制御部をさらに備える。制御部は、第1拡径部材110の径方向外側への移動のタイミングと、第2拡径部材210の径方向外側への移動のタイミングとを合わせるように、制御する。第1拡径部材110の径方向外側への移動と、第2拡径部材210の径方向外側への移動と、を同時に行うことにより、コイルエンド部12の径方向外側への移動の際に、コイル辺部11の軸方向への移動を抑制できるので、コイルエンド部12にかかる負荷を低減できる。
【0034】
本実施形態のコイル成形装置2は、コイルエンド部12を径方向外側に移動する中間成形工程と、中間成形工程の後に実施され、コイルエンド部12を塑性変形する拡径成形工程と、を実施することができる。すなわち、第1拡径部材110及び第2拡径部材210は、コイルエンド部12を径方向外側に移動しながら、塑性変形をする。
【0035】
(ステータの製造方法)
続いて、
図1~
図5を参照して、ステータ1の製造方法について説明する。本実施形態のステータ1の製造方法は、上述したコイル成形装置2を用いて、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に挿入されたコイル10を有するステータ1を製造する方法である。
【0036】
まず、
図5に示すように、スロット21内に収容される二つのコイル辺部11と、二つのコイル辺部11を繋ぎ、ステータコア20の軸方向両側に配置されるコイルエンド部12と、を含むコイル10を形成する(ステップS1)。この工程(S1)で形成するコイル10は、環状である。
【0037】
次に、コイル10をスロット21に挿入する(ステップS2)。この工程(S2)では、例えば、ブレード及びストリッパを備えるコイル挿入装置を用いる。挿入する工程(S2)を実施すると、コイル辺部11はスロット21内に収容されるとともに、コイルエンド部12はステータコア20の端面から突出した状態となる。
【0038】
次に、コイル成形装置2を設置する(ステップS3)。この工程(S3)では、第1装置100をステータコア20の軸方向一側に配置するとともに、第2装置200をステータコア20の軸方向他側に配置する。
【0039】
次に、ステータコア20の軸方向一側かつコイルエンド部12の径方向内側に配置され、径方向に移動する第1拡径部材110によって、ステータコア20の軸方向一側に位置するコイルエンド部12を径方向外側に移動する第1移動工程(S4)を実施する。この工程(S4)では、移動機構120を軸方向一側から他側に移動することによって、移動機構120が第1拡径部材110を
図3から
図4に示す状態になるように、径方向内側から外側に移動する。第1拡径部材110が径方向外側に移動することによって、コイルエンド部12が径方向外側に移動する。この第1移動工程(S4)を実施することで、コイルエンド部12を径方向外側に移動する中間成形を実施することができる。
【0040】
また、ステータコア20の軸方向他側かつコイルエンド部12の径方向内側に配置され、径方向に移動し、第1拡径部材110と別の第2拡径部材210によって、ステータコア20の軸方向他側に位置するコイルエンド部12を径方向外側に移動する第2移動工程(S5)を実施する。この工程(S5)では、移動機構220を軸方向他側から一側に移動することによって、移動機構220が第2拡径部材210を
図3から
図4に示す状態になるように、径方向内側から外側に移動する。第2拡径部材210が径方向外側に移動することによって、コイルエンド部12が径方向外側に移動する。この第2移動工程(S5)を実施することで、コイルエンド部12を径方向外側に移動する中間成形を実施することができる。
【0041】
第1移動工程(S4)と、第2移動工程(S5)とを、同じタイミングで実施する。本実施形態では、制御部により、第1拡径部材110の径方向外側への移動と、第2拡径部材210の径方向外側への移動とを、同時に行うように制御する。
【0042】
また、第1移動工程(S4)と、第2移動工程(S5)とを、同じタイミングで実施することにより、中間成形工程及び拡張成形工程を同じタイミングで実施する。
【0043】
以上の工程(S1~S5)を実施することにより、
図1に示すステータ1を製造することができる。本実施形態では、中間成形工程において、別の部材である第1拡径部材110及び第2拡径部材210を用いて行う。このため、中間成形工程及び拡張成形工程を、第1拡径部材110及び第2拡径部材210で実施できるので、生産性を向上できる。
【0044】
また、第1移動工程(S4)と第2移動工程(S5)とを同じタイミングで実施することにより、コイルエンド部12とステータ1の軸方向端面との摺動による負荷を低減できる。このため、本実施形態のコイル成形装置2を用いることにより、高占積率のコイル10を備えるステータ1を製造することができる。
【0045】
[変形例]
上記実施形態では、
図3及び
図4に示すように、第1拡径部材110及び第2拡径部材210がステータコア20に近づくにつれて幅が広くなるテーパ形状で、移動機構120、220がステータコア20に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ形状であるが、これに限定されない。例えば、第1拡径部材110及び第2拡径部材210がステータコア20に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ形状で、移動機構120、220がステータコア20に近づくにつれて幅が広くなるテーパ形状であってもよい。
【0046】
また、第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向内側面111、211がテーパ形状で、かつ、移動機構120、220の側面121、221もテーパ形状であるが、移動機構は、第1拡径部材110及び第2拡径部材210を径方向外側に移動すれば、これに限定されない。本変形例では、移動機構120、220の側面121、221は、軸方向に延びる。この場合、例えば、
図6に示すように、第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向内側面111、211は、軸方向において傾斜せずに延びる。
【0047】
また、上述した実施形態では、
図2及び
図3に示すように、第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向外側面112、212は、軸方向において傾斜せずに延びる。本変形では、
図7及び
図8に示すように、第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向外側面112、212は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。換言すると、第1拡径部材110及び第2拡径部材210において、コイルエンド部12と接触する少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて、径方向内側に傾斜する。
【0048】
さらに換言すると、第1拡径部材110及び第2拡径部材210において、ステータコア20と軸方向に重なる部分の少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。この場合、第1拡径部材110及び第2拡径部材210のテーパ状の部分を、コイルエンド部12と接触させることが可能になる。このため、コイルエンド部12に大きな負荷が生じることを抑制できる。
【0049】
第1拡径部材110及び第2拡径部材210の径方向外側面112、212は、
図1に示すステータコア20のスロット21の径方向外側端縁21aまで傾斜していることが好ましい。
【0050】
また、
図8では、第1拡径部材110及び第2拡径部材210において、コイルエンド部12と接触する全体は、ステータコア20に近づくにつれて、径方向内側に傾斜する。
【0051】
[第2実施形態]
図9~
図13を参照して、第2実施形態のコイル成形装置3を説明する。第2実施形態のコイル成形装置3は、基本的には第1実施形態及び変形例のコイル成形装置2と同様であるが、第1拡径部材110及び第2拡径部材210は、第1部113、213と、第2部114、214と、を含む点において異なる。
【0052】
図9に示すように、第1部113、213は、第2部114、214よりも径方向内側にコイル10と接触する部分を有する。第2部114、214は、第1部113、213よりも径方向外側にコイル10と接触する部分を有する。第1部113、213で、コイルエンド部12におけるステータコア20と相対的に近い根元部分を径方向外側に移動することができる。このため、第1部113、213でコイルエンド部12の根元部分を押さえて、第2部114、214で、コイルエンド部12におけるステータコア20と相対的に遠い先端部分を径方向外側に移動することができる。したがって、コイルエンド部12の径方向外側への移動の際に、コイル辺部11の軸方向への移動を抑制できるので、コイルエンド部12の負荷を低減できる。
【0053】
第1部113、213は、ステータコア20と軸方向において相対的に近い。第2部114、214は、ステータコア20と軸方向において相対的に遠い。
【0054】
第1拡径部材110において、第1部113と第2部114とは、別の部材である。第2拡径部材210において、第1部213と第2部214とは、別の部材である。
【0055】
第1部113、213と、第2部114、214とは、同じ形状であってもよいが、ここでは、異なる形状である。
【0056】
また、第1部113、213と、第2部114、214とは、同じタイミングで移動するように制御されてもよいが、ここでは、別々に移動するように制御される。
【0057】
第1部113、213と、第2部114、214とは、接触するように配置されてもよく、分離して配置されてもよい。
【0058】
詳細には、第1拡径部材110の第1部113は、ステータコア20の軸方向一側端面よりも一側において、軸方向他側に配置される。第2部114は、ステータコア20の軸方向一側端面よりも一側において、軸方向一側に配置される。
【0059】
第2拡径部材210の第1部213は、ステータコア20の軸方向他側端面よりも他側において、軸方向一側に配置される。第2部214は、ステータコア20の軸方向他側端面よりも他側において、軸方向他側に配置される。
【0060】
本実施形態では、第1拡径部材110の第1部113と、第2拡径部材210の第1部213とは、同じ形状であり、対称に配置される。また、第1拡径部材110の第2部114と、第2拡径部材210の第2部214とは、同じ形状であり、対称に配置される。
【0061】
第1部113、213は、
図10に示す第1コイルエンド部12aを径方向外側に移動する。第2部114、214は、
図10に示す第2コイルエンド部12bを径方向外側に移動する。
【0062】
なお、
図10に示すように、コイルエンド部12は、コイル辺部11と軸方向に重なる第1コイルエンド部12aと、第1コイルエンド部12aを周方向に繋ぐ第2コイルエンド部12bと、を有する。第1コイルエンド部12aは、コイルエンド部12の根元部分である。第2コイルエンド部12bは、コイルエンド部12の先端部分、すなわち渡り部である。
【0063】
本実施形態では、第1拡径部材110は、第1部113及び第2部114からなり、第2拡径部材210は、第1部213及び第2部214からなる。すなわち、第1拡径部材110は、第1部113及び第2部114以外の部材を含まず、第2拡径部材210は、第1部213及び第2部214以外の部材を含まない。
【0064】
また、
図7及び
図8に示す実施形態1の変形例と同様に、本実施形態の第1拡径部材110及び第2拡径部材210において、ステータコア20と軸方向に重なる部分の少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。
【0065】
具体的には、
図11~
図13に示すように、第2部114、214の少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。これにより、コイルエンド部12の先端部分である第2コイルエンド部12bを径方向外側へ容易に移動することができる。さらに、コイルエンド部12の先端部分である第2コイルエンド部12bに大きな負荷が生じることを抑制できる。
【0066】
また、第1部113、213の少なくとも一部及び第2部114、214の少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。これにより、根元部分である第1コイルエンド部12a及び先端部分である第2コイルエンド部12bを径方向に容易に移動することができる。さらに、根元部分である第1コイルエンド部12a及び先端部分である第2コイルエンド部12bに大きな負荷が生じることを抑制できる。
【0067】
詳細には、
図11に示すように、第1部113、213は、ステータコア20と軸方向において最も近い根元部113a、213aと、ステータコア20と軸方向において根元部113a、213aよりも遠い第1中間部113b、213bと、からなる。第1中間部113b、213bは、第1部113、213において、根元部113a、213a以外の部分である。すなわち、根元部113a、213a及び第1中間部113b、213bは、単一の部材の異なる部分である。
【0068】
第2部114、214は、ステータコア20と軸方向において最も遠い先端部114a、214aと、ステータコア20と軸方向において先端部114a、214aよりも近い第2中間部114b、214bと、からなる。第2中間部114b、214bは、第2部114、214において、先端部114a、214a以外の部分である。すなわち、先端部114a、214a及び第2中間部114b、214bは、単一の部材の異なる部分である。
【0069】
「単一の部材」と説明としたが、別々の部材を接続して第1部113、213及び第2部114、214としても良い。例えば、第1部113、213の根本部113a、213aと第1中間部113b、213bとを、接着材等を使用してネジ止めをしてもよい。第2部114、214も同様である。なお、この場合においても、第1中間部113b、213bおよび第2中間部114b、214bは単一の部材であることが好ましい。さらに言えば、少なくとも第1中間部113b、213b及び第2中間部114b、214bの径方向外側面112、212(コイルと接触する部分)は単一の部材であることが好ましい。
【0070】
第1中間部113b、213b及び第2中間部114b、214bの少なくとも一部は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。これにより、コイルエンド部12と接触する部分を確実に径方向外側に移動することができ、コイルエンド部12に大きな負荷が生じることを抑制できる。本実施形態では、第1中間部113b、213b及び第2中間部114b、214bの径方向外側全体は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。具体的には、第1中間部113b、213b及び第2中間部114b、214bの径方向外側面112、212の全体は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。
【0071】
また、
図12に示すように、第1部113、213及び第2部114、214の径方向外側全体は、ステータコアに近づくにつれて径方向内側に傾斜してもよい。これにより、コイルエンド部12と接触する部分を確実に径方向外側に移動することができ、コイルエンド部12に大きな負荷が生じることを抑制できる。詳細には、第1中間部113b、213b及び根元部113a、213aの径方向外側面112は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。第2中間部114b、214b及び先端部114a、214aの径方向外側面112、212全体は、ステータコア20に近づくにつれて径方向内側に傾斜する。すなわち、第1拡径部材110の径方向外側面112の径方向外側面112全体、及び、第2拡径部材210の径方向外側面212全体は、テーパ形状を有する。
【0072】
図11及び
図12では、第1部113、213における第2部114、214側の端面の周方向幅と、第2部114、214における第1部113、213側の端面の周方向幅とは、同じである。すなわち、第1中間部113b、213bにおける第2中間部114b、214b側の端面の周方向幅と、第2中間部114b、214bにおける第1中間部113b、213b側の端面の周方向幅とは、同じである。この場合、同じ幅になるので、よりコイルエンド部12を径方向外側に折り曲げることができる。したがって、コイルエンド部12の径方向外側への移動の際に、コイル辺部11の軸方向への移動を抑制できるので、コイルエンド部12の負荷を低減できる。
【0073】
図13に示すように、第2部114、214における第1部113、213側の端面の周方向幅は、第1部113、213における第2部114、214側の端面の周方向幅よりも小さくてもよい。すなわち、第2中間部114b、214bにおける第1中間部113b、213b側の端面の周方向幅は、第1中間部113b、213bにおける第2中間部114b、214b側の端面の周方向幅よりも小さくてもよい。この場合、第1部113、213の径方向外側面と、第2部114、214の径方向外側面との間には、段差がある。この場合、コイルエンド部12に沿って、形状を変更でき、より確実にコイルエンド部12を径方向外側に折り曲げることができる。したがって、コイルエンド部12の径方向外側への移動の際に、コイル辺部11の軸方向への移動を抑制できるので、コイルエンド部12の負荷を低減できる。
【0074】
本実施形態の移動機構は、第1部113、213及び第2部114、214の少なくとも一方を径方向外側に移動する。ここでは、移動機構は、第1部113、213及び第2部114、214を径方向外側に移動する。移動機構は、例えば、第1部113、213を径方向外側に移動する部材と、第2部114、214を径方向外側に移動する部材と、を含む。この場合、第1部113、213を移動することによって第1コイルエンド部12aのみを成形することと、第2部114、214を移動することによって第2コイルエンド部12bのみを成形することとが可能である。
【0075】
移動機構は、第1部113、213の径方向外側に移動する速度と、第2部114、214の径方向外側に移動する速度とを同じにしてもよく、異ならせてもよい。前者の場合、コイルエンド部12の根元部分と先端部分との成形を同じにすることができる。後者の場合、コイルエンド部12の根元部分と先端部分との成形を変えることができる。
【0076】
本実施形態のステータの製造方法は、実施形態1のステータの製造方法と同様であるが、第1部113、213と、第2部114、214とを別々に径方向外側に移動する点において異なる。
【0077】
具体的には、第1移動工程(S4)では、移動機構により、第1部113を径方向外側に移動した後、第2部114を径方向外側に移動する。第2移動工程(S5)では、移動機構により、第1部213を径方向外側に移動した後、第2部214を径方向外側に移動する。第1移動工程(S4)で第1部113を径方向外側に移動するタイミングと、第2移動工程(S5)で第1部213を径方向外側に移動するタイミングとは、同じである。第1移動工程(S4)で第2部114を径方向外側に移動するタイミングと、第2移動工程(S5)で第2部214を径方向外側に移動するタイミングとは、同じである。これにより、コイルエンド部12の先端部分である第2コイルエンド部12bよりも先に、コイルエンド部12の根元部分である第1コイルエンド部12aを成形することが容易である。
【0078】
なお、第1移動工程(S4)における第1部113の移動、及び、第2移動工程(S5)における第1部213の移動は、第1装置100及び第2装置200をステータコア20の軸方向一側及び他側への設置と同時に実施されてもよい。
【0079】
また、第1部113、213と、第2部114、214と、を同時に径方向外側に移動してもよい。
【0080】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 :ステータ
2,3 :コイル成形装置
10 :コイル
11 :コイル辺部
12 :コイルエンド部
20 :ステータコア
110 :第1拡径部材
113,213:第1部
113a :根元部
113b :第1中間部
114,214 :第2部
120,220 :移動機構
210 :第2拡径部材
213b :第2中間部
214 :第2部
214a :先端部
214b :第2中間部