(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156299
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車載中継装置、車載通信システムおよび通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20221006BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059904
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】大津 智弘
(72)【発明者】
【氏名】菊地 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輔
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB02
5K033DA13
5K033DB19
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、処理負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行う。
【解決手段】車載中継装置は、複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置であって、複数の前記車載装置間の通信データを中継する中継部と、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知する処理部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置であって、
複数の前記車載装置間の通信データを中継する中継部と、
前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知する処理部とを備える、車載中継装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記共通プロトコルの通知を受けた前記各車載装置の両方から前記共通プロトコルを使用しない旨の通知を受けた場合、前記各車載装置間で送受信される通信データの通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する、請求項1に記載の車載中継装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記車載通信システムを搭載する車両の運転状態に応じて、前記変換処理を行うか否かを判断する、請求項2に記載の車載中継装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記車載通信システムにおける通信状態に応じて、前記変換処理を行うか否かを判断する、請求項2または請求項3に記載の車載中継装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記変換処理を行うべきか否かを定期的または不定期に判断する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項6】
前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた後の通信データに、通信プロトコルが変換された旨を示す情報を含めて中継する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項7】
前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた通信データに、前記変換処理前の通信プロトコルを示す情報を含めて中継する、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項8】
前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた通信データに、前記変換処理を停止する条件を示す情報を含めて中継する、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記変換処理を行わないと判断した場合、前記変換処理を行わない旨の通知、および前記変換処理を行うための条件を画面に表示する処理を行う、請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項10】
前記車載中継装置は、さらに、
TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)レイヤでの通信データの中継に関する中継許可情報を保持する記憶部を備え、
前記処理部は、前記各車載装置間の通信プロトコルの相違を判断するプロトコル判断を行い、
前記中継許可情報は、前記処理部による前記プロトコル判断の判断結果が得られる前において、前記各車載装置間の通信データのTCP/IPレイヤでの中継を禁止する旨を示し、
前記処理部は、前記プロトコル判断において、前記各車載装置間の通信プロトコルが一致すると判断した場合、前記中継許可情報の内容を、前記各車載装置間の通信データのTCP/IPレイヤでの中継を許可する旨に変更し、前記各車載装置間の通信プロトコルが異なると判断した場合、前記共通プロトコルを前記各車載装置に通知する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項11】
前記車載中継装置は、さらに、
前記車載通信システムが提供するサービスに用いられる通信プロトコルであって、変換可能な通信プロトコルの種別の一覧を示す変換用情報を保持する記憶部を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車載中継装置。
【請求項12】
前記変換用情報は、サービスごとの通信プロトコルの種別の一覧を示す、請求項11に記載の車載中継装置。
【請求項13】
前記車載通信システムが提供する複数のサービスは、互いに異なるネットワークに属する前記車載装置間で実現されるサービス、および同一のネットワークに属する前記車載装置間で実現されるサービスの少なくともいずれか一方を含む、請求項12に記載の車載中継装置。
【請求項14】
車載中継装置を含む複数の車載装置を備え、
前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、
前記車載中継装置は、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知し、
前記各車載装置は、前記共通プロトコルの通知を受けると、前記共通プロトコルに従う通信に切り替えるか否かを判断する、車載通信システム。
【請求項15】
複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置、における通信制御方法であって、
前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、
前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを選定するステップと、
選定した前記共通プロトコルを前記各車載装置に通知するステップとを含む、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載中継装置、車載通信システムおよび通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載ネットワークにおけるシステム構成の変化に応じて通信設定の調整を行う技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2009-161103号公報)には、以下のような車両制御装置が開示されている。すなわち、制御装置は、車両に搭載された制御対象の挙動を制御する。イントラボックスは、供給元の異なる制御装置の交換、制御装置の後付け、ソフトウェアおよびハードウェアのアップデート等のシステム構成の変化を、通信系を介して検出する。イントラボックスの通信設定手段は、検出したシステム構成に応じて、各制御装置に対する通信設定を調整する。イントラボックスを構成するCPU、ROM、RAM、およびフラッシュメモリ等のハードウェアとしての処理装置は、制御装置とは異なる独立した処理装置で構成されている。
【0003】
また、既存の車載ネットワークに新たなネットワークを増設する場合における、データ形式の変換を行う技術が開発されている。たとえば、特許文献2(特開2009-27245号公報)には、以下のような変換ユニットが開示されている。すなわち、変換ユニットは、第1のネットワークと第2のネットワークとを接続するための変換ユニットであって、ゲートウェイ変換処理部と、前記ゲートウェイ変換処理部で使用されるデータ形式と前記第1のネットワークで使用されるデータ形式との変換を行うための第1のコンバータと、前記ゲートウェイ変換処理部で使用されるデータ形式と前記第2のネットワークで使用されるデータ形式との変換を行うための第2のコンバータとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-161103号公報
【特許文献2】特開2009-27245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載装置間で通信プロトコルが異なる場合、これら車載装置間での通信データの送受信を行うことができない。
【0006】
上述した特許文献1に記載の車両制御装置では、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合の対処方法については考慮されていない。また、特許文献2に記載の変換ユニットでは、ゲートウェイ処理部が、既存のネットワークと増設されたネットワークとの間におけるすべての通信に対してプロトコル変換を行うため、ゲートウェイ処理部における処理負荷が増加したり、ネットワーク間における通信トラフィックが増加したりする等の問題があった。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる車載中継装置、車載通信システムおよび通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車載中継装置は、複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置であって、複数の前記車載装置間の通信データを中継する中継部と、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知する処理部とを備える。
【0009】
本開示の車載通信システムは、車載中継装置を含む複数の車載装置を備え、前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、前記車載中継装置は、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知し、前記各車載装置は、前記共通プロトコルの通知を受けると、前記共通プロトコルに従う通信に切り替えるか否かを判断する。
【0010】
本開示の通信制御方法は、複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置、における通信制御方法であって、前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを選定するステップと、選定した前記共通プロトコルを前記各車載装置に通知するステップとを備える。
【0011】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載中継装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示は、車載中継装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0012】
また、本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする通信制御方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示は、車載通信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係るゲートウェイ装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置に保持されている中継ルールテーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置に保存されている、サービスに用いられる通信データの変換可能な通信プロトコルの種別の一覧を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置における変換処理部により更新された後の中継ルールテーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置における変換処理部により表示される画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理を実行する場合における、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、サービスのサーバとクライアントとの間において通信プロトコルが一致する場合における、当該サービスの確立までの各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図14】
図14は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理を実行する場合における、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【
図15】
図15は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、サービスのサーバとクライアントとの間において通信プロトコルが一致する場合における、当該サービスの確立までの各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0016】
(1)本開示の実施の形態に係る車載中継装置は、複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置であって、複数の前記車載装置間の通信データを中継する中継部と、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知する処理部とを備える。
【0017】
このような構成により、たとえば、車載装置同士の通信プロトコルが異なる場合であっても、各車載装置が通信プロトコルを共通プロトコルに切り替えることにより、車載中継装置における通信プロトコルの変換処理が不要になる。たとえば、車載中継装置において通信プロトコルの変換処理の要否を確認し、必要に応じて変換処理を行うことができるため、車載中継装置による処理負荷の増加、および車載通信システムにおける通信トラフィックの増加等を抑えることができる。したがって、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる。
【0018】
(2)好ましくは、前記処理部は、前記共通プロトコルの通知を受けた前記各車載装置の両方から前記共通プロトコルを使用しない旨の通知を受けた場合、前記各車載装置間で送受信される通信データの通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。
【0019】
このような構成により、各車載装置の少なくともいずれか一方が共通プロトコルを使用する場合には、車載中継装置における通信プロトコルの変換処理を行わず、車載中継装置による処理負荷の増加、および車載通信システムにおける通信トラフィックの増加等を抑えることができる。また、各車載装置の両方が共通プロトコルを使用しない場合であっても、車載中継装置において通信プロトコルの変換処理を行う場合には、車載装置間において互いに通信を行うことができる。さらに、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する構成により、たとえば、車両の状態等に応じて、変換処理を行うタイミングを適切に選択することができる。
【0020】
(3)より好ましくは、前記処理部は、前記車載通信システムを搭載する車両の運転状態に応じて、前記変換処理を行うか否かを判断する。
【0021】
このような構成により、たとえば、車両が自動運転で走行している場合には、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断することにより、車載通信システムにおける負荷の増加を適切に抑えることができる。
【0022】
(4)より好ましくは、前記処理部は、前記車載通信システムにおける通信状態に応じて、前記変換処理を行うか否かを判断する。
【0023】
このような構成により、たとえば、車載通信システムにおける単位時間あたりの通信量が所定の閾値以上である場合には、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断することにより、車載通信システムにおける負荷の増加を適切に抑えることができる。
【0024】
(5)より好ましくは、前記処理部は、前記変換処理を行うべきか否かを定期的または不定期に判断する。
【0025】
このような構成により、車両の状態変化等に応じて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かをより適切に判断することができる。
【0026】
(6)より好ましくは、前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた後の通信データに、通信プロトコルが変換された旨を示す情報を含めて中継する。
【0027】
このような構成により、通信データの受信側において、たとえば、当該通信データの遅延許容時間を長く設定するなど、変換処理による影響を考慮した処理を行うことができる。
【0028】
(7)より好ましくは、前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた通信データに、前記変換処理前の通信プロトコルを示す情報を含めて中継する。
【0029】
このような構成により、通信データの受信側において、たとえば、変換処理前の通信プロトコルの使用を控えるなど、通信プロトコルの相違を考慮した通信を行うことができる。
【0030】
(8)より好ましくは、前記中継部は、前記処理部により前記変換処理が行われた場合、前記変換処理が行われた通信データに、前記変換処理を停止する条件を示す情報を含めて中継する。
【0031】
このような構成により、通信データの受信側において、たとえば、自己の通信量の増加を抑えるなど、条件の内容に応じた対応をとることができる。
【0032】
(9)より好ましくは、前記処理部は、前記変換処理を行わないと判断した場合、前記変換処理を行わない旨の通知、および前記変換処理を行うための条件を画面に表示する処理を行う。
【0033】
このような構成により、たとえば、通信プロトコルの変換処理を行うことによる提供される予定のサービスと、現在提供されているサービスとの優先順位をユーザに選択させて、ユーザの希望により即したサービスを提供することができる。
【0034】
(10)好ましくは、前記車載中継装置は、さらに、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)レイヤでの通信データの中継に関する中継許可情報を保持する記憶部を備え、前記処理部は、前記各車載装置間の通信プロトコルの相違を判断するプロトコル判断を行い、前記中継許可情報は、前記処理部による前記プロトコル判断の判断結果が得られる前において、前記各車載装置間の通信データのTCP/IPレイヤでの中継を禁止する旨を示し、前記処理部は、前記プロトコル判断において、前記各車載装置間の通信プロトコルが一致すると判断した場合、前記中継許可情報の内容を、前記各車載装置間の通信データのTCP/IPレイヤでの中継を許可する旨に変更し、前記各車載装置間の通信プロトコルが異なると判断した場合、前記共通プロトコルを前記各車載装置に通知する。
【0035】
このような構成により、通信プロトコルが一致するとの判断結果を得られた各車載装置間の通信については、その後の通信において、通信プロトコルの相違を判断することなく、中継許可情報を参照することで、中継を許可することを容易に決定することができる。また、各車載装置間の通信プロトコルが異なる場合に共通プロトコルの通知を行うことにより、共通プロトコルの不要な通知を避けることができる。
【0036】
(11)好ましくは、前記車載中継装置は、さらに、前記車載通信システムが提供するサービスに用いられる通信プロトコルであって、変換可能な通信プロトコルの種別の一覧を示す変換用情報を保持する記憶部を備える。
【0037】
このような構成により、変換用情報を確認することにより、共通プロトコルの選定を容易に行うことができる。
【0038】
(12)より好ましくは、前記変換用情報は、サービスごとの通信プロトコルの種別の一覧を示す。
【0039】
このような構成により、通信データが用いられるサービスの種別に着目して、当該サービスに対応する共通プロトコルを容易に選定することができる。
【0040】
(13)より好ましくは、前記車載通信システムが提供する複数のサービスは、互いに異なるネットワークに属する前記車載装置間で実現されるサービス、および同一のネットワークに属する前記車載装置間で実現されるサービスの少なくともいずれか一方を含む。
【0041】
このような構成により、提供されるサービスが、互いに異なるネットワークに属する車載装置間で実現されるサービス、および同一のネットワークに属する車載装置間で実現されるサービスのいずれの場合であっても、当該サービスに対応する共通プロトコルを容易に選定することができる。
【0042】
(14)本開示の実施の形態に係る車載通信システムは、車載中継装置を含む複数の車載装置を備え、前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、前記車載中継装置は、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知し、前記各車載装置は、前記共通プロトコルの通知を受けると、前記共通プロトコルに従う通信に切り替えるか否かを判断する。
【0043】
このような構成により、たとえば、車載装置同士の通信プロトコルが異なる場合であっても、各車載装置が通信プロトコルを共通プロトコルに切り替えることにより、車載中継装置における通信プロトコルの変換処理が不要になる。たとえば、車載中継装置において通信プロトコルの変換処理の要否を確認し、必要に応じて変換処理を行うことができるため、車載中継装置による処理負荷の増加、および車載通信システムにおける通信トラフィックの増加等を抑えることができる。したがって、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる。
【0044】
(15)本開示の実施の形態に係る通信制御方法は、複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置、における通信制御方法であって、前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを選定するステップと、選定した前記共通プロトコルを前記各車載装置に通知するステップとを含む。
【0045】
このような方法により、たとえば、車載装置同士の通信プロトコルが異なる場合であっても、各車載装置が通信プロトコルを共通プロトコルに切り替えることにより、車載中継装置における通信プロトコルの変換処理が不要になる。たとえば、車載中継装置において通信プロトコルの変換処理の要否を確認し、必要に応じて変換処理を行うことができるため、車載中継装置による処理負荷の増加、および車載通信システムにおける通信トラフィックの増加等を抑えることができる。したがって、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる。
【0046】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0047】
<構成および基本動作>
[車載通信システムの構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0048】
図1を参照して、車載通信システム301は、ゲートウェイ装置101Aと、ゲートウェイ装置(車載中継装置)101Bと、車載ECU(Electronic Control Unit)111Aと、車載ECU111Bとを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。
【0049】
以下、ゲートウェイ装置101A,101Bの各々を、ゲートウェイ装置101とも称する。また、車載ECU111A,111Bの各々を、車載ECU111とも称する。また、ゲートウェイ装置101および車載ECU111の各々を、車載装置とも称する。
【0050】
なお、車載通信システム301は、2つのゲートウェイ装置101を備える構成に限らず、1つまたは3つ以上のゲートウェイ装置101を備える構成であってもよい。また、車載通信システム301は、2つの車載ECU111を備える構成に限らず、1つまたは3つ以上の車載ECU111を備える構成であってもよい。
【0051】
また、車載通信システム301は、車載装置として、車両1に一時的に搭載される民生機器を備える構成であってもよい。民生機器は、たとえば、スマートフォン等の端末装置、またはUSB(Universal Serial Bus)メモリなどである。
【0052】
車載ECU111は、たとえば、電動パワーステアリング(Electric Power Steering:EPS)、ブレーキ制御装置、アクセル制御装置、ステアリング制御装置、運転支援システム(Advanced Driver-Assistance System:ADAS)における各種装置への指示等を行う運転支援装置、またはセンサ等である。
【0053】
ゲートウェイ装置101は、たとえば、車両1において異なるケーブル14に接続された複数の車載装置間の通信データを中継する中継処理を行う。ケーブル14は、たとえば、イーサネット(登録商標)の規格に従うケーブルである。
【0054】
車載通信システム301においては、たとえば、イーサネットプロトコル群のTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)より上のレイヤのアプリケーションレイヤの通信プロトコルである、SOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over/Internet Protocol)、MQTT(Message Queueing Telemetry Transport)、OPC UA(OPC Unified Architecture)、またはCoAP(Constrained Application Protocol)等に従って、通信データの送受信が行われる。
【0055】
車載通信システム301における車載装置同士は、互いに通信を行うことにより、車両1におけるサービスの提供を実現する。たとえば、車載装置であるセンサが、車両1の走行状態または周囲の状態に関するセンサ情報を、他の車載装置である運転支援装置へ送信すると仮定する。この場合、センサは、サービスの提供として、センサ情報を運転支援装置へ送信する。運転支援装置は、センサからサービスとして提供されたセンサ情報を受信し、当該センサ情報を用いて、車両1の運転に関する各種制御情報を生成し、生成した各種制御情報をブレーキ制御装置およびステアリング制御装置等へ送信することにより、安全運転支援等のアプリケーションが実現される。
【0056】
以下、サービスの提供を行う側の車載装置を「サーバ」とも称する。また、サービスの提供を受ける側の車載装置を「クライアント」とも称する。
【0057】
[課題の説明]
ここでは、ゲートウェイ装置101B、車載ECU111Aおよび車載ECU111Bが、既存の車載ネットワーク(以下、「既設ネットワーク」とも称する。)に対して新たに接続されたとする。すなわち、車載通信システム301の既設のゲートウェイ装置101Aに対して、ゲートウェイ装置101Bが新たに接続され、さらに、ゲートウェイ装置101Bに車載ECU111A,111Bが接続されたとする。ゲートウェイ装置101B、車載ECU111Aおよび車載ECU111Bを含むネットワークを、以下「増設ネットワーク」とも称する。
【0058】
ゲートウェイ装置101Aは、通信プロトコルP1に従って通信を行う装置であり、車載ECU111Aは、通信プロトコルP3に従って通信を行う装置であり、車載ECU111Bは、通信プロトコルP2に従って通信を行う装置である。
【0059】
たとえば、ゲートウェイ装置101Aは、車両1において提供されるサービスXのクライアントであり、サービスXの提供元であるサーバを探索するための探索メッセージを含む通信データをマルチキャストしたとする。この場合、ゲートウェイ装置101Aから送信された当該通信データは、ゲートウェイ装置101Bにより受信され、ゲートウェイ装置101Bから車載ECU111Aおよび車載ECU111Bへ送信される。
【0060】
また、車載ECU111Bが、サービスXのサーバであるとする。この場合、クライアントであるゲートウェイ装置101Aと、サーバである車載ECU111Bとの間で通信接続が確立されると、サービスXの利用が可能となる。
【0061】
しかしながら、上述のとおり、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111B間では用いられる通信プロトコルが異なるため、通信接続の確立を行うことができず、サービスXを利用することができないという問題がある。また、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111B間において通信接続が確立されないことにより、通信データの再送頻度が増える可能性がある。
【0062】
そこで、本開示の実施の形態に係るゲートウェイ装置101Bは、以下のような構成により、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行う。以下、ゲートウェイ装置101Bのより詳細な構成について説明する。
【0063】
[ゲートウェイ装置101Bの構成]
図2は、本開示の実施の形態に係るゲートウェイ装置の構成の一例を示す図である。
【0064】
ゲートウェイ装置101Bは、変換処理部(処理部)21と、中継部22と、記憶部23と、3つの通信ポート24とを備える。変換処理部21および中継部22は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部23は、たとえば不揮発性メモリである。
【0065】
なお、ゲートウェイ装置101Bでは、3つの通信ポート24が設けられる構成に限らず、2つまたは4つ以上の通信ポート24が設けられる構成であってもよい。
【0066】
通信ポート24は、たとえば、ケーブル14を接続可能な端子である。通信ポート24は、車両1における車載装置にそれぞれ接続可能である。この例では、通信ポート24である3つの通信ポート24A,24B,24Cは、それぞれゲートウェイ装置101A、車載ECU111Aおよび車載ECU111Bにケーブル14を介して接続される。
【0067】
(中継部による適用ルールの確認)
記憶部23には、TCP/IPレイヤでの通信データの中継に関する中継ルールテーブル(中継許可情報)Ta1が保存されている。
【0068】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置に保持されている中継ルールテーブルの一例を示す図である。
【0069】
図3を参照して、中継ルールテーブルTa1には、ゲートウェイ装置101Bにおける通信ポート24ごとに、受信する通信データの、送信元、送信先、TCP/IPレイヤでの通信プロトコル、サービスの種別、および当該通信データ対する制御内容の組が含まれる。
【0070】
たとえば、中継ルールテーブルTa1には、通信ポート24Aから受信した通信データであって、送信元がゲートウェイ装置101Aであり、送信先が車載ECU111Bであり、通信プロトコルがUDP(User Datagram Protocol)である場合、当該通信データの通過を許可して中継処理を行う旨のルール11が示されている。
【0071】
また、中継ルールテーブルTa1には、通信ポート24Aから受信した通信データがマルチキャストで送信されたデータであり、通信プロトコルがUDPであり、サービスXに用いられるデータである場合、当該通信データの中継処理を禁止して当該通信データを変換処理部21へ出力する旨のルール12が示されている。
【0072】
また、中継ルールテーブルTa1には、通信ポート24Aから、上述したルールA1およびルールA2のいずれのルールにも当てはまらない通信データを受信した場合、当該通信データを破棄する旨のルール13が示されている。
【0073】
中継部22は、通信ポート24経由で通信データを受信すると、たとえば、当該通信データを格納したフレームにおけるアプリケーションレイヤのヘッダ部分を確認することにより、当該通信データに適用すべきルールを確認する。そして、中継部22は、確認したルールの示す制御内容に従って、当該通信データの中継処理、当該通信データの変換処理部21への出力、または当該通信データの破棄を行う。
【0074】
(中継部による中継処理)
記憶部23には、さらに、ARLテーブル(Address Resolution Logic)が保存されている。ARLテーブルは、たとえば、車載装置のMACアドレスと当該車載装置を接続先とする通信ポート24の論理ポート番号との対応関係を示す。
【0075】
中継部22は、中継ルールテーブルTa1の示すルールに従い、受信した通信データの中継処理を行う場合、当該通信データを格納したフレームに含まれる送信先MACアドレスを参照する。そして、中継部22は、参照した送信先MACアドレスに対応する出力先をARLテーブルから特定し、当該フレームを、特定した出力先である通信ポート24を介して、対応する車載装置へ送信する。
【0076】
(変換処理部によるプロトコル判断および判断結果に応じた処理)
図4は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置に保存されている、サービスに用いられる通信データの変換可能な通信プロトコルの種別の一覧を示す図である。
【0077】
図4を参照して、記憶部23には、さらに、車載通信システム301が提供するサービスに用いられる通信プロトコルであって、変換可能な通信プロトコルの種別の一覧を示す変換用テーブル(変換用情報)Ta2が保存されている。
【0078】
車載通信システム301が提供する複数のサービスは、互いに異なるネットワークに属する車載装置間で実現されるサービス、および同一のネットワークに属する車載装置間で実現されるサービスの少なくともいずれか一方を含む。
【0079】
たとえば、変換用テーブルTa2は、サービスごとの通信プロトコルの種別の一覧を示す。具体的には、変換用テーブルTa2は、既設ネットワークに属する車載装置と増設ネットワークに属する車載装置との間でグローバル通信により実現されるサービスX、に用いられる通信データが、TCP/IPレイヤより上のレイヤの通信プロトコルP1,P2間で変換可能であることを示す。
【0080】
また、変換用テーブルTa2は、増設ネットワークに属する複数の車載装置間でローカル通信により実現されるサービスY、に用いられる通信データが、TCP/IPレイヤより上のレイヤの通信プロトコルP2,P3間で変換可能であることを示す。
【0081】
変換処理部21は、
図3の中継ルールテーブルTa1の示すルールに従って中継部22から出力された通信データを受けると、たとえば、当該通信データが格納されたフレームのアプリケーションレイヤのヘッダ部分を確認して、当該通信データが用いられるサービスに関する情報(以下、「サービス情報」とも称する。)を取得する。
【0082】
より詳細には、変換処理部21は、TCP/IPレイヤより上のレイヤの通信プロトコル、クライアント、サーバ、メッセージID、リクエストID、バージョンおよびメッセージタイプ等をサービス情報として取得し、取得したサービス情報を変換用テーブルTa2に登録する。
【0083】
具体的には、変換処理部21は、サービスXの探索メッセージを含む通信データ(以下、「探索データ」とも称する。)を受けた場合、当該探索データの通信プロトコルが「P1」であり、サービスXのクライアントがゲートウェイ装置101Aであり、メッセージIDが「0104」であること等を変換用テーブルTa2に登録する。
【0084】
ここでのメッセージID「0104」は、サービスID「01」とメソッドID「04」とを組み合わせたIDである。メソッドID「04」は、通信データが、メッセージタイプである「Req」「Res」「Sub」「Pub」「Err」のうち、探索メッセージに対応する4番目の「Pub」のメッセージを含むことを示す。
【0085】
また、変換処理部21は、サービスXの提供メッセージを含む通信データ(以下、「提供データ」とも称する。)を受けた場合、当該提供データの通信プロトコルが「P2」であり、サービスXのサーバが車載ECU111Bであり、メッセージIDが「02」であること等を変換用テーブルTa2に登録する。
【0086】
ここでのメッセージID「02」は、メソッドIDが「02」であることを示す。メソッドID「02」は、通信データが、メッセージタイプである「Sub」「Pub」のうち、提供メッセージに対応する2番目の「Pub」のメッセージを含むことを示す。
【0087】
なお、
図4では、理解を容易にするために、後述するようにプロキシの役割を果たすゲートウェイ装置101Bが変換用テーブルTa2に登録されている状態を示している。
【0088】
そして、変換処理部21は、変換用テーブルTa2に登録した変換用テーブルTa2を参照して、互いに通信を行う予定の各車載装置の通信プロトコルの相違を判断するプロトコル判断を行う。すなわち、変換処理部21は、同一のサービスに対応する、探索データの通信プロトコルと提供データの通信プロトコルとの相違を判断し、判断結果に応じた処理を行う。
【0089】
(a)通信プロトコルが一致する場合
変換処理部21は、互いに通信を行おうとしている各車載装置の通信プロトコルが一致すると判断した場合、中継ルールテーブルTa1の示す対応するルールの内容を、当該各車載装置の通信データのTCP/IPレイヤでの中継を許可する旨に変更して更新する。
【0090】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置における変換処理部により更新された後の中継ルールテーブルの一例を示す図である。
【0091】
図3および
図5を参照して、たとえば、
図4に示す場合と異なり、ゲートウェイ装置101AからのサービスXの探索データの通信プロトコルと、車載ECU111BからのサービスXの提供データの通信プロトコルとがいずれも通信プロトコルP1であると仮定する。
【0092】
図3に示す中継ルールテーブルTa1には、上述のとおり、変換処理部21によるプロトコル判断の判断結果が得られる前において、通信ポート24Aから受信したサービスXに用いられる通信データに対しては、TCP/IPレイヤでの中継処理を禁止して変換処理部21へ出力する旨のルール12が登録されている。
【0093】
また、
図3に示す中継ルールテーブルTa1には、変換処理部21によるプロトコル判断の判断結果が得られる前において、通信ポート24Cから受信したサービスXに用いられる通信データに対しては、TCP/IPレイヤでの中継処理を禁止して変換処理部21へ出力する旨のルール32が登録されている。
【0094】
この場合、変換処理部21は、
図5において太字および下線で示すように、ルール12の内容を、ゲートウェイ装置101Aから通信ポート24A経由で受信したサービスXに用いられる通信データに対しては、通過を許可して中継処理を行うという内容に変更し、中継ルールテーブルTa1を更新する。
【0095】
また、変換処理部21は、
図5において太字および下線で示すように、ルール32の内容を、車載ECU111Bから通信ポート24C経由で受信したサービスXに用いられる通信データに対しては、通過を許可して中継処理を行うという内容に変更し、中継ルールテーブルTa1を更新する。
【0096】
また、ゲートウェイ装置101Aが、中継ルールテーブルTa1の更新後において、通信プロトコルP1に従うサービスXの探索データをマルチキャストしたとする。この場合、中継部22は、通信ポート24A経由で当該探索データを受信し、当該探索データに適用すべきルールを確認する。
【0097】
そして、中継部22は、更新後の中継ルールテーブルTa1の示すルール12に従い、当該探索データの通過を許可して中継処理を行うと判断し、通信ポート24Cへ当該探索データを出力する中継処理を行う。すなわち、当該探索データは、変換処理部21を経由することなく、中継部22により車載ECU111Bへ送信される。
【0098】
また、車載ECU111Bが、中継ルールテーブルTa1の更新後において、通信プロトコルP1に従うサービスXの提供データをマルチキャストしたとする。この場合、中継部22は、通信ポート24C経由で当該提供データを受信し、当該提供データに適用すべきルールを確認する。
【0099】
そして、中継部22は、更新後の中継ルールテーブルTa1の示すルール32に従い、当該提供データの通過を許可して中継処理を行うと判断し、通信ポート24Aへ当該提供データを出力する中継処理を行う。すなわち、当該提供データは、変換処理部21を経由することなく、中継部22によりゲートウェイ装置101Aへ送信される。
【0100】
(b)通信プロトコルが異なる場合
(b-1)共通プロトコルの通知
変換処理部21は、互いに通信を行おうとしている各車載装置の通信プロトコルが異なると判断した場合、各車載装置の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを各車載装置に通知することにより、当該共通プロトコルの使用を提案する。
【0101】
再び
図4を参照して、より詳細には、サービスXについて、クライアントであるゲートウェイ装置101Aからの探索データの通信プロトコルは「P1」であり、サーバである車載ECU111Bからの提供データの通信プロトコルは「P2」である。この場合、変換処理部21は、サービスXについての探索データの通信プロトコルと提供データの通信プロトコルとが異なると判断し、共通プロトコルを選定する。
【0102】
図4に示す例では、変換用テーブルTa2は、サービスXに用いられるメッセージタイプ「Pub」の通信データは、通信プロトコル「P1」および「P2」のいずれにも変換可能であることを示している。このため、変換処理部21は、たとえば、通信プロトコルP1を共通プロトコルとして選定し、選定した共通プロトコルを車載ECU111Bに通知する。
【0103】
車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bから共通プロトコルの通知を受けると、当該共通プロトコルに切替可能か否かを判断し、判断結果をゲートウェイ装置101Bに通知する。車載ECU111Bは、共通プロトコルに切替可能である場合、当該共通プロトコルに切り替えて提供データの送信を行う。
【0104】
ゲートウェイ装置101Bは、車載ECU111Bから共通プロトコルに従って新たに送信された提供データを受信し、当該提供データの適用ルールの確認、および上述したプロトコル判断を行う。このとき、ゲートウェイ装置101Bは、互いに通信を行う予定のゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111B間において通信プロトコルが一致していると判断する。そして、「(a)通信プロトコルが一致する場合」において説明した動作が行われ、中継ルールテーブルTa1が
図5に示すように更新される。
【0105】
一方、車載ECU111Bは、共通プロトコルの使用を希望しない場合、当該共通プロトコルを使用しない旨をゲートウェイ装置101Bに通知する。ゲートウェイ装置101Bにおける変換処理部21は、共通プロトコルを使用しない旨の通知を受けると、後述するように、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。
【0106】
なお、変換処理部21は、ゲートウェイ装置101Bに接続された車載ECU111のゲートウェイ装置101Bによる認証処理のタイミングにおいて、当該車載ECU111が使用可能な通信プロトコルを確認してもよい。
【0107】
また、変換処理部21は、車載ECU111の認証処理のタイミングにおいて当該車載ECU111が使用可能な通信プロトコルを確認するだけでなく、さらに、当該タイミングにおいて、当該車載ECU111に共通プロトコルを通知してもよい。
【0108】
(b-2)変換処理を行うか否かの判断
変換処理部21は、共通プロトコルの通知を受けた各車載装置の両方から当該共通プロトコルを使用しない旨の通知を受けた場合、各車載装置間で送受信される通信データの通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。
【0109】
より詳細には、変換処理部21は、たとえば、車両1の運転状態に応じて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。具体的には、変換処理部21は、車両1が自動運転で走行している場合、車載通信システム301における処理負荷の増加を防ぐため、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断する。
【0110】
また、変換処理部21は、車載通信システム301における通信状態に応じて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断してもよい。具体的には、変換処理部21は、車載通信システム301における単位時間あたりの通信量が所定の閾値以上である場合、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断する。
【0111】
また、変換処理部21は、車載通信システム301において提供されているサービスの種別に付された優先度に応じて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断してもよい。具体的には、変換処理部21は、車載通信システム301において現在提供されているサービスの優先度が、通信プロトコルの変換処理の対象となるサービスの優先度よりも高い場合、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断する。
【0112】
変換処理部21は、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを、不定期に繰り返し判断する。たとえば、変換処理部21は、共通プロトコルの通知先である車載装置から対応するサービスに用いられる通信データを受信するたびに、当該通信データの通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。
【0113】
なお、変換処理部21は、サービスに用いられる通信データの受信の有無にかかわらず、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを定期的に判断してもよい。この場合、変換処理部21は、サービスに用いられる通信データを受信すると、最新の判断結果を採用する。
【0114】
また、変換処理部21は、上述した判断基準を組み合わせた判断基準を用いて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断してもよい。
【0115】
変換処理部21は、変換処理を行うと判断した場合、後述する変換処理を行う。一方、変換処理部21は、たとえば、通信プロトコルの変換処理を行わないと判断した場合、変換処理を行わない旨の通知、および当該変換処理を行うための条件を画面に表示する処理を行う。
【0116】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載中継装置における変換処理部により表示される画面の一例を示す図である。
【0117】
図6を参照して、変換処理部21は、たとえば、車両1に搭載された図示しないモニタ等に、通信プロトコルの変換処理に対応するサービスXを利用することができない旨、および車両1の運転状態を自動運転から手動運転に切り替えることによりサービスXを利用することができる旨等を表示する処理を行う。そして、変換処理部21は、たとえば、ユーザにより車両1の運転状態を自動運転から手動運転に切り替える操作が行われた場合、通信プロトコルの変換処理を行うと判断する。
【0118】
(変換処理部による通信プロトコルの変換処理)
変換処理部21は、通信プロトコルの変換処理を行うと判断した場合、対応する各車載装置に対して、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を提案する。すなわち、変換処理部21は、サービスXに用いられる通信データの通信プロトコルの変換処理を行うと判断した場合、サービスXのクライアントおよびサーバへ、通信プロトコルの変換処理を行ってもよいか否かを問い合わせる。
【0119】
そして、変換処理部21は、サービスXのクライアントおよびサーバの両方から、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を承諾する旨の通知を受けた場合、当該クライアントからのサービスXに用いられる通信データ、および当該サーバからのサービスXに用いられる通信データについて、通信プロトコルの変換処理を行う。
【0120】
より詳細には、変換処理部21は、図示しない第1プロキシおよび第2プロキシを含む。第1プロキシおよび第2プロキシは、それぞれ、クライアントの代理およびサーバの代理として機能する。
【0121】
たとえば、ゲートウェイ装置101Aが、通信プロトコルP1に従うサービスXの探索データを送信したとする。この場合、変換処理部21における第2プロキシが、当該探索データを通信ポート24および中継部22経由で受信し、受信した当該探索データに対する終端処理を行う。
【0122】
変換処理部21は、第2プロキシにより受信された当該探索データを通信プロトコルP2に従う探索データに変換する。具体的には、変換処理部21は、
図4に示す変換用テーブルTa2を参照して、探索データが格納されたフレームのアプリケーションレイヤのヘッダ部分におけるメッセージIDを「0104」から「02」に書き換える等の処理を行うことにより、当該探索データの対応する通信プロトコルを「P1」から「P2」に変換する。そして、第1プロキシは、変換後の通信プロトコルP2に従う探索データを中継部22へ出力する。
【0123】
中継部22は、変換処理部21により変換処理が行われた後の探索データを、通信ポート24C経由で車載ECU111Bへ送信する。
【0124】
このとき、中継部22は、たとえば、通信データに、通信プロトコルの変換処理が行われた旨を示す情報、変換処理前の通信プロトコルを示す情報、および変換処理を停止する条件を示す情報のうちの少なくともいずれか1つを含めて中継する。変換処理を停止する条件とは、たとえば、車両1の運転状態を手動運転から自動運転に切り替える操作が行われること、または車載通信システム301における単位時間あたりの通信量が所定の閾値以上になること等である。
【0125】
車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bから送信された変換処理後の探索データを受信すると、たとえば、当該探索データに含まれる、通信プロトコルの変換処理が行われた旨を示す情報に基づいて、当該通信データの遅延許容時間を長く設定するなどの変換処理による影響を考慮した処理を行う。
【0126】
また、車載ECU111Bは、たとえば、当該探索データに含まれる変換処理前の通信プロトコルを示す情報に基づいて、変換処理前の通信プロトコルの使用を控えるなど、通信プロトコルの相違を考慮した通信を行ってもよい。また、車載ECU111Bは、たとえば、当該探索データに含まれる、変換処理を停止する条件を示す情報に基づいて、自己の通信量の増加を抑えるなど、条件の内容に応じた対応をとってもよい。
【0127】
また、たとえば、車載ECU111Bが、通信プロトコルP2に従うサービスXの提供データを送信したとする。この場合、変換処理部21における第1プロキシが、当該提供データを通信ポート24および中継部22経由で受信し、受信した当該提供データに対する終端処理を行う。
【0128】
変換処理部21は、第1プロキシにより受信された当該提供データを通信プロトコルP1に従う提供データに変換する。具体的には、変換処理部21は、
図4に示す変換用テーブルTa2を参照して、探索データが格納されたフレームのアプリケーションレイヤのヘッダ部分におけるメッセージIDを「02」から「0104」に書き換える等の処理を行うことにより、当該探索データの対応する通信プロトコルを「P2」から「P1」に変換する。そして、第2プロキシは、変換後の通信プロトコルP1に従う提供データを中継部22へ出力する。
【0129】
中継部22は、変換処理部21により変換処理が行われた後の提供データを、通信ポート24A経由でゲートウェイ装置101Aへ送信する。これにより、車載通信システム301においてサービスXのサーバとクライアントとの通信接続が確立し、サービスXを利用することができる。
【0130】
<動作の流れ>
本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算変換処理部は、以下のシーケンスまたはフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0131】
[グローバル通信によるサービスの実現]
(通信プロトコルの変換処理の提案までの動作)
図7および
図8は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
図8は、
図7に示す動作の流れの続きを示している。
【0132】
図7および
図8を参照して、まず、ゲートウェイ装置101Bは、たとえば、既設ネットワークに対して新たに接続されると、
図3の中継ルールテーブルTa1の示すルールに従って制御を行うように、自己の初期設定を行う(ステップS11)。
【0133】
次に、ゲートウェイ装置101Aは、通信プロトコルP1に従うサービスXの探索データをマルチキャストしたとする(ステップS12)。
【0134】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、ゲートウェイ装置101Aから送信された探索データを受信すると、中継ルールテーブルTa1の示すルールのうち、当該探索データに適用すべきルールを確認し、確認したルールに従う処理を行う。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、中継ルールテーブルTa1の示すルールに従い、当該探索データの中継処理を遮断したとする。
【0135】
この場合、ゲートウェイ装置101Bは、当該探索データに対応するサービスXの各種サービス情報を取得し、取得した各種サービス情報を変換用テーブルTa2に登録する(ステップS13)。
【0136】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、たとえば、車載ECU111Bが新たに接続されると、車載ECU111Bの認証処理を行う(ステップS14)。
【0137】
次に、車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bによる認証処理の成功後、通信プロトコルP2に従うサービスXの提供データをマルチキャストしたとする(ステップS15)。
【0138】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、車載ECU111Bから送信された提供データを受信すると、中継ルールテーブルTa1の示すルールのうち、当該提供データに適用すべきルールを確認し、確認したルールに従う処理を行う。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、中継ルールテーブルTa1の示すルールに従い、当該提供データの中継処理を遮断したとする。
【0139】
この場合、ゲートウェイ装置101Bは、当該提供データに対応するサービスXの各種サービス情報を取得し、取得した各種サービス情報を変換用テーブルTa2に登録する(ステップS16)。
【0140】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、変換用テーブルTa2に登録されているサービス情報を参照して、サービスXに対応する探索データの通信プロトコルと、提供データの通信プロトコルとの相違を確認する。ここでは、探索データの通信プロトコルは「P1」であり、提供データの通信プロトコルは「P2」である。このため、ゲートウェイ装置101Bは、通信プロトコルが異なると判断する(ステップS17)。
【0141】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、たとえば、変換用テーブルTa2を参照して、通信プロトコルP1を共通プロトコルとして選定し(ステップS18)、選定した共通プロトコルを車載ECU111Bに通知することにより、当該共通プロトコルの使用を提案する(ステップS19)。
【0142】
次に、車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bから共通プロトコルの通知を受けると、当該共通プロトコルに従う通信に切替可能か否かを判断し(ステップS20)、判断結果をゲートウェイ装置101Bに通知する(ステップS21)。ここでは、車載ECU111Bは、通信プロトコルP1への切り替えを行うことができないと判断し、通信プロトコルP2に従う通信を希望しており、共通プロトコルを使用しない旨の判断結果をゲートウェイ装置101Bに通知したとする。
【0143】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、共通プロトコルを使用しない旨の判断結果を車載ECU111Bから受けると、たとえば、変換用テーブルTa2を参照して、通信プロトコルP2を共通プロトコルとして再選定し(ステップS22)、再選定した共通プロトコルをゲートウェイ装置101Aに通知することにより、当該共通プロトコルの使用を提案する(ステップS23)。
【0144】
次に、ゲートウェイ装置101Aは、ゲートウェイ装置101Bから共通プロトコルの通知を受けると、当該共通プロトコルに従う通信に切替可能か否かを判断し(ステップS24)、判断結果をゲートウェイ装置101Bに通知する(ステップS25)。ここでは、ゲートウェイ装置101Aは、通信プロトコルP2への切り替えを行うことができないと判断し、通信プロトコルP1に従う通信を希望しており、共通プロトコルを使用しない旨の判断結果をゲートウェイ装置101Bに通知したとする。
【0145】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、共通プロトコルを使用しない旨の判断結果をゲートウェイ装置101Aから受けると、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111B間で送受信される通信データの通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。たとえば、ゲートウェイ装置101Bは、車両1の運転状態等に基づいて、変換処理を行うか否かを判断する(ステップS26)。
【0146】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、変換処理を行うと判断した場合、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111Bに対して、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を提案する。このとき、ゲートウェイ装置101Bは、たとえば、変換処理により変換可能な情報、および変換処理が行われることによる処理遅延等の制約などを、変換処理の提案と共に、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111Bに通知する(ステップS27)。
【0147】
次に、車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を承諾するか否かを判断する。たとえば、車載ECU111Bは、変換処理が行われることによる、通信データの遅延が発生した場合の影響の大きさ等に応じて、変換処理を認めるかどうかを判断する(ステップS28)。
【0148】
次に、車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を承諾すると判断した場合、当該変換処理を承諾する旨をゲートウェイ装置101Bに通知する(ステップS29)。
【0149】
次に、ゲートウェイ装置101Aは、車載ECU111Bと同様に、ゲートウェイ装置101Bによる変換処理を承諾するか否かを判断し(ステップS30)、当該変換処理を承諾すると判断した場合、当該変換処理を承諾する旨をゲートウェイ装置101Bに通知する(ステップS31)。
【0150】
(変換処理の実行)
図9は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理を実行する場合における、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
図9は、
図8に示す動作の流れの続きを示している。
【0151】
図9を参照して、まず、ゲートウェイ装置101Aは、通信プロトコルP1を継続して使用して、サービスXの探索データをマルチキャストしたとする(ステップS41)。
【0152】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、ゲートウェイ装置101Aから送信された探索データを受信すると、ゲートウェイ装置101Bにおける第2プロキシが、当該探索データに対する終端処理を行う。そして、ゲートウェイ装置101Bは、車両1の運転状態等に基づいて、提案済である通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、当該変換処理を行うと判断したとする(ステップS42)。
【0153】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、受信した探索データの通信プロトコルP1を通信プロトコルP2へ変換する変換処理を行う(ステップS43)。
【0154】
次に、ゲートウェイ装置101Bにおける第1プロキシは、変換処理後の通信プロトコルP2に従う探索データを車載ECU111Bへ送信する(ステップS44)。
【0155】
次に、車載ECU111Bは、通信プロトコルP2を継続して使用して、サービスXの提供データをマルチキャストしたとする(ステップS45)。
【0156】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、車載ECU111Bから送信された提供データを受信すると、ゲートウェイ装置101Bにおける第1プロキシが、当該提供データに対する終端処理を行う。そして、ゲートウェイ装置101Bは、車両1の運転状態等に基づいて、提案済である通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、当該変換処理を行うと判断したとする(ステップS46)。
【0157】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、受信した提供データの通信プロトコルP2を通信プロトコルP1へ変換する変換処理を行う(ステップS47)。
【0158】
次に、ゲートウェイ装置101Bにおける第2プロキシは、変換処理後の通信プロトコルP1に従う提供データをゲートウェイ装置101Aへ送信する(ステップS48)。これにより、車載通信システム301においてサービスXのサーバとクライアントとの通信接続が確立する。
【0159】
次に、ゲートウェイ装置101Aは、通信プロトコルP1を継続して使用して、サービスXを要求するメッセージを含む通信データ(以下、「要求データ」とも称する。)を車載ECU111Bへ送信したとする(ステップS49)。
【0160】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、ゲートウェイ装置101Aから送信された要求データを受信すると、ゲートウェイ装置101Bにおける第2プロキシが、当該要求データに対する終端処理を行う。そして、ゲートウェイ装置101Bは、車両1の運転状態等に基づいて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、当該変換処理を行うと判断したとする(ステップS50)。
【0161】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、受信した要求データの通信プロトコルP1を通信プロトコルP2へ変換する変換処理を行う(ステップS51)。
【0162】
次に、ゲートウェイ装置101Bにおける第1プロキシは、変換処理後の通信プロトコルP2に従う要求データを車載ECU111Bへ送信する(ステップS52)。
【0163】
次に、車載ECU111Bは、通信プロトコルP2を継続して使用して、サービスXの要求データに対する応答メッセージを含む通信データ(以下、「応答データ」とも称する。)をゲートウェイ装置101Aへ送信したとする(ステップS53)。
【0164】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、車載ECU111Bから送信された応答データを受信すると、ゲートウェイ装置101Bにおける第1プロキシが、当該応答データに対する終端処理を行う。そして、ゲートウェイ装置101Bは、車両1の運転状態等に基づいて、通信プロトコルの変換処理を行うか否かを判断する。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、当該変換処理を行うと判断したとする(ステップS54)。
【0165】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、受信した応答データの通信プロトコルP2を通信プロトコルP1へ変換する変換処理を行う(ステップS55)。
【0166】
次に、ゲートウェイ装置101Bにおける第2プロキシは、変換処理後の通信プロトコルP1に従う応答データをゲートウェイ装置101Aへ送信する(ステップS56)。このように、たとえばステップS49~ステップS56の動作が繰り返されることにより、車載通信システム301においてサービスXが実現される。
【0167】
(通信プロトコルが一致する場合)
図10は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおいて、サービスのサーバとクライアントとの間において通信プロトコルが一致する場合における、当該サービスの確立までの各装置の動作手順を定めたシーケンスである。ここでは、
図7~
図9に示す場合と異なり、車載ECU111Bが通信プロトコルP1に従う通信を行う装置であると仮定する。
【0168】
図10を参照して、ステップS71~ステップS74までの動作は、それぞれ、
図7に示すステップS11~ステップS14までの動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0169】
次に、車載ECU111Bは、ゲートウェイ装置101Bによる認証処理の成功後、通信プロトコルP1に従うサービスXの提供データをマルチキャストしたとする(ステップS75)。
【0170】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、車載ECU111Bから送信された提供データを受信すると、中継ルールテーブルTa1の示すルールのうち、当該提供データに適用すべきルールを確認し、確認したルールに従う処理を行う。ここでは、ゲートウェイ装置101Bは、中継ルールテーブルTa1の示すルールに従い、当該提供データの中継処理を遮断したとする。
【0171】
この場合、ゲートウェイ装置101Bは、当該提供データに対応するサービスXの各種サービス情報を取得し、取得した各種サービス情報を変換用テーブルTa2に登録する(ステップS76)。
【0172】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、変換用テーブルTa2に登録されているサービス情報を参照して、サービスXに対応する探索データの通信プロトコルと、提供データの通信プロトコルとの相違を確認する。ここでは、探索データの通信プロトコルおよび提供データの通信プロトコルはいずれも「P1」である。このため、ゲートウェイ装置101Bは、通信プロトコルが一致すると判断する(ステップS77)。
【0173】
次に、ゲートウェイ装置101Bは、中継ルールテーブルTa1に登録されているルールのうち、ゲートウェイ装置101AからのサービスXの探索データについてのルール、および車載ECU111BからのサービスXの提供データについてのルールの内容を変更して更新する。
【0174】
具体的には、中継ルールテーブルTa1に登録されているルールのうち、当該探索データおよび当該提供データの各々に対応するルールの示す制御内容を、中継処理の禁止から、中継処理の許可に変更して更新する(ステップS78)。
【0175】
次に、ゲートウェイ装置101Aが、通信プロトコルP1に従うサービスXの探索データを再びマルチキャストしたとする。この場合、ゲートウェイ装置101Bは、更新後の中継ルールテーブルTa1に登録されているルールに従い、当該探索データの通過を許可して、当該探索データを車載ECU111Bへ中継する(ステップS79)。
【0176】
次に、車載ECU111Bが、通信プロトコルP1に従うサービスXの提供データを再びマルチキャストしたとする。この場合、ゲートウェイ装置101Bは、更新後の中継ルールテーブルTa1に登録されているルールに従い、当該提供データの通過を許可して、当該提供データをゲートウェイ装置101Aへ中継する(ステップS80)。これにより、車載通信システム301においてサービスXのサーバとクライアントとの通信接続が確立する。
【0177】
<変形例>
上述した例では、既設ネットワークに属する車載装置と増設ネットワークに属する車載装置との間におけるグローバル通信によるサービスXの実現について説明した。これに対して、変形例では、増設ネットワークに属する複数の車載装置間におけるローカル通信によるサービスYの実現について説明する。
【0178】
[車載通信システムの構成]
図11は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0179】
図11を参照して、変形例に係る車載通信システム302は、
図1に示すゲートウェイ装置101A、ゲートウェイ装置101B、車載ECU111Aおよび車載ECU111Bに加えて、さらに、スイッチ装置121と、車載ECU111Cとを備える。車載通信システム302は、車両1に搭載される。
【0180】
より詳細には、既設のゲートウェイ装置101Aに対して、ゲートウェイ装置101Bが新たに接続され、さらに、ゲートウェイ装置101Bに車載ECU111Aおよびスイッチ装置121が接続され、スイッチ装置121に車載ECU111B,111Cが接続されたとする。ゲートウェイ装置101B、スイッチ装置121、車載ECU111A,111B,111Cを含むネットワークを、以下「増設ネットワーク」とも称する。
【0181】
ここでは、増設ネットワークにおけるローカル通信により実現されるサービスYのクライアントが、通信プロトコルP3に従って通信を行う車載ECU111Aであるとする。また、当該サービスYのサーバが、通信プロトコルP2に従って通信を行う車載ECU111Bであるとする。
【0182】
[ローカル通信によるサービスの実現]
(通信プロトコルの変換処理の提案までの動作)
図12および
図13は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理の提案を行うまでの、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
図13は、
図12に示す動作の流れの続きを示している。
【0183】
図12および
図13を参照して、ステップS111~ステップS131までの動作は、
図7および
図8に示すステップS11~ステップS31までの動作の説明において、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111Aを互いに読み替え、サービスXおよびサービスYを互いに読み替え、かつ、通信プロトコルP1および通信プロトコルP3を互いに読み替えた場合の動作となるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0184】
(変換処理の実行)
図14は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、増設されたゲートウェイ装置が通信プロトコルの変換処理を実行する場合における、各装置の動作手順を定めたシーケンスである。
図14は、
図13に示す動作の流れの続きを示している。
【0185】
図14を参照して、ステップS141~ステップS156までの動作は、
図9に示すステップS41~ステップS56までの動作の説明において、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111Aを互いに読み替え、サービスXおよびサービスYを互いに読み替え、かつ、通信プロトコルP1および通信プロトコルP3を互いに読み替えた場合の動作となるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0186】
(通信プロトコルが一致する場合)
図15は、本開示の実施の形態の変形例に係る車載通信システムにおいて、サービスのサーバとクライアントとの間において通信プロトコルが一致する場合における、当該サービスの確立までの各装置の動作手順を定めたシーケンスである。ここでは、
図12~
図14に示す場合と異なり、車載ECU111Bが通信プロトコルP3に従う通信を行う装置であると仮定する。
【0187】
図15を参照して、ステップS171~ステップS180までの動作は、
図10に示すステップS71~ステップS80までの動作の説明において、ゲートウェイ装置101Aおよび車載ECU111Aを互いに読み替え、サービスXおよびサービスYを互いに読み替え、かつ、通信プロトコルP1および通信プロトコルP3を互いに読み替えた場合の動作となるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0188】
ところで、車載装置間で通信プロトコルが異なる場合、これら車載装置間での通信データの送受信を行うことができない。
【0189】
上述した特許文献1に記載の車両制御装置では、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合の対処方法については考慮されていない。また、特許文献2に記載の変換ユニットでは、ゲートウェイ処理部が、既存のネットワークと増設されたネットワークとの間におけるすべての通信に対してプロトコル変換を行うため、ゲートウェイ処理部における処理負荷が増加したり、ネットワーク間における通信トラフィックが増加したりする等の問題があった。
【0190】
これに対して、本開示の実施の形態に係る車載中継装置、車載通信システムおよび通信制御方法では、上記のような構成および方法により、車載装置間の通信プロトコルが異なる場合において、処理負荷および通信負荷を抑えながら当該車載装置間の通信を行うことができる。
【0191】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0192】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
複数の車載装置を備える車載通信システムにおける車載中継装置であって、
複数の前記車載装置間の通信データを中継する中継部と、
前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知する処理部とを備え、
前記処理部は、前記車載装置の認証処理において、前記車載装置が使用可能なTCP/IPより上のレイヤの通信プロトコルを確認し、確認した通信プロトコルとは異なる前記共通プロトコルを前記車載装置に通知する、車載中継装置。
【0193】
[付記2]
車載中継装置を含む複数の車載装置を備え、
前記車載中継装置は、複数の前記車載装置間の通信データを中継し、
前記車載中継装置は、前記車載装置同士の通信を開始する前に、使用すべき共通の通信プロトコルである共通プロトコルを前記各車載装置に通知し、
前記各車載装置は、前記共通プロトコルの通知を受けると、前記共通プロトコルに従う通信に切り替えるか否かを判断し、
前記各車載装置は、前記共通プロトコルを使用しない旨を前記車載中継装置に通知した場合、前記車載中継装置による通信プロトコルの変換処理の提案を受け、前記変換処理を承諾するか否かを判断し、
前記各車載装置の少なくともいずれか一方および前記車載中継装置は、既存のネットワークに対して新たに増設された増設ネットワークに含まれ、
前記各車載装置のうちの一方は、サービスのクライアントであり、前記各車載装置のうちの他方は、前記サービスのサーバであり、前記各車載装置間で通信接続が確立されると、前記サービスの利用が可能となる、車載通信システム。
【符号の説明】
【0194】
1 車両
14 ケーブル
21 変換処理部(処理部)
22 中継部
23 記憶部
24,24A,24B,24C 通信ポート
101,101A,101B ゲートウェイ装置(車載中継装置)
111,111A,111B,111C 車載ECU
121 スイッチ装置
301,302 車載通信システム