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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156306
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/02 20060101AFI20221006BHJP
   B65G 47/90 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B25J9/02 A
B65G47/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059912
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167807
【弁理士】
【氏名又は名称】笠松 信夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 智也
【テーマコード(参考)】
3C707
3F072
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS03
3C707ES03
3C707ET03
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT22
3C707NS02
3F072AA07
3F072GA05
3F072GB04
3F072JA05
3F072KD01
3F072KD11
3F072KD23
3F072KD27
(57)【要約】
【課題】複数のワークを同時に搬送する搬送装置において、搬送スループットの低下を抑制しつつ、搬送装置の周囲に存在する物品との衝突を回避することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】ワークWを着脱可能に保持する第1保持部12及び第2保持部12はベース部材11の一方側に設けられる。第1保持部12は搬送時に第1のワークWを保持し、第2保持部12は搬送時に第2のワークWを保持する。第1保持部12は第1のワークWの保持時に第1のワークWを挟持する挟持部材13を備える。形態変更機構14は、第1保持部12を、挟持部材13が搬送対象のワークWを挟持可能かつ搬送可能な作動形態と、当該作動形態とは異なる退避形態とに切り替える。そして、退避制御部33は、第2保持部12に第2のワークWが保持され、かつ第1保持部12から第1のワークWが離脱された状態で、形態変更機構12により第1保持部12を退避形態に切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを同時に搬送する搬送装置であって、
搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドを構成するベース部材と、
前記ベース部材の一方側に設けられ、搬送時に第1のワークを保持する第1保持部と、
前記ベース部材の前記一方側に設けられ、搬送時に第2のワークを保持する第2保持部と、
前記第1保持部に設けられ、前記第1のワークの保持時に前記第1のワークを挟持する挟持部材と、
前記第1保持部を、前記挟持部材が搬送対象のワークを挟持可能かつ搬送可能な作動形態と、当該作動形態とは異なる退避形態とに切り替える形態変更機構と、
前記第2保持部に第2のワークが保持され、かつ前記第1保持部から第1のワークが離脱された状態で、前記形態変更機構により前記第1保持部を退避形態に切り替える退避制御部と、
を備える搬送装置。
【請求項2】
前記挟持部材が、互いに対向する状態で配置された第1挟持部材と第2挟持部材とを含み、
前記退避形態が、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の少なくとも一方又は両方について、前記ベース部材の前記一方側における前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材の突出量を前記作動形態における突出量よりも小さくした形態である、請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記退避形態が、前記一方側からみた前記ベース部材の面積を前記作動形態における面積よりも小さくした形態である、請求項1又は請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記退避形態が、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材を、前記一方側からみて前記ベース部材と重なる収納位置又は前記一方側からみて前記ベース部材外方の展開位置に移動した形態である、請求項2記載の搬送装置。
【請求項5】
前記退避形態が、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の一方を前記一方側からみて前記ベース部材と重なる収納位置に移動するとともに、他方を前記一方側からみて前記ベース部材外方の展開位置に移動した形態である、請求項2記載の搬送装置。
【請求項6】
前記退避形態が、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の一方を前記一方側からみて前記ベース部材と重なる収納位置又は前記一方側からみて前記ベース部材外方の展開位置に移動した形態である、請求項2記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を把持して搬送する搬送装置に関し、特に複数のワークを同時に搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場の製造ラインや自動倉庫等において、製造装置等によって加工されたワーク(搬送対象物)やコンベア装置等によって搬送されるワークを他の場所へ移動する搬送装置が多用されている。このような搬送装置は、例えば、多関節ロボットや直角座標型ロボットを備え、当該ロボットの多関節アームや昇降アームの先端に設けられた搬送ヘッドによりワークを把持する。搬送ヘッドは、例えば、対向面の挟持等の手法によりワークを把持する。
【0003】
また、このような搬送ヘッドでは、作業時間短縮のため1つの搬送ヘッドで複数のワークを同時に把持する構成が採用されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-308880号公報
【特許文献2】特開2002-080125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの搬送ヘッドで複数のワークを同時に把持する搬送装置では、把持した複数のワークを同時に解放する動作だけでなく、把持したワークの1つを第1の所望位置に載置した後、他のワークを把持した状態で第2の所望位置に移動して他のワークの1つを第2の所望位置に載置する動作をする場合もある。また、把持した複数のワークを順に解放する場合、第1の所望位置から第2の所望位置への移動の際に、ワークの向きを変更するための搬送ヘッドが回転される場合もある。
【0006】
同時に把持できるワークの個数を増大させる場合、同時に把持できるワークの数が増大するに伴って当然に搬送ヘッドが大きくなる。そのため、搬送装置の周囲に存在する物品と搬送ヘッドとが衝突する可能性が高まることになる。また、搬送中に搬送ヘッドの回転を伴う場合には、周囲に存在する物品と衝突する可能性がさらに高まることになる。特に、ワークの対向面の挟持によりワークを把持する構成では、搬送ヘッドの下面側にワークと当接して挟持する挟持部材が存在している。そのため、当該挟持部材が搬送装置の周囲に存在する物品と衝突する可能性もある。
【0007】
搬送ヘッドと搬送装置の周囲に存在する物品との衝突は、ティーチング時に衝突することのない搬送経路を教示することで回避することは可能である。しかしながら、このような衝突回避経路を設定すると、搬送スループットが低下することになる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数のワークを同時に搬送する搬送装置において、搬送スループットの低下を抑制しつつ、搬送装置の周囲に存在する物品との衝突を回避することができる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発
明は、複数のワークを同時に搬送する搬送装置を前提としている。そして、本発明に係る搬送装置は、搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッド及び退避制御部を備える。搬送ヘッドはベース部材、第1保持部、第2保持部、挟持部材、形態変更機構を備える。第1保持部及び第2保持部は、ベース部材の一方側に設けられる。第1保持部は、搬送時に第1のワークを保持し、第2保持部は、搬送時に第2のワークを保持する。第1保持部は、第1のワークの保持時に第1のワークを挟持する挟持部材を備える。形態変更機構は、第1保持部を、挟持部材が搬送対象のワークを挟持可能かつ搬送可能な作動形態と、当該作動形態とは異なる退避形態とに切り替える。そして、退避制御部は、第2保持部に第2のワークが保持され、かつ第1保持部から第1のワークが離脱された状態で、形態変更機構により第1保持部を退避形態に切り替える。
【0010】
この搬送装置では、複数のワークが同時に把持され、把持されたワークの一部が第1の所望位置において離脱された後、把持された他のワークが第2の所望位置に搬送される際に、ワークが離脱された第1保持部が退避形態に切り替えられる。退避形態は、搬送対象のワークを保持した状態及び解放した状態とは異なる状態に挟持部材の形態を変更させたものである。例えば、退避形態は、作動形態に比べて、ベース部材から一方側に突出する部分の突出量を減少させたり、一方向から見たベース部材の占有面積を減少させたりした形態を含む。このような退避形態に切り替えることで、搬送装置の周囲に存在する物品と搬送ヘッドとが衝突する可能性を低減することができ、搬送ヘッドの搬送経路設定における自由度を従来に比べて高めることができる。その結果、同時に把持可能なワーク数を増大させた場合でも、搬送スループットの低下を抑制することができる。
【0011】
また、以上の搬送装置において、挟持部材が、互いに対向する状態で配置された第1挟持部材と第2挟持部材とを含む構成を採用することができる。本構成では、退避形態が、第1挟持部材及び第2挟持部材の少なくとも一方又は両方について、ベース部材の一方側における第1挟持部材又は第2挟持部材の突出量を作動形態における突出量よりも小さくした形態にする構成を採用することができる。より具体的には、退避形態として、第1挟持部材及び前記第2挟持部材が、一方側からみてベース部材と重なる収納位置又は一方側からみてベース部材外方の展開位置に移動した形態を採用することができる。あるいは、退避形態として、第1挟持部材及び第2挟持部材の一方を一方側からみてベース部材と重なる収納位置に移動するとともに、他方を一方側からみてベース部材外方の展開位置に移動した形態を採用することもできる。さらには、退避形態として、第1挟持部材及び第2挟持部材の一方を一方側からみてベース部材と重なる収納位置又は一方側からみてベース部材外方の展開位置に移動した形態を採用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のワークを同時に搬送する搬送装置において、搬送スループットの低下を抑制しつつ、搬送装置の周囲に存在する物品との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の一例を模式的に示す平面図である。
図2】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える保持部の一例を模式的に示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る搬送装置の一例を示す機能ブロック図である。
図4】(a)から(d)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の動作を模式的に示す図である。
図5】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える保持部の他の例を模式的に示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える保持部の他の例を模式的に示す側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える保持部の他の例を模式的に示す側面図である。
図8】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える搬送ヘッドの他の例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、直方体状の箱体であるワークを搬送する搬送装置として本発明を具体化する。なお、本発明は、搬送ヘッドが対向面の挟持によりワークを保持する搬送装置であれば任意の態様に適用可能である。例えば、従来と同様に、多関節ロボットのアームの先端や直交座標型ロボットの昇降アームの先端等に搬送ヘッドが装着された搬送装置に適用可能である。特に限定されないが、本実施形態の搬送装置は、直交座標型ロボットの昇降アームの先端に搬送ヘッドを備え、コンベア装置の終端部まで搬送されたワークをパレット上に整列配置するパレタイジング用搬送装置に適用される。
【0015】
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係る搬送装置100を模式的に示す平面図である。図1(a)は搬送ヘッド10がコンベア装置101上の搬送対象のワークWと異なる位置にある状態を示す平面図であり、図1(b)は搬送ヘッド10がコンベア装置101上の搬送対象のワークWと上にある状態を示す平面図である。
【0016】
図1(a)及び図1(b)に示すように、搬送装置100は、水平方向に所定の間隔をおいて配置される2本の角柱状の脚部1と各脚部1の長手方向の一方の端部からそれぞれ立設する角柱状の柱部2と当該2本の柱部2に支持される横行フレーム3とを備える。
【0017】
第1走行体4は横行フレーム3に支持されており、サーボモータを駆動源として横行フレーム3に沿って進退する。引抜フレーム5は、基端部が第1走行体4に固定されており、横行フレーム3と直交する水平方向に配置されている。第2走行体6は引抜フレーム5に支持されており、サーボモータを駆動源として引抜フレーム5に沿って進退する。昇降アーム7は鉛直方向に沿って配置されており、第2走行体6が備えるサーボモータを駆動源として鉛直方向に沿って昇降する。搬送ヘッド10は、昇降アーム7の下端に水平面内で回動可能に支持されている。搬送ヘッド10は、昇降アーム7の昇降に伴って鉛直方向に沿って昇降する。
【0018】
搬送装置100の搬送対象であるワークWはコンベア装置101により供給される。特に限定されないが、本実施形態ではコンベア装置101の終端部分が横行フレーム3と平行に配置されている。また、ワークWの搬送先であるパレット102は、横行フレーム3の配置方向に沿ってコンベア装置101の終端部分と隣り合う状態で配置されている。本実施形態では、搬送ヘッド10は、図1(b)に示すように、コンベア装置101の終端部分に供給された4個のワークWを同時に保持し、パレット102へ搬送する。なお、鉛直方向の位置関係を例示すると、横行フレーム3の下面の位置が、脚部1が設置される床面から2m程度、コンベア装置101のワーク載置面の位置が床面から60cm程度、パレット102の上面の位置が床面から30cm程度である。
【0019】
後述のとおり、搬送ヘッド10は、平面視長方形状の板状部材からなるベース部材11の一方側に1個のワークWをそれぞれ保持する4つの保持部12を備える(図4参照)。各保持部12の構造は同一であるため、以下では、1つの保持部12の構造について説明する。
【0020】
図2(a)から図2(c)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える保持部12
の一例を模式的に示す側面図である。図2(a)は作動形態であるワークWを保持した状態にある保持部12を模式的に示す側面図、図2(b)は作動形態であるワークWを解放した状態にある保持部12を模式的に示す側面図、図2(c)は退避形態にある保持部12を模式的に示す側面図である。なお、以下では、便宜上、ベース部材11において各保持部12が並ぶ方向を「長手方向」と呼称し、ベース部材11において長手方向と直交する方向を「短手方向」と呼称する。また、以下では、便宜上、図2における図中の上方向を「上」と呼称し、図2における図中の下方向を「下」と呼称する。すなわち、ベース部材11において、保持部12が配置されている側の面は下面であり、当該面と反対側の面は上面である。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に示すように、保持部12は、搬送時に搬送対象のワークWを挟持して保持する挟持部材13を備える。挟持部材13は、対向して配置された、固定プレート13aと可動プレート13bとを備える。可動プレート13bは対向する固定プレート13aに対して進退可能となる状態でベース部材11に支持されている。図2(a)に示すように、可動プレート13bが固定プレート13a側に移動して固定プレート13aと可動プレート13bとの間隔を狭めることで固定プレート13aと可動プレート13bとの間に搬送対象のワークW(図中に破線で示している)を挟持することができる。一方、図2(b)に示すように、可動プレート13bが固定プレート13aから離れる側に移動して固定プレート13aと可動プレート13bとの間隔を広げることで固定プレート13aと可動プレート13bとの間に挟持されたワークWを解放することができる。
【0022】
保持部12は、挟持部材13が搬送対象のワークWを挟持可能かつ搬送可能な作動形態と、当該作動形態とは異なる退避形態とに切り替える形態変更機構14を備える。退避形態は、作動形態、すなわち、図2(a)に示す搬送対象のワークWを保持した状態から、図2(b)に示す搬送対象のワークWを解放した状態までの間のいずれの形態とも異なる挟持部材13の形態である。本実施形態では、形態変更機構14は、作動形態に比べてベース部材11から一方側(ここでは、ベース部材11の下面側)に突出する部分の突出量を減少させる退避形態と、作動形態とを切り替える。
【0023】
図2(a)及び図2(b)に示すように、作動形態において、固定プレート13aは、ベース部材11の短手方向の一端に位置が固定される。固定プレート13aは板状部材により構成され、ベース部材11の下面側にベース11と直交する状態で配置される。また、可動プレート13bは板状部材により構成され、ベース部材11の下面側にベース部材11と直交する状態、かつ固定プレート13aと対向する状態で配置される。可動プレート13bは、短手方向に沿って移動できる状態で配置される。可動プレート13bを短手方向に沿って移動させる機構には公知の任意の構成を使用することができる。例えば、ベース部材11の短手方向に沿って配置された図示しないガイドレールに案内されて移動する構成を採用することができる。また、可動プレート13bの駆動には、エアシリンダ15を使用することができる。本実施形態では、ピストンロッド15aが短手方向に進退する状態でエアシリンダ15がベース部材11の下面側に配置されている。
【0024】
また、図2(c)に示すように、保持部12は、退避形態では、固定プレート13a及び可動プレート13bがベース部材11の下面側でベース部材11と重なる収納位置に移動する。すなわち、本実施形態の形態変更機構14では、固定プレート13aが、作動形態においてベース部材11から所定距離離れた位置に固定プレート13aの長手方向(図中の奥行方向)の全体にわたってヒンジ構造141を備えている。ヒンジ構造141は、長手方向に沿って配置された回転軸142を備え、当該ヒンジ構造141よりも下方側の固定プレート131aが、回転軸142周りに90度程度回転されることで下方側固定プレート131aがベース部材11と直交する作動形態から、ベース部材11と概ね平行となる退避形態に切り替えられる。なお、本事例では、下方側固定プレート131aが作動
形態に切り替えられる際にベース部材11と直交する状態を超えて回転することがないように、上方側固定プレート132aの外側面に当接して下方側固定プレート131aの超過回転を禁止するストッパ133aが下方側固定プレート131aの外側面の上端から延出されている。
【0025】
また、下方側固定プレート131aの駆動方法は特に限定されない。例えば、下方側固定プレート131aと回転軸142とが固着された構造とし、ベース部材11の下面側にピストンロッド143aが短手方向に進退する状態で配置された退避用エアシリンダ143の進退に応じて回転軸142に回転方向の力を付与する図示しない任意のリンク機構等運動変換機構を設けることで実現可能である。例えば、ピストンロッド143aの進退に伴って進退するラックギアと回転軸142と同軸に固定配置したピニオンギアとからなるラックアンドピニオン機構を採用することができる。なお、ラックアンドピニオン機構は固定プレート13aの端面に限らず、固定プレート13aに貫通孔を設けて固定プレート13a内に設けてもよい。
【0026】
同様に、可動プレート13bは、上方側可動プレート132bと下方側可動プレート131bとがヒンジ構造144を通じて連結された構造になっている。ヒンジ構造144は、作動形態においてベース部材11から所定距離離れた位置に可動プレート13bの長手方向(図中の奥行方向)の全体にわたって設けられている。ヒンジ構造144は、長手方向に沿って配置された回転軸145を備え、当該ヒンジ構造144よりも下方側の可動プレート131bが、回転軸145周りに90度程度回転されることで下方側可動プレート131bがベース部材11と直交する作動形態から、ベース部材11と概ね平行となる退避形態に切り替えられる。なお、本事例では、下方側可動プレート131bが作動形態に切り替えられる際にベース部材11と直交する状態を超えて回転することがないように、上方側可動プレート132bの外側面に当接して下方側可動プレート131bの超過回転を禁止するストッパ133bが下方側可動プレート131bの外側面の上端から延出されている。
【0027】
また、下方側可動プレート131bの駆動方法は特に限定されない。例えば、上述した固定プレート13aと同様の手法を使用することができる。なお、当該可動プレート13bの回避形態への変更に関わる機構全体も、ワークWの挟持を阻害することがないように、ワークWを挟持する際には可動プレート13bとともに移動する構成になっている。
【0028】
図3は、以上の構成を有する搬送装置100において、搬送ヘッド10の動作を制御する動作制御部30を示す機能ブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る搬送装置100の動作制御部30は、位置制御部31、挟持制御部32、退避制御部33、経路記憶部34を備える。経路記憶部34には、ティーチング等により予め指定された搬送ヘッド10の移動手順が、例えば位置情報及び向き情報として格納されている。
【0029】
位置制御部31は、経路記憶部34に格納された位置情報と向き情報にしたがって、モーター類を駆動する移動駆動部201を通じて、第1走行体4、第2走行体6、及び昇降アーム7を予め指定された位置に移動させる。挟持制御部32は、搬送ヘッド10が移動された際に、ワークWの挟持又は解放が指定されている場合、位置制御部31からの指示に従い、エアシリンダ等を駆動する挟持駆動部202を通じて各保持部12の挟持動作及び解放動作を実施する。退避制御部33は挟持制御部32がワークWの解放動作を指示した際に、退避形態への切り替えが指定されている場合、位置制御部31からの指示に従い、エアシリンダ等を駆動する形態変更駆動部203を通じて当該ワークWを解放した保持部12を作動形態から退避形態に変更する。
【0030】
なお、位置制御部31、挟持制御部32、退避制御部33は、例えば、専用の演算回路
、あるいは、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウェア、及び当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実現することができる。
【0031】
図4(a)から図4(d)は、以上の構成を有する搬送装置100の搬送ヘッド10の退避形態への切り替えを含む一連の動作の一例を示す模式的に示す図である。ここでは、1角が2個のワークWにより構成されるピンホール積み(8回し)の1段目の最初の4個のワークWを搬送する事例を示している。
【0032】
図1(b)に示すように4つのワークWを各保持部12に挟持した搬送ヘッド10は、図4(a)に示すように、パレット102上の2個のワークWの載置位置の上方に移動する。次いで、搬送ヘッド10は、図4(b)に示すように、1段目のワークWの解放高さまで下降し、解放対象のワークWを保持している保持部12(図中奥側の2つの保持部12)の可動プレート13bを移動させてワークWを解放する。ワークWの解放が完了すると、搬送ヘッド10は、図4(c)に示すように、移動高さまで上昇するとともに、退避制御部33の指示に応じて、ワークWを解放した保持部12(第1保持部)の挟持部材13を上述の退避形態に切り替える。当該形態切替は搬送ヘッド10の上昇中に実施することができる。そして、移動高さへの上昇が完了すると、搬送ヘッド10は、図4(d)に示すように、保持部12(第2保持部)に保持されている次の2個のワークWのパレット102上の載置位置の上方に移動する。このとき、ワークWにバーコード等が記載されたラベルが貼付されている場合には、ラベルを外周側に向けてパレット102上に載置するために搬送ヘッド10が回転されることになる。
【0033】
なお、退避形態から作動形態への切り替えは、例えば、全てのワークWを解放した後、次の搬送対象のワークWを保持するためにコンベア装置101の上方に到達するまでの間に実施すればよい。
【0034】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、複数のワークWが同時に把持され、把持されたワークWの一部が第1の所望位置において離脱された後、把持された他のワークWが第2の所望位置に搬送される際に、ワークWが離脱された保持部12(第1保持部)が退避形態に切り替えられる。作動形態に比べてベース部材11から下面側に突出する部分の突出量を減少させる退避形態に切り替えることで、搬送装置100の周囲に存在する物品、すなわち、搬送装置100の脚部1や柱部2、コンベア装置101等と搬送ヘッド10とが衝突する可能性を低減することができ、搬送ヘッド10の搬送経路設定における自由度を、退避形態に切り替えることのない従来構成に比べて高めることができる。その結果、同時に把持可能なワーク数を増大させた場合でも、搬送スループットの低下を抑制することができる。
【0035】
以上の説明では、退避形態が、固定プレート13a及び可動プレート13bがベース部材11の下面側でベース部材11と重なる収納位置に移動する形態である事例について説明したが、他の退避形態を採用することもできる。例えば、図5(a)に示すように、退避形態として、固定プレート13a及び可動プレート13bがベース部材11の下面側でベース部材11の外方の展開位置に移動した形態を採用しても、作動形態に比べてベース部材11から下面側に突出する部分の突出量を減少させることができる。
【0036】
同様に、図5(b)に示すように、退避形態として、固定プレート13a及び可動プレート13bの一方がベース部材11の下面側でベース部材11と重なる収納位置に移動し、他方がベース部材11の下面側でベース部材11の外方の展開位置に移動した形態を採用しても、作動形態に比べてベース部材11から下面側に突出する部分の突出量を減少させることができる。
【0037】
また、以上の説明では、保持部12がそれぞれ独立して配置された構成について説明したが、図6に示すように、ベース部材41の中央部に共通の固定プレート23aを備え、当該固定プレート23aの両面のそれぞれに対向する状態で保持部12が配置された搬送ヘッド20にも適用可能である。この場合は、図6に示すように、可動プレート23bの下方側可動プレート231bが上述の収納位置や展開位置に移動可能とした構成とすればよい。なお、図6では、ワークWを挟持する際に可動プレート23bを駆動するエアシリンダ15とピストンロッド15aのみを図示し、形態変更機構14については、ヒンジ構造141以外の図示を省略している。
【0038】
この構成では、固定プレート23aの一方面側に保持されたワークWが解放され、他方面側にワークWが保持されている場合、ワークWを解放した可動プレート23bの下方側可動プレート231bを収納位置や展開位置に移動させた退避形態とすることで、当該一方面側については、作動形態に比べてベース部材41から下面側に突出する部分の突出量を減少させることができる。
【0039】
なお、図5(a)、図5(b)、図6では、作動形態にある固定プレート13a、23a及び可動プレート13b、23bを一点鎖線で示している。また、退避形態へ切り替えるための駆動方法としては、公知の任意の方法を使用することができる。例えば、上述の展開位置への移動は、上述のラックアンドピニオン機構において、ラックギアとピニオンギアの間に一段のギアを追加して、ヒンジ構造の回転方向を逆向きにすることで実現可能である。
【0040】
また、以上の事例では、固定プレート13a、可動プレート13bの一部である下方側固定プレート131a、下方側可動プレート131bの回転移動により退避形態を実現したが、固定プレート13a、可動プレート13bの全体が移動する構成であってもよい。例えば、図7に示すように、固定プレート13a及び可動プレート13bを上方にスライド移動させる形態変更機構14を採用することも可能である。
【0041】
本構成の搬送ヘッド50では、形態変更機構14は、ベース部材51上に、ピストンロッドが鉛直方向に沿って進退するエアシリンダ146、147を備える。エアシリンダ146のピストンロッド146aの先端が連結部材148を介して固定プレート13aの上端と接続されている。同様に、エアシリンダ147のピストンロッド147aの先端が連結部材149を介して可動プレート13bの上端と接続されている。なお、当該可動プレート13bの回避形態への変更に関わる機構であるエアシリンダ147も、ワークWの挟持を阻害することがないように、ワークWを挟持する際には可動プレート13bとともに移動する構成になっている。また、可動プレート13bの上方への移動は、ベース部材51の特定の位置(例えば、解放状態にあるときの可動プレート13bの位置)に設けられた可動プレート13bに対応する貫通孔を通じて実現される。また、ワークWを挟持する際に可動プレート13bを駆動するエアシリンダ15と可動プレート13bとの連結部は、可動プレート13bに設けられた鉛直方向のスライド機構により可動プレート13bが上方へ移動した場合でも上方に追随して移動しない構成になっている。同様に、ワークWを挟持する際に可動プレート13bを案内するガイドレールと可動プレート13bとの連結部分も可動プレート13bに設けられた鉛直方向のスライド機構により可動プレート13bが上方へ移動した場合でも上方に追随して移動しない構成になっている。
【0042】
この構成では、退避制御部33の指示によりエアシリンダ146、147が伸長状態になると固定プレート13a及び可動プレート13bが上方に移動される。そのため、作動形態に比べてベース部材51から下面側に突出する部分の突出量を減少させることができる。
【0043】
続いて、図8に基づいて、形態変更機構24が、作動形態に比べてベース部材の一方側(ここでは、ベース部材の下面側)からみたベース部材の面積を小さくさせる退避形態と、作動形態とを切り替える構成について説明する。
【0044】
図8(a)から図8(c)は、本発明の一実施形態に係る搬送装置が備える搬送ヘッドの他の例を模式的に示す正面図である。図8(a)は作動形態を模式的に示す正面図、図8(b)及び図8(c)は退避形態を模式的に示す正面図である。なお、図8(a)から図8(c)において、既に説明した構成と同一の作用を奏する要素には同一の符号を付している。
【0045】
図8(a)に示すように、本事例の搬送ヘッド60は、図1及び図4で説明した事例と同様に、ベース部材61の一方側に4つの保持部12を備える。この搬送ヘッド60の形態変更機構24は、駆動モーター241、駆動ワイヤー242、ヒンジ構造243を備える。ヒンジ構造243は、ベース部材61の長手方向の中央に、ベース部材61の短手方向の全体にわたって設けられている。ヒンジ構造243により、ベース部材61はベース部材61a、61bに区分され、図8(a)に示すように、各ベース部材61a、61bに保持部12が2つずつ支持されている。
【0046】
駆動ワイヤー242の先端は、ヒンジ構造243で区分された一方のベース部材61aの長手方向及び短手方向の中央に固定されている。また、駆動ワイヤー243の他端は、ヒンジ構造243で区分された他方のベース部材61bの上面に設けられた駆動モーター241の駆動軸241aに巻きつけられている。なお、駆動軸241aはベース部材61bの短手方向に沿って配置されている。
【0047】
以上の構成において、退避制御部33の指示により駆動モーター241が駆動されて駆動ワイヤー242が巻き取られると、図8(b)に示すように、ベース部材61aがヒンジ構造243を回転軸として上方に立ち上がる。そして、ベース部材61aが概ね鉛直(鉛直となる数度手前)となったときに駆動モーター241が停止する。また、図8(c)に示すように、当該状態で挟持部材13が図3(b)に示した退避形態に切り替えられる。これにより、移動していないベース部材61bの下面側からみたベース部材61の面積を作動形態に比べて小さくすることができる。そのため、搬送装置100の周囲に存在する物品、すなわち、搬送装置100の脚部1や柱部2、コンベア装置101等と搬送ヘッド60とが衝突する可能性を低減することができ、搬送ヘッド60の搬送経路設定における自由度を、退避形態に切り替えることのない従来構成に比べて高めることができる。その結果、同時に把持可能なワーク数を増大させた場合でも、搬送スループットの低下を抑制することができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、複数のワークを同時に搬送する搬送装置において、搬送スループットの低下を抑制しつつ、搬送装置の周囲に存在する物品との衝突を回避することができる。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、駆動源にエアシリンダを使用することは必須ではなくサーボモータ等他の駆動源を使用することも可能である。また、固定プレートや可動プレートをはじめとする上述した各要素の物理的な形状や材質も、本発明の効果を奏する範囲内で任意に変更することができる。さらに、上述した形態変更機構の構成は、任意に組み合わせて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、搬送スループットの低下を抑制しつつ、搬送装置の周囲に存在する物品との衝突を回避することができ、複数のワークを同時に搬送する搬送装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 搬送装置
10、20、50、60 搬送ヘッド
11、41、51、61 ベース部材
12 保持部(第1保持部、第2保持部)
13 挟持部材
13a 固定プレート(第1挟持部材)
13b 可動プレート(第2挟持部材)
14、24 形態変更機構
33 退避制御部
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8