(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015631
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】高炉炉底冷却構造および冷却管
(51)【国際特許分類】
C21B 7/10 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
C21B7/10 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118603
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古舘 昭二
(72)【発明者】
【氏名】濱本 将典
【テーマコード(参考)】
4K015
【Fターム(参考)】
4K015CA07
4K015CA08
(57)【要約】
【課題】炉底の領域ごとの冷却能力が調整できかつ炉底での厚みを薄くできる高炉炉底冷却構造および冷却管を提供する。
【解決手段】高炉炉底冷却構造10は、炉底に設置されて冷媒が通される冷却管11を有し、冷却管11は、外側流路21および内側流路22を有する二重管部20と、二重管部20の途中に形成される流路入替部30と、を有し、流路入替部30は、一端側の二重管部20の外側流路21と他端側の二重管部20の内側流路22とを連通させる第1連通路31と、一端側の二重管部20の内側流路22と他端側の二重管部20の外側流路21とを連通させる第2連通路32と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉底に設置されて冷媒が通される冷却管と、前記冷却管に前記冷媒を供給する冷媒供給装置と、を有し、
前記冷却管は、外側流路および内側流路を有する二重管部と、前記二重管部の途中に形成される流路入替部と、を有し、
前記流路入替部は、一端側の前記二重管部の前記外側流路と他端側の前記二重管部の前記内側流路とを連通させる第1連通路と、前記一端側の前記二重管部の前記内側流路と前記他端側の前記二重管部の前記外側流路とを連通させる第2連通路と、を有することを特徴とする高炉炉底冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載した高炉炉底冷却構造において、
前記冷却管は、少なくとも一部が前記炉底の周辺部および前記炉底の中心部を通り、
前記流路入替部は、前記周辺部と前記中心部との境界に設置されていることを特徴とする高炉炉底冷却構造。
【請求項3】
高炉の炉底に設置されて冷媒が通される冷却管であって、
外側流路および内側流路を有する二重管部と、前記二重管部の途中に形成される流路入替部と、を有し、
前記流路入替部は、一端側の前記二重管部の前記外側流路と他端側の前記二重管部の前記内側流路とを連通させる第1連通路と、前記一端側の前記二重管部の前記内側流路と前記他端側の前記二重管部の前記外側流路とを連通させる第2連通路と、を有することを特徴とする冷却管。
【請求項4】
請求項3に記載された冷却管において、
前記二重管部は、同軸状に配置された外管および内管を有し、前記外管と前記内管との空間に前記外側流路が形成され、前記内管の内側の空間に前記内側流路が形成され、
前記流路入替部は、
前記外側流路を遮断する外側遮断部材と、
前記外側遮断部材よりも上流側から下流側までの区間で前記内側流路を区画して前記第1連通路および前記第2連通路を形成する仕切部材と、
前記外側遮断部材よりも上流側で前記第1連通路を遮断する第1遮断部材と、
前記第1遮断部材から前記外側遮断部材までの区間で前記第1連通路と前記外側流路とを連通させる第1連通口と、
前記外側遮断部材よりも下流側で前記第2連通路を遮断する第2遮断部材と、
前記第2遮断部材から前記外側遮断部材までの区間で前記第2連通路と前記外側流路とを連通させる第2連通口と、を有することを特徴とする冷却管。
【請求項5】
請求項4に記載された冷却管において、
前記仕切部材は、前記内管の中心軸線で交差する2枚の板材で形成され、前記内管の内側に前記第1連通路および前記第2連通路が2本ずつ形成されたことを特徴とする冷却管。
【請求項6】
請求項3に記載された冷却管において、
前記二重管部は、同軸状に配置された外管および内管を有し、前記外管と前記内管との空間に前記外側流路が形成され、前記内管の内側の空間に前記内側流路が形成され、
前記流路入替部は、
前記内側流路を遮断する内側遮断部材と、
前記内側遮断部材よりも上流側から下流側までの区間で前記外側流路を区画して前記第1連通路および前記第2連通路を形成する一対の外側仕切部材と、
前記内側遮断部材よりも上流側で前記第1連通路を遮断する第1遮断部材と、
前記第1遮断部材から前記内側遮断部材までの区間で前記第1連通路と前記内側流路とを連通させる第1連通口と、
前記内側遮断部材よりも下流側で前記第2連通路を遮断する第2遮断部材と、
前記第2遮断部材から前記内側遮断部材までの区間で前記第2連通路と前記内側流路とを連通させる第2連通口と、を有することを特徴とする冷却管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高炉炉底冷却構造および冷却管に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉底冷却構造として、炉底に設置された複数の並列な冷却管で構成される冷却構造が開発されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、並列配置された冷却管の一対の下流側どうしを連結し、冷却水を上流側へと戻しているが、並列配置された冷却管の各上流側から下流側へと冷却水を一方向に流す形式も用いられる。
冷却管に通される冷却水は、冷却水循環装置により所定の流量あるいは流速とされ、これにより冷却構造としての冷却能力が調整される。
特許文献1では、炉底の中心部冷却管と周辺部冷却管とを別系統とし、各領域で最適な冷却能力が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1では、別系統の中心部冷却管および周辺部冷却管を、異なる高さで2層に配置している。このため、冷却構造として必要な設置スペースが大きくなり、炉底の厚みが増大し、高炉の炉底板に近づけることができないなどの問題が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、炉底の領域ごとの冷却能力が調整できかつ炉底での厚みを薄くできる高炉炉底冷却構造および冷却管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高炉炉底冷却構造は、高炉の炉底に設置されて冷媒が通される冷却管と、前記冷却管に前記冷媒を供給する冷媒供給装置と、を有し、前記冷却管は、外側流路および内側流路を有する二重管部と、前記二重管部の途中に形成される流路入替部と、を有し、前記流路入替部は、一端側の前記二重管部の前記外側流路と他端側の前記二重管部の前記内側流路とを連通させる第1連通路と、前記一端側の前記二重管部の前記内側流路と前記他端側の前記二重管部の前記外側流路とを連通させる第2連通路と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような本発明では、冷媒供給装置から冷却管へと冷媒が供給され、冷却管をとおして炉底が冷却される。
冷却管において、上流側の二重管部で外側流路を流れていた冷媒は、流路入替部で第1連通路を通り、下流側の二重管部では内側流路を流れることになる。一方、上流側の二重管部の内側流路を流れていた冷媒は、流路入替部で第2連通路を通り、下流側の二重管部では外側流路を流れることになる。つまり、二重管部を流れる2系統の冷媒は、流路入替部を通過することで、流れる外側流路および内側流路が互いに入れ替わる。
このような冷却管では、二重管部の表面に近い外側流路を流れる冷媒により主な冷却機能が得られる。従って、流路入替部で外側流路を流れる冷媒を切り替え、二重管部に通される2系統の冷媒のいずれかを選択することで、同じ一層の二重管部で炉底の領域ごとの冷却能力が調整でき、かつ炉底での厚みを薄くできる。
【0008】
本発明の高炉炉底冷却構造において、前記冷却管は、少なくとも一部が前記炉底の周辺部および前記炉底の中心部を通り、前記流路入替部は、前記周辺部と前記中心部との境界に設置されていることが好ましい。
このような本発明では、一層の冷却管で2系統の冷媒を通し、炉底の周辺部での冷却能力と、炉底の中心部での冷却能力とを、それぞれ別個に調整することができる。
【0009】
本発明の冷却管は、高炉の炉底に設置されて冷媒が通される冷却管であって、外側流路および内側流路を有する二重管部と、前記二重管部の途中に形成される流路入替部と、を有し、前記流路入替部は、一端側の前記二重管部の前記外側流路と他端側の前記二重管部の前記内側流路とを連通させる第1連通路と、前記一端側の前記二重管部の前記内側流路と前記他端側の前記二重管部の前記外側流路とを連通させる第2連通路と、を有することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の高炉炉底冷却構造で説明した通りの効果が得られる。
【0010】
本発明の冷却管において、前記二重管部は、同軸状に配置された外管および内管を有し、前記外管と前記内管との空間に前記外側流路が形成され、前記内管の内側の空間に前記内側流路が形成され、前記流路入替部は、前記外側流路を遮断する外側遮断部材と、前記外側遮断部材よりも上流側から下流側までの区間で前記内側流路を区画して前記第1連通路および前記第2連通路を形成する仕切部材と、前記外側遮断部材よりも上流側で前記第1連通路を遮断する第1遮断部材と、前記第1遮断部材から前記外側遮断部材までの区間で前記第1連通路と前記外側流路とを連通させる第1連通口と、前記外側遮断部材よりも下流側で前記第2連通路を遮断する第2遮断部材と、前記第2遮断部材から前記外側遮断部材までの区間で前記第2連通路と前記外側流路とを連通させる第2連通口と、を有する構造とすることができる。
【0011】
このような本発明では、外管と内管との間に外側遮断部材を設置し、内管の内側に仕切部材、第1遮断部材、および第2遮断部材を設置し、内管に第1連通口および第2連通口を形成することで、二重管部の途中に流路入替部を設置することができる。このうち、外側遮断部材、第1遮断部材、第2遮断部材は、それぞれ鋼板を溶接することで設置でき、第1連通口および第2連通口は内管に開口を形成するだけでよく、従って製造が容易にできる。
【0012】
本発明の冷却管において、前記仕切部材は、前記内管の中心軸線で交差する2枚の板材で形成され、前記内管の内側に前記第1連通路および前記第2連通路が2本ずつ形成された構成としてもよい。
このような本発明では、仕切り部材を増やすことで、流体の流れがスムーズになり、圧損低下や温度ムラを抑制できるとともに内管の剛性アップ、仕切り板の剛性アップが図れる。
【0013】
本発明の冷却管において、前記二重管部は、同軸状に配置された外管および内管を有し、前記外管と前記内管との空間に前記外側流路が形成され、前記内管の内側の空間に前記内側流路が形成され、前記流路入替部は、前記内側流路を遮断する内側遮断部材と、前記内側遮断部材よりも上流側から下流側までの区間で前記外側流路を区画して前記第1連通路および前記第2連通路を形成する一対の外側仕切部材と、前記内側遮断部材よりも上流側で前記第1連通路を遮断する第1遮断部材と、前記第1遮断部材から前記内側遮断部材までの区間で前記第1連通路と前記内側流路とを連通させる第1連通口と、前記内側遮断部材よりも下流側で前記第2連通路を遮断する第2遮断部材と、前記第2遮断部材から前記内側遮断部材までの区間で前記第2連通路と前記内側流路とを連通させる第2連通口と、を有する構造としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炉底の領域ごとの冷却能力が調整できかつ炉底での厚みを薄くできる高炉炉底冷却構造および冷却管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態の高炉炉底冷却構造を示す立面図。
【
図2】第1実施形態の高炉炉底冷却構造を示す平面図。
【
図5】第1実施形態の冷却管を示す
図6のA-A線断面図。
【
図6】第1実施形態の冷却管を示す
図5のB-B線断面図。
【
図7】第1実施形態の冷却管を示す
図5のC-C線断面図。
【
図8】本発明の第2実施形態の冷却管を示す
図9のD-D線断面図。
【
図9】第2実施形態の冷却管を示す
図8のE-E線断面図。
【
図10】本発明の第3実施形態の冷却管を示す
図7相当の断面図。
【
図11】本発明の第4実施形態の冷却管を示す
図7相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
図1において、高炉1の炉体2は、基礎9で支持された敷ビーム3の上に鉄皮4を構築し、その内側に耐火煉瓦5を積んで構成される。耐火煉瓦5の内側に炉内空間6が形成され、高炉1の稼働時には炉内空間6の底部に溶銑が貯留される。
炉体2を保護するために、鉄皮4の内側には水冷用のステーブ(図示省略)などが設置されるとともに、鉄皮4の底部(炉底板)および敷ビーム3で構成される炉底7には高炉炉底冷却構造10が設置される。
【0017】
高炉炉底冷却構造10は、高炉1の炉底7に設置されて冷媒が通される冷却管11と、冷却管11に冷媒を供給する冷媒供給装置12と、を有する。
冷却管11は、外側流路21および内側流路22を有する二重管部20と、二重管部20の途中に形成される流路入替部30と、を有する。
流路入替部30は、一端側の二重管部20の外側流路21と他端側の二重管部20の内側流路22とを連通させる第1連通路31と、一端側の二重管部20の内側流路22と他端側の二重管部の20の外側流路21とを連通させる第2連通路32と、を有する。
【0018】
冷却管11は、炉底7を構成する敷ビーム3に設置されている。冷却管11の両端は敷ビーム3から露出され、冷媒配管が冷媒供給装置12に接続されている。
冷媒供給装置12は、図示しない送水ポンプを有し、冷媒として水または空気を冷却管11の一端側に供給するとともに、冷却管11の他端側から冷媒を回収し、図示しない放熱器で放熱する。冷却管11の外側流路21および内側流路22に供給される冷媒は2系統とされ、それぞれ図示しない制御装置で流量や冷媒温度などを個別に調整可能である。
炉体2は、炉内空間6の内側が中心部Ecとされ、炉内空間6の外側から炉体2の外縁までが周辺部Epとされている。
【0019】
図2にも示すように、高炉1の平面形状においては、冷却管11は複数が並列に配置され、両端が炉体2の外部に配置され、中間部が炉体2の底面に沿って配置されている。
冷却管11のうち、両外側の冷却管11Sは、炉体2の内部では周辺部Epだけを通る。一方、中間部の冷却管11Mは、炉体2の内部では炉底7の周辺部Epおよび中心部Ecを通る。
【0020】
中間部の冷却管11は、炉体2の外部から周辺部Epに沿った部分が二重管部20Pとされ、中心部Ecに沿った部分が二重管部20Cとされている。
中間部の冷却管11には、周辺部Epと中心部Ecとの境界Bcに、流路入替部30が設置されている。
従って、周辺部Epに沿った一方の二重管部20Pは、境界Bcにある流路入替部30を介して中心部Ecに沿った二重管部20Cの一端に接続され、二重管部20Cの他端は、反対側の境界Bcにある流路入替部30を介して周辺部Epに沿った他方の二重管部20Pに接続されている。
【0021】
図1で説明した通り、流路入替部30においては、第1連通路31および第2連通路32により、両側に接続される二重管部20の外側流路21と内側流路22とが入れ換えられる。
従って、第1の流れとして、冷媒供給装置12から一方の周辺部Epの二重管部20Pの外側流路21に通された冷媒は、流路入替部30の第1連通路31を経て中心部Ecの二重管部20Cの内側流路22に通され、他側の流路入替部30の第2連通路32を経て他側の周辺部Epの二重管部20Pの外側流路21に通され、冷媒供給装置12へと回収される。
一方、第2の流れとして、冷媒供給装置12から一方の周辺部Epの二重管部20Pの内側流路22に通された冷媒は、流路入替部30の第2連通路32を経て中心部Ecの二重管部20Cの外側流路21に通され、他側の流路入替部30の第1連通路31を経て他側の周辺部Epの二重管部20Pの内側流路22に通され、冷媒供給装置12へと回収される。
【0022】
冷却管11による炉底7の冷却は、二重管部20P,20Cのそれぞれ外側流路21を通る冷媒により行われる。つまり、炉底7の周辺部Epは、二重管部20Pの外側流路21を流れる冷媒(第1の流れ)により冷却され、炉底7の中心部Ecは、二重管部20Cの外側流路21を流れる冷媒(第2の流れ)により冷却される。
従って、冷媒供給装置12において、第1の流れおよび第2の流れの冷媒の状態(流量、種類、温度など)をそれぞれ調整することで、炉底7の周辺部Epおよび中心部Ecの領域ごとに冷却管11の冷却能力を調整可能である。
【0023】
図3ないし
図7の各図には、流路入替部30および二重管部20(20P,20S)の詳細が示されている。このうち、
図5は
図6および
図7のA-A線断面を示し、
図6は
図5のB-B線断面を示し、
図7は
図5のC-C線断面を示す。
冷却管11に用いられる二重管部20(20P,20S)は、同軸状に配置された円形断面の外管23および内管24を有し、外管23と内管24との空間に外側流路21が形成され、内管24の内側の空間に内側流路22が形成されている。
【0024】
冷却管11には、それぞれ途中の2箇所(境界Bc位置)に流路入替部30が形成され、全長が周辺部Epの二重管部20P、中心部Ecの二重管部20C、周辺部Epの二重管部20Pの3つに区画される。
図3ないし
図7の各図においては、流路入替部30より上流側を二重管部20A、下流側を二重管部20Bとする。
図1および
図2の図中左側の流路入替部30においては、周辺部Epの二重管部20Pが上流側の二重管部20A、中心部Ecの二重管部20Cが下流側の二重管部20Bとなる。
図1および
図2の図中右側の流路入替部30においては、中心部Ecの二重管部20Cが上流側の二重管部20A、周辺部Epの二重管部20Pが下流側の二重管部20Bとなる。図中左右いずれの流路入替部30においても、同じ構造が用いられている。
【0025】
流路入替部30は、外管23と内管24との間に、外側流路21を遮断する外側遮断部材33を有する。外側遮断部材33は、円環状の鋼板で形成され、内周を内管24の外面に溶接され、外周はOリングなどのシール材を介して外管23の内面に密接されている。
内管24の内部には、外側遮断部材33よりも上流側から下流側までの区間に、垂直仕切部材34および水平仕切部材35が設置されている。垂直仕切部材34は、管24の軸線方向に延びる垂直な板材で形成されている。水平仕切部材35は、管24の軸線方向に延びる水平な板材で形成されている。
垂直仕切部材34および水平仕切部材35は、内管24の中心軸線で交差され、内管24の内部を十字状に仕切って内管24の延長方向に延びる4本の流路を形成する。
4本の流路は、隣接しない2本が第1連通路31となり、他の2本が第2連通路32となる。
【0026】
外側遮断部材33より上流側の内管24の内部には、垂直仕切部材34および水平仕切部材35の上流側端に、第1連通路31を遮断する第1遮断部材36が設置されている。
第1遮断部材36から外側遮断部材33までの区間において、内管24には内外を連通する第1連通口37が形成され、この第1連通口37により第1連通路31と外側流路21とが連通されている。
【0027】
外側遮断部材33より下流側の内管24の内部には、垂直仕切部材34および水平仕切部材35の下流側端に、第2連通路32を遮断する第2遮断部材38が設置されている。
第2遮断部材38から外側遮断部材33までの区間において、内管24には内外を連通する第2連通口39が形成され、この第2連通口39により第2連通路32と外側流路21とが連通されている。
【0028】
図6および
図7において、上流側の二重管部20Aから流路入替部30を経て下流側の二重管部20Bに至る冷媒の流れは以下のようになる。
先ず、二重管部20Aの外側流路21を流れてきた冷媒は、流路入替部30に達すると、外側遮断部材33でその流れを遮断され、2つの第1連通口37から2本の第1連通路31へ流れ込み、二重管部20Bの内側流路22へと送り出される。
一方、二重管部20Aの内側流路22を流れてきた冷媒は、流路入替部30に達すると、一部が第1遮断部材36でその流れを遮断され、2本の第2連通路32へ流れ込み、第2遮断部材38で流れを遮断されたのち、第2連通口39から二重管部20Bの外側流路21へと送り出される。
従って、上流側の二重管部20Aから下流側の二重管部20Bに至る冷媒は、流路入替部30により外側流路21の流れと内側流路22の流れとが入れ換えられ、これにより流路入替部30、第1連通路31、および第2連通路32としての機能が得られる。
【0029】
このような第1実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態の高炉炉底冷却構造10では、冷媒供給装置12から冷却管11へと冷媒が供給され、冷却管11をとおして炉底7が冷却される。
冷却管11において、上流側の二重管部20Aで外側流路21を流れていた冷媒は、流路入替部30で第1連通路31を通り、下流側の二重管部20Bでは内側流路22を流れることになる。一方、上流側の二重管部20Aの内側流路22を流れていた冷媒は、流路入替部30で第2連通路32を通り、下流側の二重管部20Bでは外側流路21を流れることになる。つまり、二重管部20を流れる2系統の冷媒(第1の流れ、第2の流れ)は、流路入替部30を通過することで、流れる外側流路21および内側流路22が互いに入れ替わる。
このような冷却管11では、二重管部20の表面に近い外側流路21を流れる冷媒により主な冷却機能が得られる。従って、流路入替部30で外側流路21を流れる冷媒を切り替え、二重管部20に通される2系統の冷媒(第1の流れ、第2の流れ)のいずれかを選択することで、同じ一層の二重管部20(20P,20C)で炉底7の領域(周辺部Ep,中心部Ec)ごとの冷却能力が調整でき、かつ炉底7での厚みを薄くできる。
【0030】
本実施形態では、冷却管11は、少なくとも一部(
図2の冷却管11M)が炉底7の周辺部Epおよび炉底7の中心部Ecを通り、流路入替部30は、周辺部Epと中心部Ecとの境界Bcに設置されている。このため、一層の冷却管11M(二重管部20P,20C)で2系統の冷媒(第1の流れ、第2の流れ)を通し、炉底7の周辺部Epでの冷却能力と、炉底7の中心部Ecでの冷却能力とを、それぞれ別個に調整することができる。
【0031】
本実施形態では、外管23と内管24との間に外側遮断部材33を設置し、内管24の内側に垂直仕切部材34および水平仕切部材35、第1遮断部材36および第2遮断部材38を設置し、内管24に第1連通口37および第2連通口39を形成することで、二重管部20の途中に流路入替部30を設置することができる。このうち、外側遮断部材33、第1遮断部材36、第2遮断部材38は、それぞれ鋼板を溶接することで設置でき、第1連通口37および第2連通口39は内管24に開口を形成するだけでよく、従って製造が容易にできる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図8および
図9には、本発明の第2実施形態が示されている。
図8は
図9のD-D線断面を示し、
図9は
図8のE-E線断面を示す。
本実施形態は、前述した第1実施形態の流路入替部30に代えて流路入替部30Aを用いるものであり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0033】
前述した第1実施形態の流路入替部30では、外管23と内管24との間に外側遮断部材33を設け、その上流側の内管24に第1遮断部材36および第1連通口37を設け、下流側の内管24に第2遮断部材38および第2連通口39を設け、これらにより第1連通路31および第2連通路32を形成していた。
これに対し、本実施形態の流路入替部30Aでは、各遮断部材(33A,36A,38A)の内外が逆になっている。
【0034】
図8および
図9において、内管24の内部には内側遮断部材33Aが設置され、この内側遮断部材33Aにより内側流路22が遮断されている。二重管部20は、内側遮断部材33Aより上流側が二重管部20A、下流側が二重管部20Bとされる。
外管23と内管24との間には、内側遮断部材33Aよりも上流側(二重管部20Aの側)から下流側(二重管部20Bの側)まで延びる水平な外側仕切部材35Aが両側一対で形成され、外側仕切部材35Aが設けられた区間(流路入替部30Aとなる区間)の外側流路21が上下に仕切られている。
【0035】
下流側の二重管部20Bにおいて、外管23と内管24との間には、外側仕切部材35Aの下流側端から下向きに半円弧状の第1遮断部材36Aが設置されている。第1遮断部材36Aは、周囲を外側仕切部材35A,外管23の内面、内管24の外面に溶接されており、これにより外側仕切部材35Aの下側の外側流路21が遮断されている。
内管24の第1遮断部材36Aから内側遮断部材33Aまでの部分の下面側には、第1連通口37Aが形成されている。外側仕切部材35Aの下側の外側流路21は、第1連通口37Aにより下流側の二重管部20Bの内側流路22と連通され、この外側仕切部材35Aの下側の外側流路21により第1連通路31Aが形成されている。
【0036】
上流側の二重管部20Aにおいて、外管23と内管24との間には、外側仕切部材35Aの上流側端から上向きに第2遮断部材38Aが設置されている。第2遮断部材38Aは、周囲を外側仕切部材35A、外管23の内面、内管24の外面に溶接されており、これにより外側仕切部材35Aの上側の外側流路21が遮断されている。
内管24の第2遮断部材38Aから内側遮断部材33Aまでの部分の上面側には、第2連通口39Aが形成されている。外側仕切部材35Aの上側の外側流路21は、第2連通口39Aにより上流側の二重管部20Aの内側流路22と連通され、この外側仕切部材35Aの上側の外側流路21により第2連通路32Aが形成されている。
【0037】
図9において、上流側の二重管部20Aから流路入替部30Aを経て下流側の二重管部20Bに至る冷媒の流れは以下のようになる。
先ず、二重管部20Aの外側流路21を流れてきた冷媒は、流路入替部30Aの第1連通路31Aを通り、第1遮断部材36Aでその流れを遮断され、第1連通口37Aから二重管部20Bの内側流路22へと送り出される。
一方、二重管部20Aの内側流路22を流れてきた冷媒は、流路入替部30Aに入って内側遮断部材33Aでその流れを遮断され、第2連通口39Aから第2連通路32Aへ流れ込み、二重管部20Bの外側流路21へと送り出される。
従って、上流側の二重管部20Aから下流側の二重管部20Bに至る冷媒は、流路入替部30Aにより外側流路21の流れと内側流路22の流れとが入れ換えられる。
【0038】
このように、本実施形態の流路入替部30Aによっても、前述した第1実施形態の流路入替部30と同様な機能が得られる。
その結果、本実施形態においても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0039】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前述した第1実施形態では、外側遮断部材33は、内周を内管24の外面に溶接され、外周はOリングなどのシール材を介して外管23の内面に密接されるとした。
これに対し、
図10に示す第3実施形態のように、外側遮断部材33Cの外周面に複数列の溝条を形成し、外管23の内周面との間にラビリンスシールを形成してもよい。
さらに、外側遮断部材33Cの外周面と、外管23の内周面とを密接させ、メタルタッチによるシールを行ってもよい。
【0040】
あるいは、
図11に示す第4実施形態のように、内管24の外周面に外側遮断部材33Dを溶接し、両側から外管部材23A,23Bを当接させて全周を溶接し、これらの外管部材23A,23Bで一連の外管23を形成するとともに、外側流路21のシールを行うようにしてもよい。この際、内管24の外周面と外側遮断部材33Dとは、溶接ではなくメタルタッチとしてもよい。
【0041】
前記各実施形態において、内管24の外面または内面に断熱塗料を塗装してもよい。このような断熱塗料により、内側流路22と外側流路21との間の熱の移動を抑制することができ、冷却性能の向上により効果的である。
前述した第1実施形態では、第1連通路31および第2連通路32を2本ずつ形成したが、これらは1本ずつであってもよく、3本以上であってもよい。
前述した第2実施形態では、第1連通路31Aおよび第2連通路32Aを1本ずつ形成したが、これらはそれぞれ2本以上であってもよい。
前述した各実施形態では、第1連通口37,37Aおよび第2連通口39,39Aを、それぞれ内管24に形成した開口としたが、これらは外側流路21と内側流路22とを連通できればよく、例えば内管24を貫通する筒状部材などを用いてもよい。
【0042】
前述した各実施形態において、敷ビーム3に設置された冷却管11は、炉底板である鉄皮4から離れていてもよいが、接触させてもよい。冷却管11を鉄皮4に接触させることで熱伝達を促進できる。冷却管11は鉄皮4に溶接してもよい。炉体2に敷ビーム3を用いない場合、冷却管11を基礎9の上部に埋設して炉底板である鉄皮4に沿わせてもよい。
前述した各実施形態において、外管23および内管24はともに円形断面に限らず、例えば外管23は角形鋼管としてもよく、平坦な表面を鉄皮4に接触させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は高炉炉底冷却構造および冷却管に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…高炉、2…炉体、3…敷ビーム、4…鉄皮、5…耐火煉瓦、6…炉内空間、7…炉底、9…基礎、10…高炉炉底冷却構造、11,11M,11S…冷却管、12…冷媒供給装置、20,20A,20B,20C,20P…二重管部、21…外側流路、22…内側流路、23…外管、24…内管、30,30A…流路入替部、31,31A…第1連通路、32,32A…第2連通路、33…外側遮断部材、33A…内側遮断部材、34…垂直仕切部材、35…水平仕切部材、35A…外側仕切部材、36,36A…第1遮断部材、37,37A…第1連通口、38,38A…第2遮断部材、39,39A…第2連通口、Bc…境界、Ec…中心部、Ep…周辺部。