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特開2022-156323画像調整システム、画像調整方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156323
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】画像調整システム、画像調整方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20221006BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20221006BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221006BHJP
   H04N 5/243 20060101ALI20221006BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/00 550X
G09G5/00 510A
G09G5/36 520A
H04N5/232 930
H04N5/243
H04N5/232 290
H04N5/225 450
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059940
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 作一
【テーマコード(参考)】
5C122
5C182
【Fターム(参考)】
5C122DA14
5C122EA20
5C122EA47
5C122FH01
5C122FK12
5C122FK24
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA75
5C122HA86
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB06
5C182AB15
5C182AB25
5C182BA25
5C182BA26
5C182BA45
5C182CA02
5C182CA11
5C182CA12
5C182CA13
5C182DA53
(57)【要約】
【課題】画像の視認性を高めることができる画像調整システム、画像調整方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像調整システム1は、情報取得部11と、表示部3aと、調整部12と、を備える。情報取得部11は、車両2の周囲の明るさ情報を取得する。表示部3aは、画像を表示する。調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、表示部3aで表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する。この画像調整システム1によれば、車両2の周囲の明るさ情報に基づいて、表示される画像を人の視覚特性に応じて調整するので、画像の視認性を高めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得部と、
画像を表示する表示部と、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記表示部で表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する調整部と、
を備える画像調整システム。
【請求項2】
前記移動体に設けられ、前記表示部に表示する被写体の画像を撮像する撮像部を備え、
前記調整部は、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換するトーンカーブを、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブに変更し、
変更された前記トーンカーブを用いて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換し、変換された前記画像を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の画像調整システム。
【請求項3】
前記調整部は、
前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、周囲の明るさのレベルに応じて複数記憶する記憶部を有し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、前記記憶部から読み出し、
前記記憶部から読み出したトーンカーブを用いて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換し、変換された前記画像を前記表示部に表示させる、
請求項2に記載の画像調整システム。
【請求項4】
前記明るさ情報と、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブとの組み合わせを含む教師データを用いて、前記情報取得部で取得された前記明るさ情報を入力とし前記トーンカーブを出力とする多層ニューラルネットワークの深層学習を行う深層学習部を備え、
前記調整部は、
前記深層学習が行われた前記多層ニューラルネットワークを実装し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報を、実装された前記多層ニューラルネットワークに入力し、
前記撮像部で撮像された前記画像の画質を、前記多層ニューラルネットワークから出力された前記トーンカーブを用いて変換して、前記表示部に表示させる、
請求項2に記載の画像調整システム。
【請求項5】
前記明るさ情報と、変換前画像と、前記変換前画像を人の視覚特性に応じた画質に変換して得られる変換後画像との組み合わせを含む教師データを用いて、前記情報取得部で取得された前記明るさ情報と前記変換前画像とを入力とし前記変換後画像を出力とする多層ニューラルネットワークの深層学習を行う深層学習部を備え、
前記調整部は、
前記深層学習が行われた前記多層ニューラルネットワークを実装し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報と、前記変換前画像とを、実装された前記多層ニューラルネットワークに入力し、
前記多層ニューラルネットワークから出力された前記変換後画像を前記表示部に出力させる、
請求項1に記載の画像調整システム。
【請求項6】
前記表示部及び前記撮像部で、
前記移動体としての車両のバックミラー又はドアミラーを構成する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の画像調整システム。
【請求項7】
前記情報取得部は、
前記移動体から見て異なる方向の明るさに基づいて前記移動体の移動による周囲の明るさの変化を検出し、
検出された変化に基づいて、前記明るさ情報を取得する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像調整システム。
【請求項8】
前記情報取得部は、
前記移動体に設けられた照度センサ、色温度センサ、前記撮像部で撮像された撮像画像に基づいて、前記明るさ情報を取得する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像調整システム。
【請求項9】
前記情報取得部は、
前記移動体の位置情報と、現在の時刻情報と、前記移動体の周囲の天候情報とに基づいて、前記明るさ情報を取得する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像調整システム。
【請求項10】
第1のダイナミックレンジを有する第1の画像の輝度値を、前記第1のダイナミックレンジより小さい第2のダイナミックレンジを有する第2の画像に調整するLDR変換部と、
前記第1の画像又は前記第2の画像の各画素に、ガウス分布に従ってランダムに変動するノイズを加える加算部と、
を備える画像調整システム。
【請求項11】
情報処理装置によって実行される画像調整方法であって、
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップで取得された前記明るさ情報に基づいて、画像を人の視覚特性に応じて調整する調整ステップと、
前記調整ステップで調整された画像を表示する表示ステップと、
を含む画像調整方法。
【請求項12】
コンピュータを、
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得部、
画像を表示する表示部、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記表示部で表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する調整部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像調整システム、画像調整方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車には、カーナビゲーションシステムが搭載されるのが当たり前になってきている。また、電子ドアミラー又は電子バックミラーが登場してきている。電子バックミラーでは、鏡のバックミラーの代わりにカメラが設置され、カメラで撮像された画像が車の室内に設置されたディスプレイに表示される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電子バックミラーを用いれば、車の外部に鏡のバックミラーを設ける必要がないので、空気抵抗を少なくすることができる。また、表示画面が車内に設置されているので、画面が水滴で濡れたりして視認性が低下するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-91997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子ドアミラー及び電子バックミラーは、鏡に写る像よりも視認性が低下しないようにする必要がある。しかしながら、カメラで撮像された被写体を表示画面に表示した場合と、被写体を鏡にうつした場合とでは、見え方が異なる。この見え方の違いが、運転手に違和感を生じさせ、画像の視認性の低下につながるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、画像の視認性を高めることができる画像調整システム、画像調整方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る画像調整システムは、
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得部と、
画像を表示する表示部と、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記表示部で表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する調整部と、
を備える。
【0008】
この場合、前記移動体に設けられ、前記表示部に表示する被写体の画像を撮像する撮像部を備え、
前記調整部は、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換するトーンカーブを、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブに変更し、
変更された前記トーンカーブを用いて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換し、変換された前記画像を前記表示部に表示させる、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記調整部は、
前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、周囲の明るさのレベルに応じて複数記憶する記憶部を有し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、前記記憶部から読み出し、
前記記憶部から読み出したトーンカーブを用いて、前記撮像部で撮像された前記画像の画質を変換し、変換された前記画像を前記表示部に表示させる、
こととしてもよい。
【0010】
前記明るさ情報と、前記被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブとの組み合わせを含む教師データを用いて、前記情報取得部で取得された前記明るさ情報を入力とし前記トーンカーブを出力とする多層ニューラルネットワークの深層学習を行う深層学習部を備え、
前記調整部は、
前記深層学習が行われた前記多層ニューラルネットワークを実装し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報を、実装された前記多層ニューラルネットワークに入力し、
前記撮像部で撮像された前記画像の画質を、前記多層ニューラルネットワークから出力された前記トーンカーブを用いて変換して、前記表示部に表示させる、
こととしてもよい。
【0011】
前記明るさ情報と、変換前画像と、前記変換前画像を人の視覚特性に応じた画質に変換して得られる変換後画像との組み合わせを含む教師データを用いて、前記情報取得部で取得された前記明るさ情報と前記変換前画像とを入力とし前記変換後画像を出力とする多層ニューラルネットワークの深層学習を行う深層学習部を備え、
前記調整部は、
前記深層学習が行われた前記多層ニューラルネットワークを実装し、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報と、前記変換前画像とを、実装された前記多層ニューラルネットワークに入力し、
前記多層ニューラルネットワークから出力された前記変換後画像を前記表示部に出力させる、
こととしてもよい。
【0012】
前記表示部及び前記撮像部で、
前記移動体としての車両のバックミラー又はドアミラーを構成する、
こととしてもよい。
【0013】
前記情報取得部は、
前記移動体から見て異なる方向の明るさに基づいて前記移動体の移動による周囲の明るさの変化を検出し、
検出された変化に基づいて、前記明るさ情報を取得する、
こととしてもよい。
【0014】
前記情報取得部は、
前記移動体に設けられた照度センサ、色温度センサ、前記撮像部で撮像された撮像画像に基づいて、前記明るさ情報を取得する、
こととしてもよい。
【0015】
前記情報取得部は、
前記移動体の位置情報と、現在の時刻情報と、前記移動体の周囲の天候情報とに基づいて、前記明るさ情報を取得する、
こととしてもよい。
【0016】
本発明の第2の観点に係る画像調整システムは、
第1のダイナミックレンジを有する第1の画像の輝度値を、前記第1のダイナミックレンジより小さい第2のダイナミックレンジを有する第2の画像に調整するLDR変換部と、
前記第1の画像又は前記第2の画像の各画素に、ガウス分布に従ってランダムに変動するノイズを加える加算部と、
を備える。
【0017】
本発明の第3の観点に係る画像調整方法は、
情報処理装置によって実行される画像調整方法であって、
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップで取得された前記明るさ情報に基づいて、画像を人の視覚特性に応じて調整する調整ステップと、
前記調整ステップで調整された画像を表示する表示ステップと、
を含む。
【0018】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
移動体の周囲の明るさ情報を取得する情報取得部、
画像を表示する表示部、
前記情報取得部で取得された前記明るさ情報に基づいて、前記表示部で表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する調整部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動体の周囲の明るさ情報に基づいて、表示される画像を人の視覚特性に応じて調整するので、画像の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係る画像調整システムの構成を示す模式図である。
図2】電子ドアミラーの表示画面の一例を示す図である。
図3】車両に設けられる照度センサの設置例を示す図である。
図4】(A)は、車両の周囲の明るさが変化する例を示す図である。(B)は、照度センサで検出される照度の変化を示すグラフである。
図5】調整部の詳細な構成を示すブロック図である。
図6】(A)、(B)、(C)及び(D)は、トーンカーブの一例を示す図である。
図7図1の画像調整システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
図8図1の画像調整システムの動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2に係る画像調整システムの構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る画像調整システムの構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施の形態4に係る画像調整システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。
【0022】
実施の形態1.
図1に示すように、本実施の形態に係る画像調整システム1は、移動体としての車両2の室内に設置された表示画面に表示される画像を調整するために設けられている。車両2の室内には、電子ドアミラー3、電子バックミラー4、カーナビゲーションシステム5などの表示画面が設けられている。本実施の形態に係る画像調整システム1は、これらの表示画面のうち、電子ドアミラー3の表示画面に表示される画像を調整する。
【0023】
電子ドアミラー3は、画像を表示する表示部3aと、表示部3aに表示する被写体の画像を撮像する撮像部3bとを備える。表示部3aは、車両2の室内において、左右のドア6とダッシュボード7との近傍に設置されている。一方、撮像部3bは、鏡のドアミラー本来の位置(ドア6の外面)に設けられており、車両2の外側面後方を撮像する。これにより、図2に示すように、電子ドアミラー3は、車両2の運転手が、進行方向に対して車両2の両側後方を確認するためのドアミラーとしての役割を果たす。
【0024】
撮像部3bは、ハイダイナミックレンジで画像を撮像する。このような画像をHDR(High Dynamic Range)画像ともいう。ダイナミックレンジとは、画像における輝度の最大値と最小値の幅(比率)のことをいう。HDR画像においては、ダイナミックレンジは例えば6000:1(1/6000)であり、その輝度値は例えば16ビットで表現される。これに対して、表示部3aで表示される画像は、コントラスト比が25:1以下の低ダイナミックレンジ(LDR;Low Dynamic Range)の画像、すなわちLDR画像となる。
【0025】
撮像部3bで撮像された画像は、例えば自動露光で撮像された撮像素子の特性に沿った画像となっている。この画像をそのまま、HDR圧縮してLDR画像に変換し、表示部3aに表示した場合には、黒つぶれ又は白飛びなどが発生して、視認性が低下した画像となるおそれがある。
【0026】
そこで、本実施の形態に係る画像調整システム1は、撮像部3bで撮像された画像を標準表象画像(SRI;Standard Representational Image)に変換し、さらに低コントラストに変換されたLDR画像に変換して、表示部3aに表示する。標準表象画像は、SDR(Standard Dynamic Range)に相当する階調範囲(例えば8ビット)で人が被写体を直接見たときに感じる見え方に近い明るさを持つ画像である。最終的に生成されるLDR画像は、標準表象画像の特徴を備えつつ、さらに低コントラストの環境でも見やすい画像となる。
【0027】
図1に戻り、画像調整システム1は、上述の電子ドアミラー3と、情報取得部11と、調整部12と、を備える。画像調整システム1は、車両2に組み込まれたコンピュータのハードウエア資源がソフトウエアプログラムを実行することにより、画像処理を行う情報処理装置である。前述のように、電子ドアミラー3は、表示部3aと撮像部3bとを備える。
【0028】
[情報取得部]
情報取得部11は、車両2の周囲の明るさに関する情報、すなわち明るさ情報を取得する。本実施の形態では、情報取得部11によって取得される明るさ情報は、3種類の情報に大別される。1つ目は周囲が「明るい状態」であり、2つ目は周囲が「暗い状態」であり、3つ目は「中間の状態」である。
【0029】
図3に示すように、情報取得部11は、車両2の外部に設けられた照度センサ11a,11b,11cを備えている。照度センサ11aは、車両2の前方の明るさの照度情報を検出する。照度センサ11bは、車両2の上方の明るさの照度情報を検出する。照度センサ11cは、車両2の後方の明るさの照度情報を検出する。このように、情報取得部11は、車両2から見て複数の異なる方向の明るさ情報を取得する。
【0030】
情報取得部11は、照度センサ11a,11b,11cで検出される照度に基づいて、車両2の周囲が「明るい状態」であるか、「暗い状態」であるか、「中間の状態」であるかを判定する。具体的には、照度センサ11a,11b,11cで検出される照度が第1の照度以上である場合には、情報取得部11は、周囲が「明るい状態」であると判定する。また、情報取得部11は、照度センサ11a,11b,11cで検出される照度が第2の照度未満である場合には、周囲が「暗い状態」であると判定する。そして、情報取得部11は、照度センサ11a,11b,11cで検出される照度が第1の照度未満で第2の照度以上である場合には、「中間の状態」であると判定する。なお、この照度による判定は、例えば、平均値及び加算値で行われるようにしてもよいし、いずれか1つの照度センサ、例えば照度センサ11bだけで行われるようにしてもよい。
【0031】
また、情報取得部11は、照度センサ11a~11cを用いて、車両2の移動による車両2の周囲の明るさの変化を検出することができる。例えば、図4(A)及び図4(B)に示すように、車両2がトンネル8a内では、照度センサ11a~11cで検出される照度のレベルはローレベルとなっている。トンネル8aを抜ける手前では、照度センサ11aで検出される照度のレベルが最初に上がる。さらに、車両2がトンネル8aを抜けた時点において照度センサ11bで検出される照度のレベルが上がり、これに遅れて照度センサ11cで検出される照度のレベルが上がる。また、車両2がトンネル8bに入る手前で、照度センサ11aで検出される照度のレベルが最初に下がる。さらに、車両2がトンネル8bに入ると、照度センサ11bで検出される照度のレベルが下がり、これに遅れて照度センサ11cで検出される照度のレベルが下がる。
【0032】
より具体的には、情報取得部11は、この照度センサ11a,11b,11cのセンサ出力の変化のタイミングの違いにより、車両2の移動による周囲の明るさの変化を検出することができる。例えば、照度センサ11aで検出される照度が上がった後に照度センサ11bで検出された照度が上がれば、車両2が暗い場所から明るい場所に移動したことが検出される。また、照度センサ11aで検出された照度が下がった後に照度センサ11bで検出された照度が下がれば、車両2が明るい場所から暗い場所に移動したことが検出される。このように、車両2の周囲の明るさの変化した場合を、本実施の形態では、情報取得部11は、「中間の状態」であると判定する。
【0033】
ここで、照度センサ11aで検出された照度がハイレベルとなってから、照度センサ11a~11cで検出された照度がすべてローレベルである期間を期間Aとする。期間Aでは、周囲が「暗い状態」と判定される。そして、照度センサ11aで検出された照度がハイレベルになってから、照度センサ11cで検出された照度がハイレベルとなるまでの期間を期間Bとする。期間Bでは、周囲が「中間の状態」と判定される。また、すべての照度センサ11a~11cで検出された照度がすべてハイレベルである期間を期間Cとする。期間Cでは、周囲が「明るい状態」と判定される。さらに、照度センサ11aで検出された照度がローレベルになってから、照度センサ11cで検出された照度がローレベルとなるまでの期間を期間Dとする。期間Dでは、周囲が「中間の状態」と判定される。さらに、照度センサ11a~11cで検出された照度がすべてローレベルとなる期間を期間Eとする。期間Eでは、周囲が「暗い状態」と判定される。このようにすれば、車両2の移動による周囲の明るさの変化をいち早く検出して、画像の画質調整を遅れのないものとすることができる。
【0034】
また、周囲が明るい状態には、「日向」、「日陰」、「曇天下」の3つの状態がある。さらに、周囲が暗い状態には、「やや暗い」、「暗い」、「とても暗い」の3つの状態がある。情報取得部11は、色温度センサを備えており、色温度センサのセンサ出力(色温度情報)に基づいて、これら3つの状態を判定する。
【0035】
例えば、色温度センサで検出される色温度が第1の色温度(例えば7000k)未満である場合には、情報取得部11は、「日向」であると判定することができる。また、色温度センサで検出される色温度が第1の色温度(例えば7000k)以上である場合には、情報取得部11は、「日陰」又は「曇天下」であると判定することができる。また、色温度のばらつきが第1の閾値より小さければ、情報取得部11は、「曇天下」であると判定する。また、情報取得部11は、色温度のばらつきが第1の閾値以上で第2の閾値より小さければ「日陰」であると判定し、色温度のばらつきが第2の閾値以上であれば「日向」であると判定することができる。
【0036】
また、情報取得部11は、撮像部3bで撮像された画像、すなわち撮像画像の輝度情報に基づいて、明るさ情報を取得するようにしてもよい。例えば、画素の輝度値の平均レベルが第1の輝度値以上であれば、情報取得部11は、「明るい状態」であると判定することができる。また、情報取得部11は、第2の輝度値未満であれば明るさ情報として「暗い状態」であると判定することができる。
【0037】
また、照度センサ11a~11cの検出値に基づいて周囲が明るいと判定された場合、色温度が、第1の色温度(例えば7000k)未満である場合には、情報取得部11は「日向」であると判定する。また、色温度が、第1の色温度(例えば7000k)以上である場合には、情報取得部11は、「日陰」又は「曇天下」であると判定する。また、画像における照度、色温度のばらつきが第1の閾値より小さければ、情報取得部11は、「曇天下」であると判定する。また、色温度のばらつきが第1の閾値以上で第2の閾値より小さければ、情報取得部11は、「日陰」であると判定し、第2の閾値以上であれば明るさ情報として「日向」であると判定する。
【0038】
また、照度センサ11a~11cの検出値に基づいて周囲が暗い状態であると判定された場合、情報取得部11は、画像の輝度の最大値が第1の輝度値以上である場合には、「やや暗い」状態であると判定することができる。例えば、照明が明るいトンネル内などは「やや暗い」状態であると判定される。また、画像の輝度の最大値が第1の輝度値より低く、第2の輝度値以上である場合には、情報取得部11は、「暗い」状態であると判定することができる。また、画像の輝度の最大値が第2の輝度値より低い場合には、情報取得部11は、「とても暗い」状態であると判定することができる。
【0039】
さらに、情報取得部11は、画像全体のコントラストの大きさ、すなわちコントラスト情報で、「日向」、「日陰」、「曇天」を判定するようにしてもよい。すなわち、画像のコントラストが大きければ「日向」であると判定し、中程度であれば「日陰」であると判定し、小さければ「曇天下」であると判定することができる。
【0040】
また、照度センサ11a~11bが、日光の入射角度を検出可能なものを用いたり、色温度センサを用いて画像全体のトーンに赤みがかっていたりすることを検出したりした場合には、情報取得部11は、周囲が「夕方又は朝方の明るさ」であると判定することができる。
【0041】
上述のように、本実施の形態では、情報取得部11は、各種センサの検出値に基づいて、明るい状態(「日向」、「日陰」、「曇天下」)、暗い状態(「やや暗い」、「暗い」、「夜間」)、中間の状態、夕方又は朝方の明るさという8つの状態を判定し、明るさ情報として調整部12に送る。
【0042】
[調整部]
調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、表示部3aで表示される画像を、人の視覚特性に応じて調整する。本実施の形態では、この調整に、画像の階調特性を変更するトーンカーブが用いられる。このトーンカーブは、輝度の全範囲で単一の曲線であり、グローバルトーンマッピングを行う濃度変換曲線である。適切なトーンカーブを用いて画像を変換すれば、撮像部3bの特性に従った画像から、人の視覚特性に応じた画像、すなわち被写体を直接見たときの見え方に近い画質の画像を得ることができる。
【0043】
人の視覚特性に応じた画像は、画像が撮像された時の周囲の明るさによって変化する。そこで、本実施の形態では、調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報に応じて、撮像部3bで撮像された画像の画質を調整するトーンカーブを、被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブに変更する。調整部12は、変更したトーンカーブを用いて、撮像部3bで撮像された画像の画質を変換する。
【0044】
調整部12の詳細な構成についてさらに説明する。図5に示すように、調整部12は、記憶部20と、選択部21と、画質変換部22と、ディスプレイ調整部23と、を備える。
【0045】
記憶部20は、トーンカーブT1,T2,T3,・・・,T8(図6(A)~図6(D))を記憶する。トーンカーブT1~T8は、それぞれ形状が異なる曲線であり、それぞれ周囲の明るさのレベルに応じて、規定されたレベル毎に記憶される曲線である。選択部21は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、トーンカーブT1~T8のうち、被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、記憶部20から読み出す。画質変換部22は、記憶部20から読み出したトーンカーブを用いて撮像部3bで撮像された画像の画質を変換する。ディスプレイ調整部23は、変換されたHDR画像を表示部3aに表示されるLDR画像に変換する。変換された画像は、表示部3aに表示される。
【0046】
記憶部20に記憶されるトーンカーブT1~T8は、4つに分類される。1つ目は、周囲が明るい状態において人の視覚特性に沿ったトーンカーブT1~T3(図6(A)参照)である。2つ目は、周囲が暗い状態において人の視覚特性に沿ったトーンカーブT4~T6(図6(B)参照)である。3つ目は、周囲が明るい状態と暗い状態との中間の状態であるときの人の視覚特性に沿ったトーンカーブT7(図6(C)参照)である。4つ目は、画像内に突出して輝度が高い部分がある場合のトーンカーブT8(図6(D)参照)である。
【0047】
図6(A)~図6(D)に示すグラフでは、入力値が横軸であり、出力値が縦軸である。また、両軸は対数表示となっている。トーンカーブT1~T8は、輝度の最大値を1として正規化されている。このトーンカーブT1~T8を用いた変換では、入力値が撮像部3bで撮像された画像の各画素の輝度値となり、出力値が変換後の画像の各画素の輝度値となる。
【0048】
トーンカーブT1~T8は、入力値が1に近づくにつれて単調に増加する曲線となる。図6(A)~図6(D)では、入力値に対する出力値の傾きγ=1の直線を点線で示している。
【0049】
画質変換部22は、情報取得部11で取得された明るさ情報が、車両2の周囲が明るい状態(「日向」、「日陰」、「曇天下」)であることを示している場合に、トーンカーブT1~T3のいずれかを用いて、画像の階調特性を変換する。第1のトーンカーブとしてのトーンカーブT1は、日向に対応するトーンカーブである。第2のトーンカーブとしてのトーンカーブT2は、日陰に対応するトーンカーブである。第3のトーンカーブとしてのトーンカーブT3は、曇天下に対応するトーンカーブである。曇天下に対応するトーンカーブT3は、傾きγ=1の直線(点線)に最も近く、日陰に対応するトーンカーブT2、日向に対応するトーンカーブT1の順に直線から離れていく。このことは、トーンカーブT3、T2、T1の順に、変換した画像の画質が明るくなることを示している。
【0050】
トーンカーブT1~T3は、傾きγ=1の直線(点線)よりも上側となり、入力値が0.0003(10-3.5)以上の範囲では上方に凸に湾曲した曲線となる。トーンカーブT1では、入力値が0.0003(10-3.5)以上0.5(10-1.5)以下の範囲で傾きγが最大となるように規定されている。すなわち、トーンカーブT1~T3では、人の感度が高い範囲に多くの階調が割り当てられるようになっている。また、トーンカーブT1~T3は、入力値が0.5(10-1.5)から1に近づくにつれて、傾きγが0とならずに出力値が1に近づいていくように規定されている。
【0051】
選択部21は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、トーンカーブT1~T3のうち、いずれかのトーンカーブを選択する。明るさ情報が「日向」を示していれば、選択部21は、日向のトーンカーブT1を選択する。また、明るさ情報が「日陰」を示していれば、選択部21は、日陰のトーンカーブT2を選択する。さらに、明るさ情報が「曇天下」を示していれば、選択部21は、曇天下に対応するトーンカーブT3を選択する。
【0052】
画質変換部22は、情報取得部11で取得された明るさ情報が、車両2の周囲が暗い状態であることを示している場合に、トーンカーブT4~T6を用いて、画像の階調特性を変換する。車両2の周囲が暗い状態には、夜間又はトンネル内などがある。
【0053】
トーンカーブT4は、明るさ情報が「やや暗い」である場合に選択される。例えば、トーンカーブT4は、画像が全体としては暗いが、明るい照明を含む場合に用いられる。トーンカーブT4は、輝度の最大値を1として正規化された場合に、入力値が0.0001(10-4)より低い範囲の傾きγが最大となり、0.0001(10-4)より高い範囲での傾きγが0とならないように規定されている。
【0054】
また、トーンカーブT5は、明るさ情報が「暗い」場合に選択される。トーンカーブT5は、入力値が、0.001(10-3)のときに傾きγが最大となり、全体としてS字状となるように規定されている。
【0055】
また、トーンカーブT6は、明るさ情報が「とても暗い」場合に選択される。例えば、トーンカーブT6は、画像内の暗部が明るくなるようにカーブのレベルを持ち上げることができる。トーンカーブT6は、トーンカーブT5よりも入力値の全範囲に渡る傾きγの変化が小さくなるように規定されている。
【0056】
さらに、トーンカーブT7は、明るさ情報が「中間の状態」であるときに選択される。トーンカーブT7は、第1の範囲W1(入力値が10-4.5から10-1.5の範囲)近傍の低輝度側と、第2の範囲W2(入力値が10-2.5以上の範囲)近傍の高輝度側とに、上に凸状に湾曲した部分をそれぞれ有している。
【0057】
また、トーンカーブT8は、明るさ情報が「夕方又は朝方の明るさ」である場合に選択される。夕方又は朝方の明るさでは、低角度で直射日光が被写体に当たって反射光が強くなるため、全体のコントラストが向上する一方、迷光による中低輝度の像の判別の困難性は低減される。そこで、トーンカーブT8では、その分が、高輝度の範囲に割り当てられるようになっており、被写体においてそのような反射光が反射する周辺の階調再現域を広げることができるようになっている。
【0058】
例えば、車両2が、図4(A)に示す道路を走行する場合、図4(B)に示すように、トンネル8a内の期間Aにおいては、トーンカーブT4~T6のいずれかが選択される。さらに、トンネル8aから出る期間Bにおいては、トーンカーブT7が選択される。屋外の期間Cにおいては、トーンカーブT1~T3、T8のいずれかが選択される。さらに、トンネル8bに入る手前の期間Dにおいては、トーンカーブT7が選択される。そして、トンネル8b内の期間Eにおいては、トーンカーブT4~T6のいずれかが選択される。
【0059】
なお、期間Bにおいては、車両2は、トンネル8aから出ているが、撮像部3bでは、トンネル8a内と、トンネル8b外とが両方撮像される。このような場合、トーンカーブT7を用いれば、トンネル8a内の画像とトンネル8b外の画像とを黒つぶれ及び白飛びを発生させることなく、表示部3aに表示されることができる。
【0060】
このように、調整部12は、情報取得部11で検出された明るさ情報に基づいて、被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブを、記憶部20から読み出す。さらに、調整部12は、記憶部20から読み出したトーンカーブを用いて撮像部3bで撮像された画像の画質を変換する。
【0061】
なお、トーンカーブT1~T8は、ルックアップテーブル(LUT;Look Up Table)に登録されている。LUTを参照することにより、その入力値に対する出力値を直接得ることができるようになっている。
【0062】
画質が変換された画像(HDR画像)は、さらにLDR画像に変換される。トーンカーブT1~T8は、いずれも、LDR画像に変換した場合の見かけ上のトーンカーブがフラットにならないような曲線となっている。
【0063】
[ハードウエア構成]
図7には、画像調整システム1のハードウエア構成が示されている。図7に示すように、画像調整システム1は、CPU(Central Processing Unit)30と、メモリ31と、外部記憶部32と、入出力部33と、カードインターフェイス34と、通信インターフェイス35とを備える。画像調整システム1の各構成要素は、内部バス40を介して接続されている。なお、図7では、トーンカーブT1~T8をトーンカーブTにまとめて表示している。
【0064】
CPU30は、ソフトウエアプログラム(以下、単に「プログラム」とする)を実行するプロセッサ(演算装置)である。メモリ31には、外部記憶部32からプログラム39が読み込まれ、CPU30は、メモリ31に格納されたプログラム39を実行することにより、情報取得部11及び調整部12の動作を行う。
【0065】
メモリ31は、例えばRAM(Random Access Memory)である。メモリ31には、CPU30によって実行されるプログラム39が格納される他、CPU30によるプログラム39の実行で必要なデータ(トーンカーブT、撮像画像)、プログラム39の実行の結果生成されるデータ(変換後の画像)が記憶される。
【0066】
外部記憶部32は、例えばハードディスク等である。外部記憶部32は、CPU30により実行されるプログラム39が記憶される。また、持ち運び可能なUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体50にはプログラム39が記憶されている。外部記憶部32には、記録媒体50から転送されたプログラム39が記憶されている。
【0067】
入出力部33は、表示部3a、撮像部3b及び各種センサ3cとのデータ入出力を行うインターフェイスである。各種センサ3cは、図3に示す照度センサ11a~11c、色温度センサなどをまとめたものである。撮像部3bで撮像された画像は、入出力部33を介してメモリ31等に記憶され、メモリ31に記憶された変換後の画像は、入出力部33を介して表示部3aに送られる。
【0068】
カードインターフェイス34は、記録媒体50とのインターフェイスである。プログラム39は、このカードインターフェイス34を介して入力され、外部記憶部32に記憶される。
【0069】
通信インターフェイス35は、インターネット等の通信ネットワークに接続する通信インターフェイスである。
【0070】
次に、本実施の形態に係る画像調整システム1(情報処理装置)の動作について説明する。図7に示すように、プログラム39が、外部記憶部32からメモリ31に読み込まれ、CPU30に実行されることにより、処理が開始される。
【0071】
図8に示すように、まず、画像調整システム1において、撮像部3bは、画像を撮像する(ステップS1)。図7に示すように、撮像部3bで撮像された画像は、入出力部33を介して、メモリ31に記憶される。
【0072】
続いて、情報取得部11は、移動体の周囲の明るさ情報を取得する(ステップS2;情報取得ステップ)。具体的には、図7に示すように、各種センサ3cで検出された情報が、入出力部33を介して、メモリ31に記憶される。情報取得部11としてのCPU30は、これらの各種センサ3cや撮像部3bで撮像された画像に基づいて、明るさ情報を取得する処理を行う。
【0073】
続いて、調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、画像を人の視覚特性に応じて調整する画像の調整を行う(ステップS3;調整ステップ)。具体的には、図7に示すように、調整部12としてのCPU30は、トーンカーブT(T1~T8)の中から、明るさ情報に対応するトーンカーブを選択し、そのトーンカーブで画像の画質を変換する。
【0074】
さらに、表示部3aは、調整ステップで調整された画像を表示する(ステップS4;表示ステップ)。具体的には、図7に示すように、変換された画像は、メモリ31から入出力部33を介して表示部3aに送られる。
【0075】
このような手順、ステップS1~S4が、一定の間隔で、繰り返される。これにより、表示部3aには、車両2の両側後方の画像が表示される。
【0076】
なお、本実施の形態では、表示部3a及び撮像部3bとで、電子ドアミラー3を構成するものとしたが、本発明はこれには限られない。例えば、表示部及び撮像部とで、車両2の電子バックミラー4を構成するようにしてもよい。
【0077】
また、カーナビゲーションシステム5についても、本実施の形態に係る画像調整システム1の仕組みを適用することができる。情報取得部11によって取得された明るさ情報に基づいて、カーナビゲーションシステム5の表示画面を調整することができる。この場合、単に、車両2の周囲が明るい場合には、表示画面の輝度を高め、車両2の周囲が暗い場合には、表示画面の輝度を低くするようにしてもよい。
【0078】
なお、本実施の形態では、情報取得部11が、照度センサ11a~11cを備えるものとしたが、本発明はこれには限られない。照度センサ11bだけが備えられるようにしてもよい。
【0079】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上記実施の形態1では、車両2に設置された照度センサ11a~11c等のセンサ出力から明るさ情報を取得した。本実施の形態では、情報取得部11は、車両2の位置情報と、時刻情報と、天候情報とに基づいて、明るさ情報を取得する。
【0080】
図9に示すように、本実施の形態では、情報取得部11は、基本情報検出部26と、明るさ情報検出部27と、を備えている。基本情報検出部26は、カーナビゲーションシステム5から車両2の位置情報を取得するとともに、現在の時刻情報を取得する。この位置情報は、GPS(Global Positioning System)より得られる情報である。
【0081】
基本情報検出部26は、車両2の位置情報及び現在の時刻情報に基づいて、現在、車両2が太陽に照らされているか否か又は太陽の向きなどの基本情報を検出する。基本情報には、日中であるか、夜間であるか、日中であってもトンネル内であるか、日中である場合には、車両2に対する太陽の方角及び高さなどの情報が含まれている。
【0082】
明るさ情報検出部27は、上記基本情報を入力するとともに、天候情報を入力する。明るさ情報検出部27は、天候が晴れであるか、曇りであるか、雨であるか否かにより、最終的な明るさ情報を検出する。
【0083】
調整部12は、検出された明るさ情報に基づいて、トーンカーブT1~T8の中からトーンカーブを1つ選び、選んだトーンカーブで画像の画質を変換する。
【0084】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図10に示すように、本実施の形態に係る画像調整システム1は、深層学習部60を備える点が、上記各実施の形態に係る画像調整システム1の構成と異なる。
【0085】
深層学習部60は、画像調整システム1と通信ネットワークを介して接続可能なサーバコンピュータに設けられている。深層学習部60には、情報取得部11で取得された明るさ情報と撮像部3bで撮像された画像とを入力とし、表示部3aで表示される画像を出力とする多層ニューラルネットワークが実装されている。深層学習部60は、教師データ61を用いて、多層ニューラルネットワークの深層学習を行う。この教師データ61は、撮像部3bで撮像された画像(変換前画像)と、撮像部3bで変換前画像が撮像されたときの情報取得部11で取得された明るさ情報と、変換前画像を人の視覚特性に応じた画質に変換して得られる変換後画像(表示部3aで表示する画像)との組み合わせのデータである。この深層学習には、例えば逆誤差伝播法等が用いられ、多層ニューラルネットワークのパラメータが最適化される。
【0086】
最適化されたパラメータは、通信ネットワークを介して(図7に示す通信インターフェイス35を介して)、調整部12の多層ニューラルネットワーク実装部55に実装される。調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報と、撮像部3bで撮像された画像(変換前画像)とを、多層ニューラルネットワーク実装部55に実装された多層ニューラルネットワークに入力する。多層ニューラルネットワークは、変換後画像、表示部3aに表示される表示画像を出力する。このようにして、表示部3aには、深層学習の学習結果が反映された画像が表示される。
【0087】
なお、本実施の形態では、画像を直接変換する、すなわち変換前画像を入力し、変換後画像を出力する多層ニューラルネットワークを備えることとしている。しかし、これには限られない。多層ニューラルネットワークは、複数のトーンカーブの中から、いずれか1つのトーンカーブを選択する出力を行うものであってもよい。選択されたトーンカーブは、被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なものとなる。この場合、多層ニューラルネットワークは、情報取得部11で取得された明るさ情報のみを入力するものとすることができる。すなわち、多層ニューラルネットワークは、情報取得部11で取得された情報に基づいて、画像そのものを出力するものであってもよいし、画像の画質を変換する情報、すなわちトーンカーブを出力するものであってもよい。
【0088】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。HDR画像を表示する表示装置には様々なものがあり、コントラスト比が100:1のもの(CR100)から、25:1(CR25)、10:1のもの(CR10)やそれ以下のもの(GMIN)まで存在する。このうち、CR25以下のコントラストの表示装置(例えばプロジェクタ)を低ダイナミックレンジ(LDR;Low Dynamic Range)の表示装置という。これらLDRの表示装置でも、可能な限り視覚的に高いコントラストで、画像を見ることができるようにすることが求められている。
【0089】
本実施の形態に係る画像調整システム1は、図11に示すように、LDR変換部71と、加算部72と、を備える。LDR変換部71は、第1のダイナミックレンジとしての広いダイナミックレンジを有する第1の画像としてのHDR画像/SDR画像の輝度値を、HDR又はSDRのダイナミックレンジより小さい第2のダイナミックレンジとしてLDRの第2の画像、すなわちLDR画像に調整する。加算部72は、LDR画像の各画素に、ガウス分布に従ってランダムに変動するノイズを加える。加えるノイズのスケールは、例えば、全体の輝度範囲の1%程度でよい。なお、第1の画像は、上記実施の形態1~3において、トーンカーブによって画質が変換された画像とすることができる。
【0090】
ノイズの加算による確率共鳴現象により、HDR圧縮された表示画像に対して、黒つぶれした部分のコントラストを向上させることができる。コントラストが向上した画像は、表示部3aに表示させるようにしてもよいし、印刷してもよい。この場合、印刷された画像は、黒つぶれが低減された画像となる。
【0091】
なお、加算部72をLDR変換部71の前段に置き、HDR画像/LDR画像に対してノイズを加算するようにしてもよい。この場合、ノイズのスケールは図11に示す構成よりも大きくする必要がある。
【0092】
以上詳細に説明したように、上記実施の形態によれば、車両2の周囲の明るさ情報に基づいて、表示される画像を人の視覚特性に応じて調整するので、画像の視認性を高めることができる。また、確率共鳴現象により、画像の黒つぶれを低減することが可能となる。
【0093】
トーンカーブT1~T8の特性はあくまで一例であり、この他のトーンカーブを採用することも可能である。また、調整部12は、記憶部20から複数のトーンカーブT1~T8から、いずれか1つのトーンカーブT1~T8を選択するのではなく、情報取得部11で取得された明るさ情報を変数とし、トーンカーブの形状を変更する関数を記憶部20に記憶させておき、その関数に明るさ情報を入力することにより求められる関数をトーンカーブとして用いるようにしてもよい。すなわち、調整部12は、情報取得部11で取得された明るさ情報に基づいて、撮像部3bで撮像された画像の画質を変換するトーンカーブを、被写体を直接見たときの見え方に近い画質に変換可能なトーンカーブに変更し、変更されたトーンカーブを用いて、撮像部3bで撮像された画像の画質を変換し、変換された画像を表示部3aに表示させるようにすればよい。
【0094】
人間は、日向、日陰、曇天下、夜間などの様々な異なる環境で被写体の見え方を変更していると考えられる。実写画像に写る被写体を、実際の環境で鑑賞したときのグローバルトーンマッピングは、殆どの場合、標準的な数種類のパターン処理(例えば, 日向、日陰、曇天下など)とその派生処理(夕焼け補正など)に分類することができる。本実施の形態に係る画像調整システム1が行う処理は、人間が実際に行う視覚情報処理に類似した処理である。本実施の形態に係る画像調整システム1は、人間が行っている視覚情報処理のパターンに沿ってトーンカーブを切り替えることにより、表示部3aに表示される画像に生じる違和感を低減している。
【0095】
トーンカーブによる画質の変換は、ルックアップテーブルの参照により行われるので、処理時間を短縮することができる。これにより、膨大な演算を必要とせずに被写体の画像を見る人の違和感を低減することができる。この結果、本実施の形態に係る画像調整システム1を、動画の画質変換に用いるようにすれば、変換に要する時間を短縮することができる。
【0096】
このように、本実施の形態では、周囲が明るい状態、すなわち日向、日陰、曇天下についてトーンカーブT1~T3をそれぞれ用意している。このようにすれば、日中の人の視覚特性に沿った画質にきめ細かく変換することができるので、被写体の画像を見る人の違和感を低減することができる。なお、周囲が明るい状態については、2種類又は4種類以上にトーンカーブを分けることも可能である。
【0097】
また、本実施の形態では、夕方や朝方などの画像については、角度の低い太陽光による反射光の影響を考慮して、高輝度域のコントラストが向上するようにトーンカーブT8を用いて補正される。このようにすれば、夕方又は朝方の被写体の見え方に近い画像を生成することができる。このトーンカーブT8は、日向、日陰、曇天下のいずれの画像に対しても同じものを適用することができる。
【0098】
また、本実施の形態では、周囲が暗い状態である場合には、その画像の明るさの度合いによって、3種類のトーンカーブT4~T6を用意している。これにより、高輝度の範囲から低輝度の範囲まで高コントラストで、画像を表示することが可能となっている。なお、夜間については、2種類又は4種類以上にトーンカーブを分けることも可能である。
【0099】
また、本実施の形態では、明るい状態と、暗い状態との間の中間の状態については、2つの異なる明るさの分布を含むトーンカーブT7を用意している。これにより、移動体の移動により明るさの条件が刻々変化する状態であっても、また、方角によって明るさが異なる場合であっても、それぞれの部分でコントラストを向上することができる。
【0100】
トーンカーブT1~T8は、表示装置のコントラスト比やビューイングフレアが考慮されたトーンカーブである。このようにすれば、コントラスト比の低い表示装置においても、できる限り良好なコントラスト比で画像を表示することができる。このトーンカーブT1~T8については、日向、日陰、曇天下、夕方(朝方)、夜間のいずれの実写画像についても同じものを適用することができる。
【0101】
なお、上記実施の形態では、明るさ情報が「明るい状態」、「暗い状態」、「中間の状態」に大別されるものとした。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、「明るい状態」と「暗い状態」とに分けられるだけでもよい。また、本実施の形態では「明るい状態」、「暗い状態」をそれぞれ3つの状態に細分化した。しかしながら、本発明はこれには限られない。複数段階に細分化しなくてもよいし、2つ以上の状態に細分化するようにしてもよい。明るさの状態の分け方は、適宜変更が可能である。
【0102】
また、上記実施の形態では、各種センサ3cの検出値又は位置情報等から得られる情報に基づいて明るさ情報として取得したが、本発明はこれには限られない。各種センサの検出値又は位置情報等をそのまま明るさ情報として用いるようにしてもよい。
【0103】
上記実施の形態では、移動体を車両2としたが、本発明はこれには限られない。移動体を鉄道車両、船舶、航空機、宇宙船としてもよい。例えば、無人の鉄道車両に設けられた撮像部3bで撮像された画像を、鉄道車両を集中管理する管制システムで表示する表示部3aに本発明を適用することができる。
【0104】
なお、上記実施の形態では、照度センサ11a~11c、色温度センサなどを設けるものとしたが、本発明はこれには限られない。画像以外の情報を検出するセンサはなくてもよいし、他のセンサを備えていてもよい。
【0105】
その他、画像調整システム1のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0106】
情報取得部11及び調整部12などから構成される画像調整システム1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する画像調整システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで画像調整システム1を構成してもよい。
【0107】
画像調整システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムとの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0108】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS;Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0109】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、移動体の移動により、周囲の明るさが変化する環境下での画像の調整に適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 画像調整システム、2 車両、3 電子ドアミラー、3a 表示部、3b 撮像部、3c 各種センサ、4 電子バックミラー、5 カーナビゲーションシステム、6 ドア、7 ダッシュボード、8a,8b トンネル、11 情報取得部、11a,11b,11c 照度センサ、12 調整部、20 記憶部、21 選択部、22 画質変換部、23 ディスプレイ調整部、26 基本情報検出部、27 明るさ情報検出部、30 CPU、31 メモリ、32 外部記憶部、33 入出力部、34 カードインターフェイス、35 通信インターフェイス、39 プログラム、40 内部バス、50 記録媒体、55 多層ニューラルネットワーク実装部、60 深層学習部、61 教師データ、71 LDR変換部、72 加算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11