(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156326
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】型枠の自動開閉システム及び建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 13/06 20060101AFI20221006BHJP
B28B 7/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B28B13/06
B28B7/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059946
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】森谷 朋弘
【テーマコード(参考)】
4G053
4G055
【Fターム(参考)】
4G053AA07
4G053BB05
4G053BC07
4G053BD04
4G053EA03
4G053EA42
4G053EB06
4G055AA01
4G055CB04
4G055CB16
(57)【要約】
【課題】開閉可能な型枠と、自動ラインと、を備える建材の生産工場において、型枠の開閉作業を自動で行う型枠の自動開閉システム、及び型枠の自動開閉システムを用いた建材の製造方法を提供すること。
【解決手段】土台20及び枠材11により形成される型枠10と、搬送装置90と、開閉装置40と、を備える自動開閉システム1であって、少なくとも1つの枠材11は、建材100を成型するときの姿勢である枠閉状態と、枠材11の上端が枠閉状態よりも外部29に広がって傾いた枠開状態と、に移行可能で、且つ枠閉状態又は枠開状態を維持可能な可動枠材14であり、搬送装置90により搬送されてくる型枠10の可動枠材14が、開閉装置40により、枠閉状態又は枠開状態に移行されることを特徴とする型枠の自動開閉システム、及び型枠の自動開閉システムを用いた建材の製造方法。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な板状の土台と、当該土台の上面から上方に立ち上がる板状の複数の枠材により形成され、前記枠材に囲われる内部に液体状材料を打設し建材を成型する型枠と、
前記型枠を各作業エリアへ搬送する搬送装置と、
前記搬送装置周りに配置される開閉装置と、
を備える自動開閉システムであって、
少なくとも1つの前記枠材は、建材を成型するときの姿勢である枠閉状態と、
当該枠材の上端が前記枠閉状態よりも外部に広がって傾いた枠開状態と、
に移行可能で、且つ前記枠閉状態又は前記枠開状態を維持可能な可動枠材であり、
前記可動枠材は、当該可動枠材の上端に基端が固定され先端が外部に向かって突出する長尺な部材である開閉用突出部を備え、
前記開閉装置は、下端が水平に広がる板部材でありL字型に形成されるフック部と、
前記フック部を鉛直方向に移動させる第一移動機構と、
前記開閉用突出部の長尺方向に垂直な水平方向に前記フック部を移動させる第二移動機構と、を備え、
前記開閉装置により前記可動枠材を前記枠閉状態又は前記枠開状態に移行することを特徴とする型枠の自動開閉システム。
【請求項2】
前記型枠は、開口部を有する建材を成型するものであり、
前記開口部の外周の互いに対向する二つの面を成型する一対の前記枠材が、前記可動枠材であり、
一対の前記可動枠材に夫々一つずつ備えられる二つの前記開閉用突出部は、互いの先端が接近し隙間をあけて隣り合うように前記可動枠材に固定され、
一対の前記可動枠材が前記枠開状態であるときの一方の前記開閉用突出部の先端の下端と、他方の前記開閉用突出部の先端の下端と、の隙間の長さは、一対の前記可動枠材が前記枠閉状態であるときの前記開閉用突出部の長尺方向に垂直な水平方向の前記フック部の下端の長さより短いことを特徴とする請求項1に記載の型枠の自動開閉システム。
【請求項3】
前記型枠は、形状が異なる複数の種類があり、
さらに、前記型枠の種類の数より少ない複数の前記開閉装置を備え、
前記型枠の種類ごとに、いずれかの前記開閉装置によって前記可動枠材を前記枠閉状態又は前記枠開状態に移行させることができるように前記可動枠材に固定される前記開閉用突出部の位置が決められることを特徴とする請求項1又は2に記載の型枠の自動開閉システム。
【請求項4】
さらに、前記搬送装置により搬送される前記型枠の種類を識別する型枠識別手段と、
前記型枠識別手段により識別した前記型枠の種類に対応する前記開閉装置を選択する制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の型枠の自動開閉システム。
【請求項5】
建材の製造方法であって、
請求項1乃至4のいずれかに記載の型枠の自動開閉システムにより、前記可動枠材を前記枠開状態から前記枠閉状態に移行させる工程と、
前記型枠の前記内部に前記液体状材料を打設する工程と、
前記型枠の前記内部の前記液体状材料を養生する工程と、
請求項1乃至4のいずれかに記載の型枠の自動開閉システムにより、前記可動枠材を前記枠閉状態から前記枠開状態に移行させる工程と、
前記型枠の前記内部の固まった建材を脱型する工程と、
を含むことを特徴とする建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材を成型する型枠の開閉可能な一部を、自動で閉じた状態に又は開いた状態に移行させる型枠の自動開閉システム、及び型枠の自動開閉システムを用いた建材の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
型枠に液体状材料を打設し、養生することで成型される建材には、液体状材料を打設した状態の型枠から脱型しにくいもの、又は脱型できないものがある。そこで、従来、特許文献1に記載されるように、底板と、底板の左右側縁に立設した向かい合う二枚の側板と、底板の両端に立設した向かい合う二枚の妻板と、からなり、板の上面上部にハンドルを有し、回転軸が妻板に平行に伸びる回転装置を取り付け、回転軸の両端に、側板の外面に沿って平行に伸び先端が回転軸の回動に連動して上下に移動するレバーを設け、レバーの先端に、側板に向かって突出するガイド軸を設け、側板の側面に、ガイド軸に勘合し傾斜を有する開閉ガイド片を設ける型枠であって、ハンドルを回動させることで、ガイド軸が開閉ガイド片の傾斜に沿って上下に移動することで、回転軸の回動に連動して妻板を開閉することができる型枠の開閉装置がある。
【0003】
さらに、特許文献1に記載される型枠の開閉装置を備える型枠に回転装置を回動させる電動モーターを備えることで、自動で妻板の開閉が行え、型枠の開閉可能な一部の開閉作業を自動ラインに組み込み、作業効率の向上及び安全性の向上が図れることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される型枠の開閉装置を導入するためには、回転装置、レバー、ガイド軸、開閉ガイド片を一つ一つの型枠に設ける必要があり、さらに、可動枠材の開閉作業を自動化するためには、回転装置を回動させる原動機となる電動モーターを一つ一つの型枠に設ける必要があり、多数の型枠によって建材を生産する生産工場では、費用が掛かる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、一部が開閉可能な型枠と、自動ラインと、を備える建材の生産工場において、低コストで、可動枠材の開閉作業の自動ラインに組み込むことができる型枠の自動開閉システム、及び型枠の自動開閉システムを用いた建材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に掛かる型枠の自動開閉システムは、水平な板状の土台と、当該土台の上面から上方に立ち上がる板状の複数の枠材により形成され、前記枠材に囲われる内部に液体状材料を打設し建材を成型する型枠と、前記型枠を各作業エリアへ搬送する搬送装置と、前記搬送装置周りに配置される開閉装置と、を備える自動開閉システムであって、少なくとも1つの前記枠材は、建材を成型するときの姿勢である枠閉状態と、当該枠材の上端が前記枠閉状態よりも外部に広がって傾いた枠開状態と、に移行可能で、且つ前記枠閉状態又は前記枠開状態を維持可能な可動枠材であり、前記可動枠材は、当該可動枠材の上端に基端が固定され先端が外部に向かって突出する長尺な部材である開閉用突出部を備え、前記開閉装置は、下端が水平に広がる板部材でありL字型に形成されるフック部と、前記フック部を鉛直方向に移動させる第一移動機構と、前記開閉用突出部の長尺方向に垂直な水平方向に前記フック部を移動させる第二移動機構と、を備え、前記開閉装置により前記可動枠材を前記枠閉状態又は前記枠開状態に移行することを特徴とする。
【0008】
さらに、前記型枠は、開口部を有する建材を成型するものであり、前記開口部の外周の互いに対向する二つの面を成型する一対の前記枠材が、前記可動枠材であり、一対の前記可動枠材に夫々一つずつ備えられる二つの前記開閉用突出部は、互いの先端が接近し隙間をあけて隣り合うように前記可動枠材に固定され、一対の前記可動枠材が前記枠開状態であるときの一方の前記開閉用突出部の先端の下端と、他方の前記開閉用突出部の先端の下端と、の隙間の長さは、一対の前記可動枠材が前記枠閉状態であるときの前記開閉用突出部の長尺方向に垂直な水平方向の前記フック部の下端の長さより短いことを特徴とする。
【0009】
さらに、前記型枠は、形状が異なる複数の種類があり、さらに、前記型枠の種類の数より少ない複数の前記開閉装置を備え、前記型枠の種類ごとに、いずれかの前記開閉装置によって前記可動枠材を前記枠閉状態又は前記枠開状態に移行させることができるように前記可動枠材に固定される前記開閉用突出部の位置が決められることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記搬送装置により搬送される前記型枠の種類を識別する型枠識別手段と、前記型枠識別手段により識別した前記型枠の種類に対応する前記開閉装置を選択する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
建材の製造方法であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の型枠の自動開閉システムにより、前記可動枠材を前記枠開状態から前記枠閉状態に移行させる工程と、前記型枠の前記内部に前記液体状材料を打設する工程と、前記型枠の前記内部の前記液体状材料を養生する工程と、請求項1乃至4のいずれかに記載の型枠の自動開閉システムにより、前記可動枠材を前記枠閉状態から前記枠開状態に移行させる工程と、前記型枠の前記内部の固まった建材を脱型する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る型枠の自動開閉システムによると、可動枠材を自動で開閉するための開閉装置を、多数の型枠が共用して使用できるように型枠とは別に独立させることで、一つ一つの型枠に備える部材を少なくし抵コストで可動枠材の開閉作業の自動化を導入できる。
【0013】
さらに、開閉用突出部を上方から下方に押下げることで、可動枠材が開閉用突出部に連動して当該可動枠材の上端が外部に向かって広がるように傾き、当該可動枠材は枠開状態に移行でき、開閉用突出部を下方から上方に持ち上げることで、可動枠材が開閉用突出部に連動して当該可動枠材の上端が内部に向かって傾き、当該可動枠材は枠閉状態に移行できる。そのため、型枠に備える部材は、一つの可動枠材に対して一つの開閉用突出部だけで良いので、抵コストで可動枠材の開閉作業の自動化を導入できる。
【0014】
さらに、一つの開閉装置で、一対の可動枠材に備えられる二本の開閉用突出部を同時に下方から上方に持ち上げる、又は同時に上方から下方に押し下げることが可能で、一対の可動枠材を同時に枠閉状態又は枠開状態に移行させることができ、作業時間の短縮をおこなうことができる。
【0015】
さらに、型枠識別手段により型枠の種類を識別し、制御装置により識別した型枠の種類に対応するいずれかの開閉装置を選択することで、異なる形状の型枠が順番に流れてきても、自動で可動枠材を枠閉状態、又は枠開状態に移行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る型枠を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る型枠により成型される建材を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る型枠の可動支持部、第一挟持部及び第二挟持部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る可動枠材が枠閉状態になることを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る可動枠材が枠開状態になることを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る可動枠材の枠閉状態及び枠閉状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る開閉装置を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る開閉装置配置台を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る型枠の自動開閉システムの様子を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る開閉用突出部の固定位置を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る可動枠材を枠開状態から枠閉状態に移行させる様子を示す一部断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る可動枠材を枠閉状態から枠開状態に移行させる様子を示す一部断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る可動枠材を枠開状態から枠閉状態に移行させるフロー図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る可動枠材を枠閉状態から枠開状態に移行させるフロー図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る建材の製造装置方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る型枠の自動開閉システムの一実施形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。始めに、本実施形態の型枠について説明する。本実施形態には、形状の異なる複数の種類の型枠が用いられるが、代表として型枠10について説明する。型枠10は、
図1に示すように、枠材11である四つの外枠材12及び四つの内枠材13と、土台20と、によって形成される。外枠材12及び内枠材13は、上方に立ち上がる板状であり、上端が外部29側にフランジ状に広がって形成されるものである。土台20は、水平方向に長方形に広がり、上面が平らな板状である。型枠10は、長方形を形成するように四つの外枠材12の下端が土台20の上面に溶接によって固定され、四つの外枠材12によって形成された長方形の内側に、長方形を形成するように四つの内枠材13の下端が土台20の上面に溶接によって固定されることで形成される。そして、土台20に固定された外枠材12と、内枠材13と、の間に液体状材料であるコンクリートを打設し、養生後に脱型することで建材100を得ることができる型枠である。また、型枠10によって成型される建材100は、
図2に示すように、開口部を有する壁に貼り付けられる開口部101を有する外壁材であり、壁に平行で屋外に露出する面104と、開口部101の外周102の互いに対向する二つの面103と、に凹凸模様を有し、厚みがあるコンクリート製の外壁材である。内部28とは、
図1に示すように、型枠の液体状材料が打設される部分のことであり、外部29とは、型枠の土台20の上面及び枠材11に面し、液体状材料が打設されない部分のことであり、内部28から見て、枠材11を挟んで反対側になる部分のことである。
【0018】
そして、
図1に示すように、各枠材11の内部28側の面及び土台20の内部28に面する上面には、可撓性を有するマットが貼り付けられる。型枠10によって成型する外壁材の壁に平行で屋外に露出する面104と、外壁材の開口部101の外周102の互いに対向する二つの面103と、に凹凸模様をつけるため、外壁材の壁に平行で屋外に露出する面104を成型する土台20の上面に貼り付けられるマットと、外壁材の開口部101の外周102の互いに対向する二つの面103を成型する一対の内枠材13の内部28側の面に貼り付けられるマットと、は、液体状材料と触れる面に凹凸模様を有する。しかしながら、型枠10の内部28に液体材料を打設し、養生すると、一対の内枠材13によって成型される建材100の面にできる凹凸模様と、一対の内枠材13に貼り付けられるマットの凹凸模様と、の勘合によって、建材100を型枠10から上方に引き上げ脱型することができない。そのため、建材100を型枠10から上方に引き上げ脱型することができるように一対の内枠材13の夫々が後述する可動枠材14となっている。型枠10を上方から見下ろしたとき、長方形である土台20の長手方向に平行な二枚の内枠材13が、凹凸模様を有するマットが貼り付けられる一対の内枠材13である。
【0019】
可動枠材14は、当該可動枠材14の外部29側の面に、
図1に示すように、外部29に向かって伸びる可動支持部15が二箇所に溶接されている。可動支持部15は、可動枠材14に対して垂直で且つ鉛直に形成される平板状である。可動支持部15は、
図3に示すように、当該可動支持部15の可動枠材14に近い側に二つのピン孔16が形成され、当該可動支持部15のピン孔16よりも可動枠材14から離れた位置に後述するボールプランジャ22のボール23を受ける二つのボール受部17が形成される。ボール受部17は、球面状に窪んでおりボール23がはまり込む形状である。また、土台20には、可動支持部15を挟持するように第一不動挟持部21及び第二不動挟持部26が固定される。
【0020】
第一不動挟持部21は、
図1、
図4及び
図5に示すように、可動支持部15の一方の面に当接する平板状である。第一不動挟持部21は、当該第一不動挟持部21の下面が土台20の外部29に面する上面に溶接により固定される。第一不動挟持部21には、
図3に示すように、ピン孔16に連通する二つの長孔30が形成され、当該長孔30よりも可動枠材14から離れる方向に二つのボールプランジャ22が設けられる。ボールプランジャ22は、可動支持部15のボール受部17にはめ合わされるボール23と、当該ボールを可動支持部15に押し付けるコイルバネの付勢部24と、当該付勢部24がボール23を可動支持部15に押し付ける付勢力を調整するために、付勢部24の可動支持部15との距離を調整するボルト及びナットからなる調整部25と、を有する。
【0021】
また、第二不動挟持部26は、
図1、
図4及び
図5に示すように、可動支持部15の他方の面に当接する平板状である。第二不動挟持部26は、当該第二不動挟持部26の下面が土台20の外部29に面する上面に溶接により固定される。第二不動挟持部26には、
図3に示すように、第一不動挟持部21と同様に、ピン孔16に連通する二つの長孔30が形成される。また、第二不動挟持部26には、メンテナンス蓋によって閉じられたメンテナンス開口31が形成され、可動支持部15の二つのボール受部17が摩耗した場合には交換を行うことができる。
【0022】
可動支持部15の二つのピン孔16には、
図3に示すように、それぞれ可動ピン27が、当該可動ピン27の両端が突出するように挿入されて固定される。
図4及び
図5に示すように、可動支持部15は、第一不動挟持部21及び第二不動挟持部26の間に挟まれており、ピン孔16に挿入される二つの可動ピン27の両端が、第一不動挟持部21及び第二不動挟持部26の二つの長孔30にそれぞれ挿入された状態となっている。可動ピン27は、それぞれの長孔30に沿って摺動可能であり、可動支持部15も可動ピン27の摺動に従って姿勢を変更可能である。そして、可動支持部15が固定されている可動枠材14も可動支持部15の動きに従って姿勢を変更可能である。したがって、可動ピン27が第一不動挟持部21及び第二不動挟持部26の長孔30の中で摺動することによって、可動枠材14は、
図6の(a)に示すように、液体状材料を打設し養生し建材100を成型するときの姿勢である枠閉状態と、
図6の(b)に示すように、枠材の上端が枠閉状態よりも外部29に広がって傾いた枠開状態と、に移行可能であり、脱型作業のときに一対の可動枠材14を枠閉状態から枠開状態に移行させることで、一対の可動枠材14によって成型される建材100の面にできる凹凸模様と、一対の可動枠材14に貼り付けられるマットの凹凸模様と、の勘合を解き、建材100を型枠から上方に引き上げ脱型することが可能である。
【0023】
また、
図4に示すように、二つの可動ピン27が長孔30の上端に位置するとき、可動枠材14は枠閉状態となり、二つの可動ピン27が長孔30の下端に位置するとき、可動枠材14は枠開状態となる。そして、
図5に示すように、可動枠材14が枠閉状態のとき、第一不動挟持部21に設けられた二つのボールプランジャ22のうち、可動枠材14に近い側のボールプランジャ22の先端に設けられたボール23が、可動支持部15のボール受部17にはまり込んで、可動支持部15の姿勢の変更を規制する。したがって、可動枠材14は枠閉状態を維持することが可能である。また、可動枠材14が枠開状態のとき、第一不動挟持部21に設けられた二つのボールプランジャ22のうち、可動枠材14に遠い側のボールプランジャ22の先端に設けられたボール23が、可動支持部15のボール受部17にはまり込んで、可動支持部15の姿勢変更を規制する。したがって、可動枠材14は枠開状態を維持することが可能である。
【0024】
さらに、
図1及び
図6に示すように、型枠10の一対の可動枠材14の夫々の上端には、長尺な板状の部材である開閉用突出部18が一つずつ備えられる。開閉用突出部18は、可動枠材14が枠閉状態であるときに、当該開閉用突出部18の先端が外部29に向かって水平に突出するように当該開閉用突出部18の基端が可動枠材14の上端に固定される。したがって、開閉用突出部18を上方から下方に押し下げることで、当該開閉用突出部18が固定される可動枠材14の上端を外部29側に向かって回転させ、可動枠材14を枠開状態に移行することができ、開閉用突出部18を下方から上方に持ち上げることで、当該開閉用突出部18が固定される可動枠材14の上端を内部28側に向かって回転させ、可動枠材14を枠閉状態に移行させることができる。開閉用突出部18が可動枠材14の上端に固定される位置については後述するが、一対の可動枠材14の夫々に一つずつ備えられる二つの開閉用突出部18は、同じ形状同じ大きさであり、互いの先端が、接近し隙間をあけて隣り合うように一直線上に固定される。
【0025】
そして、型枠10は搬送装置90に載置され、各作業エリアへ搬送される。搬送装置90は、各作業エリアである型枠の保管エリアと、型枠に液体状材料を打設する打設エリアと、打設した液体状材料を養生する養生エリアと、及び型枠から固まった建材100を脱型する脱型作業エリアと、に繋がるコンベアである。また、本実施形態で使用される全ての型枠は、同じ形状同じ大きさの土台20を備える型枠であり、本実施形態で使用される全ての型枠は、
図9に示すように、搬送装置90の搬送方向91と、土台20の長手方向と、が平行になる向きで搬送装置90に載置される。そのため、可動枠材14に垂直に固定される開閉用突出部18の長尺方向は、搬送方向91に対して垂直になっている。
【0026】
次に、本実施形態の開閉装置40について説明する。開閉装置40は、
図7に示すように、第一移動機構41と、中間プレート45と、第二移動機構46と、ガイド部50と、フック部53と、を備える。第一移動機構41は、後述するフック部53を鉛直方向に移動させるものであり、
図7に示す箱型のエアシリンダーと、図示しない移動機構制御装置により構成され、エアシリンダーは、一方向に伸縮する長尺な円柱状のピストンロッド42と、ピストンロッド42と平行に並びピストンロッド42の伸縮に連動して同じ方向に伸縮する二本の長尺な円柱状のガイドロッド43と、ピストンロッド42及びガイドロッド43の先端に固定される長方形であるプレート44と、を有する。また、第一移動機構41は、後述するフック部53の鉛直方向についての位置を検知する機能を有し、本実施形態では、ピストンロッド42の位置を検知する図示しない四つのオートスイッチを備え、ピストンロッド42の位置を検知することで、後述するフック部53の鉛直方向についての位置を検知する。四つのオートスイッチは、後述するフック部53が最も上方にある時のピストンロッド42の位置と、後述するフック部53が中間位置59にある時のピストンロッド42の位置と、後述するフック部53が中間位置60にある時のピストンロッド42の位置と、後述するフック部53が最も下方にある時のピストンロッド42の位置と、を検知することができる。中間位置59は、
図6の(a)に示すように、後述する接触部57の上面の高さが、可動枠材14が枠閉状態であるときの開閉用突出部18の下面の高さと、同じ高さになるときのピストンロッド42の位置である。そして、中間位置60は、
図6の(b)に示すように、可動枠材14が枠開状態であるときに、第二移動機構46により後述する接触部57が開閉用突出部18の上方に位置するように後述するフック部53を移動させ、その後に、接触部57の下面が、開閉用突出部18の上面に触れるまで第一移動機構41により後述するフック部53を下方に移動させたときのピストンロッド42の位置である。
【0027】
中間プレート45は、
図7に示すように、第一移動機構41に、後述する第二移動機構46と、後述するガイド部50と、を固定するためのものであり、長方形の板状である。中間プレート45は、当該中間プレート45の長手方向がプレート44の長手方向と同じ方向且つ当該中間プレート45の短手方向がプレート44の短手方向と同じ方向になる姿勢で、当該中間プレート45の長手方向の中央と、プレート44の長手方向の中央と、が上下に重なるように、プレート44の下面に中間プレート45の上面が図示しないネジによって固定される。
【0028】
第二移動機構46は、後述するフック部53を水平方向に移動させるものであり、第二移動機構46は、
図7に示す長尺な筒状のエアシリンダーと、図示しない移動機構制御装置により構成され、長尺な筒状のエアシリンダーは、一方向に伸縮する長尺な円柱状で先端が雌ネジであるピストンロッド47を有する。そして、ピストンロッド47が水平方向に伸縮できる姿勢で、中間プレート45の下面に図示しないサドルバンド及びネジによって固定される。また、第二移動機構46は、後述するフック部53の水平方向についての位置を検知する機能を有し、本実施形態では、ピストンロッド47の位置を検知する図示しない二つのオートスイッチを備え、ピストンロッド47の位置を検知することで、後述するフック部53の水平方向についての位置を検知する。二つのオートスイッチは、後述するフック部53が最も後退方向49側にある時のピストンロッド47の位置と、後述するフック部53が最も前進方向48側にある時のピストンロッド47の位置と、を検知することができる。前進方向48とは、第二移動機構46のピストンロッド47が伸びることによってフック部53が移動する方向であり、後退方向49とは、第二移動機構46のピストンロッド47が縮むことによってフック部53が移動する方向のことである。
【0029】
ガイド部50は、
図7に示すように、長尺なレール51と、レール51に勘合しレール51に沿って摺動するスライダー52と、から構成され、後述するフック部53を支え且つフック部53の動きを誘導するものである。レール51の長尺方向の長さは、後述するスライダー52がピストンロッド47の伸縮に連動して摺動できる長さである。そして、レール51は、レール51の長尺方向がピストンロッド47の伸縮方向と同じ方向になり、スライダー52が下側になる姿勢で、中間プレート45の長手方向の中央と、レール51の長手方向の中央と、が上下に重なり且つ第二移動機構46と、レール51と、が中間プレート45の下面で隣り合うように、レール51の上面が中間プレート45の下面に図示しないネジによって固定される。
【0030】
フック部53は、第一移動機構41及び第二移動機構46により移動することで、開閉用突出部18に係合し、開閉用突出部18を押し下げる又は持ち上げるものであり、
図7に示すように、第一固定部54と、第二固定部55と、下垂部56と、接触部57と、から構成される。第一固定部54は、
図7に示すように、フック部53をガイド部50に固定するためのものであり、長方形の水平に広がる板状である。第一固定部54の長手方向の長さは、レール51の長尺方向と同じ方向のスライダー52の長さより長い。そして、第一固定部54の長手方向がレール51の長尺方向と同じ方向になる姿勢で、第一固定部54の上面がスライダー52の下面に図示しないネジによって固定される。このとき、第一固定部54は、スライダー52から前進方向48にはみ出すように、スライダー52に固定される。
【0031】
第二固定部55は、
図7に示すように、フック部53をピストンロッド47に固定するためのものであり、長尺な板状である。第二固定部55は、ピストンロッド47の伸縮方向に対して垂直に広がり、水平方向に長尺になる姿勢であり、前進方向48から後退方向49に向かって見ると、当該第二固定部55と、ピストンロッド47と、が重なるように、当該第二固定部55の下面の一部が、第一固定部54のスライダー52から前進方向48にはみ出した上面に溶接によって固定される。また、第二固定部55は、前進方向48から後退方向49に向かって見たときに、当該第二固定部55と、ピストンロッド47と、が重なる位置にピストンロッド47の先端を通すことのできる孔を有する。そして、孔にピストンロッド47の先端を貫通させ、ピストンロッド47に通した二つのナット61によってピストンロッド47と、第二固定部55と、を両側から締め付けるように固定する。したがって、ピストンロッド47の伸縮によりフック部53は、前進方向48及び後退方向49に移動可能となる。このとき、ガイド部50にも固定されるフック部53は、当該フック部53の移動をガイド部50に誘導されることで、安定した動きが可能となる。加えて、第二固定部55は、当該第二固定部55と、ガイド部50のレール51と、が干渉しないように、当該第二固定部55の上端の一部が凹んだように形成される。
【0032】
下垂部56は、
図7に示すように、長方形の板状である。下垂部56の長手方向の長さは、
図11の(c)に示すように、可動枠材14が枠開状態であるときに、フック部53と、開閉用突出部18と、が干渉することなく第一固定部54の下面と、後述する接触部57の上面と、の間に、開閉用突出部18を入れることができる長さである。そして、下垂部56は、当該下垂部56の長手方向が鉛直方向と同じ方向且つ当該下垂部56の短手方向が第一固定部54の短手方向と同じ方向になる姿勢で、当該下垂部56の上端が第一固定部54の下面の後退方向49側に溶接によって固定される。また、下垂部56には、当該下垂部56の座屈を防止するために、図示しない板状であるスチフナーが備えられる。スチフナーは、下垂部56に垂直な姿勢で、下垂部56の後退方向49側の面と、下垂部56より後退方向49側の第一固定部54の下面と、下垂部56より後退方向49側の後述する接触部57の上面と、に溶接によって固定される。
【0033】
接触部57は、開閉用突出部18を上方から下方に押下げる又は下方から上方に持ち上げるために開閉用突出部18に接触するものであり、
図7に示すように、長方形の板状である。そして、接触部57は、当該接触部57の長手方向がピストンロッド47の伸縮方向と同じ方向且つ当該接触部57の短手方向が第一固定部54の短手方向と同じ方向になる姿勢で、当該接触部57と、下垂部56と、がL字型になるように、接触部57の上面の後退方向49側が下垂部56の下端に固定される。
【0034】
次に、開閉装置40を搬送装置90の上方に配置するための開閉装置配置台70について説明する。開閉装置配置台70は、
図8に示すように、フレーム71と、二枚の台座プレート74と、二本の架設棒76と、三つのブラケット77と、によって構成される。そして、
図9に示すように、後述する架設棒76の長尺方向が搬送装置90の搬送方向91に垂直なり且つ搬送装置90に跨るように、開閉装置配置台70は床に載置され、開閉装置40を吊るすように固定することで、搬送装置90の上方に開閉装置40を配置させるものである。フレーム71は、
図8に示すように、水平に長尺な角パイプである四本の梁72と、鉛直方向に長尺な角パイプである四本の脚73と、によって構成される。そして、フレーム71は、四本の梁72が方形を形成するように各梁72の端同士を直角に固定し、脚73の上端が四本の梁72が形成する方形の各角の下面に固定することで形成される。
【0035】
台座プレート74は、後述する架設棒76を架設させるためのものであり、長方形の板状である。そして、台座プレート74は、
図8に示すように、当該台座プレート74の長手方向が搬送装置90を跨ぐ平行な二本の梁72の長尺方向と同じ方向且つ当該台座プレート74の短手方向が搬送装置90を跨ぐ平行な二本の梁72の長尺方向に直角な水平方向と同じ方向になる姿勢で、四本の梁72が形成する方形の内側に向かって突出するように、搬送装置90を跨ぐ平行な二本の梁72の下面に夫々一つずつ溶接によって固定される。また、台座プレート74は、四本の梁72が形成する方形の内側に向かって突出する箇所に台座プレート74の長手方向に沿って鉛直方向にあけられた長孔75を有する。長孔75は、後述する架設棒76を固定するためのものであり、当該長孔75に沿った方向に、架設棒76の台座プレート74に固定される位置を変更可能としている。
【0036】
架設棒76は、
図8に示すように、後述するブラケット77を吊り下げるように固定するための長尺な角パイプである。架設棒76の長尺方向の長さは、二枚の台座プレート74に架け渡される長さである。そして、架設棒76は、当該架設棒76の長尺方向が搬送装置90を跨ぐ平行な二本の梁72に垂直な水平方向と同じ方向になる姿勢で、二本の架設棒76が平行に並ぶように、架設棒76の一端と、他端と、を二枚の台座プレート74の上面に載置され、架設棒76の一端及び他端に、上方から図示しないサドルバンドを被せ、サドルバンドを長孔75の上方から図示しないネジと、長孔75の下方から図示しないナットを締め付けることで、架設棒76は台座プレート74に固定される。また、後述する開閉装置固定部79を二本の架設棒76の隙間に上方から挿入し、後述する架設部78が二本の架設棒76の上面に架設できるように、二本の架設棒76は、隙間をあけて台座プレート74に固定される。
【0037】
ブラケット77は、
図8に示すように、長方形の板状で二本の架設棒76の上面に跨って載置されるように固定される架設部78と、長方形の板状で一方の広い面に開閉装置40の第一移動機構41を固定する開閉装置固定部79と、によって構成される。ブラケット77は、架設部78を水平に寝かし、開閉装置固定部79を、当該開閉装置固定部79の短手方向が架設部78の短手方向と同じ方向且つ当該開閉装置固定部79の長手方向が鉛直方向になる姿勢にし、開閉装置固定部79の上面を、架設部78の下面に溶接によって固定することで形成される。また、開閉装置固定部79には、当該開閉装置固定部79の座屈を防止するために、図示しない板状であるスチフナーが備えられる。スチフナーは、開閉装置固定部79に垂直で鉛直方向に立ち上がる姿勢で、開閉装置固定部79の第一移動機構41が固定される面の対面と、架設部78の下面と、に溶接によって固定される。そして、
図8に示すように、三つのブラケット77が、架設棒76の長尺方向に沿った一直線上に並ぶように、開閉装置固定部79の短手方向が架設棒76の長尺方向と同じになる姿勢で、開閉装置固定部79を二本の架設棒76の間に上方から挿入し、架設部78を二本の架設棒76の上面に架設し、各架設部78と、二本の架設棒76と、を図示しないネジによって固定する。
【0038】
そして、
図9に示すように、架設棒76に固定された三つのブラケット77の開閉装置固定部79には、夫々第一移動機構41が図示しないネジによって固定される。したがって、開閉装置40は、搬送装置90の上方に配置されることになる。また、前進方向48と、搬送方向91と、が同じ方向になるように、開閉装置40はブラケット77に固定される。したがって、搬送方向91に対して開閉用突出部18が垂直になるように型枠は搬送装置90に載置されるため、フック部53は、開閉用突出部18の長尺方向に対して垂直になる方向に移動することができる。また、フック部53が一対の可動枠材14の間の中央に位置するように、架設棒76の台座プレート74に固定される位置が調整される。また、
図6の(b)に示す、一対の可動枠材14が枠開状態であるときの一方の開閉用突出部18の先端の下端と、他方の開閉用突出部18の先端の下端と、の隙間の長さ19は、
図7に示す、一対の可動枠材14が枠閉状態であるときの開閉用突出部18の長尺方向に垂直な水平方向のフック部53の下端の長さ58より短くなるようになされる。したがって、一つの接触部57で一対の可動枠材14に夫々一つずつ固定される二つの開閉用突出部18の先端に同時に接触することが可能であり、一つの開閉装置40によって、一対の可動枠材14を同時に枠閉状態から枠開状態に又は枠開状態から枠閉状態に移行させることができる。ここで、三つの開閉装置40を判別するために、搬送装置90の搬送方向91から搬送方向91の逆方向に向かって順番に、開閉装置40A、開閉装置40B、開閉装置40Cとする。
【0039】
次に、開閉用突出部18と、開閉装置40と、の位置関係について説明する。まず、型枠は、搬送装置90によって、開閉装置配置台70の下方の所定の位置まで搬送され配置される。そして、開閉装置配置台70の下方の所定の位置に配置された本実施形態に用いられる型枠の開閉用突出部18と、初期状態であるいずれかの開閉装置40のフック部53と、の位置関係が、
図11の(a)に示す開閉装置40Bのフック部53と、型枠10の開閉用突出部18と、の位置関係のように、接触部57の前進方向48側端が、開閉用突出部18の後退方向49側端より後退方向49側に位置し、且つフック部53が最も前進方向48側にあるときに、
図12の(b)に示す開閉装置40Bのフック部53と、型枠10の開閉用突出部18と、の位置関係のように、接触部57の前進方向48側端が、開閉用突出部18の後退方向49側端より前進方向48側に位置し、下垂部56の前進方向48側の面が、開閉用突出部18の後退方向49側端より後退方向49側に位置する関係である。初期状態とは、フック部53が最も上方側且つ最も後退方向49側にある時の状態のことである。また、所定の位置とは、後述する型枠識別手段92であるIDタグ93と、ID読み取り装置94と、によって搬送装置90に載置された型枠の種類を識別できる位置である。
【0040】
そして、
図10に示すように、本実施形態に用いられる全ての型枠は、開閉装置40A、開閉装置40B及び開閉装置40Cのいずれかのフック部と段落[0039]に記した位置関係になるように、開閉用突出部18を可動枠材14に固定する。
図10の(a)は、所定の位置に配置された型枠10と、開閉装置40と、の位置関係を示す一部断面図であり、
図10の(b)は、所定の位置に配置された型枠10を上方から見下ろした図であり、
図10の(c)乃至(g)は、所定の位置に配置された型枠10とは異なる種類の型枠を夫々上方から見下ろした図である。
図10に示すライン110Aは、開閉装置40Aのフック部53と段落[0039]に記した位置関係になるために、開閉用突出部18を固定するべき位置であり、
図10に示すライン110Bは、開閉装置40Bのフック部53と段落[0039]に記した位置関係になるために、開閉用突出部18を固定するべき位置であり、
図10に示すライン110Cは、開閉装置40Cのフック部53と段落[0039]に記した位置関係になるために、開閉用突出部18を固定するべき位置である。そして、各型枠は、ライン110A、ライン110B及びライン110Cのうち、最も可動枠材14の中心に近いライン上に開閉用突出部18を設ける。また、開閉装置40の位置を調整する又は開閉装置40をさらに備えることで、開閉用突出部18の固定すべき位置を増やすことができる。
【0041】
次に、第一移動機構41によるフック部53の移動量について型枠10と、開閉装置40Bを用いて説明する。
図11の(a)に示すように、開閉装置40Bが初期状態であるときに接触部57の下面が開閉用突出部18の上面より高く、
図11の(b)に示すように、フック部53が最も下方にあるときに接触部57の上面が開閉用突出部18の下面より低く、且つ接触部57の下面が土台20の上面より高く、且つ第一固定部54の下面が開閉用突出部18の上面より高くなるようにフック部53は、第一移動機構41によって鉛直方向に移動できる。また、本実施形態で使用される全ての型枠に備えられる可動枠材14は、すべて同じ高さである。また、開閉装置配置台70の脚73の長さと、ブラケット77の開閉装置固定部79の長手方向の長さと、のうち少なくとも一つを変更することで、開閉装置40が配置される鉛直方向の位置が変更可能であり、ブラケット77の架設棒76に固定される位置を、架設棒76の長尺方向に移動させることで、開閉装置40が配置される搬送方向91に対して平行な水平方向の位置が変更可能であり、台座プレート74に固定する架設棒76の位置を、台座プレート74の長手方向に移動させることで、開閉装置40が配置される搬送方向91に対して垂直な水平方向の位置が変更可能である。
【0042】
本実施形態では三つの開閉装置40を固定した開閉装置配置台70を二つ備え、一方の開閉装置配置台70は、可動枠材14を枠開状態から枠閉状態に移行させるために、型枠を搬送装置90に載置するセッティングエリアと、型枠に液体状材料を打設する打設作業エリアと、の間の搬送装置90を跨いで床に載置し固定され、他方の開閉装置配置台70は、可動枠材14を枠閉状態から枠開状態に移行させるために、打設した液体状材料を養生する養生作業エリアと、型枠から固まった建材100を脱型する脱型作業エリアと、の間の搬送装置90を跨いで床に載置し固定される。
【0043】
次に、型枠識別手段92及び制御装置95について説明する。型枠識別手段92は、IDタグ93と、ID読み取り装置94と、により、搬送装置90に載置される型枠の種類を識別するものである。IDタグ93は、一つ一つの型枠に備えられ、
図9に示すように、土台20の隅に固定される。IDタグ93は、非接触データキャリアであり、当該IDタグ93を備えた型枠の種類の情報及びその他型枠の情報を記録したものである。そして、ID読み取り装置94は、IDタグ93に記録されている型枠の種類の情報を、非接触でIDタグ93から読み取り、読み取った型枠の種類の情報を後述する制御装置95へ送信するものであり、
図9に示すように、所定の位置に配置された型枠が備えるIDタグ93を読み取れる位置に固定される。制御装置95は、開閉装置40と、ID読み取り装置94と、に繋がり、ID読み取り装置94が読み取った型枠の種類の情報を受信し、受信した型枠の種類の情報に応じて、開閉装置40A、開閉装置40B及び開閉装置40Cの中から作動させる開閉装置40を選択するものであり、各開閉装置配置台70の上に載置固定される。作動させる開閉装置40は、事前に型枠の種類ごとに決められているものである。
【0044】
次に、
図13のフロー図をもとに、可動枠材14を枠開状態から枠閉状態に移行させる動作原理について、型枠10を用いて説明する。
初めに、
図11の(a)に示すように、枠開状態である型枠10は搬送装置90によって所定の位置に配置される。このとき、開閉装置配置台70に固定される全ての開閉装置40は初期状態である。
次に、ID読み取り装置94がIDタグ93に記録されている型枠の種類の情報を読み取り、読み取った型枠の種類の情報を制御装置95へ送信する。そして、制御装置95は受信した型枠の種類の情報に応じて作動させる開閉装置40として、開閉装置40Bを選択する。ここで
図10に示すように、型枠10は開閉装置40Bと対応するように開閉用突出部18が固定されているものである。
【0045】
次に、
図11の(b)に示すように、選択された開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第一移動機構41によってフック部53を最も下方まで移動させる。これにより、接触部57の上面が開閉用突出部18の下面より低く且つ第一固定部54の下面が開閉用突出部18の上面より高い位置にフック部53が位置することになる。
次に、
図11の(c)に示すように、開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第二移動機構46によってフック部53を最も前進方向48側まで移動させる。これにより、接触部57が開閉用突出部18の下方に位置することになる。
次に、
図11の(d)に示すように、開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第一移動機構41によってフック部53を中間位置59まで上方に移動させる。中間位置59までフック部53を上方向に移動させることで、可動枠材14が枠閉状態であるときの開閉用突出部18の位置まで接触部57によって開閉用突出部18は下方から上方に持ち上げられ、開閉用突出部18に連動して可動枠材14の上端が内部28に向かって起き上がるように移動し、可動枠材14は枠開状態から枠閉状態へと移行する。
そして、フック部53が中間位置59にあることを検知した後に、開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第一移動機構41によってフック部53を最も下方向に移動させ、その後に、第二移動機構46によってフック部53を最も後退方向49側まで移動させ、その後に、第一移動機構41によってフック部53を最も上方まで移動させ、開閉装置40Bを初期状態に戻す。
【0046】
もし、可動枠材14を枠開状態から枠閉状態へと移行するために、第一移動機構41によってフック部53を中間位置59まで移動させたときに、何らかの原因によってフック部53が中間位置59にあることを検知できなかった場合は、フック部53を最も下方まで移行させ、その後に、フック部53を中間位置59まで移動させる。この繰り返し作業を三回繰り返しても、フック部53が中間位置59にあることを検知することができなかった場合は、フック部53を最も下方まで移動させ、その後に、フック部53を最も後退方向49側まで移動させ、その後に、フック部53を最も上方まで移動させ、開閉装置40Bを初期状態に戻す。次に、異常発生の発報をする。そして、人によって異常を解消し、異常リセットを行った後に、開閉装置40Bは、段落[0045]に記した動作を再度行う。
【0047】
次に、
図14のフロー図をもとに、可動枠材14を枠閉状態から枠開状態に移行させる動作原理について、型枠10を用いて説明する。
初めに、
図12の(a)に示すように、枠閉状態である型枠10は搬送装置90によって、所定の位置に配置される。このとき、開閉装置配置台70に固定される全ての開閉装置40は初期状態である。
次に、ID読み取り装置94がIDタグ93に記録されている型枠の種類の情報を読み取り、読み取った型枠の種類の情報を制御装置95へ送信する。そして、制御装置95は受信した型枠の種類の情報に応じて作動させる開閉装置40として、開閉装置40Bを選択する。
【0048】
次に、
図12の(b)に示すように、選択された開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第二移動機構46によってフック部53を最も前進方向48側まで移動させる。これにより、接触部57が開閉用突出部18の上方に位置することになる。
次に、
図12の(c)に示すように、開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第一移動機構41によってフック部53を中間位置60まで移動させる。これにより、可動枠材14が枠開状態であるときの開閉用突出部18の位置まで、接触部57によって開閉用突出部18は上方から下方に押下げられ、開閉用突出部18に連動して可動枠材14の上端が外部29に向かって倒れるように移動し、可動枠材14は枠閉状態から枠開状態へと移行する。
そして、フック部53が中間位置60にあることを検知した後に、開閉装置40Bの移動機構制御装置は、第一移動機構41によってフック部53を最も上方向に移動させ、その後に、第二移動機構46によってフック部53を最も後退方向49側まで移動させ、開閉装置40Bを初期状態に戻す。
【0049】
もし、可動枠材14は枠閉状態から枠開状態へと移行するために、第一移動機構41によってフック部53を中間位置60まで移動させたときに、何らかの原因によってフック部53が中間位置60にあることを検知できなかった場合は、第一移動機構41によってフック部53を最も上方まで移行させ、その後に、第一移動機構41によってフック部53を中間位置60まで移動させる。この繰り返し作業を三回繰り返しても、フック部53が中間位置60にあることを検知することができなかった場合は、フック部53を最も上方まで移動させ、その後に、フック部53を最も後退方向49側まで移動させ、開閉装置40Bを初期状態に戻す。次に、異常発生の発報をする。そして、人によって異常を解消し、異常リセットを行った後に、開閉装置40Bは、段落[0048]に記した動作を再度行う。
【0050】
また、開閉用突出部18と、フック部53と、の意図しない衝突を防ぐために、開閉装置40及び搬送装置90はインターロック機能を有する。第二移動機構46は、フック部53が最も上方又は最も下方にある状態のときのみ、作動可能である。そして、搬送装置90は、開閉装置配置台70に固定される全ての開閉装置40が初期状態であるときのみ、型枠の搬送が可能である。
【0051】
本実施形態に用いられる全ての型枠は、搬送装置90に載置されたときに、開閉用突出部18がすべて同じ向き長尺になるように備えられているため、開閉用突出部18の長尺方向に垂直な水平方向にフック部53が移動できるように、開閉装置40をブラケット77に固定するだけで良いが、搬送装置90に載置されたときに、開閉用突出部18の長尺方向が他の型枠と異なる型枠も一緒に用いる場合は、開閉装置40に、第二移動機構46と、ガイド部50と、フック部53と、を水平方向に回転させる回転機構をさらに備えることで対応できる。また、第一移動機構41にオートスイッチをさらに設けることで、開閉用突出部18の高さが他の型枠と異なる型枠であっても、可動枠材14を枠開状態に又は枠閉状態に移行させるときのフック部53の高さを制御することができ、より多くの型枠に対応できる。
【0052】
最後に、本発明に係る建材100の製造方法の一実施形態について、
図15のフロー図をもとに、型枠10を用いて説明する。
初めに、型枠10は、型枠の保管場所から取り出され、セッティングエリアで搬送装置90の上面に載置され、搬送装置90によって打設作業エリアへ搬送される。このとき、型枠10が備える可動枠材14は枠開状態である。
次に、打設作業エリアへ搬送される型枠10は、その搬送途中で、型枠の自動開閉システム1によって可動枠材14を枠開状態から枠閉状態へと移行させられる。そして、可動枠材14が枠閉状態となった型枠10は、打設作業エリアで型枠10の内部28に液体状材料が打設され、その後に、養生作業エリアに搬送される。
次に、内部28に液体状材料が打設された型枠10は、養生作業エリアで液体状材料が固まり建材100が形成されるまで養生され、その後に、脱型作業エリアへ搬送される。
次に、脱型作業エリアへ搬送される型枠10は、その搬送途中で、型枠の自動開閉システム1によって可動枠材14を枠閉状態から枠開状態へと移行させられる。
そして、脱型作業エリアで可動枠材14が枠開状態となった型枠10から、当該型枠10の内部28の固まった建材100が脱型され、建材100が得られる。また、内部28の建材100が抜き取られた型枠10は、型枠の保管場所へ搬送される。
そして、型枠の保管場所へ搬送された型枠10は、可動枠材14が枠開状態のままで搬送装置90から降ろされ、型枠の保管場所に保管される。
【0053】
上記はあくまで本発明に係る型枠の自動開閉システム及び建材の製造方法の一実施形態を示したものであるため、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、型枠によって建材を生産する工場に対して、好意的に採用されるものと見込まれ、製造業の発展に貢献できる。
【符号の説明】
【0055】
1 型枠の自動開閉システム
10 型枠
11 枠材
12 外枠材
13 内枠材
14 可動枠材
18 開閉用突出部
19 隙間の長さ
20 土台
28 内部
29 外部
40 開閉装置
40A 開閉装置
40B 開閉装置
40C 開閉装置
41 第一移動機構(エアシリンダー)
46 第二移動機構(エアシリンダー)
53 フック部
58 フック部の下端の長さ
90 搬送装置(コンベア)
92 型枠識別手段
95 制御装置
100 建材
101 開口部
102 開口部の外周
103 開口部の外周の互いに対向する二つの面