(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156327
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エレベータ用ロープテスタ装置及びエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20221006BHJP
B66B 7/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B66B5/02 C
B66B7/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059947
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 智之
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA08
3F304CA01
3F304CA11
3F305BC36
(57)【要約】
【課題】 ロープの検査中に非常な状態が発生した場合に、ロープテスタをロープから離すことができるエレベータ用ロープテスタ装置を提供する。
【解決手段】 エレベータ用ロープテスタ装置は、ロープを検査するためにロープに接するロープテスタと、ロープテスタをロープに対して移動させる移動部と、移動部を制御するテスタ処理装置と、を備え、テスタ処理装置は、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部と、非常判定部が非常であると判定した場合に、ロープテスタがロープから離れるように、移動部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを検査するために前記ロープに接するロープテスタと、
前記ロープテスタを前記ロープに対して移動させる移動部と、
前記移動部を制御するテスタ処理装置と、を備え、
前記テスタ処理装置は、
取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部と、
前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する制御部と、を備える、エレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項2】
前記移動部は、
前記ロープテスタが前記ロープに近づいたり前記ロープから離れたりする方向へ、前記ロープテスタを移動可能な接離移動部と、
前記接離移動部が前記ロープテスタを前記ロープへ最も近づく位置へ移動させた場合でも前記ロープテスタが前記ロープから離れる退避位置へ、前記ロープテスタを移動可能な退避移動部と、を備え、
前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、請求項1に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項3】
前記退避移動部は、
前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動することによって、前記ロープテスタを前記退避位置へ移動させる動作部と、
前記ロープテスタを前記ロープの延びる方向へ移動させる起動部と、を備え、
前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動するように、前記起動部を制御する、請求項2に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項4】
前記ロープに対する前記ロープテスタの位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出に基づいて、前記ロープテスタが前記ロープに接しているか否かを判定する位置判定部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記接離移動部を制御し、
その後、前記位置判定部が前記ロープテスタが前記ロープに接していると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、請求項2又は3に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータ用ロープテスタ装置と、
前記ロープに接続されるかごと、
前記テスタ処理装置と通信可能であって、前記かごの走行及び前記移動部を制御するエレベータ処理装置と、を備え、
前記エレベータ処理装置は、
取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する装置非常判定部と、
前記装置非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する装置制御部と、を備える、エレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エレベータ用ロープテスタ装置及びエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エレベータ用ロープテスタ装置は、ロープを検査するためにロープに接するロープテスタと、ロープテスタをロープに対して移動させる移動部と、移動部を制御するテスタ処理装置とを備えている(例えば、特許文献1)。これにより、移動部がロープテスタを移動させることによって、ロープの検査を自動で行うことができる。
【0003】
また、例えば、断線等の損傷や塵埃の付着といったロープの異常があった場合に、ロープテスタは、走行するロープから力を受ける。それに対して、エレベータ用ロープテスタ装置は、例えば、ロープテスタがロープから力を受けた場合に、ロープテスタをロープから離す移動部を備えている(例えば、特許文献2)。
【0004】
ところで、ロープの検査中に、例えば、災害(火災、地震、浸水)の発生、システムの故障、停電の発生、かごの通常運転の要求といった非常な状態が発生する虞がある。そして、ロープの異常があった場合だけでなく、斯かる非常な状態が発生した場合にも、安全を考慮して、ロープテスタをロープから離す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-214457号公報
【特許文献2】特開2019-214442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、ロープの検査中に非常な状態が発生した場合に、ロープテスタをロープから離すことができるエレベータ用ロープテスタ装置及びエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
エレベータ用ロープテスタ装置は、ロープを検査するために前記ロープに接するロープテスタと、前記ロープテスタを前記ロープに対して移動させる移動部と、前記移動部を制御するテスタ処理装置と、を備え、前記テスタ処理装置は、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部と、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
また、エレベータ用ロープテスタ装置においては、前記移動部は、前記ロープテスタが前記ロープに近づいたり前記ロープから離れたりする方向へ、前記ロープテスタを移動可能な接離移動部と、前記接離移動部が前記ロープテスタを前記ロープへ最も近づく位置へ移動させた場合でも前記ロープテスタが前記ロープから離れる退避位置へ、前記ロープテスタを移動可能な退避移動部と、を備え、前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、という構成でもよい。
【0009】
また、エレベータ用ロープテスタ装置においては、前記退避移動部は、前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動することによって、前記ロープテスタを前記退避位置へ移動させる動作部と、前記ロープテスタを前記ロープの延びる方向へ移動させる起動部と、を備え、前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動するように、前記起動部を制御する、という構成でもよい。
【0010】
また、エレベータ用ロープテスタ装置は、前記ロープに対する前記ロープテスタの位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出に基づいて、前記ロープテスタが前記ロープに接しているか否かを判定する位置判定部と、をさらに備え、前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記接離移動部を制御し、その後、前記位置判定部が前記ロープテスタが前記ロープに接していると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、という構成でもよい。
【0011】
また、エレベータシステムは、前記のエレベータ用ロープテスタ装置と、前記ロープに接続されるかごと、前記テスタ処理装置と通信可能であって、前記かごの走行及び前記移動部を制御するエレベータ処理装置と、を備え、前記エレベータ処理装置は、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する装置非常判定部と、前記装置非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する装置制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概要図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るロープテスタ装置の要部斜視図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図であって、ロープを検査している状態を示す図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図であって、ロープテスタがロープから力を受けた状態を示す図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図であって、ロープテスタがロープから力を受けることによって退避位置へ移動した状態を示す図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図であって、起動部が動作した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係るロープテスタ装置の概要図であって、起動部が動作することによってロープテスタが退避位置へ移動した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係るエレベータシステムの制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、エレベータシステム及びエレベータ用ロープテスタ装置における一実施形態について、
図1~
図9を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1に示すように、エレベータシステム1は、エレベータ21と、エレベータ21のロープ23を検査するエレベータ用ロープテスタ装置(以下、単に「ロープテスタ装置」ともいう)2とを備えている。
【0015】
エレベータ21は、例えば、人が乗るためのかご22と、かご22に接続されるかごロープ23と、かごロープ23に接続される釣合錘24と、かごロープ23を駆動してかご22及び釣合錘24を上下方向に走行させる巻上機25とを備えていてもよい。また、エレベータ21は、例えば、かご22を案内するかごレール26と、釣合錘24を案内する錘レール27と、かご22の走行速度を検出する調速機28と、エレベータ21の各部を制御するエレベータ処理装置29とを備えていてもよい。
【0016】
また、本実施形態においては、かごロープ23の一端がかご22に固定され、かごロープ23の他端が釣合錘24に固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ23の両端がそれぞれ昇降路X1の上部又は下部に固定され、かごロープ23がかご22のシーブ及び釣合錘24のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ23がかご22及び釣合錘24にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0017】
また、本実施形態に係るエレベータ21は、巻上機25を機械室X2の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室X2が備えられておらず、エレベータ21は、巻上機25を昇降路X1の内部に配置する、という構成でもよい。
【0018】
巻上機25は、例えば、かごロープ23が巻き掛けられる綱車25aと、綱車25aを回転させる駆動源25bと、綱車25aを制動する制動部25cとを備えていてもよい。また、調速機28は、例えば、かご22に接続される無端環状のガバナロープ28aと、かご22の速度を検出するために、ガバナロープ28aが巻き掛けられるガバナ車28bと、ガバナロープ28aに張力を付与するために、ガバナロープ28aに吊り下げられる張り車28cと、ガバナロープ28aを把持する把持部28dとを備えていてもよい。
【0019】
かご22は、例えば、かごレール26を挟むことによってかご22を停止させる停止部22aと、調速機28の動作を停止部22aへ伝達する伝達部22bとを備えていてもよい。そして、例えば、かご22の速度が設定速度を超えた場合に、把持部28dがガバナロープ28aを把持し、ガバナロープ28aの走行が停止されることによって、かご22の停止部22aは、作動する、という構成でもよい。
【0020】
図2に示すように、ロープテスタ装置2は、例えば、かごロープ23を検査するためにかごロープ23に接するロープテスタ3と、ロープテスタ3を移動させる移動部4と、ロープテスタ装置2の各部を制御するテスタ処理装置5とを備えていてもよい。なお、本実施形態においては、ロープテスタ装置2は、かごロープ23を検査しているが、例えば、ガバナロープ28aを検査していてもよい。
【0021】
移動部4は、例えば、ロープテスタ3がかごロープ23に近づいたりかごロープ23から離れたりする方向へ、ロープテスタ3を移動可能な接離移動部6と、ロープテスタ3を退避位置へ移動可能な退避移動部7とを備えていることが好ましい。なお、退避位置とは、接離移動部6がロープテスタ3をかごロープ23へ最も近づく位置へ移動させた場合でもロープテスタ3がかごロープ23から離れる位置のことである。
【0022】
接離移動部6は、例えば、本実施形態のように、第1方向D1へロープテスタ3を移動させる第1移動部6aと、第1方向D1と直交する第2方向D2へ、ロープテスタ3を移動させる第2移動部6bとを備えていてもよい。そして、第1及び第2移動部6a,6bのそれぞれは、例えば、給電される状態でロープテスタ3を移動可能な駆動源(例えば、モータ)を備えていてもよい。
【0023】
図3に示すように、ロープテスタ3は、例えば、かごロープ23を磁化させて磁束を検出するテスタ本体3aと、テスタ本体3aと接離移動部6とを接続するベース部3bとを備えていてもよい。また、ロープテスタ3は、例えば、本実施形態のように、かごロープ23に対する位置を検出する位置検出部3cを備えていることが好ましい。
【0024】
テスタ本体3aは、例えば、先端に、第3方向D3に沿って延びる溝3dを備えていてもよい。そして、ロープテスタ3がかごロープ23を検査するときに、かごロープ23が溝3dに挿入され、溝3dは、かごロープ23に接する、という構成でもよい。なお、第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2とそれぞれ直交する方向である。
【0025】
図示していないが、テスタ本体3aは、例えば、内部に永久磁石及び磁束検出部(例えば、検出コイル、ホール素子)を備えていてもよい。これにより、例えば、永久磁石がかごロープ23を磁化し、磁束検出部が磁束(例えば、かごロープ23から漏洩する磁束、かごロープ23の内部を通る磁束)を検出することによって、かごロープ23の損傷(例えば、断線)を検査することができる。
【0026】
テスタ本体3aは、例えば、溝3dがベース部3bに対して第3方向D3を軸として回動可能にする第1軸部3eを備えていてもよい。また、テスタ本体3aは、例えば、溝3dがベース部3bに対して第2方向D2を軸として回動可能にする第2軸部3fを備えていてもよい。
【0027】
位置検出部3cの構成は、特に限定されない。例えば、本実施形態のように、テスタ本体3aは、ベース部3bに対して第1方向D1へ移動可能に構成され、ロープテスタ3は、テスタ本体3aとベース部3bとの間に弾性部3gを備え、位置検出部3c(例えば、各種センサ)は、ベース部3bに対するテスタ本体3aの位置を検出する、という構成でもよい。
【0028】
これにより、テスタ本体3aがベース部3bに対して第1方向D1へ移動することによって、位置検出部3cは、ロープテスタ3がかごロープ23に接したことを検出できる。しかも、テスタ本体3aの移動量が大きいほど、ロープテスタ3がかごロープ23に接する圧力の大きさも大きくなるため、位置検出部3cは、当該圧力も検出することができる。
【0029】
図3及び
図4に示すように、退避移動部7は、例えば、ロープテスタ3がかごロープ23の延びる方向(以下、「ロープ方向」ともいう)D3へ移動することによって、ロープテスタ3を退避位置へ移動させる動作部8と、ロープテスタ3をロープ方向D3へ移動させる起動部9とを備えていることが好ましい。
【0030】
図4に示すように、動作部8は、例えば、昇降路X1に固定される固定部8aと、ロープテスタ3が接離移動部6を介して取り付けられ、固定部8aに対して第1横方向D1へ移動可能な取付部8bと、取付部8bに第1横方向D1への力を加える加力部8cとを備えていてもよい。
【0031】
なお、動作部8は、例えば、固定部8aに対して第1横方向D1へ移動可能となるように、固定部8aに接続される接続部8dを備えていてもよい。そして、接続部8dは、取付部8bが第2方向D2を軸にして回動可能となるように、取付部8bに接続されていてもよい。これにより、取付部8bが接続部8dに対して回動することによって、取付部8bは、固定部8aに対して第3方向D3へ移動できる。
【0032】
そして、動作部8は、取付部8bが加力部8cの力によって移動することを停止させる停止状態から、取付部8bが第3方向D3へ移動することによって当該停止を解除させる解除状態へ、切り替え可能な切替機構を備えている。なお、切替機構は、特に限定されない。
【0033】
例えば、切替機構は、加力部8cが常に取付部8bに力を加えていることに対して、固定部8aと取付部8bとが係合されており、取付部8bが固定部8aに対して第3方向D3へ移動することによって、当該係合が解除される、という構成でもよい。また、例えば、切替機構は、取付部8bの第3方向D3への移動がセンサによって検出されることによって、加力部8cが取付部8bに力を加え始める、という構成でもよい。
【0034】
斯かる構成によれば、ロープテスタ3がかごロープ23からロープ方向D3への力を受けた場合に、
図5に示すように、ロープテスタ3がロープ方向D3へ移動するため、動作部8は、停止状態から解除状態へ切り替えられる。そして、
図6に示すように、動作部8は、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させる。
【0035】
また、
図7に示すように、起動部9は、例えば、ロープテスタ3のベース部3bに固定される本体部9aと、ロープテスタ3をロープ方向D3へ移動させるために、本体部9aに対して可動な可動部9bとを備えていてもよい。例えば、可動部9bは、本体部9aに対して移動することによって、動作部8の固定部8aをロープ方向D3へ押す、という構成でもよい。
【0036】
斯かる構成によれば、起動部9が動作した場合に、即ち、可動部9bが本体部9aに対して移動した場合に、ロープテスタ3がロープ方向D3へ移動するため、動作部8は、停止状態から解除状態へ切り替えられる。そして、
図8に示すように、動作部8は、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させる。
【0037】
したがって、ロープテスタ3がかごロープ23から力を受けた場合でも、起動部9が動作した場合でも、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させることができる。しかも、共通の動作部8によって、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させることができる。
【0038】
図9に示すように、ロープテスタ装置2は、例えば、情報が入力される入力部10と、検査結果を出力する検査出力部11とを備えていてもよい。特に限定されないが、入力部10に入力される情報は、例えば、かごロープ23の検査を自動で行うための情報であって、端に配置されるかごロープ23の位置、かごロープ23の本数、かごロープ23,23の間隔、検査開始時間等である。
【0039】
テスタ処理装置5は、例えば、本実施形態のように、各情報を取得する取得部5aと、各情報を記憶する記憶部5bと、各情報を演算する演算部5cと、移動部4及び検査出力部11を制御する制御部5dとを備えていてもよい。例えば、演算部5cは、ロープテスタ3で検出した磁束の情報に基づいて、かごロープ23の状態を判定し、制御部5dは、かごロープ23の状態の判定結果を、検査出力部11へ出力してもよい。
【0040】
演算部5cは、例えば、本実施形態のように、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部5eを備えていることが好ましい。そして、制御部5dは、例えば、本実施形態のように、非常判定部5eが非常であると判定した場合に、ロープテスタ3がかごロープ23から離れるように、移動部4を制御することが好ましい。
【0041】
また、演算部5cは、例えば、本実施形態のように、ロープテスタ3の位置を判定する位置判定部5fを備えていることが好ましい。例えば、位置判定部5fは、位置検出部3cの検出に基づいて、ロープテスタ3がかごロープ23に接しているか否かを判定することが好ましい。また、例えば、位置判定部5fは、接離移動部6による移動量に基づいて、基準位置に対するロープテスタ3の位置を判定することが好ましい。
【0042】
また、エレベータ21は、例えば、かご22の内部に配置されるかご操作盤30と、乗場に配置される乗場操作盤31とを備えていてもよい。かご操作盤30は、例えば、かご22の行先の指示が入力される行先入力部と、戸を開ける指示が入力される戸開入力部と、戸を閉める指示が入力される戸閉入力部とを備えていてもよい。乗場操作盤31は、例えば、上昇するかご22を呼び出す指示が入力される上昇呼出入力部と、下降するかご22を呼び出す指示が入力される下降呼出入力部とを備えていてもよい。
【0043】
エレベータ処理装置29は、例えば、本実施形態のように、各情報を取得する装置取得部29aと、各情報を記憶する装置記憶部29bと、各情報を演算する装置演算部29cと、巻上機25を制御する装置制御部29dとを備えていてもよい。例えば、装置演算部29cは、かご操作盤30及び乗場操作盤31に入力された情報に基づいて、かご22の走行内容を演算し、装置制御部29dは、装置演算部29cの演算に基づいて巻上機25を制御することによって、かご22の走行を制御してもよい。
【0044】
装置演算部29cは、例えば、本実施形態のように、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する装置非常判定部29eを備えていることが好ましい。そして、装置制御部29dは、例えば、本実施形態のように、装置非常判定部29eが非常であると判定した場合に、ロープテスタ3がかごロープ23から離れるように、移動部4を制御することが好ましい。
【0045】
特に限定されないが、本実施形態においては、装置非常判定部29eは、移動部4のうち、退避移動部7(具体的には、起動部9)のみを制御可能であり、接離移動部6を制御不能である、という構成としている。なお、装置非常判定部29eは、例えば、接離移動部6及び退避移動部7の両方をそれぞれ制御可能である、という構成でもよく、また、例えば、移動部4(接離移動部6及び退避移動部7の両方)を制御できない、という構成でもよい。
【0046】
そして、テスタ処理装置5とエレベータ処理装置29とは、例えば、本実施形態のように、互いに、通信可能であることが好ましい。これにより、テスタ処理装置5が接離移動部6を制御してロープテスタ3を移動し、ロープテスタ3がかごロープ23を検査するときに、即ち、ロープ検査中に、エレベータ処理装置29は、巻上機25を制御することによって、ロープ検査用の規定のかご22の走行を行うことができる。
【0047】
なお、特に限定されないが、ロープ検査用の規定のかご22の走行とは、例えば、ロープテスタ3がかごロープ23に接している状態では、一定速度で一方向の走行としてもよい。また、例えば、ロープ検査中のかご22の走行速度(最高速度)は、通常運転中のかご22の走行速度(最高速度)よりも、遅くなっていてもよい。
【0048】
各処理装置5,29は、CPU及びMPU等のプロセッサ(例えば、各演算部5c,29c、各制御部5d,29d)、ROM及びRAM等のメモリ(例えば、各取得部5a,29a、各記憶部5b,29b)、各種インターフェイス(例えば、各取得部5a,29a)等を備えるコンピュータであってもよい。そして、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行し、ソフトウェア及びハードウェアが協働することによって、各処理装置5,29の各部5a~5d,29a~29dが実現されていてもよい。
【0049】
そして、例えば、1つのコンピュータにおけるプロセッサが処理を実行することによって、各処理装置5,29の各部5a~5d,29a~29dが実現されている、という構成でもよい。具体的には、各処理装置5,29の各部5a~5d,29a~29dは、例えば、一つの装置に備えられている、という構成でもよい。
【0050】
また、例えば、複数のコンピュータにおけるプロセッサが分散して処理を実行することによって、各処理装置5,29の各部5a~5d,29a~29dが実現されている、という構成でもよい。具体的には、各処理装置5,29の各部5a~5d,29a~29dは、例えば、互いに通信可能な複数の装置に分散して備えられている、という構成でもよい。
【0051】
本実施形態に係るエレベータシステム1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るエレベータシステム1の制御について説明する。なお、エレベータシステム1の制御は、以下の内容に限定されない。
【0052】
まず、ロープ検査中に発生する非常な状態として、例えば、災害(火災、地震、浸水)の発生、システムの故障、停電の発生、かご22の通常運転の要求等が挙げられる。なお、特に限定されないが、それぞれの非常な状態の判定方法の一例について、以下に説明する。
【0053】
災害が発生した場合には、例えば、エレベータ処理装置29は、当該情報を取得する。そして、例えば、装置非常判定部29eは、当該情報に基づいて非常である(災害が発生した)と判定してもよく、また、例えば、エレベータ処理装置29が当該情報をテスタ処理装置5へ出力し、テスタ処理装置5の非常判定部5eは、当該情報に基づいて非常である(災害が発生した)と判定してもよい。
【0054】
また、システムの故障には、例えば、接離移動部6の故障、エレベータ処理装置29の故障、テスタ処理装置5の故障等が挙げられる。例えば、接離移動部6が故障した場合には、位置判定部5fがロープテスタ3の位置を判定し、非常判定部5eは、位置判定部5fの判定に基づいて、非常である(接離移動部6が故障してロープテスタ3を正確に移動できない)と判定してもよい。
【0055】
また、例えば、エレベータ処理装置29が故障した場合には、テスタ処理装置5がエレベータ処理装置29からの情報を取得できないため、非常判定部5eは、当該事象に基づいて非常である(エレベータ処理装置29が故障した)と判定してもよい。また、例えば、テスタ処理装置5が故障した場合には、エレベータ処理装置29がテスタ処理装置5からの情報を取得できないため、装置非常判定部29eは、当該事象に基づいて非常である(テスタ処理装置5が故障した)と判定してもよい。
【0056】
また、停電が発生した場合には、例えば、各処理装置5,29への給電が停止される。これにより、又は、その後の給電の再開により、例えば、非常判定部5eは、非常である(停電が発生した)と判定してもよく、また、例えば、装置非常判定部29eは、非常である(停電が発生した)と判定してもよい。
【0057】
かご22の通常の運転の要求は、例えば、ロープ検査中に、操作盤30,31に情報が入力されることによって行われる。そして、例えば、エレベータ処理装置29は、当該情報を取得した後にテスタ処理装置5へ出力し、非常判定部5eは、当該情報に基づいて非常である(運転の要求があった)と判定してもよい。このとき、例えば、エレベータ処理装置29は、ロープ検査用の規定のかご22の走行を中止し、操作盤30,31に入力された情報に基づいて、かご22を走行させてもよい。
【0058】
なお、例えば、ロープ検査中の非常な状態として、非常な状態が発生したことによって検査を中止する(検査を再開しない)第1の非常状態と、非常な状態が解消された後に検査を再開する第2の非常状態とがある。特に限定されないが、第1の非常状態として、例えば、災害(火災、地震、浸水)の発生、システムの故障、停電の発生等が挙げられ、また、第2の非常状態として、例えば、かご22の通常運転の要求等が挙げられる。
【0059】
次に、特に限定されないが、各非常判定部5e,29eが非常であると判定した場合の制御方法の一例について、以下に説明する。
【0060】
例えば、テスタ処理装置5において、ロープ検査中に、非常判定部5eが第1の非常であると判定した場合に、制御部5dが起動部9を動作させることによって、ロープテスタ3がロープ方向D3へ移動する(
図7参照)。これにより、動作部8がロープテスタ3を退避位置へ移動させるため、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させることができる(
図8参照)。
【0061】
また、例えば、エレベータ処理装置29において、ロープ検査中に、装置非常判定部29eが第1の非常であると判定した場合に、装置制御部29dが起動部9を動作させることによって、ロープテスタ3がロープ方向D3へ移動する(
図7参照)。これにより、動作部8がロープテスタ3を退避位置へ移動させるため、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させることができる(
図8参照)。
【0062】
このように、ロープ検査中に、第1の非常状態が発生した場合に、テスタ処理装置5及びエレベータ処理装置29がそれぞれ退避移動部7(具体的には、起動部9)を制御することができる。したがって、ロープ検査中に、第1の非常状態が発生した場合に、ロープテスタ3をかごロープ23から確実に離すことができる。
【0063】
なお、特に限定されないが、停電が発生した場合には、停電が復旧(給電が開始)される前に、ロープテスタ3を退避位置へ移動させることが好ましい。これにより、動作部8及び起動部9は、給電されない状態で動作可能な構成であることが好ましい。
【0064】
例えば、動作部8の動作源は、本実施形態のように、弾性体とすることができる。また、例えば、起動部9の動作源は、弾性体及び電磁石とし、電磁石に給電がされているときに、可動部9bに弾性体の力が加えられず、各処理装置5,29の制御や停電の発生によって電磁石への給電が停止したときに、弾性体の力が可動部9bに加えられる、という構成でもよい。なお、斯かる構成においては、各非常判定部5e,29eは、例えば、停電が発生することに伴って電磁石への給電が不可能となる給電回路を含む。
【0065】
また、例えば、テスタ処理装置5において、ロープ検査中に、非常判定部5eが第2の非常であると判定した場合に、制御部5dが接離移動部6を動作させることによって、ロープテスタ3は、かごロープ23から離れる。これにより、例えば、第2の非常な状態が解消された場合に、制御部5dが接離移動部6を動作し、ロープテスタ3がかごロープ23に接することによって、かごロープ23の検査を再開することができる。
【0066】
なお、万が一、制御部5dが接離移動部6を制御したにも関わらず、ロープテスタ3がかごロープ23に接している場合には、位置判定部5fは、当該状態を判定する。斯かる場合には、制御部5dが起動部9を動作させることによって、ロープテスタ3がロープ方向D3へ移動する(
図7参照)。
【0067】
これにより、動作部8がロープテスタ3を退避位置へ移動させるため、ロープテスタ3をかごロープ23から離して退避位置へ移動させることができる(
図8参照)。したがって、ロープ検査中に、第2の非常状態が発生した場合に、制御部5dが接離移動部6及び退避移動部7(起動部9)の両方を制御することができるため、ロープテスタ3をかごロープ23から確実に離すことができる。
【0068】
以上より、本実施形態のように、エレベータ用ロープテスタ装置2は、ロープ(本実施形態においては、かごロープ)23を検査するために前記ロープ23に接するロープテスタ3と、前記ロープテスタ3を前記ロープ23に対して移動させる移動部4と、前記移動部4を制御するテスタ処理装置5と、を備え、前記テスタ処理装置5は、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部5eと、前記非常判定部5eが非常であると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記ロープ23から離れるように、前記移動部4を制御する制御部5dと、を備える、という構成が好ましい。
【0069】
斯かる構成によれば、非常判定部5eが、取得した情報に基づいて非常であると判定した場合に、制御部5dが移動部4を制御することによって、ロープテスタ3をロープ23から離すことができる。これにより、ロープ23の検査中に非常な状態が発生した場合に、ロープテスタ3をロープ23から離すことができる。
【0070】
また、本実施形態のように、エレベータ用ロープテスタ装置2においては、前記移動部4は、前記ロープテスタ3が前記ロープ23に近づいたり前記ロープ23から離れたりする方向へ、前記ロープテスタ3を移動可能な接離移動部6と、前記接離移動部6が前記ロープテスタ3を前記ロープ23へ最も近づく位置へ移動させた場合でも前記ロープテスタ3が前記ロープ23から離れる退避位置へ、前記ロープテスタ3を移動可能な退避移動部7と、を備え、前記制御部5dは、前記非常判定部5eが非常であると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部7を制御する、という構成が好ましい。
【0071】
斯かる構成によれば、接離移動部6がロープテスタ3を移動させることによって、ロープテスタ3をロープ23に近づけたり離したりすることができる。これにより、ロープ23の検査を自動で行うことができる。
【0072】
そして、非常判定部5eが非常であると判定した場合に、制御部5dが退避移動部7を制御することによって、退避移動部7は、ロープテスタ3を退避位置へ移動させる。これにより、接離移動部6がロープテスタ3をロープ23へ最も近づく位置へ移動させた場合でも、ロープテスタ3をロープ23から離すことができる。
【0073】
また、本実施形態のように、エレベータ用ロープテスタ装置2においては、前記退避移動部7は、前記ロープテスタ3が前記ロープ23の延びる方向D3へ移動することによって、前記ロープテスタ3を前記退避位置へ移動させる動作部8と、前記ロープテスタ3を前記ロープ23の延びる方向D3へ移動させる起動部9と、を備え、前記制御部5dは、前記非常判定部5eが非常であると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記ロープ23の延びる方向D3へ移動するように、前記起動部9を制御する、という構成が好ましい。
【0074】
斯かる構成によれば、ロープテスタ3がロープ23の延びる方向D3へ移動することによって、動作部8は、ロープテスタ3を退避位置へ移動させる。これにより、ロープテスタ3がロープ23から力を受けた場合に、ロープテスタ3をロープ23から離して退避位置へ移動させることができる。
【0075】
また、非常判定部5eが非常であると判定した場合に、制御部5dが起動部9を制御することによって、ロープテスタ3は、ロープ23の延びる方向D3へ移動する。これにより、動作部8がロープテスタ3を退避位置へ移動させるため、ロープテスタ3をロープ23から離して退避位置へ移動させることができる。
【0076】
また、本実施形態のように、エレベータ用ロープテスタ装置2は、前記ロープ23に対する前記ロープテスタ3の位置を検出する位置検出部3cと、前記位置検出部3cの検出に基づいて、前記ロープテスタ3が前記ロープ23に接しているか否かを判定する位置判定部5fと、をさらに備え、前記制御部5dは、前記非常判定部5eが非常であると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記ロープ23から離れるように、前記接離移動部6を制御し、その後、前記位置判定部5fが前記ロープテスタ3が前記ロープ23に接していると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部7を制御する、という構成が好ましい。
【0077】
斯かる構成によれば、非常判定部5eが非常であると判定した場合に、制御部5dが接離移動部6を制御することによって、ロープテスタ3をロープ23から離すことができる。しかも、制御部5dが接離移動部6を制御したにも関わらず、万が一、位置判定部5fがロープテスタ3がロープ23に接していると判定した場合には、制御部5dは、退避移動部7を制御する。
【0078】
これにより、ロープテスタ3をロープ23から離して退避位置へ移動することができる。したがって、非常な状態が発生した場合に、制御部5dが接離移動部6及び退避移動部7をそれぞれ制御可能であるため、ロープテスタ3をロープ23から確実に離すことができる。
【0079】
また、本実施形態のように、エレベータシステム1は、前記のエレベータ用ロープテスタ装置2と、前記ロープ23に接続されるかご22と、前記テスタ処理装置5と通信可能であって、前記かご22の走行及び前記移動部4を制御するエレベータ処理装置29と、を備え、前記エレベータ処理装置29は、取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する装置非常判定部29eと、前記装置非常判定部29eが非常であると判定した場合に、前記ロープテスタ3が前記ロープ23から離れるように、前記移動部4を制御する装置制御部29dと、を備える、という構成が好ましい。
【0080】
斯かる構成によれば、エレベータ処理装置29は、テスタ処理装置5と通信可能である。そして、エレベータ処理装置29において、装置非常判定部29eが、取得した情報に基づいて非常であると判定した場合に、装置制御部29dが移動部4を制御することによって、ロープテスタ3をロープ23から離すことができる。これにより、非常な状態が発生した場合に、テスタ処理装置5及びエレベータ処理装置29がそれぞれ移動部4を制御することができる。
【0081】
なお、エレベータシステム1及びエレベータ用ロープテスタ装置2は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータシステム1及びエレベータ用ロープテスタ装置2は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0082】
(1)上記実施形態に係るロープテスタ装置2においては、退避移動部7は、ロープテスタ3を退避位置まで移動する、という構成である。しかしながら、ロープテスタ装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、退避移動部7は、ロープテスタ3をかごロープ23から離れるように、所定位置(接離移動部6がロープテスタ3をかごロープ23へ最も近づく位置へ移動させた場合にロープテスタ3がかごロープ23に接する位置)まで移動する、という構成でもよい。
【0083】
(2)また、上記実施形態に係るロープテスタ装置2においては、移動部4は、接離移動部6及び退避移動部7を備えている、という構成である。しかしながら、ロープテスタ装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、移動部4は、接離移動部6のみを備えており、退避移動部7を備えていない、という構成でもよい。
【0084】
(3)また、上記実施形態に係るロープテスタ装置2においては、ロープテスタ3がかごロープ23から力を受けてロープ方向D3へ移動した場合にロープテスタ3を退避位置へ移動させる動作部8と、起動部9が動作した場合にロープテスタ3を退避位置へ移動させる動作部8とは、共通である、という構成である。しかしながら、ロープテスタ装置2は、斯かる構成に限られない。例えば、それぞれの場合にロープテスタ3を退避位置へ移動させる動作部は、別である、という構成でもよい。
【0085】
(4)また、上記実施形態に係るエレベータシステム1においては、第1の非常状態が発生した場合の制御(初めから退避移動部7を動作させる制御)と、第2の非常状態が発生した場合の制御(まず、接離移動部6を動作させ、その後、ロープテスタ3が移動しない場合に、退避移動部7を動作させる制御)とは、異なる、という構成である。しかしながら、エレベータシステム1は、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータシステム1は、非常状態が発生した場合に、全ての非常状態に対して、同じ制御を行う、という構成でもよい。
【0086】
(5)また、上記実施形態に係るエレベータシステム1においては、テスタ処理装置5とエレベータ処理装置29とは、分離された別体の装置であって、互いに通信可能である、という構成である。しかしながら、エレベータシステム1は、斯かる構成に限られない。例えば、テスタ処理装置5とエレベータ処理装置29とは、一体の装置、即ち、一つの装置である、という構成でもよい。
【0087】
(6)また、エレベータシステム1においては、例えば、各非常判定部5e,29eが非常であると判定したことによって、各制御部5d,29dが移動部4を制御する場合において、かご22(即ち、かごロープ23)が停止した後に、ロープテスタ3がかごロープ23から離れるように、各制御部5d,29dが移動部4を制御する、という構成でもよい。斯かる構成によれば、ロープテスタ3がかごロープ23から離れるときに、例えば、ロープテスタ3がかごロープ23を摩耗や損傷させることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…エレベータシステム、2…エレベータ用ロープテスタ装置、3…ロープテスタ、3a…テスタ本体、3b…ベース部、3c…位置検出部、3d…溝、3e…第1軸部、3f…第2軸部、3g…弾性部、4…移動部、5…テスタ処理装置、5a…取得部、5b…記憶部、5c…演算部、5d…制御部、5e…非常判定部、5f…位置判定部、6…接離移動部、6a…第1移動部、6b…第2移動部、7…退避移動部、8…動作部、8a…固定部、8b…取付部、8c…加力部、8d…接続部、9…起動部、9a…本体部、9b…可動部、10…入力部、11…検査出力部、21…エレベータ、22…かご、22a…停止部、22b…伝達部、23…かごロープ、24…釣合錘、25…巻上機、25a…綱車、25b…駆動源、25c…制動部、26…かごレール、27…錘レール、28…調速機、28a…ガバナロープ、28b…ガバナ車、28c…張り車、28d…把持部、29…エレベータ処理装置、29a…装置取得部、29b…装置記憶部、29c…装置演算部、29d…装置制御部、29e…装置非常判定部、30…かご操作盤、31…乗場操作盤、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向(ロープが延びる方向、ロープ方向)、X1…昇降路、X2…機械室
【手続補正書】
【提出日】2022-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを検査するために前記ロープに接するロープテスタと、
前記ロープテスタを前記ロープに対して移動させる移動部と、
前記移動部を制御するテスタ処理装置と、を備え、
前記テスタ処理装置は、
取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する非常判定部と、
前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが検査するために接していた前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する制御部と、を備える、エレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項2】
前記移動部は、
前記ロープテスタが前記ロープに近づいたり前記ロープから離れたりする方向へ、前記ロープテスタを移動可能な接離移動部と、
前記接離移動部が前記ロープテスタを前記ロープへ最も近づく位置へ移動させた場合でも前記ロープテスタが前記ロープから離れる退避位置へ、前記ロープテスタを移動可能な退避移動部と、を備え、
前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、請求項1に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項3】
前記退避移動部は、
前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動することによって、前記ロープテスタを前記退避位置へ移動させる動作部と、
前記ロープテスタを前記ロープの延びる方向へ移動させる起動部と、を備え、
前記制御部は、前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープの延びる方向へ移動するように、前記起動部を制御する、請求項2に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項4】
前記ロープに対する前記ロープテスタの位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出に基づいて、前記ロープテスタが前記ロープに接しているか否かを判定する位置判定部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記接離移動部を制御し、
その後、前記位置判定部が前記ロープテスタが前記ロープに接していると判定した場合に、前記ロープテスタが前記退避位置へ移動するように、前記退避移動部を制御する、請求項2又は3に記載のエレベータ用ロープテスタ装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のエレベータ用ロープテスタ装置と、
前記ロープに接続されるかごと、
前記テスタ処理装置と通信可能であって、前記かごの走行及び前記移動部を制御するエレベータ処理装置と、を備え、
前記エレベータ処理装置は、
取得した情報に基づいて非常であるか否かを判定する装置非常判定部と、
前記装置非常判定部が非常であると判定した場合に、前記ロープテスタが前記ロープから離れるように、前記移動部を制御する装置制御部と、を備える、エレベータシステム。