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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156328
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車載管理装置および管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20221006BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H04L12/28 200M
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059948
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】大津 智弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
(72)【発明者】
【氏名】菊地 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輔
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB06
5K033DA13
5K033EA06
5K033EB08
(57)【要約】
【課題】スリープ制御に関する機能をより向上させる。
【解決手段】車載管理装置は、車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知する検知部と、前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記検知部により検知された前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う制御部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載管理装置であって、
車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知する検知部と、
前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記検知部により検知された前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う制御部とを備える、車載管理装置。
【請求項2】
前記車載管理装置は、さらに、
前記対象装置のスリープ条件の成否を判断する判断部を備え、
前記制御部は、前記判断部により前記スリープ条件が成立すると判断され、かつ前記車載管理装置に車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う、請求項1に記載の車載管理装置。
【請求項3】
前記車載管理装置は、さらに、
前記対象装置のスリープ条件の成否を判断する判断部と、
前記判断部により前記スリープ条件が成立しないと判断された場合、前記対象装置の代わりに前記所定メッセージを前記車載ネットワークにおける前記車載装置へ送信する送信部とを備える、請求項1または請求項2に記載の車載管理装置。
【請求項4】
前記車載管理装置は、さらに、
前記検知部により検知された前記対象装置の認証処理を行う認証処理部を備え、
前記送信部は、前記認証処理部により前記対象装置が認証済みである場合に、前記対象装置に代わる前記車載装置への前記所定メッセージの送信を行う、請求項3に記載の車載管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記対象装置のウェイクアップ条件が成立した場合、または前記車載管理装置が前記車載装置からの前記所定メッセージを受信した場合、前記対象装置をスリープ状態から復帰させる制御を行う、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載管理装置。
【請求項6】
車載管理装置における管理方法であって、
車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知するステップと、
前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、検知した前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行うステップとを含む、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載ネットワークにおける通信設定を調整する技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2019-161103号公報)には、以下のような車両制御装置が開示されている。すなわち、車両制御装置は、車両に搭載された制御対象の挙動を制御する制御装置が接続する通信系との通信インタフェース手段と、前記制御装置とは独立して設けられ、前記通信系で通信する前記制御装置に対する通信設定を調整する通信設定手段とを備える。
【0003】
また、たとえば、非特許文献1(AUTOSAR CP R19-11、“Specification of UDP Network Management”、AUTOSAR、2019年11月28日)の21-23頁には、AUTOSARの規格に従って、車載装置が通信を行う必要がないときに当該車載装置をスリープ状態へ遷移させる技術が開示されている。このような技術により、車載装置の消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-161103号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】AUTOSAR CP R19-11、“Specification of UDP Network Management”、AUTOSAR、2019年11月28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2の技術を超えて、スリープ制御に関する機能をより向上させることが可能な技術が望まれる。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、スリープ制御に関する機能をより向上させることが可能な車載管理装置および管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車載管理装置は、車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知する検知部と、前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記検知部により検知された前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う制御部とを備える。
【0009】
本開示の管理方法は、車載管理装置における管理方法であって、車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知するステップと、前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、検知した前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行うステップとを含む。
【0010】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える車載管理装置として実現され得るだけでなく、車載管理装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載管理装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得たり、車載管理装置を備える車載通信システムとして実現され得たり、車載通信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載通信システムにおける処理をステップとする中継方法として実現され得たり、車載通信システムにおける処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、スリープ制御に関する機能をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成の他の例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置における記憶部が記憶している条件テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置が車速センサをスリープ状態へ遷移させる際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置が車速センサをウェイクアップ状態へ遷移させる際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスリープ状態およびウェイクアップ状態への遷移のシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係る車載管理装置は、車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知する検知部と、前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記検知部により検知された前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う制御部とを備える。
【0015】
このように、所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合に対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う構成により、たとえば所定メッセージを用いて車載装置をスリープ状態へ遷移させるシステムにおいて、車載装置がスリープ状態へ遷移すべきタイミングにおいて対象装置もスリープ状態へ遷移させることができる。したがって、スリープ制御に関する機能をより向上させることができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記車載管理装置は、さらに、前記対象装置のスリープ条件の成否を判断する判断部を備え、前記制御部は、前記判断部により前記スリープ条件が成立すると判断され、かつ前記車載管理装置に車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。
【0017】
このような構成により、対象装置と他の車載装置との通信を継続させる必要がなく、かつ他の車載装置がスリープ状態へ遷移すべきタイミングにおいて、対象装置をスリープ状態へ遷移させることができる。
【0018】
(3)好ましくは、前記車載管理装置は、さらに、前記対象装置のスリープ条件の成否を判断する判断部と、前記判断部により前記スリープ条件が成立しないと判断された場合、前記対象装置の代わりに前記所定メッセージを前記車載ネットワークにおける前記車載装置へ送信する送信部とを備える。
【0019】
このような構成により、対象装置と他の車載装置との通信を継続させる必要がある場合において、所定メッセージを他の車載装置へ送信することにより他の車載装置のウェイクアップ状態を維持することができるので、対象装置と他の車載装置とが通信可能な状態を維持することができる。
【0020】
(4)より好ましくは、前記車載管理装置は、さらに、前記検知部により検知された前記対象装置の認証処理を行う認証処理部を備え、前記送信部は、前記認証処理部により前記対象装置が認証済みである場合に、前記対象装置に代わる前記車載装置への前記所定メッセージの送信を行う。
【0021】
このような構成により、不正な対象装置により他の車載装置におけるスリープ状態への遷移が妨げられることを防止することができる。
【0022】
(5)好ましくは、前記制御部は、前記対象装置のウェイクアップ条件が成立した場合、または前記車載管理装置が前記車載装置からの前記所定メッセージを受信した場合、前記対象装置をスリープ状態から復帰させる制御を行う。
【0023】
このような構成により、対象装置において他の車載装置との通信を行う必要が生じた場合、または他の車載装置において対象装置との通信を行う必要が生じた場合において、対象装置をスリープ状態から復帰させ、対象装置と他の車載装置とが通信可能な状態とすることができる。
【0024】
(6)本開示の実施の形態に係る管理方法は、車載管理装置における管理方法であって、
車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知するステップと、前記車載管理装置に前記車載装置からの前記所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、検知した前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行うステップとを含む。
【0025】
このように、所定メッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合に対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う方法により、たとえば所定メッセージを用いて車載装置をスリープ状態へ遷移させるシステムにおいて、車載装置がスリープ状態へ遷移すべきタイミングにおいて対象装置もスリープ状態へ遷移させることができる。したがって、スリープ制御に関する機能をより向上させることができる。
【0026】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。図1を参照して、車載通信システム301は、中継装置101と、車載ECU(Electronic Control Unit)111とを備える。たとえば、車載通信システム301は、中継装置101として中継装置101A,101Bを備え、車載ECU111として車載ECU111A,111Bを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。
【0028】
中継装置101A,101Bおよび車載ECU111A,111Bは、所定の車載ネットワークマネジメント方式に準拠した装置である。より詳細には、中継装置101A,101Bおよび車載ECU111A,111Bは、車載ネットワークマネジメント方式の一例であるAUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)に準拠した装置である。
【0029】
車載ECU111Aと中継装置101Aとは、ケーブル2を介して互いに接続されている。車載ECU111Bと中継装置101Bとは、ケーブル2を介して互いに接続されている。中継装置101Aと中継装置101Bとは、ケーブル2を介して互いに接続されている。ケーブル2は、たとえば、イーサネット(登録商標)ケーブルである。中継装置101、車載ECU111およびケーブル2は、車載ネットワークを構成する。
【0030】
車載通信システム301は、2つの車載ECU111を備える構成に限定されず、3つ以上の車載ECU111を備える構成であってもよい。たとえば、車載通信システム301は、ケーブル2を介して中継装置101Aに接続される2つ以上の車載ECU111を備える構成であってもよいし、ケーブル2を介して中継装置101Bに接続される2つ以上の車載ECU111を備える構成であってもよい。また、車載通信システム301は、中継装置101Bを備えない構成であってもよいし、3つ以上の中継装置101を備える構成であってもよい。中継装置101Aは、車載管理装置の一例である。中継装置101Bおよび車載ECU111は、車載装置の一例である。
【0031】
また、車載通信システム301は、車載装置として、車両1に一時的に搭載される民生機器を備える構成であってもよい。民生機器は、たとえば、スマートフォン等の端末装置、またはUSB(Universal Serial Bus)メモリなどである。
【0032】
車載ECU111は、たとえば、電動パワーステアリング(Electric Power Steering:EPS)、ブレーキ制御装置、アクセル制御装置、ステアリング制御装置、または運転支援システム(Advanced Driver-Assistance System:ADAS)における各種装置への指示等を行う運転支援装置等である。
【0033】
中継装置101は、車載ECU111と通信を行うことが可能である。中継装置101は、たとえば、異なるケーブル2に接続された複数の車載ECU111間においてやり取りされる情報を中継する中継処理を行う。たとえば、中継装置101Aはスイッチ装置であり、中継装置101Bはゲートウェイ装置である。
【0034】
たとえば、車載ECU111は、定期的に、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)に従うフレームであるLLDPフレームを自己に接続された中継装置101へ送信する。LLDPフレームには、送信元の車載ECU111のMACアドレスおよびIPアドレスが格納されている。
【0035】
中継装置101は、自己に接続された車載ECU111からLLDPフレームを受信し、受信したLLDPフレームから、送信元の車載ECU111のMACアドレスおよびIPアドレス等の各種情報を取得する。
【0036】
(NMメッセージ)
中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ(Wake-up)状態からスリープ(Sleep)状態への遷移、およびスリープ状態からウェイクアップ状態への遷移を行う。中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ状態において、車載通信システム301における他の装置と通信を行い、スリープ状態において、車載通信システム301における他の装置との通信を停止する。ここで、スリープ状態とは、装置の一部の機能の停止、装置への電力供給の停止、または装置におけるクロック周波数の低下等により、ウェイクアップ状態よりも消費電力が小さい状態である。スリープ状態は、待機電源モード状態、待機状態、節電状態、スタンバイ状態等とも称される。ウェイクアップ状態は、通常起動状態、通常動作状態、非スリープ状態等とも称される。
【0037】
たとえば、中継装置101および車載ECU111の各々は、スリープ状態へ遷移するための条件であるスリープ条件と、自己のスリープ条件が成立してからスリープ状態へ遷移するまでの待機時間であるタイムアウト時間と、ウェイクアップ状態へ遷移するための条件であるウェイクアップ条件とが予め設定されている。
【0038】
たとえば、スリープ条件は、車両1がイグニッションオフ(Ignition off)になること、および車両1が停車すること等である。車両1がイグニッションオフになることとは、車両1のイグニッション電源がオフされることを意味する。また、たとえば、ウェイクアップ条件は、車両1がイグニッションオンになること、および車両1が走行を開始すること等である。一例として、中継装置101および車載ECU111は、互いに異なるスリープ条件と、互いに異なるウェイクアップ条件と、互いに同じタイムアウト時間とが設定されている。
【0039】
中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ状態において、たとえば定期的に、AUTOSARに従うNM(Network Management)メッセージを車載通信システム301における各装置へ送信する。具体的には、中継装置101および車載ECU111は、NMメッセージが格納されたイーサネットフレームを車載通信システム301における各装置へブロードキャストする。これにより、中継装置101および車載ECU111は、自己がウェイクアップ状態であることを車載通信システム301における他の装置へ通知することができる。すなわち、NMメッセージは、車載通信システム301における各装置が、スリープ状態への遷移およびウェイクアップ状態への遷移をAUTOSARの規格に従って連携して行うために用いられるメッセージである。
【0040】
中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ状態において自己のスリープ条件が成立した場合、NMメッセージの送信を停止する。
【0041】
そして、中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ状態において自己のスリープ条件が成立してからタイムアウト時間が経過するまでの間に他の装置からのNMメッセージを受信しなかった場合、スリープ状態へ遷移する。
【0042】
より詳細には、中継装置101および車載ECU111は、ウェイクアップ状態において自己のスリープ条件が成立すると、タイマをスタートする。中継装置101および車載ECU111は、タイマによる計測時間が自己のタイムアウト時間に到達する前に他の装置からのNMメッセージを受信した場合、タイマをリセットする。一方、中継装置101および車載ECU111は、タイマをスタートまたはリセットしてから、他の装置からのNMメッセージを受信することなく、タイマによる計測時間が自己のタイムアウト時間に到達した場合、スリープ状態へ遷移する。これにより、NMメッセージを用いて、車載通信システム301における各装置のスリープ条件が成立したときに各装置をスリープ状態へ遷移させることができる。
【0043】
中継装置101および車載ECU111は、スリープ状態において、自己のウェイクアップ条件が成立した場合、ウェイクアップ状態へ遷移し、定期的なNMメッセージの送信を開始する。また、中継装置101および車載ECU111は、スリープ状態において、車載通信システム301における他の装置からのNMメッセージを受信すると、ウェイクアップ状態へ遷移する。これにより、NMメッセージを用いて、車載通信システム301におけるいずれかの装置のウェイクアップ条件が成立したときに各装置をウェイクアップ状態へ遷移させることができる。
【0044】
車載通信システム301では、NMメッセージを用いて、たとえば装置間において通信を行う必要がないときに各装置をスリープ状態へ遷移させることができるので、各装置の消費電力を低減することができる。
【0045】
<課題>
ところで、車載通信システム301は、AUTOSARに準拠していない車載装置を備える場合がある。
【0046】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成の他の例を示す図である。図2は、図1に示す車載通信システム301に、車速センサ121が後付けされた状態を示している。たとえば、車速センサ121は、車載装置の一例である。車速センサ121は、車載通信システム301に増設された車載装置である。
【0047】
図2を参照して、たとえば車両1のユーザにより、中継装置101Aに車速センサ121が接続される。車速センサ121は、AUTOSARに準拠していない車載装置であって、NMメッセージに対応していない車載装置である。すなわち、NMメッセージは、車速センサ121において処理不可能なメッセージである。そして、車速センサ121は、NMメッセージに関する機能を有していない車載装置であって、受信したNMメッセージを処理することができず、かつNMメッセージを送信することができない車載装置である。車速センサ121は、たとえば定期的に、車両1の速度を計測し、計測結果を示す計測情報を含むイーサネットフレームを中継装置101A経由で車載ECU111Aへ送信する。
【0048】
車載通信システム301では、NMメッセージを用いて車速センサ121をスリープ状態へ遷移させることができないので、車速センサ121の消費電力を低減することができない。すなわち、車速センサ121は、スリープ状態への遷移およびウェイクアップ状態への遷移に関して、車載通信システム301においてAUTOSARの規格に従って他の装置との連携を取ることができない。
【0049】
そこで、本開示の車載通信システム301および中継装置101Aでは、以下のような構成および動作により、このような課題を解決し、スリープ状態への遷移およびウェイクアップ状態への遷移に関して他の装置との連携を取ることができない機器の消費電力を低減する。
【0050】
<中継装置>
図3は、本開示の実施の形態に係る中継装置の構成を示す図である。図3を参照して、中継装置101Aは、通信ポート15A,15B,15Cと、中継部11と、検知部21と、判断部31と、制御部41と、NM処理部51と、記憶部61と、タイマ71A,71Bとを備える。以下、通信ポート15A,15B,15Cの各々を通信ポート15とも称する。NM処理部51は、送信部の一例である。
【0051】
通信ポート15は、たとえばケーブル2を接続可能な端子である。なお、通信ポート15は、集積回路の端子であってもよい。通信ポート15Aは、ケーブル2を介して中継装置101Bに接続されている。通信ポート15Bは、ケーブル2を介して車載ECU111Aに接続されている。通信ポート15Cは、ケーブル2を介して車速センサ121に接続されている。なお、中継装置101Aは、4つ以上の通信ポート15を備える構成であってもよい。
【0052】
記憶部61は、タイムアウト時間を記憶している。また、記憶部61は、中継装置101Aのスリープ条件および中継装置101Aのウェイクアップ条件を記憶している。
【0053】
中継部11、検知部21、判断部31、制御部41およびNM処理部51は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。記憶部61は、たとえば不揮発性メモリである。
【0054】
中継部11は、車載ECU111および車速センサ121等の車載装置から送信されたイーサネットフレームを通信ポート15経由で受信し、受信したイーサネットフレームに対して中継処理を行う。たとえば、中継部11は、L2スイッチとして機能することが可能であり、中継装置101Aに接続された車載ECU111Aおよび車速センサ121の間において伝送されるイーサネットフレームに対して中継処理を行う。また、たとえば、中継部11は、L3スイッチとして機能することが可能であり、異なる中継装置101に接続された車載装置間において伝送されるイーサネットフレームに対して中継処理を行う。
【0055】
(検知部)
検知部21は、車載ネットワークにおける車載装置のうちのNMメッセージに対応していない車載装置である対象装置の存在を検知する。より詳細には、検知部21は、対象装置として、AUTOSARに準拠していない車載装置である車速センサ121の存在を検知する。NMメッセージは、所定メッセージの一例である。
【0056】
車速センサ121は、ケーブル2を介して中継装置101Aにおける通信ポート15Cに接続されると、自己がAUTOSARに準拠していない旨を示す非準拠情報と、自己のIDおよびMACアドレス等の認証情報とを含むイーサネットフレームである認証用フレームを生成し、生成した認証用フレームを中継装置101Aへ送信する。
【0057】
中継部11は、通信ポート15C経由で車速センサ121から認証用フレームを受信し、受信した認証用フレームを検知部21へ出力する。
【0058】
検知部21は、中継部11から認証用フレームを受けて、認証用フレームから認証情報および非準拠情報を取得する。検知部21は、認証用フレームに非準拠情報が含まれていることから、当該認証用フレームの送信元である車速センサ121はNMメッセージに対応していないと判断する。そして、検知部21は、取得した認証情報を用いて車速センサ121の認証処理を行う。すなわち、検知部21は、認証処理部として機能する。検知部21は、認証処理に成功すると、認証用フレームから車速センサ121のMACアドレスを取得し、取得したMACアドレスを対象装置のMACアドレスとして記憶部61に保存する。
【0059】
検知部21は、車速センサ121のMACアドレスを対象装置のMACアドレスとして記憶部61に保存すると、車速センサ121のスリープ条件およびウェイクアップ条件を取得する。
【0060】
より詳細には、たとえば、車速センサ121は、自己のスリープ条件およびウェイクアップ条件を示す条件情報を含むLLDPフレームを生成し、生成したLLDPフレームを中継装置101Aへ送信する。
【0061】
検知部21は、通信ポート15Cおよび中継部11経由で車速センサ121からLLDPフレームを受信し、受信したLLDPフレームから条件情報を取得する。検知部21は、取得した条件情報が示すスリープ条件およびウェイクアップ条件を、対象装置のスリープ条件およびウェイクアップ条件として記憶部61に保存する。
【0062】
あるいは、車速センサ121は、自己の機能を示す機能情報を含むLLDPフレームを生成する。より詳細には、車速センサ121は、車速計測機能を有する旨を示す機能情報を含むLLDPフレームを生成する。そして、車速センサ121は、生成したLLDPフレームを中継装置101Aへ送信する。
【0063】
検知部21は、通信ポート15Cおよび中継部11経由で車速センサ121からLLDPフレームを受信し、受信したLLDPフレームから機能情報を取得する。
【0064】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置における記憶部が記憶している条件テーブルの一例を示す図である。図4を参照して、記憶部61は、車載装置の機能と、スリープ条件およびウェイクアップ条件との対応関係を示す条件テーブルを記憶している。
【0065】
検知部21は、記憶部61における条件テーブルから、LLDPフレームから取得した機能情報が示す機能すなわち車速計測機能に対応するスリープ条件およびウェイクアップ条件を取得する。検知部21は、取得したスリープ条件およびウェイクアップ条件を、対象装置のスリープ条件およびウェイクアップ条件として記憶部61に保存する。
【0066】
(判断部)
判断部31は、中継装置101Aのスリープ条件の成否、および中継装置101Aのウェイクアップ条件の成否を判断する。
【0067】
より詳細には、判断部31は、車両1の状態を監視し、監視結果に基づいて、記憶部61に保存された中継装置101Aのスリープ条件の成否、および記憶部61に保存された中継装置101Aのウェイクアップ条件の成否を判断する判断処理を行う。判断部31は、たとえば定期的に判断処理を行い、判断結果を制御部41およびNM処理部51へ通知する。
【0068】
また、判断部31は、対象装置である車速センサ121のスリープ条件の成否、および車速センサ121のウェイクアップ条件の成否を判断する。
【0069】
より詳細には、判断部31は、車両1の状態の監視結果に基づいて、記憶部61に保存された対象装置のスリープ条件の成否、および記憶部61に保存された対象装置のウェイクアップ条件の成否を判断する判断処理を行う。判断部31は、たとえば定期的に判断処理を行い、判断結果を制御部41およびNM処理部51へ通知する。
【0070】
(NM処理部)
中継部11は、NMメッセージが格納されたイーサネットフレームを通信ポート15経由で車載通信システム301における車載装置から受信すると、受信したイーサネットフレームをNM処理部51へ出力する。
【0071】
NM処理部51は、中継部11からイーサネットフレームを受けて、受けたイーサネットフレームからNMメッセージを取得し、車載通信システム301における車載装置からのNMメッセージを受信した旨を示すNM受信通知を制御部41へ出力する。
【0072】
また、NM処理部51は、中継装置101Aがウェイクアップ状態である期間において、NMメッセージを車載通信システム301における各装置へブロードキャストする。具体的には、NM処理部51は、宛先IPアドレスとしてブロードキャストアドレスを含み、かつNMメッセージが格納されたイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15経由で車載通信システム301における各装置へ送信する。
【0073】
より詳細には、NM処理部51は、中継装置101Aのウェイクアップ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、NMメッセージの定期的なブロードキャストを開始または継続する。また、NM処理部51は、中継装置101Aのスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、中継装置101Aのウェイクアップ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けるまでNMメッセージのブロードキャストを停止する。
【0074】
たとえば、NM処理部51は、判断部31により対象装置である車速センサ121のスリープ条件が成立しないと判断された場合、車速センサ121の代わりにNMメッセージを車載ネットワークにおける車載装置へ送信する。
【0075】
より詳細には、NM処理部51は、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、車速センサ121に代わるNMメッセージの定期的なブロードキャストを開始または継続する。また、NM処理部51は、車速センサ121のスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けるまで車速センサ121に代わるNMメッセージのブロードキャストを停止する。
【0076】
たとえば、NM処理部51は、車速センサ121が認証済みである場合に車速センサ121に代わるNMメッセージの送信を行う。一方、NM処理部51は、車速センサ121が認証済みでない場合、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立した旨の判断部31からの通知の有無に関わらず、車速センサ121に代わるNMメッセージの送信を行わない。
【0077】
より詳細には、NM処理部51は、記憶部61に車速センサ121のMACアドレスが対象装置のMACアドレスとして保存されていることを確認し、車速センサ121に代わるNMメッセージのブロードキャストを行う。一方、NM処理部51は、記憶部61に車速センサ121のMACアドレスが対象装置のMACアドレスとして保存されていない場合、車速センサ121に代わるNMメッセージのブロードキャストを行わない。
【0078】
(制御部)
制御部41は、中継装置101Aをスリープ状態へ遷移させる処理、および中継装置101Aをウェイクアップ状態へ遷移させる処理を行う。また、制御部41は、対象装置である車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御、および車速センサ121をウェイクアップ状態へ遷移させる制御を行う。
【0079】
(中継装置の状態を遷移させる処理の例)
制御部41は、中継装置101Aがウェイクアップ状態のときに、中継装置101Aのスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、タイマ71Aをスタートする。
【0080】
制御部41は、タイマ71Aによる計測時間が記憶部61におけるタイムアウト時間に到達する前にNM処理部51からNM受信通知を受けた場合、タイマ71Aをリセットする。一方、制御部41は、タイマ71Aをスタートまたはリセットしてから、NM処理部51からNM受信通知を受けることなく、タイマ71Aによる計測時間がタイムアウト時間に到達した場合、中継装置101Aをスリープ状態へ遷移させる処理を行う。
【0081】
制御部41は、中継装置101Aがスリープ状態のときに、判断部31から中継装置101Aのウェイクアップ条件が成立した旨の通知を受けるか、またはNM処理部51からNM受信通知を受けた場合、中継装置101Aをウェイクアップ状態へ遷移させる処理を行う。
【0082】
(車速センサをスリープ状態に遷移させる制御の例1)
制御部41は、判断部31により対象装置である車速センサ121のスリープ条件が成立すると判断された場合、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。
【0083】
より詳細には、制御部41は、車速センサ121のスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、車速センサ121において処理可能なメッセージとして、スリープ状態へ遷移すべき旨のスリープ遷移指示を中継部11経由で車速センサ121へ送信する。具体的には、制御部41は、車速センサ121のスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、スリープ遷移指示を含む車速センサ121宛のイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを中継部11へ出力する。
【0084】
中継部11は、制御部41から当該イーサネットフレームを受けて、受けたイーサネットフレームを通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する。
【0085】
車速センサ121は、中継装置101Aから当該イーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームに含まれるスリープ遷移指示に従い、スリープ状態へ遷移する。
【0086】
(車速センサをスリープ状態に遷移させる制御の例2)
制御部41は、中継装置101AにNMメッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、対象装置である車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。すなわち、制御部41は、NMメッセージが中継装置101Aに届かなくなった場合、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。より詳細には、制御部41は、NM処理部51からNM受信通知を受けない状態が所定時間続いた場合、スリープ遷移指示を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する。
【0087】
たとえば、制御部41は、判断部31により対象装置である車速センサ121のスリープ条件が成立すると判断され、かつ中継装置101AにNMメッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。
【0088】
より詳細には、制御部41は、車速センサ121のスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、タイマ71Bをスタートする。
【0089】
制御部41は、タイマ71Bによる計測時間が記憶部61におけるタイムアウト時間に到達する前にNM処理部51からNM受信通知を受けた場合、タイマ71Bをリセットする。一方、制御部41は、タイマ71Bをスタートまたはリセットしてから、NM処理部51からNM受信通知を受けることなく、タイマ71Bによる計測時間がタイムアウト時間に到達した場合、スリープ遷移指示を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する。
【0090】
車速センサ121は、中継装置101Aから当該イーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームに含まれるスリープ遷移指示に従い、スリープ状態へ遷移する。
【0091】
(車速センサをウェイクアップ状態に遷移させる制御の例)
制御部41は、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立した場合、または中継装置101AがNMメッセージを受信した場合、車速センサ121をスリープ状態から復帰させる制御を行う。
【0092】
より詳細には、制御部41は、車速センサ121がスリープ状態のときに、判断部31から車速センサ121のウェイクアップ条件が成立した旨の通知を受けるか、またはNM処理部51からNM受信通知を受けた場合、車速センサ121をウェイクアップ状態へ遷移させる制御を行う。より詳細には、制御部41は、車速センサ121において処理可能なメッセージとして、ウェイクアップ状態へ遷移すべき旨のウェイクアップ遷移指示を中継部11経由で車速センサ121へ送信する。具体的には、制御部41は、ウェイクアップ状態へ遷移すべき旨のウェイクアップ遷移指示を含む車速センサ121宛のイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する。
【0093】
車速センサ121は、中継装置101Aから当該イーサネットフレームを受信し、受信したイーサネットフレームに含まれるウェイクアップ遷移指示に従い、ウェイクアップ状態へ遷移する。
【0094】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0095】
図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置が車速センサをスリープ状態へ遷移させる際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0096】
図5を参照して、まず、中継装置101Aは、車載ネットワークにおける対象装置として、車速センサ121の存在を検知する(ステップS102)。
【0097】
次に、中継装置101Aは、車速センサ121のスリープ条件およびウェイクアップ条件を取得する(ステップS104)。
【0098】
次に、中継装置101Aは、車速センサ121のスリープ条件の成立を待ち受け(ステップS106でNO)、車速センサ121のスリープ条件が成立したと判断すると(ステップS106でYES)、タイマ71Bをスタートする(ステップS108)。
【0099】
次に、中継装置101Aは、タイマ71Bの計測時間のタイムアウト時間への到達、および車載通信システム301における車載装置からのNMメッセージを待ち受け(ステップS110でNOかつステップS112でNO)、タイマ71Bによる計測時間がタイムアウト時間に到達する前に車載装置からのNMメッセージを受信した場合(ステップS110でNOかつステップS112でYES)、タイマ71Bをリセットする(ステップS114)。
【0100】
一方、中継装置101Aは、中継装置101AにNMメッセージが到来しない状態が所定時間継続した場合、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う。より詳細には、中継装置101Aは、タイマ71Bをスタートまたはリセットしてから、車載装置からのNMメッセージを受信することなく、タイマ71Bによる計測時間がタイムアウト時間に到達した場合(ステップS110でYES)、スリープ遷移指示を車速センサ121へ送信する(ステップS116)。
【0101】
図6は、本開示の実施の形態に係る中継装置が車速センサをウェイクアップ状態へ遷移させる際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図6を参照して、まず、中継装置101Aは、車速センサ121がスリープ状態のときに、車速センサ121のウェイクアップ条件の成立、および車載通信システム301における車載装置からのNMメッセージを待ち受ける(ステップS202でNOかつステップS204でNO)。
【0102】
次に、たとえば、中継装置101Aは、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立したと判断した場合(ステップS202でYES)、ウェイクアップ遷移指示を車速センサ121へ送信する(ステップS206)。
【0103】
あるいは、中継装置101Aは、車載通信システム301における車載装置からのNMメッセージを受信した場合(ステップS204でYES)、ウェイクアップ遷移指示を車速センサ121へ送信する(ステップS206)。
【0104】
図7は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスリープ状態およびウェイクアップ状態への遷移のシーケンスの一例を示す図である。
【0105】
図7を参照して、まず、車載ECU111および中継装置101は、たとえば定期的に、NMメッセージの送受信を行う(ステップS302)。
【0106】
次に、車載通信システム301に、車速センサ121が追加される。具体的には、たとえば車両1のユーザにより、中継装置101Aに車速センサ121が接続される(ステップS304)。
【0107】
次に、車速センサ121は、認証情報を認証用フレームに含めて中継装置101Aへ送信する(ステップS306)。
【0108】
次に、中継装置101Aは、車速センサ121から受信した認証用フレームから認証情報を取得し、取得した認証情報を用いて車速センサ121の認証処理を行い、認証処理に成功すると、車速センサ121のMACアドレスを対象装置のMACアドレスとして記憶部61に保存する(ステップS308)。
【0109】
次に、車速センサ121は、スリープ条件およびウェイクアップ条件を示す条件情報をLLDPフレームに含めて中継装置101Aへ送信する(ステップS310)。
【0110】
次に、中継装置101Aは、車速センサ121のスリープ条件が成立したと判断する(ステップS312)。
【0111】
次に、車載ECU111および中継装置101は、自己のスリープ条件が成立したと判断する(ステップS314)。
【0112】
次に、車載ECU111および中継装置101は、自己のタイマがタイムアウト時間に到達すると、スリープ状態へ遷移する(ステップS316)。
【0113】
次に、中継装置101Aは、スリープ遷移指示をイーサネットフレームに含めて車速センサ121へ送信する(ステップS318)。
【0114】
次に、車速センサ121は、中継装置101Aから受信したイーサネットフレームに含まれるスリープ遷移指示に従い、スリープ状態へ遷移する(ステップS320)。
【0115】
次に、中継装置101Aは、車速センサ121のウェイクアップ条件が成立したと判断する(ステップS322)。
【0116】
次に、中継装置101Aは、ウェイクアップ遷移指示をイーサネットフレームに含めて車速センサ121へ送信する(ステップS324)。
【0117】
次に、車速センサ121は、中継装置101Aから受信したイーサネットフレームに含まれるウェイクアップ遷移指示に従い、ウェイクアップ状態へ遷移する(ステップS326)。
【0118】
なお、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、NM処理部51は、車速センサ121のスリープ条件が成立しないと判断された場合、車速センサ121の代わりにNMメッセージを車載ネットワークにおける車載装置へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。NM処理部51は、中継装置101Aのスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けるまでNMメッセージの定期的なブロードキャストを行う一方で、中継装置101Aのスリープ条件が成立した旨の通知を判断部31から受けた場合、車速センサ121のスリープ条件の成否に関わらず、NMメッセージのブロードキャストを停止する構成であってもよい。
【0119】
また、NM処理部51は、中継装置101Aのスリープ条件および車速センサ121のスリープ条件の少なくともいずれか一方が成立しない状態においてNMメッセージのブロードキャストを行う一方で、中継装置101Aのスリープ条件および車速センサ121のスリープ条件が成立した状態においてNMメッセージのブロードキャストを停止する構成であってもよい。
【0120】
また、車速センサ121は、制御部41による制御に依らず、自主的にスリープ状態へ遷移する場合がある。NM処理部51は、中継装置101Aと車速センサ121との間の通信が所定時間停止した場合、車速センサ121が自主的にスリープ状態へ遷移したと判断し、車速センサ121に代わるNMメッセージを停止する構成であってもよい。
【0121】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、NM処理部51は、車速センサ121が認証済みでない場合、車速センサ121に代わるNMメッセージの送信を行わない構成であるとしたが、これに限定するものではない。NM処理部51は、車速センサ121が認証済みであるか否かに関わらず、車速センサ121に代わるNMメッセージのブロードキャストを行う構成であってもよい。
【0122】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、制御部41は、車速センサ121をスリープ状態から復帰させる制御を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部41は、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御を行う一方で、車速センサ121をスリープ状態から復帰させる制御を行わない構成であってもよい。
【0123】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、検知部21は、通信ポート15Cおよび中継部11経由で車速センサ121から受信した認証用フレームに非準拠情報が含まれている場合、当該認証用フレームの送信元である車速センサ121はNMメッセージに対応していないと判断する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検知部21は、以下のようにして、AUTOSARに準拠していない車載装置を検知する構成であってもよい。
【0124】
すなわち、たとえば、通信ポート15Cは、AUTOSARに準拠していない装置が接続される通信ポート15であることが予め定められている。検知部21は、通信ポート15Cおよび中継部11経由で車速センサ121から認証用フレームを受信した場合、当該LLDPフレームの送信元である車速センサ121はNMメッセージに対応していないと判断する。
【0125】
あるいは、検知部21は、通信ポート15Cを監視し、通信ポート15Cに車速センサ121が接続されると、通信ポート15Cがリンクアップしたことを検知する。そして、検知部21は、ICMP(Internet Control Message Protocol)に従うフレームであるICMPフレーム、またはARP(Address Resolution Protocol)に従うフレームであるARPフレームを、中継部11および通信ポート15Cを介して車速センサ121との間で送受信することにより、車速センサ121におけるマイクロコントローラが動作しているか否かを判断する。検知部21は、車速センサ121のマイクロコントローラが動作しているにも関わらず、NM処理部51が車速センサ121からのNMメッセージを受信しない場合、車速センサ121はNMメッセージに対応していないと判断する。
【0126】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、制御部41は、スリープ遷移指示を含むイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部41は、スリープ遷移指示を含むイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する代わりに、車速センサ121への電源供給をオフする制御を行う構成であってもよい。
【0127】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、制御部41は、ウェイクアップ遷移指示を含むイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部41は、ウェイクアップ遷移指示を含むイーサネットフレームを中継部11および通信ポート15C経由で車速センサ121へ送信する代わりに、車速センサ121への電源供給をオンする制御を行う構成であってもよい。
【0128】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、中継装置101Aが、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御および車速センサ121をウェイクアップ状態へ遷移させる制御を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。中継装置101Aの代わりに中継装置101Bが、中継装置101Aを介して、車速センサ121をスリープ状態へ遷移させる制御および車速センサ121をウェイクアップ状態へ遷移させる制御を行う構成であってよい。
【0129】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、検知部21は、対象装置として、車載通信システム301に増設された車載装置である車速センサ121を検知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検知部21は、対象装置として、車載通信システム301における既設の車載装置を検知する構成であってもよい。すなわち、検知部21は、対象装置として、車両1の出荷時に車載通信システム301に搭載されている車載装置を検知する構成であってもよい。
【0130】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、検知部21は、対象装置として、AUTOSARに準拠していない車載装置を検知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、検知部21は、対象装置として、車載ネットワークマネジメント方式の一例であるオーゼック(OSEK)に準拠していない車載装置を検知する構成であってもよい。すなわち、検知部21は、対象装置として、オーゼックに従う所定メッセージに対応していない車載装置を検知する構成であってもよい。
【0131】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、検知部21は、対象装置として、車速センサ121を検知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。検知部21は、対象装置として、カメラ等の、車速センサ121以外の車載装置を検知する構成であってもよい。
【0132】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0133】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車載管理装置であって、
車載ネットワークにおける車載装置のうちの所定メッセージに対応していない前記車載装置である対象装置の存在を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記対象装置のスリープ条件の成否を判断する判断部と、
前記判断部により前記スリープ条件が成立すると判断された場合、前記対象装置をスリープ状態へ遷移させる制御を行う制御部とを備える、車載管理装置。
【符号の説明】
【0134】
1 車両
2 ケーブル
11 中継部
15,15A,15B,15C 通信ポート
21 検知部
31 判断部
41 制御部
51 NM処理部
61 記憶部
71A,71B タイマ
101,101A,101B 中継装置
111,111A,111B 車載ECU
121 車速センサ
301 車載通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7