(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156337
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
F27D 7/06 20060101AFI20221006BHJP
F27D 7/04 20060101ALI20221006BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20221006BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F27D7/06 C
F27D7/04
F27D21/00 A
F27D19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021059964
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】雷 健太
(72)【発明者】
【氏名】中谷 行宏
【テーマコード(参考)】
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056AA12
4K056AA14
4K056BA02
4K056CA18
4K056FA01
4K056FA15
4K063AA05
4K063AA06
4K063AA09
4K063AA15
4K063BA12
4K063CA03
4K063DA06
4K063DA16
4K063DA24
4K063DA26
4K063DA33
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】ガスの消費量を低減しつつ、熱処理によって生成される熱処理に悪影響を及ぼす成分を低減する。
【解決手段】熱処理システム10は、熱処理を行うための熱処理炉1と、熱処理炉1内での熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と、反応ガスに含まれる第2の成分とを反応させることによって、第1の成分が低減した再生ガスを得るための反応部2と、反応ガスを反応部2に供給するための反応ガス供給部3と、熱処理後ガスを反応部2に導入し、反応部2で得られる再生ガスを熱処理炉1に導入するための循環路4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理を行うための熱処理炉と、
前記熱処理炉内での熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と、反応ガスに含まれる第2の成分とを反応させることによって、前記第1の成分が低減した再生ガスを得るための反応部と、
前記反応ガスを前記反応部に供給するための反応ガス供給部と、
前記熱処理後ガスを前記反応部に導入し、前記反応部で得られる前記再生ガスを前記熱処理炉に導入するための循環路と、
を備えることを特徴とする熱処理システム。
【請求項2】
前記反応部は、前記熱処理後ガスを導入するための導入口と、前記導入口とは別に、前記再生ガスを前記循環路に導出するための導出口とを有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記再生ガスに含まれる前記第1の成分、前記第2の成分、および、前記第1の成分と前記第2の成分との反応によって生成される第3の成分のうちの少なくとも1つの成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方を検出するためのセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記反応ガス供給部から前記反応部に供給する前記反応ガスの流量を制御するための制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記再生ガスから、前記第1の成分と前記第2の成分との反応によって生成される第3の成分を、濾過、分離、吸着、凝縮、および、溶解のうちの少なくとも1つの方法により低減する低減部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱処理システム。
【請求項5】
送風により、前記循環路を介してガスを循環させるための送風部をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記循環路が前記反応部として構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の熱処理システム。
【請求項7】
圧縮気体を用いて、前記循環路を介してガスを循環させるためのガス増幅器をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物に対して熱処理を行う熱処理システムが知られている。
【0003】
そのような熱処理システムの1つとして、特許文献1には、酸素センサによって検出された熱処理炉内の酸素濃度と、酸素濃度の目標値とに基づいて、熱処理炉内に供給する水素の流量を制御する熱処理システムが開示されている。この熱処理システムでは、熱処理炉内の圧力によって、排気管を介して熱処理炉内のガスが排出されるように構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の熱処理システムでは、被処理物に対して熱処理を行う間、ガス供給部から熱処理炉内にガスを供給し、不要なガスを排気管から排出するように構成されているので、ガスの消費量が多くなる。
【0005】
これに対して、特許文献2には、熱処理炉内のガスの一部を循環路内に導入してガス中の浮遊ダストを除去した後、熱処理炉内に戻すことによって、ガスの消費量を低減する熱処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-001064号公報
【特許文献2】特開平01-184390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱処理炉内では、熱処理によって、熱処理に悪影響を及ぼす成分の物質が生成される場合がある。このため、特許文献2に記載の熱処理システムのように、熱処理炉内のガスの一部を循環路内に導入して再び熱処理炉内に戻すだけの構成では、熱処理に悪影響を及ぼす成分の物質が熱処理炉内で増え続け、被処理物に対して所望の熱処理を行うことが困難になる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ガスの消費量を低減しつつ、熱処理に悪影響を及ぼす成分を低減することが可能な熱処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱処理システムは、
熱処理を行うための熱処理炉と、
前記熱処理炉内での熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と、反応ガスに含まれる第2の成分とを反応させることによって、前記第1の成分が低減した再生ガスを得るための反応部と、
前記反応ガスを前記反応部に供給するための反応ガス供給部と、
前記熱処理後ガスを前記反応部に導入し、前記反応部で得られる前記再生ガスを前記熱処理炉に導入するための循環路と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱処理システムによれば、反応部に反応ガスを供給し、熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と、反応ガスに含まれる第2の成分とを反応させることによって、第1の成分が低減した再生ガスを得る。得られた再生ガスを熱処理炉に戻すことにより、ガスの消費量を低減しつつ、熱処理に悪影響を及ぼす第1の成分を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態における熱処理システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態における熱処理システムの構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態における熱処理システムの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における熱処理システム10の構成を模式的に示す図である。第1の実施形態における熱処理システム10は、熱処理炉1と、反応部2と、反応ガス供給部3と、循環路4とを備える。
【0014】
熱処理炉1は、被処理物に対して熱処理を行うための炉であり、ヒーター等の加熱手段H1を備えている。本実施形態における熱処理炉1は、バッチ式の熱処理炉である。熱処理炉1内で行われる熱処理の種類に特に制約はなく、例えば、セラミック電子部品を製造するための焼成処理や脱脂処理であってもよいし、被処理物に対する乾燥処理でもよい。熱処理炉1の容積は、例えば、0.5m3以上10m3以下である。
【0015】
熱処理炉1内で熱処理が行われることによって、第1の成分を含む熱処理後ガスが発生する。第1の成分は、熱処理炉1における熱処理を阻害する成分であって、例えば、H2、CO、CO2等である。なお、熱処理を阻害する成分である第1の成分は、熱処理の内容に応じて異なる。例えば、ある熱処理システムでは、CO2が第1の成分であるが、別の熱処理システムでは、CO2が熱処理を阻害せず、第1の成分とはならない場合がある。
【0016】
熱処理炉1には、不要なガスを排出して、熱処理システム10におけるガスの量を一定に保つための排気管11が設けられている。
【0017】
反応部2は、熱処理炉1内での熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と、反応ガスに含まれる第2の成分とを反応させることによって、第1の成分が低減した再生ガスを得るためのものである。例えば、第1の成分がH2の場合、第2の成分をO2とする。すなわち、次式(1)に示すように、H2とO2とを反応させることによって、第3の成分であるH2Oを含む再生ガスが得られる。
2H2+O2=2H2O (1)
【0018】
また、第1の成分がCOの場合、第2の成分をO2とする。すなわち、次式(2)に示す反応式によって、COとO2とを反応させることによって、第3の成分であるCO2を含む再生ガスが得られる。
2CO+O2=2CO2 (2)
【0019】
また、第1の成分がアセトンやターピネオール等の溶剤である場合、第2の成分をO2とする。すなわち、アセトンやターピネオールを燃焼させることによって、アセトンやターピネオールが低減した再生ガスが得られる。ただし、アセトンやターピネオールを燃焼させるための第2の成分がO2に限定されることはなく、空気、H2O、CO2等、酸素原子が含まれる成分を用いることが可能である。
【0020】
このように、第2の成分は、第1の成分と反応して、第1の成分を消滅または低減させることが可能な成分を用いる。
【0021】
反応部2は、ヒーター等の加熱手段H2を備えており、熱処理炉1とは別に独立した温度制御が可能に構成されている。第1の成分と第2の成分とを反応させるための反応部2は、熱処理炉1ほど大きい容積を必要とせず、例えば、熱処理炉1の容積の10%以上20%以下の大きさとする。
【0022】
本実施形態において、反応部2は、熱処理後ガスを導入するための導入口2aと、導入口2aとは別に、再生ガスを循環路4に導出するための導出口2bとを有する。
【0023】
反応ガス供給部3は、第2の成分を含む反応ガスを反応部2に供給する。反応ガス供給部3から反応部2に供給される反応ガスの流量は、後述する制御部7によって制御される。
【0024】
循環路4は、熱処理炉1で発生した熱処理後ガスを反応部2に導入し、反応部2で得られる再生ガスを熱処理炉1に導入するためのガス管である。循環路4は、熱処理炉1のガス出口1aと反応部2の導入口2aとの間、および、反応部2の導出口2bと熱処理炉1のガス入口1bとの間を接続している。
【0025】
本実施形態における熱処理システム10は、送風により、循環路4を介してガスを循環させるための送風部5を備えている。すなわち、送風部5は、送風により、循環路4を介して熱処理後ガスを熱処理炉1から反応部2に導入し、反応部2で得られる再生ガスを熱処理炉1に導入するガスの流れを生成する。送風部5は、例えばファンであり、循環路4に設けられている。送風部5による送風によってガスを循環させることにより、送風部5を設けない構成と比べて、熱処理システム10に投入されるガス量の、例えば、10倍以上100倍以下の量のガスの流れを生成することができる。ガスの流速を高めることにより、熱処理に必要なガス量を低減することができるため、本実施形態では、例えば、熱処理システム10に投入するガス量を10分の1程度に低減することができる。
【0026】
なお、反応部2で得られる再生ガスが高温である場合、再生ガスを冷却してから熱処理炉1に戻すようにしてもよい。
【0027】
本実施形態における熱処理システム10は、再生ガスに含まれる第1の成分、第2の成分、および、第3の成分のうちの少なくとも1つの成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方を検出するためのセンサ6と、センサ6の検出結果に基づいて、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量を制御するための制御部7とをさらに備えている。
【0028】
センサ6は、熱処理炉1に導入される再生ガスに含まれる第1の成分の量を把握するためのセンサであって、循環路4のうち、反応部2の導出口2bと熱処理炉1のガス入口1bとの間、例えば、熱処理炉1のガス入口1bの近くに設けられている。第1の成分の低減度合いを把握するためには、センサ6によって、再生ガスに含まれる第1の成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方を検出することが好ましい。
【0029】
ただし、第1の成分と比べて、第2の成分または第3の成分の方がセンサ6による検出精度が高い場合には、センサ6によって再生ガスに含まれる第2の成分または第3の成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方を検出するようにしてもよい。反応ガス供給部3によって反応部2に供給される反応ガス中の第2の成分は、第1の成分と反応して消滅するため、例えば、再生ガスに含まれる第2の成分の濃度をセンサ6によって検出することにより、間接的に第1の成分の濃度を検出することができる。また、第3の成分は、第1の成分と第2の成分の反応によって生成されるため、例えば、再生ガスに含まれる第3の成分の濃度をセンサ6によって検出することにより、間接的に第1の成分の濃度に関する情報を得ることができる。検出精度を向上させるため、再生ガスに含まれる第1の成分、第2の成分、および、第3の成分のうちのいずれか2つまたは3つの成分をセンサ6によって検出するようにしてもよい。また、センサ6を複数箇所に設け、複数の検出値の平均値を求めることにより、より精度の高い測定結果を得るようにしてもよい。
【0030】
センサ6の検出対象ガスは、例えば、O2、H2、H2O、CO2、SO2、SO等である。センサ6の使用時における検出対象ガスの温度は、例えば、20℃以上1400℃以下である。センサ6として、例えば、半導体式ガスセンサ、固体電解質型ガスセンサ、または、非分散型赤外線式ガスセンサ等を用いることが可能である。センサ6の内部抵抗は、例えば、1000kΩ以下である。
【0031】
センサ6に記録計を接続し、検出対象ガスの検出結果を記録計に記録するようにしてもよい。その場合、記録計の内部抵抗は、例えば、1MΩ以上1000MΩ以下である。センサ6と記録計を含むガス検出系に、アナログ信号変換器、信号増幅器、ノイズフィルタ、デジタル信号変換器、抵抗、および、アイソレータ等の電気回路部品を含むようにしてもよい。
【0032】
熱処理炉1に、他のガスセンサを別途設けるようにしてもよい。その場合、他のガスセンサによって、検出対象ガスの有無の判定や、濃度または分圧の測定を行い、他のガスセンサまたは記録計の出力や、その出力からデジタル処理された値に応じて、熱処理炉1のガス導入量や風速、熱処理炉内の温度や圧力を調整したり、熱処理炉1の緊急停止やメンテナンスを指示したりしてもよい。
【0033】
上述したように、制御部7は、センサ6の検出結果に基づいて、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量を制御する。具体的には、制御部7は、センサ6によって検出される第1の成分、第2の成分、および、第3の成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方に基づいて、反応ガスの目標流量を決定し、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量が目標流量となるように制御する。換言すると、制御部7は、センサ6によって直接的または間接的に検出される第1の成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方に基づいて、第1の成分と反応させるための第2の成分を含む反応ガスの目標流量を決定し、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量が目標流量となるように制御する。このため、制御部7は、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量が目標流量となるように制御可能なマスフローコントローラを備えた構成とすることができる。
【0034】
このように、センサ6の検出結果に基づいて、制御部7が反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量を制御することにより、熱処理後ガスに含まれる第1の成分と反応させるための第2の成分を含む反応ガスの流量を適切に制御することができるので、熱処理後ガスに含まれる第1の成分を効果的に低減することができる。
【0035】
本実施形態における熱処理システム10によれば、熱処理炉1内での熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分を、反応部2に供給される反応ガスに含まれる第2の成分と反応させることによって、第1の成分が低減した再生ガスを得る。得られた再生ガスを熱処理炉1に戻すことにより、熱処理システム10に新たに投入するガスの量を低減しつつ、熱処理に悪影響を及ぼす第1の成分を低減することができる。一例として、第1の成分がアセトンやターピネオール等の溶剤である場合、反応部2で得られる再生ガスに含まれる溶剤の濃度を5%以下に低減することができる。
【0036】
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態における熱処理システム10Aの構成を模式的に示す図である。第2の実施形態における熱処理システム10Aは、第1の実施形態における熱処理システム10の構成に対して、さらに低減部20を備える。
【0037】
低減部20は、反応部2で得られる再生ガスから、第1の成分と第2の成分との反応によって生成される第3の成分を、濾過、分離、吸着、凝縮、および、溶解のうちの少なくとも1つの方法により低減する。
【0038】
ここでは一例として、熱処理炉1ではんだリフロー処理を行うものとし、第1の成分がはんだ付け促進剤であるフラックス、第2の成分がO2、再生ガスに含まれる第3の成分が水蒸気(H2O)であるものとして説明する。すなわち、フラックスを燃焼させることによって、フラックスが低減した再生ガスが得られる。ただし、フラックスを燃焼させるための第2の成分がO2に限定されることはなく、空気、H2O、CO2等、酸素原子が含まれる成分を用いることが可能である。
【0039】
本実施形態における低減部20は、循環路4を介して反応部2から熱処理炉1へ導入される再生ガスを冷却することによって、第3の成分である水蒸気を凝縮させて、凝縮により得られる水(H2O)を回収する。例えば、反応部2の導出口2bと熱処理炉1のガス入口1bとの間における循環路4の外側に、低減部20として冷却管を設けた二重管構造とし、冷却管に冷却水を流して、二重管の内側の循環路4を流れる再生ガスを冷却する。冷却管には、トラップ装置を設けて、凝縮により得られる水を回収する。
【0040】
この構成によれば、再生ガスに含まれる第3の成分が熱処理炉1における熱処理を阻害する場合に、再生ガスに含まれる第3の成分を低減部20で低減してから、熱処理炉1へと導入することができる。すなわち、熱処理を阻害する成分である第1の成分を反応部2による反応によって低減した際に、熱処理を阻害する成分である第3の成分が生成される場合でも、第3の成分を低減した再生ガスを熱処理炉1に導入することができる。これにより、熱処理炉1に導入する再生ガスに、熱処理を阻害する第3の成分が含まれている場合でも、熱処理システム10Aに新たに投入するガスの量を低減しつつ、熱処理によって生成され、熱処理に悪影響を及ぼす第1の成分および第3の成分を低減することができる。
【0041】
また、低減部20において、第3の成分だけでなく、第1の成分も濾過、分離、吸着、凝縮、および、溶解のうちの少なくとも1つの方法によって低減することが可能な場合には、反応部2において第1の成分を反応させる量を低減するようにして、残りを低減部20で低減させることもできる。例えば、反応部2で第1の成分を燃焼させることによって、第1の成分を低減させる場合、反応部2で第1の成分を完全燃焼させずに、低減部20で凝縮等の方法で低減させることにより、反応部2に供給する第2の成分であるO2の量を低減することができる。
【0042】
<第3の実施形態>
図3は、第3の実施形態における熱処理システム10Bの構成を模式的に示す図である。本実施形態における熱処理システム10Bも、第1の実施形態における熱処理システム10と同様に、熱処理炉1と、反応部2と、反応ガス供給部3と、循環路4と、センサ6と、制御部7とを備えている。
【0043】
本実施形態における熱処理炉1は、マッフル炉やトンネル炉等の連続式の熱処理炉である。なお、
図3は、連続式の熱処理炉1の延伸方向と直交する断面を模式的に示している。熱処理炉1には、循環路4が接続されている。具体的には、循環路4の一端は、熱処理炉1のガス出口1aと接続され、他端は、熱処理炉1のガス入口1bと接続されている。
【0044】
本実施形態における熱処理システム10Bはさらに、圧縮気体を用いて、循環路4を介してガスを循環させるためのガス増幅器30を備えている。ガス増幅器30は、循環路4に設けられており、投入ガス量を、例えば2倍以上10倍以下の量に増幅して出力可能に構成されている。圧縮気体は、例えば、圧縮空気である。本実施形態では、熱処理炉1、循環路4およびガス増幅器30は、ヒーター等の加熱手段H3が設けられた空間内に設けられている。このため、耐熱性のある部材として、ファンの代わりにガス増幅器30が設けられている。ただし、循環路4に、送風部5、例えばファンを設けるようにしてもよい。
【0045】
本実施形態では、循環路4が反応部2として構成されている。すなわち、反応ガス供給部3は、第2の成分を含む反応ガスを循環路4に供給する。循環路4に供給された第2の成分は、熱処理炉1内の熱処理により発生した熱処理後ガスに含まれる第1の成分と反応し、第1の成分が低減した再生ガスが得られる。
【0046】
例えば、第1の成分はH2であり、第2の成分はO2である。この場合、循環路4において、第1の成分であるH2と、第2の成分であるO2とが反応して、第3の成分であるH2Oを含む再生ガスが得られる。
【0047】
センサ6は、循環路4の出口付近、すなわち、熱処理炉1のガス入口1bの近くに設けられている。本実施形態でも、センサ6は、再生ガスに含まれる第1の成分、第2の成分、および、第3の成分のうちの少なくとも1つの成分の有無および濃度のうちの少なくとも一方を検出する。
【0048】
ただし、センサ6は、循環路4の上流側、すなわち、反応ガス供給部3によって反応ガスが循環路4に供給される位置とガス増幅器30との間に設けられていてもよい。循環路4のうち、ガス増幅器30と熱処理炉1のガス入口1bとの間の部分にセンサ6を設けた場合、ガス増幅器30による圧縮空気を利用したガスの流れによって、センサ6によるガス検出精度が不安定になる場合がある。そのような場合には、反応ガス供給部3によって反応ガスが循環路4に供給される位置とガス増幅器30との間にセンサ6を設けることにより、センサ6によるガス検出精度を向上させることができる。
【0049】
また、反応ガス供給部3によって反応ガスが循環路4に供給される位置とガス増幅器30との間、および、ガス増幅器30と熱処理炉1のガス入口1bとの間のそれぞれにセンサ6を設けるようにしてもよい。その場合、制御部7は、2箇所に設けたセンサ6の検出結果に基づいて、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量を制御することができるので、より精度良く、反応部2に供給する反応ガスの流量を制御することができる。例えば、センサ6によってガスの濃度を検出する場合に、2つのセンサ6によって検出されるガス濃度の差分または平均値等に基づいて、反応ガス供給部3から反応部2に供給する反応ガスの流量を制御することが可能である。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。また、各実施形態において説明した特徴的な構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 熱処理炉
1a ガス出口
1b ガス入口
2 反応部
2a 導入口
2b 導出口
3 反応ガス供給部
4 循環路
5 送風部
6 センサ
7 制御部
10,10A,10B 熱処理システム
11 排気管
20 低減部
30 ガス増幅器