IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ EARTH CREATE株式会社の特許一覧

特開2022-15637河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物
<>
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図1
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図2
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図3
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図4
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図5
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図6
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図7
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図8
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図9
  • 特開-河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015637
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】河川管理施設又は海岸保全施設における上屋建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20220114BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220114BHJP
   E04B 7/04 20060101ALI20220114BHJP
   E04B 7/12 20060101ALI20220114BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20220114BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E04H1/12 A
E04B1/24 A
E04B7/04 B
E04B7/12
E04B1/343 U
E02B7/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118616
(22)【出願日】2020-07-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】518155269
【氏名又は名称】EARTH CREATE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】安本 敬一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲夫
(57)【要約】
【課題】河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる新しい構造による上屋建物を提供する。
【解決手段】河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる上屋建物は、底面に固定されて立てられ且つ前面、後面、右側面及び左側面を含む四方を囲む壁面を形成するアルミニウム合金製のそれぞれ前面ユニット、後面ユニット、右側面ユニット及び左側面ユニットと、両端が対向する前面ユニット及び後面ユニットに固定され且つ当該対向する前面ユニットと後面ユニット間に延びて設置される、トラス構造部を有するアルミニウム合金製の複数の梁部材と、梁部材の上に設置される屋根部材とを備え、梁部材は、左側面ユニットの内面に沿って前面ユニットと後面ユニットの左上端部間を延びる第1の梁部材と、右側面ユニットの内面に沿って前面ユニットと後面ユニットの右上端部間を延びる第2の梁部材とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる水門、樋門、樋管又は堰を含む所定設備を操作するための操作装置を収容する上屋建物において、
底面に固定されて立てられ且つ前面、後面、右側面及び左側面を含む四方を囲む壁面を形成するアルミニウム合金製のそれぞれ前面ユニット、後面ユニット、右側面ユニット及び左側面ユニットと、
両端が対向する前記前面ユニット及び前記後面ユニットに固定され且つ当該対向する前面ユニットと前記後面ユニット間に延びて設置される、トラス構造部を有するアルミニウム合金製の複数の梁部材と、
前記梁部材の上に設置される屋根部材とを備え、
前記梁部材は、前記左側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの左上端部間を延びる第1の梁部材と、前記右側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの右上端部間を延びる第2の梁部材とを有することを特徴とする上屋建物。
【請求項2】
前記梁部材は、アルミニウム合金製のフレームと、当該フレーム内にアルミニウム合金製の板片により形成される前記トラス構造部とを有することを特徴とする請求項1に記載の上屋建物。
【請求項3】
前記梁部材の前記フレームは、その上辺が前記屋根部材の傾斜に沿って傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の上屋建物。
【請求項4】
前記梁部材は、さらに、前記第1の梁部材と前記第2の梁部材との間で前記前面ユニットと前記後面ユニットの上端部間を延びる第3の梁部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の上屋建物。
【請求項5】
前記第1の梁部材と前記第2の梁部材の間隔は1500mm~2000mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の上屋建物。
【請求項6】
前記第1の梁部材と前記第3の梁部材の間隔または前記第2の梁部材と前記第3の梁部材の間隔は1500mm~2000mmであることを特徴とする請求項4における上屋建物。
【請求項7】
前記梁部材の高さ方向長さは400mmより短いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の上屋建物。
【請求項8】
前記屋根部材は垂木と折版とを有してなり、
前記梁部材間に前記垂木がわたされ、前記垂木の上に前記折版が設置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の上屋建物。
【請求項9】
前記垂木は、2つのアルミニウム合金製山形部材であり、前記山形部材の一方は前記折版に固定され、他方は前記梁部材に固定され、さらに、2つの前記山形部材はそれぞれの片面同士が重ね合わせられて固定されることを特徴とする請求項8に記載の上屋建物。
【請求項10】
前記前面ユニット、前記後面ユニット、前記左側面ユニット及び前記右側面ユニットの高さ方向長さは3000mm以上であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の上屋建物。
【請求項11】
底面に固定されて立てられ且つ前面、後面、右側面及び左側面を含む四方を囲む壁面を形成するアルミニウム合金製のそれぞれ前面ユニット、後面ユニット、右側面ユニット及び左側面ユニットと、
両端が対向する前記前面ユニット及び前記後面ユニットに固定され且つ当該対向する前面ユニットと前記後面ユニット間に延びて設置される、トラス構造部を有するアルミニウム合金製の複数の梁部材と、
前記梁部材の上に設置される屋根部材とを備え、
前記梁部材は、前記左側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの左上端部間を延びる第1の梁部材と、前記右側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの右上端部間を延びる第2の梁部材とを有することを特徴とする建築構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物に関し、特に、河川管理施設又は海岸保全施設における水門、樋門、樋管又は堰の操作台等を収容する上屋建物に関する。
【背景技術】
【0002】
河川管理施設は、河川法に基づき設置されるダム、堰、頭首工、水門、樋門、樋管などのゲート施設や排水機場、揚水機場、浄化機場などのポンプ施設を備えており、また、海岸保全施設は、海岸法に基づき設置される堤防、護岸、水門・陸閘などの施設を有する。このうち、水門や樋門などのゲート施設は、上下動により水路を開閉するゲート(扉)を備え、一般的に、そのゲートの開閉を操作する操作装置などを収容する上屋建物がゲート上方に設置される(特許文献1乃至4)。
【0003】
上屋建物は、例えばコンクリート製の底床上に建てられる建築構造物であって、上述したように、ゲートを開閉する操作装置や、各種制御装置、さらに、施設を管理するための機材を収容するために用いられる。
【0004】
図10は、上屋建物の組立施工手順を示す図である。上屋建物は、あらかじめ工場で生産したアルミニウム合金製の側壁部材(アルミユニット)を設置場所に搬入し(図10の施工手順4)、アルミユニットをクレーンで吊り上げ、上屋建物の側面として組立て据え付け設置する(図10の施工手順5、6、7)。そして、側壁部材の据え付け後に屋根部材を据え付ける(図10の施工手順8、9、10)。屋根についても、あらかじめ工場で生産された木製の屋根部材(木製ユニット)が設置場所に搬入され、組立作業者は、クレーンで吊り上げられた木製ユニットを所定位置に据え付けて組立作業を進め、屋根の取り付け後に、フレーム状の側壁部材に窓やパネルなどを取り付ける作業等を行い(図10の施工手順11)、組立てを完成させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-096541号公報
【特許文献2】登録実用新案第3123159号公報
【特許文献3】登録実用新案第3083704号公報
【特許文献4】登録実用新案第3024122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この上屋建物の側壁部材は、構造体としてアルミニウム合金製のフレームを用いているため、鋼部材よりも軽量であり、施工全体を通して足場を組むことなく比較的短期間で省力化した組立て作業が可能であるが、鋼部材と比較して構造体としての強度が低いことから、その強度の範囲内の重量で屋根を形成するため、屋根部は軽量の木製ユニットを用いて、それを側壁部の上に載せて組立てられる。屋根部の木製ユニットは、対向する側壁間にわたされる長さを有する木製フレームであって、屋根部自体の強度を確保するため、高さ方向長さが1500mm程度の比較的大きなトラス構造を有するフレーム体であり、且つその木製ユニットを、例えば450mm程度の狭い間隔で多数並べて設置する。このような木製ユニットによる屋根部は、比較的軽量であるためアルミニウム合金製の側壁部の強度の範囲内で屋根を形成することができるが、屋根部の構造が複雑となり、また、屋根部自体に比較的大きな高さを要してしまうため、上屋建物の室内空間高さや開口部の広さが制限され、十分に確保できないという課題がある。そのため、上屋建物内に搬入及び設置される施設管理用機材・装置の大きさ・高さに制限を受ける場合がありうる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる上屋建物において、新しい構造による上屋建物を提供することであって、特に、高い室内空間高さ及び広い有効開口を確保できる上屋建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の上屋建物は、河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる水門、樋門、樋管又は堰を含む所定設備を操作するための操作装置を収容する上屋建物において、底面に固定されて立てられ且つ前面、後面、右側面及び左側面を含む四方を囲む壁面を形成するアルミニウム合金製のそれぞれ前面ユニット、後面ユニット、右側面ユニット及び左側面ユニットと、両端が対向する前記前面ユニット及び前記後面ユニットに固定され且つ当該対向する前面ユニットと前記後面ユニット間に延びて設置される、トラス構造部を有するアルミニウム合金製の複数の梁部材と、前記梁部材の上に設置される屋根部材とを備え、前記梁部材は、前記左側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの左上端部間を延びる第1の梁部材と、前記右側面ユニットの内面に沿って前記前面ユニットと前記後面ユニットの右上端部間を延びる第2の梁部材とを有することを特徴とする。
【0009】
上記本発明の上屋建物は、好ましくは、さらに以下の特徴事項を備える。すなわち、前記梁部材は、アルミニウム合金製のフレームと、当該フレーム内にアルミニウム合金製の平板片により形成される前記トラス構造部とを有する。前記梁部材の前記フレームは、その上辺が前記屋根材の傾斜に沿って傾斜している。前記梁部材は、さらに、前記第1の梁部材と前記第2の梁部材との間で前記前面ユニットと前記後面ユニットの上端部間を延びる第3の梁部材を有する。前記第1の梁部材と前記第2の梁部材の間隔は1500mm~2000mmである。前記第1の梁部材と前記第3の梁部材の間隔または前記第2の梁部材と前記第3の梁部材の間隔は1500mm~2000mmである。前記梁部材の高さ方向長さは400mmより短い。前記屋根部材は垂木と折版を有してなり、前記梁部材間に前記垂木がわたされ、前記垂木の上に前記折版が設置される。前記垂木は、2つのアルミニウム合金製山形部材であり、前記山形部材の一方は前記折版屋根材に固定され、他方は前記梁部材に固定され、さらに、2つの前記山形部材はそれぞれの片面同士が重ね合わせられて固定される。前記前面ユニット、前記後面ユニット、前記左側面ユニット及び前記右側面ユニットの高さ方向長さは3000mm以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、河川管理施設又は海岸保全施設に設けられる上屋建物において、アルミニウム合金製の梁部材を、構造部材として、対向する壁ユニット間を支持するように配置することで、壁ユニットの高さをより高くすることができ、上部空間が広がった内部空間を有する上屋建物が実現する。屋根構造もシンプルとなり、上屋建物の組立て施工の短期化、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態における上屋建物の全体構成を示す図である。
図2図1の上屋建物の構造体部分を示す図であり、折版による屋根が設置された状態を示す。
図3図1の上屋建物の構造体部分を示す図であり、折版による屋根が設置されていない状態を示す。
図4図3の上屋建物の前面パネル全体を省略し、さらに背面パネル、右側面パネル、左側面パネルそれぞれの斜材を省略した図である。
図5】梁部材20の構成例を示す図である。
図6】梁部材20の別の構成例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における上屋建物の小屋伏図である。
図8】本発明の実施の形態における上屋建物の縦断面図(矩計図)である。
図9図8に示される領域Aの詳細であって、屋根部材30と梁部材20の取付構造を示す図である。
図10】上屋建物の組立施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の実施の形態について、具体的な図に基づいて説明する。
【0013】
本発明の上屋建物は、河川管理施設として設置される堰、頭首工、水門、樋門、樋管などのゲート施設や排水機場、揚水機場、浄化機場などのポンプ施設、さらには、海岸保全施設として設置される堤防、護岸、水門、陸閘などの施設を管理するため、それらの施設に付随して建設される建築構造物であり、特に、水門や樋門などのゲート施設における上屋建物は、上下動により水路を開閉するゲート(扉)の開閉を操作する操作装置などを収容するように、ゲートに付随して設置される。上屋建物は、施設内のコンクリート床上に固定されて建てられ、ゲートを開閉する操作装置や、各種制御装置、さらに、施設を管理するためのさまざまな機材を収容する。また、施設を管理する作業者の待機所としても利用される。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態における上屋建物の全体構成を示す図である。図2及び図3は、図1の上屋建物の構造体部分を示す図であり、図2は折版による屋根が設置された状態を示し、図3は折版による屋根が設置されていない状態を示す。図4は、図3の上屋建物の前面ユニット全体を省略し、さらに背面ユニット、右側面ユニット、左側面ユニットそれぞれの補強用斜材を省略した図である。
【0015】
上屋建物1は、底面2に固定されて立てられ且つ前面、後面、右側面及び左側面を含む四方を囲む壁面を形成するアルミニウム合金製のそれぞれ前面ユニット12、後面ユニット14、右側面ユニット16及び左側面ユニット18を備える。なお、前面ユニット12、後面ユニット14、右側面ユニット16及び左側面ユニット18を総称して壁ユニット10と称する。壁ユニット10は、基準サイズのアルミニウム合金製フレーム体を複数接続固定した壁パネルであり、各フレーム体は、補強用斜材、窓パネル、アルミニウム合金製の平板パネルなどを取り付け外壁を構成する。
【0016】
さらに、上屋建物1は、トラス構造部を有するアルミニウム合金製の複数の梁部材20を有し、複数の梁部材20は、上屋建物1の構造部材として、対向する前面ユニット12及び後面ユニット14にその両端が固定され且つ当該対向する前面ユニット12と後面ユニット14間に延びて設置される。梁部材20は、右側面ユニット16の内面に沿って前面ユニット12と後面ユニット14の右上端部間を延びる第1の梁部材20-1と、左側面ユニット18の内面に沿って前面ユニット12と後面ユニット14の左上端部間を延びる第2の梁部材20-2と、第1の梁部材20-1と第2の梁部材20-2との間の中間位置で前面ユニット12と後面ユニット14の上端部間を延びる第3の梁部材20-3を有する。中間に配置される第3の梁部材20-3は、上屋建物1の幅長さに対応して必要に応じて設けられ、上屋建物1の設計寸法上設けられない場合若しくは複数本設けられる場合がありうる。梁部材20は、後述するように、アルミニウム合金製のフレームと、当該フレーム内にアルミニウム合金製の平板片により連続する三角形状部を形成するトラス構造部(若しくはラチス構造部とも称する)とを有して構成され、梁部材20のフレームは、その上辺が屋根の傾斜に沿って傾斜して形成される。梁部材20は、トラス構造部を有するいわゆるラチス梁である。トラス構造部では、フレーム内に斜めに配置されるアルミニウム合金製の斜材(平板片)が連続する三角形又は山形の形状を形成する。トラス構造部は、アルミニウム合金製の斜材がフレームに直接取り付けられて固定される形態や、該斜材が所定の接続部材を介してフレームに取り付けられる形態などさまざまな取り付け形態を含む。
【0017】
そして、上屋建物1は、梁部材20の上に設置される屋根部材30とを備え、屋根部材30は、梁部材20間にわたされて配置される垂木32と、当該垂木32上に設置される折版34とを備える。垂木32は、断面アングル形状(山形形状)のアルミニウム合金製長尺部材であり、折版34は、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)の金属屋根材である。
【0018】
本発明の実施の形態における上屋建物1では、上述の通り、アルミニウム合金製の梁部材20を構造部材として用い、壁ユニット10の内側に収まるように配置される。それゆえに、アルミニウム合金製の壁ユニット10の高さを高くすることができる。すなわち、従来のように、梁部材を用いずに、屋根部材として比較的高さのある木製ユニットを載置する構成ではなく、壁ユニット10の内側にアルミニウム合金製の梁部材20を構造部材として配置する構成としたので、壁ユニット10の高さを従来よりも高くとることができるようになり、さらに、アルミニウム合金製の梁部材20は、その高さ方向長さがおよそ400mmより短く(好ましくは200mm~300mm程度)程度と短く、その配置間隔がおよそ1500mm~1800mm程度と広いため、上屋建物1の利用可能な内部空間をその高さ方向に拡張することができ、また、その間口(有効開口)を広げることもできる。具体的には、アルミニウム合金製の壁ユニット10の高さを、同一の強度において、従来の2500mm程度の高さから少なくとも3000mm程度若しくはそれより高い長さにまで伸ばすことができ、室内空間及び有効開口が拡張される。また、従来の高さのある木製ユニットを屋根部材として用いずに、垂木と折版による比較的薄いシンプルな屋根構造とすること、屋根部材の重量や上屋建物全体の高さも抑えられる。そして、上屋建物の組立て施工の短期化、コスト削減を図ることができる。
【0019】
図5は、梁部材20の構成を示す図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は斜視図である。梁部材20は、断面アングル形状(山形形状)のアルミニウム合金製のフレーム22を2つ背中合わせに重ね合わされて形成され、さらに、その2つのフレーム22の間に、トラス構造部を形成するアルミニウム合金製の平板片24(厚さ3mm程度)を挟み込んだ構造を有する。フレーム22及び平板片24はボルトなどの固定手段により互いに固定される。梁部材20をアルミニウム合金製のトラス構造部とすることで、従来の木製ユニットによる強度と同等の強度を得るために、梁部材20の高さを400mmより短いおよそ200mm~300mm程度に抑え、また、配置間隔を1500~2000mm程度にまで広げることができる。
【0020】
梁部材20のフレーム22は、その上辺が屋根の傾斜に沿って傾斜するように形成される。例えば、フレーム22の長さが3000mm~4000mm程度において、一端側の高さは300mm程度、他端側の高さは240mm程度となる傾斜が設けられる。梁部材20の上に屋根部材30を載せることで、屋根の傾斜が形成される。
【0021】
梁部材20は、対向する前面ユニット12及び後面ユニット14にその両端がボルトなどの固定手段で固定され、前面ユニット12と後面ユニット14間に延びて設置される。梁部材20は、少なくとも右側面ユニット16の内面に沿った前面ユニット12の右端位置と、左側面ユニット18の内面に沿った前面ユニット12の左端位置に設けられ、さらに、構造体として強度の確保の観点から必要に応じて左右両端の間の中間位置にも設置され、その設置間隔は、上述したように、例えば1500~2000mm程度である。梁部材20の設置間隔が広く、横幅も細いため、梁部材20の設置間隔間の天井高さまで室内空間を活用することができ、従来よりも背の高い装置や設備を搬入・設置することができる。
【0022】
図6は、梁部材20の別の構成例を示す図である。図6に示す梁部材20は、図5に示す梁部材20と比較して、トラス構造部が二重とされ、追加的なトラス構造部が反転した状態で平板片24により形成され、より強度の高い梁部材20が提供される。
【0023】
図7は、本発明の実施の形態における上屋建物の小屋伏図である。梁部材20は、右側面ユニット16の内面に沿って前面ユニット12と後面ユニット14の右上端部間を延びる第1の梁部材20-1と、左側面ユニット18の内面に沿って前面ユニット12と後面ユニット14の左上端部間を延びる第2の梁部材20-2と、第1の梁部材20-1と第2の梁部材20-2との間の中間位置で前面ユニット12と後面ユニット14の上端部間を延びる複数の第3の梁部材20-3を有する。梁部材20は、およそ1700mm~1800mmの間隔で配置される。
【0024】
図8は、本発明の実施の形態における上屋建物の縦断面図(矩計図)であり、図9は、図8に示される領域Aの詳細であって、屋根部材30と梁部材20の取付構造を示す図である。屋根部材30を構成する垂木32は、断面アングル形状(山形形状)の2つのアルミニウム合金製長尺部材32a、32bであって、折れ曲がり部分が直角の断面S字状となるようにそれぞれの片面同士を重ね合わせられる。重ね合わせられる面はボルトなどで固定される。また、垂木32である長尺部材32a、32bのもう一方の面は、それぞれ梁部材20のフレーム22及び折版34のタイトフレームにボルトなどの固定手段で固定される。この垂木32を介した固定により、折版34は、梁部材20上に載せられて設置される。図8には、壁ユニット10を支持するアルミニウム合金製の補強壁ユニットが示される。
【0025】
屋根部材30の設置については、垂木32の一方の長尺部材32aを梁部材20のフレーム22に取り付け、また、垂木32のもう一方の長尺部材32bを折版34に取り付けておき、屋根部材30を梁部材20に載せる際、長尺部材32bが取り付けられた状態の折版34をクレーンで吊り上げて長尺部材32aが取り付けられた状態のフレーム22上に載せ、長尺部材32a、32bの片面同士を合わせて固定する。なお、長尺部材32a、32bの片面同士の固定はボルトの取り外しにより解除可能であり、折版34の取り付け・取り外しが容易となり、例えば、組立て完了後において、建物内部に収容する装置や設備をクレーンで吊り上げて搬入・搬出する場合の作業も効率的に実施することができる。
【0026】
本発明の実施の形態における上屋建物は、図10に示した組立施工手順と実質的に同一である。すなわち、上屋建物1は、あらかじめ工場で生産したアルミニウム合金製の壁ユニット10、アルミニウム合金製の梁部材20、屋根部材30を設置場所に搬入し、壁ユニット10をクレーンで吊り上げ、上屋建物の側面として組立て据え付け設置する。そして、壁ユニット10の据え付け後に、梁部材20を取り付け、さらに屋根部材30を設置する。屋根の取り付け後に、仕上げ作業として壁ユニット10に窓やパネルなどを取り付ける外装材の取り付け作業等を行い、組立てを完成させる。本発明の上屋建物の建築組立てにおいて、足場の設置は不要である。
【0027】
上述した上屋建物は、河川管理施設・海岸保全施設などに設けられる建築構造物に最適であるが、例えば、倉庫、車庫、艇庫などのいわゆるシステム建築構造物を含む他の建築構造物にも適用可能である。
【0028】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1:上屋建物、10:壁ユニット、12:前面ユニット、14:後面ユニット、16:右側面ユニット、18:左側面ユニット、20:梁部材、22:フレーム、24:トラス構造部、30:屋根部材、32:垂木(長尺部材)、34:折版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10