(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156373
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F02D45/00 364A
F02D45/00 368A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060022
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】園田 毅
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌吾
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA02
3G384DA02
3G384DA22
3G384FA33Z
3G384FA39Z
3G384FA52Z
3G384FA54Z
(57)【要約】
【課題】車両に搭載された内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを適切に推定し、車両の性能を高く維持する。
【解決手段】車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、内燃機関の現在の運転領域に応じて内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、
ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立していない場合、その制限が加わっていない想定エンジントルクを求めるが、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合、その制限が加わった想定エンジントルクを求める内燃機関の制御装置を構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、
内燃機関の現在の運転領域に応じて内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、
ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立していない場合、その制限が加わっていない想定エンジントルクを求めるが、
ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合、その制限が加わった想定エンジントルクを求める内燃機関の制御装置。
【請求項2】
車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、
内燃機関の現在の運転領域に応じて内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、
ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合、その制限が加わった想定エンジントルクを求め、
なおかつ、前記条件が成立している場合に、ノッキングの発生を感知したことに起因して点火タイミングを遅角させる補正を行っているならば、その遅角補正量に応じて低減した想定エンジントルクを求める内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記条件が成立しエンジントルクに制限を加えている状態から同条件が成立せずエンジントルクに制限を加えない状態に遷移するとき、または、前記条件が成立せずエンジントルクに制限を加えていない状態から同条件が成立しエンジントルクに制限を加える状態に遷移するときに、想定エンジントルクをステップ的に急変させずに徐変させる請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の車両には、複数基の電子制御装置(Electronic Control Unit)が実装されている。その具体例として、燃料噴射及び火花点火を含め内燃機関の運転を制御するEFI(Electronic Fuel Injection)-ECUや、駆動系のトランスミッションを操作し制御するECU、アンチロックブレーキシステム(Anti-lock Braking System)または車両安定制御システム(Vehicle Stability Control)を制御するECU、車体に設置されたランプ(ライト)やワイパ等への通電を制御するボデーECU、車室内を空調するエアコンディショナを制御するECU、等が挙げられる。それらECUは、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して通信可能に接続しており、相互に必要な情報の授受を行い、車両全体の統御を実現している(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
EFI-ECUは、内燃機関の運転領域に応じて、気筒に充填された混合気に対する火花点火のタイミングを設定する。ベース点火タイミングは、当該運転領域におけるMBT(Minimum advance for Best Torque)と、当該運転領域においてノッキングが惹起されないと通常考えられる限界の点火タイミング(の進角量)との比較により定まる。低負荷ないし中負荷域では、点火タイミングをMBTまで進角させてもノッキングは起こらず、故にベース点火タイミングをMBTのタイミングとする。これに対し、高負荷域では、点火タイミングをMBTまで進角させるとノッキングを起こすリスクがあるので、ベース点火タイミングをMBTのタイミングよりも遅らせる必要がある。
【0004】
その上で、EFI-ECUは、気筒におけるノッキングの有無を判定し、その判定結果に応じて点火タイミングを調整する、いわゆるノックコントロールシステム(Knock Control System)の機能を発揮する。ノッキングを感知したときには、以後ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる。ノッキングを感知していないときには、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させて、内燃機関の出力及び燃費の向上を図る(例えば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-104552号公報
【特許文献2】特開2016-008578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関の運転制御を司るEFI-ECUは、気筒の燃焼室内で混合気を燃焼させた結果発生するであろうと想定されるエンジントルクの大きさを求める。そして、その想定エンジントルクを、他のECUに通知する。他のECUは、これをトランスミッションやVSC等の制御に援用する。
【0007】
原則として、想定エンジントルクは、内燃機関の運転領域に依存する。EFI-ECUのメモリには予め、運転領域[エンジン回転数,エンジン負荷率(即ち、アクセル開度、吸気圧、吸気量または燃料噴射量等)]と、当該運転領域の下での想定エンジントルクとの関係を規定したマップデータが格納されている。EFI-ECUは、現在の運転領域のパラメータをキーとして当該マップを検索し、想定エンジントルクを知得する。
【0008】
車両の運転者がアクセルペダルを踏んでおらず、エンジン回転数がある程度以上高いときには、気筒に対する燃料噴射を一時休止する燃料カットを実行して、燃料消費を抑制する。
図5に示すように、EFI-ECUは、燃料カットもエンジントルク制限も行っていない平常時(ステップS3)と、燃料カットの実行時(ステップS6またはS8)とで、想定エンジントルクを推定するべく参照するマップデータを切り替える。
【0009】
従前の制御では、KCSによる点火タイミングの調整を考慮に入れずにマップデータを策定し、想定エンジントルクを求めるようにしている。KSCが作動して点火タイミングが微調整されると、実エンジントルクが上下動するが、その振動をそのまま想定エンジントルク値として他のECUに伝達すると、トランスミッションの制御(特に、変速比または変速段位、トルクコンバータのロックアップの可否)等に瞬時的な変動が生じ、車両のドライバビリティ(または、ドライブフィーリング)の低下を招く可能性があるからである。
【0010】
EFI-ECUは、内燃機関の冷却水温が顕著に高くオーバヒートが懸念されるときや、車輪が空転しているとき等に、気筒に充填される吸気量及び燃料噴射量(の上限)を引き下げたり点火タイミングを大きく遅角したりして、エンジントルクに制限を加え、内燃機関のオーバヒートや車輪の空転を回避する。その帰結として、KCSによるノッキングを鎮圧する目的での点火タイミングの遅角補正と、内燃機関のオーバヒート等を回避する目的でのエンジントルクの制限とが同時期に重なることがあり(ノッキングの如き異常燃焼は、燃焼室の温度が高まるほど発生しやすくなる)、そのために、下掲の問題のうち何れか少なくとも一つを生起するおそれがあった。
・EFI-ECUが求める想定エンジントルクと、実際に内燃機関が出力するエンジントルクとの間に乖離が生じる。つまり、点火タイミングの遅角が加重される結果、想定エンジントルクに比して実際のエンジントルクが小さくなる。そして、他のECUに精確なエンジントルクの値が伝達されないことにより、トランスミッションの制御等が最適化されず、車両のドライバビリティや実用燃費性能が低下する
・想定エンジントルクを求めるにあたり参照するマップデータが切り替わる瞬間、想定エンジントルクがステップ的に変動し、トランスミッションの制御等に急変が生じて、車両のドライバビリティや実用燃費性能が低下する
本発明は、以上の点に初めて着目してなされたものであり、想定エンジントルクの大きさを適切に推定し、車両の性能を高く維持することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、内燃機関の現在の運転領域に応じて内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、
ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立していない場合、その制限が加わっていない想定エンジントルクを求めるが、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合、その制限が加わった想定エンジントルクを求める内燃機関の制御装置を構成した。
【0012】
並びに、本発明では、車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、内燃機関の現在の運転領域に応じて内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合、その制限が加わった想定エンジントルクを求め、なおかつ、前記条件が成立している場合に、ノッキングの発生を感知したことに起因して点火タイミングを遅角させる補正を行っているならば、その遅角補正量に応じて低減した想定エンジントルクを求める内燃機関の制御装置を構成した。
【0013】
加えて、前記条件が成立しエンジントルクに制限を加えている状態から同条件が成立せずエンジントルクに制限を加えない状態に遷移するとき、または、前記条件が成立せずエンジントルクに制限を加えていない状態から同条件が成立しエンジントルクに制限を加える状態に遷移するときには、想定エンジントルクをステップ的に急変させずに徐変させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両に搭載された内燃機関が出力すると想定されるエンジントルクの大きさを適切に推定し、車両の性能を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。
【
図2】同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
【
図3】同実施形態の制御装置が推定する想定エンジントルクの推移を示すタイミング図。
【
図4】同実施形態の変形例において制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
【
図5】従前の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関100の概要を示す。本実施形態の内燃機関100は、ポート噴射式の4ストローク火花点火エンジンであり、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)を包有する。各気筒1の吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0017】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁である電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0018】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0019】
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)に接続している。
【0020】
内燃機関100の出力軸であるクランクシャフトと車両の駆動輪との間に介在するトランスミッション(図示せず)は、既知のトルクコンバータ及び自動変速機(有段自動変速機(Automatic Transmission)または無段変速機(Continuously Variable Transmission))を用いたものであってもよく、手動変速機(Manual Transmission)を用いたものであってもよい。
【0021】
内燃機関100の制御装置たるEFI-ECU0は、CPU(Central Processing Unit)01、RAM(Random Access Memory)02、フラッシュメモリを含むROM(Read Only Memory)03、入力インタフェース04及び出力インタフェース05等を有したマイクロコンピュータシステムである。CPU01により実行されるべきプログラムはROM03に格納されており、プログラムの実行の際にはROM03からRAM02に読み込まれ、CPU01によって解読される。EFI-ECU0は、プログラムに従ってハードウェア資源を作動させ、内燃機関100の運転を制御する。
【0022】
EFI-ECU0の入力インタフェース04には、例えば、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関100のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度(いわば、内燃機関100に対して要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)を検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(スロットルバルブ32の下流、特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関100の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号f、気筒1を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号g、車両の運転者が操作するシフトレバー(または、セレクタレバー)の位置を検出するシフトポジションスイッチから出力されるシフトポジション信号h等が入力される。
【0023】
EFI-ECU0の出力インタフェース05からは、点火プラグ12に付随するイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
【0024】
EFI-ECU0は、運転パラメータを演算して内燃機関100の運転を制御する。EFI-ECU0は、制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に吸入される空気(新気)量を推算する。そして、吸入空気量に見合った(理論空燃比またはその近傍の目標空燃比を達成できるような)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量、EGRガス分圧)等といった各種運転パラメータを決定する。EFI-ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0025】
EFI-ECU0は、車両に敷設されたCAN等の電気通信回線のバスに接続しており、他のECU、即ち車両の駆動系のトランスミッションを制御するECU5や、ABSまたはVSCを制御するECU6、車体に設置されたランプやワイパ等への通電を制御するボデーECU7、車室内を空調するエアコンディショナを制御するECU8等との間で、相互にデータ通信を行うことが可能である。
【0026】
内燃機関100の運転制御を司るEFI-ECU0は、気筒1に充填された混合気への火花点火のタイミングを決定するにあたり、現在の内燃機関100の運転領域に応じてベース点火タイミングを設定し、そのベース点火タイミングに、気筒1の燃焼室内でのノッキングの発生の有無に応じた遅角補正量を加える。
【0027】
ベース点火タイミングは、人の聴覚に認識される程度のノッキングが起こる可能性が小さく、それでいて内燃機関100の熱機械変換効率を最大化できるようなタイミングに定められる。アクセル開度が大きくない部分負荷領域におけるベース点火タイミングは、MBTまたはその近傍のタイミングとなる。アクセル開度が全開または全開に近い全負荷ないし高負荷領域におけるベース点火タイミングは、MBTよりも遅れる。EFI-ECU0のRAM02またはROM03には予め、内燃機関100の運転領域を示すパラメータ[エンジン回転数,エンジン負荷率(即ち、アクセル開度、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34の吸気圧、吸気量または燃料噴射量等)]と、ベース点火タイミングとの関係を規定したマップデータが格納されている。EFI-ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域のパラメータをキーとしてマップデータを検索し、設定するべきベース点火タイミングを得る。因みに、マップデータを検索するキーとなる吸気圧は、現在の大気圧の高低による補正を加味したものであることがある
その上で、EFI-ECU0は、KCSの機能として、ノックセンサの出力信号gを参照して各気筒1におけるノッキングの有無を判定し、その判定結果に応じた点火タイミングの調整を行うという制御を実施する。EFI-ECU0は、気筒1またはシリンダブロックの振動の強度を示す振動信号gをサンプリングし、ノッキングに起因して生じる振動が持つ周波数成分(例えば、7kHzないし15kHzの成分)を通過させつつ、この振動以外の成分を減衰させるバンドパスフィルタに入力する。しかして、バンドパスフィルタで処理した後の信号gの値をノック判定値と比較し、前者が後者を上回ったならば、膨脹行程を迎えた気筒1でノッキングが起こったと判定する。前者が後者以下であるならば、当該気筒1でノッキングは起こっていないと判定する。
【0028】
気筒1におけるノッキングの発生を感知したときには、以後ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、換言すればベース点火タイミングに加える遅角補正量を徐々に増大させる。一方で、ノッキングの発生を感知していないときには、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加える遅角補正量を減少させて、内燃機関100の出力及び燃費性能の向上を図る。ノッキングの有無の判定及び点火タイミングの補正は、各気筒1毎に個別に行うことが可能である。
【0029】
また、EFI-ECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、気筒1への燃料供給を一時的に中断する燃料カットを実行する。EFI-ECU0は、少なくとも、内燃機関100の冷却水温が既に所定の下限値以上に上昇しており、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり、かつ現在のエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上に高いことを以て、燃料カット条件が成立したと判断する。
【0030】
燃料カット条件が成立したとしても、即時にインジェクタ11からの燃料噴射を停止するとは限らない。燃料カットに起因するトルクショックを抑止または軽減するべく、EFI-ECU0は、燃料カット条件の成立後、遅延期間の経過またはエンジントルクの低下を待って、はじめて燃料噴射を停止する。遅延期間中には、気筒1に充填された混合気に対する火花点火タイミングをベース点火タイミングよりも遅角したり、内燃機関100が有する複数の気筒1のうちの一部において燃料噴射(及び、燃料の着火燃焼)を休止したりして、積極的にエンジントルクを低下させることがある。
【0031】
燃料カット条件の成立後、所定の燃料カット終了条件が成立したならば、燃料カットを終了することとし、インジェクタ11からの燃料噴射を再開する。EFI-ECU0は、アクセル開度が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数を下回るまで低下した、等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したと判断する。
【0032】
なお、EFI-ECU0は、気筒1の燃焼室内でノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合に、内燃機関100の出力するエンジントルク(または、その上限)を低減するような制限を加えることがある。所定の条件とは、例えば、内燃機関100の冷却水温が所定の上限値を超えて顕著に高温化していることであったり、EFI-ECU0がVSE-ECU6から現在車輪が空転している旨の通知を受信していることであったりする。エンジントルク制限時には、スロットルバルブ32の開度を平常時よりも縮小し(または、開度の上限を平常時よりも引き下げ)たり、インジェクタ11から噴射する燃料の量を平常時よりも削減し(または、燃料噴射量の上限を平常時よりも引き下げ)たり、(ノックセンサの出力信号gを参照するKCSによる遅角補正とは別に)点火タイミングを平常時よりも大きく遅角したりすることのうちの、少なくとも一つを実行する。
【0033】
本実施形態のEFI-ECU0は、内燃機関100が出力することになると想定されるエンジントルクの大きさを推定する。この想定エンジントルクは、内燃機関100が出力するべきエンジントルクの目標値と捉えることもできる。想定エンジントルクは、EFI-ECU0が操作するスロットルバルブ32の開度、ひいては気筒1に吸入される空気量や、インジェクタ11から気筒1に対する燃料噴射量、点火タイミング等に影響を及ぼし得る。運転者によるアクセルペダルの踏込量に基づく要求エンジントルクと、想定エンジントルクとの間に差がある場合、その差を縮小するように(これより以降の想定エンジントルクが要求エンジントルクに近づいてゆくように)スロットルバルブ32の開度、燃料噴射量、及び/または、点火タイミングを調整することになる。
【0034】
並びに、EFI-ECU0は、想定エンジントルクの値を、他のECU5、6、7、8に通知する。これを受信した他のECU5、6、7、8は、想定エンジントルクの多寡に応じて、車両の駆動系のトランスミッションが具現する変速比または変速段位、トルクコンバータのロックアップの可否、内燃機関100のクランクシャフトに従動して稼働する冷媒圧縮用コンプレッサの出力等を調整する。
【0035】
図2または
図4に、本実施形態のEFI-ECU0による想定エンジントルクの算定の手順を示している。EFI-ECU0は、現状燃料カットを実行しておらず(ステップS1)、冷却水温の高温化や車輪の空転等といったエンジントルク制限を実行するべき事情も生じていない(ステップS2)平常時、現在の内燃機関100の運転領域及び混合気への火花点火タイミング等を基に、内燃機関100が出力すると想定されるエンジントルクを求める。
【0036】
EFI-ECU0のRAM02またはROM03には予め、内燃機関100の運転領域を示すパラメータ[エンジン回転数,エンジン負荷率(即ち、吸気圧等)]と、平常時の想定エンジントルクの基本量との関係を規定したマップデータが格納されている。EFI-ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域のパラメータをキーとして当該マップデータを検索し、想定エンジントルクの基本量を得る(ステップS3)。因みに、マップデータを検索するキーとなる吸気圧は、現在の大気圧の高低による補正を加味したものであることがある。
【0037】
さらに、
図4に示すように、EFI-ECU0が、上記の想定エンジントルクの基本量に、現在の火花点火タイミングに応じた熱機械変換効率を反映させるための修正を加える(ステップS4)こととしてもよい。ここに言う点火タイミングは、KCSによる遅角補正が加味されたものであることがある。熱機械変換効率は、点火タイミングがMBTから遅角するほど低下する。それ故、ステップS4にて、EFI-ECU0は、現在の点火タイミングの、現在の内燃機関100の運転領域に対応するベース点火タイミングまたはMBTからの遅角量が多いほど、想定エンジントルクの基本量からトルクの値を割り引くか減量して、最終的な想定エンジントルクを算定する。
【0038】
しかしながら、当該ステップS4は必須ではなく、寧ろそのような修正を加えない方がよいかもしれない。と言うのも、KSCが作動して点火タイミングが微調整されると、内燃機関100が出力する実エンジントルクが上下動することになるが、その振動をそのまま想定エンジントルク値として他のECU5、6、7、8に伝達すると、トランスミッション等の制御に瞬時的な変動が生じ、車両のドライバビリティの低下を招く可能性があるからである。
【0039】
燃料カットを実行している最中であっても(ステップS1)、EFI-ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域及び混合気への火花点火タイミング等を基に、内燃機関100が出力すると想定されるエンジントルクを求める。
【0040】
EFI-ECU0のRAM02またはROM03には予め、内燃機関100の運転領域を示すパラメータと、燃料カット時の想定エンジントルクの基本量との関係を規定したマップデータが格納されている。このマップデータは、平常時のマップデータとは別に策定されている。のみならず、現在内燃機関100の全ての気筒1で燃料カットを実行しているか、一部の気筒1に限り燃料カットを実行しているかによって(ステップS5)、参照するマップデータが異なる(ステップS6またはS8)。当然ながら、全ての気筒1で燃料カットを実行しているときには、内燃機関100の出力するエンジントルクが0または0に近くなる。EFI-ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域のパラメータをキーとして当該マップデータを検索し、想定エンジントルクの基本量を得る(ステップS6またはS8)。マップデータを検索するキーとなる吸気圧は、現在の大気圧の高低による補正を加味したものであることがある。
【0041】
燃料カットの実行中も、
図4に示しているように、EFI-ECU0が、想定エンジントルクの基本量に、現在の火花点火タイミングに応じた熱機械変換効率を反映させるための修正を加える(ステップS7)こととしてもよい。ここに言う点火タイミングは、KCSによる遅角補正が加味されたものであることがある。ステップS7にて、EFI-ECU0は、現在の点火タイミングの、現在の内燃機関100の運転領域に対応するベース点火タイミングまたはMBTからの遅角量が多いほど、想定エンジントルクの基本量からトルクの値を割り引くか減量して、最終的な想定エンジントルクを算定する。
【0042】
但し、ステップS4と同様、当該ステップS7は必須ではなく、寧ろそのような修正を加えない方がよいかもしれない。また、全ての気筒1で燃料カットを実行している(ステップS5)ときには、想定エンジントルクの算出のために点火タイミングを反映させる必要がない。そもそも、燃料カット中の気筒1では、点火プラグ12による火花放電を行っていない可能性がある(点火プラグ12の保温を目的として、燃料カット中にも火花放電を続行することはある)。
【0043】
翻って、EFI-ECU0は、冷却水温の高温化や車輪の空転等のエンジントルク制限を実行するべき所定の条件が成立している場合(ステップS2)、平常時に比して内燃機関100の出力するエンジントルク(または、その上限)を低減するように制限する。それとともに、現在の内燃機関100の運転領域等を基に、内燃機関100が出力すると想定されるエンジントルクを求める。
【0044】
EFI-ECU0のRAM02またはROM03には予め、内燃機関100の運転領域を示すパラメータと、エンジントルク制限時の想定エンジントルクとの関係を規定したマップデータが格納されている。このマップデータは、平常時のマップデータ及び燃料カット時のマップデータとは別に策定されている。運転領域[エンジン回転数,エンジン負荷率(即ち、吸気圧等)]が同等であるとして、KCSによる点火タイミングの遅角補正分を加味しなければ、エンジントルク制限時のエンジントルクは平常時のエンジントルク(の基本量)以下となる。EFI-ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域のパラメータをキーとして当該マップデータを検索し、想定エンジントルクを得る(ステップS9)。マップデータを検索するキーとなる吸気圧は、現在の大気圧の高低による補正を加味したものであることがある。
【0045】
尤も、この場合においては、KCSによる点火タイミングの遅角補正に伴うエンジントルクの低減に、さらにエンジントルク制限が加重される可能性がある。よって、エンジントルク制限時、そのときの火花点火タイミングに応じて、想定エンジントルクに修正を加えることが望ましい。従って、
図2または
図4に示すように、EFI-ECU0は、想定エンジントルクの基本量に、現在の火花点火タイミングに応じた熱機械変換効率を反映させるための修正を加える(ステップS10)。ここに言う点火タイミングは、KCSによる遅角補正が加味されたものであることがある。EFI-ECU0は、現在の点火タイミングの、現在の内燃機関100の運転領域に対応するベース点火タイミングまたはMBTからの遅角量が多いほど、想定エンジントルクの基本量からトルクの値を割り引くか減量して、最終的な想定エンジントルクを算定する。
【0046】
無論、エンジントルク制限を実行している(ステップS2)が、ノッキングの発生を感知したことに起因してKCSによる点火タイミングの遅角補正を行っていない(即ち、KCSによる点火タイミングの遅角補正量が所定値(0または0に近い値であることがある)未満である)ときには、専ら上記のマップデータ(ステップS9)のみから想定エンジントルクを求めることが許される。要するに、現在の火花点火タイミングに応じた熱機械変換効率を反映させる修正(ステップS10)を加える必要がない。
【0047】
なお、エンジントルク制限を実行するべき所定の条件が成立しているとしても(ステップS2)、ノッキングの発生を感知したことに起因して点火タイミングの遅角補正を行っている(即ち、KCSによる点火タイミングの遅角補正量が所定値以上である)ときには、敢えてエンジントルク制限を実行せず、かつ平常時と同様にして想定エンジントルクを求める(ステップS3、S4)ようにしてもよい。つまり、エンジントルク制限時のマップデータではなく、平常時のマップデータを参照して想定エンジントルクの基本量を得、それを現在の点火タイミングに応じて修正して、最終的な想定エンジントルクを算定する。これは、エンジントルク制限をキャンセルし、KCSによる点火タイミングの遅角補正のみを行って、内燃機関100のオーバーヒートや車輪の空転を回避しようとすることを意味する。
【0048】
想定エンジントルクを算定したEFI-ECU0は、そのエンジントルク値をCAN等の電気通信回線を介して他のECU5、6、7、8に送信する。
【0049】
本実施形態のEFI-ECU0は、平常時(ステップS3)、燃料カット時(ステップS6またはS8)、エンジントルク制限時(ステップS9)の各々で、想定エンジントルクを求めるために参照するマップデータを切り替える。従って、燃料カットを実行していない状態と実行する状態との間で遷移するときや、エンジントルク制限を実行していない状態と実行する状態との間で遷移するときに、算出する想定エンジントルクの値がステップ的に急変する可能性が生じる。EFI―ECU0から他のECU5、6、7、8に通知する想定エンジントルクの値が急変することは、駆動系のトランスミッションが具現する変速比の急変等を招くことに繋がるため、好ましくない。
【0050】
そこで、本実施形態のEFI-ECU0は、燃料カットを実行していない状態と実行する状態との間で遷移するとき、及び/または、エンジントルク制限を実行していない状態と実行する状態との間で遷移するときに、想定エンジントルクの値を徐々に変化させるようになまし処理(または、ローパスフィルタ処理)する。
【0051】
その模様を、
図3に例示している。
図3中、時点t
1以前は平常の運転状態にあり、時点t
1にてエンジントルク制限(または、燃料カット)を実行開始し、時点t
2にてそのエンジントルク制限(または、燃料カット)を終了して、以後は平常の運転状態に復帰する。破線は、EFI―ECU0がマップデータを参照して求めた、なまし処理を加えていない想定エンジントルクの推移を表しており、実線は、それになまし処理を加えた想定エンジントルクの推移を表している。前者がステップ的に変動しているのに対し、後者はより緩やかに変化しながら前者の値に収束してゆく。EFI-ECU0は、実線で描画しているように徐変する想定エンジントルクの値を、他のECU5、6、7、8に通知する。
【0052】
状態が遷移する時点t1、t2後の、想定エンジントルクを徐変させる期間の長さは、例えば0.5秒ないし1秒程度である。状態が遷移した時点t1、t2の直後の時期は、想定エンジントルクの単位時間または単位演算サイクルあたりの変化量、即ち減少量または増加量の絶対値を大きくとる。そして、当該時点t1、t2から時間が経過するにつれて、単位時間または単位演算サイクルあたりの変化量をより小さくしてゆく。
【0053】
想定エンジントルクの単位時間または単位演算サイクルあたりの変化量を、そのときの想定エンジントルクと、内燃機関100が現に出力している実際のエンジントルクとの偏差に応じて調整することもあり得る。その場合には、想定エンジントルクと実エンジントルクとの偏差の絶対値が大きいほど、想定エンジントルクの単位時間または単位演算サイクルあたりの変化量の絶対値を大きくする。EFI-ECU0にあっては、実エンジントルクを、実際の気筒1への吸入空気量及び燃料噴射量から、既知の手法に則って推算することができる。必要であれば、エンジン回転数(気筒1内を往復動するピストンの運動速度)をも加味して、実エンジントルクを推算してよい。
【0054】
本実施形態では、車両に搭載される内燃機関100を制御する制御装置0であって、内燃機関100が出力することになると想定されるエンジントルクの大きさを求めるにあたり、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立していない場合、その制限が加わっていない想定エンジントルクを求める(ステップS3)が、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合(ステップS2)、その制限が加わった想定エンジントルクを求める(ステップS9)内燃機関の制御装置100を構成した。
【0055】
加えて、本制御装置0は、ノッキングの発生を感知したこと以外の、エンジントルクを制限するべき所定の条件が成立した場合(ステップS2)、その制限が加わった想定エンジントルクを求め(ステップS9)、なおかつ、前記条件が成立している場合に、ノッキングの発生を感知したことに起因して点火タイミングを遅角させる補正を行っているならば、その遅角補正量に応じて低減した想定エンジントルクを求める(ステップS10)ものである。
【0056】
しかも、本制御装置0は、前記条件が成立しエンジントルクに制限を加えている状態(ステップS9)から同条件が成立せずエンジントルクに制限を加えない状態(ステップS3)に遷移するとき、または、前記条件が成立せずエンジントルクに制限を加えていない状態(ステップS3)から同条件が成立しエンジントルクに制限を加える状態(ステップS9)に遷移するときに、
図3に示しているように、想定エンジントルクをステップ的に急変させずに徐変させる。
【0057】
本制御装置0は、KSCの働きにより点火タイミングを遅角補正しているときに、その遅角補正による熱機械変換効率の低下を考慮に入れて、より精確な想定エンジントルクを求める(ステップS3及びS4、S6及びS7、または、S9及びS10)ことができる。よって、想定エンジントルクと実エンジントルクとの乖離が縮小し、他のECU5、6、7、8による制御、典型的にはトランスミッションの変速比やトルクコンバータのロックアップの制御等が最適化される。結果、車両のドライバビリティ及び実用燃費性能を高く保つことが可能となる。
【0058】
冷却水温の高温化や車輪の空転等といった、エンジントルク制限を実行するべき条件が成立している場合であっても(ステップS2)、KCSの働きにより既に点火タイミングをある程度以上遅角補正しているときには、エンジントルク制限を実行せずにキャンセルして構わない。点火タイミングの遅角補正に伴ってエンジントルクが低減しているところに、さらなるエンジントルク制限が加重されることが避けられるため、車両が常時必要な加速性能を発揮できるようになる。車両の発進や加速のもたつきが緩和され、不満を感じた運転者がアクセルペダルを強く踏み込んで燃料消費量が不当に増加することも抑えられる。のみならず、エンジントルク制限を実行していないときの想定エンジントルク(ステップS3及び
図4)と、エンジントルク制限を実行しているときの想定エンジントルク(ステップS9)との落差がより小さくなる。これにより、エンジントルク制限を実行していない状態から実行する状態へと遷移する際、あるいは逆に遷移する際に、トランスミッションの変速比等が急変することが回避される。
【0059】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100…内燃機関
1…気筒
11…インジェクタ
12…点火プラグ
3…吸気通路
32…スロットルバルブ
0…内燃機関の制御装置(EFI-ECU)
b…クランク角信号
c…アクセル開度信号
d…吸気温・吸気圧信号
e…冷却水温信号
f…大気圧信号
g…ノックセンサの出力信号
i…点火信号
j…燃料噴射信号
k…スロットルバルブの開度操作信号