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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156377
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20221006BHJP
   F15B 21/041 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B25J19/00 G
F15B21/041
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060030
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 雅広
(72)【発明者】
【氏名】梅村 哲央
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】辰野 仁嗣
【テーマコード(参考)】
3C707
3H082
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707CY13
3C707CY24
3C707HS21
3C707HT39
3C707LV22
3H082AA12
3H082BB03
3H082CC02
3H082DA09
3H082EE20
(57)【要約】
【課題】ロボットアームが不自然な動作を行なうのを抑制しつつ、バルブ内の異物を排出する。
【解決手段】少なくとも1つの関節、複数のリンク、流体の供給を受けて作動すると共に関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる少なくとも1つの人工筋肉を有するロボットアームと、人工筋肉に流体を供給するバルブを有する流体供給装置と、を備えるロボット装置において、流体供給装置により人工筋肉に流体を充填した後で且つロボットアームが動作していないときに、バルブ内の異物を排出するための異物排出制御を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの関節、複数のリンク、流体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された2つの前記リンクを相対的に回動させる少なくとも1つの人工筋肉を有するロボットアームと、
前記人工筋肉に前記流体を供給するバルブを有する流体供給装置と、
を備えるロボット装置であって、
前記流体供給装置により前記人工筋肉に前記流体を充填した後で且つ前記ロボットアームが動作していないときに、前記バルブ内の異物を排出するための異物排出制御を実行する制御装置、
を備えるロボット装置。
【請求項2】
請求項1記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、前記ロボットアームの動作開始前で且つ前記ロボットアームの姿勢が保持されているときに、前記異物排出制御を実行する、
ロボット装置。
【請求項3】
請求項2記載のロボット装置であって、
前記ロボットアームの姿勢を保持するための姿勢保持装置を更に備え、
前記制御装置は、前記姿勢保持装置により前記ロボットアームの姿勢が保持されているときに、前記異物排出制御を実行する、
ロボット装置。
【請求項4】
請求項2記載のロボット装置であって、
前記制御装置は、外部からの力により前記ロボットアームの姿勢が保持されているときに、前記異物排出制御を実行する、
ロボット装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のうちの何れか1つの請求項に記載のロボット装置であって、
前記バルブは、入力ポートおよび出力ポートを有するスリーブ、前記スリーブ内に摺動自在に配置されるスプール、前記バルブの指令圧に基づいて前記スリーブ内で前記スプールを移動させる電磁部を有し、
前記制御装置は、前記異物排出制御として、前記バルブの出力圧の変動量が値0を含む許容範囲内で収まるように前記指令圧を変動させる、
ロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両端部が栓体で閉じられたゴムチューブと、ゴムチューブを覆う網体と、を有する2つの人工筋肉(ゴム人工筋)を備えるロボット装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このロボット装置は、2つの人工筋肉に加えて、基台と、支持部材を介して基台により支持されたプーリと、プーリに固定されたアームと、プーリの回転中立に対して両側に位置するように基台に取り付けられると共に人工筋肉の一端がそれぞれ連結される2つの係止ブラケットと、2つの人工筋肉の他端に連結されると共にプーリに巻き掛けられるロープとを備える。また、各人工筋肉の出入口は、導電性作動液を圧送する液圧源にバルブを介して接続されている。したがって、各人工筋肉は、出入口に作動液が流入することにより、軸方向に収縮しながら径方向に膨張し、出入口から作動液が流出することにより、径方向に収縮しながら軸方向に伸長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-216691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたロボット装置では、バルブ内に異物が入り込む場合がある。バルブが異物を噛み込むと、バルブから指令圧に応じた油圧を出力できなくなる懸念があり、バルブ内の異物を排出する必要があるものの、上述のロボット装置には、このことについて何ら開示されていない。バルブ内の異物を排出するための制御を実行するタイミングによっては、関節を介して連結された2つのリンクを相対的に回動させる少なくとも1つの人工筋肉を有するロボットアームが不自然な動作を行なう可能性がある。
【0005】
本開示のロボット装置は、ロボットアームが不自然な動作を行なうのを抑制しつつ、バルブ内の異物を排出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボット装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のロボット装置は、少なくとも1つの関節、複数のリンク、流体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された2つの前記リンクを相対的に回動させる少なくとも1つの人工筋肉を有するロボットアームと、前記人工筋肉に前記流体を供給するバルブを有する流体供給装置と、を備えるロボット装置であって、前記流体供給装置により前記人工筋肉に前記流体を充填した後で且つ前記ロボットアームが動作していないときに、前記バルブ内の異物を排出するための異物排出制御を実行する制御装置を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示のロボット装置では、流体供給装置により人工筋肉に流体を充填した後で且つロボットアームが動作していないときに、バルブ内の異物を排出するための異物排出制御を実行する。これにより、バルブ内に異物が入り込んだときに、ロボットアームが不自然な動作を行なうのを抑制しつつ、バルブ内の異物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
図2】本開示のロボット装置を示す拡大図である。
図3】本開示のロボット装置のロック機構を示す断面図である。
図4】本開示のロボット装置の流体供給装置を示す系統図である。
図5】ロボット装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】異物排出制御の際のリニアソレノイドバルブの指令圧、出力圧、スプールのストローク量の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、流体供給装置10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な、いわゆる無人搬送車(AGV)である搬送台車20に搭載される。ただし、ロボット装置1は、搬送台車20に搭載されるものに限られず、予め定められた設置箇所に定置されてもよい。
【0012】
ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の流体アクチュエータM1,M2,M3,M4,M5,M6と、先端側のアーム3に取り付けられる把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ロボットアーム2のハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(図4参照)により制御される。また、流体供給装置10は、制御装置100により制御されて各流体アクチュエータM1-M6に流体(作動流体)としての作動油(流体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(流体圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0013】
ロボットアーム2の各流体アクチュエータM1-M6は、図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(流体供給装置10側、図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような流体アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給してチューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0014】
図1および図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も流体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、流体供給装置10側の2つのアーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した流体アクチュエータM1の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1に対応した流体アクチュエータM2の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0015】
また、各連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM1またはM3の先端側(手先側)の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM2またはM4の先端側(手先側)の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM3またはM5の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM4またはM6の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0016】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、流体アクチュエータM1-M6のうちの対応する2つがアーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される流体アクチュエータM1,M3,M5は、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの流体アクチュエータM2,M4,M6は、第1の人工筋肉と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉(他方の拮抗筋)を構成する。
【0017】
ただし、第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上(同数)の流体アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(2つ)の流体アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元とが異なっていてもよい。
【0018】
また、本実施形態において、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、流体供給管としての複数のホースH(図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する流体アクチュエータMの基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各流体アクチュエータMのチューブT内には、ホースHを介して流体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0019】
従って、制御装置100により流体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、互いに拮抗するように配置された2つの流体アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等とは、チューブTが自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として流体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。
【0020】
図3に示すように、ロボット装置1の関節J1は、関節軸Axと、支持部材5の軸受保持部5aにより保持されると共に関節軸Axを回転自在に支持する軸受Brとを含む。関節軸Axの一端(図3における右端)は、関節J1に対応したアーム3(2つのリンクの一方)にスプライン嵌合部を介して固定(連結)される。また、関節軸Axの他端(図3における左端)は、支持部材5(2つのリンクの他方)により保持された軸受Brのインナーレースからアーム3とは反対側に突出する。同様に、他の関節J2,J3も、対応する2つのアーム3の一方に固定される図示しない関節軸と、対応する2つのアーム3の他方により保持されると共に関節軸を回転自在に支持する図示しない軸受とを含む。
【0021】
更に、ロボット装置1は、図1および図3に示すように、関節J1およびJ2ごとに設けられた複数(本実施形態では、2つ)のロック機構(姿勢保持装置)8を含む。各ロック機構8は、それぞれ流体供給装置10から作動油の供給を受けると共に、流体供給装置10による作動油の供給状態に応じて、対応する関節J1またはJ2を介して連結される2つのアーム3等の相対的な回動を規制または許容するものである。本実施形態において、複数のロック機構8は、共通の構造を有する、いわゆる多板クラッチ機構である。ここでは、図3を参照しながら、最も基端側の関節J1に対応したロック機構8を例にとってロック機構8の構成について説明する。図3に示すように、ロック機構8は、ハブ部材81と、ドラム部材82と、複数の摩擦プレート(第1の摩擦係合プレート)83と、複数のセパレータプレート84(第2の摩擦係合プレート)およびバッキングプレートと、ピストン85と、複数のスプリング(付勢部材)88とを含む。
【0022】
ロック機構8のハブ部材81は、略円筒状の内筒部811、環状壁部812および略円筒状の外筒部813を有するハブ本体810と、ハブ本体810に連結される環状の連結ピース815とを含む。ハブ本体810の内筒部811は、一端が開放された有底筒状に形成されており、環状壁部812は、内筒部811の閉鎖端部から径方向外側に延在する。外筒部813は、環状壁部812の外周部から軸方向における両側に突出するように形成されている。外筒部813の外周面には、スプラインが形成されており、スプラインには、複数の摩擦プレート83(およびバッキングプレート)の内周部が嵌合される。各摩擦プレート83は、環状の板体と板体の両面に貼着された摩擦材とを含むものである。また、ハブ部材81の連結ピース815は、ハブ本体810の外筒部813の一方の端部(図3における右側の端部)内にスプライン嵌合され、スナップリングを用いてハブ本体810に固定される。更に、連結ピース815の中心孔部内には、軸受Brのインナーレースから突出する関節軸Axの他端がスプライン嵌合される。これにより、ハブ部材81は、アーム3の回動に伴って軸心周りに回転する関節軸Axと一体に回転するように関節軸Ax(および2つのリンクの一方であるアーム3)に固定(連結)される。
【0023】
ロック機構8のドラム部材82は、略円筒状のドラム本体820と、ドラム本体820に固定されるカバー825とを含む。ドラム部材82のドラム本体820の内周面には、スプラインが形成されており、スプラインには、複数の摩擦プレート83と交互に並ぶように複数のセパレータプレート84の外周部が嵌合される。各セパレータプレート84は、両面が平滑に形成された環状の板体である。また、ドラム本体820の一端には、径方向外側に延びる環状のフランジ部821が形成されており、フランジ部821は、複数のボルトを介して関節J1の支持部材5に固定される。これにより、ドラム部材82は、2つのリンクの他方である支持部材5に固定される。
【0024】
ドラム部材82のカバー825は、略円筒状の筒状部826と、筒状部826の一端(図3における左端)から径方向内側に延出された環状壁部827とを含む。カバー825の筒状部826内には、ドラム本体820が嵌合され、筒状部826の内周面とドラム本体820との間には、Oリング等のシール部材が配置される。また、筒状部826は、開放端から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出された複数の固定部を有し、各固定部は、ボルトを介してドラム本体820のフランジ部821に固定される。更に、カバー825の環状壁部827の内周部は、ハブ部材81のハブ本体810の内筒部811を回転自在に支持し、環状壁部827の内周部と内筒部811との間には、Oリング等のシール部材が配置される。これにより、ドラム部材82すなわちドラム本体820およびカバー825は、ハブ部材81を外側から液密に包囲する。
【0025】
ロック機構8のピストン85は、環状の受圧部851と、受圧部851の外周部から軸方向に延出された環状のプレート押圧部852と、プレート押圧部852の径方向内側で受圧部851からプレート押圧部852と同方向に突出する環状の突出部853とを含む。ピストン85の受圧部851は、プレート押圧部852が最もピストン85側に配置されたセパレータプレート84に当接するように、ハブ部材81のハブ本体810の内筒部811により軸方向に摺動自在(移動自在)に支持される。
【0026】
また、受圧部851の内周部と内筒部811との間には、Oリング等のシール部材が配置される。更に、ピストン85の突出部853は、ハブ本体810の外筒部813の他方の端部(図3における左側の端部)内に摺動自在に嵌合され、突出部853と外筒部813の内周面との間には、Oリング等のシール部材が配置される。これにより、ハブ部材81すなわちハブ本体810の内筒部811および環状壁部812と、ピストン85の受圧部851および突出部853とにより、ロック機構8の解放流体室86が画成される。解放流体室86は、ハブ本体810の内筒部811に形成された複数の通油孔811hを介して、流体供給装置10からの作動油すなわち油圧が供給される内筒部811の内部空間に連通する。
【0027】
ロック機構8の複数のスプリング88は、本実施形態では、何れもコイルスプリングであり、ドラム部材82のカバー825の環状壁部827とピストン85の背面との間に周方向に間隔をおいて配列される。複数のスプリング88は、ピストン85をカバー825の環状壁部827から離間するように付勢する。これにより、ロック機構8は、解放流体室86における油圧の作用によりピストン85に加えられる推力が複数のスプリング88による付勢力以下であるときに、ロック状態(図3における上側半分の状態)を形成する。かかるロック状態では、ピストン85が複数のスプリング88に押圧されてハブ部材81側(図3における右側)に移動し、複数の摩擦プレート83およびセパレータプレート84がピストン85のプレート押圧部852により押圧されて摩擦係合する。この結果、複数の摩擦プレート83およびセパレータプレート84を介してハブ部材81すなわちアーム3とドラム部材82すなわち支持部材5とが一体に連結され、2つのリンクとしてのアーム3および支持部材5の相対的な回動が規制される。
【0028】
また、ロック機構8は、解放流体室86における油圧の作用によりピストン85に加えられる推力が複数のスプリング88による付勢力よりも大きいときに、ロック解除状態(図3における下側半分の状態)を形成する。かかるロック解除状態では、ピストン85が解放流体室86内の油圧の作用により複数のスプリング88の付勢力に抗してカバー825の環状壁部827側(図3における左側)に移動し、それにより複数の摩擦プレート83およびセパレータプレート84の摩擦係合が解除される。この結果、複数の摩擦プレート83およびセパレータプレート84を介したハブ部材81すなわちアーム3とドラム部材82すなわち支持部材5との連結が解除され、2つのリンクとしてのアーム3および支持部材5の相対的な回動が許容される。なお、複数のスプリング88による付勢力は、流体供給装置10から供給される最も低圧の油圧の作用によりピストン85に加えられる推力よりも低くなるように定められる。また、1つまたは複数の皿ばねやゴム等の弾性体が複数のスプリング88の代わりに付勢部材として用いられてもよい。
【0029】
上記流体アクチュエータM1-M6や各ロック機構8等に作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10は、図1に示すように、作動油貯留部(流体貯留部)を画成するタンク11と、タンク11を上下方向に延びる回転軸(図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、タンク11の回転軸と同軸に延在するように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される(図2参照)。すなわち、ロボットアーム2は、流体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0030】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。これにより、回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。本実施形態において、回転駆動ユニットは、流体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータである。ただし、回転駆動ユニットは、電動モータやギヤ機構等を含むものであってもよい。
【0031】
更に、流体供給装置10は、図4に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、流体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、減圧弁(圧力制御弁)RVと、逆止弁CVと、アキュムレータ(蓄圧器)14と、流体調整バルブ(流体調整部)としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154,155,156と、信号圧出力バルブとしてのオンオフソレノイドバルブ16と、複数の開閉バルブ(流出規制バルブ)171,172,173,174,177,176と、電磁式の切替バルブ18とを含む。
【0032】
ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構、制御装置100により制御されるインバータ等の駆動回路等を有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動ユニット130とを含む。
【0033】
減圧弁RVは、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧Plim(上限値、例えば6-7MPa程度)を超えないように減圧可能なものである。本実施形態では、減圧弁RVとして、入力ポートに導入された作動油の圧力が上限圧Plimを超えると入力ポートにおける油圧が上限圧Plimになるように作動油をドレンするリリーフバルブ(圧力逃がし弁)が用いられる。逆止弁CVは、ポンプ13(および減圧弁RV)側からの作動油を油路LLに流出させると共に、油路LL側からポンプ13(および減圧弁RV)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で油路LLに接続(直結)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。また、アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。更に、油路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で油路LLにおける作動油の圧力(元圧)を検出する元圧センサPSが設置されている。
【0034】
リニアソレノイドバルブ151-156は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディ内に配置されると共に制御装置100により制御される。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151は、流体アクチュエータM1への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ152は、流体アクチュエータM2への油圧(駆動圧)を調整する。また、リニアソレノイドバルブ153は、流体アクチュエータM3への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ154は、流体アクチュエータM4への油圧(駆動圧)を調整する。更に、リニアソレノイドバルブ155は、流体アクチュエータM5への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ156は、流体アクチュエータM6への油圧(駆動圧)を調整する。
【0035】
図4に示すように、リニアソレノイドバルブ151-156は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、スリーブ内に軸方向に移動(摺動)可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(出力ポート15o側から入力ポート15i側、図4中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと、出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-156の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLにそれぞれ連通する。また、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポート15dは、それぞれ油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0036】
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(および減圧弁RV)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
【0037】
また、流体アクチュエータM1-M6に供給される油圧(駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-156にフィードバックすることで、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6により駆動されるロボットアーム2に流体アクチュエータM1-M6以外からの外力が加えられたときに、外力による流体アクチュエータM1-M6のチューブTの体積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。加えて、外力が無くなった後には、速やかに要求に応じた油圧(駆動圧)を流体アクチュエータM1-M6に供給することが可能となる。
【0038】
オンオフソレノイドバルブ16は、制御装置100により通電制御される電磁部16eと、上記油路LLからの油圧を予め定められた一定のモジュレータ圧まで減圧させる減圧弁としてのモジュレータバルブ(リリーフバルブ)MVの出力ポートに連通する入力ポート16iと、出力ポート16oとを含む常閉弁である。オンオフソレノイドバルブ16は、電磁部16eへの通電に応じて入力ポート16iに供給されるモジュレータバルブMVからの作動油を出力ポート16oに流出させることにより信号圧を出力する。
【0039】
開閉バルブ171-176は、バルブボディ内に配置されるスプール17sとスプール17sを付勢するスプリング17spとを含む常閉型のスプールバルブである。図4に示すように、開閉バルブ171は、リニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oと流体アクチュエータM1との間に配置され、開閉バルブ172は、リニアソレノイドバルブ152の出力ポート15oと流体アクチュエータM2との間に配置される。また、開閉バルブ173は、リニアソレノイドバルブ153の出力ポート15oと流体アクチュエータM3との間に配置され、開閉バルブ174は、リニアソレノイドバルブ154の出力ポート15oと流体アクチュエータM4との間に配置される。更に、開閉バルブ175は、リニアソレノイドバルブ155の出力ポート15oと流体アクチュエータM5との間に配置され、開閉バルブ176は、リニアソレノイドバルブ156の出力ポート15oと流体アクチュエータM6との間に配置される。
【0040】
図4に示すように、開閉バルブ171-176は、スプール17sおよびスプリング17spに加えて、入力ポート17iと、出力ポート17oと、信号圧入力ポート17cとを含む。入力ポート17iは、バルブボディに形成された油路を介して対応するリニアソレノイドバルブ151-156の出力ポート15oに連通する。出力ポート17oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して対応する流体アクチュエータM1-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。信号圧入力ポート17cは、バルブボディに形成された油路を介してオンオフソレノイドバルブ16の出力ポート16oに連通する。また、本実施形態において、開閉バルブ171-176の信号圧入力ポート17cは、スプリング17spが配置されるスプリング室の反対側に配置され、出力ポート17oは、スプール17sの軸方向における入力ポート17iと信号圧入力ポート17cとの間に配置される。
【0041】
かかる開閉バルブ171-176のスプール17sは、信号圧入力ポート17cにオンオフソレノイドバルブ16からの信号圧(モジュレータ圧)が供給されていないときに、スプリング17spの付勢力により信号圧入力ポート17c側に付勢され、入力ポート17iを閉鎖すると共に入力ポート17iと出力ポート17oとの連通を遮断する(図4における点線参照)。以下、スプール17sが入力ポート17iを閉鎖すると共に入力ポート17iと出力ポート17oとの連通を遮断する状態を開閉バルブ171-176の「流出規制状態」という。
【0042】
一方、電磁部16eへの通電に応じてオンオフソレノイドバルブ16からの信号圧が信号圧入力ポート17cに供給されると、開閉バルブ171-176のスプール17sは、信号圧に基づく推力により付勢されてスプリング17spの付勢力に抗してスプリング室側に移動する。これにより、スプール17sによる入力ポート17iの閉鎖が解除され、入力ポート17iと出力ポート17oとが連通する(図4における実線参照)。この結果、入力ポート17iに供給されるリニアソレノイドバルブ151-156からの油圧(駆動圧)を出力ポート17oから流出させて流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給することができる。以下、スプール17sが入力ポート17iを開放すると共に入力ポート17iと出力ポート17oとを連通させる状態を開閉バルブ171-176の「連通状態」という。
【0043】
切替バルブ18は、図4に示すように、ロボットアーム2の関節J1およびJ2に設けられたロック機構8に作動油を給排するものである。切替バルブ18は、電磁式のスプールバルブであり、バルブボディ内に配置されるスリーブと、制御装置100により通電制御される電磁部18eと、スリーブ内に摺動自在に配置されるスプール18sと、スプール18sを電磁部18e側(出力ポート18o側から入力ポート18i側、図4中上側)に付勢するスプリング18spとを含む。更に、切替バルブ18は、油路LLに連通する入力ポート18iと、バルブボディに形成された油路や図示しないホース、プラグ等を介して対応する各ロック機構8のハブ部材81の内筒部811に接続される出力ポート18oと、油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通するドレンポート18dとを含む。
【0044】
切替バルブ18のスプール18sは、電磁部18eに電流が供給されていない非通電時に、スプリング18spの付勢力により入力ポート18iと出力ポート18oとの連通を遮断すると共に出力ポート18oとドレンポート18dとを連通させる。以下、スプール18sが入力ポート18iと出力ポート18oとの連通を遮断すると共に出力ポート18oとドレンポート18dとを連通させる状態を切替バルブ18の「流体排出状態」という(図4中破線参照)。また、切替バルブ18のスプール18sは、電磁部18eに電流が供給される通電時に、電磁部18eからの推力によりスプリング18spの付勢力に抗して入力ポート18iと出力ポート18oとを連通させる。以下、スプール18sが入力ポート18iと出力ポート18oとを連通させる状態を切替バルブ18の「流体供給状態」という(図4中実線参照)。
【0045】
更に、本実施形態において、切替バルブ18の出力ポート18oと各ロック機構8のハブ部材81の内筒部811とを結ぶ油路には、図4に示すように、絞り部材としてのオリフィスOrが配置されている。ただし、オリフィスOrは、図中二点鎖線で示すように、切替バルブ18のドレンポート18dと上記油路LDとを結ぶ油路に、ドレンポート18dに近接するように配置されてもよく、切替バルブ18とロック機構8とを結ぶ油路と、ドレンポート18dと油路LDとを結ぶ油路との双方に配置されてもよい。また、切替バルブ18は、信号圧を出力するオンオフソレノイドバルブと、オンオフソレノイドバルブからの信号圧の供給に応じて流体供給状態を形成するスプールバルブ(切替バルブ)とで置き換えられてもよい。
【0046】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-156、オンオフソレノイドバルブ16および切替バルブ18の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサ等の検出値を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される油路LLにおける油圧(元圧)が目標圧になるように、ポンプ13の駆動ユニット130を制御(デューティ制御)する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e、オンオフソレノイドバルブ16の電磁部16eおよび切替バルブ18の電磁部18eに供給される電流を制御する。
【0047】
更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eを流れる電流を検出する図示しない複数の電流検出部を含み、各電流検出部により検出される電流を監視する。また、制御装置100は、各流体アクチュエータM1-M6における油圧を検出する図示しない複数の圧力センサからの検出値や、ポンプ13の回転数、駆動ユニット130のインバータからポンプ13の電動モータに供給される電流等を監視する。制御装置100は、これらの電流や圧力、回転数等に基づいて、各流体アクチュエータM1-M6(チューブT)への油圧の供給異常の有無を判定する。
【0048】
次に、上述のように構成されるロボット装置1の動作について説明する。図5は、ロボット装置1の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図示しない起動スイッチがオフでロボット装置1の動作が完全に停止している際には、ハンド部4は、図示しない支持台あるいはロボット装置1の設置面等に載せられている。また、流体供給装置10の切替バルブ18は、電磁部18eへの電力供給が断たれることで上記流体排出状態を形成し、各ロック機構8は、複数のスプリング88の付勢力により上記ロック状態を形成している。これにより、関節J1,J2を介して連結された2つのリンクとしてのアーム3等の相対的な回動が規制され、ロボットアーム2の姿勢が予め定められた待機姿勢に強制的に保持されている。
【0049】
図5のフローチャートは、起動スイッチがオンされたときに実行される。最初に、ロボット装置1のシステム起動を行なう(ステップS100)。システム起動では、制御装置100が自動起動すると共にポンプ13の駆動ユニット130や、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e、オンオフソレノイドバルブ16の電磁部16e、切替バルブ18の電磁部18eを通電可能にする。
【0050】
続いて、ポンプ13の駆動を開始し(ステップS110)、流体アクチュエータM1-M6に作動油を充填する作動油充填制御を実行する(ステップS120)。制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-156に供給される油路LLにおける油圧(元圧)が予め定められた比較的低い待機圧Pstになるようにポンプ13を制御する。本実施形態において、待機圧Pstは、複数の流体アクチュエータM1-M6の各々を自然状態から上記初期状態まで軸方向に収縮させることができる圧力(例えば700-900kPa程度)として定められている。更に、制御装置100は、オンオフソレノイドバルブ16の出力ポート16oから信号圧が出力されるように電磁部16eへの電流を制御する。これにより、各開閉バルブ171-176が上記連通状態を形成し、各開閉バルブ171-176において入力ポート17iと出力ポート17oとが連通させられることで、リニアソレノイドバルブ151-156から流体アクチュエータM1-M6への作動油の供給が許容される。そして、予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに作動油を充填して各チューブTを上記初期状態とするようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTには、対応するリニアソレノイドバルブ151-156から作動油が供給され、各チューブTは、自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮する。これ以後、リニアソレノイドバルブ151-156の各電磁部15eには継続して電流が供給され、リニアソレノイドバルブ151-156は、ポンプ13側からの作動油の圧力を電磁部15eに供給される電流に応じて調整する。
【0051】
そして、リニアソレノイドバルブ151-156内の異物(例えば、流体供給装置10の上記バルブボディのバリなど)を排出するための異物排出制御を実行する(ステップS130)。制御装置100は、予め定められた順番で1つずつまたは複数ずつ順にリニアソレノイドバルブ151-156の異物排出制御を実行する。異物排出制御では、リニアソレノイドバルブ151-156の指令圧を増減させて、指令圧に基づいて電磁部15eへの電流を増減させることにより、スプール15sのストローク量を増減させる。ロボットアーム2が動作していないときに異物排出制御を実行することにより、リニアソレノイドバルブ151-156内に異物が入り込んだときに、ロボットアーム2が不自然な動作を行なうのを抑制しつつ、リニアソレノイドバルブ151-156内の異物を排出することができる。しかも、ロック機構8がロック状態を形成してロボットアーム2の姿勢が上記待機姿勢に強制的に保持されているときに異物排出制御を実行することにより、ロボットアーム2が動くのをより確実に抑制することができる。図6は、異物排出制御の際のリニアソレノイドバルブ151-156の指令圧、出力圧、スプール15sのストローク量(初期位置からの移動量)の様子の一例を示す説明図である。図6の例では、異物排出制御として、指令圧を3回増減させる処理を2セット実行するものとした。指令圧の増減量や、指令圧を増減させるときのデューティ比、1つのセットにおける指令圧の増減回数、セット数は、本実施形態では、出力圧の変動量が値0を含む許容範囲内となりながら異物を排出できるように予め実験や解析を行なって設定される。これにより、流体アクチュエータM1-M6の軸方向における収縮量が変動するのを抑制することができる。なお、指令圧の増減量や、指令圧を増減させるときのデューティ比、1つのセットにおける指令圧の増減回数、セット数は、図6の例に限定されるものではない。
【0052】
更に、ロボットアーム2およびハンド部4を用いた作業の開始が指示されると、待機姿勢保持制御を実行する(ステップS140)。制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、油路LLにおける油圧(元圧)が上記上限圧Plimよりも低く、かつアキュムレータ14の最低作動圧以上に定められた比較的高い常用圧Pw(例えば5-6MPa程度)になるようにポンプ13を制御する。制御装置100は、各ロック機構8からの強制力無しにロボットアーム2を上記待機姿勢に保持するのに要求される各指令圧に応じた各油圧を予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給するようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。
【0053】
続いて、ロック解除制御を実行する(ステップS150)。制御装置100は、切替バルブ18が上記流体供給状態を形成するように電磁部18eへの電流を制御する。これにより、油路LLからの作動油すなわち油圧が切替バルブ18を介して各ロック機構8の解放流体室86に供給され、解放流体室86内の油圧の作用によりピストン85が複数のスプリング88の付勢力に抗してカバー825の環状壁部827側に移動することで、各ロック機構8は上記ロック解除状態を形成する。この結果、複数の摩擦プレート83およびセパレータプレート84を介したハブ部材81すなわちアーム3とドラム部材82すなわち支持部材5あるいは他のアーム3との連結が解除され、関節J1,L2を介して連結される2つのリンクとしてのアーム3等の相対的な回動が許容される。
【0054】
そして、移載制御を実行する(ステップS160)。制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156から各流体アクチュエータM1-M6に対してロボットアーム2への要求に基づく各指令圧に応じた各油圧が供給されるように各電磁部15eへの電流を制御する。これにより、リニアソレノイドバルブ151-156によって調整された油圧(駆動圧)が開閉バルブ171-176を介して流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給される。この結果、複数の流体アクチュエータM1-M6により各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。また、制御装置100は、ハンド部4により把持対称の把持やその解除が実行されるようにハンド部4を制御する。
【0055】
移載制御を終了すると、待機姿勢保持制御を実行する(ステップS170)。制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156から各流体アクチュエータM1-M6に対してロボットアーム2を上記待機姿勢に保持するのに要求される各指令値に応じた各油圧を供給するようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。
【0056】
続いて、ロック制御を実行する(ステップS180)。制御装置100は、電磁部18eへの電力供給を絶つ。これにより、切替バルブ18は、上記流体排出状態を形成し、各ロック機構8は、複数のスプリング88の付勢力により上記ロック状態を形成する。この結果、関節J1,J2を介して連結された2つのリンクとしてのアーム3等の相対的な回動が規制され、ロボットアーム2の姿勢が上記待機姿勢に強制的に保持される。
【0057】
そして、ステップS130の処理と同様に、リニアソレノイドバルブ151-156に対する異物排出制御を実行する(ステップS190)。更に、流体アクチュエータM1-M6の作動油を排出する作動油ドレン制御を実行する(ステップS200)。制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電力供給を絶つ。これにより、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと出力ポート15oとが遮断されると共に出力ポート15oとドレンポート15dとが連通する。この結果、流体アクチュエータM1-M6内の作動油は、オンオフソレノイドバルブ171-176やリニアソレノイドバルブ151-156、油路LDを介して作動油貯留部に戻される。
【0058】
更に、オンオフソレノイドバルブ16の電磁部16eへの電力供給を絶つと共にポンプ13の駆動を停止し(ステップS210)、システム停止を行なって(ステップS220)、本フローチャートを終了する。オンオフソレノイドバルブ16の電磁部16eへの電力供給を絶つと、オンオフソレノイドバルブ16の出力ポート16oから各開閉バルブ171-176の信号圧入力ポート17cに信号圧が供給されなくなり、各開閉バルブ171-176は、上記流出規制状態となる。システム停止では、ポンプ13の駆動ユニット130や、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e、オンオフソレノイドバルブ16の電磁部16e、切替バルブ18の電磁部18eを通電不能にすると共にECU100が停止する。
【0059】
以上説明したように、ロボット装置1では、流体供給装置10により流体アクチュエータM1-M6に作動油を供給した後で且つロボットアーム2が動作していないときに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行する。これにより、リニアソレノイドバルブ151-156内に異物が入り込んだときに、ロボットアーム2が不自然な動作を行なうのを抑制しつつ、リニアソレノイドバルブ151-156内の異物を排出することができる。
【0060】
しかも、ロボット装置1では、ロック機構8がロック状態を形成してロボットアーム2が待機姿勢に強制的に保持されているときに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行する。これにより、異物排出制御の際にロボットアーム2が動くのをより確実に抑制することができる。
【0061】
更に、ロボット装置1では、流体アクチュエータM1-M6に対する異物排出制御として、リニアソレノイドバルブ151-156の出力圧の変動量が値0を含む許容範囲内となりながら異物を排出できるようにリニアソレノイドバルブ151-156の指令圧を変動させる。流体アクチュエータM1-M6の軸方向における収縮量が変動するのを抑制することができる。
【0062】
上記実施形態では、移載制御の実行前(具体的には、作動油充填制御の実行後で且つ待機保持制御の実行前)と、移載制御の実行後(具体的には、ロック制御後)とに、異物排出制御を実行するものとした。しかし、移載制御の前後のうち何れかでだけ異物排出制御を実行するものとしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、ロック機構8がロック状態を形成してロボットアーム2が待機姿勢に強制的に保持されているときに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行するものとした。しかし、ロボットアーム2が動作していないときであれば、ロボットアーム2を待機姿勢で保持していて(待機姿勢保持制御を実行していて)且つロック機構8がロック解除状態を形成しているときなどに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行するものとしてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ロック機構8がロック状態を形成してロボットアーム2が待機姿勢に強制的に保持されているときに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行するものとした。しかし、ロック機構8を備えない構成において、ハンド部4が図示しない支持台あるいはロボット装置1の接地面等に形成された溝等に嵌まり込んでロボットアーム2が待機姿勢に強制的に保持されているときや、外部の装置によりロボットアーム2が待機姿勢に強制的に保持されているときなどに、流体アクチュエータM1-M6に対して異物排出制御を実行するものとしてもよい。この場合でも、異物排出制御の際にロボットアーム2が動くのをより確実に抑制することができる。
【0065】
上記実施形態では、リニアソレノイドバルブ151-156に対する異物排出制御を予め定められた順番で1つずつまたは複数ずつ順に実行するものとした。しかし、リニアソレノイドバルブ151-156に対する異物排出制御を全て並列に(略同時に)実行するものとしてもよい。前者の場合、リニアソレノイドバルブ151-156に対する異物排出制御の際に油路LLの油圧(元圧)や図示しない電源の電圧に影響を与えるのを抑制することができ、後者の場合、リニアソレノイドバルブ151-156に対する異物排出制御に要する時間を短縮することができる。
【0066】
上記実施形態において、流体供給装置10のリニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、常開弁は、電磁部からの推力および電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートを有さずに、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。更に、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、電磁部に供給される電流に応じた信号圧を出力するリニアソレノイドバルブおよび信号圧に応じて作動油の圧力を調整するコントロールバルブで置き換えられてもよい。
【0067】
また、流体供給装置10は、オンオフソレノイドバルブ16が省略されてもよく、開閉バルブ171-176の代わりに、電磁部を含む電磁式の開閉バルブが用いられてもよい。流体供給装置10は、開閉バルブ171-176が省略されてもよい。更に、流体供給装置10は、流体調整バルブ(流体調整部)として、例えば圧力センサにより検出される液圧(流体圧)が要求に応じた圧力になるように流体アクチュエータM1-M6への液体(流体)の流量を制御する流量制御弁を含むものであってもよい。また、流体供給装置10は、水等の作動油以外の液体や空気等の気体を流体アクチュエータM1-M6に供給するものであってもよい。
【0068】
更に、ロボット装置1は、関節を1つだけ含むものであってもよく、人工筋肉としての流体アクチュエータを1つまたは2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、少なくとも1つの流体アクチュエータM1等とハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
【0069】
また、ロボット装置1のロボットアーム2は、アーム3を駆動する流体アクチュエータとして揺動モータ(例えば、ハンド部4の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボット装置1のロボット本体は、人工筋肉としての流体アクチュエータに加えて、揺動モータを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとしてエアシリンダや油圧シリンダといった流体圧シリンダを含むものであってもよい。また、関節J1-J3を介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の流体アクチュエータと、流体アクチュエータと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。加えて、ロボット装置1において、タンク11がロボットアーム2といったロボット本体により支持されてもよい。
【0070】
上記実施形態において、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6は、内部に作動油が供給されると共に内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるものとした。しかし、ロボット装置1における流体アクチュエータM1-M6の構成は、これに限られるものではない。すなわち、流体アクチュエータM1-M6は、流体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば、弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【0071】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、ロボット装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 アーム(リンク)、5 支持部材(リンク)、8 ロック機構(姿勢保持装置)、10 流体供給装置、13 ポンプ、151,152,153,154,155,156 リニアソレノイドバルブ、J1,J2,J3 関節、M1,M2,M3,M4,M5,M6 流体アクチュエータ(人工筋肉)、100 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6