(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156380
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉およびその製造方法、ならびにボンド磁石およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/11 20060101AFI20221006BHJP
H01F 1/113 20060101ALI20221006BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20221006BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01F1/11
H01F1/113
H01F41/02 G
C01G49/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060035
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 智也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 禅
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】越湖 将貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 進一
【テーマコード(参考)】
4G002
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4G002AA06
4G002AA08
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE04
5E040AB04
5E040AB09
5E040BB03
5E040CA01
5E040HB11
5E040HB15
5E040NN02
5E040NN06
5E062CD02
5E062CE02
(57)【要約】
【課題】六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、得られるボンド磁石の保磁力を大きくすることができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉とその製造方法の提供。
【解決手段】化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表されるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。化学式中のAがSrおよびBaであることが好ましく、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉について平均粒子径が0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましく、圧縮密度が3.0g/cm3以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表されるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項2】
前記化学式中のAがSrおよびBaである、請求項1に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項3】
平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項4】
圧縮密度が2.7g/cm3以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉と樹脂とを含む、ボンド磁石。
【請求項6】
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法であって、
化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末と融剤とを混合して原料混合物を得る混合工程と、
得られた原料混合物を焼成して焼成物を得る焼成工程と、
得られた焼成物を粉砕する粉砕工程とを含み、
前記六方晶フェライト磁性粉の原料におけるFe原料およびMn原料として、Mnを含有するヘマタイトを用いる、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕工程で得られた粉砕粉をアニールする工程をさらに含む、請求項6に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項8】
前記融剤として塩化バリウム、酸化ビスマスから選ばれる1種以上を用いる、請求項6または7に記載のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いることを特徴とする、ボンド磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト系ボンド磁石に用いられる六方晶フェライト磁性粉およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータや、複写機のマグネットロールなどに使用される磁石のような高磁力の磁石として、フェライト系焼結磁石が使用されている。しかし、フェライト系焼結磁石には、欠け割れが発生しやすい、研磨が必要なために生産性に劣るという問題があることに加えて、複雑な形状への加工が困難であるという問題がある。
【0003】
そのため、近年では、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータなどの高磁力の磁石として、希土類磁石のボンド磁石が使用されている。しかし、希土類磁石は、フェライト系焼結磁石の約20倍のコストがかかり、また、錆び易いという問題があるため、フェライト系焼結磁石の代わりに六方晶フェライト系ボンド磁石を使用することが望まれている。
【0004】
このようなボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉として、50%粒径が1.2~3.0μmで、かつ0.2μm以下の微粒分を実質的に含まないボンド磁石用磁性粉(特許文献1参照)や、およびアルカリ土類金属を構成成分とするフェライト磁性粉であって、 塩素含有量が0.05重量%以下であり、 ゴム系樹脂をバインダーとして固定されるボンド磁石用のフェライト磁性粉(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-294417号公報
【特許文献2】特開2004-265936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、六方晶フェライト磁性粉を用いたボンド磁石の保磁力を調整する方法としては、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を調整する方法が主に用いられてきた。六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくするほど得られるボンド磁石の保磁力を高く、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を大きくするほど得られるボンド磁石の保磁力を低くすることができる。しかしながら、六方晶フェライト磁性粉の粒子径は磁性粉の粉末としての流動度や、ボンド磁石製造工程における中間生成物である混錬物の流動度にも大きく影響しており、六方晶フェライト磁性粉の粒子径が小さくなると、磁性粉自体やボンド磁石製造工程における混錬物が流動しなくなり、製造工程に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずにボンド磁石の保磁力を高くすることができれば、磁性粉自体やボンド磁石製造時の混錬物のハンドリング性の設計において自由度を増やすことができるため、望ましい。
【0007】
本願では、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、得られるボンド磁石の保磁力を高くすることができるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉とその製造方法、および当該磁性粉を用いたボンド磁石とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来から、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のFe原料として、広くヘマタイト(α酸化鉄)が用いられている。工業用ヘマタイトは鉄鋼製造工程での副生成物として製造されるため、マンガンやクロム等の不純物を含むが、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の原料に用いるヘマタイトとしては、当該磁性粉中に保磁力の低いMnFe2O4の異相が発生するのを抑制するためにMn含有量が多いものは忌避され、Mn量が少ないヘマタイトが用いられてきた。しかし本発明者らは諸検討を進めた結果、ヘマタイト中に微量のMnをむしろ積極的に含有させた場合に、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の保磁力を高めることができることに想到して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される組成を有することを特徴とする。前記化学式中のAがSrおよびBaであることが好ましく、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、圧縮密度が2.7g/cm3以上であることが好ましい。
【0010】
また、別観点での本発明は、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉と樹脂とを含む、ボンド磁石である。
【0011】
さらに別観点での本発明は、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末と融剤とを混合して原料混合物を得る混合工程と、得られた原料混合物を焼成して焼成物を得る焼成工程と、得られた焼成物を粉砕する粉砕工程とを含み、前記六方晶フェライト磁性粉の原料におけるFe原料およびMn原料として、Mnを含有するヘマタイトを用いる、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法である。当該製造方法において、粉砕工程で得られた粉砕粉をアニールする工程をさらに含んでいてもよく、融剤として塩化バリウム、酸化ビスマスから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0012】
さらに別観点での本発明は、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いる、ボンド磁石の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いてボンド磁石を製造した場合に、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、ボンド磁石の保磁力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉)
本発明の対象となるのは、化学式AFe12O19を基本構造とするマグネトプランバイト型(M型)結晶構造を持つ六方晶フェライト磁性粉である。この化学式中のAはSr、Ba、Pbの1種以上の元素である。
【0015】
(組成)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表すことができ、Mnを必須元素として含む。本磁性粉中においてMnはMn2+(Mn(II))として存在しており、化学式中の酸素量(1.5n-0.5x+1)はAを2価の金属元素、FeをFe3+(Fe(III))、OをO2-として電荷補償の計算により算出される。なお、本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉ではMnがMn2+(Mn(II))として存在するものを対象とするが、Mn3+(Mn(III))、Mn4+(Mn(IV))等の異なる価数として存在するMnを含む六方晶フェライト磁性粉も、後述する焼成工程における焼成温度や焼成雰囲気等の調整により製造できると考えられる。そのようにして得られた磁性粉でも、A、FeおよびMnの含有モル比を上記の化学式と同様の範囲とすれば、本発明と同様の効果を奏する可能性がある。
【0016】
Mn含有量の指標であるxは、ボンド磁石に用いた際の保磁力向上効果を得るために0.054以上0.200以下とし、好ましくは0.065以上0.180以下とし、より好ましくは0.072以上0.150以下とする。x<0.054の場合にはボンド磁石の保磁力向上効果が限定的になること、x>0.200の場合にはボンド磁石の保磁力がx<0.054の場合よりも低下してしまうことから、それぞれ好ましくない。
【0017】
主にFe含有量の指標となるnは、マグネトプランバイト型結晶の単相を得るため、10.0以上12.0以下とする。この上下限を外れた場合、マグネトプランバイト型結晶以外の異相が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0018】
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のように微量のMnを含有することによりボンド磁石の保磁力向上効果が現れるメカニズムは定かではないが、発明者らはフェライト結晶のFeサイトに微量のMnが置換されることで何らかの理由により磁場反転時のボンド磁石のフェライト結晶中での磁壁移動がおきにくくなり、保磁力向上につながったものと推定している。
【0019】
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の化学式中のA元素としては、得られる磁性粉の比重を小さくしてボンド磁石の軽量化を図る観点から、SrおよびBaから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。また、磁気特性の向上を図る観点から、A元素としてはSrおよびBaを用いることがより好ましく、Sr/(Sr+Ba)モル比を0.80以上0.98以下とすることが一層好ましい。
【0020】
(平均粒子径)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の空気浸透法による平均粒子径(本明細書中で単に「平均粒子径」と呼ぶことがある)は、ボンド磁石用の磁性粉として望ましい保磁力を得る観点から0.1μm以上10μm以下とすることが好ましく、0.5μm以上5.0μm以下とすることがより好ましい。
【0021】
(圧縮密度)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の圧縮密度は、当該磁性粉の充填性を高める観点から2.7g/cm3以上とすることが好ましく、2.8g/cm3以上とすることがより好ましく、3.0g/cm3以上とすることがさらに好ましい。当該磁性粉の圧縮密度の上限は特に規定されないが、3.8g/cm3以下に管理してもよく、3.5g/cm3以下に管理してもよい。
【0022】
(比表面積)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の比表面積は、0.5m2/g以上8.0m2/g以下とすることが好ましい。
【0023】
(圧粉体の磁気特性)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、2トン/cm2の圧力で圧縮成形して得られた圧粉体の磁気特性について、残留磁束密度Brが1850G以上であることが好ましい。
【0024】
(粉末磁気特性)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、粉末磁気特性について、飽和磁化σsが55emu/g以上であることが好ましく、保磁力iHcが3700Oe以上5000Oe以下であることが好ましい。
【0025】
(粒度分布)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布について、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準の累積16%粒子径(D16)が、0.3μm以上1.5μm以下であることが好ましく、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準の累積50%粒子径(D50)が、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましく、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された体積基準の累積84%粒子径(D84)が、1.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0026】
(ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法は、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末と融剤とを混合して原料混合物を得る混合工程と、得られた原料混合物を焼成して焼成物を得る焼成工程と、得られた焼成物を粉砕する粉砕工程とを含み、前記六方晶フェライト磁性粉の原料におけるFe原料およびMn原料として、Mnを含有するヘマタイトを用いることを特徴とする。以下で各工程を詳細に説明する。
【0027】
(混合工程)
化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末と融剤とを混合して原料混合物を得る工程であり、本発明の効果を得るため、前記六方晶フェライト磁性粉の原料におけるFe原料およびMn原料として、Mnを含有するヘマタイトを用いることを必須要件とする。ここで、ヘマタイトがMnを含有するとは、ヘマタイトの結晶中でMnがFeサイトの一部がMn元素により置換された状態で存在することを指す。このようにFeサイトの一部がMn元素により置換された状態でMnが存在しているヘマタイトとしては、例えば鉄鋼製造工程由来のヘマタイトが挙げられる。従来、六方晶フェライト磁性粉のFe原料としては、当該磁性粉中に保磁力の低いMnFe2O4の異相が発生するのを抑制するため、結晶中におけるMnの含有量が少ないヘマタイトが用いられ、上記化学式のようにMn含有量が多くなることが無いように管理されてきた。一方で、本発明の製造方法においては、Fe原料として結晶中のMn含有量が多いヘマタイトを積極的に用い、最終的に得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成が上記化学式を満たすようにヘマタイト中のMn量を調整する。具体的には、最終的に得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉が化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される組成範囲となるようにするために、Fe原料であるヘマタイトに含まれるMn量に対する金属元素A(Sr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)の原料および融剤に含まれる金属元素Aの合計量のモル比Mn/(Sr+Ba+Pb)が0.048以上0.180以下となり、かつヘマタイトに含まれるFeおよびMnの合計量に対する金属元素Aの原料および融剤に含まれる金属元素Aの合計量のモル比(Fe+Mn)/(Sr+Ba+Pb)が8.5以上11.2以下となるように、各原料の仕込み量を調整することが好ましい。
【0028】
原料として用いるMnを含有するヘマタイトとしては、鉄鋼製造工程由来のヘマタイトを用いることが好ましく、Mn/Feモル比が0.0047以上0.020以下であるヘマタイトを用いることが好ましい。
【0029】
金属元素A(Sr、BaおよびPb)の原料としては、炭酸塩、酸化物および水酸化物を用いることができ、炭酸塩が特に好適である。
【0030】
上記化学式におけるxおよびnの数値範囲や金属元素Aの種類については、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成の項ですでに述べたとおりである。
【0031】
融剤としては、公知のものを用いることができるが、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化鉛および酸化ビスマスから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、塩化バリウム、酸化ビスマスから選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。また融剤として塩化バリウムを用いる場合には、原料および融剤の合計質量に対して0.3~8質量%の添加量とすることがさらに好ましく、酸化ビスマスを用いる場合には、原料および融剤の合計質量に対して0.1~2.0質量%の添加量とすることが好ましい。融剤として塩化バリウムと酸化ビスマスの両方を用いてもよい。
【0032】
混合工程において、六方晶フェライト粉の原料となる粉末を混合した後に造粒して、得られた造粒物を次工程である焼成工程に供してもよい。
【0033】
(焼成工程)
混合工程で得られた原料混合物を焼成して焼成物を得る工程である。焼成温度は1000~1400℃とすることが好ましく、焼成雰囲気は酸化性雰囲気とすることが好ましく、大気雰囲気とすることがより好ましい。焼成炉としては、ロータリーキルン、ローラーハース炉、バッチ式の箱型炉等の公知の熱処理装置を用いることができる。
【0034】
(粉砕工程)
焼成工程で得られた焼成物を粉砕してボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得る工程である。粉砕は公知の方法により実施することができ、粉砕装置としてアトライター等を用いた湿式粉砕の形態であってもよく、粉砕装置として振動ボールミル等を用いた乾式粉砕の形態であってもよく、湿式粉砕と乾式粉砕との両方を実施しても構わない。
【0035】
(アニール工程)
粉砕工程で得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉は、アニール処理に供してもよい。アニール条件としては公知の条件にて実施すればよく、例えばアニール温度を900℃以上1000℃以下とし、アニール時の雰囲気を大気雰囲気としてもよい。
【0036】
(ボンド磁石の製造方法)
本発明のボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の製造方法により得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉と、樹脂と滑剤等を混合し、混練後に磁場中において成形することで、高い保磁力iHcをもつボンド磁石を得ることができる。ここで、磁性粉と樹脂とを混合する際に、必要に応じて滑剤やシランカップリング剤等の添加剤をさらに加えて混合してもよい。
【0037】
(組成分析方法)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のZSX100e)を使用して、ファンダメンタル・パラメータ法(FP法)により、各元素の成分量を算出することにより、組成分析を行った。この組成分析では、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を測定用セルに詰め、10トン/cm2の圧力を20秒間加えて成型し、測定モードをEZスキャンモード、測定径を30mm、試料形態を酸化物、測定時間を標準時間とし、真空雰囲気中において、定性分析を行った後に、検出された構成元素に対して定量分析を行った。なお、融剤として添加したBiや、原料中の不純物由来と考えられるCr、Niなどの元素も検出されたが、いずれも酸化物換算0.4質量%以下と微量であった。これらの酸化物換算で0.4質量%以下の微量の元素を不純物とし、主成分であるSr、Ba、Fe、Mnの分析値から、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の化学式をAFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnおよびxを算出した。ここでMnは、後述する実施例で得られるボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉中では全量がMn2+(Mn(II))として存在しているので、電荷補償計算においてもMnがMn2+(Mn(II))であるとして計算を実施した。
【0038】
(X線回折測定)
粉末X線回折装置(株式会社リガク製のMiniflex600)を使用して、管電圧を40kV、管電流を15mA、測定範囲を15°~60°、スキャン速度を1°/分、スキャン幅を0.02°として、粉末X線回折法(XRD)による測定を行った。後述する実施例および比較例で得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉をXRD測定した結果、得られたすべての磁性粉がマグネトプランバイト型フェライト結晶構造を有することが確認された。
【0039】
(平均粒子径および比表面積の測定方法)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径(APD)は、比表面積測定装置(株式会社島津製作所製のSS-100)を用いて空気浸透法により測定した。また、このボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の比表面積は、比表面積測定装置(カンタクローム社製のモノソーブ)を用いてBET一点法により測定した。
【0040】
(圧縮密度の測定方法)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cm2の圧力で圧縮したときのボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の密度を測定し、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の圧縮密度(CD)とした。
【0041】
(圧粉体の磁気特性測定)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉8gとポリエステル樹脂(日本地科学社製のP-レジン)0.4cm3を乳鉢中で混練し、得られた混練物7gを内径15mmφの金型に充填し、2トン/cm2の圧力で60秒間圧縮して得られた成形品を金型から抜き取り、150℃で30分間乾燥させて圧粉体を得た。この圧粉体の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して、測定磁場10kOeで圧粉体の保磁力bHc、保磁力iHcおよび残留磁束密度Brを測定した。
【0042】
(粉末磁気特性の測定方法)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粉末磁気特性は、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉20mgをセル詰めしたのち溶融パラフィンで固定し、振動試料型磁力計VSM(東英工業製、VSM-P7)を用いて測定磁場10kOeで、飽和磁化σs、残留磁化σr、保磁力iHc、反転磁化分布SFDをそれぞれ測定した。
【0043】
(粒度分布の測定方法)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の粒度分布は、SYMPATEC社製レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS)を使用して焦点距離20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarで測定して、体積基準の累積16%粒子径(D16)、累積50%粒子径(D50)および累積84%粒子径(D84)を求めた。
【0044】
(機械配向ボンド磁石の製造試験)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉110質量部と、NBRゴム(JSR株式会社製のN215SL)15質量部をラボブラストミル(東洋精機製作所株式会社製の4C150)を用いて80℃で10分間混練し、得られた混練物を圧延機(東洋精機製作所株式会社製の6Bロール)によりロール圧延して厚み2.00mmのシートを作製した。
【0045】
(磁場配向ボンド磁石の製造試験)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉90.0質量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ-6094N)0.8質量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN-212P)0.8質量部と、粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP-1011F)8.4質量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物をラボブラストミル(東洋精機製作所株式会社製の4C150)を用いて230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを得た。この混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、9.7kOeの磁場中において温度300℃、成形圧力8.5N/mm2で射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形の磁場配向ボンド磁石を得た。ここで、磁場の配向方向は前述の円柱の中心軸と平行な方向とした。
【0046】
(ボンド磁石の磁気特性測定)
BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF-5BH)を使用して、測定磁場10kOeで磁場配向ボンド磁石および機械配向ボンド磁石の保磁力iHc、残留磁化Brおよび最大エネルギー積BHmaxを測定した。
【実施例0047】
(実施例1)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末として、比表面積5.8m2/gの炭酸ストロンチウムと、比表面積4.9m2/gでありFeに対するモル比として0.0067のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を準備し、また融剤として、比表面積0.2m2/gの塩化バリウムとを準備した。ここでマンガンを含むヘマタイトとしては、ヘマタイトの結晶中でFeサイトの一部がMn元素により置換されている、鉄鋼製造工程由来のものを準備した(以下実施例および比較例においても同様)。準備した炭酸ストロンチウム、ヘマタイト、酸化ビスマスおよび塩化バリウムを、モル比Sr:Fe:Mn=8.23:91.16:0.61となり、混合物中の塩化バリウムの質量割合が、2.8質量%となるように秤量して振動ミルにより混合することで、混合物を得た。ここで、ヘマタイトに含まれるMn量に対する金属元素A(Sr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)の原料に含まれる金属元素Aの合計量のモル比Mn/(Sr+Ba+Pb)は0.065であり、ヘマタイトに含まれるFeおよびMnの合計量に対する金属元素Aの原料に含まれる金元素Aの合計量のモル比(Fe+Mn)/(Sr+Ba+Pb)は9.75である。この混合物にパンペレタイザー中で原料に対して10重量パーセントの水を加えながら造粒し、得られた直径3~10nmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において1150℃で1時間焼成して焼成物を得た。この焼成物100質量部と水150質量部とをアトライターに投入し、媒体として直径5.56mmのスチール製ボールを使用して、90分間粉砕処理を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過することにより得られた固形物を大気中において300℃で12時間乾燥させて、乾燥ケーキを得た。この乾燥ケーキをミキサー(共立理工株式会社製、SK-M10)で解砕して得られた解砕物を電気炉により大気中において950℃で30分間アニールして、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。以上の原料および製造方法を表1に示す(実施例2~4および比較例1についても同様)。
【0048】
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉のXRD測定を実施したところ、当該磁性粉がマグネトプランバイト型結晶の単相であることが確認された(以下の実施例および比較例についても同様)。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の組成分析を実施し、平均粒子径、比表面積、圧縮密度、圧粉体の磁気特性、粉末磁気特性および粒度分布を測定した(以下の実施例および比較例についても同様)。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いて機械配向ボンド磁石の製造試験を実施して得られたボンド磁石の磁気特性を測定した(実施例2~4および比較例1についても同様)。以上の測定結果を、表2および3に示す(実施例2~4および比較例1についても同様)。
【0049】
以上の測定の結果、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.8であり、xは0.079であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.87であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は0.99μmであり、圧縮密度は3.10g/cm3であり、比表面積は2.59m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3763Oeであった。
【0050】
(実施例2)
Feに対するモル比として0.0064のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用い、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比がSr:Fe:Mn=8.23:91.19:0.58となるように秤量して用いたこと以外は実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.9であり、xは0.069であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.87であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は0.97μmであり、圧縮密度は3.10g/cm3であり、比表面積は2.48m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3645Oeであった。
【0051】
(実施例3)
Feに対するモル比として0.0055のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用い、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比がSr:Fe:Mn=8.23:91.27:0.50となるように秤量して用いたこと以外は実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.8であり、xは0.062であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.88であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.02μmであり、圧縮密度は3.13g/cm3であり、比表面積は2.43m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3640Oeであった。
【0052】
(実施例4)
Feに対するモル比として0.0049のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用い、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比がSr:Fe:Mn=8.23:91.31:0.45となるように秤量して用いたこと以外は実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.0であり、xは0.055であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.87であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は0.99μmであり、圧縮密度は3.12g/cm3であり、比表面積は2.47m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3599Oeであった。
【0053】
(比較例1)
Feに対するモル比として0.0046のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用い、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比がSr:Fe:Mn=8.23:91.35:0.42となるように秤量して用いたこと以外は実施例1と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.8であり、xは0.052であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.87であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は0.98μmであり、圧縮密度は3.09g/cm3であり、比表面積は2.52m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3537Oeであった。
【0054】
実施例1~4および比較例1の結果から、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉組成となるようにA元素、FeおよびMnの各原料を混合し、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉を得ることで、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、当該六方晶フェライト磁性粉を用いて得られるボンド磁石の保磁力を大きくすることができること、およびxの値が大きい(Mn含有量が多い)ほど保磁力向上の効果が大きいことが判る。
【0055】
(実施例5)
ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の原料となる粉末として、比表面積5.8m2/gの炭酸ストロンチウムと、比表面積4.9m2/gでありFeに対するモル比として0.0079のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を準備し、また融剤として、比表面積2.3m2/gの酸化ビスマス(III)と比表面積0.2m2/gの塩化バリウムとを準備した。準備した炭酸ストロンチウム、ヘマタイト、酸化ビスマスおよび塩化バリウムを、モル比Sr:Fe:Mn=8.26:91.01:0.72となり、混合物中の酸化ビスマスおよび塩化バリウムの質量割合が、それぞれ0.33質量%および1.9質量%となるように秤量して振動ミルにより混合することで、混合物を得た。ここで、ヘマタイトに含まれるMn量に対する金属元素A(Sr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)の原料に含まれる金属元素Aの合計量のモル比Mn/(Sr+Ba+Pb)は0.080であり、つヘマタイトに含まれるFeおよびMnの合計量に対する金属元素Aの原料に含まれる金元素Aの合計量のモル比(Fe+Mn)/(Sr+Ba+Pb)は10.12である。この混合物にパンペレタイザー中で原料に対して10質量%の水を加えながら造粒し、得られた直径3~10nmの球状の造粒物を内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において1270℃(焼成温度)で1時間焼成して焼成物を得た。この焼成物100質量部と水150質量部とをアトライターに投入し、媒体として直径5.56mmのスチール製ボールを使用して、90分間粉砕処理を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過することにより得られた固形物を大気中において300℃で12時間乾燥させて、乾燥ケーキを得た。この乾燥ケーキをミキサー(共立理工株式会社製、SK-M10)で解砕して得られた解砕物を、振動ボールミル(株式会社村上精機工作所製のUras Vibrator KEC-8-YH)により、媒体として直径12mmのスチール製ボールを使用して、回転数1800rpmで14分間粉砕処理を行った。このようにして得られた粉砕物を電気炉により大気中において950℃で30分間アニールして、ボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。以上の原料および製造条件を表4に示す(以下の実施例および比較例についても同様)。
【0056】
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を用いて磁場配向ボンド磁石の製造試験を実施して得られたボンド磁石の磁気特性を測定した。ボンド磁石の磁気特性の測定結果を表に示す。また、ボンド磁石用フェライト磁性粉の各評価項目の測定結果を、表5および6に示す(以上について、以下の実施例および比較例でも同様)
【0057】
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.5であり、xは0.098であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.37μmであり、圧縮密度は3.33g/cm3であり、比表面積は1.70m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3225Oeであった。
【0058】
(実施例6)
Feに対するモル比として0.0063のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.27:91.17:0.57となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1260℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.9であり、xは0.075であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.28μmであり、圧縮密度は3.34g/cm3であり、比表面積は1.78m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは3023Oeであった。
【0059】
(比較例2)
Feに対するモル比として0.0043のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.27:91.34:0.39となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1260℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.1であり、xは0.049であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.29μmであり、圧縮密度は3.36g/cm3であり、比表面積は1.92m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは2957Oeであった。
【0060】
実施例5、6および比較例2の結果から、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉組成となるように元素A、FeおよびMnの各原料を混合し、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉を得ることで、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、当該六方晶フェライト磁性粉を用いて得られるボンド磁石の保磁力を大きくすることができること、およびxの値が大きい(Mn含有量が多い)ほど保磁力向上の効果が大きいことが判る。
【0061】
(実施例7)
Feに対するモル比として0.0100のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.26:90.83:0.91となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1295℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.7であり、xは0.127であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.91であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.44μmであり、圧縮密度は3.40g/cm3であり、比表面積は1.67m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは2900Oeであった。
【0062】
(実施例8)
Feに対するモル比として0.0092のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.26:90.90:0.84となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1290℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.6であり、xは0.121であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.42μmであり、圧縮密度は3.42g/cm3であり、比表面積は1.74m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは2890Oeであった。
【0063】
(実施例9)
Feに対するモル比として0.0081のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.26:90.99:0.74となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1285℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは11.9であり、xは0.107であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.39μmであり、圧縮密度は3.42g/cm3であり、比表面積は1.69m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは2875Oeであった。
【0064】
(比較例3)
Feに対するモル比として0.0045のマンガンを含むヘマタイト(α酸化鉄)を用いたこと、炭酸ストロンチウムおよびヘマタイトを、モル比Sr:Fe:Mn=8.27:91.32:0.41となるように秤量して用いたこと、焼成温度を1300℃としたこと以外は実施例5と同様の手順によりボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を得た。
得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉を化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1と表記した場合のnは10.8であり、xは0.050であり、Sr/(Sr+Ba)モル比は0.90であった。また、得られたボンド磁石用六方晶フェライト磁性粉の平均粒子径は1.46μmであり、圧縮密度は3.39g/cm3であり、比表面積は1.60m2/gであった。また、得られたボンド磁石のiHcは2852Oeであった。
【0065】
実施例7~9および比較例3の結果から、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉組成となるように元素A、FeおよびMnの各原料を混合し、化学式AFen-xMnxO1.5n-0.5x+1(ただしn=10.0~12.0、x=0.054~0.200、AはSr、Ba、Pbから選ばれる1種以上)で表される六方晶フェライト磁性粉を得ることで、六方晶フェライト磁性粉の粒子径を小さくせずに、当該六方晶フェライト磁性粉を用いて得られるボンド磁石の保磁力を大きくすることができること、およびxの値が大きい(Mn含有量が多い)ほど保磁力向上の効果が大きいことが判る。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】