(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156400
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/16 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B66B1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060064
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HA02
3F502HB01
3F502HB17
3F502JA91
(57)【要約】
【課題】各昇降路内に複数の乗りかごが互いに独立に設けられたエレベータにおいて、輸送効率を著しく向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】乗場呼びに対して、制御装置は、出発階について「特定の停止階である」と判断した場合において、更に、行先階について「p番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーン」に属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを割当候補として選択する。また、制御装置は、出発階について「特定の停止階でない」と判断した場合において、更に、移動方向について「逆方向」であると判断し、且つ、行先階について「q番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーン」に属すると特定した場合には、各昇降路内のq番目の乗りかごを割当候補として選択する。そして、制御装置は、選択した割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに乗場呼びを割り当てる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各昇降路内において特定の停止階と他の停止階との間に、当該特定の停止階に最も近い位置で昇降する乗りかごを1番目として、当該1番目から順番にN番目(Nは2以上の整数)までの乗りかごが互いに独立に設けられているエレベータ、に適用可能な制御装置であって、
前記特定の停止階と前記他の停止階との間の区間内に、当該区間に含まれている複数の停止階のうちの連続した一部の停止階で構成されるグループを1つのゾーンとして、前記特定の停止階に最も近い1番目から順番にN番目まで設定されたN個のゾーンに関する情報を含んだゾーン情報と、
乗場での行先階の入力による乗場呼びがあった場合に、その乗場がある停止階を出発階として、当該出発階が前記特定の停止階であるか否かの判断と、その出発階から前記行先階への移動方向が前記特定の停止階と同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、前記ゾーン情報に基づいて前記行先階が何番目のゾーンに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路において当該乗場呼びを割り当てることができる乗りかごを割当候補として選択する選択処理部と、
前記選択処理部によって選択された前記割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに前記乗場呼びを割り当てる割当処理部と、
を備え、
前記選択処理部は、
前記出発階について前記特定の停止階であると判断した場合において、更に、前記行先階についてp番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを前記割当候補として選択し、
前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について逆方向であると判断し、且つ、前記行先階についてq番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のq番目の乗りかごを前記割当候補として選択する、エレベータの制御装置。
【請求項2】
M番目(Mは1≦M≦N-1を満たす整数)のゾーンと(M+1)番目のゾーンとの境界となる停止階を含む、連続した幾つかの停止階、で構成されるグループをM番目のマージン区間として、前記ゾーン情報には、1番目から(N-1)番目までのマージン区間に関する情報が更に含まれており、
前記選択処理部は、前記乗場呼びがあった場合に、前記ゾーン情報に基づいて前記行先階が何番目のマージン区間に属するかの特定をも選択的に行うことが可能であり、
前記選択処理部は、前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について逆方向であると判断し、且つ、前記行先階についてs番目(sはq≦s≦N-1を満たす整数)のマージン区間に属すると特定した場合には、各昇降路内のs番目及び(s+1)番目の乗りかごを前記割当候補として選択する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記選択処理部は、前記乗場呼びがあった場合に、前記ゾーン情報に基づいて前記出発階が何番目のゾーンに属するかの特定をも選択的に行うことが可能であり、
前記選択処理部は、前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について同方向であると判断し、且つ、前記出発階についてr番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のr番目からN番目までの乗りかごを前記割当候補として選択する、請求項1又は2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
M番目(Mは1≦M≦N-1を満たす整数)のゾーンと(M+1)番目のゾーンとの境界となる停止階を含む、連続した幾つかの停止階、で構成されるグループをM番目のマージン区間として、前記ゾーン情報には、1番目から(N-1)番目までのマージン区間に関する情報が更に含まれており、
前記選択処理部は、前記乗場呼びがあった場合に、前記ゾーン情報に基づいて前記出発階が何番目のマージン区間に属するかの特定をも選択的に行うことが可能であり、
前記選択処理部は、前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について同方向であると判断し、且つ、前記出発階についてt番目(tは1≦t≦N-1を満たす整数)のマージン区間に属すると特定した場合には、各昇降路内のt番目からN番目までの乗りかごを前記割当候補として選択する、請求項3に記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
各昇降路内において特定の停止階と他の停止階との間に、当該特定の停止階に最も近い位置で昇降する乗りかごを1番目として、当該1番目から順番にN番目(Nは2以上の整数)までの乗りかごが互いに独立に設けられているエレベータ、に適用可能な制御装置であって、
前記特定の停止階と前記他の停止階との間の区間内に、当該区間に含まれている複数の停止階のうちの連続した一部の停止階で構成されるグループを1つのゾーンとして、前記特定の停止階に最も近い1番目から順番にN番目まで設定されたN個のゾーンに関する情報を含んだゾーン情報と、
乗場での行先階の入力による乗場呼びがあった場合に、その乗場がある停止階を出発階として、当該出発階が前記特定の停止階であるか否かの判断と、その出発階から前記行先階への移動方向が前記特定の停止階と同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、前記ゾーン情報に基づいて前記行先階が何番目のゾーンに属するかの特定と、前記ゾーン情報に基づいて前記出発階が何番目のゾーンに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路において当該乗場呼びを割り当てることができる乗りかごを割当候補として選択する選択処理部と、
前記選択処理部によって選択された前記割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに前記乗場呼びを割り当てる割当処理部と、
を備え、
前記選択処理部は、
前記出発階について前記特定の停止階であると判断した場合において、更に、前記行先階についてp番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを前記割当候補として選択し、
前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について同方向であると判断し、且つ、前記出発階についてr番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のr番目からN番目までの乗りかごを前記割当候補として選択する、エレベータの制御装置。
【請求項6】
M番目(Mは1≦M≦N-1を満たす整数)のゾーンと(M+1)番目のゾーンとの境界となる停止階を含む、連続した幾つかの停止階、で構成されるグループをM番目のマージン区間として、前記ゾーン情報には、1番目から(N-1)番目までのマージン区間に関する情報が更に含まれており、
前記選択処理部は、前記乗場呼びがあった場合に、前記ゾーン情報に基づいて前記出発階が何番目のマージン区間に属するかの特定をも選択的に行うことが可能であり、
前記選択処理部は、前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について同方向であると判断し、且つ、前記出発階についてt番目(tは1≦t≦N-1を満たす整数)のマージン区間に属すると特定した場合には、各昇降路内のt番目からN番目までの乗りかごを前記割当候補として選択する、請求項5に記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの昇降路内に複数の乗りかごが設けられたエレベータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化が顕著であり、エレベータは、そのような高層建築物での移動手段として必須になってきている。また、高層建築物では、高層化に伴って利用者数が増大するため、利用者をエレベータで効率良く輸送するためには乗りかごの数を増やすことが必要になる。
【0003】
一方、従来から用いられているエレベータの多くは、1つの昇降路内に1つの乗りかごが設けられたものである。このため、そのようなエレベータを高層建築物に適用しようとすると、1つの乗りかごにつき1つの昇降路を設けなければならず、乗りかごを増やすためには昇降路の設置数を増やさざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したように昇降路の設置数を増やした場合、建築面積におけるエレベータの占有率が大きくなるという問題があった。そこで、そのような問題を解決し得るエレベータとして、1つの昇降路内に複数の乗りかごが互いに独立に設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
その一方で、そのようなエレベータにおいては、各乗りかごは、同じ昇降路内の他の乗りかごを越えて移動することができないため、1つの昇降路内において乗りかごどうしが互いの移動を妨げてしまうといった問題が生じやすく、実用化できるレベルまで輸送効率を向上させることが困難であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、各昇降路内に複数の乗りかごが互いに独立に設けられたエレベータにおいて、輸送効率を著しく向上させることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御装置は、次のようなエレベータに適用可能である。ここで、当該エレベータは、各昇降路内において特定の停止階と他の停止階との間に、当該特定の停止階に最も近い位置で昇降する乗りかごを1番目として、当該1番目から順番にN番目(Nは2以上の整数)までの乗りかごが互いに独立に設けられたエレベータである。
【0009】
上記制御装置は、ゾーン情報と、選択処理部と、割当処理部と、を備える。ここで、特定の停止階と他の停止階との間の区間内には、当該区間に含まれている複数の停止階のうちの連続した一部の停止階で構成されるグループを1つのゾーンとして、特定の停止階に最も近い1番目から順番にN番目までのN個のゾーンが設定されており、ゾーン情報には、当該N個のゾーンに関する情報が含まれている。選択処理部は、乗場での行先階の入力による乗場呼びがあった場合に、その乗場がある停止階を出発階として、当該出発階が特定の停止階であるか否かの判断と、その出発階から行先階への移動方向が特定の停止階と同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、ゾーン情報に基づいて行先階が何番目のゾーンに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路において当該乗場呼びを割り当てることができる乗りかごを割当候補として選択する。具体的には、選択処理部は、出発階について「特定の停止階である」と判断した場合において、更に、行先階について「p番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーン」に属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを割当候補として選択する。また、選択処理部は、出発階について「特定の停止階でない」と判断した場合において、更に、移動方向について「逆方向」であると判断し、且つ、行先階について「q番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーン」に属すると特定した場合には、各昇降路内のq番目の乗りかごを割当候補として選択する。そして、割当処理部は、選択処理部によって選択された割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに乗場呼びを割り当てる。
【0010】
上記制御装置によれば、特定の停止階を出発階とする乗場呼びに対しては、乗りかごを、それに対応したゾーンへの輸送を行うように制御することができる。このような制御によるエレベータの運転を、以下では「ゾーン運転」と称する。
【0011】
そして、このゾーン運転では、各乗りかごの可動域は、特定の停止階から自身に対応したゾーンまでの範囲となる。そこで、特定の停止階以外の停止階を出発階とする乗場呼びがあった場合にも、そのような可動域を考慮して当該可動域の途中で乗りかごに利用者を効率良く乗車させることが可能となるように、次のように割当候補が選択される。即ち、特定の停止階以外の停止階から当該特定の停止階と逆方向にある行先階へ移動(階間移動)するための乗場呼びに対しては、その行先階が属するゾーン(q番目のゾーン)に対応した乗りかご(q番目の乗りかご)が割当候補として選択される。これにより、各乗りかごが、特定の停止階から自身のゾーンへの輸送だけでなく、可動域内にある停止階から自身のゾーンへの輸送にも効率良く使用されることになる。このように、上記制御装置によれば、特定の停止階からのゾーン運転を行いつつ、特定の停止階以外の停止階からの当該特定の停止階と逆方向への階間移動をも効率良く可能にすることができる。
【0012】
上記制御装置において、M番目(Mは1≦M≦N-1を満たす整数)のゾーンと(M+1)番目のゾーンとの境界となる停止階を含む、連続した幾つかの停止階、で構成されるグループをM番目のマージン区間として、ゾーン情報には、1番目から(N-1)番目までのマージン区間に関する情報が更に含まれていてもよい。また、選択処理部は、乗場呼びがあった場合に、ゾーン情報に基づいて行先階が何番目のマージン区間に属するかの特定をも選択的に行うことが可能であってもよい。そして、選択処理部は、出発階について特定の停止階でないと判断した場合において、更に、移動方向について逆方向であると判断し、且つ、行先階についてs番目(sはq≦s≦N-1を満たす整数)のマージン区間に属すると特定した場合には、各昇降路内のs番目及び(s+1)番目の乗りかごを割当候補として選択してもよい。
【0013】
この構成によれば、行先階がマージン区間(s番目のマージン区間)に属している場合には、そのマージン区間内に境界がある2つのゾーン(s番目及び(s+1)番目のゾーン)にそれぞれ対応した乗りかご(s番目及び(s+1)番目の乗りかご)が何れも割当候補として選択されるため、割当候補の数が2つに増えることになる。このように割当候補の数が増えることにより、割当処理において、より最適な乗りかごを抽出することが可能となり、その結果として輸送効率を向上させることが可能になる。
【0014】
上記制御装置において、選択処理部は、乗場呼びがあった場合に、ゾーン情報に基づいて出発階が何番目のゾーンに属するかの特定をも選択的に行うことが可能であってもよい。そして、選択処理部は、出発階について特定の停止階でないと判断した場合において、更に、移動方向について同方向であると判断し、且つ、出発階についてr番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のr番目からN番目までの乗りかごを割当候補として選択してもよい。
【0015】
この構成は、上述した各乗りかごの可動域を考慮して、r番目のゾーンへはr番目からN番目までの乗りかごが到達できることを利用したものである。そして、特定の停止階以外の停止階から当該特定の停止階と同方向にある行先階へ移動(階間移動)するための乗場呼びに対しては、その出発階が属するゾーン(r番目のゾーン)に到達することができる乗りかご(r番目からN番目の乗りかご)が割当候補として選択される。これにより、各乗りかごが、特定の停止階から自身のゾーンへの輸送(ゾーン運転による輸送)だけでなく、可動域内にある停止階から特定の停止階と同方向への輸送(ゾーン運転とは逆方向の輸送)にも効率良く使用されることになる。このように、上記構成によれば、特定の停止階以外の停止階からの当該特定の停止階と同方向への階間移動をも効率良く可能にすることができる。
【0016】
上記制御装置において、選択処理部は、乗場呼びがあった場合に、ゾーン情報に基づいて出発階が何番目のマージン区間に属するかの特定をも選択的に行うことが可能であってもよい。そして、選択処理部は、出発階について特定の停止階でないと判断した場合において、更に、移動方向について同方向であると判断し、且つ、出発階についてt番目(tは1≦t≦N-1を満たす整数)のマージン区間に属すると特定した場合には、各昇降路内のt番目からN番目までの乗りかごを割当候補として選択してもよい。
【0017】
この構成によれば、出発階がマージン区間(t番目のマージン区間)に属している場合には、その出発階が(t+1)番目のゾーン側にあったとしても、(t+1)番目からN番目までの乗りかごだけでなく、t番目のゾーンに属するt番目の乗りかごも割当候補として選択され、割当候補の数が増えることになる。このように割当候補の数が増えることにより、割当処理において、より最適な乗りかごを抽出することが可能となり、その結果として輸送効率を向上させることが可能になる。
【0018】
上述した本発明に係る制御装置は、選択処理部が、出発階について「特定の停止階である」と判断した場合において、更に、行先階について「p番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーン」に属すると特定した場合に、各昇降路内のp番目の乗りかごを割当候補として選択する処理と、出発階について特定の停止階でないと判断した場合において、更に、移動方向について同方向であると判断し、且つ、出発階についてr番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合に、各昇降路内のr番目からN番目までの乗りかごを割当候補として選択する処理と、を行うものに変更されてもよい。
【0019】
上記制御装置によれば、各乗りかごを、特定の停止階から自身のゾーンへの輸送だけでなく、移動方向が特定の停止階と同方向となる輸送にも使用することが可能になる。このように、上記制御装置によれば、特定の停止階からのゾーン運転を行いつつ、特定の停止階以外の停止階からの当該特定の停止階と同方向への階間移動をも可能にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各昇降路内に複数の乗りかごが互いに独立に設けられたエレベータにおいて、輸送効率を著しく向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】エレベータの全体構成を示した概念図である。
【
図2】実施形態で用いられる各種設定をエレベータの構成と共に示した概念図である。
【
図3】(A)装置管理データの一例を示した概念図、及び(B)実施形態で用いられるゾーン情報の一例を示した概念図である。
【
図4】実施形態で実行される制御処理を示したフローチャートである。
【
図5】第1変形例で用いられる各種設定をエレベータの構成と共に示した概念図である。
【
図6】第1変形例で用いられるゾーン情報の一例を示した概念図である
【
図7】第1変形例で実行される制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1]エレベータの全体構成
図1は、エレベータの全体構成を示した概念図である。
図1に示されるように、エレベータは、乗りかごGと、行先階登録装置101と、エレベータ制御装置102と、群管理制御装置103と、を備える。そして、群管理制御装置103が、本発明に係る制御装置の一実施形態である。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0023】
<乗りかご>
図2は、本実施形態で用いられる各種設定をエレベータの構成と共に示した概念図である。
図2に示されるように、エレベータには、昇降路Rが複数設けられ、且つ、各昇降路R内に乗りかごGがN台(Nは2以上の整数)設けられている。尚、特に限定されるものではないが、
図2の例では、各昇降路R内に乗りかごGが3台設けられた場合(即ち、N=3の場合)が示されている。
【0024】
また、エレベータには、ロビー階など、建物に入って初めてエレベータの利用が可能になる特定の停止階Ftが設けられている。本実施形態では、各昇降路R内の乗りかごGの台数(N台)に対応させて、特定の停止階FtがN個設けられている。尚、特定に限定されるものではないが、
図2の例では、エレベータに設けられたKr個の停止階F(1)~F(Kr)のうちの最下階からのN個の停止階F(1)~F(N)が特定の停止階Ft(1)~Ft(N)になっている場合が示されている。
【0025】
そして、各昇降路R内において特定の停止階Ft(1)~Ft(N)と他の停止階F(特定に限定されるものではないが、
図2の例では最上階となる停止階F(Kr))との間に、当該特定の停止階Ftに最も近い位置で昇降する乗りかごGを1番目として、当該1番目から順番にN番目までの乗りかごG(1)~G(N)が互いに独立に設けられている。また、1番目~N番目の乗りかごG(1)~G(N)は、特定の停止階Ft(1)~Ft(N)に1対1でそれぞれ対応付けられており、特定の停止階Ft(1)~Ft(N)への停止に関しては、各乗りかごG(n)(nは1≦n≦Nを満たす番号)は、自身に対応する特定の停止階Ft(n)への停止だけが許可されている。
【0026】
更に、特定の停止階Ft(N)と上記他の停止階F(
図2の例では、最上階となる停止階F(Kr))との間の運行区間内に、当該運行区間に含まれている複数の停止階F(
図2の例では、停止階F(N)~F(Kr))のうちの連続した一部の停止階Fで構成されるグループを1つのゾーンZとして、特定の停止階Ft(N)に最も近い1番目から順番にN番目までのN個のゾーンZ(1)~Z(N)が設定されている。尚、このように設定されたゾーンZが、エレベータの制御においてどのように用いられるのかについては、後述する。
【0027】
<行先階登録装置>
行先階登録装置101は、各階の乗場(
図1では符号Hで示されている)に設置されており、それらの行先階登録装置101には、それぞれを識別するための装置情報Pdが設定されている。また、各行先階登録装置101には、入力部としての機能と表示部としての機能とを兼ね備えたタッチパネル1が設けられており、当該タッチパネル1には、行先階Fdを入力するための入力画面や、各種情報を利用者に伝えるための報知画面などが表示される。ここで、当該報知画面に表示される各種情報には、乗車すべき乗りかごGの情報(本実施形態では、その乗りかごGが設けられている昇降路Rの情報)や、特定の停止階Ft(1)~Ft(N)の何れかで行先階Fdが入力された場合には、そのうちのどの階から乗りかごGに乗車すべきかを知らせる情報などが含まれる。尚、各行先階登録装置101には、タッチパネル1に限らず、入力部(行先階Fdなどを入力するための機械式のボタンなど)と表示部(表示専用のモニタなど)とが別個に設けられていてもよい。
【0028】
タッチパネル1で入力された行先階Fdなどの情報は、後述する群管理制御装置103で実行されるエレベータの制御に用いられる。そこで、行先階登録装置101は、タッチパネル1にて行先階Fdなどの情報が利用者によって入力されるごとに、適宜、当該情報を群管理制御装置103へ送信する。また、行先階登録装置101は、情報の送信元である自身の位置を群管理制御装置103に認識させるために、その行先階登録装置101の装置情報Pdも、行先階Fdなどの情報と共に群管理制御装置103へ送信する。
【0029】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置102は、昇降路Rに1つずつ対応させて設けられており、自身に対応する昇降路Rに設けられているN台の乗りかごGの動作を互いに独立に制御する(
図1参照)。そして、エレベータ制御装置102は、群管理制御装置103によって一元的に管理及び制御される。
【0030】
<群管理制御装置>
群管理制御装置103は、記憶部2と制御部3とを有する(
図1参照)。
【0031】
記憶部2は、ROMやRAMなどのメモリであり、当該記憶部2には、エレベータの制御に必要な各種情報が保存される。本実施形態では、エレベータの制御に必要な情報として、装置管理データDdとゾーン情報Dzとが記憶部2に保存されている。
【0032】
図3(A)は、装置管理データDdの一例を示した概念図である。
図3(A)に示されるように、装置管理データDdには、行先階登録装置101の装置情報Pdごとに、当該行先階登録装置101に関する他の情報である装置アドレスPa及び設置階Fsが予め対応付けて保存されている。ここで、装置アドレスPaは、装置情報Pdで識別される行先階登録装置101に対する動作制御や当該行先階登録装置101への情報送信などに使用されるアドレス(IPアドレスなど)である。設置階Fsは、装置情報Pdで識別される行先階登録装置101が設置されている階である。
【0033】
図3(B)は、実施形態で用いられるゾーン情報Dzの一例を示した概念図である。
図3(B)に示されるように、ゾーン情報Dzには、上記運行区間内に設定されているN個のゾーンZ(1)~Z(N)に関する情報が含まれている。具体的には、ゾーン情報Dz内において、ゾーンZごとに、そのゾーンZに属する停止階Fが対応付けられている。尚、
図2及び
図3(B)では、上下に隣接する2つのゾーンZの境界となる停止階Fの番号がmで表されている。より詳細には、N個のゾーンZ(1)~Z(N)によって形成される(N-1)個の境界について、当該(N-1)個の境界となる停止階Fの番号がそれぞれm(1)~m(N-1)で表されている。
【0034】
制御部3は、CPUなどの処理装置である。そして、乗場呼び(乗場での行先階Fdの入力)があり、エレベータの制御に必要な情報(行先階Fd及び装置情報Pdを含む)を群管理制御装置103が行先階登録装置101から受信した場合に、制御部3が、エレベータを制御するための制御処理として、選択処理と、割当処理と、を実行する。具体的には、以下のとおりである。
【0035】
選択処理では、制御部3は、行先階Fdの入力が行われた乗場がある停止階F(本実施形態では、行先階Fdの入力が行われた行先階登録装置101の設置階Fs)を出発階Fcとして、当該出発階Fcが特定の停止階Ftであるか否かの判断と、その出発階Fcから行先階Fdへの移動方向Dmが特定の停止階Ftと同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、ゾーン情報Dzに基づいて行先階Fdが何番目のゾーンZに属するかの特定と、ゾーン情報Dzに基づいて出発階Fcが何番目のゾーンZに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路Rにおいて上記乗場呼びを割り当てることができる乗りかごGを割当候補Gcとして選択する。本実施形態では、制御部3は、選択処理として以下の(1)~(3)の処理を実行することができる。
【0036】
(1)制御部3は、出発階Fcについて「特定の停止階Ftである」と判断した場合において、更に、行先階Fdについて「p番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンZ(p)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のp番目の乗りかごG(p)を割当候補Gcとして選択する。
【0037】
(2)制御部3は、出発階Fcについて「特定の停止階Ftでない」と判断した場合において、更に、移動方向Dmについて「逆方向」であると判断し、且つ、行先階Fdについて「q番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーンZ(q)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のq番目の乗りかごG(q)を割当候補Gcとして選択する。
【0038】
(3)制御部3は、出発階Fcについて「特定の停止階Ftでない」と判断した場合において、更に、移動方向Dmについて「同方向」であると判断し、且つ、出発階Fcについて「r番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンZ(r)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のr番目からN番目までの乗りかごG(r)~G(N)を割当候補Gcとして選択する。
【0039】
割当処理では、制御部3は、選択処理にて選択した割当候補Gcの中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに上記乗場呼びを割り当てる。
【0040】
本実施形態では、選択処理及び割当処理はそれぞれ、制御部3内に構成される選択処理部31及び割当処理部32によって実行される(
図1参照)。具体的には、これらの処理部は、制御部3である処理装置(CPUなど)にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成されるものであり、そのようなプログラムは、記憶部2に保存されている。そして、当該プログラムは、携帯可能な記憶媒体に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されたものが記憶部2に保存されてもよいし、サーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされたものが記憶部2に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、群管理制御装置103内に制御部3を回路で構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0041】
以下、群管理制御装置103で実行される制御処理(選択処理及び割当処理を含む)の詳細について説明する。
【0042】
[2]群管理制御装置で実行される制御処理
図4は、本実施形態で実行される制御処理を示したフローチャートである。この制御処理は、乗場呼び(乗場での行先階Fdの入力)があり、エレベータの制御に必要な情報(行先階Fd及び装置情報Pdを含む)を群管理制御装置103が行先階登録装置101から受信した場合に開始される。
【0043】
制御処理が開始されると、群管理制御装置103の制御部3は、行先階登録装置101から受信した情報(受信情報Pr)に含まれている装置情報Pdを用いて、装置管理データDdから、その装置情報Pdに対応する装置アドレスPa及び設置階Fsを読み出す(ステップS100)。ここで読み出された設置階Fsは、乗場呼び(乗場での行先階Fdの入力)が行われた停止階Fに一致するため、当該乗場呼びを行った利用者が乗りかごGに乗車しようとしている出発階Fcとして用いることができる。
【0044】
そこで、制御部3は、乗場呼びを行った利用者について、特定の停止階Ftから乗車しようとしているのか、それとも、特定の停止階Ft以外の停止階Fから乗車しようとしているのかを判断するべく、ステップS100で読み出した設置階Fsを出発階Fcとして、当該出発階Fcが特定の停止階Ftであるか否かを判断する(ステップS101)。具体的には、制御部3は、出発階Fcが特定の停止階Ft(1)~Ft(N)の何れかと一致するか否かを判断することにより、出発階Fcが特定の停止階Ftであるか否かを判断する。
【0045】
制御部3は、ステップS101にて「特定の停止階Ftである(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、乗場呼びを行った利用者は特定の停止階Ftから乗車しようとしていると判断できる。この場合、制御部3は、ゾーン情報Dz(
図3(B)参照)に基づいて、受信情報Pr内の行先階Fdが何番目のゾーンZに属するかを特定する(ステップS102)。具体的には、制御部3は、ゾーン情報Dzを参照することにより、受信情報Pr内の行先階Fdと一致する停止階Fが対応付けているゾーンZの番号を抽出し、その番号によって当該行先階Fdが属するゾーンZを特定する。
【0046】
そして、制御部3は、ステップS102にて行先階Fdについて「p番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンZ(p)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のp番目の乗りかごG(p)を割当候補Gcとして選択し(ステップS103)、その後、割当処理へ移行する。尚、ステップS103では、昇降路Rごとにp番目の乗りかごG(p)が割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数は、昇降路Rの数に応じて増えることになる。
【0047】
この場合の割当処理では、制御部3は、ステップS103で選択した割当候補Gc(昇降路Rごとに選択されたp番目の乗りかごG(p))の中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに、そのときの処理対象である乗場呼び(出発階Fc及び行先階Fd)を割り当てる。
【0048】
そして、制御部3は、乗場呼びを割り当てた乗りかごGが設けられている昇降路Rの情報(例えば、どの乗降口から乗車すべきかの情報など)を利用者に伝えるための報知画面を、ステップS100で読み出した装置アドレスPaで特定される行先階登録装置101のタッチパネル1に表示する。尚、報知画面には、昇降路Rの情報に加えて、利用者が入力した行先階Fdなどの情報が表示されてもよい。
【0049】
ここで、本実施形態では、各昇降路R内の乗りかごG(1)~G(N)は、自身に対応する特定の停止階Ft(1)~Ft(N)への停止だけが許可されている。このため、特定の停止階Ft(1)~Ft(N)の何れかの乗場で利用者が乗場呼びを行った場合には、その乗場呼びを行ったときの階が、当該乗場呼びに割り当てられた乗りかごGが停止できる特定の停止階Ftとは別の階であるといった場合が起こり得る。その場合には、制御部3は、報知画面において、割り当てた乗りかごGが停止できる特定の停止階Ftを更に表示すると共に、その階へエスカレータなどで移動するように利用者に促す表示を行ってもよい。
【0050】
このような選択処理(ステップS101~S103)及び割当処理によれば、特定の停止階Ftを出発階Fcとする乗場呼びに対しては、乗りかごGを、それに対応したゾーンZへの輸送を行うように制御することができる。このような制御によるエレベータの運転を、以下では「ゾーン運転」と称する。
【0051】
そして、このゾーン運転では、各乗りかごGの可動域は、特定の停止階Ftから自身に対応したゾーンZまでの範囲となる。そこで本実施形態では、特定の停止階Ft以外の停止階Fを出発階Fcとする乗場呼びがあった場合にも、そのような可動域を考慮して当該可動域の途中で乗りかごGに利用者を効率良く乗車させることが可能となるように、以下のような制御が行われる。
【0052】
制御部3は、ステップS102にて「特定の停止階Ftでない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、乗場呼びを行った利用者は特定の停止階Ft以外の停止階Fから乗車しようとしていると判断できる。この場合、制御部3は、その利用者が上方向又は下方向のどちらの方向へ移動しようとしているのかを判断するべく、出発階Fcから行先階Fdへの移動方向Dmが特定の停止階Ftと同方向又は逆方向のどちらであるのかを判断する(ステップS110)。
図2の例では、特定の停止階Ftと同方向が下方向に対応し、特定の停止階Ftと逆方向が上方向に対応している。
【0053】
制御部3は、ステップS110にて移動方向Dmについて「逆方向」(
図2の例では上方向)であると判断した場合には、ゾーン情報Dz(
図3(B)参照)に基づいて、行先階Fdが何番目のゾーンZに属するかを特定する(ステップS111)。具体的には、制御部3は、ゾーン情報Dzを参照することにより、行先階Fdと一致する停止階Fが対応付けているゾーンZの番号を抽出し、その番号によって当該行先階Fdが属するゾーンZを特定する。
【0054】
そして、制御部3は、ステップS111にて行先階Fdについて「q番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーンZ(q)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のq番目の乗りかごG(q)を割当候補Gcとして選択し(ステップS112)、その後、割当処理へ移行する。尚、ステップS112では、昇降路Rごとにq番目の乗りかごG(q)が割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数は、昇降路Rの数に応じて増えることになる。
【0055】
この場合の割当処理では、制御部3は、ステップS112で選択した割当候補Gc(昇降路Rごとに選択されたq番目の乗りかごG(q))の中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに、そのときの処理対象である乗場呼び(出発階Fc及び行先階Fd)を割り当てる。
【0056】
このような選択処理(ステップS101、S110~S112)及び割当処理によれば、特定の停止階Ft以外の停止階Fから当該特定の停止階Ftと逆方向(
図2の例では上方向)にある行先階Fdへ移動(階間移動)するための乗場呼びに対しては、その行先階Fdが属するゾーンZ(q番目のゾーンZ(q))に対応した乗りかごG(q番目の乗りかごG(q))が割当候補Gcとして選択されることになる。これにより、各乗りかごGが、特定の停止階Ftから自身のゾーンZへの輸送(ゾーン運転による輸送)だけでなく、可動域内にある停止階Fから自身のゾーンZへの輸送にも効率良く使用されることになる。このように、上記の制御処理によれば、特定の停止階Ftからのゾーン運転を行いつつ、特定の停止階Ft以外の停止階Fからの当該特定の停止階Ftと逆方向への階間移動をも効率良く可能にすることができる。
【0057】
一方、制御部3は、ステップS110にて移動方向Dmについて「同方向」であると判断した場合には、ゾーン情報Dz(
図3(B)参照)に基づいて、出発階Fcが何番目のゾーンZに属するかを特定する(ステップS121)。具体的には、制御部3は、ゾーン情報Dzを参照することにより、出発階Fcと一致する停止階Fが対応付けているゾーンZの番号を抽出し、その番号によって当該出発階Fcが属するゾーンZを特定する。
【0058】
そして、制御部3は、ステップS121にて出発階Fcについて「r番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンZ(r)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のr番目からN番目までの乗りかごG(r)~G(N)を割当候補Gcとして選択し(ステップS122)、その後、割当処理へ移行する。尚、ステップS122では、昇降路Rごとにr番目からN番目の乗りかごG(r)~G(N)が割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数は、昇降路Rの数に応じて増えることになる。
【0059】
この場合の割当処理では、制御部3は、ステップS122で選択した割当候補Gc(昇降路Rごとに選択された乗りかごG(r)~G(N))の中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに、そのときの処理対象である乗場呼び(出発階Fc及び行先階Fd)を割り当てる。
【0060】
このような選択処理(ステップS101、S110、S121~S122)及び割当処理は、上述した各乗りかごGの可動域を考慮して、r番目のゾーンZ(r)へはr番目からN番目までの乗りかごG(r)~G(N)が到達できることを利用したものである。そして、特定の停止階Ft以外の停止階Fから当該特定の停止階Ftと同方向(
図2の例では下方向)にある行先階Fdへ移動(階間移動)するための乗場呼びに対しては、その出発階Fcが属するゾーンZ(r番目のゾーンZ(r))に到達することができる乗りかごG(r番目からN番目の乗りかごG(r)~G(N))が割当候補Gcとして選択されることになる。これにより、各乗りかごGが、特定の停止階Ftから自身のゾーンZへの輸送(ゾーン運転による輸送)だけでなく、可動域内にある停止階Fから特定の停止階Ftと同方向への輸送(ゾーン運転とは逆方向の輸送)にも効率良く使用されることになる。このように、上記の制御処理によれば、特定の停止階Ft以外の停止階Fからの当該特定の停止階Ftと同方向への階間移動をも効率良く可能にすることができる。
【0061】
このように、本実施形態の群管理制御装置103及びそれによって実行される上記の制御処理によれば、各昇降路R内に複数の乗りかごGが互いに独立に設けられたエレベータにおいて、特定の停止階Ftからのゾーン運転を効率良く行いつつ、特定の停止階Ft以外の停止階Fからの輸送をも効率良く行うことが可能となり、輸送効率を著しく向上させることができる。
【0062】
[3]変形例
[3-1]第1変形例
図5は、第1変形例で用いられる各種設定をエレベータの構成と共に示した概念図である。
図5に示されるように、本変形例では、各昇降路R内において、ゾーンZの他にマージン区間Yが設定されている。ここで、マージン区間Yは、上下に隣接する2つのゾーンZの境界となる停止階F(m)を含む幾つかの停止階Fで構成されたグループである。ここで、停止階F(m)は、上下に隣接する2つのゾーンZの境界となる停止階Fの番号をmで表したものである。そして以下では、N個のゾーンZ(1)~Z(N)によって形成される(N-1)個の境界について、当該(N-1)個の境界となる停止階Fの番号がそれぞれm(1)~m(N-1)で表される(
図5参照)。
【0063】
具体的には、マージン区間Yは、次のように設定されている。即ち、M番目(Mは1≦M≦N-1を満たす整数)のゾーンZ(M)と(M+1)番目のゾーンZ(M+1)との境界となる停止階F(m(M))を含む、連続した幾つかの停止階F、で構成されるグループが、M番目のマージン区間Y(M)として設定されている。そして
図5の例では、マージン区間Y(M)は、境界となる停止階F(m(M))を中心とする停止階F(m(M)-k)(kは1以上の整数)から停止階F(m(M)+k)までの(2k+1)個の停止階Fで構成されている。
【0064】
尚、マージン区間Y(M)は、その区間に含まれる停止階Fのうちの、境界となる停止階F(m(M))より下階の停止階Fの数と、当該停止階F(m(M))より上階の停止階Fの数とが異なるものに適宜変更されてもよい。また、マージン区間Y(M)は、境界となる停止階F(m(M))と、その階よりも上階の停止階Fとだけで構成されてものに適宜変更されてもよいし、境界となる停止階F(m(M))と、その階よりも下階の停止階Fとだけで構成されてものに適宜変更されてもよい。更に、マージン区間Y(M)の幅(当該マージン区間Y(M)を構成する停止階Fのうちの下端階から上端階までの幅)は、昇降路Rごとに異なる幅に設定されてもよいし、時間帯に応じて変更されてもよい。
【0065】
そして、ゾーン情報Dzには、N個のゾーンZ(1)~Z(N)に関する情報に加えて、1番目から(N-1)番目までのマージン区間Y(1)~Y(N-1)に関する情報が更に含まれている。
図6は、本変形例で用いられるゾーン情報Dzの一例を示した概念図である。
【0066】
群管理制御装置103の制御部3は、選択処理において、ゾーン情報Dzに基づいて行先階Fdが何番目のマージン区間Yに属するかの特定、及び、ゾーン情報Dzに基づいて出発階Fcが何番目のマージン区間Yに属するかの特定をも選択的に行うことが可能であり、選択処理として以下の(4)及び(5)の処理を実行することによって割当候補Gcを選択することができる。
【0067】
(4)制御部3は、出発階Fcについて「特定の停止階Ftでない」と判断した場合において、更に、移動方向Dmについて「逆方向」であると判断し、且つ、行先階Fdについて「s番目(sはq≦s≦N-1を満たす整数)のマージン区間Y(s)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のs番目及び(s+1)番目の乗りかごG(s)及びG(s+1)を割当候補Gcとして選択する。
【0068】
(5)制御部3は、出発階Fcについて「特定の停止階Ftでない」と判断した場合において、更に、移動方向Dmについて「同方向」であると判断し、更に、出発階Fcについて「t番目(tは1≦t≦N-1を満たす整数)のマージン区間Y(t)」に属すると特定した場合には、t番目からN番目までの乗りかごG(t)~G(N)を割当候補Gcとして選択する。
【0069】
そして割当処理では、上述した実施形態と同様、制御部3は、選択処理にて選択した割当候補Gcの中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに上記乗場呼びを割り当てる。
【0070】
図7は、本変形例で実行される制御処理を示したフローチャートである。本変形例では、制御部3は、ステップS110にて移動方向Dmについて「逆方向」であると判断した場合、行先階Fdが、何れかのマージン区間Yに属するものであるのか、それとも、マージン区間Yに属さずに何れかのゾーンZにだけ属するものであるのかを判断するべく、ゾーン情報Dz(
図6参照)に基づいて、行先階Fdが何れかのマージン区間Yに属するか否かを判断する(ステップS200)。
【0071】
そして、制御部3は、ステップS200にて「何れのマージン区間Yにも属さない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、行先階Fdは、何れかのゾーンZにだけ属するものであると判断できる。この場合、制御部3は、上記実施形態(
図4)で説明したステップS111~112と同様、行先階Fdが何番目のゾーンZに属するかを特定することによって割当候補Gcを選択し、その後、割当処理へ移行する。
【0072】
一方、制御部3は、ステップS200にて「何れかのマージン区間Yに属する(Yes)」と判断した場合には、ゾーン情報Dz(
図6参照)に基づいて、行先階Fdが何番目のマージン区間Yに属するかを特定する(ステップS201)。具体的には、制御部3は、ゾーン情報Dzを参照することにより、行先階Fdと一致する停止階Fが対応付けているマージン区間Yの番号を抽出し、その番号によって当該行先階Fdが属するマージン区間Yを特定する。
【0073】
そして、制御部3は、ステップS201にて行先階Fdについて「s番目(sはq≦s≦N-1を満たす整数)のマージン区間Y(s)」に属すると特定した場合には、各昇降路R内のs番目及び(s+1)番目の乗りかごG(s)及びG(s+1)を割当候補Gcとして選択し(ステップS202)、その後、割当処理へ移行する。尚、ステップS202では、昇降路Rごとにs番目及び(s+1)番目の乗りかごG(s)及びG(s+1)が割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数は、昇降路Rの数に応じて増えることになる。
【0074】
この場合の割当処理では、制御部3は、ステップS202で選択した割当候補Gc(昇降路Rごとに選択されたs番目及び(s+1)番目の乗りかごG(s)及びG(s+1))の中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに、そのときの処理対象である乗場呼び(出発階Fc及び行先階Fd)を割り当てる。
【0075】
このような選択処理(ステップS101、S110、S200~S202)及び割当処理によれば、行先階Fdがマージン区間Y(s)に属している場合には、そのマージン区間Y(s)内に境界がある2つのゾーンZ(s)及びZ(s+1)にそれぞれ対応した乗りかごG(s)及びG(s+1)が何れも割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数が2つに増えることになる。このように割当候補Gcの数が増えることにより、割当処理において、より最適な乗りかごGを抽出することが可能となり、その結果として輸送効率を向上させることが可能になる。
【0076】
制御部3は、ステップS110にて移動方向Dmについて「同方向」であると判断した場合には、出発階Fcが、何れかのマージン区間Yに属するものであるのか、それとも、マージン区間Yに属さずに何れかのゾーンZにだけ属するものであるのかを判断するべく、ゾーン情報Dz(
図6参照)に基づいて、出発階Fcが何れかのマージン区間Yに属するか否かを判断する(ステップS210)。
【0077】
そして、制御部3は、ステップS210にて「何れのマージン区間Yにも属さない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、出発階Fcは、何れかのゾーンZにだけ属するものであると判断できる。この場合、制御部3は、上記実施形態(
図4)で説明したステップS121~122と同様、出発階Fcが何番目のゾーンZに属するかを特定することによって割当候補Gcを選択し、その後、割当処理へ移行する。
【0078】
一方、制御部3は、ステップS210にて「何れかのマージン区間Yに属する(Yes)」と判断した場合には、ゾーン情報Dz(
図6参照)に基づいて、出発階Fcが何番目のマージン区間Yに属するかを特定する(ステップS211)。具体的には、制御部3は、ゾーン情報Dzを参照することにより、出発階Fcと一致する停止階Fが対応付けているマージン区間Yの番号を抽出し、その番号によって当該出発階Fcが属するマージン区間Yを特定する。
【0079】
そして、制御部3は、ステップS211にて出発階Fcについて「t番目(tは1≦t≦N-1を満たす整数)のマージン区間Y(t)」に属すると特定した場合には、t番目からN番目までの乗りかごG(t)~G(N)を割当候補Gcとして選択し(ステップS212)、その後、割当処理へ移行する。尚、ステップS212では、昇降路Rごとにt番目からN番目までの乗りかごG(t)~G(N)が割当候補Gcとして選択されるため、割当候補Gcの数は、昇降路Rの数に応じて増えることになる。
【0080】
この場合の割当処理では、制御部3は、ステップS212で選択した割当候補Gc(昇降路Rごとに選択されたt番目からN番目までの乗りかごG(t)~G(N))の中から、運行状況などを考慮して最適な乗りかごGを1つ抽出し、その乗りかごGに、そのときの処理対象である乗場呼び(出発階Fc及び行先階Fd)を割り当てる。
【0081】
このような選択処理(ステップS101、S110、S210~S212)及び割当処理によれば、出発階Fcがマージン区間Y(t)に属している場合には、その出発階FcがゾーンZ(t+1)側にあったとしても、乗りかごG(t+1)~G(N)だけでなく、ゾーンZ(t)に属する乗りかごG(t)も割当候補Gcとして選択され、割当候補Gcの数が増えることになる。このように割当候補Gcの数が増えることにより、割当処理において、より最適な乗りかごGを抽出することが可能となり、その結果として輸送効率を向上させることが可能になる。
【0082】
[3-2]第2変形例
群管理制御装置103で実行される制御処理は、実施形態及び第1変形例で説明した割当候補Gcを選択するための(1)~(5)の処理のうちの何れか1つだけを実行できるものに適宜変更されてもよいし、或いは、それらの幾つか又は全てを実行できるものに適宜変更されてもよい。
【0083】
[3-3]第3変形例
上述したエレベータにおいては、各昇降路R内の乗りかごGの台数(N台)と同数の停止階Fが特定の停止階Ftになっていたが(
図2、
図5参照)、これに限らず、特定の停止階Ftの数は、当該乗りかごGの台数(N台)よりも少なくてもよい。例えば、特定の停止階Ftの数は1つであってもよい。このような場合、各昇降路R内の何れの乗りかごGをも特定の停止階Ftに停止させることが可能となるように、特定の停止階Ftの下階には、当該特定の停止階Ftへの乗りかごGの到着時に別の乗りかごGを待避させておくためのガレージ階が設けられる。そして、このようなエレベータにも、上述した制御処理を適用することができる。
【0084】
[3-4]他の変形例
上述したエレベータの制御処理(選択処理及び割当処理を含む)は、昇降路Rが複数設けられたエレベータに限らず、昇降路Rが1つだけ設けられたエレベータにも適用できる。この場合、エレベータ制御装置102が、本発明に係る制御装置の一実施形態として、上述したエレベータの制御処理を実行することになる。
【0085】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0086】
また、上述の実施形態及び変形例からは、発明の対象として、エレベータの制御処理を実行する制御装置(群管理制御装置103など)に限らず、それを構成する要素(制御部3など)、制御処理、プログラムなどが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 タッチパネル
2 記憶部
3 制御部
F 停止階
G 乗りかご
R 昇降路
Y マージン区間
Z ゾーン
31 選択処理部
32 割当処理部
Dd 装置管理データ
Dm 移動方向
Dz ゾーン情報
Fc 出発階
Fd 行先階
Fs 設置階
Ft 特定の停止階
Gc 割当候補
Pa 装置アドレス
Pd 装置情報
Pr 受信情報
101 行先階登録装置
102 エレベータ制御装置
103 群管理制御装置
【手続補正書】
【提出日】2022-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
各昇降路内に1番目からN番目(Nは2以上の整数)までの乗りかごが互いに独立に設けられているエレベータ、に適用可能な制御装置であって、
前記エレベータに設けられた複数の停止階のうちの何れか1つの停止階である第1の停止階より下方に位置する停止階であり、前記1番目から前記N番目までの各乗りかごが停止する停止階が、特定の停止階として設定されており、
前記第1の停止階とその階より上方に位置する何れか1つの停止階である第2の停止階とを両端の停止階とする区間内に、当該区間に含まれている複数の停止階のうちの連続した一部の停止階で構成されるグループを1つのゾーンとして、前記第1の停止階に最も近い1番目から順番にN番目まで設定されたN個のゾーンに関する情報を含んだゾーン情報と、
乗場での行先階の入力による乗場呼びがあった場合に、その乗場がある停止階を出発階として、当該出発階が前記特定の停止階であるか否かの判断と、その出発階から前記行先階への移動方向が前記特定の停止階と同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、前記ゾーン情報に基づいて前記行先階が何番目のゾーンに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路において当該乗場呼びを割り当てることができる乗りかごを割当候補として選択する選択処理部と、
前記選択処理部によって選択された前記割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに前記乗場呼びを割り当てる割当処理部と、
を備え、
前記選択処理部は、
前記出発階について前記特定の停止階であると判断した場合において、更に、前記行先階についてp番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを前記割当候補として選択し、
前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について逆方向であると判断し、且つ、前記行先階についてq番目(qはq≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のq番目の乗りかごを前記割当候補として選択する、エレベータの制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
各昇降路内に1番目からN番目(Nは2以上の整数)までの乗りかごが互いに独立に設けられているエレベータ、に適用可能な制御装置であって、
前記エレベータに設けられた複数の停止階のうちの何れか1つの停止階である第1の停止階より下方に位置する停止階であり、前記1番目から前記N番目までの各乗りかごが停止する停止階が、特定の停止階として設定されており、
前記第1の停止階とその階より上方に位置する何れか1つの停止階である第2の停止階とを両端の停止階とする区間内に、当該区間に含まれている複数の停止階のうちの連続した一部の停止階で構成されるグループを1つのゾーンとして、前記第1の停止階に最も近い1番目から順番にN番目まで設定されたN個のゾーンに関する情報を含んだゾーン情報と、
乗場での行先階の入力による乗場呼びがあった場合に、その乗場がある停止階を出発階として、当該出発階が前記特定の停止階であるか否かの判断と、その出発階から前記行先階への移動方向が前記特定の停止階と同方向又は逆方向のどちらであるのかの判断と、前記ゾーン情報に基づいて前記行先階が何番目のゾーンに属するかの特定と、前記ゾーン情報に基づいて前記出発階が何番目のゾーンに属するかの特定と、を選択的に行うことにより、各昇降路において当該乗場呼びを割り当てることができる乗りかごを割当候補として選択する選択処理部と、
前記選択処理部によって選択された前記割当候補の中から何れか1つの乗りかごを抽出し、その乗りかごに前記乗場呼びを割り当てる割当処理部と、
を備え、
前記選択処理部は、
前記出発階について前記特定の停止階であると判断した場合において、更に、前記行先階についてp番目(pは1≦p≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のp番目の乗りかごを前記割当候補として選択し、
前記出発階について前記特定の停止階でないと判断した場合において、更に、前記移動方向について同方向であると判断し、且つ、前記出発階についてr番目(rは1≦r≦Nを満たす整数)のゾーンに属すると特定した場合には、各昇降路内のr番目からN番目までの乗りかごを前記割当候補として選択する、エレベータの制御装置。