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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156437
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060130
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】白砂 貴盛
(72)【発明者】
【氏名】渥美 和弥
(72)【発明者】
【氏名】松下 耕一朗
(72)【発明者】
【氏名】石松 尚也
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601AA29
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD29
5H601DD42
5H601DD47
5H601EE18
5H601EE25
5H601GA22
5H601GA32
5H601GE01
5H601GE11
(57)【要約】
【課題】高出力化を可能とするとともに、高出力時の冷却性能を向上した回転電機のロータを提供する。
【解決手段】回転電機のロータ4は、軸方向に貫通するとともに軸方向の両端間が連通した貫通孔が形成されたロータコア21と、ロータコア21における軸方向の第1端面を覆うとともに、貫通孔に連なる開口部31が形成された第1端面板30Aと、第1端面板30Aと一体的に設けられ、回転時に開口部31を通じて貫通孔の両端間に圧力差を発生させる羽根部40と、を備える。羽根部40は、貫通孔および開口部31を軸方向の外側から覆う覆い壁45を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通するとともに前記軸方向の両端間が連通した貫通孔(28)が形成されたロータコア(21)と、
前記ロータコア(21)における前記軸方向の一端面(21a)を覆うとともに、前記貫通孔(28)に連なる開口部(31)が形成された端面板(30A)と、
前記端面板(30A)と一体的に設けられ、回転時に前記開口部(31)を通じて前記貫通孔(28)の両端間に圧力差を発生させる羽根部(40)と、
を備え、
前記羽根部(40)は、前記貫通孔(28)および前記開口部(31)を前記軸方向の外側から覆う覆い壁(45)を有する、
回転電機のロータ。
【請求項2】
前記羽根部(40)の少なくとも一部は、前記開口部(31)に対して前記ロータコア(21)の回転方向に設けられている、
請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した複数の起立壁(41)を有し、
前記覆い壁(45)は、前記複数の起立壁(41)に一体的に設けられている、
請求項1または請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、
前記起立壁(41)は、前記開口部(31)より径方向内側に位置する内側起立壁(42)を有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、
前記起立壁(41)は、前記ロータコア(21)の回転方向とは反対方向に向かうに従い径方向外側に延びている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
前記覆い壁(45)は、前記ロータコア(21)の回転方向に先細っている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機のロータ。
【請求項7】
前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、
前記起立壁(41)は、
前記開口部(31)より径方向内側に位置する内側起立壁(42)と、
前記内側起立壁(42)より前記径方向外側に位置する外側起立壁(43)と、
を有し、
前記内側起立壁(42)、前記外側起立壁(43)および前記覆い壁(45)は、一体的に形成されている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転電機のロータ。
【請求項8】
前記内側起立壁(42)、前記外側起立壁(43)および前記覆い壁(45)は、前記ロータコア(21)の回転方向および径方向両側から排気空間(46)を画成し、
前記排気空間(46)は、前記開口部(31)を通じて前記貫通孔(28)に連通しているとともに、前記貫通孔(28)に前記軸方向で連通する領域から見て前記回転方向とは反対方向に開口している、
請求項7に記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転電機として、コイルが装着されたステータと、永久磁石が装着されたロータと、を備えたものがある。この種の回転電機では、コイルへの給電によってステータに鎖交磁束が形成されるとともに、この鎖交磁束とロータの永久磁石との間で磁気的な吸引力および反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。
【0003】
ここで、永久磁石の温度上昇は減磁の原因となり、回転電機の性能に大きく関わる。このため、ロータを効率的に冷却するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、回転子鉄心の軸方向の両端面にそれぞれ設けられた第一および第二の端板を備えた回転子を有し、第一の端板は、磁石挿入孔の一端側を塞ぐ基部と、基部の表面に設けられた羽根部と、を有し、回転子は回転子鉄心と第二の端板とを貫通する冷却孔を有し、回転子が回転しているときに、羽根部は回転子の軸方向の両端間に圧力差を発生させるモータが開示されている。このモータによれば、回転子が回転すると、羽根部によって回転子における回転軸方向の両端間の圧力差が大きくなり、冷却孔を流通する冷却媒体の流量が増加し、回転子の冷却能力を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6818869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の回転電機にあっては、羽根部が設けられていない構成と比較して、ロータの回転時に羽根部による風損が大きくなる可能性がある。これにより、回転電機の高出力化の妨げになる場合がある。また、高出力時の冷却性能にも改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、回転電機の高出力化を可能とするとともに、高出力時の冷却性能が向上した回転電機のロータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転電機のロータは、軸方向に貫通するとともに前記軸方向の両端間が連通した貫通孔(28)が形成されたロータコア(21)と、前記ロータコア(21)における前記軸方向の一端面(21a)を覆うとともに、前記貫通孔(28)に連なる開口部(31)が形成された端面板(30A)と、前記端面板(30A)と一体的に設けられ、回転時に前記開口部(31)を通じて前記貫通孔(28)の両端間に圧力差を発生させる羽根部(40)と、を備え、前記羽根部(40)は、前記貫通孔(28)および前記開口部(31)を前記軸方向の外側から覆う覆い壁(45)を有する。
【0008】
本発明によれば、羽根部に対する軸方向外側の空間から開口部に向かう気流の発生を覆い壁によって抑制できる。これにより、回転時に羽根部によって発生した負圧により、貫通孔内に端面板の開口部側に向かう気流を効率よく発生させることができる。よって、風損の増大の誘因となり得る羽根部の大型化を回避しつつ、冷却性能を向上させることができる。したがって、高出力化を可能とするとともに、高出力時の冷却性能を向上できる。
【0009】
上記の回転電機のロータにおいて、前記羽根部(40)の少なくとも一部は、前記開口部(31)に対して前記ロータコア(21)の回転方向に設けられていてもよい。
【0010】
本発明によれば、回転時に羽根部に対する回転方向とは反対側に負圧が発生するので、羽根部に対して回転方向とは反対側に形成された開口部を通じて貫通孔から空気を吸い出すことができる。よって、貫通孔内に端面板の開口部側に向かう気流を発生させることができる。
【0011】
上記の回転電機のロータにおいて、前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した複数の起立壁(41)を有し、前記覆い壁(45)は、前記複数の起立壁(41)に一体的に設けられていてもよい。
【0012】
本発明によれば、ロータコアとともに高速で回転する端面板に覆い壁を複数の起立壁によって強固に固定できる。
【0013】
上記の回転電機のロータにおいて、前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、前記起立壁(41)は、前記開口部(31)より径方向内側に位置する内側起立壁(42)を有していてもよい。
【0014】
本発明によれば、羽根部に対する径方向内側の空間から開口部に向かう気流の発生を内側起立壁によって抑制できる。これにより、貫通孔内に端面板の開口部側に向かう気流をさらに効率よく発生させることができる。したがって、冷却性能をより一層向上させることができる。
【0015】
前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、前記起立壁(41)は、前記ロータコア(21)の回転方向とは反対方向に向かうに従い径方向外側に延びていてもよい。
【0016】
本発明によれば、回転時の空気抵抗の低減を図りつつ、起立壁に対する回転方向に位置する空気を径方向の外側に流すことができる。したがって、風損の増大を抑えつつ、貫通孔内を流通した空気を開口部近傍から効率よく逃がすことができる。
【0017】
上記の回転電機のロータにおいて、前記覆い壁(45)は、前記ロータコア(21)の回転方向に先細っていてもよい。
【0018】
本発明によれば、回転時に覆い壁に作用する空気抵抗の低減を図ることができる。したがって、風損の増大を抑えることができる。
【0019】
上記の回転電機のロータにおいて、前記羽根部(40)は、前記端面板(30A)から前記軸方向に沿って起立した起立壁(41)を有し、前記起立壁(41)は、前記開口部(31)より径方向内側に位置する内側起立壁(42)と、前記内側起立壁(42)より前記径方向外側に位置する外側起立壁(43)と、を有し、前記内側起立壁(42)、前記外側起立壁(43)および前記覆い壁(45)は、一体的に形成されていてもよい。
【0020】
本発明によれば、鋳造やプレス加工等により羽根部が一体的に設けられた端面板を容易に形成できる。
【0021】
上記の回転電機のロータにおいて、前記内側起立壁(42)、前記外側起立壁(43)および前記覆い壁(45)は、前記ロータコア(21)の回転方向および径方向両側から排気空間(46)を画成し、前記排気空間(46)は、前記開口部(31)を通じて前記貫通孔(28)に連通しているとともに、前記貫通孔(28)に前記軸方向で連通する領域から見て前記回転方向とは反対方向に開口していてもよい。
【0022】
仮に排気空間が貫通孔に連通する領域から見て回転方向に開口している構成では回転時に排気空間への逆流が生じ得る。これに対して本発明によれば排気空間への逆流を抑制しつつ排気空間の空気を径方向の外側に流すことができる。したがって、回転時に羽根部によって負圧を効果的に発生させて、貫通孔内に端面板の開口部側に向かう気流をさらに効率よく発生させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回転電機の高出力化を可能とするとともに、高出力時の冷却性能を向上した回転電機のロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態の回転電機を示す断面図である。
図2】実施形態のロータの外観斜視図である。
図3】実施形態のロータの縦断面図である。
図4図3のIV-IV線におけるロータの横断面図である。
図5図3のV-V線におけるロータの断面図である。
図6】実施形態のロータを軸方向から見た外観図である。
図7】第1比較例に係るロータを示す斜視図である。
図8】第2比較例に係るロータを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0026】
図1は、実施形態の回転電機を示す断面図である。
図1に示すように、回転電機1は、例えば電動二輪車のような車両に搭載される走行用モータである。回転電機1は、ハウジング2と、ステータ3と、ロータ4と、シャフト5と、を備える。ハウジング2は、ステータ3およびロータ4を収容するとともに、軸受6を介してシャフト5を回転可能に支持している。なお、ステータ3、ロータ4およびシャフト5は、それぞれ軸線Cを共通軸線として配置されている。以下、軸線Cの延びる方向を軸方向と称し、軸線Cに直交する方向を径方向と称し、軸線C回りに周回する方向を周方向と称して説明する。また、各図中において、周方向のうちロータ4の正転方向を矢印+θで示し、正転方向とは反対方向(ロータ4の逆転方向)を矢印-θで示している。
【0027】
ステータ3は、ステータコア10と、ステータコア10に装着された複数層(例えば、U相、V相、W相)のコイル12と、を備えている。ステータ3は、コイル12に電流が流れることにより磁界を発生する。ステータコア10は、軸線Cを中心とする円筒状に形成されている。ステータコア10は、例えば電磁鋼板を軸方向に複数枚積層することにより形成されている。なお、ステータコア10は、金属磁性粉末(軟磁性粉)を圧縮成形した、いわゆる圧粉コアであってもよい。本実施形態では、ステータコア10は、コイル12が捲回されるティース11を1つずつ有する分割コアを環状に配置して形成されている。ティース11には、インシュレータ14が装着されている。
【0028】
インシュレータ14は、分割コアのティース11を1つずつ囲む。インシュレータ14は、樹脂等の電気絶縁材料により形成されている。インシュレータ14は、ティース11を覆うとともに外周側にコイル12が捲回されるコイル巻回部15と、コイル巻回部15における径方向の内側の端縁から張り出した内フランジ16と、コイル巻回部15における径方向の外側の端縁から張り出した外フランジ17と、を備える。
【0029】
コイル12は、各ティース11にインシュレータ14を介して巻回されている。コイル12は、内フランジ16と外フランジ17との間でコイル巻回部15に巻回されている。ステータコア10は、コイル12に電流が流れることで磁界を発生する。
【0030】
ロータ4は、埋込磁石形のロータ4である。ロータ4は、ステータ3の径方向内側に配置されている。ロータ4は、シャフト5と一体となって、軸線C回りに回転可能になっている。ロータ4は、永久磁石20と、永久磁石20を保持するロータコア21と、ロータコア21における軸方向の第1端面21a(一端面)を覆う第1端面板30Aと、ロータコア21における軸方向の第2端面21bを覆う第2端面板30Bと、第1端面板30Aと一体的に設けられた羽根部40と、を備えている。
【0031】
図2は、実施形態のロータの外観斜視図である。
図2に示すように、ロータコア21は、軸方向に一様に延在する円筒状に形成されている。ロータコア21は、例えば電磁鋼板を軸方向に複数枚積層することにより形成されている。なお、ロータコア21は、金属磁性粉末(軟磁性粉)を圧縮成形した、いわゆる圧粉コアであってもよい。
【0032】
図3は、実施形態のロータの縦断面図である。図4は、図3のIV-IV線におけるロータの横断面図である。
図3および図4に示すように、ロータコア21は、ロータコア21の外周部に位置する円環状のヨーク部22と、ロータコア21の内周部に位置し、ヨーク部22に対して径方向に間隔をあけて配置された円環状のハブ部23と、ヨーク部22とハブ部23とを連結する複数のリブ24と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0033】
ヨーク部22は、永久磁石20を保持する。ヨーク部22は、複数(本実施形態では8個)の磁極部25を備える。磁極部25は、周方向に均等に設けられている。各磁極部25には、永久磁石20が挿入される一対のスロット26が形成されている。一対のスロット26は、周方向に対称に形成されている。スロット26は、ヨーク部22を軸方向に貫通している。各スロット26には、永久磁石20が収容され、これによりロータコア21が永久磁石20を保持している。複数の磁極部25は、周方向に交互に磁化方向が反転するように形成されている。
【0034】
ハブ部23は、シャフト5に外挿されている。ハブ部23は、シャフト5に固定されている。これにより、ロータコア21は、軸線C回りにシャフト5と一体回転可能になっている。
【0035】
リブ24は、ハブ部23の外周面とヨーク部22の内周面とに接続している。リブ24は、ハブ部23の外周面から周方向の一方かつ径方向の外側に延びる第1リブ27Aと、ハブ部23の外周面から周方向の他方かつ径方向の外側に延びる第2リブ27Bと、を備える。第1リブ27Aおよび第2リブ27Bは、それぞれ磁極部25と同数設けられている。第1リブ27Aおよび第2リブ27Bは、それぞれ周方向に等間隔に配置されている。第1リブ27Aおよび第2リブ27Bは、互いに交差している。
【0036】
ロータコア21には、複数の貫通孔28が形成されている。貫通孔28は、ヨーク部22とハブ部23との隙間に相当し、リブ24によって区画されている。貫通孔28は、ロータコア21を軸方向に貫通している。貫通孔28には他の部材が配置されておらず、これにより貫通孔28の軸方向の両端間が連通している。貫通孔28は、軸方向に一様に延在している。
【0037】
永久磁石20は、希土類磁石である。希土類磁石としては、例えばネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石、プラセオジム磁石等が挙げられる。永久磁石20は、ヨーク部22の各スロット26に挿入され、例えば樹脂や接着剤等によってロータコア21に固定されている。永久磁石20は、径方向に磁化されている。
【0038】
図3に示すように、第1端面板30Aおよび第2端面板30Bは、ロータコア21を軸方向の両側から挟むように配置され、それぞれシャフト5に固定されている。第1端面板30Aは、ロータコア21の第1端面21aに接触している。第2端面板30Bは、ロータコア21の第2端面21bに接触している。第1端面板30Aおよび第2端面板30Bは、非磁性体の金属材料、例えばSUS304やアルミニウム、銅等により円環状に形成され、シャフト5と同軸に配置されている。第1端面板30Aおよび第2端面板30Bは、それぞれロータコア21の外径と略同じ外径を有する。第1端面板30Aおよび第2端面板30Bは、それぞれロータコア21の内径と略同じ内径を有する。
【0039】
図5は、図3のV-V線におけるロータの断面図である。
図5に示すように、第1端面板30Aは、スロット26の少なくとも一部を閉塞し、軸方向から見て永久磁石20に重なっている。これにより、第1端面板30Aは、永久磁石20の脱落を規制している。第1端面板30Aには、開口部31が形成されている。開口部31は、第1端面板30Aを軸方向に貫通している。開口部31は、軸方向から見て貫通孔28の少なくとも一部に重なっている。これにより、開口部31は、ロータコア21の貫通孔28に連通している。本実施形態では、開口部31は、ハブ部23よりも径方向外側の位置から、ヨーク部22の内周縁32よりも径方向外側の位置にわたって設けられている。これにより、開口部31は、ヨーク部22の端面の一部を露出させている。さらに、開口部31は、永久磁石20の端面の一部を露出させている。
【0040】
第1端面板30Aは、軸線Cを中心としてn回対称(本実施形態では2回対称)に形成されている。開口部31は、軸線Cを中心として第1端面板30Aをn分割した場合、各領域に複数設けられている。本実施形態では、開口部31は、第1端面板30Aを2分割した各領域に3つ設けられている。開口部31は、径方向において内側から外側に向かうに従い周方向に漸次拡幅している。開口部31の開口縁は、周方向に沿って延びる内周縁32および外周縁33と、内周縁32および外周縁33を接続する一対の側縁34,35と、を備える。
【0041】
内周縁32は、軸方向から見てロータコア21のヨーク部22とハブ部23との間に位置し、貫通孔28およびリブ24のうち少なくともいずれか一方に重なっている。外周縁33は、軸方向から見てヨーク部22に重なっている。外周縁33は、内周縁32よりも長い。外周縁33の中心は、内周縁32の中心に対してロータ4の正転方向とは反対方向にずれている。一対の側縁34,35は、内周縁32および外周縁33それぞれにおけるロータ4の正転方向の端部同士を接続する第1側縁34と、内周縁32および外周縁33それぞれにおけるロータ4の正転方向とは反対側の端部同士を接続する第2側縁35と、である。第1側縁34の全体は、内周縁32の端部から径方向外側に向かうに従いロータ4の正転方向とは反対方向に延びている。第2側縁35の全体は、内周縁32の端部から径方向外側に向かうに従いロータ4の正転方向とは反対方向に延びている。
【0042】
図3に示すように、第2端面板30Bは、スロット26の少なくとも一部を閉塞し、軸方向から見て永久磁石20に重なっている。これにより、第2端面板30Bは、永久磁石20の脱落を規制している。第2端面板30Bには、ロータコア21の貫通孔28に連通する通気孔が形成されている。これにより、ロータ4は、第1端面板30Aの開口部31および第2端面板30Bの通気孔によってロータコア21の貫通孔28を軸方向両側に開口させている。なお、第2端面板30Bの通気孔は、複数の貫通孔28のうち少なくとも第1端面板30Aの開口部31に連通する貫通孔28に連通していればよい。つまり、第2端面板30Bは、第1端面板30Aによって閉塞された貫通孔28を閉塞していてもよい。
【0043】
図2および図5に示すように、羽根部40は、遠心ファンとして機能する。羽根部40は、第1端面板30Aの各開口部31の周囲に設けられ、ロータ4の回転時に開口部31を通じて貫通孔28の両端間に圧力を発生させる。羽根部40は、第1端面板30Aと一体的に設けられている。羽根部40と第1端面板30Aとの接続部は、連続性を有する。羽根部40は、第1端面板30Aから軸方向に沿ってロータコア21から離れる方向に起立した複数の起立壁41と、ロータコア21の貫通孔28および第1端面板30Aの開口部31を軸方向の外側から間隔をあけて覆う覆い壁45と、を有する。
【0044】
図5に示すように、複数の起立壁41は、開口部31毎に設けられている。複数の起立壁41は、開口部31の開口縁の一部に沿って配置され、軸方向から見て開口部31を径方向の内側、および周方向の両側から囲っている。複数の起立壁41は、全体として第1端面板30Aから同じ高さに起立している。複数の起立壁41は、開口部31よりも径方向の内側に位置する内側起立壁42と、内側起立壁42より径方向外側に位置する一対の外側起立壁43と、を備える。
【0045】
内側起立壁42は、開口部31の内周縁32の全体に接続している。内側起立壁42は、略一定の厚みで周方向に沿って延びている。
【0046】
一対の外側起立壁43は、開口部31の一対の側縁34,35全体に接続している。外側起立壁43は、内側起立壁42の端部から径方向の外側に向かうに従いロータ4の回転方向とは反対方向に延びている。外側起立壁43は、略一定の厚みで延びている。各外側起立壁43の径方向外側の端部は、軸方向から見て開口部31の外周縁33よりも径方向の外側に位置している。
【0047】
図6は、実施形態のロータを軸方向から見た図である。
図6に示すように、覆い壁45は、開口部31毎に設けられている。覆い壁45は、内側起立壁42における軸方向外側の端縁の全体から、一対の外側起立壁43の間を軸方向に直交する方向に延びている。覆い壁45は、周方向に延びて一対の外側起立壁43に接続している。これにより、覆い壁45は、軸方向から見て開口部31に重なっている。覆い壁45は、内側起立壁42および一対の外側起立壁43と一体的に形成されている。覆い壁45は、周方向に沿って延びて一対の外側起立壁43に接続する外周縁を備える。外周縁は、開口部31の外周縁33よりも径方向の内側に位置している。これにより、覆い壁45は、軸方向から見て開口部31のうち径方向内側の部分に重なっている。覆い壁45は、軸方向から見て貫通孔28のうち開口部31を通じて露出した部分の全体に重なっている。覆い壁45は、内側起立壁42および一対の外側起立壁43のうちロータ4の回転方向の外側起立壁43の形状に倣い、ロータ4の回転方向に先細っている。
【0048】
図5および図6に示すように、これら内側起立壁42、外側起立壁43および覆い壁45は、開口部31を通じて貫通孔28に連通した排気空間46を画成している。排気空間46のうち径方向内側の端部領域47は、貫通孔28に軸方向で連通している。排気空間46は、ロータ4の回転方向の外側起立壁43によってロータ4の回転方向から画成されている。さらに排気空間46は、ロータ4の回転方向の外側起立壁43によって径方向の外側から画成され、かつ内側起立壁42およびロータ4の回転方向とは反対方向の外側起立壁43によって径方向の内側から画成されている。これにより、排気空間46は、その径方向内側の端部領域47から見てロータ4の回転方向とは反対方向寄りに開口している。
【0049】
本実施形態では、上述したようにn分割された第1端面板30Aの各領域において、周方向に隣り合う羽根部40同士が一体的に設けられている。すなわち、羽根部40の内側起立壁42は、一体化して周方向に沿って延びている。また、軸方向から見て隣り合う一対の開口部31の間に位置する外側起立壁43は、一体化して単一の壁として設けられている。本実施形態において、一体化した3つの羽根部40により形成された構造体は、最もロータ4の回転方向に位置する羽根部40の内側起立壁42および外側起立壁43によって、ロータ4の回転方向に先細っている。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態のロータ4は、第1端面板30Aと一体的に設けられ、ロータ4の回転時に第1端面板30Aの開口部31を通じてロータコア21の貫通孔28の両端間に圧力差を発生させる羽根部40を備える。羽根部40は、貫通孔28および開口部31を軸方向の外側から覆う覆い壁45を有する。この構成によれば、羽根部40に対する軸方向外側の空間から開口部31に向かう気流の発生を覆い壁45によって抑制できる。これにより、回転時に羽根部40によって発生した負圧により、貫通孔28内に第1端面板30Aの開口部31側に向かう気流を効率よく発生させることができる。よって、風損の増大の誘因となり得る羽根部40の大型化を回避しつつ、冷却性能を向上させることができる。
【0051】
ここで、本実施形態に係るロータ4の風損抑制および冷却性能向上の効果を実施例および比較例を用いて示す。
図7は、第1比較例に係るロータを示す斜視図である。図8は、第2比較例に係るロータを示す斜視図である。
図7に示す第1比較例のロータ104は、端面板を備えておらず、すなわちロータコア121の貫通孔128の両端間に圧力差を発生させる羽根部を備えていない。図8に示す第2比較例のロータ204は、第1比較例のロータコア121の貫通孔128に連なる開口部231が形成された端面板230と、開口部231の開口縁のうちロータ104の回転方向に位置する部分から起立した起立壁241と、を備える。第2比較例のロータ204には、実施形態の覆い壁45のような、貫通孔128および開口部231を軸方向の外側から覆う構造が設けられていない。実施例のロータは、図示しないが、第1比較例のロータコア121と、実施形態の第1端面板30Aおよび羽根部40を組み合わせたものである。
【0052】
【表1】
【0053】
表1は、各比較例および実施例のロータを毎分9000回転させた場合の、ロータコアの貫通孔における気流の通過流量およびロータの風損を示す。表1に示すように、実施例のロータによれば、両比較例に比べて気流の通過流量を増大させつつ、第2比較例に比べて風損を低減している。
【0054】
以上により、本実施形態によれば、回転電機1の高出力化を可能とするとともに、高出力時の冷却性能を向上できる。
【0055】
羽根部40の少なくとも一部は、開口部31に対してロータコア21の回転方向に設けられている。この構成によれば、回転時に羽根部40に対する回転方向とは反対側に負圧が発生するので、羽根部40に対して回転方向とは反対側に形成された開口部31を通じて貫通孔28から空気を吸い出すことができる。よって、貫通孔28内に開口部31側に向かう気流を発生させることができる。
【0056】
羽根部40は、第1端面板30Aから軸方向に沿って起立した複数の起立壁41を有する。覆い壁45は、複数の起立壁41に一体的に設けられている。この構成によれば、ロータコア21とともに高速で回転する第1端面板30Aに覆い壁45を複数の起立壁41によって強固に固定できる。
【0057】
また、起立壁41は、開口部31より径方向内側に位置する内側起立壁42を有する。この構成によれば、羽根部40に対する径方向内側の空間から開口部31に向かう気流の発生を内側起立壁42によって抑制できる。これにより、貫通孔28内に開口部31側に向かう気流をさらに効率よく発生させることができる。したがって、冷却性能をより一層向上させることができる。
【0058】
覆い壁45は、ロータコア21の回転方向に先細っている。この構成によれば、回転時に覆い壁45に作用する空気抵抗の低減を図ることができる。したがって、風損の増大を抑えることができる。
【0059】
起立壁41は、内側起立壁42より径方向外側に位置する外側起立壁43をさらに有する。内側起立壁42、外側起立壁43および覆い壁45は、一体的に形成されている。この構成によれば、鋳造やプレス加工等により羽根部40が一体的に設けられた第1端面板30Aを容易に形成できる。
【0060】
外側起立壁43は、ロータ4の回転方向とは反対方向に向かうに従い径方向外側に延びている。この構成によれば、回転時の空気抵抗の低減を図りつつ、外側起立壁43に対するロータ4の回転方向に位置する空気を径方向の外側に流すことができる。したがって、風損の増大を抑えつつ、貫通孔28内を流通した空気を開口部31近傍から効率よく逃がすことができる。
【0061】
内側起立壁42、外側起立壁43および覆い壁45は、ロータ4の回転方向および径方向両側から排気空間46を画成している。排気空間46は、開口部31を通じて貫通孔28に連通しているとともに、貫通孔28に軸方向で連通する径方向内側の端部領域47から見てロータ4の回転方向とは反対方向に開口している。仮に排気空間が貫通孔に連通する領域から見てロータ4の回転方向に開口している構成では回転時に排気空間への逆流が生じ得る。これに対して本実施形態によれば、排気空間46への逆流を抑制しつつ排気空間46の空気を径方向の外側に流すことができる。したがって、回転時に羽根部40によって負圧を効果的に発生させて、貫通孔28内に第1端面板30Aの開口部31側に向かう気流をさらに効率よく発生させることができる。
【0062】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、回転電機として磁石埋込形のロータを備えた、いわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)モータに本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。回転電機は、ロータコアの外周面に磁石が装着されたロータを備えた、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet)モータであってもよい。また、回転電機は、発電機であってもよい。
【0063】
また、ロータコアのリブの形状は上記実施形態に限定されない。すなわち本発明は、永久磁石が装着される外周部と、シャフトに固定される内周部と、の間に通気可能な貫通孔が形成されたロータコアに適用できる。
【0064】
また、上記実施形態では、第1端面板30Aの開口部31が第1端面板30Aの外周縁および内周縁から離れて形成されているが、これに限定されない。すなわち、第1端面板の開口部の開口縁は、第1端面板の外周縁または内周縁に連なっていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、周方向に隣り合う羽根部40同士が一体的に設けられているが、この構成に限定されない。すなわち、羽根部は、互いに独立して設けられていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、ロータコア21の貫通孔28を流通する冷媒が空気である構成を例に挙げているが、これに限定されない。冷媒は、空気以外の気体であってもよいし、潤滑油等の液体であってもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…回転電機 4…ロータ 21…ロータコア 21a…第1端面(一端面) 28…貫通孔 30A…第1端面板(端面板) 31…開口部 40…羽根部 41…起立壁 42…内側起立壁 43…外側起立壁 45…覆い壁 46…排気空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8