IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ブリーザ構造 図1
  • 特開-ブリーザ構造 図2
  • 特開-ブリーザ構造 図3
  • 特開-ブリーザ構造 図4
  • 特開-ブリーザ構造 図5
  • 特開-ブリーザ構造 図6
  • 特開-ブリーザ構造 図7
  • 特開-ブリーザ構造 図8
  • 特開-ブリーザ構造 図9
  • 特開-ブリーザ構造 図10
  • 特開-ブリーザ構造 図11
  • 特開-ブリーザ構造 図12
  • 特開-ブリーザ構造 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156446
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ブリーザ構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20221006BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20221006BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F01M13/04 F
F02F7/00 N
F02F1/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060149
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】若狭 秀智
(72)【発明者】
【氏名】大沼 雄一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将太
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正純
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BD24
3G015BE05
3G015CA06
3G015DA01
3G015DA05
3G015DA07
3G015DA10
3G015EA07
3G024AA47
3G024AA71
3G024BA24
3G024FA07
3G024FA14
(57)【要約】
【課題】エンジンのクランクケースにブリーザ室を形成するブリーザ構造において、部品点数を効率よく削減する。
【解決手段】エンジン2のクランクケース5の油分(オイルミスト、未燃焼ガス)を含んだガスを気液分離するブリーザ装置20Aを備えるブリーザ構造において、ブリーザ装置20Aは、クランクケース5の上部に形成されたブリーザ取付座5aと、ブリーザ取付座5aに平板状のガスケット25を介して取り付けられるブリーザカバー21と、を備え、ガスケット25は、ブリーザ室20を複数の部屋(上室20bおよび下室20c)に区画する隔壁部を一体形成している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(2)のクランクケース(5)内の油分を含んだガスを気液分離するブリーザ装置(20A)を備えるブリーザ構造において、
前記ブリーザ装置(20A)は、前記クランクケース(5)に形成されたブリーザ取付座(5a)と、前記ブリーザ取付座(5a)にシール部材(25)を介して取り付けられるブリーザカバー(21)と、を備え、
前記シール部材(25)は、前記ブリーザ装置(20A)内のブリーザ室(20)を複数の部屋(20b,20c)に区画する隔壁部(25e)を一体に有していることを特徴とするブリーザ構造。
【請求項2】
前記ブリーザ室(20)は、クランク軸方向の両側に一対の連通口(5q,5r)を備え、前記一対の連通口(5q,5r)の一方の連通口(5q)は、回転機器室(41)に連通し、前記一対の連通口(5q,5r)の他方の連通口(5r)は、クラッチ室(42)に連通していることを特徴とする請求項1に記載のブリーザ構造。
【請求項3】
前記ブリーザ室(20)は、前記一対の連通口(5q,5r)の間で前記一対の連通口(5q,5r)よりも低位置に、中間連通口(5s)を備え、
前記中間連通口(5s)は、前記クランクケース(5)内の変速機室(3A)に連通していることを特徴とする請求項2に記載のブリーザ構造。
【請求項4】
前記ブリーザ室(20)の複数の部屋(20b,20c)は、前記隔壁部(25e)によって上下に区画された上室(20b)および下室(20c)であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のブリーザ構造。
【請求項5】
前記シール部材(25)は、水平方向に対して傾斜して配置され、
前記隔壁部(25e)の傾斜下端部には、前記上室(20b)内のオイルを前記下室(20c)に流す隔壁連通孔(25m,25n)を備えていることを特徴とする請求項4に記載のブリーザ構造。
【請求項6】
前記隔壁連通孔(25m,25n)は、複数設けられ、
前記ブリーザカバー(21)は、前記複数の隔壁連通孔(25m,25n)の間を隔てるリブ(21c)を備えていることを特徴とする請求項5に記載のブリーザ構造。
【請求項7】
前記隔壁連通孔(25m,25n)は、前記ブリーザカバー(21)のカバー周壁(21a)と、前記ブリーザカバー(21)における前記カバー周壁(21a)に接続される前記リブ(21c)又は突出部(21f)と、で形成された隅部(21x,21y)に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のブリーザ構造。
【請求項8】
前記リブ(21c)は、前記ブリーザ室(20)内でラビリンス構造を形成していること特徴とする請求項6又は7に記載のブリーザ構造。
【請求項9】
前記ブリーザカバー(21)のカバー上壁(21r)は、前記カバー上壁(21r)の上方に配置されたスタータモータ(15)の外周形状に沿うように湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のブリーザ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリーザ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)のクランクケースの上部をブリーザカバーで覆ってブリーザ室を形成するブリーザ構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記ブリーザ室は、複数の部屋に区画されて気液分離室を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-54219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のブリーザ構造では、ブリーザ室に複数の部屋を区画するために専用の仕切板を備えており、部品点数を増加させるという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、エンジンのクランクケースにブリーザ室を形成するブリーザ構造において、部品点数を効率よく削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、エンジン(2)のクランクケース(5)内の油分を含んだガスを気液分離するブリーザ装置(20A)を備えるブリーザ構造において、前記ブリーザ装置(20A)は、前記クランクケース(5)に形成されたブリーザ取付座(5a)と、前記ブリーザ取付座(5a)にシール部材(25)を介して取り付けられるブリーザカバー(21)と、を備え、前記シール部材(25)は、前記ブリーザ装置(20A)内のブリーザ室(20)を複数の部屋(20b,20c)に区画する隔壁部(25e)を一体に有していることを特徴とするブリーザ構造を提供する。
この構成によれば、クランクケースとブリーザカバーとの間をシールするシール部材に、ブリーザ室を複数の部屋に区画する隔壁部を一体形成するので、ブリーザ室を区画する専用の仕切部材の削減を図り、部品点数を効率よく削減することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記ブリーザ室(20)は、クランク軸方向の両側に一対の連通口(5q,5r)を備え、前記一対の連通口(5q,5r)の一方の連通口(5q)は、回転機器室(41)に連通し、前記一対の連通口(5q,5r)の他方の連通口(5r)は、クラッチ室(42)に連通していることを特徴とする。
この構成によれば、回転機器室およびクラッチ室の圧力変動を抑制するとともに、回転機器室およびクラッチ室から吐出された油分を含むガスの気液分離を行うことができる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記ブリーザ室(20)は、前記一対の連通口(5q,5r)の間で前記一対の連通口(5q,5r)よりも低位置に、中間連通口(5s)を備え、前記中間連通口(5s)は、前記クランクケース(5)内の変速機室(3A)に連通していることを特徴とする。
この構成によれば、一対の連通口からブリーザ室に侵入したガスを気液分離した後、分離したオイルを中間連通口から変速機室に戻すことができる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記ブリーザ室(20)の複数の部屋(20b,20c)は、前記隔壁部(25e)によって上下に区画された上室(20b)および下室(20c)であることを特徴とする。
この構成によれば、クランクケース内で温められたガスの上昇気流を利用して、上下二室による気液分離を効果的に促すことができる。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記シール部材(25)は、水平方向に対して傾斜して配置され、前記隔壁部(25e)の傾斜下端部には、前記上室(20b)内のオイルを前記下室(20c)に流す隔壁連通孔(25m,25n)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、ブリーザ室の上室で分離したオイルを、隔壁連通孔から下室へ自然に流し、オイルの循環を促すことができる。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記隔壁連通孔(25m,25n)は、複数設けられ、前記ブリーザカバー(21)は、前記複数の隔壁連通孔(25m,25n)の間を隔てるリブ(21c)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、ブリーザカバーのリブによって、各隔壁連通孔に向けてオイルの流れを案内しやすくすることができる。
【0012】
請求項7に記載した発明は、前記隔壁連通孔(25m,25n)は、前記ブリーザカバー(21)のカバー周壁(21a)と、前記ブリーザカバー(21)における前記カバー周壁(21a)に接続される前記リブ(21c)又は突出部(21f)と、で形成された隅部(21x,21y)に配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、オイルが溜まりやすい隅部において、隔壁連通孔を通じて上室のオイルを下室へ効果的に流すことができる。
【0013】
請求項8に記載した発明は、前記リブ(21c)は、前記ブリーザ室(20)内でラビリンス構造を形成していること特徴とする。
この構成によれば、ブリーザカバーのリブによってラビリンス構造の形成を容易にし、部品点数を抑えた上で気液分離室を構成することができる。
【0014】
請求項9に記載した発明は、前記ブリーザカバー(21)のカバー上壁(21r)は、前記カバー上壁(21r)の上方に配置されたスタータモータ(15)の外周形状に沿うように湾曲して形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、スタータモータの周囲の空きスペースを有効利用して、ブリーザ室の容量を可及的に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジンのクランクケースにブリーザ室を形成するブリーザ構造において、部品点数を効率よく削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のパワーユニットを示す左側面図である。
図2】上記パワーユニットの平面図である。
図3図2からスタータモータを外した状態の平面図である。
図4】上記パワーユニットのブリーザ装置の平面図である。
図5図4からブリーザカバーを外した状態の平面図である。
図6】上記ブリーザ装置のブリーザ取付座を右後上方から見た斜視図である。
図7】上記ブリーザ取付座を左後上方から見た斜視図である。
図8】上記ブリーザ装置のガスケットの平面図である。
図9】上記ブリーザ装置のブリーザカバーの断面を含む平面図である。
図10図4のX-X断面図である。
図11図4のXI-XI断面図である。
図12図10のXII-XII断面図である。
図13図12のXIII-XIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明するパワーユニット1を搭載する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0018】
<パワーユニット>
図1に示すように、鞍乗り型車両に搭載されるパワーユニット1は、駆動源となるエンジン2と、エンジン2の後方に配置された変速機3と、を一体に備えている。
エンジン2は、水冷4ストローク並列2気筒の内燃機関であり、2つの気筒を車幅方向に並べた横置き配置とされる。両気筒間のクランク位相角は、360度ではなく180度、270度等である。つまり、両気筒は、互いに異なるタイミングでピストンを往復動させる。
【0019】
エンジン2は、クランクケース5と、クランクケース5の前部から斜め前上方に延びるシリンダ部6と、クランクケース5の下部に取り付けられたオイルパン7と、を備えている。クランクケース5内には、車幅方向(車両左右方向)に延びるクランク軸11が収容されている。すなわち、クランク軸11の軸方向(クランク軸方向)は、車幅方向と平行である。図中線Cはシリンダ部6の起立方向に沿うシリンダ軸線を示す。
【0020】
シリンダ部6は、クランクケース5側から順にシリンダブロック6a、シリンダヘッド6bおよびヘッドカバー6cが重なって構成されている。シリンダブロック6aおよびシリンダヘッド6bは、クランクケース5に一体に締結されている。シリンダブロック6aは、クランクケース5に一体形成されてもよい。シリンダヘッド6bの後部には、吸気装置(不図示)が接続され、シリンダヘッド6bの前部には、排気装置(不図示)が接続される。
【0021】
図12図13を併せて参照し、クランクケース5の後部は、変速機3を収容する変速機ケースとされる。変速機3は、クランク軸11と平行なメイン軸12およびカウンタ軸13と、これら両軸12,13に跨って支持される変速ギヤ群(付番無)と、を備えている。
【0022】
クランクケース5の上部であってシリンダブロック6aの後方には、スタータモータ15が配置されている。クランクケース5の車幅方向一側(左側)の側部には、クランク軸11の左方に配置されたジェネレータ17が収容されている。クランクケース5の左側部には、ジェネレータ17を覆うジェネレータカバー8が取り付けられている。クランクケース5の右側部には、変速機ケースの右側部に渡る範囲を覆う右カバー9が取り付けられている。右カバー9は、クラッチ18を覆うクラッチカバーでもある。
【0023】
図2を併せて参照し、スタータモータ15は、駆動軸を車幅方向に向けて配置されており、駆動軸中心の円筒状の外形状を有している。スタータモータ15は、クランクケース5の上面部に接近して配置されている。スタータモータ15は、左端部がクランクケース5の左側部の上方に突出するスタータギヤケース16に取り付けられている。スタータモータ15の右側部には、右方に延びる一対のモータステー15aを備え、これらモータステー15aの先端部がクランクケース5の上壁部に締結されている。図中符号6dはシリンダヘッド6bの後部に吸気装置(不図示)を接続するための左右一対の吸気系接続部、符号6eはシリンダブロック6aの後部左側にカムチェーンテンショナを取り付けるためのテンショナ取付部、をそれぞれ示す。
【0024】
<ブリーザ装置>
図3図4図10図11を参照し、スタータモータ15の下方には、クランクケース5内の圧力変動を吸収するブリーザ装置20Aが設けられている。ブリーザ装置20Aは、クランクケース5の上部に形成されるブリーザ取付座5aと、ブリーザ取付座5aにガスケット25を介して取り付けられるブリーザカバー21と、を備えている。ブリーザ装置20Aは、前後方向および上下方向の幅よりも車幅方向に長い外形状を有している。ブリーザ装置20Aは、平面視の概略の外形状として、横長の楕円の後部左側を前方に凹ませた形状を有している。
【0025】
ブリーザカバー21は、クランクケース5のブリーザ取付座5aに対し、複数のボルトB1で締結されている。ブリーザ取付座5aおよびブリーザカバー21の締結により、これらの内側には、外部から遮断されたブリーザ室20が形成されている。ブリーザ室20は、クランク室内圧の変動を吸収するために、クランクケース5内の油分を含むガス(ブローバイガス、およびオイルミストを含むガス等)を受け入れる。ブリーザ室20は、前記油分を含むガスからオイルを分離する気液分離室を構成している。
【0026】
<ブリーザ取付座>
図5図7を参照し、ブリーザ取付座5aは、クランクケース5の上部で周辺部位よりも上方に突出するように形成されている。ブリーザ取付座5aは、前下がりに傾斜した基準平面K(図10図11参照)に沿う上面(座面)5bを形成している。上面5bは、複数の開放部5g,5m,5nの周縁に沿う枠状に形成されている。上面5bには、シート状のガスケット25を介して、ブリーザカバー21の額縁状の下面21nが突き当たる。この状態で、ブリーザカバー21をブリーザ取付座5aに固定することで、クランクケース5の上面部にブリーザ装置20Aが構成される。
【0027】
図10図11を併せて参照し、ブリーザ取付座5aの上面5bは、クランクケース5とシリンダブロック6aとの合わせ面と平行に形成されている。前記合わせ面は、車両側面視でシリンダ軸線C(図1参照)と直交する平面である。ブリーザカバー21の下面21nおよび平板状のガスケット25も、ブリーザ取付座5aの上面5bと同様に傾斜している。即ち、ブリーザ装置20Aは全体的に前傾している。
【0028】
図5図7を参照し、ブリーザ取付座5aは、平面視でブリーザ取付座5aの外周に沿って延びる取付座周壁5dと、取付座周壁5dの途中に設けられる複数のボス部5cと、開放部5g,5mの間で一対のボス部5cに渡って延びる取付座第一リブ5eと、開放部5g,5nの間で一対のボス部5cに渡って延びる取付座第二リブ5fと、を備えている。
【0029】
取付座周壁5dは、ブリーザカバー21のカバー周壁21a(図4参照)と平面視で重なるように設けられている。取付座周壁5dの上端面(上面5b)には、ガスケット25を介して、ブリーザカバー21のカバー周壁21aの下端面(下面21n)が突き当たる。
【0030】
各ボス部5cには、ボルトB1を螺着するネジ穴が形成されている。
取付座第一リブ5eは、車幅方向に延びる直線状に形成されている。
取付座第二リブ5fは、平面視L字状に形成されている。取付座第二リブ5fは、ブリーザ取付座5aの右後のボス部5cから前方に延びる縦リブ5f1と、ブリーザ取付座5aの右端のボス部5cから左方に延びる横リブ5f2と、を一体に備えている。
【0031】
ブリーザ取付座5aの左後部で、取付座周壁5dと取付座第一リブ5eとの間には、クランクケース5の上面部を上下方向に貫通する第一貫通部5mが形成されている。
ブリーザ取付座5aの右後部で、取付座周壁5dと取付座第二リブ5fとに囲まれた部位には、クランクケース5の上面部を上下方向に貫通する第二貫通部5nが形成されている。
【0032】
第一貫通部5mおよび第二貫通部5nは、クランクケース5の内部、詳しくは、変速機室3Aを、ブリーザ室20内に開放させている。
図5では、ブリーザ取付座5aの平面視(上面視)で、第一貫通部5mおよび第二貫通部5nを通じて、変速機室3A内に配置された変速ギア27,28が視認される様を示している。
【0033】
ブリーザ取付座5aは、取付座周壁5dの内側で、第一貫通部5mおよび第二貫通部5nを除いた部分に、底壁部5pを有する開放部5gを備えている。開放部5gは、ブリーザ取付座5aの内部を上方に開放させている。
【0034】
図5図6を参照し、取付座周壁5dの車幅方向一側の端部(左端部)の下部には、第一連通口(連通口)5qが形成されている。
図12を併せて参照し、第一連通口5qは、ジェネレータ17が収容されたジェネレータ室(回転機器室)41に連通している。ジェネレータ17は、クランク軸11と同軸に配置され、クランク軸11の回転に伴い発電する。ジェネレータ17ジェネレータ室41は、クランクケース5の左側部に形成されている。
【0035】
図5図7を参照し、取付座周壁5dの車幅方向他側の端部(右端部)の下部には、第二連通口(連通口)5rが形成されている。
図12を併せて参照し、第二連通口5rは、クラッチ18が収容されたクラッチ室42に連通している。クラッチ18は、メイン軸12と同軸に配置され、エンジン2および変速機3の間の動力伝達を断接する。クラッチ室42は、クランクケース5の右側部に形成されている。
【0036】
図5を参照し、底壁部5pにおける第一連通口5qと第二連通口5rとの間には、第三連通口(中間連通口)5sが形成されている。
図12図13を併せて参照し、第三連通口5sは、クランクケース5の後部に形成された変速機室3A(又はオイルパン7)に連通している。
【0037】
ブリーザ取付座5aの下部には、車幅方向に延びるブリーザ通路40が形成されている。
図12を参照し、ブリーザ通路40は、エンジン2の車幅方向一側(左側)が第一連通口5qを介してジェネレータ室41に開口し、エンジン2の車幅方向他側(右側)が第二連通口5rを介してクラッチ室42に開口している。
【0038】
図6図7を参照し、第一連通口5qおよび第二連通口5rは、ブリーザ取付座5aの底部に接近して配置されている。これにより、第一連通口5qおよび第二連通口5rからブリーザ室20内に侵入した油分を含むガスが、ブリーザカバー21の吐出管23(図4参照)側に至り難くなる。
【0039】
<ブリーザカバー>
図4図9を参照し、ブリーザカバー21は、図示の平面視でブリーザ装置20Aの輪郭を形成するカバー周壁21aと、カバー周壁21aの上端側を閉塞するカバー上壁21rと、を一体に備えている。
カバー周壁21aは、平面視でクランクケース5のブリーザ取付座5aの取付座周壁5dと同形状又は略同形状の部分であり、複数のボス部(突出部)21fを備えている。各ボス部21fには、それぞれボルトB1を挿通するボルト挿通孔が形成されている。各ボス部21fは、ブリーザ取付座5aの各ボス部5cに対し、ボルトB1で締結されている。
【0040】
ブリーザカバー21は、カバー周壁21aの右後端部に、斜め右後方に突出する管接続部21bを備えている。管接続部21bには、ブリーザ室20でオイルを分離したガスを吐出可能とする吐出管23が接続されている。吐出管23は、不図示のホース等を介して、前記吸気装置のエアクリーナに接続されている。ブリーザ室20で気液分離された後のガスは、前記エアクリーナからエンジン2の燃焼室に送られる。
【0041】
ブリーザカバー21は、カバー周壁21aからブリーザカバー21の内側に延びる前側リブ(リブ)21c、後側リブ21d、一側リブ21e1および他側リブ21e2を備えている。
前側リブ21cは、カバー周壁21aの前端部21hから後方に延びている。カバー上壁21rの上面側には、前側リブ21cと平面視で重なるように凹溝21c1が形成されている。
【0042】
後側リブ21dは、カバー周壁21aの後端部21jから前方に延びている。カバー上壁21rの上面側には、後側リブ21dと平面視で重なるように凹溝21d1が形成されている。後側リブ21dは、ブリーザ取付座5aの取付座第二リブ5fの縦リブ5f1上にガスケット25を介して配置されている。後側リブ21dは、縦リブ5f1よりも前方まで延びている。後側リブ21dと縦リブ5f1との間には、ガスケット25の後述する隔壁部25eが挟持される。
【0043】
一側リブ21e1は、ブリーザカバー21の一側端部(左端部)側に設けられている。一側リブ21e1は、カバー周壁21aの左右一側(左側)の側縁部21k1から左右他側(右側)に向けて、一対のボス部21f間に渡るように延びている。一側リブ21e1は、車幅方向と平行に延びている。カバー上壁21rの左側には、後述する低位部21sを段差状に形成するための立壁部21e3が形成されている。低位部21s側には、立壁部21e3の下端部の直後で車幅方向に延びる凹溝21e4が形成されている。凹溝21e4は、一側リブ21e1と平面視で重なるように配置されている(図10参照)。
【0044】
他側リブ21e2は、ブリーザカバー21の他側端部(右端部)側に設けられている。他側リブ21e2は、カバー周壁21aの左右他側(右側)の側縁部21k2から左右一側(左側)に向けて、車幅方向と平行に延びている。他側リブ21e2は、ブリーザ取付座5aの取付座第二リブ5fの横リブ5f2(図5参照)と平面視で重なるように配置されている。
【0045】
他側リブ21e2の右端部の例えば上部には、開放部5gと第二貫通部5nとを連通させる通路21mが形成されている。通路21mは、他側リブ21e2の右上部を切り欠くように形成されている。カバー上壁21rの上面側には、他側リブ21e2の通路21mを除く部位と平面視で重なるように凹溝21e5が形成されている。
【0046】
ブリーザカバー21の右側部には、前後方向に隣接して配置されてそれぞれ上方に膨出する前膨出部21pおよび後膨出部21qを備えている。
図10図13を参照し、カバー上壁21rは、スタータモータ15の下方に離間して配置されるとともに、スタータモータ15の円筒状の外形状に沿う湾曲形状を有している。これにより、スタータモータ15の円筒形状の周囲に形成されるデッドスペースを利用して、ブリーザ室20の容量を可及的に確保することができる。
【0047】
ここで、カバー周壁21aの前端部21hにある一対のボス部21fを、左側から順にボス部21f1,21f2とし、カバー周壁21aの後部凹形状の直前にある一つのボス部21fを、ボス部21f3として、以下を説明する。
図9を参照し、上室20bの入口(後述するガスケット第一開口部25b)から吐出管23に至る経路において、上流側から順に配置されたボス部21f1、ボス部21f2、前側リブ21c、後側リブ21dおよびボス部21f3は、ラビリンス通路30を形成している。
このようなラビリンス通路30により、ブリーザ室20における油分を含むガスの気液分離効果を高めることができる。
【0048】
図12を参照し、ブリーザ取付座5aは、ブリーザカバー21のボス部21f1、ボス部21f2、前側リブ21cおよびボス部21f3の各々の下方に連なるように、複数のボス部5cおよび取付座第一リブ5eを備えている。複数のボス部5cおよび取付座第一リブ5eは、ブリーザ通路40内に突出し、ブリーザ通路40を前後に蛇行した通路としている。この構成によっても、ブリーザ室20における気液分離効果を高めることができる。
【0049】
ここで、図5図9を参照し、ブリーザ室20内のガスの流れについて説明する。クランクケース5内で発生した油分を含むガスは、クランクケース5内の圧力変動等に応じてクランクケース5外に出ようとする。このガスは、ジェネレータ室41およびクラッチ室42を経て、第一連通口5qおよび第二連通口5rからブリーザ室20内に導入される。
【0050】
ブリーザ室20内に導入されたガスは、まず下室20cに入って膨張、冷却され、次いで後述するガスケット第一開口部25bから上室20b内に入る。上室20bに入ったガスは、上室20bを車幅方向一側(左側)から他側(右側)に流れつつ、上室20bに形成されたラビリンス通路30を流れて気液分離が促される。上室20bの車幅方向他側に至ったガスは、他側リブ21e2に形成された通路21mを通じて第二貫通部5nに導入され、吐出管23等を通じて前記吸気装置のエアクリーナに送られる。
【0051】
<ガスケット>
図5図8図9を参照し、ガスケット25は、ブリーザ取付座5aの上面5bとブリーザカバー21の下面21nとに挟まれる枠状のシール部25sと、ブリーザ室20を上下2つの部屋(上室20bおよび下室20c)に区画する隔壁部25eと、を一体に備えている。図8に示すガスケット25において、隔壁部25eを網掛けで示す。
【0052】
シール部25sは、平面視でブリーザ装置20Aの輪郭(ブリーザ取付座5aおよびブリーザカバー21の輪郭でもある)に沿う周縁部25aと、ブリーザ取付座5aの取付座第一リブ5eおよび取付座第二リブ5fに沿う第一リブ対向部25aeおよび第二リブ対向部25afと、を備えている。第二リブ対向部25afは、取付座第二リブ5fの縦リブ5f1および横リブ5f2に対応する縦リブ対向部25af1および横リブ対向部25af2を備えている。
【0053】
ガスケット25は、ブリーザ室20の車幅方向一側(左側)の前部で開口するガスケット第一開口部25bと、ブリーザ室20の車幅方向一側(左側)の後部で開口するガスケット第二開口部25cと、を備えている。ガスケット第一開口部25bとガスケット第二開口部25cとの間には、車幅方向に延びる第一リブ対向部25aeが設けられている。
【0054】
周縁部25aは、ブリーザ取付座5aの各ボス部5cおよびブリーザカバー21の各ボス部21fと平面視で重なる複数のボルト挿通部25dを備えている。
ガスケット第一開口部25bは、ブリーザ取付座5aの開放部5gの左側部と平面視で重なるように形成されている。ガスケット第一開口部25bは、ブリーザ室20におけるガスケット25によって区画される上下2つの部屋(上室20bおよび下室20c)を互いに連通させる。
【0055】
ガスケット第二開口部25cは、ブリーザ取付座5aの第一貫通部5mと平面視で重なるように形成されている。ブリーザカバー21のカバー上壁21rには、第一貫通部5mおよびガスケット第二開口部25cと平面視で重なる低位部21sが形成されている。低位部21sは、カバー上壁21rの残余の部位に対して、下方(ブリーザカバー21側)に変位している。低位部21sは、平面視で重なる領域において、上室20bを消失又は縮小させている。
【0056】
ガスケット第二開口部25cは、第一貫通部5mを通じて、変速機室3Aを上方に開放させるが、ガスケット第二開口部25cには、ブリーザカバー21の低位部21sが上方から対向する。これにより、ガスケット第二開口部25cを通じた変速機室3Aおよび上室20bの連通が抑えられる。
【0057】
図8を参照し、ガスケット25は、周縁部25aの内側で、各リブ対向部25ae,25afならびに各開口部25b,25cを避けた領域に、ブリーザ室20を上下に区画するための隔壁部25eを備えている。
隔壁部25eは、網掛けおよび鎖線によって、周縁部25aならびに各リブ対向部25ae,25afと区別して示すが、これらは例えば、一体の平板状の素材を所定形状に切り出すことで一体形成されている。
【0058】
隔壁部25eは、第一隔壁部25fおよび第二隔壁部25gを備えている。
第一隔壁部25fは、ガスケット第一開口部25bを除き、平面視でブリーザ取付座5aの開放部5g(図5参照)と重なる部分である。
第二隔壁部25gは、平面視でブリーザ取付座5aの第二貫通部5n(図5参照)と重なる部分である。
【0059】
第一隔壁部25fの前縁部には、ガスケット25が区画する上室20bおよび下室20cを互いに連通させる左右一対の隔壁連通孔25m,25nが形成されている。
一対の隔壁連通孔25m,25nの間には、ブリーザカバー21の前側リブ21cが配置される。前側リブ21cは、上室20b内のガスの車幅方向の流れを遮り、上室20b内で分離させたオイルを隔壁連通孔25m,25nに導きやすくする。これにより、気液分離したオイルを効率よく隔壁連通孔25m,25nから下室20cに落下させることができる。
【0060】
図9を参照し、カバー周壁21aの前端部21hと、前端部21hに位置する車幅方向一側(左側)のボス部21fと、で形成される一側隅部(隅部)21xの右方且つ後方に、ガスケット25の一方の隔壁連通孔25mが配置されている。
カバー周壁21aの前端部21hと、前側リブ21cと、で形成される他側隅部(隅部)21yの右方且つ後方に、ガスケット25の他方の隔壁連通孔25nが配置されている。
【0061】
このように、各隔壁連通孔25m,25nは、それぞれブリーザカバー21の隅部21x,21yに振り分けて配置されている。なお、実施形態で「隅部に配置されている」とは、隅部を形成する二辺に接するか、あるいは隅部の丸面取りの半径内に少なくとも一部が位置することをいう。
【0062】
図10図11を参照し、ガスケット25は、前側が後側よりも低くなるように傾斜している。このため、一対の隔壁連通孔25m,25nにガスケット25上のオイルが導かれやすくなる。特に、上記した一側隅部21xおよび他側隅部21yにオイルが溜まりやすいため、走行中に車体がロールする車両では、一対の隔壁連通孔25m,25nによってオイルを変速機室3Aへ効果的に落下させることができる。
【0063】
図8を参照し、ガスケット25のシール部25sは、ブリーザ取付座5aの取付座周壁5d、取付座第一リブ5eおよび取付座第二リブ5fと、ブリーザカバー21のカバー周壁21a、第一リブ対向部25aeおよび第二リブ対向部25afと、の間を各々シールする機能を有している。ガスケット25の隔壁部25eは、ブリーザ室20を上下2つの部屋に区画する機能を有している。
【0064】
図10図11図13を併せて参照し、ブリーザ装置20Aは、クランクケース5の上部に形成されたブリーザ取付座5aの上面開口を、ガスケット25を介して取り付けられたブリーザカバー21で覆って閉塞している。ブリーザ装置20Aは、ガスケット25によって、ブリーザカバー21内に形成される上室20bと、上室20bの下方でブリーザ取付座5a内に形成される下室20cと、に区画する。上室20bおよび下室20cは、ガスケット25に一体に有する隔壁部25eによって区画されている。
【0065】
上記したガスケット25は、クランクケース5の上部とブリーザカバー21との間をシールするシール部材であるが、ブリーザ室20を上室20bと下室20cとを分ける区画部材でもある。ガスケット25がブリーザ室20の区画部材を兼ねることで、ブリーザ室20を区画する専用部材を不要とする(もしくは削減する)ことができ、部品点数を少なくすることができる。また、ガスケット25によってブリーザ室20を上下方向に分けることで、クランクケース5内で温められたオイルミストやガスを下室20cから上室20bに導きやすくし、上下二室を利用した気液分離を効果的に促すことができる。
【0066】
図5図9図13を参照し、ブリーザ通路40の下面部40aにおける車幅方向の中間部(中央部に限らない)には、第三連通口5sが形成されている。第三連通口5sの周囲には、下面部40aの残余の部位に対して下方に窪む窪み部40bが形成されている。これにより、下面部40a上に溜まったオイルが第三連通口5sに案内されやすくなっている。
【0067】
図13を参照し、クランクケース5は、上下方向に分割された上ケース5xおよび下ケース5yを備えている。上ケース5xおよび下ケース5yは、複数のボルトB2によって締結されている。
第三連通口5sの下方には、上ケース5xに形成されて上下方向に延びる上ケース連通路5vが接続されている。上ケース連通路5vの下方には、下ケース5yに形成されて上下方向に延びる下ケース連通路5wが接続されている。下ケース連通路5wの下端は、変速機室3A内(又はオイルパン7内)に開口している。
【0068】
以上説明したように、上記実施形態におけるブリーザ構造は、エンジン2のクランクケース5の油分(オイルミスト、未燃焼ガス)を含んだガスを気液分離するブリーザ装置20Aを備えるブリーザ構造において、ブリーザ装置20Aは、クランクケース5の上部に形成されたブリーザ取付座5aと、ブリーザ取付座5aに平板状のガスケット25を介して取り付けられるブリーザカバー21と、を備え、ガスケット25は、ブリーザ室20を複数の部屋(上室20bおよび下室20c)に区画する隔壁部25eを一体形成している。
【0069】
この構成によれば、クランクケース5とブリーザカバー21との間をシールするガスケット25に、ブリーザ室20を上室20bおよび下室20cに区画する隔壁部25eを一体形成するので、ブリーザ室20を区画する専用の仕切部材の削減を図り、部品点数を効率よく削減することができる。
【0070】
また、上記ブリーザ構造において、ブリーザ室20は、下室20cの車幅方向両側に一対の第一連通口5qおよび第二連通口5rを備え、第一連通口5qは、クランクケース5の車幅方向一側のジェネレータ室41に連通し、第二連通口5rはクランクケース5の車幅方向他側のクラッチ室42に連通しているので、ジェネレータ室41およびクラッチ室42の圧力変動を抑制するとともに、ジェネレータ室41およびクラッチ室42から吐出された油分を含むガスの気液分離を行うことができる。
【0071】
また、上記ブリーザ構造において、ブリーザ室20は、一対の第一連通口5qおよび第二連通口5rの間でこれらよりも低位置に、第三連通口5sを備え、第三連通口5sは、クランクケース5の後部内の変速機室3Aに連通しているので、一対の第一連通口5qおよび第二連通口5rからブリーザ室20に侵入したガスを気液分離した後、分離したオイルを第三連通口5sから変速機室3A内に戻すことができる。
【0072】
また、上記ブリーザ構造において、ブリーザ室20は、隔壁部25eによって上下に区画されて上室20bおよび下室20cを形成しているので、クランクケース5内で温められたガスの上昇気流を利用して、上下二室による気液分離を効果的に促すことができる。
【0073】
また、上記ブリーザ構造において、ガスケット25は、水平方向に対して前傾して配置され、隔壁部25eの傾斜下端部である前端部には、上室20b内のオイルを下室20cに流す隔壁連通孔25m,25nを備えているので、ブリーザ室20の上室20bのオイルを、隔壁連通孔25m,25nから下室20cへ自然に流し、オイルの循環を促すことができる。
【0074】
また、上記ブリーザ構造において、複数の隔壁連通孔25m,25nを備え、ブリーザカバー21は、複数の隔壁連通孔25m,25nの間を隔てる前側リブ21cを備えているので、ブリーザカバー21の前側リブ21cによって、各隔壁連通孔25m,25nに向けてオイルの流れを案内しやすくすることができる。
【0075】
また、上記ブリーザ構造において、隔壁連通孔25m,25nは、ブリーザカバー21のカバー周壁21aと、ブリーザカバー21におけるカバー周壁21aに接続される前側リブ21cまたはボス部21fと、で形成された一側隅部21xおよび他側隅部21yに振り分けて配置されているので、オイルが溜まりやすい一側隅部21xおよび他側隅部21yにおいて、隔壁連通孔25m,25nを通じて上室20bのオイルを下室20cへ効果的に流すことができる。
【0076】
また、上記ブリーザ構造において、前側リブ21cは、ブリーザ室20内でラビリンス構造を形成しているので、ブリーザカバー21の前側リブ21cによってラビリンス構造の形成を容易にし、部品点数を抑えた上で気液分離室を構成することができる。
【0077】
また、上記ブリーザ構造において、ブリーザカバー21のカバー上壁21rは、クランクケース5の上部に取り付けられたスタータモータ15の外形状に沿うように湾曲して形成されているので、スタータモータ15の周囲の空きスペースを有効利用して、ブリーザ室20の容量を可及的に確保することができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ガスケットによってブリーザ室20を上下方向に区画したが、ガスケットによってブリーザ室20を上下方向以外の方向(左右方向および前後方向等)に区画してもよい。
また、ガスケット25の隔壁部25eをシール部25sに連続する面一状に形成したが、例えば隔壁部25eにリブや凹凸形状を設けたり厚さを変更したりしてもよい。また、隔壁部25eをシール部25sと別部材とし、シール部25sに接着等により結合してもよい。
【0079】
本実施形態のブリーザ構造を備えるパワーユニットは、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。また、鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)に適用してもよい。原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。
エンジンは、クランク軸を車幅方向に沿わせた横置き配置に限らず、クランク軸を車両前後方向に沿わせた縦置き配置でもよい。また、本実施形態のブリーザ構造は、車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物や移動体に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 パワーユニット
2 エンジン
3 変速機
3A 変速機室
5 クランクケース
5a ブリーザ取付座
5q 第一連通口(連通口)
5r 第二連通口(連通口)
5s 第三連通口(中間連通口)
11 クランク軸
15 スタータモータ
18 クラッチ
20 ブリーザ室
20A ブリーザ装置
20b 上室(部屋)
20c 下室(部屋)
21 ブリーザカバー
21a カバー周壁
21c 前側リブ(リブ)
21f ボス部(突出部)
21r カバー上壁
21x 一側隅部(隅部)
21y 他側隅部(隅部)
25 ガスケット(シール部材)
25e 隔壁部
25m,25n 隔壁連通孔
25s シール部
41 ジェネレータ室(回転機器室)
42 クラッチ室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13