(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156447
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】搬送ロボット稼働設備用防災システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/36 20060101AFI20221006BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20221006BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20221006BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A62C37/36
A62C3/00 H
G08B17/12 A
G08B17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060150
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌彦
【テーマコード(参考)】
2E189
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2E189FB01
2E189FB03
2E189FB05
5C085AA03
5C085AA11
5C085CA15
5C085CA16
5C085CA18
5C085CA20
5G405AA01
5G405AA06
5G405AA08
5G405AB02
5G405AB05
5G405AD06
5G405AD07
5G405CA21
5G405CA23
5G405CA29
(57)【要約】
【課題】搬送ロボットを稼働させて物品の搬送を行う設備において、発火した搬送ロボットに対して集中的に消火を行うことで、効率的な初期消火を可能にする。
【解決手段】防災システムは、自律走行可能な搬送ロボットを稼働させて物品の搬送を行う設備に設置される防災システムであって、搬送ロボットが自身に搭載されたバッテリを充電するために帰着する充電スペースを囲むように設置される支持体と、支持体の上部に支持され、充電スペース内の火災を検知する火災検知器と、支持体の上部に支持され煙状消火剤を充電スペース内に噴出する消火装置と、火災検知器が火災を検知したときに消火装置を作動させる制御機を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な搬送ロボットを稼働させて物品の搬送を行う設備に設置される防災システムであって、
前記搬送ロボットが自身に搭載されたバッテリを充電するために帰着する充電スペースを囲むように設置される支持体と、
前記支持体の上部に支持され、前記充電スペース内の火災を検知する火災検知器と、
前記支持体の上部に支持され消火剤を前記充電スペース内に噴出する消火装置と、
前記火災検知器が火災を検知したときに前記消火装置を作動させる制御機を備えることを特徴とする搬送ロボット稼働設備用防災システム。
【請求項2】
前記支持体は、前記充電スペースを囲む壁材を備え、
前記壁材には、前記搬送ロボットの出入口が開口していることを特徴とする請求項1に記載された搬送ロボット稼働設備用防災システム。
【請求項3】
前記制御機は、前記火災検知器及び前記消火装置が配線接続された子機と、該子機と無線通信で接続された親機を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載された搬送ロボット稼働設備用防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な搬送ロボットが稼働する設備に設置される防災システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の拠点となる物品倉庫などでは、搬送ロボットを稼働させて物品の搬送を行う設備(所謂、ロボット倉庫)が知られている。このような設備では、自律走行可能な搬送ロボットが用いられており、保管された物品の中から、出荷率が高い物品を選択して特定のスペース(集約スペース)に集中格納する集約作業や、集約スペースの物品から注文された物品を選択して取り出すピッキング作業などの自動化が進められている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボット倉庫で稼働する搬送ロボットは、電動式であり自身がバッテリ(二次電池)を搭載していることで、熱暴走による火災リスクを抱えている。そして、仮にバッテリの熱暴走などで搬送ロボットが発火する事態になると、稼働中の搬送ロボットは、様々な経路で移動して設備内の物品に近づくので、発火した搬送ロボットのみを対象にした集中的な初期消火を行い難い問題があった。
【0005】
また、ロボット倉庫は、賃貸借契約のもとで施設を借り受けて営業している場合が多く、このような場合には、契約期限満了で撤去する際に現状復帰義務があることから、大がかりな防災設備を設置し難いという事情がある。このような事情が無い場合であっても、ロボット倉庫全体を対象にした消火で対処しようとすると、保管された物品やロボット倉庫の設備が消火剤で汚染される問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、ロボット倉庫において、発火した搬送ロボットに対して集中的に消火を行うことで、効率的な初期消火を可能にすること、ロボット倉庫の撤去時に現状復帰し易いシステムにすること、保管された物品やロボット倉庫の設備が消火剤で汚染されないようにすること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
自律走行可能な搬送ロボットを稼働させて物品の搬送を行う設備に設置される防災システムであって、前記搬送ロボットが自身に搭載されたバッテリを充電するために帰着する充電スペースを囲むように設置される支持体と、前記支持体の上部に支持され、前記充電スペース内の火災を検知する火災検知器と、前記支持体の上部に支持され消火剤を前記充電スペース内に噴出する消火装置と、前記火災検知器が火災を検知したときに前記消火装置を作動させる制御機を備えることを特徴とする搬送ロボット稼働設備用防災システム。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する搬送ロボット稼働設備用防災システムは、発火した搬送ロボットに対して集中的に消火を行うことで、効率的な初期消火を行うことができ、また、撤去時に現状復帰し易く、保管された物品やロボット倉庫の設備が消火剤で汚染されないシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】搬送ロボットが稼働する設備の概要を示した説明図。
【
図2】本発明の実施形態に係る搬送ロボット稼働設備用防災システムの説明図。
【
図3】搬送ロボットの出入口の構成例を示した説明図。
【
図4】搬送ロボット稼働設備用防災システムのシステム構成例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送ロボット稼働設備用防災システム(以下、防災システムという)が設置される設備(以下、ロボット倉庫Fという)の一例を示している。ロボット倉庫Fは、様々な種類の物品がラック(棚)Rに収納された状態で保管されており、床面上を自律走行する搬送ロボットTが稼働することで、ラックRに収納された物品を選択して搬送する設備である。搬送ロボットTの形態は様々であるが、一例として、選択されたラックRの下側に搬送ロボットTを入り込ませ、搬送ロボットTがラックRを持ち上げて、ラックRを介して物品を搬送する形態などがある。
【0012】
このようなロボット倉庫Fで稼働する搬送ロボットTは、自律走行可能にするための電動式走行部を備え、電動式走行部の電源となるバッテリ(二次電池)を搬送ロボットT自身が搭載している。ロボット倉庫Fには、搬送ロボットTに搭載されたバッテリを充電するための充電スペースCsが設けられている。充電スペースCsには、充電器Crが配備され、搬送ロボットTは、バッテリ残量が少なくなると、充電スペースCsに帰着して、充電器Crに自ら接続することでバッテリの充電を行う。
【0013】
このようなロボット倉庫Fは、前述したように、賃貸借契約のもとで施設を借り受けて営業している場合には、撤去する際に現状復帰義務があることから、大がかりな防災設備を設置し難い事情があるが、搬送ロボットTが発火した場合には、自律走行する搬送ロボットTの移動で発火元の初期消火が困難であり、初期消火に失敗すると、搬送ロボットTの性質上、稼働中には物品に近づくことが避けられないので、物品を含めたロボット倉庫F全体に火災が広がる事態になりかねない。
【0014】
本発明の実施形態は、このような事情に対処できるものであり、搬送ロボットTがロボット倉庫Fにおける充電スペースCsに帰着することに着目して、充電スペースCs内で消火を行うことで、効果的な初期消火の実現を可能にし、発火元の搬送ロボットTのみを集中的に消火して、保管された物品やロボット倉庫Fの施設が消火剤で汚染される不具合を回避し、撤去時の現状復帰を行い易くした消火システムを提供している。
【0015】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る防災システム1は、支持体2と、火災検知器3と、消火装置4と、制御機10を備えている。
【0016】
支持体2は、火災検知器3と消火装置4を支持するものであり、搬送ロボットTが自身に搭載されたバッテリを充電するために帰着する充電スペースCsを囲むように設置される。支持体2は、例えば、L型アングルなどのフレーム材を用いることができるが、消火装置4から噴出される消火剤を充電スペースCsに閉じ込めるために、充電スペースCsの周りを囲む壁材を用いることが好ましい。
【0017】
支持体2の設置は、充電スペースCsに設けられる充電器Crの外側に沿って配備され、支持体2を壁材とする場合には、隣接する壁材の縦辺を密着させて、支持体2の内側に閉じた空間を形成する。図示の例では、支持体2で囲まれた空間の上部を開放しているが、火災検知器3と消火装置4を支持体2で囲まれた空間内に配置して、支持体2で囲まれた空間の上部を板材等で覆うようにしてもよい。
【0018】
支持体2を壁材にした場合、壁材には、搬送ロボットTの出入口2Aを開口させる。出入口2Aは、搬送ロボットTの高さ及び幅に応じて形成され、搬送ロボットTが通過するのに必要且つ十分な大きさに設定することが好ましい。出入口2Aを大きくして、搬送ロボットTの通過を円滑化したい場合には、
図3に示すように、出入口2Aに可撓性のシートなどでカーテン2Bを設け、搬送ロボットTの通過時にのみ出入口2Aが開放されるようにすることで、消火装置4から噴出した消火剤が充電スペースCsの外に拡散するのを抑えることができる。支持体2やカーテン2Bは、難燃性或いは不燃性の材料を採用することが好ましい。
【0019】
火災検知器3は、支持体2の上部に支持され、充電スペースCs内の火災を検知する。火災検知器3の一例としては、3波長式の炎検知器を用いることができる。3波長式の炎検知器は、火炎以外の熱源や照明光には反応し難いので、充電スペースCs内での発火を高い信頼性で検知することができる。また、火災検知器3として、煙検知器を用いる場合には、支持体2で囲まれた空間の上部を板材等で覆うことが必要になる。
【0020】
消火装置4は、支持体2の上部に支持され、煙状消火剤を充電スペースCs内に噴出する。消火装置4が噴出する消火剤は、充電器Crや搬送ロボットTに搭載されたバッテリの漏電を避けるために、水系以外の消火剤を用いるが、特に、撤去時の現状復帰を考慮した場合に、消火後の残留物が少ないことが求められるので、エアロゾルなどの煙状消火剤を用いる。なお、煙状消火剤以外のものとして、窒素等の不活性ガスを用いた消火剤でもよい。
【0021】
消火装置4として用いられるエアロゾル消火装置は、消火成分(炭酸カリウム・炭酸水素カリウム)を煙状に噴出し、火炎の中の燃焼ラジカルと消火成分のKラジカルとが結合し、燃焼ラジカルの連鎖反応を抑制して、火炎の燃焼を速やかに抑え込む。エアロゾル消火装置は、ガス消火設備にあるような高圧ガス容器を持たず、配管も必要としないため、小型且つ設置が容易であると共に、撤去時の現状復帰も容易に行うことができる。
【0022】
制御機10は、火災検知器3が火災を検知したときに消火装置4を作動させる。制御機10は、例えば、配線L1で火災報知器3に接続され、配線L2で消火装置4に接続されている。火災検知器3が火災を検知して、警報信号が制御機10に入力されると、制御機10は、消火装置4を作動させて、煙状消火剤を支持体2で囲まれた充電スペースCsに放出する。制御機10は、一例として、消火装置4の作動に合わせて警報器の音響を鳴動させる。
【0023】
制御機10は、
図4に示すように、子機11と親機12によって構成することができる。子機11は、ロボット倉庫F内に設置され、複数の充電スペースCsに対してそれぞれ設置される火災検知器3と消火装置4が配線接続されている。これに対して親機12は、ロボット倉庫Fの外に設けられる管理棟Mなどに設置され、単数又は複数の子機11と無線通信で接続されている。
【0024】
この際、子機11は、制御機10として、火災検知器3からの警報信号に基づく消火装置4の作動を行うと共に、中継器として機能して、親機12との信号送受信を行う。すなわち、親機12は、子機11を経由して、各充電スペースCsに設置された火災検知器3の状態信号を常時又は定期的に受信しており、火災検知器3から警報信号が送信された場合には、送信元の火災検知器3が設置された充電スペースCsを特定して表示し、警報器の音響を鳴動する、などの動作を行う。
【0025】
以上説明した防災システム1によると、支持体2に火災検知器3と消火装置4を一体に装備しておくことで、ロボット倉庫Fの充電スペースCsに対して、簡易に設置することができ、また、撤去時にも簡易に支持体2を取り外して、簡易に現状復帰させることができる。
【0026】
また、防災システム1は、消火剤等を送る配管が不要であり、配線も充電スペースCs近くの限定された範囲に収められるので、これによっても、簡易に設置することが可能であり、また、撤去時に簡易に現状復帰させることが可能になる。
【0027】
そして、防災システム1は、充電スペースCsに搬送ロボットTが帰着することに着目して、充電スペースCs内で消火を行うことで、効果的な初期消火を可能にし、発火元の搬送ロボットTのみを集中的に消火することで、ロボット倉庫Fに保管された物品やロボット倉庫Fの施設が消火剤で汚染される不具合を回避することができる。
【0028】
この際、搬送ロボットTの稼働システムにおいて、火災等の不具合が生じた搬送ロボットTを直ちに充電スペースCsに帰還させる制御を追加することで、更に効果的な初期消火の実現が可能になる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、自律走行ロボットとして、物品を搬送する搬送ロボットを例に説明したが、建物内を自律走行で巡回する警備ロボットや清掃ロボットなどに本発明を適用するようにしてもよい。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 搬送ロボット稼働設備用防災システム(防災システム)、2 支持体、
2A 出入口、2B カーテン、3 火災検知器、4 消火装置、
10 制御機、11 子機、12 親機,F ロボット倉庫、
T 搬送ロボット、Cs 充電スペース、Cr 充電器、M 管理棟、
L1,L2 配線