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特開2022-156463通信システム、移動体、及び通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156463
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】通信システム、移動体、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20221006BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20221006BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H04L12/40 M
B60R16/023 P
G01M17/007 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060176
(22)【出願日】2021-03-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.CAN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲吾
【テーマコード(参考)】
5K032
【Fターム(参考)】
5K032BA06
5K032EA03
5K032EA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ECUが、車両用故障診断装置からの要求に応じて、速やかに診断データを応答し、通信ネットワーク上のトラフィックの増大を抑制する通信システム及び方法を提供する。
【解決手段】通信システムは、移動体に搭載される通信ネットワークを通じて、そのIDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する第1ECU及びデータフレームを受信する第2ECUを備える。第1ECUは、移動体の診断データ及び診断データのデータ種別を夫々含む複数のデータセットをデータフィールドに含めてデータフレームを送信する。第2ECUは、第1ECUから受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データをデータ種別毎に抽出し、複数のデータ種別毎に記憶し、有線ネットワークを通じて接続されて移動体の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、記憶している診断データを外部診断装置に送信する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを通じて、CAN-IDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する第1ECUと、
前記CAN通信ネットワークを通じて前記データフレームを受信する第2ECUと
を備え、
前記第1ECUは、前記移動体の診断データ及び前記診断データのデータ種別をそれぞれ含む複数のデータセットを前記データフィールドに含めて前記データフレームを送信し、
前記第2ECUは、
前記第1ECUから受信した前記データフレームの前記データフィールドから複数の前記診断データをデータ種別毎に抽出し、前記抽出した前記複数の診断データを複数の前記データ種別毎に記憶し、
有線ネットワークを通じて接続され前記移動体の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、前記記憶している診断データを前記外部診断装置に送信する
通信システム。
【請求項2】
前記第1ECUは、前記CAN通信ネットワークを通じて前記データフレームを送信する送信周期毎に、前記データフィールドに含める前記診断データの種別を変えて前記第2ECUに送信する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記データフレームは、前記データフィールドのデータ長を示すデータ長コードを含み、
前記第1ECUは、前記複数のデータセットの合計のデータ長が、前記データ長コードによって示されるデータ長に満たない場合、前記データフィールドに格納されるデータのうち前記複数のデータセットの合計のデータ長を超える部分を予め定められた固定値で埋める
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記移動体は、車両であり、
前記外部診断装置は、車両用故障診断装置である
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記診断データは、診断サービスにおいて前記車両用故障診断装置が要求する情報を示すIDで識別される種別のデータであり、
前記第1ECU及び第2ECUは、IDと、前記診断データのデータ種別及びデータ長を識別する識別情報とを対応づける対応情報を記憶しており、
前記第1ECUは、前記対応情報を参照し、前記データフィールドに含める前記診断データの種別を識別するIDに対応づけられた前記識別情報を、前記データ種別に設定して前記データフレームを送信し、
前記第2ECUは、前記対応情報と、受信した前記データフレームの前記データフィールドに含まれる複数の前記識別情報とに基づいて、前記複数の診断データのそれぞれのデータ種別及びデータ長を特定し、特定した前記データ種別及び前記データ長に基づいて、前記データフィールドから前記複数の診断データを前記複数のデータ種別毎に抽出する
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記第1ECUは、前記移動体に搭載される機器に関する測定値を取得し、前記機器に関する第1測定値を含む第1診断データを含む第1データフレームを送信した後、前記第1測定値とは異なる第2測定値が得られた場合に、前記第2測定値を含む第2データフレームを送信する
請求項4又は5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第2ECUは、前記第1データフレームを受信してから、前記機器に関する測定値を含む新たなデータフレームを予め定められた時間以上受信しなかった場合に、前記第1ECUにデータフレームの送信を要求する
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記第1ECUは、前記第1データフレームを送信した後、予め定められた時間が経過した場合には、前記第1測定値とは異なる第2測定値が得られていない場合であっても、前記第2測定値を含む前記第2データフレームを送信する
請求項6に記載の通信システム。
【請求項9】
前記第2ECUは、
前記外部診断装置が接続された場合に、前記第1ECUに、前記移動体に搭載される機器に関する測定値を繰り返し取得し、当該測定値を含む前記診断データを含む前記データフレームを送信するよう指示し、
前記第1ECUから新たな前記データフレームを受信する毎に、前記新たに受信した前記データフレームの前記データフィールドから前記複数の診断データを前記複数のデータ種別毎に抽出し、抽出した前記複数の診断データを用いて、前記記憶している前記複数の診断データを前記複数のデータ種別毎に更新する
請求項6から8のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記第2ECUは、前記外部診断装置が接続された場合に、前記第1ECUに、前記移動体に搭載される機器に関する測定値のうち単位時間あたりの値の変動が予め定められた値より大きい予め定められた種別の測定値を繰り返し取得し、前記予め定められた種別の測定値を含む前記診断データを含む前記データフレームを送信するよう指示する
請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の通信システムを備える移動体。
【請求項12】
第1ECUが、移動体に搭載されるCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを通じて、CAN-IDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する段階であって、前記移動体の診断データ及び前記診断データのデータ種別をそれぞれ含む複数のデータセットを前記データフィールドに含めて前記データフレームを送信する、段階と、
第2ECUが、前記CAN通信ネットワークを通じて前記データフレームを受信する段階と、
前記第2ECUが、前記第1ECUから受信した前記データフレームの前記データフィールドから複数の前記診断データをデータ種別毎に抽出し、前記抽出した前記複数の診断データを複数の前記データ種別毎に記憶する段階と、
前記第2ECUが、有線ネットワークを通じて接続され前記移動体の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、前記記憶している診断データを前記有線ネットワークを通じて前記外部診断装置に送信する段階と
を備える通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、移動体、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、ECUが接続された複数のCANバス間を接続するゲートウェイECUが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2008-72327号公報
[特許文献2] 特開2008-72328号公報
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、通信システムが提供される。通信システムは、移動体に搭載されるCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを通じて、CAN-IDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する第1ECUを備える。通信システムは、CAN通信ネットワークを通じてデータフレームを受信する第2ECUを備える。第1ECUは、移動体の診断データ及び診断データのデータ種別をそれぞれ含む複数のデータセットをデータフィールドに含めてデータフレームを送信する。第2ECUは、第1ECUから受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データをデータ種別毎に抽出し、抽出した複数の診断データを複数のデータ種別毎に記憶し、有線ネットワークを通じて接続され移動体の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、記憶している診断データを外部診断装置に送信する。
【0004】
第1ECUは、CAN通信ネットワークを通じてデータフレームを送信する送信周期毎に、データフィールドに含める診断データの種別を変えて第2ECUに送信してよい。
【0005】
データフレームは、データフィールドのデータ長を示すデータ長コードを含んでよい。第1ECUは、複数のデータセットの合計のデータ長が、データ長コードによって示されるデータ長に満たない場合、データフィールドに格納されるデータのうち複数のデータセットの合計のデータ長を超える部分を予め定められた固定値で埋めてよい。
【0006】
移動体は、車両であってよい。外部診断装置は、車両用故障診断装置であってよい。
【0007】
診断データは、診断サービスにおいて前記車両用故障診断装置が要求する情報を示すIDで識別される種別のデータであってよい。第1ECU及び第2ECUは、IDと、診断データのデータ種別及びデータ長を識別する識別情報とを対応づける対応情報を記憶してよい。第1ECUは、対応情報を参照し、データフィールドに含める診断データの種別を識別するIDに対応づけられた識別情報を、データ種別に設定してデータフレームを送信してよい。第2ECUは、対応情報と、受信したデータフレームのデータフィールドに含まれる複数の識別情報とに基づいて、複数の診断データのそれぞれのデータ種別及びデータ長を特定し、特定したデータ種別及びデータ長に基づいて、データフィールドから複数の診断データを複数のデータ種別毎に抽出してよい。
【0008】
第1ECUは、移動体に搭載される機器に関する測定値を取得し、機器に関する第1測定値を含む第1診断データを含む第1データフレームを送信した後、第1測定値とは異なる第2測定値が得られた場合に、第2測定値を含む第2データフレームを送信してよい。
【0009】
第2ECUは、第1データフレームを受信してから、機器に関する測定値を含む新たなデータフレームを予め定められた時間以上受信しなかった場合に、第1ECUにデータフレームの送信を要求してよい。
【0010】
第1ECUは、第1データフレームを送信した後、予め定められた時間が経過した場合には、第1測定値とは異なる第2測定値が得られていない場合であっても、第2測定値を含む第2データフレームを送信してよい。
【0011】
第2ECUは、外部診断装置が接続された場合に、第1ECUに、移動体に搭載される機器に関する測定値を繰り返し取得し、当該測定値を含む診断データを含むデータフレームを送信するよう指示してよい。第2ECUは、第1ECUから新たなデータフレームを受信する毎に、新たに受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データを複数のデータ種別毎に抽出し、抽出した複数の診断データを用いて、記憶している複数の診断データを複数のデータ種別毎に更新してよい。
【0012】
第2ECUは、外部診断装置が接続された場合に、第1ECUに、移動体に搭載される機器に関する測定値のうち単位時間あたりの値の変動が予め定められた値より大きい予め定められた種別の測定値を繰り返し取得し、予め定められた種別の測定値を含む診断データを含むデータフレームを送信するよう、指示してよい。
【0013】
第2の態様において、移動体が提供される。移動体は、上記の通信システムを備える。
【0014】
第3の態様において、通信方法が提供される。通信方法は、第1ECUが、移動体に搭載されるCAN(Controller Area Network)通信ネットワークを通じて、CAN-IDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する段階であって、移動体の診断データ及び診断データのデータ種別をそれぞれ含む複数のデータセットをデータフィールドに含めてデータフレームを送信する、段階を備える。通信方法は、第2ECUが、CAN通信ネットワークを通じてデータフレームを受信する段階を備える。通信方法は、第2ECUが、第1ECUから受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データをデータ種別毎に抽出し、抽出した複数の診断データを複数のデータ種別毎に記憶する段階を備える。通信方法は、第2ECUが、有線ネットワークを通じて接続され移動体の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、記憶している診断データを有線ネットワークを通じて外部診断装置に送信する段階を備える。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る車両20を、車両用故障診断装置74とともに模式的に示す。
図2】CANプロトコルで規定されるデータフレームのフォーマットの一例を示す。
図3】CAN-FDプロトコルで規定されるデータフレームのフォーマットの一例を示す。
図4】ECU202に送信される診断用のデータフィールドのフォーマットの一例を示す。
図5】n個のデータセットを含んで構成されるデータフィールドのフォーマットの他の一例である。
図6】データフレームのIDフィールド及びデータフィールドの具体的なデータ構成を示す。
図7】PID及びデータ長と識別情報との対応関係を示す対応情報のデータ構造を示す。
図8】ECU202が内部メモリに記憶する診断データリストのデータ構造を示す。
図9】ECU205が定期的に送信する診断データのデータフレームの内容を説明するための図である。
図10】車両用故障診断装置74、ECU202及びECU205による通信方法の実行手順を示すシーケンス図である。
図11】コンピュータ2000の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、一実施形態に係る車両20を、車両用故障診断装置74とともに模式的に示す。車両20は、通信システム22と、車載機器であるモータ294、バッテリ295、FI296、及びエンジン297を備える。通信システム22は、ECU202、ECU203、ECU204及びECU205と、TCU201と、診断ポート34とを備える。車両用故障診断装置74は、外部診断装置の一例である。
【0019】
なお、通信システム22がTCU201、ECU202、ECU203、ECU204及びECU205を備えるシステム構成を例示するが、通信システム22のシステム構成は本実施形態の例に限られない。また、車両20が通信システム22及びモータ294、バッテリ295、FI296、及びエンジン297を備える構成を例示するが、車両20の構成は本実施形態の例に限られない。
【0020】
ECU202、ECU203、ECU204及びECU205は、車両20が備える車載機器の制御を行うECU(Electronic Control Unit)である。ECU202、ECU203、ECU204及びECU205のそれぞれのECUは、プロセッサ及び揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備えるコンピュータを含んで構成され得る。TCU201は、テレマティクス制御ユニット(Telematics Control Unit)である。TCU201は、車両20外との間の無線通信を担う。例えば、TCU201は、移動体網を通じた無線通信や、無線LAN通信を担う。
【0021】
TCU201、ECU202、ECU203、ECU204及びECU205は、少なくともCAN通信ネットワーク180により互いに通信可能に接続される。CANは、Controller Area Networkである。ECU202は、TCU201や車両用故障診断装置74と、ECU203、ECU204及びECU205との間の通信を中継する機能を備える。
【0022】
ECU204は、モータ294を制御するとともに、モータ294に関する情報を測定し、測定により得られた測定値を含む診断データをCAN通信ネットワーク180を通じてECU202に送信する。ECU203は、バッテリ295の充放電等を制御するとともに、バッテリ295に関する情報を測定し、測定により得られた測定値を含む診断データをCAN通信ネットワーク180を通じてECU202に送信する。ECU205は、燃料噴射装置であるFI296を制御するとともに、FI296に関する情報を測定し、測定により得られた測定値を含む診断データをCAN通信ネットワーク180を通じてECU202に送信する。また、ECU205は、エンジン297を制御するとともに、エンジン297に関する情報を測定して、測定により得られた測定値を含む診断データをCAN通信ネットワーク180を通じてECU202に送信する。なお、モータ294に関する情報としては、モータ温度、モータ回転数、モータトルク等を例示することができる。バッテリ295に関する情報としては、バッテリ温度、端子間電圧、放電電流量、充電電流量等を例示することができる。FI296に関する情報としては、燃料噴射量等を例示することができる。エンジン297に関する情報としては、エンジン冷媒温度、エンジン回転数、エンジン負荷等を例示することができる。
【0023】
ECU202、ECU203、ECU204及びECU205は、オンボード診断(OBD)に対応した自己診断機能を有する。ECU202は、CAN通信ネットワーク180を介して診断ポート34に接続される。診断ポート34には、通信ケーブル32を介して車両用故障診断装置74が有線接続される。車両用故障診断装置74は、外部診断装置の一例である。診断ポート34は、例えばOBD-IIコネクタである。車両用故障診断装置74は、例えば、OBD-II仕様に準拠したスキャンツールである。
【0024】
ECU205は、車両20に搭載されるCAN通信ネットワーク180を通じて、IDが格納されるIDフィールド及びデータフィールドを含むデータフレームを送信する。ECU202は、CAN通信ネットワーク180を通じてデータフレームを受信する。ECU205は、車両20の診断データ及び診断データのデータ種別をそれぞれ含む複数のデータセットをデータフィールドに含めてデータフレームを送信する。ECU202は、ECU205から受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データをデータ種別毎に抽出し、抽出した複数の診断データを複数のデータ種別毎に記憶する。有線ネットワークを通じて接続され車両20の診断を行う外部診断装置からの要求を受信した場合に、記憶している診断データを外部診断装置に送信する。
【0025】
ECU205は、CAN通信ネットワーク180を通じてデータフレームを送信する送信周期毎に、データフィールドに含める診断データの種別を変えてECU202に送信する。
【0026】
データフレームは、データフィールドのデータ長を示すデータ長コードを含む。ECU205は、複数のデータセットの合計のデータ長が、データ長コードによって示されるデータ長に満たない場合、データフィールドに格納されるデータのうち複数のデータセットの合計のデータ長を超える部分を予め定められた固定値で埋める。
【0027】
診断データは、診断サービスにおいて車両用故障診断装置74が要求する情報を示すIDで識別される種別のデータであってよい。ECU205及びECU202は、IDと、診断データのデータ種別及びデータ長を識別する識別情報とを対応づける対応情報を記憶している。ECU205は、対応情報を参照し、データフィールドに含める診断データの種別を識別するIDに対応づけられた識別情報を、データ情報に設定してデータフレームを送信する。ECU202は、対応情報と、受信したデータフレームのデータフィールドに含まれる複数の識別情報とに基づいて、複数の診断データのそれぞれのデータ種別及びデータ長を特定し、特定したデータ種別及びデータ長に基づいて、データフィールドから複数の診断データを複数のデータ種別毎に抽出する。
【0028】
ECU205は、車両20に搭載される車載機器に関する測定値を取得し、車載機器に関する第1測定値を含む第1診断データを含む第1データフレームを送信した後、第1測定値とは異なる第2測定値が得られた場合に、第2測定値を含む第2データフレームを送信してよい。
【0029】
ECU202は、第1データフレームを受信してから、車載機器に関する測定値を含む新たなデータフレームを予め定められた時間以上受信しなかった場合に、ECU205にデータフレームの送信を要求してよい。なお、ECU205は、第1データフレームを送信した後、予め定められた時間が経過した場合には、第1測定値とは異なる第2測定値が得られていない場合であっても、第2測定値を含む第2データフレームを送信してもよい。
【0030】
ECU202は、外部診断装置が接続された場合に、ECU205に、車載機器に関する測定値を繰り返し取得し、当該測定値を含む診断データを含むデータフレームを送信するよう指示してよい。ECU202は、ECU205から新たなデータフレームを受信する毎に、新たに受信したデータフレームのデータフィールドから複数の診断データを複数のデータ種別毎に抽出し、抽出した複数の診断データを用いて、記憶している複数の診断データを複数のデータ種別毎に更新してよい。ECU202は、車両用故障診断装置74が車両20に接続された場合に、ECU205に、車両20に搭載される機器に関する測定値のうち単位時間あたりの値の変動が予め定められた値より大きい予め定められた種別の測定値を繰り返し取得し、予め定められた種別の測定値を含む診断データを含むデータフレームを送信するよう指示してよい。
【0031】
図2は、CANプロトコルで規定されるデータフレームのフォーマットの一例を示す。図2は、CANプロトコルで規定される標準フォーマット(標準IDフォーマット)におけるデータフレームを示す。データフレームは、SOF(Start Of Frame)、IDフィールド、RTR(Remote Transmission Request)、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)シーケンス、CRCデリミタ「DEL」、ACK(Acknowledgement)スロット、ACKデリミタ「DEL」、及び、EOF(End Of Frame)の各フィールドで構成される。
【0032】
SOFは、1bitのドミナントで構成される。バスがアイドル状態のときはレセシブとなっており、SOFによりドミナントへ変更することでフレームの送信開始を通知する。
【0033】
IDフィールドは、11bitで構成される。IDフィールドは、送信されるデータの種別を示す値であるCAN-IDを格納するフィールドである。複数のECUが同時に送信を開始した場合、IDフィールドで通信調停を行うために、CAN-IDが小さい値を持つフレームが高い優先度となって送信される。
【0034】
RTRは、データフレームであるかリモートフレームであるかを識別するための値であり、データフレームにおいてはドミナント1bitで構成される。
【0035】
コントロールフィールドは、1ビット長のIDE(Identifier Extension)、予約ビットrと4ビット長のデータレングスコード(DLC:Data Length Code)から構成される。IDE及び予約ビットrはともにドミナントとなる。DLCは、コントロールフィールドに続くデータフィールドにおいて送信されるデータのバイト数を示す。DLCの設定範囲は0以上8以下である。したがって、データフィールドで送信されるデータは1バイト単位で0~8バイト(64bit)となる。
【0036】
データフィールドは、最大64bitで構成される送信するデータの内容を示す値である。データフィールドは、8bit毎に長さを調整可能である。データフィールドで送信されるデータの仕様はCANプロトコルで規定されていない。データフィールドで送信されるデータの仕様は、通信システム22において定められる。つまり、車両20の車種や製造者によって仕様が定められる。
【0037】
CRCシーケンスは、15bitで構成される。CRCシーケンスは、SOF、IDフィールド、コントロールフィールド及びデータフィールドの送信値より算出される。CRCデリミタは、1bitのレセシブで構成されるCRCシーケンスの終了を表す区切り記号である。
【0038】
ACKスロットは、1bitで構成される。送信側となるECUは、ACKスロットをレセシブにして送信を行う。受信側のECUはCRCデリミタまで正常に受信ができていれば、ACKスロットをドミナントとして送信する。レセシブよりドミナントが優先されるため、ACKスロットがドミナントであれば、送信側のECUは、いずれかの他のECUが受信に成功していることを確認できる。ACKスロットの信号は「確認応答」の一例である。
【0039】
ACKデリミタは、1bitのレセシブで構成されるACKの終了を表す区切り記号である。EOFは、7bitのレセシブで構成され、データフレームの終了を示す。なお、EOFの後に3bitのレセシブであるITM(Intermission)が続き、ITM終了後にバスアイドルとなる。
【0040】
図3は、CAN-FDプロトコルで規定されるデータフレームのフォーマットを示す。図3を参照してCAN-FDプロトコルの標準フォーマットにおけるデータフレームのフォーマットを説明するが、CANププロトコルのデータフレームと同じ部分については説明を省略する。
【0041】
CAN-FDのデータフレームは、SOF、IDフィールド、RRS(Remote Request Substitution)、コントロールフィールド、データフィールド、スタッフカウント、CRCシーケンス、CRCデリミタ、ACKスロット、ACKデリミタ、及びEOFの各フィールドで構成される。RRSは、1bitのドミナントで構成される。スタッフカウントは、SOFからデータフィールドまでに含まれるスタッフビットの総数を8で割った剰余を3bit長でグレイコード化した値と、1bitのパリティービットとを含む。
【0042】
CAN-FDのコントロールフィールドは、IDE、1ビット長のFOF(FD Format Indicator)、res、1ビット長のBRS(Bit Rate Switch)、1ビット長のESI(Error State Indicator)及びDLCを含む。FOFは、データフレームがCANでフレームであるかCAN-FDフレームであるかを示す。BRS(Bit Rate Switch)は、高速な転送速度のクロックモード(ビットレート)に切り替えることを示す。ESIは、送信ノードのエラー状態を示す。DLCには、データ長として0~8、12、16、20、24、32、48、及び64バイトを指定することができる。CAN-FDでは、BRSからCRCデリミタまでをCANに比べて高速に通信することができる。それ以外の領域は、CANと同じビットレートで通信が行われる。
【0043】
図4は、ECU202に送信される診断用のデータフィールドのフォーマットの一例を示す。診断用のデータフィールドは、図3に関連して説明したCAN-FDプロトコルのデータフィールドであってよく、図2に関連して説明したCANプロトコルのデータフィールドであってよい。ECU203、ECU204及びECU205は、診断データを含むデータフレームを生成する場合、図4に示すフォーマットのデータフィールドを含むデータフレームを生成する。
【0044】
図4は、データフィールドをn個のデータセットから構成する場合のフォーマットである。このフォーマットのデータフィールドは、識別情報1及び診断データ1を含む第1データセットと、識別情報2及び診断データ2を含む第2データセットと、識別情報n及び診断データnを含む第2データセットとを含んで構成される。図4のデータフォーマットは、データフレームのDLCで指定されるデータフィールドのデータ長が、データセット1~データセットnのn個のデータセットのデータ長の合計値と一致する場合のデータフォーマットである。
【0045】
識別情報1は、診断データ1の種別を示す情報である。識別情報2は、診断データ2の種別を示す情報である。識別情報nは、診断データnの種別を示す情報である。識別情報は、診断データの種別及び診断データのデータ長を示す情報であってよい。なお、識別情報は、種別を示す情報と、データ長を示す情報とを含んでよい。例えば、識別情報は、種別を示す1バイトの情報と、データ長を示す1バイトの情報とを含んでよい。識別情報は1バイトの情報であってもよい。1バイトの識別情報を用いる場合の具体例については、図6及び図7等に関連して説明する。
【0046】
図5は、n個のデータセットを含んで構成されるデータフィールドのフォーマットの他の一例である。図5のデータフォーマットは、データフレームのDLCで指定されるデータフィールドのデータ長が、データセット1~データセットnのn個のデータセットのデータ長の合計値より長い場合のフォーマットである。
【0047】
図5に示すように、データフィールドは、図4のフォーマットと同じく識別情報1及び診断データ1を含む第1データセットと、識別情報2及び診断データ2を含む第2データセットと、識別情報n及び診断データnを含む第2データセットに加えて、0埋めされたデータ部分400を含んで構成される。データ部分400は、データフレームのDLCで指定されるデータフィールドのデータ長とn個のデータセットのデータ長の合計値との差のデータ長を持つデータ部分である。
【0048】
図4及び図5等に関連して説明したように、1つのデータフレームのデータフィールド内に、複数のデータ種別のデータと、データ種別を識別する複数の識別情報を格納する。これにより、1つのCAN-IDで複数の種別のデータを送信することができる。これにより、CAN通信ネットワーク180で送信するデータの種別を増やす必要がある場合に、CAN-IDを追加する設計変更を行う必要がない。そのため、既存のCAN-IDを有効利用することができる。CAN通信ネットワークではCAN-IDを用いて伝送優先度が制御されるため、CAN-IDを追加する場合にはCAN-IDを再調整することが必要となる場合がある。本実施形態によれば、既存のCAN-IDを利用しつつ送信するデータの種別を増やすことができるので、例えば伝送優先度は変えずに単に診断データの種別を増やす必要がある場合に、CAN-IDを再調整する必要がない。また、データフィールドに各データのデータ長を識別する識別情報を格納するので、データフィールド内に可変長の複数のデータを格納することができる。
【0049】
図6は、データフレームのIDフィールド及びデータフィールドの具体的なデータ構成を示す。図6の例において、データフレームのIDフィールドには、CAN-IDとして「11h」が設定されている。図6は、「11h」のCAN-IDを用いて、SID$01 PID$01の診断データと、PID$03の診断データをデータフィールドに含める場合のデータ構成である。
【0050】
PIDは、SAE J1979規格に規定された診断サービスにおけるパラメータ識別番号であり、SIDはサービスIDであるとする。なお、本実施形態では、SID$01による診断データ要求に応答して送信されるべき診断データの種別を「データ種別」の一例として取り上げる。そのため、「SID$01」を省略して説明する場合がある。データフィールドには、第1識別情報として1バイトの「00h」が格納され、第2識別情報として1バイトの「02h」が格納されている。
【0051】
図7は、PID及びデータ長と識別情報との対応関係を示す対応情報のデータ構造を示す。対応情報は、「識別情報」と、「PID値」と、「データ長」とを対応づける情報である。
【0052】
対応情報の「識別情報」は、データフィールドの識別情報に格納される1バイトの値である。対応付け情報の「PID値」は、SID$01におけるPIDの値を示す。
【0053】
データ長は、診断データのデータ長を示す。ECU202、ECU203、ECU204及びECU205は、対応情報を参照して、識別情報と、診断データのPID及びデータ長との対応関係を特定する。
【0054】
ECU203、ECU204及びECU205は、対応情報を参照して、データセットに含める診断データのPIDに対応する識別情報及びデータ長を特定して、データフィールドに格納する情報を生成する。例えば、ECU205が「SID$01 PID$01」の診断データと「SID$01 PID$03」の診断データを送信する場合、ECU205は、対応情報を参照して、PID$01に対応する識別情報00hと「SID$01 PID$01」の診断データとを順に含む第1データセットを生成するとともに、PID$03に対応する識別情報02hと「SID$01 PID$03」の診断データとを順に含む第2データセットを生成する。そして、ECU205は、第1データセット及び第2データセットを順に含むデータフィールドを生成する。
【0055】
ECU202は、対応情報を参照して、データセットに含まれる識別情報から、診断データのPIDとデータ長を特定して、PID毎に診断データを抽出する。例えば、ECU202は、「SID$01 PID$01」の診断データと「SID$01 PID$03」の診断データを受信した場合、受信したデータフレームのデータフィールドの先頭の1バイトの識別情報を読出し、読みだした識別情報から、第1データセットに含まれる診断データのデータ長4及びPID$01を特定し、特定したデータ長の診断データをデータフィールドから抽出する。また、ECU202は、受信したデータフレームのデータフィールドから 第1データセットの次の1バイトの識別情報を読出し、読みだした識別情報から、第2データセットに含まれる診断データのデータ長2及びPID$03を特定し、特定したデータ長の診断データをデータフィールドから抽出する。
【0056】
図8は、ECU202が内部メモリに記憶する診断データリストのデータ構造を示す。診断データリストは、PID値と診断データとを対応付ける情報である。なお、「PID値」はSID$01のPIDの値のことをいう。
【0057】
上述したように、ECU202は、対応情報を参照して、複数のデータセットのそれぞれに含まれる識別情報から診断データのPIDとデータ長を特定し、複数のデータセットのそれぞれに含まれる診断データを抽出する。ECU202は、抽出した診断データを、識別情報から特定したPIDに対応づけて、ECU202の内部メモリに記憶する。
【0058】
ECU202は、ECU203、ECU204及びECU205から新たなデータフレームを受信する毎に、新たなデータフレームからPID毎に診断データを抽出し、新たなデータフレームから抽出した診断データにより、新たなデータフレームから抽出したPIDに対応づけて内部メモリに記憶している診断データを更新する。これにより、ECU202は、ECU203、ECU204及びECU205から定期的に送信される診断データのデータフレームに基づいて、診断データリストを最新の診断データで更新することができる。
【0059】
図9は、ECU205が定期的に送信する診断データのデータフレームの内容を説明するための図である。ECU205は、診断データを含むデータフレームを定期的に送信する。例えば、ECU205は、診断データを含むデータフレームを10msの周期で送信する。
【0060】
例えば、ECU205は、PID$01の診断データとPID$03の診断データを含むデータフレームを送信する(1周期目)。診断データの次の送信タイミングにおいて、ECU204は、PID$02の診断データと、PID$04の診断データと、PID$05の診断データとを含むデータフレームを送信する(2周期目)。診断データの更に次の送信タイミングにおいて、ECU205は、PID$01の診断データとPID$03の診断データを含むデータフレームを送信する(3周期目)。
【0061】
このように、ECU205は、データフレームに含める診断データのデータ種別を送信周期毎に切り換える。これにより、1つのCAN-IDを使って、データフレームに含める複数の診断データのデータ種別を切り換えながら送信することができる。これにより、個々の診断データを個々のデータフレームで送信する場合に比べて、CAN通信ネットワーク180上の通信トラフィックの増大を抑制することができる。
【0062】
図10は、車両用故障診断装置74、ECU202及びECU205による通信方法の実行手順を示すシーケンス図である。本シーケンスの開始時においては、車両用故障診断装置74は診断ポート34に接続されていないものとする。
【0063】
S301において、ECU205は、「SID$01 PID$01」の診断データ及び「SID$01 PID$03」の診断データを含むデータフレームを送信する。S303において、ECU202は、ECU205から送信されたデータフレームから「SID$01 PID$01」の診断データ及び「SID$01 PID$03」の診断データを抽出して、診断データリストに記憶する。続いて、S305において、ECU205は、「SID$01 PID$02」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを含むデータフレームを送信する。S307において、ECU202は、ECU205から送信されたデータフレームから「SID$01 PID$02」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを抽出して、診断データリストに記憶する。ECU205は、S301、S303、S305、及びS307を含むデータフレームの送信を予め定められた時間間隔で繰り返し、ECU202はデータフレームの受信する毎に、予め定められた種別の診断データを診断データリストに記憶する。
【0064】
S309において、ECU202は、診断ポート34に車両用故障診断装置74が接続されたことを検知すると、S310において、「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データの送信要求をECU205に送信する。「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データは、単位時間あたりの値の変化量が予め定められた値より大きい予め定められた種別の測定値の一例である。S312において、ECU205は、「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを含むデータフレームを送信し、S314において、ECU202は、受信したデータフレームから「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを抽出して、診断データリストに記憶する。
【0065】
続いて、ECU202及びECU205は、S301、S303、S305、及びS307と同様に、予め定められた種別の診断データの定期的な収集を行う。すなわち、ECU205は、「SID$01 PID$01」の診断データ及び「SID$01 PID$03」の診断データを含むデータフレームを送信し(S321)、ECU202は、ECU205から送信されたデータフレームから「SID$01 PID$01」の診断データ及び「SID$01 PID$03」の診断データを抽出し、診断データリストに記憶する(S323)。そして、ECU205は、「SID$01 PID$02」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを含むデータフレームを送信し(S325)。ECU202は、ECU205から送信されたデータフレームから「SID$01 PID$02」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを抽出して、診断データリストに記憶する(S307)。
【0066】
続いて、ECU202は、S330において、「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データの送信要求をECU205に送信する。S332において、ECU205は、「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを含むデータフレームを送信し、S334において、ECU202は、受信したデータフレームから「SID$01 PID$0C」の診断データ、「SID$01 PID$04」の診断データ及び「SID$01 PID$05」の診断データを抽出して、診断データリストに記憶する。これにより、車両用故障診断装置74が接続されると、ECU202は、診断データリストに記憶する診断データのうち、単位時間あたりの値の変化量が大きい予め定められた種別の診断データを最新の診断データで更新することができる。
【0067】
ECU202は、S340において、車両用故障診断装置74から送信された「SID$01 PID$01」の診断データ要求のリクエストを受信すると、S342において、診断情報リストからPID$01に対応づけられた診断データ($01)を読み出す。S324において、診断データ要求に対するレスポンスを車両用故障診断装置74に送信する。
【0068】
なお、本シーケンスでは、ECU205が定期的に診断データのデータフレームを送信するものとしたが、診断データとして送信されるべき測定値が変わった場合にその測定値を診断データとして含むデータフレームを送信し、測定値が変わらない場合には当該データフレームを送信しなくてもよい。例えば、ECU205は、車速0が継続している間は、車速の診断データをデータフレームに含めなくてよい。この場合、ECU205は、車速の診断データに代えて、他の種別の診断データをデータフレームに含めて送信してよい。なお、ECU205は、測定値が変わらない場合であっても、診断データの送信周期より長い予め定められた時間が経過する毎に、その測定値を含む診断データを含むデータフレームを送信してよい。また、ECU202は、ECU205から車速の測定値を含むデータフレームを最後に受信してから、診断データの送信周期より長い予め定められた時間が経過した場合に、車速の測定値を含む診断データを送信するようECU205に要求してもよい。なお、本シーケンスではECU205が診断データのデータフレームを送信する場合を取り上げて説明したが、ECU203やECU204が診断データのデータフレームを送信する場合も同様の処理を適用できる。
【0069】
以上の実施形態の説明では、車両20の診断データの一例として、主としてSID$01に関する診断データを取り上げたが、車両20の診断データは、SID$01に関する診断データに限られず、任意の種別の診断データであってよい。一例として、車両20の診断データは、SID$02、$03、SID$06、SID$07、SID$09、SID$0Aに関するデータであってよい。例えば、車両20の診断データとしてSID$02に関する診断データを適用する場合、SID$01と同様に、データ種別としてPIDを適用してよい。車両20の診断データとしてSID$06に関するデータを適用する場合、データ種別としてTest IDを適用してよい。車両20の診断データとしてSID$09に関するデータを適用する場合、データ種別としてInfo Typeを適用してよい。車両20の診断データとしてSID$03、SID$07、SID$0Aに関するDTC(Diagnostic Trouble Code:故障コード)データを適用する場合、データ種別として診断対象を示す値を適用してよい。なお、車両20の診断データとしてDTCデータを適用する場合、データフィールド内にデータ種別を含めない形態を採用してよい。この場合、データフィールド内には、予め定められた順番で複数の種類のDTCデータを格納してよい。
【0070】
ECU202は、車両用故障診断装置74からSID$04のクリア要求を受信した場合、ECU203、ECU204及びECU205を含む複数のECUにSID$04のクリア要求を送信してよい。この場合、ECU202は、SID$04のクリア要求のデータフレームに予め定められた値より優先度の高いCAN-IDを設定し、各ECUはDTコードをクリアするとSID$04に対する応答をECU202に送信してよい。なお、ECU202は、SID$04のクリア要求のデータフレームを、DoCAN(Diagnostic communication over Controller Area Network)フォーマットに変換してECU203、ECU204及びECU205を含む複数のECUに送信してもよい。
【0071】
本実施形態によれば、ECU202は、ECU203、ECU204及びECU205から送信される診断データを集約して、車両用故障診断装置74からの要求に応じて、速やかに診断データを応答することができる。また、車両用故障診断装置74から送信される診断データの要求メッセージを対象のECUが接続されたCAN通信ネットワーク180に転送し、対象のECUから送信された診断データの応答メッセージを車両用故障診断装置74に転送する通信処理を行う場合に比べて、CAN通信ネットワーク180上のトラフィックの増大を抑制することができる。
【0072】
車両20は、輸送機器の一例としての車両である。車両は、内燃機関を備える自動車、電気自動車、燃料電池自動車(FCV)等の自動車であってよい。自動車は、バス、トラック、二輪自動車等を含む。車両は、鞍乗型車両等であってよく、バイクであってよい。輸送機器としては、車両の他に、無人航空機を含む航空機、船舶等の機器を含む。輸送機器は、人又は物品を輸送する任意の機器であってよい。輸送機器は移動体の一例である。移動体は、輸送機器に限らず、移動可能な任意の機器であってよい。
【0073】
図11は、本発明の複数の実施形態が全体的又は部分的に具現化され得るコンピュータ2000の例を示す。コンピュータ2000にインストールされたプログラムは、コンピュータ2000を、実施形態に係る制御システム等のシステム又は当該システムの各部として機能させる、当該システム又は当該システムの各部に関連付けられるオペレーションを実行させる、及び/又は、実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2000に、本明細書に記載の処理手順及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU2012によって実行されてよい。
【0074】
本実施形態によるコンピュータ2000は、CPU2012、及びRAM2014を含み、それらはホストコントローラ2010によって相互に接続されている。コンピュータ2000はまた、ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040を含む。ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040は、入力/出力コントローラ2020を介してホストコントローラ2010に接続されている。
【0075】
CPU2012は、ROM2026及びRAM2014内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0076】
通信インタフェース2022は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。フラッシュメモリ2024は、コンピュータ2000内のCPU2012によって使用されるプログラム及びデータを格納する。ROM2026は、アクティブ化時にコンピュータ2000によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2000のハードウエアに依存するプログラムを格納する。入力/出力チップ2040はまた、キーボード、マウス及びモニタ等の様々な入力/出力ユニットをシリアルポート、パラレルポート、キーボードポート、マウスポート、モニタポート、USBポート、HDMI(登録商標)ポート等の入力/出力ポートを介して、入力/出力コントローラ2020に接続してよい。
【0077】
プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又はメモリカードのようなコンピュータ可読記憶媒体又はネットワークを介して提供される。RAM2014、ROM2026、又はフラッシュメモリ2024は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。プログラムは、フラッシュメモリ2024、RAM2014、又はROM2026にインストールされ、CPU2012によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2000に読み取られ、プログラムと上記様々なタイプのハードウエアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2000の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0078】
例えば、コンピュータ2000及び外部デバイス間で通信が実行される場合、CPU2012は、RAM2014にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2022に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2022は、CPU2012の制御下、RAM2014及びフラッシュメモリ2024のような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納されたデータセットを読み取り、読み取ったデータセットをネットワークに送信し、ネットワークから受信された受信データを、記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0079】
また、CPU2012は、フラッシュメモリ2024等のような記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2014に読み取られるようにし、RAM2014上のデータに対し様々な種類の処理を実行してよい。CPU2012は次に、処理されたデータを記録媒体にライトバックする。
【0080】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理にかけられてよい。CPU2012は、RAM2014から読み取られたデータに対し、本明細書に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々な種類のオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々な種類の処理を実行してよく、結果をRAM2014にライトバックする。また、CPU2012は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2012は、第1の属性の属性値が指定されている、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0081】
上で説明したプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ2000上又はコンピュータ2000近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能である。コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2000に提供してよい。
【0082】
コンピュータ2000にインストールされ、コンピュータ2000をECU202として機能させるプログラムは、CPU2012等に働きかけて、コンピュータ2000を、ECU202の各部としてそれぞれ機能させてよい。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ2000に読込まれることにより、ソフトウエアと上述した各種のハードウエア資源とが協働した具体的手段であるECU202の各部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ2000の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有のECU202が構築される。
【0083】
様々な実施形態が、ブロック図等を参照して説明された。ブロック図において各ブロックは、(1)オペレーションが実行されるプロセスの段階又は(2)オペレーションを実行する役割を持つ装置の各部を表わしてよい。特定の段階及び各部が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウエア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理オペレーション、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウエア回路を含んでよい。
【0084】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく実行され得る命令を含む製品の少なくとも一部を構成する。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0085】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0086】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、説明された処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
20 車両
22 通信システム
74 車両用故障診断装置
180 CAN通信ネットワーク
201 TCU
202、203、204、205 ECU
2000 コンピュータ
2010 ホストコントローラ
2012 CPU
2014 RAM
2020 入力/出力コントローラ
2022 通信インタフェース
2024 フラッシュメモリ
2026 ROM
2040 入力/出力チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11