(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156487
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ジグソーパズル
(51)【国際特許分類】
A63F 9/10 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A63F9/10 501Z
A63F9/10 501C
A63F9/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060206
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503308298
【氏名又は名称】有山 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有山 賢三
(72)【発明者】
【氏名】有山 賢太朗
(57)【要約】
【課題】分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることができ、紫外光照射時のみにパズルピースに形成した位置情報を示す紫外線可視化画像を視認でき、絵柄画像の退色や劣化を防止でき、さらに、パズルピース全体の絵柄画像の表示の有無を選択的に変更して2種類のジグソーパズルとして複合的に使用できるようにしたジグソーパズルを提供する。
【解決手段】ジグソーパズル20には、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピース25の前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピース25の表面に、所要の絵柄画像と、パズルピース25の位置情報を示す紫外線可視化画像とが形成されている。絵柄画像と紫外線可視化画像の表面側のパズルピース25の全面に、透明のオーバーコート層が設けられている。絵柄画像が、所定の消色温度で消色し、この所定の消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナーを用いたトナー画像またはインクを用いたインク画像として形成されている。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースの表面に、所要の絵柄画像と、各前記パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像とが形成されたジグソーパズルであって、
前記絵柄画像と前記紫外線可視化画像の表面側の前記パズルピースの全面に、透明のオーバーコート層を有し、
前記絵柄画像が、所定の消色温度で消色し、該所定の消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナーを用いたトナー画像またはインクを用いたインク画像として形成されていることを特徴とするジグソーパズル。
【請求項2】
前記絵柄画像が、一定の温度範囲に亘って消色または発色のいずれかの状態を選択的に保持することを特徴とする請求項1に記載のジグソーパズル。
【請求項3】
前記紫外線可視化画像が、前記絵柄画像の表面側に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のジグソーパズル。
【請求項4】
前記ジグソーパズルが、複数の前記パズルピースを内側に位置決めする枠部を有し、
該枠部の表面に、前記パズルピースの位置情報に対応する座標情報を示す紫外線可視化画像が形成され、
該紫外線可視化画像の表面側の前記枠部の全面に、透明のオーバーコート層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のジグソーパズル。
【請求項5】
前記オーバーコート層の表面に、前記パズルピースの飛び散り防止用の透明樹脂フィルムをさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のジグソーパズル。
【請求項6】
吸水性の支持体の表面に水溶層を設けてなる絵柄形成紙の表面に、所定の消色温度で消色し該消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナーを用いたトナー画像である所要の絵柄の非反転画像と、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースが各該パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、
樹脂フィルムの一面に貼着面を形成してなり、溶融することによって透明のオーバーコート層となる樹脂層を前記貼着面に形成したリタックシートを、前記樹脂層を前記画像に重ね合せた状態で加熱圧着して前記樹脂層を溶融させつつ、前記絵柄形成紙の表面に形成された前記画像に貼り付けるリタックシート貼り付け工程と、
前記絵柄形成紙の前記支持体に水を含ませることにより前記水溶層を水で溶かして前記支持体を剥離し、前記リタックシートの前記樹脂層が溶融した前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させる画像転移工程と、
前記オーバーコート層の上に転移された前記画像の面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、
前記パズルピースの表面に、前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させた前記リタックシートを重ね合わせ、該リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧して、前記オーバーコート層とともに前記画像を前記パズルピースに転写する転写工程と、を備えていることを特徴とするジグソーパズルの製造方法。
【請求項7】
前記絵柄形成紙が、水に溶ける水溶紙として構成され、
前記画像転移工程が、前記水溶紙に水を含ませることにより前記水溶紙を水で溶かし、前記リタックシートの前記樹脂層が溶融した前記オーバーコート層の上に前記複合画像を転移させる工程であることを特徴とする請求項6に記載のジグソーパズルの製造方法。
【請求項8】
前記水溶紙を溶かす水が、マイクロバブルを含有することを特徴とする請求項7に記載のジグソーパズルの製造方法。
【請求項9】
各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースの表面に、所定の消色温度で消色し該消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するインクを用いたインク画像である所要の絵柄画像と、複数の前記パズルピースが各パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、
樹脂フィルムの一面に貼着面を形成してなり、溶融することによって透明のオーバーコート層となる樹脂層を前記貼着面に形成したリタックシートを、前記パズルピースの表面に形成された前記画像の上に仮止めするリタックシート仮止め工程と、
前記パズルピースの表面に形成された前記画像に、該画像の上に仮止めされた前記リタックシートの前記樹脂層を重ね合わせた状態で、前記リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧し、前記樹脂層を溶融させてなる前記オーバーコート層を前記パズルピースに定着させる定着工程と、を備えていることを特徴とするジグソーパズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジグソーパズルとその製造方法に関し、詳細には、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることができ、かつ、パズルピース全体の絵柄画像の表示の有無を選択的に変更して2種類のジグソーパズルとして複合的に使用することができるジグソーパズルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジグソーパズルは、少なくとも一面に絵柄を付した台紙を縦横に凹凸を設けて切断して複数個のパズルピースを形成し、あるいは、無地の台紙を切断して複数個のパズルピースを形成した後に絵柄を付し、さらに、ばらばらに分離した個々のパズルピースをその各辺の凹凸を合わせながら嵌め込んで台紙の絵柄を完成させるものである。
そして、このジグソーパズルには、その台紙の絵柄を完成させるためのパズルである遊戯具としての機能と、完成させた絵柄を額縁やパネル等のホルダに保持して室内を装飾する室内装飾品としての機能を有している。
【0003】
ジグソーパズルのモチーフとしては、独自のモチーフでジグソーパズルゲームを楽しむため、例えば、特許文献1には、無地の平板をジグソーパズル状に切り抜き、これらの切り抜かれた多数のパズルピースを元の形が復元するように組み合せた状態で所望のモチーフを自由に形成してオリジナルジグソーパズルを作成することが開示されている。
【0004】
しかし、オリジナルジグソーパズルの絵柄作成作業において、ジグソーパズルを持ち運ぶ時、小さい衝撃でも簡単に各パズルピースが載置したプレート(底板)から飛び散り、再度嵌め合わせる際には多大な時間と労力を要していた。
また、オリジナルジグソーパズルは、嵌め合わせ時の作業を考慮せずに独自モチーフの画像が用いられることが多い。
このため、少ない色で表現される空などのパズルピースが多いと、嵌め合わせる際の情報としてはパズルピースの形状しか利用できず、嵌め合わせ作業が非常に困難であった。
特に、数百ピース以上のジグソーパズルでは、各パズルピースを一度ばらばらに分離させた場合には、組み立てることができずに放置されたり捨てられたりするおそれがあった。
【0005】
このため、発明者は、特許文献2に開示されるように、パズルピースの表面に、絵柄画像とともにパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像を形成することによって、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることができるジグソーパズルおよびその製造方法を提案した。
【0006】
また、発明者は、紫外線を照射しなくても、光源と目の位置によってパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像が視認できる場合があり、パズルとしての組み立てる際の面白さを損ない、嵌め合わせた後のジグソーパズルについても、絵柄画像の他に位置情報が見えるため、室内装飾品としての価値の低下を招くという問題に鑑みて、特許文献2に開示された発明をさらに改良して、特許文献3に開示されるように、紫外光照射時のみに、パズルピースに形成した位置情報を示す紫外線可視化画像を視認できるようにしたジグソーパズルとその製造方法、および、ジグソーパズルの製造に用いられるリタックシートとその製造方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3007219号公報
【特許文献2】特開2017-136152号公報
【特許文献3】特開2019-55181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図24は、特許文献3に開示されたジグソーパズルの製造方法によって作製されたジグソーパズルを示す図である。
このジグソーパズル120は、照射範囲をスポットSとする紫外光を照射されると、照射範囲内で各パズルピース125の位置情報153が可視化されて現れる。
一実施形態において、ジグソーパズル120の枠部126に、座標情報として、A、B、C、D・・・の行情報151と01、02、03、04・・・の列情報152が、各パズルピース125に、これらの行情報と列情報の組み合わせであるA01、A02、A03、A04・・・の位置情報153が、いずれも紫外線可視化画像として形成される。
【0009】
ところで、特許文献3に開示されたジグソーパズルの製造方法によって作製されたジグソーパズルにおいては、トナー画像またはインク画像として、所要の絵柄画像と、パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像と、さらに表面で鏡面反射を起こして紫外線可視化画像が光沢差によって視認可能となるのを防止する透明のオーバーコート層を重畳した画像を形成するほか、無地のジグソーパズル(白パズル)の表面に、紫外線可視化画像とオーバーコート層のみを形成したジグソーパズルを作製することも行われている(特許文献3の段落[0055]、[0057]参照)。
【0010】
すなわち、無地のジグソーパズル(白パズル)の表面に、各パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とその表面にオーバーコート層を設けた絵柄画像のないトナー画像を転写またはインク画像を形成して、位置情報を示す紫外線可視化画像付きの無地のジグソーパズルを作製する。
この無地のジグソーパズルの各パズルピースがばらばらになったとしても、紫外光をパズルピースに照射することによって、位置情報を参考にしてパズルピースを簡単に嵌め合せることができる。
【0011】
しかしながら、絵柄画像のある通常のジグソーパズルとするか、無地のジグソーパズル(白パズル)とするかは、作製段階で択一的に選択する必要があり、絵柄画像のある通常のジグソーパズルとして一旦作製した後に、無地のジグソーパズルとして使用することはできない。
反対に、無地のジグソーパズルとして作製した後に、無地のジグソーパズルに所望の絵柄を描いて通常のジグソーパズルとして使用することはできるが、再度、無地のジグソーパズルとして使用することはできず、不可逆的である。
【0012】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、分離された状態のパズルピースを簡単に嵌め合わせることのできるジグソーパズルであって、紫外光照射時のみにパズルピースに形成した位置情報を示す紫外線可視化画像を視認でき、パズルピースに形成した絵柄画像の退色や劣化を防止でき、さらに、パズルピース全体の絵柄画像の表示の有無を選択的に変更して2種類のジグソーパズルとして複合的に使用することができるようにしたジグソーパズルとその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースの表面に、所要の絵柄画像と、各前記パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像とが形成されたジグソーパズルであって、前記絵柄画像と前記紫外線可視化画像の表面側の前記パズルピースの全面に、透明のオーバーコート層を有し、前記絵柄画像が、所定の消色温度で消色し、該所定の消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナーを用いたトナー画像またはインクを用いたインク画像として形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、一定の温度範囲に亘って消色または発色のいずれかの状態を選択的に保持することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記紫外線可視化画像が、前記絵柄画像の表面側に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1の発明において、前記ジグソーパズルが、複数の前記パズルピースを内側に位置決めする枠部を有し、該枠部の表面に、前記パズルピースの位置情報に対応する座標情報を示す紫外線可視化画像が形成され、該紫外線可視化画像の表面側の前記枠部の全面に、透明のオーバーコート層が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1の発明において、前記オーバーコート層の表面に、前記パズルピースの飛び散り防止用の透明樹脂フィルムをさらに有することを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の発明は、吸水性の支持体の表面に水溶層を設けてなる絵柄形成紙の表面に、所定の消色温度で消色し該消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナーを用いたトナー画像である所要の絵柄の非反転画像と、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースが各該パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、樹脂フィルムの一面に貼着面を形成してなり、溶融することによって透明のオーバーコート層となる樹脂層を前記貼着面に形成したリタックシートを、前記樹脂層を前記画像に重ね合せた状態で加熱圧着して前記樹脂層を溶融させつつ、前記絵柄形成紙の表面に形成された前記画像に貼り付けるリタックシート貼り付け工程と、前記絵柄形成紙の前記支持体に水を含ませることにより前記水溶層を水で溶かして前記支持体を剥離し、前記リタックシートの前記樹脂層が溶融した前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させる画像転移工程と、前記オーバーコート層の上に転移された前記画像の面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、前記パズルピースの表面に、前記オーバーコート層の上に前記画像を転移させた前記リタックシートを重ね合わせ、該リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧して、前記オーバーコート層とともに前記画像を前記パズルピースに転写する転写工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記絵柄形成紙が、水に溶ける水溶紙として構成され、前記画像転移工程が、前記水溶紙に水を含ませることにより前記水溶紙を水で溶かし、前記リタックシートの前記樹脂層が溶融した前記オーバーコート層の上に前記複合画像を転移させる工程であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記水溶紙を溶かす水が、マイクロバブルを含有することを特徴とするものである。
【0021】
請求項9の発明は、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースの前記凹凸を嵌め合わせて平面上に形成したパズルピースの表面に、所定の消色温度で消色し該消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するインクを用いたインク画像である所要の絵柄画像と、複数の前記パズルピースが各パズルピースに分割された際の位置情報を示し紫外線の照射により視認可能となる紫外線可視化画像からなる画像を形成する画像形成工程と、樹脂フィルムの一面に貼着面を形成してなり、溶融することによって透明のオーバーコート層となる樹脂層を前記貼着面に形成したリタックシートを、前記パズルピースの表面に形成された前記画像の上に仮止めするリタックシート仮止め工程と、前記パズルピースの表面に形成された前記画像に、該画像の上に仮止めされた前記リタックシートの前記樹脂層を重ね合わせた状態で、前記リタックシートを前記パズルピースの表面に対して加熱押圧し、前記樹脂層を溶融させてなる前記オーバーコート層を前記パズルピースに定着させる定着工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、絵柄画像が所定の温度で消発色するトナーを用いたトナー画像またはインクを用いたインク画像としてパズルピースの表面に形成されていることにより、絵柄画像の消色または発色が温度処理により選択されるため、絵柄画像を発色させて視認可能とした通常のジグソーパズルのみならず、絵柄画像が消色した無地のジグソーパズルとしても使用することができる。
また、本発明によれば、絵柄画像と紫外線可視化画像の表面側のパズルピースの全面に透明のオーバーコート層を有すること、すなわち、所定の温度で消発色するトナーを用いたトナー画像またはインクを用いたインク画像として形成される絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像にオーバーコート層を重畳することにより、オーバーコート層が絵柄画像と紫外線可視化画像との光沢差を抑制するため、紫外線可視化画像が可視光の照射によって視認可能となるのを防止し、紫外光照射時のみ視認可能となる。
そして、本発明によれば、絵柄画像と紫外線可視化画像にオーバーコート層を重畳することにより、絵柄画像が加熱により消色した状態にあるとき、後述するように絵柄画像を形成する顔料系インクがパズルピースの表面に留まって粒状に固着して光沢を生じさせ、可視光の照射によって絵柄画像が紫外線可視化画像とともに視認可能となるのを防止することができる。
さらに、オーバーコート層が絵柄画像を保護して絵柄画像の耐光性や耐候性を長期に亘って維持するため、絵柄画像の退色や劣化を防止することができる。
【0023】
請求項2に係る発明のジグソーパズルによれば、請求項1に記載の発明が奏する効果に加えて、絵柄画像が一定の温度範囲に亘って消色または発色のいずれかの状態を選択的に保持することにより、消色と発色が僅かな温度変化で切り替わらなくなるため、例えば常温域でジグソーパズルの作成中に絵柄画像が消色することなく視認可能なままとすることができる。
【0024】
請求項3に係る発明のジグソーパズルによれば、請求項1または請求項2に記載の発明が奏する効果に加えて、パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像が絵柄画像よりも上面の表面側に形成されていることにより、紫外光を照射した際に可視化されて現れる位置情報が見やすくなるため、この位置情報を参考にしてパズルピースをより簡単に嵌め合わせることができる。
【0025】
請求項4に係る発明のジグソーパズルによれば、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明が奏する効果に加えて、複数のパズルピースを内側に位置決めする枠部の表面にパズルピースの位置情報に対応する座標情報を示す紫外線可視化画像が形成されていることにより、各パズルピースがばらばらに分離された状態となっても、紫外光をパズルピースに照射することによって、パズルピース表面に形成した紫外線可視化画像による位置情報のみならず、さらに枠部に形成した座標情報も参考可能となるため、パズルピースを簡単に嵌め合せることができる。
また、本発明によれば、紫外線可視化画像の表面側の枠部の全面に透明のオーバーコート層が形成されていることにより、紫外線可視化画像が可視光の照射によって視認可能となるのを防止するため、紫外光照射時のみ視認可能となり、また、パズルピースの全面に形成された透明のオーバーコート層に対して質感の違いを生じさせないため、パズルピースと枠部との一体感を確保することができる。
【0026】
請求項5に係る発明のジグソーパズルによれば、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明が奏する効果に加えて、オーバーコート層の表面に透明樹脂フィルムをさらに有することにより、複数のパズルピースの表面に透明樹脂フィルムが貼り付けられるため、完成したジグソーパズルの各パズルピースがばらばらになって飛び散るのを防止することができる。
【0027】
請求項6に係る発明のジグソーパズルの製造方法によれば、トナーを用いたトナー画像として絵柄画像を形成する場合において、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0028】
請求項7に係る発明のジグソーパズルの製造方法によれば、絵柄形成紙を水に溶ける水溶紙として構成することにより、支持体の表面に水溶層を設けてなる絵柄形成紙のように粘着性を持つ水溶層がないため、レーザプリンタやMFPを用いてトナーを用いたトナー画像として絵柄画像を形成する場合において、給紙搬送性が良く、かつ、両面において絵柄画像を形成することができる。
【0029】
請求項8に係る発明のジグソーパズルの製造方法によれば、水溶紙を溶かす水がマイクロバブルを含有することにより、水溶紙への水の浸透性が増すため、効率的に水溶紙を溶解させることができる。
【0030】
請求項9に係る発明のジグソーパズルの製造方法によれば、インクを用いたインク画像として絵柄画像を形成する場合において、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のジグソーパズルの製造方法に用いる絵柄形成紙の一例の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の変形例において、
図1の絵柄形成紙に代えて水溶紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態において用いるリタックシートの断面図である。
【
図5】
図4に示すリタックシートの一形態を示す断面図である。
【
図6】
図4に示すリタックシートの他の形態を示す断面図である。
【
図7】
図2に示す絵柄形成紙にリタックシートを貼り付けた状態を示す断面図である。
【
図8】
図3に示す水溶紙にリタックシートを貼り付けた状態を示す断面図である。
【
図9】
図3に示す水溶紙の両面に、絵柄の非反転画像を形成し、さらにリタックシートを貼り付けた状態で、水を湛えた容器内に水溶紙を沈めた様子を示す断面図である。
【
図10】
図2の絵柄形成紙または
図3の水溶紙に形成した絵柄の非反転画像をリタックシートに転移させた状態を示す図である。
【
図11】ジグソーパズル素材をカットして複数個のパズルピースを作製する工程を示す図である。
【
図12】本発明で用いる無地のジグソーパズルの一例を示す図である。
【
図13】転写工程で、ジグソーパズルとリタックシートとを重ね合わせた際のパズルピースのカット溝凹部とリタックシートとの関係を示す断面図である。
【
図14】転写工程においてリタックシートをパズルピースの表面に対して加熱押圧する様子を示す図である。
【
図15】定着工程においてリタックシートをパズルピースの表面に対して加熱押圧した際のパズルピースのカット溝凹部とリタックシートとの関係を示す断面図である。
【
図16】定着工程終了後の絵柄画像が発色状態にあるジグソーパズルの状態を示す平面図である。
【
図17】本発明の一実施形態のジグソーパズルからリタックシートを剥す際の状態を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。
【
図19】本発明のジグソーパズルに紫外光を照射した際の図である。
【
図20】本発明の他の実施形態のジグソーパズルの断面図であり、インクジェットプリンタによってインク画像として形成される画像を用いた際の断面図である。
【
図21】本発明の他の実施形態において、ジグソーパズル上にリタックシートを重ね合わせて仮止めした状態を示す断面図である。
【
図22】本発明の他の実施形態において、リタックシートをパズルピースの表面に対して加熱押圧した際のパズルピースのカット溝凹部とリタックシートとの関係を示す断面図である。
【
図23】本発明の他の実施形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。
【
図24】従来のジグソーパズルの製造方法によって作製されたジグソーパズルを示す図である。
【
図25】本発明のジグソーパズルに用いるメタモインクの発消色と温度変化の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明のジグソーパズルに係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0033】
まず、本発明における課題の解決のための手段の原理について説明する。
図25は、本発明のジグソーパズルに用いるメタモインクの発消色と温度変化の関係を説明するための図である。
【0034】
まず、本発明のジグソーパズルの絵柄画像を形成するのに用いるメタモインクの原理について説明する。
加熱すると色が消え、冷却するともとの色に戻るインク(インキ)が、ボールペンやマーカーペン等の筆記用途に使用されており、このような温度変化で色が変わるインクを「メタモインク」という(「メタモインキ」ともいう)。
【0035】
このメタモインクは、ロイコ染料(発色剤)と顕色剤(発色させる成分)と変温温度調整剤を均一に混合して、マイクロカプセルの中に封入してなる示温顔料の一種である。
ロイコ染料は、色を決める成分であるが、単体では発色せず、顕色剤と化学的に結びつくことにより発色する特性を有している。
そして、ロイコ染料と顕色剤に、さらに変温温度調整剤を追加し、変温温度調整剤の種類を変えることで、インクが変色(発色または消色)する温度を一定範囲内で任意に設定することができる。
【0036】
図25(A)に示すように、開発当初のメタモインクは、変色温度の感度が非常に鋭敏に設定され、すなわち、発色温度と消色温度の差が小さく、特定の温度付近で発色と消色が瞬時に切り替わるものであった(「ノンメモリータイプ」という)。
そのため、食品や飲料の示温剤として、適温表示用途に用いられる一方、発色状態または消色状態を常温の温度帯で一定に保てないことから、筆記用途に用いるのには不向きであった。
【0037】
他方、
図25(B)に示すように、発色温度と消色温度の差が大きく、一定の温度範囲に亘って発色または消色のいずれかの状態を選択的に保持できるメタモインクも開発されている(「メモリータイプ」という)。
そこで、変温温度調整剤を改良して、このメモリータイプの発色温度と消色温度の差をさらに大きくすることで、筆記用途に適したメタモインクが開発されるに至っている。
この改良されたメモリータイプのメタモインクは、-20℃~+60℃の範囲内の任意の温度で変色し、発色と消色を何回でも可逆的に繰り返すことができる。
また、このメモリータイプのメタモインクは、上述のように、ロイコ染料と顕色剤と変温温度調整剤をマイクロカプセル化したもので、顔料系インクとして、特にピエゾ方式のインクジェットプリンタによる出力に適している。
【0038】
また、資源の有効利用や炭酸ガスの排出量低減の目的で、このメモリータイプのメタモインクを応用した、加熱処理により消去可能な印刷用トナー(消去可能トナー)が開発されている(例えば、公開特許公報特開2011-232739参照)。
この消去可能トナーを利用可能としたMFPは実際に販売され、消去可能トナーにより文字や画像をコピー用紙に印刷し、また、専用の消色装置を用いて、印刷した用紙を消色することができる。消色した用紙は、MFPで印刷に繰り返し使用することが可能で、1枚のコピー用紙を5~10回程度再利用することができる。
本発明に係るジグソーパズルの絵柄画像は、このような消去可能トナーや上述したメモリータイプのメタモインクを用いて形成される。
【0039】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態として、トナー画像を用いて本発明に係るジグソーパズルを作成する方法について説明する。
図1は、本実施形態のジグソーパズルの製造方法に用いる絵柄形成紙の一例の断面図である。
絵柄形成紙1は、支持体2の表面に水溶層3を設けたものである。
支持体2は、吸水性のよい材質、例えば、紙、合成紙、ポリビニルアルコール等の水溶性フィルムなどから作製し、水溶層3は、水分を加えることによって溶ける材質、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、デキストリン等の水溶性物質から作製することができる。
【0040】
次に、絵柄形成紙1に画像を形成し、それを貼着対象物である無地のジグソーパズルの台紙表面に貼着する方法について説明する。
本実施形態では、絵柄形成紙1の上に、所要の絵柄画像と紫外線可視化画像とを重畳した画像4aを形成し、後述するリタックシートにオーバーコート層となる層あるいはオーバーコート層を設け、このリタックシートに形成したオーバーコート層となる層あるいはオーバーコート層を画像4aに貼り付けている。
【0041】
図2は、本実施形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
本実施形態では、
図2に示すように、支持体2の表面に水溶層3を設けた絵柄形成紙1の上に、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像4aを形成している。
【0042】
まず、画像形成工程として、
図2に示すように、例えば、図示しないパーソナルコンピュータ(PC)によって作成された画像データを基に、レーザプリンタやMFPを用いて絵柄形成紙1上にトナーを用いたトナー画像である画像4aを形成する。
この場合、絵柄形成紙1に形成する絵柄は反転させる必要はなく、正像である非反転画像を形成する。
以降、画像形成工程のうち、この絵柄の非反転画像を形成する工程を第1の工程と呼ぶ。
【0043】
ここで、本実施形態では、画像4aは、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳した画像からなる。
絵柄画像は、所定の消色温度で消色し、この所定の消色温度よりも低い所定の発色温度で発色するトナー(消去可能トナー)を用いたトナー画像として形成され、消色または発色を温度処理により選択して切り替えることができる。
紫外線可視化画像は、紫外線や近紫外線を照射すると弱い蛍光によって発光するため見ることができるが、通常の太陽光や電灯の下では見えず、紫外光やブラックライトなどを照射した際に発光して像が現れ、視認することができる。
以降、画像形成工程のうち、この紫外線可視化画像を形成する工程を第2の工程と呼ぶ。
【0044】
所要の絵柄画像と紫外線可視化画像を重畳した画像4aを形成するためには、例えば、カラートナー像に対応して、透明トナー像をカラートナー像上に重ね合せる透明トナー像形成手段を有する画像形成装置(例えば、公開特許公報特開2002-82508参照)を用い、透明トナーとして、可視光では見えないが紫外光を当てると発光するUVトナーを用いることによって紫外線可視化画像を重畳して作製することができる。
UVトナーは、紫外光に反応し、不可視トナーとも呼ばれ、通常の太陽光下では見えない。
そして、UVトナーによって形成する画像は、後述するように、パズルピースの位置情報を示す画像であって、予め使用するジグソーパズルの各パズルピースの配置データに基づいて各パズルピースに付与した位置情報データを作成しておき、これをPC等の情報処理装置に取り込み、絵柄画像のデータとともに印刷すればよい。
【0045】
図2は、本実施形態において、
図1の絵柄形成紙に絵柄の非反転画像が形成された状態を示す断面図である。
【0046】
また、本実施形態の変形例では、
図3に示すように、
図2に示す支持体2の表面に水溶層3を設けた絵柄形成紙1に代えて、水に溶ける水溶紙60を用い、この水溶紙60の上に、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像とを重畳したトナー画像である画像4aを形成する。
【0047】
水溶紙60は、純植物性の木材パルプを使用して製造され、常温の水の他、冷水・温水・海水などに浸すと紙の繊維が分散し、そのまま溶けて無くなる紙であり、機密文書の漏洩防止、植物の種子を入れる播種、紙吹雪、医療用採取等、様々な用途に用いられている。
また、水溶紙60は、支持体2の表面に水溶層3を設けてなる絵柄形成紙1のように粘着性を持つ水溶層3がないため、レーザプリンタやMFPを用いて画像4aを形成する際に、手差し処理が不要で給紙搬送性が良く、かつ、両面において画像4aを形成することができるというメリットがある。
【0048】
本実施形態では、
図4に示すリタックシート側に、オーバーコート層となる層あるいはオーバーコート層を設けている。
【0049】
本実施形態に用いるリタックシートには、粉末樹脂層付きリタックシート7’と透明樹脂層付きリタックシート7”の2つの種類があり、いずれを用いてもよい。
粉末樹脂層付きリタックシート7’は、透明な樹脂フィルム5の一面に再剥離型粘着剤6からなる貼着面を形成し、この貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層4cを塗布したものである。
樹脂フィルム5としては、後述するように、熱可塑性に富んだポリ塩化ビニル(PVC)を用いたものが好適である。
この粉末樹脂層付きリタックシート7’は、取扱いを容易にするために、
図5に示すように粉末樹脂層4cの露出面の上に剥離紙8を設け、周囲を仮止めテープ9で固定してもよい。
【0050】
次に、
図7および
図8に示すように、リタックシート貼り付け工程として、絵柄形成紙1または水溶紙60に形成した画像4aの上に粉末樹脂層付きリタックシート7’を重ねる。
【0051】
粉末樹脂層付きリタックシート7’を使用する場合は、粉末樹脂層付きリタックシート7’から剥離紙8を剥がし、
図7に示すように、リタックシート貼り付け工程として、粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4c側を絵柄形成紙1上の画像4aの上に重ね合せる。
この状態で、粉末樹脂層4cを加熱圧着して溶融させ、絵柄形成紙1上の画像4aに粉末樹脂層付きリタックシート7’を貼り付ける。
共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層4cは、加熱、溶融することによって、オーバーコート層である透明樹脂層4c’に変更される。
【0052】
そして、
図7に示す状態で、画像転移工程として、絵柄形成紙1の支持体2にスプレーなどを用いて水を含ませる。
これにより、吸水性の支持体2の表面に塗布された水は、支持体2に浸透して水溶層3に達する一方、支持体2の表面から側面へと伝わり、水溶層3に側面側からも浸透する。
【0053】
水溶層3は、水分を加えることによって溶ける材質である水溶性物質から構成されているため、浸透した水によって溶解する。
このため、支持体2が粉末樹脂層付きリタックシート7’から剥離し、その際、水溶層3上に形成されていた画像4aは、粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4cが加熱、溶融されてオーバーコート層となった透明樹脂層4c’に転移する。
【0054】
同様に、
図3に示す本実施形態の変形例では、
図8に示す状態で、画像転移工程として、水溶紙60にスプレーなどを用いて水を含ませる。
これにより、水溶紙60の表面に塗布された水は、水溶紙60全体に浸透する。
【0055】
上述のように、水溶紙60は、水に溶ける紙であり、浸透した水によって溶解する。
このため、水溶紙60上に形成されていた画像4aは、粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4cが加熱、溶融されてオーバーコート層となった透明樹脂層4c’に転移する。
【0056】
また、
図8に示すように、画像4aが水溶紙60の片面に形成されている場合はもとより、
図9に示すように、画像4aが水溶紙60の両面に形成され、さらに粉末樹脂層付きリタックシート7’が両面に貼り付けられている場合においては、水溶紙60を、水61を湛えた容器内に沈めることで、水溶紙60の内部に水61を浸透しやすくして水溶紙60の溶解を促進することができる。
【0057】
さらに、水溶紙60を溶かす水61を、マイクロバブルを含有するマイクロバブル水とすることにより、水溶紙60の分解速度が増すため、効率的に水溶紙60を溶解させることができる。
ここで、マイクロバブル水とは、直径が1μm~100μmの気泡であるマイクロバブルを含有する水であり、洗浄や水質浄化などの効果が確認されている。
【0058】
図10は、
図2の絵柄形成紙または
図3の水溶紙に形成した絵柄の非反転画像をリタックシートに転移させた状態を示す図であり、
図10(A)はその断面図を、
図10(B)は
図10(A)をリタックシートの粉末樹脂層4c側とは反対側から見た平面図を示し、
図10(C)は
図10(B)の平面図において粉末樹脂層付きリタックシートに転移された絵柄画像が加熱により消色した状態を示す。
画像転移工程によって、オーバーコート層である透明樹脂層4c’の上に画像4aが転移した粉末樹脂層付きリタックシート7’を得ることができる。
画像転移工程の後は、必要に応じて、粉末樹脂層付きリタックシート7’に転移した画像4aの面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程が続く。
【0059】
次に、粉末樹脂層付きリタックシート7’に転移した画像4aの貼着対象物であるジグソーパズルの台紙を準備する。
ジグソーパズルの台紙としては、無地の台紙を型抜きすることにより、各辺に所要形状の凹凸を有するパズルピースを複数個分離形成し、各パズルピースの凹凸を嵌め合わせて平面状にしたジグソーパズルが用いられる。
【0060】
このジグソーパズルの製造方法としては、まず、
図11に断面を示すように、片面に白紙21を貼着したダンボール紙22を2枚、枠部26となる周囲部分のみにホットメルト型接着剤23を設けて、白紙21側が外側になるように貼りあわせたジグソーパズル素材24を作製する。
ここで、上側の白紙21を貼着したダンボール紙22が本実施形態の無地の台紙に相当する。そして、台紙としては、ダンボール紙22にかかわらず、他の紙類のほか、コルク材や木板を用いてもよく、白紙21を設けることも必須ではない。
なお、本発明で無地とは、表面に絵柄のない状態のものを意味するものであり、和紙やコルクなどの地模様があるものも無地に含まれる。
【0061】
その後、
図11に示すように、このジグソーパズル素材24をカット台31の上面に所定位置を合わせた状態で載置し、カット台31を、上部のパズルピースをカット処理するための刃物台32に向けて、矢印33の方向に上下移動することで、上側の白紙21とダンボール紙22のみを所定形状に型抜きして、パズルピース25と枠部26とに分割する。
【0062】
図12は、このようにして作製された無地のジグソーパズルの一例を示す図であり、
図12(A)に平面図を、
図12(B)に一部断面図を示す。
ジグソーパズル20は、無地の台紙が型抜きされて複数のパズルピース25に分割されている。個々のパズルピース25は、各辺に所要形状の凹凸を有し、パズルピース25は、ばらばらに分離した後でもこれらの凹凸を嵌め合わせることによって平面上に形成することができる。
また、周辺部は、下側のダンボール紙22と接着されて枠部26を形成することになる。
下側のダンボール紙22は、底板28として、枠部26とともに、分離されたパズルピースを組み合わせる際の作業プレートあるいはホルダとして機能する。
また、個々のパズルピース25の相互間およびパズルピース25と枠部26との間には、型抜きによって生じたカット溝凹部27が形成されている。
【0063】
次に、粉末樹脂層付きリタックシート7’のオーバーコート層である透明樹脂層4c’の上に転移した画像4aをジグソーパズル20の台紙上に転写する転写工程について説明する。
まず、ジグソーパズル20のパズルピース25の表面側に粉末樹脂層付きリタックシート7’の画像4a側が来るように、ジグソーパズル20上に粉末樹脂層付きリタックシート7’を位置合わせしながら重ね合わせる。
図13は、ジグソーパズル20と粉末樹脂層付きリタックシート7’とを重ね合わせた状態を示す図であり、この状態では、粉末樹脂層付きリタックシート7’は平面状であり、画像4aは、粉末樹脂層付きリタックシート7’側に保持されたままである。
【0064】
この状態で、粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピース25の表面に対して加熱押圧する。
加熱押圧の方法としては、例えば、
図14に示すように、濡らした布41を粉末樹脂層付きリタックシート7’の上に当てて、その上から、アイロン40を用いて粉末樹脂層付きリタックシート7’に熱と圧力を加える方法を用いることができる。なお、濡らした布41に代えて、軟性シリコンゴム発泡体シートなどを用いてもよい。
また、濡らした布41を用いて加熱押圧する場合、濡らした布41に含まれる水分が変化した水蒸気によってジグソーパズル20が湿るのを防止するため、図示しない、例えばポリプロピレン製のプラスチックフィルムからなる袋の中にジグソーパズル20を挿入した状態で、その上から濡らした布41を当てて、粉末樹脂層付きリタックシート7’に加熱押圧してもよい。
【0065】
図15は、定着工程において粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピース25の表面に対して加熱押圧した際の、パズルピース25のカット溝凹部27と粉末樹脂層付きリタックシート7’との関係を示す断面図である。
粉末樹脂層付きリタックシート7’に熱と圧力を加えることにより、熱可塑性に富んだ粉末樹脂層付きリタックシート7’が熱膨張し、熱膨張の応力によって粉末樹脂層付きリタックシート7’がパズルピース25のカット溝凹部27の奥部まで入り込もうとして、カット溝凹部27のパターンに沿って皺寄せ状態になる。
【0066】
一方、粉末樹脂層付きリタックシート7’側に保持されている画像4aは加熱されてパズルピース25に押圧されるため、画像4aはパズルピース25の表面に再融着(再定着)され、粉末樹脂層付きリタックシート7’からジグソーパズル20への画像4aの融着力の差で転写が行われる。
その際、粉末樹脂層付きリタックシート7’は、パズルピース25のカット溝凹部27の奥部まで入り込もうとするため、粉末樹脂層付きリタックシート7’に保持されたカット溝凹部27部分の画像4aもパズルピース25のカット溝凹部27の入り口部分、すなわちパズルピース25の外周辺のコーナ部分にまで良好に再定着される。
【0067】
このように、熱可塑性に富んだ粉末樹脂層付きリタックシート7’の樹脂フィルム5は、熱によって膨張する材料であって、画像4aの再定着温度によっては溶融しない材質のものを用いることによって、カット溝凹部27まで画像4aを転写することができる。このような材料としては、例えばポリ塩化ビニルが好適である。
なお、
図15に示す状態において、粉末樹脂層付きリタックシート7’のオーバーコート層である透明樹脂層4c’に転移した画像4aのうち、カット溝凹部27部分でパズルピース25に接触していない部分の画像4aは、パズルピース25へは転写されず粉末樹脂層付きリタックシート7’側に残ることになる。
【0068】
上記実施形態では、粉末樹脂層付きリタックシート7’を加熱押圧するために、アイロン40を用いて加熱押圧したが、アイロン40に限らず、例えば、粉末樹脂層付きリタックシート7’を重ね合わせたジグソーパズル20を一対の挟持体で挟み、一定の圧力を加えて加熱押圧するようにしてもよい。
この挟持体としては、軟性シリコンゴム発泡体で構成し、少なくとも一方の挟持体に発熱体を設けておくとよい。また、挟持体として一対のローラを用いてもよい。
なお、画像4aが加熱されてパズルピース25に押圧される時点で絵柄画像が発色状態であったとしても、
図10(C)に示すように、加熱により所定の消色温度以上になると絵柄画像が一時的に消える。
しかし、定着工程終了後にジグソーパズルを所定の発色温度以下に冷却することで、絵柄画像は再び発色状態となる。
【0069】
図16は、定着工程終了後の絵柄画像が発色状態にあるジグソーパズルの状態を示す平面図であり、正像の絵柄を形成したジグソーパズル20の表面に、透明な粉末樹脂層付きリタックシート7’を貼り付けた状態のジグソーパズル20を得ることができる。
以上のようにして得られたジグソーパズル20は、部屋のインテリア装飾用品として利用することができ、複数のパズルピース25と枠部26の表面には粉末樹脂層付きリタックシート7’が貼り付けられているため、各パズルピース25がばらばらになって飛び散ることがない。
また、以上のようにして得られたジグソーパズル20をゲーム用パズルとして用いる場合は、粉末樹脂層付きリタックシート7’を剥すことによって、各パズルピース25をばらばらに分離することができる。
本実施形態では、粉末樹脂層付きリタックシート7’は、パズルピースの飛び散り防止用の透明樹脂フィルムとして機能している。
【0070】
図17は、本実施形態のジグソーパズルからリタックシートを剥す際の状態を示す図であり、
図18は、本実施形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。
ジグソーパズル20のパズルピース25の表面には、オーバーコート層である透明樹脂層4c’とともに、転写され再定着した画像4aが形成されており、各パズルピース25はカット溝によってばらばらに分離可能な状態になっている。
一方、粉末樹脂層付きリタックシート7’側には、転写工程でパズルピース25の表面に転写されなかった画像4aの一部および透明樹脂層4c’の一部が残存している。
この残存している画像4aの一部および透明樹脂層4c’の一部は、ジグソーパズル20の各パズルピース25のカット溝部分、すなわち、各パズルピースの凹凸を嵌め合わせて形成されたカット溝部分に沿った模様となる。
【0071】
このように、ジグソーパズル20から粉末樹脂層付きリタックシート7’を剥した際に、画像4aの一部および透明樹脂層4c’の一部は、粉末樹脂層付きリタックシート7’のうち、樹脂フィルム5と再剥離型粘着剤6からなるリタックシート側に奪われることになるが、奪われる画像4aの一部および透明樹脂層4c’の一部はカット溝部分に沿った画像4aおよび透明樹脂層4c’であることからその影響は小さい。
そして、各パズルピース25の表面の外周辺のコーナ部分にまで良好に画像4aが再定着されているため、再度パズルピース25の凹凸を嵌め合わせて絵柄を再現した際も、良好な絵柄を再現することが可能となる。
【0072】
そして、所要の絵柄画像とパズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像を重畳した画像である画像4aは、その上に、さらに透明なオーバーコート層である透明樹脂層4c’を有している。
このため、可視光の下では、紫外線可視化画像は肉眼視することはできないが、ジグソーパズル20に紫外光を照射した際に、紫外線可視化画像として形成したパズルピース25の位置情報を見ることができる。
さらに、この透明なオーバーコート層である透明樹脂層4c’は、所要の絵柄画像に重畳されて、この絵柄画像を形成する画像4aに用いられる加熱処理により消去可能なトナー(消去可能トナー)を保護して、絵柄画像の耐光性や耐候性を長期に亘って維持し、絵柄画像の退色や劣化を防止することができる。
【0073】
次に、透明樹脂層付きリタックシート7”を用いる場合について説明する。
まず、透明樹脂層付きリタックシート7”は、透明な樹脂フィルム5の一面に再剥離型粘着剤6からなる貼着面を形成する工程と、貼着面の上に共重合ポリアミド粉末樹脂からなる粉末樹脂層4cを塗布する工程と、粉末樹脂層4cの上に剥離紙8を設ける工程と、粉末樹脂層4cを樹脂フィルム5と剥離紙8とで挟んだ状態で加熱圧着し、粉末樹脂層4cを溶融させて透明樹脂層4c’を得る工程によって作製される。
透明樹脂層付きリタックシート7”は、取扱いを容易にするために、
図6に示すように、周囲を仮止めテープ9で固定してもよい。透明樹脂層付きリタックシート7”の透明樹脂層4c’は、オーバーコート層として機能する。
【0074】
このように作製された透明樹脂層付きリタックシート7”から剥離紙8を剥がし、
図7または
図8に示すように、リタックシート貼り付け工程として、透明樹脂層付きリタックシート7”の透明樹脂層4c’側を絵柄形成紙1または水溶紙60上の画像4aの上に重ね合せる。
この状態で、透明樹脂層4c’を加熱圧着して、絵柄形成紙1または水溶紙60上の画像4aに透明樹脂層付きリタックシート7”を貼り付ける。
【0075】
以降、粉末樹脂層付きリタックシート7’を用いる場合と同様に、支持体2に水を含ませることにより水溶層3を水で溶かして支持体2を剥離し、または、水溶紙60に水を含ませることにより水溶紙60を水で溶かして、画像4aを透明樹脂層付きリタックシート7”のオーバーコート層である透明樹脂層4c’の上に転移させる画像転移工程と、透明樹脂層4c’の上に転移した画像4aの面に残置する水分や水溶性物質を除去し乾燥させるクリーニング工程と、さらに、各辺に所要形状の凹凸を有する複数のパズルピースが嵌め合わされて平面上に形成したパズルピースの表面に、オーバーコート層である透明樹脂層4c’の上に画像4aを転移させた透明樹脂層付きリタックシート7”を重ね合わせ、透明樹脂層付きリタックシート7”をパズルピースの表面に対して加熱押圧して、オーバーコート層とともに、画像4aをパズルピースに転写する転写工程を経て、ジグソーパズルを得る。
【0076】
図19は、本発明のジグソーパズルに紫外光を照射した際の図である。紫外光の照射範囲はスポットSとしている。
そして、紫外光を照射されたパズルピース25には、各パズルピース25の位置情報53が可視化されて現れるため見ることができる。
各パズルピース25の位置情報53としては種々のものを用いることができるが、本実施形態では、ジグソーパズル20の枠部26に、座標情報として、A、B、C、D・・・の行情報51と01、02、03、04・・・の列情報52を紫外線可視化画像として形成し、これらの行情報と列情報の組み合わせであるA01、A02、A03、A04・・・を各パズルピース25の位置情報53として用いている。
【0077】
ここまでは、
図24に示す従来技術のジグソーパズルと同様であるが、本発明のジグソーパズルは、さらに絵柄画像の消色または発色を温度処理により選択して切り替えることができる。
図19に示すように、絵柄画像は、破線で示す箇所が実際には消色状態で視認可能でない。
発色状態にある絵柄画像を加熱処理して消色状態にするには、例えば、上述のアイロン以外にドライヤー等を使用することができ、消色状態にある絵柄画像を冷却処理して発色状態にするには、例えば、冷蔵庫や冷凍庫内にジグソーパズルを暫く載置すればよい。
【0078】
したがって、絵柄画像が消色または発色のいずれの状態かを問わず、ジグソーパズル20から粉末樹脂層付きリタックシート7’または透明樹脂層付きリタックシート7”を剥し、各パズルピース25がばらばらに分離された状態となっても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、パズルピース表面に形成した紫外線可視化画像による位置情報とさらに枠部に形成した座標情報を参考にしてパズルピース25を簡単に嵌め合せることができる。
【0079】
なお、パズルピース25に形成する位置情報を示す紫外線可視化画像は、絵柄画像が発色状態で視認可能であっても紫外光を照射した際に見やすくするために、絵柄画像よりも上面に形成されるのが望ましい。
このため、レーザプリンタやMFPを用いてトナー画像を形成する場合は、絵柄形成紙1または水溶紙60の表面でUVトナーによる位置情報を示す画像が絵柄画像よりも上面になるようにし、消去可能トナーおよびUVトナーが絵柄形成紙1または水溶紙60に転写される順序を考慮して、各トナーの転写ベルトに対する配置関係を定めておくことが望ましい。
なお、場合によっては、画像形成処理を2回行うこととし、消去可能トナーによる絵柄画像を絵柄形成紙1または水溶紙60の上面に形成し、さらにUVトナーによる位置情報を示す画像をその上に形成するようにしてもよい。
【0080】
そして、絵柄画像が発色状態で視認可能であるときのみならず、絵柄画像が消色状態で視認可能でないときに各パズルピースがばらばらになったとしても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、位置情報を参考にしてパズルピース25を簡単に嵌め合せることができる。
また、上述した画像形成工程において、絵柄の非反転画像(絵柄画像)を形成する第1の工程が、紫外線可視化画像を形成する第2の工程に先行することで、絵柄画像が発色状態で視認可能であっても、位置情報を示す紫外線可視化画像が絵柄画像よりも上面に形成されているので、紫外光を照射した際に可視化されて現れる位置情報が見やすくなる。
しかし、第2の工程が第1の工程に先行して、絵柄画像がUVトナーによる位置情報を示す画像よりも上面に形成され、かつ、絵柄画像が発色状態で視認可能であっても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、絵柄の下に紫外線可視化画像が来るため視認性は劣るものの位置情報を見ることができるため、従来のジグソーパズルよりもはるかに簡単に嵌め合わすことが可能になる。
【0081】
本発明の粉末樹脂層付きリタックシート7’あるいは透明樹脂層付きリタックシート7”は、ジグソーパズルの製造に用いる以外に、絵柄の表面に透明樹脂層を形成する際の他の用途に用いることができる。
なお、粉末樹脂層付きリタックシート7’あるいは透明樹脂層付きリタックシート7”は、オーバーコート層である透明樹脂層4c’を転写剥離後、樹脂フィルム5と再剥離型粘着剤6からなるリタックシートとして再使用(リユース)可能であるとともに、再剥離型粘着剤6に粉末樹脂層4cを塗布することによって、粉末樹脂層付きリタックシート7’として、あるいは、粉末樹脂層4cを加熱圧着して透明樹脂層4c’とした透明樹脂層付きリタックシート7”とすることで再使用可能である。
【0082】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、絵柄画像および紫外線可視化画像を、すべてレーザプリンタやMFPによって形成されるトナー画像として形成したが、絵柄画像および紫外線可視化画像は、インクジェットプリンタによって形成されるインク画像であってもよい。
図20は、本発明の他の実施形態のジグソーパズルの断面図であり、インクジェットプリンタによってインク画像として形成される画像4a’を用いた際の断面図である。
まず、画像形成工程として、
図20で示すように、例えば、図示しないPCによって作成された画像データを基に、インクジェットプリンタを用いてパズルピース25上にインク画像である画像4a’を直接形成する。
【0083】
ジグソーパズル20において、個々のパズルピース25の相互間およびパズルピース25と枠部26との間には、型抜きによって生じたカット溝凹部27が形成され、パズルピース25の表面が平面上に形成されていないが、例えば、衣料等の布地に直接印刷できるインクジェットプリンタ(ガーメントプリンタ)を用いることで、インク画像である画像4a’をパズルピース25の表面に形成することができる。
また、紫外線可視化画像を形成するためのインクジェットプリンタのインクとしては、例えば、紫外線硬化型のUV硬化インクを用いることができる。UV硬化インクは、紫外線を照射することで瞬時に硬化、定着するインクであり、定着までの時間が短い特徴を有している。
【0084】
次に、粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピース25の表面に形成された画像4a’の上に仮止めするリタックシート仮止め工程について説明する。
まず、ジグソーパズル20のパズルピース25の表面側に形成された画像4a’の上に粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4c側が来るように、ジグソーパズル20上に粉末樹脂層付きリタックシート7’を位置合わせしながら重ね合わせ、粉末樹脂層付きリタックシート7’を画像4a’の上に仮止めする。
図21は、ジグソーパズル20上に粉末樹脂層付きリタックシート7’を重ね合わせて仮止めした状態を示す断面図であり、この状態では、粉末樹脂層付きリタックシート7’は平面状である。
【0085】
次に、この状態で、粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピース25に定着させる定着工程について説明する。
ジグソーパズル20と粉末樹脂層付きリタックシート7’とを重ね合わせた状態で、粉末樹脂層付きリタックシート7’をパズルピース25の表面に対して加熱押圧し、粉末樹脂層4cを溶融させてパズルピース25に定着させる。
加熱押圧の方法としては、例えば、
図14に示すように、濡らした布41を粉末樹脂層付きリタックシート7’の上に当てて、その上から、アイロン40を用いて粉末樹脂層付きリタックシート7’に熱と圧力を加える方法を用いることができる。なお、濡らした布41に代えて、軟性シリコンゴム発泡体シートなどを用いてもよい。
また、濡らした布41を用いて加熱押圧する場合、濡らした布41に含まれる水分が変化した水蒸気によってジグソーパズル20が湿るのを防止するため、図示しない、例えばポリプロピレン製のプラスチックフィルムからなる袋の中にジグソーパズル20を挿入した状態で、その上から濡らした布41を当てて、粉末樹脂層付きリタックシート7’に加熱押圧してもよい。
【0086】
図22は、定着工程においてリタックシートをパズルピースの表面に対して加熱押圧した際のパズルピースのカット溝凹部とリタックシートとの関係を示す断面図である。
粉末樹脂層付きリタックシート7’に熱と圧力を加えることにより、熱可塑性に富んだ粉末樹脂層付きリタックシート7’が熱膨張し、熱膨張の応力によって粉末樹脂層付きリタックシート7’がパズルピース25のカット溝凹部27の奥部まで入り込もうとして、カット溝凹部27のパターンに沿って皺寄せ状態になる。
【0087】
一方、粉末樹脂層付きリタックシート7’の粉末樹脂層4cは、加熱されてパズルピース25に押圧されるため、透明樹脂層4c’に変更されてオーバーコート層となり、パズルピース25の表面に融着(定着)される。
【0088】
このように、熱可塑性に富んだ粉末樹脂層付きリタックシート7’の樹脂フィルム5は、熱によって膨張する材料であって、粉末樹脂層4cが変更されたオーバーコート層である透明樹脂層4c’の定着温度によっては溶融しない材質のものを用いる。このような材料としては、例えばポリ塩化ビニルが好適である。
なお、リタックシート仮止め工程において、パズルピース25の表面に形成された画像4a’の上に仮止めする粉末樹脂層付きリタックシート7’に代えて、透明樹脂層付きリタックシート7”を用いてもよい。
【0089】
図23は、本実施形態のパズルピースからリタックシートを剥した際の状態を示す断面図である。
ジグソーパズル20のパズルピース25の表面には、オーバーコート層である透明樹脂層4c’とともに、転写され再定着した画像4a’が形成されており、各パズルピース25はカット溝によってばらばらに分離可能な状態になっている。
一方、粉末樹脂層付きリタックシート7’側には、粉末樹脂層4cが加熱、溶融されてオーバーコート層となった透明樹脂層4c’の一部が残存している。
この残存している透明樹脂層4c’の一部は、ジグソーパズル20の各パズルピース25のカット溝部分、すなわち、各パズルピースの凹凸を嵌め合わせて形成されたカット溝部分に沿った模様となる。
【0090】
このように、ジグソーパズル20から粉末樹脂層付きリタックシート7’を剥した際に、透明樹脂層4c’の一部は、粉末樹脂層付きリタックシート7’のうち、樹脂フィルム5と再剥離型粘着剤6からなるリタックシート側に奪われることになるが、奪われる透明樹脂層4c’の一部はカット溝部分に沿った透明樹脂層4c’であることからその影響はない。
【0091】
本実施形態の場合は、紫外線可視化画像を形成するための蛍光剤入り透明UVインクを用い、
図12に示す無地のジグソーパズル(白パズル)20の表面に、絵柄画像、および、紫外線可視化画像の順番で、各インクが定着して印刷されるように、インクジェットプリンタの各インクのインクヘッドのノズルの配置関係を定めておけばよい。
なお、本実施形態においても、絵柄画像が発色状態で視認可能であるときのみならず、消色状態で視認可能でないときに各パズルピースがばらばらになったとしても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、位置情報を参考にしてパズルピース25を簡単に嵌め合せることができる。
また、画像形成工程において、絵柄画像を形成する工程が、紫外線可視化画像を形成する工程に先行することで、絵柄画像が発色状態で視認可能であっても、位置情報を示す紫外線可視化画像が絵柄画像よりも上面に形成されているので、紫外光を照射した際に可視化されて現れる位置情報が見やすくなる。
しかし、紫外線可視化画像を形成する工程が、絵柄画像を形成する工程に先行して、UV硬化インクによる位置情報を示す画像よりも上面に絵柄画像が形成され、かつ、絵柄画像が発色状態で視認可能であっても、紫外光をパズルピース25に照射することによって、絵柄の下に紫外線可視化画像が来るため視認性は劣るものの位置情報を見ることができるため、従来のジグソーパズルよりもはるかに簡単に嵌め合わすことが可能になる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、例えば、第2の実施形態の変形例として、一般に市販されている印刷画像を有するジグソーパズルの表面に、パズルピースの位置情報を示す紫外線可視化画像を印刷し、オーバーコート層を形成するようにしてもよい。
なお、第1の実施形態および第2の実施形態では、紫外線可視化画像に蛍光剤入りの透明トナー又はインクを使用しているが、他の材料として、暗闇でも、紫外光の照射でも発光する、蓄光剤入りの透明トナー又はインクを用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…絵柄形成紙、
2…支持体、
3…水溶層、
4a、4a’…画像、
4c…粉末樹脂層、
4c’…透明樹脂層、
5…樹脂フィルム、
6…再剥離型粘着剤、
7’…粉末樹脂層付きリタックシート、
7”…透明樹脂層付きリタックシート、
8…剥離紙、
9…仮止めテープ、
20…ジグソーパズル、
21…白紙、
22…ダンボール紙、
23…ホットメルト型接着剤、
24…ジグソーパズル素材、
25…パズルピース、
26…枠部、
27…カット溝凹部、
28…底板、
31…カット台、
32…刃物台、
33…矢印、
40…アイロン、
41…布、
51…行情報、
52…列情報、
53…位置情報、
60…水溶紙、
61…水、
100…白紙、
101…絵柄トナー画像、
102…UVトナー画像、
103…オーバーコート層、
110…リタックシート、
120…ジグソーパズル、
125…パズルピース、
130…トナー画像。