IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -ブレーキ液圧制御装置 図1
  • -ブレーキ液圧制御装置 図2
  • -ブレーキ液圧制御装置 図3
  • -ブレーキ液圧制御装置 図4
  • -ブレーキ液圧制御装置 図5
  • -ブレーキ液圧制御装置 図6
  • -ブレーキ液圧制御装置 図7
  • -ブレーキ液圧制御装置 図8
  • -ブレーキ液圧制御装置 図9
  • -ブレーキ液圧制御装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156511
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20221006BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20221006BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60T8/34
F16F15/08 E
F16F1/373
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060244
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴紀
【テーマコード(参考)】
3D246
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246CA03
3D246DA01
3D246GA09
3D246GB01
3D246LA03Z
3D246LA04Z
3D246LA12Z
3D246LA16Z
3J048AA01
3J048AB01
3J048AD05
3J048BA02
3J048DA04
3J048EA26
3J059AA10
3J059BA52
3J059BB03
3J059BC05
3J059BC06
3J059BD01
3J059BD05
3J059CA14
3J059CB03
3J059GA13
(57)【要約】
【課題】 ブレーキ液圧ユニットの共振現象の発生を抑制する。
【解決手段】 制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御するブレーキ液圧ユニット(1)と、前記ブレーキ液圧ユニット(1)を車両に取り付けるための支持構造(40)とを備えたブレーキ液圧制御装置(80)において、前記支持構造(40)は、固定部材(49)と、ブラケット(41)と、第1振動吸収部材(51)と、第2振動吸収部材(52)と、を有し、前記第1振動吸収部材(51)は、前記ブラケット(41)に形成された開口(41d)に固定され、前記固定部材(49)は、前記第1振動吸収部材(51)と前記第2振動吸収部材(52)とを貫通し、一端部が前記ブレーキ液圧ユニット(1)に圧入される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御するブレーキ液圧ユニット(1)と、前記ブレーキ液圧ユニット(1)を車両に取り付けるための支持構造(40)とを備えたブレーキ液圧制御装置(80)において、
前記支持構造(40)は、
固定部材(49)と、
ブラケット(41)と、
第1振動吸収部材(51)と、
第2振動吸収部材(52)と、を有し、
前記第1振動吸収部材(51)は、前記ブラケット(41)に形成された開口(41d)に固定され、
前記固定部材(49)は、前記第1振動吸収部材(51)と前記第2振動吸収部材(52)とを貫通し、一端部が前記ブレーキ液圧ユニット(1)に圧入される、ブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項2】
前記第2振動吸収部材(52)における、前記ブレーキ液圧ユニット(1)側の面が前記ブラケット(41)に当接する、請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項3】
前記第2振動吸収部材(52)における、前記ブラケット(41)に当接する面と反対側の面が、前記固定部材(49)の他端部に形成される下側円盤部(49d)に当接する、請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項4】
前記開口(41d)の縁部が、前記ブレーキ液圧ユニット(1)側へ立設する折り曲げ部(41e)を有し、前記折り曲げ部(41e)が、前記第1振動吸収部材(51)に形成された溝部に嵌入する、請求項1から3のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項5】
前記折り曲げ部(41e)が、円筒形状をなす、請求項4に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項6】
前記第1振動吸収部材(51)と前記第2振動吸収部材(52)は、互いに異なる硬度を持つ、請求項1から5のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【請求項7】
前記第1振動吸収部材(51)と前記第2振動吸収部材(52)は、互いに異なる材質により形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置(80)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル(自動二輪車又は自動三輪車)などの車両等の制動装置は、車両の搭乗者がブレーキレバーを操作すると、ブレーキ液が充填されているブレーキ液回路内の作動液の圧力が増加し、車輪に制動力を発生させることができる。また、制動操作の安全性を高めるために、制動力を調整するブレーキ液圧ユニットとして、ABS(Antilock Brake System)ユニットを採用することが知られている。
ブレーキ液圧ユニットは、ブレーキ液回路内の作動液の圧力を増減させ、車輪に発生する制動力を調整することが可能である。
このようなブレーキ液圧ユニットは、車両側に設けたブラケットに対して防振ゴム等を介した支持構造により取り付けられている(特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-370635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキ液圧ユニットの振動系が有する固有振動数に近い周波数の振動が車両側から与えられた場合、共振現象が発生しブレーキ液圧ユニットが大きく振動する。
従来のブレーキ液圧ユニットの支持構造では、単一硬度の防振ゴムがブレーキ液圧ユニットとブラケットとの間に介在し、ブレーキ液圧ユニットを支持している。
そして、共振現象が発生してしまうことを抑制するために、単一硬度の防振ゴムを設計変更したり、ブレーキ液圧ユニットの構造やその支持構造を設計変更したりして、対応する必要があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、車両側から与えられる振動の周波数がブレーキ液圧ユニットの振動系が有する固有振動数と重ならないように調整して、ブレーキ液圧ユニットの共振現象の発生を抑制することができるブレーキ液圧ユニットの支持構造を備えたブレーキ液圧制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明に係るブレーキ液圧制御装置は、
制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御するブレーキ液圧ユニット(1)と、前記ブレーキ液圧ユニット(1)を車両に取り付けるための支持構造(40)とを備えたブレーキ液圧制御装置(80)において、
前記支持構造(40)は、
固定部材(49)と、
ブラケット(41)と、
第1振動吸収部材(51)と、
第2振動吸収部材(52)と、を有し、
前記第1振動吸収部材(51)は、前記ブラケット(41)に形成された開口(41d)に固定され、
前記固定部材(49)は、前記第1振動吸収部材(51)と前記第2振動吸収部材(52)とを貫通し、一端部が前記ブレーキ液圧ユニット(1)に圧入される、
様構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキ液圧ユニットの振動系が有する固有振動数を避けるように硬度の異なる振動吸収部材を自在に組み合わせ、支持構造の動バネ定数を簡易に調整してブレーキ液圧ユニットの共振現象の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧ユニット1を含むブレーキ液圧制御システム100の概要構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧ユニット1を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧ユニット1の支持構造40を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧ユニット1の支持構造40を示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る第1支持部42及び第2支持部43の組み付け完了時の軸心Cを通る断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る第1支持部42及び第2支持部43の分解断面図である。
図7】第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を誤組付けした場合の例を示す図である。
図8】第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を誤組付けした場合の例を示す図である。
図9】第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を誤組付けした場合の例を示す図である。
図10】第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を誤組付けした場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るブレーキ液圧制御装置について、図面を用いて説明する。なお、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、モータサイクル以外の車両(例えば、四輪自動車、トラック等)に用いられてもよい。また、以下で説明する構成、動作などは、一例であり、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、そのような構成、動作などである場合に限定されない。例えば、本発明に係るブレーキ液圧ユニットは、ポンプ装置を有しなくてもよい。例えば、本発明に係るブレーキ液圧ユニットは、ABSとしての動作以外を行うものであってもよい。
また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化または省略されている。また、重複する説明については、適宜簡略化または省略されている。
【0010】
<ブレーキ液圧制御システム100の全体構成>
はじめに、ブレーキ液圧制御システム100の全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るブレーキ液圧ユニット1を含むブレーキ液圧制御システム100の概要構成図である。
【0011】
ブレーキ液圧制御システム100は、たとえばモータサイクルなどの車両に搭載され、モータサイクルの車輪に制動力を変化させるブレーキ液圧ユニット1を備えている。本実施の形態では、ブレーキ液圧制御システム100がモータサイクルに搭載されている場合を例に説明する。モータサイクルは、前輪20及び後輪30と、モータサイクルを運転するユーザー等が操作するハンドルレバー24及びフットペダル34とを備えている。このハンドルレバー24を操作すると前輪20の制動力が変化し、フットペダル34を操作すると後輪30の制動力が変化する。
【0012】
ブレーキ液圧制御システム100は、前輪20の制動力の発生に利用されるブレーキ液が流れる前輪液圧回路C1と、後輪30の制動力の発生に利用されるブレーキ液が流れる後輪液圧回路C2とを含む。前輪液圧回路C1及び後輪液圧回路C2は、後述するブレーキ液圧ユニット1内の内部流路4を含む。また、ブレーキ液には、各種のブレーキオイルを用いることができる。
【0013】
ブレーキ液圧制御システム100は、前輪20に制動力を発生させる機構等として次の構成を備えている。すなわち、ブレーキ液圧制御システム100は、前輪20に付設されるフロントブレーキパッド21と、フロントブレーキパッド21を作動させるフロントブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているフロントホイールシリンダ22と、フロントホイールシリンダ22に接続されたブレーキ液管23とを備えている。なお、フロントブレーキパッド21は、前輪20とともに回転するフローティングロータ(図示省略)を挟みこむように設けられている。そして、フロントブレーキパッド21は、フロントホイールシリンダ22内のフロントブレーキピストンに押されるとフローティングロータに当接して摩擦力が発生し、フローティングロータとともに回転する前輪20に制動力が発生する。
【0014】
ブレーキ液圧制御システム100は、ハンドルレバー24に付設される第1マスターシリンダ25と、ブレーキ液を貯留する第1リザーバ26と、第1マスターシリンダ25に接続されたブレーキ液管27とを備えている。なお、第1マスターシリンダ25には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。ハンドルレバー24が操作されると、第1マスターシリンダ25内のマスターシリンダピストンが動く。マスターシリンダピストンの位置によって、フロントブレーキピストンにかかるブレーキ液の圧力が変わるため、フロントブレーキパッド21がフローティングロータを挟み込む力が変わり、前輪20の制動力も変わる。
【0015】
ブレーキ液圧制御システム100は、後輪30に制動力を発生させる機構等として次の構成を備えている。すなわち、ブレーキ液圧制御システム100は、後輪30に付設されるリアブレーキパッド31と、リアブレーキパッド31を動かすリアブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているリアホイールシリンダ32と、リアホイールシリンダ32に接続されたブレーキ液管33とを備えている。なお、リアブレーキパッド31は、後輪30とともに回転するフローティングロータ(図示省略)を挟みこむように設けられている。そして、リアブレーキパッド31は、リアホイールシリンダ32内のリアブレーキピストンに押されるとフローティングロータに当接して摩擦力が発生し、フローティングロータとともに回転する後輪30に制動力が発生する。
【0016】
ブレーキ液圧制御システム100は、フットペダル34に付設される第2マスターシリンダ35と、ブレーキ液を貯留する第2リザーバ36と、第2マスターシリンダ35に接続されたブレーキ液管37とを備えている。なお、第2マスターシリンダ35には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。フットペダル34が操作されると、第2マスターシリンダ35内のマスターシリンダピストンが動く。マスターシリンダピストンの位置によって、リアブレーキピストンにかかるブレーキ液の圧力が変わるため、リアブレーキパッド31がフローティングロータを挟み込む力が変わり、後輪30の制動力も変わる。
【0017】
<ブレーキ液圧ユニット1の構成>
図2は、実施の形態1に係るブレーキ液圧ユニット1を示す分解斜視図である。
図1図2に示すように、ブレーキ液圧ユニット1は、たとえば、自動二輪車などの車両に組み込まれるものである。ブレーキ液圧ユニット1は、ブレーキ液が流れる内部流路4と、内部流路4内のブレーキ液を第1マスターシリンダ25および第2マスターシリンダ35側に搬送するのに用いられるポンプ装置2と、前輪液圧回路C1および後輪液圧回路C2に設けられた開閉自在の調整弁3と、を備えている。なお、調整弁3は、第1増圧弁3Aおよび第1減圧弁3Bと、第2増圧弁3Cおよび第2減圧弁3Dと、を含む。
【0018】
また、ブレーキ液圧ユニット1は、ブレーキ液管23などの対応する液管に接続される各種ポートPと、内部流路4を流れるブレーキ液の流量を規制する第1フロートリストリクタ5Aおよび第2フロートリストリクタ5Bと、ブレーキ液を貯留可能な第1アキュムレータ部6Aおよび第2アキュムレータ部6Bと、を備えている。なお、各種ポートPは、第1ポートP1、第2ポートP2、第3ポートP3および第4ポートP4を含む。
【0019】
さらに、ブレーキ液圧ユニット1は、調整弁3の開閉などを制御する電子制御基板を有する電子制御ユニット7と、フロントホイールシリンダ22の圧力を検出する第1圧力センサ8Aおよびリアホイールシリンダ32の圧力を検出する第2圧力センサ8Bなどを含む検出部8と、を備えている。
ブレーキ液圧ユニット1は、金属製の基体10に内部流路4とポンプ装置2と調整弁3と各種ポートPと第1フロートリストリクタ5Aおよび第2フロートリストリクタ5Bと第1アキュムレータ部6Aおよび第2アキュムレータ部6Bとを一体化させている。
【0020】
(内部流路4)
内部流路4は、基体10に形成され、前輪液圧回路C1の一部を構成する第1内部流路4A、第2内部流路4Bおよび第3内部流路4Cと、後輪液圧回路C2の一部を構成する第4内部流路4D、第5内部流路4Eおよび第6内部流路4Fと、を含む。
【0021】
第1内部流路4Aは、ポンプ装置2のブレーキ液の流出側と、第1増圧弁3Aと、第1ポートP1とに接続されている。また、第1内部流路4Aには、第1フロートリストリクタ5Aが設けられている。第2内部流路4Bは、第1増圧弁3Aと、第1減圧弁3Bと、第3ポートP3とに接続されている。また、第2内部流路4Bには、第1圧力センサ8Aが設けられている。第3内部流路4Cは、ポンプ装置2のブレーキ液の流入側と、第1減圧弁3Bとに接続されている。また、第3内部流路4Cには、第1アキュムレータ部6Aが設けられている。
【0022】
第4内部流路4Dは、ポンプ装置2のブレーキ液の流出側と、第2増圧弁3Cと、第2ポートP2とに接続されている。また、第4内部流路4Dには、第2フロートリストリクタ5Bが設けられている。第5内部流路4Eは、第2増圧弁3Cと、第2減圧弁3Dと、第4ポートP4とに接続されている。また、第5内部流路4Eには、第2圧力センサ8Bが設けられている。第6内部流路4Fは、ポンプ装置2のブレーキ液の流入側と、第2減圧弁3Dとに接続されている。また、第6内部流路4Fには、第2アキュムレータ部6Bが設けられている。
【0023】
(ポンプ装置2)
ポンプ装置2は、たとえばDCモータなどで構成することができる駆動機構2Aと、駆動機構2Aによって駆動力が与えられる2つのポンプエレメント2Bとを含む。駆動機構2Aは、固定子および回転子などを含み、回転数が電子制御ユニット7によって制御される。一方のポンプエレメント2Bは、前輪液圧回路C1内のブレーキ液の搬送に用いられる。また、一方のポンプエレメント2Bは、第3内部流路4C内のブレーキ液を第1内部流路4A側に搬送する。他方のポンプエレメント2Bは、後輪液圧回路C2内のブレーキ液の搬送に用いられる。また、他方のポンプエレメント2Bは、第6内部流路4F内のブレーキ液を第4内部流路4D側に搬送する。
【0024】
(調整弁3)
調整弁3は、内部流路4に設けられた弁である。調整弁3は、電子制御ユニット7によって開閉が制御される。調整弁3は、第1増圧弁3A、第1減圧弁3B、第2増圧弁3Cおよび第2減圧弁3Dを含む。調整弁3は、たとえば、ソレノイドを備えた電磁弁を用いて構成することができ、電子制御ユニット7によって通電が制御されて開閉状態が切り替えられる。
【0025】
第1増圧弁3Aは、一方が第1内部流路4Aに接続され、他方が第2内部流路4Bに接続されている。第1増圧弁3Aは、ABS作動時において、フロントホイールシリンダ22内のブレーキ液の圧力を増圧するときに開かれる弁である。すなわち、第1増圧弁3Aが開かれると、第1マスターシリンダ25および第1マスターシリンダ25に対応する一方のポンプエレメント2Bの作用によって第1内部流路4A側のブレーキ液が第2内部流路4B側に押し込まれる。その結果、フロントホイールシリンダ22の圧力が上昇し、フロントブレーキパッド21の開きが小さくなり、前輪20の制動力が上昇する。
【0026】
第1減圧弁3Bは、一方が第3内部流路4Cに接続され、他方が第2内部流路4Bに接続されている。第1減圧弁3Bは、ABS作動時において、フロントホイールシリンダ22内のブレーキ液の圧力を減圧するときに開かれる弁である。すなわち、第1減圧弁3Bが開かれると、一方のポンプエレメント2Bの作用によって、ブレーキ液管23および第2内部流路4B内のブレーキ液が第3内部流路4C側に引き込まれる。その結果、フロントホイールシリンダ22の圧力が低下し、フロントブレーキパッド21の開きが大きくなり、前輪20の制動力が低下する。
ABS作動時において、第1減圧弁3Bを開く場合には、第1増圧弁3Aを閉じ、第1増圧弁3Aを開く場合には、第1減圧弁3Bを閉じる。
【0027】
第2増圧弁3Cも、第1増圧弁3Aに対応する構成および機能を備えている。第2増圧弁3Cは、一方が第4内部流路4Dに接続され、他方が第5内部流路4Eに接続されている。第2増圧弁3Cは、ABS作動時において、リアホイールシリンダ32内のブレーキ液の圧力を増圧するときに開かれる弁である。すなわち、第2増圧弁3Cが開かれると、第2マスターシリンダ35および第2マスターシリンダ35に対応する他方のポンプエレメント2Bの作用によって第4内部流路4D側のブレーキ液が第5内部流路4E側に押し込まれる。その結果、リアホイールシリンダ32の圧力が上昇し、リアブレーキパッド31の開きが小さくなり、後輪30の制動力が上昇する。
【0028】
第2減圧弁3Dも、第1減圧弁3Bに対応する構成および機能を備えている。第2減圧弁3Dは、一方が第6内部流路4Fに接続され、他方が第5内部流路4Eに接続されている。第2減圧弁3Dは、ABS作動時において、リアホイールシリンダ32内のブレーキ液の圧力を減圧するときに開かれる弁である。すなわち、第2減圧弁3Dが開かれると、他方のポンプエレメント2Bの作用によって、ブレーキ液管33および第5内部流路4E内のブレーキ液が第6内部流路4F側に引き込まれる。その結果、リアホイールシリンダ32の圧力が低下し、リアブレーキパッド31の開きが大きくなり、後輪30の制動力が低下する。
ABS作動時において、第2減圧弁3Dを開く場合には、第2増圧弁3Cを閉じ、第2増圧弁3Cを開く場合には、第2減圧弁3Dを閉じる。
【0029】
(各種ポートP)
各種ポートPは、ハンドルレバー24などの駆動機構に対応する第1ポートP1と、フットペダル34などの駆動機構に対応する第2ポートP2と、フロントブレーキパッド21などの駆動機構に対応する第3ポートP3と、リアブレーキパッド31などの駆動機構に対応する第4ポートP4とを含む。第1ポートP1は、ブレーキ液管27と第1内部流路4Aとに接続されている。第2ポートP2は、ブレーキ液管37と第4内部流路4Dとに接続されている。第3ポートP3は、第2内部流路4Bとブレーキ液管23とに接続されている。第4ポートP4は、第5内部流路4Eとブレーキ液管33とに接続されている。
【0030】
(第1フロートリストリクタ5A及び第2フロートリストリクタ5B)
第1フロートリストリクタ5Aは、第1内部流路4Aのうち一方のポンプエレメント2Bのブレーキ液の流出側の部分に設けられている。第2フロートリストリクタ5Bは、第4内部流路4Dのうち他方のポンプエレメント2Bのブレーキ液の流出側の部分に設けられている。第1フロートリストリクタ5Aの作用により、ブレーキ液が、一方のポンプエレメント2B側から第1マスターシリンダ25側に流出し、第1マスターシリンダ25のブレーキ液の圧力が急激に上昇することを抑制することができる。第2フロートリストリクタ5Bも、第1フロートリストリクタ5Aに対応する作用を有し、第2マスターシリンダ35のブレーキ液の圧力が急激に上昇することを抑制することができる。
【0031】
(第1アキュムレータ部6A及び第2アキュムレータ部6B)
第1アキュムレータ部6Aは、第3内部流路4Cに設けられている。第1アキュムレータ部6Aは、たとえば前輪液圧回路C1のブレーキ液の液圧の保持などに用いられる。第2アキュムレータ部6Bは、第6内部流路4Fに設けられている。第2アキュムレータ部6Bは、後輪液圧回路C2のブレーキ液の液圧の保持などに用いられる。
【0032】
(電子制御ユニット7及び検出部8)
電子制御ユニット7は、検出部8からの信号を受けて、ポンプ装置2の駆動機構2Aの回転数および調整弁3の開閉などを制御するものである。電子制御ユニット7は、ABS作動時において、調整弁3の開閉を制御して、フロントホイールシリンダ22及びリアホイールシリンダ32内のブレーキ液圧を調整し、前輪20および後輪30がロックしてしまうことを回避している。
【0033】
<ブレーキ液圧ユニット1の支持構造40>
次に、ブレーキ液圧ユニット1の支持構造40について説明する。
図3は、実施の形態1に係るブレーキ液圧ユニット1の支持構造40を示す斜視図である。
図4は、実施の形態1に係るブレーキ液圧ユニット1の支持構造40を示す分解斜視図である。
ブレーキ液圧ユニット1は、図3に示すように、ブレーキ液圧ユニット1の支持構造40によって車両側ブラケット60、61に取付けられる。ブレーキ液圧ユニット1を支持構造40に組み付けた構成を本発明のブレーキ液圧制御装置80とする。
支持構造40は、板状部材で構成されたブラケット41と、固定部材49と、弾性を有する、第1振動吸収部材51及び第2振動吸収部材52等により構成された、第1支持部42及び第2支持部43とにより構成されている。
【0034】
<ブラケット41>
ブラケット41は、ブレーキ液圧ユニット1の基体10を支持する。
ブラケット41は、例えば鋼板等の平板部材を折り曲げて形成され、第1板状部41aと、第1板状部41aに略垂直に形成された第2板状部41bとにより大きく構成されている。
【0035】
第1板状部41aと第2板状部41bは、基体10における駆動機構2Aが取り付けられたモータ取付面部10aに対して、略垂直に構成された下面部10bと側面部10cとをそれぞれ支持している。
第1板状部41aは、第1支持部42を介して下面部10bを支持し、第2板状部41bは、第2支持部43を介して側面部10cを支持する。
【0036】
第1板状部41aには、図4に示すように第1支持部42を組み付けるための円形の第1開口41daが第1板状部41aの厚さ方向に貫通して形成されている。
また、第1板状部41aの一端には、第1板状部41aに対して略垂直に曲折された取付片41cが形成されている。取付片41cには、ブラケット41を車両側ブラケット60、61にボルト等で接続するための第1固定孔41fが、取付片41cの厚さ方向に貫通して形成されている。
【0037】
第2板状部41bには、第2支持部43を組み付けるための円形の第2開口41dbが第2板状部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。
さらに、第2板状部41bには、ブラケット41を車両側ブラケット60、61にボルト等で接続するための第2固定孔41gが第2板状部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。
【0038】
尚、第1支持部42及び第2支持部43は同一の構造であるため、以下の説明において、第1支持部42の第1開口41daと、第2支持部43の第2開口41dbとを共に、開口41dと称することがある。
【0039】
<第1支持部42及び第2支持部43>
図5は、本実施の形態に係る第1支持部42及び第2支持部43の組み付け完了時の軸心Cを通る断面図である。
図6は、本実施の形態に係る第1支持部42及び第2支持部43の分解断面図である。
図5及び図6を用いて第1支持部42の構成を説明する。
第2支持部43の構成は、第1支持部42の構成と同一のため説明を省略する。
【0040】
尚、以下に記載の第1支持部42及び第2支持部43において、説明の便宜上、図5及び図6に示すブレーキ液圧ユニット1の基体10側(紙面上側)を第1支持部42及び第2支持部43の上面側とし、その反対側(紙面下側)を第1支持部42及び第2支持部43の下面側として説明する。
【0041】
第1支持部42は、図5及び図6に示すように、第1振動吸収部材51と、第2振動吸収部材52と、固定部材49とを備えている。第1振動吸収部材51及び第2振動吸収部材52は、弾力性を有するゴムや樹脂、またはシリコン等で形成された、中央部に穴を有する円筒形状の振動吸収部材である。第1振動吸収部材51及び第2振動吸収部材52は、第1支持部42が組み上がった状態で、固定部材49により、固定部材49の下側端面に位置する下側円盤部49dとブレーキ液圧ユニット1の基体10との間に固定される。その際、第1振動吸収部材51は、ブレーキ液圧ユニット1と第2振動吸収部材52との間に配置され、かつ、ブラケット41の第1開口41daに固定されている。この時、第1支持部42の位置は、固定部材49の軸心Cがブレーキ液圧ユニット1の重心を通る位置とすることが支持構造40として望ましい。
【0042】
(第1振動吸収部材51)
第1振動吸収部材51は、軸心Cを中心とする、略円筒形状で形成されている。第1振動吸収部材51は、本体部51aと、本体部51aの下側において、径方向外側に形成される、外側円筒部51bと、本体部51aの下側において、径方向内側に形成される、内側円筒部51cとを備える。外側円筒部51bと内側円筒部51cとにより、本体部51aの下面には、円周状の溝が形成される。本実施形態においては、ブラケット41の第1開口41daの縁部が上側に折り曲げられて立設された折り曲げ部41eが形成されており、当該折り曲げ部41eが、外側円筒部51bと内側円筒部51cとにより形成された円周状の溝に嵌合する。また、第1振動吸収部材51は、軸心Cの方向に、固定部材49が挿通する、段付きの貫通孔を有する。当該段付きの貫通孔は、上側貫通孔51d及び下側貫通孔51eからなり、上側貫通孔51dの内径の方が下側貫通孔51eの内径よりも小さく形成されている。
【0043】
(第2振動吸収部材52)
第2振動吸収部材52は、第1振動吸収部材51とは異なる硬度を有し、軸心Cを中心とする、略円筒形状で形成されている。第2振動吸収部材52は、上面部に凹部52dを備え、第1支持部42の組付け時には、当該凹部に第1振動吸収部材51の内側円筒部51cが嵌入するようになっている。第2振動吸収部材52の外周部は、上側が、円筒形状である外側円筒形状部52c、下側が、下へ向かうほど外径が小さくなる外側円錐部52bとなっている。そして、第2振動吸収部材52の下端面52aの外径は、固定部材49の下側円盤部49dの外径に等しくなる様形成されている。また、第2振動吸収部材52は、軸心Cの方向に、固定部材49が挿通する、挿通孔52eを有する。
【0044】
(固定部材49)
固定部材49は、基体10の取付穴10dに圧入される上側円筒部49aと、上側円筒部の下側に位置し、上側円筒部49aよりも大径の第2円筒部49bと、第2円筒部49bの下側に位置し、第2円筒部49bよりも大径の第3円筒部49cと、第3円筒部49cの下側に位置し、第3円筒部49cよりも大径の下側円盤部49dとを備える。
【0045】
(第1支持部42及び第2支持部43の組付け)
本実施形態においては、固定部材49の第3円筒部49cの下側の部分に、若干直径の小さな領域を設け、当該領域に第2振動吸収部材52を嵌め込んでいる。この様な構成を採ることにより、第1支持部42を組付ける際に、先に第2振動吸収部材52を固定部材49に組付けておく(以下、これを第1サブアセンブリと称する)。また、本実施形態においては、第1振動吸収部材51をブラケット41の開口41dに組み付けておく(以下、これを第2サブアセンブリと称する)。そして、第2アセンブリを基体10に対し所定の位置に配置し、第2アセンブリの第1振動吸収部材51の上側貫通孔51d及び下側貫通孔51eに、第1サブアセンブリの固定部材49を挿通させ、固定部材49の上側円筒部49aを、基体10に形成した取付穴10dへ圧入する。この時、固定部材49の第2円筒部49bが第1振動吸収部材51の上側貫通孔51d内に位置し、また、固定部材49の第3円筒部49cが第1振動吸収部材51の下側貫通孔51e内に位置する。上述のように、第1アセンブリ及び第2アセンブリを先に作成しておくことにより、組付け作業が容易となる。また、本実施形態においては、第2振動吸収部材52の下端面の外径が、固定部材49の下側円盤部49dの外径に等しくなる様形成されているため、固定部材49の圧入力を、効果的に第2振動吸収部材52及び第1振動吸収部材51に伝えることが可能となる。
【0046】
尚、本発明によれば、仮に誤って第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を逆に配置してしまった場合、固定部材49を組付けることができない様になっている。具体的には、第2振動吸収部材52をブラケット41と基体10の間に配置し、第1振動吸収部材51をブラケット41の下側に配置した場合を図7に示す。この場合、固定部材49を挿通した際に、第1振動吸収部材51の上側貫通孔51d内に、固定部材49の第2円筒部49bが配置された段階で、それ以上固定部材49は上昇することができない。よって、固定部材49の上側円筒部49aが、基体10の取付穴10dまで届かず、換言すれば、固定部材49を、基体10の取付穴10dへ圧入することができない。すなわち、本発明は、第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52の誤組付けを防止する機能を備える。図8は、図7に対し、第2振動吸収部材52の上下を逆に配置した場合を示す。図9は、図7に対し、第1振動吸収部材51の上下を逆に配置した場合を示す。図10は、図9に対し、第2振動吸収部材52の上下を逆に配置した場合を示す。図7から図10のいずれの場合においても、固定部材49の上側円筒部49aを基体10の取付穴10dへ圧入することができない、すなわち、誤組付けができない構造となっている。
【0047】
以上、説明した様に、本発明によれば、異なる振動吸収部材を組み合わせることにより、ブレーキ液圧ユニットの振動系が有する固有振動数を避けることができる。また、第1支持部42及び第2支持部43の組付けに際し、第1アセンブリ及び第2アセンブリを先に作成することにより、組付け作業が容易となる。また、ブラケット41の折り曲げ部41eが、第1振動吸収部材51の外側円筒部51bと内側円筒部51cとにより形成された円周状の溝に嵌合することにより、第1支持部42及び第2支持部43が組み上がった後の安定性を向上させることができる。また、第2振動吸収部材52の下端面の外径が、固定部材49の下側円盤部49dの外径に等しくなる様形成されているため、固定部材49の圧入による固定力を、第2振動吸収部材52及び第1振動吸収部材51に対し、より効率的に伝えることができる。また、第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を逆に組み付けることができない様になっている。
【符号の説明】
【0048】
1:ブレーキ液圧ユニット、10:基体、10d:取付穴、40:支持構造、41:ブラケット、41d:開口、41e:折り曲げ部、49:固定部材、49d:下側円盤部、51:第1振動吸収部材、52:第2振動吸収部材、80:ブレーキ液圧制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10