(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156544
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】スプレー型の繊維処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/148 20060101AFI20221006BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20221006BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20221006BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20221006BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
D06M13/148
D06M13/17
D06M15/53
D06M13/224
D06M15/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060287
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 美和子
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 晋
(72)【発明者】
【氏名】小林 ひとみ
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA12
4L033BA14
4L033BA21
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】スプレー剤としての使用性に優れ、かつ、べたつき発生を抑制しつつ肌保湿機能を繊維製品に付与できる繊維処理剤を提供する。
【解決手段】(A)グリセリンと、(B)ポリエチレングリコール、イソプレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる1種以上とを配合し、繊維処理剤の総質量に対して、(A)成分の含量を20~50質量%、(B)成分の含量を5~20質量%とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー型の繊維処理剤組成物であって、
(A)グリセリンと、(B)ポリエチレングリコール、イソプレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる1種以上とを含み、
前記繊維処理剤組成物の総質量に対して、(A)成分の含量が20~50質量%であり、(B)成分の含量が5~20質量%であることを特徴とする、繊維処理剤組成物。
【請求項2】
(C)ノニオン界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が、ポリオキシエチレン硬化ひまし油である、請求項2に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項4】
(D)香料を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項5】
(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して30~45質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項6】
(B)成分が、数平均分子量が200~1000のポリエチレングリコールである、請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項7】
(B)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して7~15質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項8】
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が1~10である、請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー型の繊維処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレー型の繊維処理剤は、様々な製品が発売され、その市場は年々拡大している。スプレー型の繊維処理剤が訴求する機能としては、除菌、消臭、香り付けや、しわとり等が一般的であるが、着用時の涼感付与等の新しい機能を訴求する製品も登場している。
他方、化粧品分野では、肌の保湿を訴求した化粧品(保湿化粧品)が多数発売されている(特許文献1~3)。保湿化粧品に関しては、べたつきを抑制しつつ保湿効果を発揮させるための技術が存在する(特許文献1及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-6725号公報
【特許文献2】特開2008-266254号公報
【特許文献3】特開2000-256148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維製品への肌保湿機能付与という新しい価値を持つ繊維処理剤を開発するにあたりグリセリンを使用したところ、繊維製品へ肌保湿機能を付与できたものの、(1)処理された繊維製品でべたつきが発生し、更に(2)繊維製品のスプレーによる均一処理(均一な噴霧)が難しく使用性に劣るという課題が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を鋭意検討した結果、本発明者は、グリセリンとポリエチレングリコール及び/又はイソプレングリコールとを特定量で組み合わせると、べたつきの発生を抑制しつつ肌保湿機能を繊維製品に付与でき、更に、均一な噴霧も可能になることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔8〕に関するものである。
〔1〕スプレー型の繊維処理剤組成物であって、
(A)グリセリンと、(B)ポリエチレングリコール、イソプレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる1種以上とを含み、
前記繊維処理剤組成物の総質量に対して、(A)成分の含量が20~50質量%であり、(B)成分の含量が5~20質量%であることを特徴とする、繊維処理剤組成物。
〔2〕(C)ノニオン界面活性剤を更に含む、前記〔1〕に記載の繊維処理剤組成物。
〔3〕(C)成分が、ポリオキシエチレン硬化ひまし油である、前記〔2〕に記載の繊維処理剤組成物。
〔4〕(D)香料を更に含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔5〕(A)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して30~45質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔6〕(B)成分が、数平均分子量が200~1000のポリエチレングリコールである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔7〕(B)成分の含量が、繊維処理剤組成物の総質量に対して7~15質量%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
〔8〕(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)が1~10である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の繊維処理剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例に示すように、本発明の繊維処理剤組成物は、スプレー剤としての使用性に優れ、かつ、べたつき発生を抑制しつつ肌保湿機能を繊維製品へ付与できる。したがって、本発明は、従来製品にはない付加価値を持つスプレー型の繊維処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔(A)成分:グリセリン〕
(A)成分は、肌を保湿する機能(肌保湿性)を繊維製品へ付与するために配合する。
(A)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(A)成分の含量は、繊維処理剤組成物の総質量に対して20~50質量%、好ましくは30~45質量%、更に好ましくは35~45質量%である。(A)成分の含量が20質量%以上であると配合目的を達成でき、50質量%以下であると、処理された繊維製品におけるべたつき発生の抑制と均一な噴霧とを達成できる。
【0009】
〔(B)成分:ポリエチレングリコール、イソプレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上〕
(B)成分は、(A)成分を単独で使用したときに起こる前述の課題を解決するために配合する。
ポリエチレングリコール(PEG)は、繊維処理剤分野で公知のものを特に制限なく使用できる。PEGの数平均分子量は特に制限されないが、好ましくは200~4000、より好ましくは200~1000、更に好ましくは200~600である。この数平均分子量の範囲であると、処理された繊維製品におけるべたつき発生を更に抑制し、また、噴霧性を更に向上させることができる。
PEGの数平均分子量は、HPLC法に従い測定できる。
PEGは、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0010】
イソプレングリコール(IPG)(イソペンチルジオールとも称される)は、繊維処理剤に配合なものを特に制限なく使用できる。
IPGは、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0011】
ジプロピレングリコール(DPG)は、繊維処理剤に配合なものを特に制限なく使用できる。
DPGは、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0012】
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(B)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用(例えば、PEGとIPGの併用)してもよい。
(B)成分の含量は、繊維処理剤組成物の総質量に対して5~20質量%、好ましくは7~15質量%、更に好ましくは8~13質量%である。(B)成分の含量が5質量%以上であると、処理された繊維製品におけるべたつきの発生を抑制でき、20質量%以下であると均一な噴霧を達成できる。
【0013】
〔(A)成分と(B)成分との配合比率〕
(A)成分と(B)成分との質量比(A/B)は、好ましくは1~10、更に好ましくは2~6、特に好ましくは3~6である。前記の質量比範囲であると更に優れた保湿効果とべたつき発生抑制性とが得られる。
【0014】
〔任意成分〕
繊維処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、下記の任意成分を配合してもよい。
【0015】
〔(C)成分:ノニオン界面活性剤〕
(C)成分は、繊維処理剤組成物の安定性(具体的には、分散安定性)を向上させるために配合する。
ノニオン界面活性剤としては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できる。例としては、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノミリステート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジミリステート、ポリオキシエチレントリステアレート、ポリオキシエチレントリパルミテート、ポリオキシエチレントリミリステート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリルや、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。
(C)成分としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、なかでも、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数が20~100、好ましくは40~60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が更に好ましい。
【0016】
(C)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
(C)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.5~5質量%である。前記の含量範囲であるとより高い配合効果が得られる。
【0017】
〔(D)成分:香料〕
(D)成分は、繊維処理剤組成物自体の香り付け、及び/又は、同組成物による処理後の繊維製品の香り付けのために配合する。
(D)成分としては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できるが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
【0018】
(D)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用した香料組成物として使用してもよい。
(D)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~1質量%、更に好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0019】
〔(C)成分以外の安定化剤〕
安定化剤は、繊維処理剤組成物の安定性(具体的には、防腐性能)を向上させるために配合する。(C)成分以外の安定化剤としては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できる。例としては、安息香酸ナトリウム、クエン酸や、フェノキシエタノール等が挙げられる。
安定化剤は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
安定化剤は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
安定化剤の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.2~5質量%、更に好ましくは0.5~2質量%である。
【0020】
〔揮発性アルコール〕
揮発性アルコールは、繊維製品へ噴霧された後の乾燥性を向上させるために配合する。
揮発性アルコールとしては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できる。例としては、炭素数1~3(好ましくは1~2)のアルコールが挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。
揮発性アルコールは公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
揮発性アルコールは単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
揮発性アルコールの含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは1~20質量%、更に好ましくは5~10質量%である。
【0021】
〔消臭成分〕
消臭成分は、繊維製品へ消臭性を付与するために配合する。
消臭成分としては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できる。例としては、高度分岐環状デキストリン(例えば、グリコ栄養食品株式会社製 商品名:クラスターデキストリン))、メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ポリフェノールや、フラボノイドを含む天然物(緑茶エキス)などが挙げられる。
消臭成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
消臭成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
消臭成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1~3質量%、更に好ましくは0.1~1.5質量%である。
【0022】
〔抗菌成分〕
抗菌成分は、処理された繊維製品上での菌の増殖を抑制して、不快臭の発生を抑制するために配合する。
抗菌成分としては、繊維処理剤分野で公知の物質を特に制限なく使用できる。例としては、有機系防菌防黴剤や無機系防菌防黴剤等が挙げられる。有機系防菌防黴剤の例としては、アルコール系、フェノール系(例えば、イソプロピルメチルフェノール)、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物・エポキシ系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、糖質系、トロポロン系、有機金属系のものが挙げられる。無機系防菌防黴剤の例としては、金属酸化物や、銀系のものが挙げられる。
抗菌成分は、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
抗菌成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
抗菌成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.05~1質量%、更に好ましくは0.1~0.7質量%である。
【0023】
〔水〕
繊維処理剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては水道水、イオン交換水、純水や蒸留水等を使用できるが、イオン交換水が好ましい。
水の含量は特に限定されないが、繊維処理剤組成物の総質量に対して、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。含量が40質量%以上であると、使用性がより良好となる。
【0024】
〔その他の任意成分〕
前記の任意成分以外にも、繊維処理剤や化粧料へ配合可能な公知の成分を適宜配合できる。例としては、機能性成分(シリコーン(繊維製品の感触向上)、腋臭防止剤、抗にきび剤、美白剤、角質軟化剤等)、pH緩衝剤、紫外線吸収剤、有機溶剤、防腐剤、キレート剤、再汚染防止剤、高分子、防カビ剤、忌避剤、天然物等のエキス、分散剤や、酸化防止剤等が挙げられる。
【0025】
〔繊維処理剤組成物のpH〕
繊維処理剤組成物のpHは特に限定されないが、保存安定性の観点から、25℃におけるpHを、好ましくは4.5~7、更に好ましくは5~6の範囲へ調整する。
pHは、公知のpH調整剤(例えば、クエン酸等)の添加により調整できる。
pHは、pHメーター(例えば、Mettler Toledo社製 型番MP230)で測定できる。
【0026】
〔製造方法〕
製造方法に特に制限はなく、(A)成分と(B)成分とを混合することで繊維処理剤組成物を製造できる。
例えば、(C)成分及び(D)成分を水へ添加して混合し、更に(A)成分及び(B)成分を添加して混合し、必要により他の任意成分を添加して混合した後、pHを調整し、バランス量の水を添加することで、繊維処理剤組成物を製造できる。
【0027】
〔使用方法〕
繊維処理剤組成物は、従来のスプレー型の繊維処理剤と同様に使用できるが、噴霧機構を持つ容器(スプレー容器)から繊維製品へ噴霧して使用する方法が好ましい。
スプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧型又は蓄圧型)や、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。トリガースプレー容器の例は、特開平9-268473号公報、特開平9-256272号公報や、特開平10-76196号公報等に記載されている。ディスペンサースプレー容器の例は、特開平9-256272号公報等に記載されている。
繊維処理剤組成物は、噴霧機構を持たないプラスチック製容器(ボトル容器や詰替え用のスタンディングパウチ等)に収納されていてもよい。スタンディングパウチの例は、特開2000-72181号公報等に記載されている。スタンディングパウチは、繊維処理剤組成物の保存安定性の観点から、二層構造(内層:100~250μmの線状低密度ポリエチレン。外層:15~30μmの延伸ナイロン)又は三層構造(内層:100~250μmの線状低密度ポリエチレン。中間層:15μmの延伸ナイロン。外層:15μmの延伸ナイロン)を有することが好ましい。
【0028】
処理される繊維製品の種類は特に限定されない。繊維製品の例としては、Yシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、肌着、インナー(機能性インナーを含む)、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、ストッキング、タイツ、ジャケット、コート、ニット、ジーンズ、パジャマ、クッション、座布団、ソファ、枕カバー、シーツ、ベッドパッド、枕、布団、ベッドカバー、毛布、マットレス、布マスクや、靴等が挙げられる。なかでも、肌に直接触れる肌着やインナー類では繊維処理剤組成物の効果が顕著に発現する。
繊維製品の素材も特に限定されない。素材の例としては、天然繊維(綿、ウール、麻等)、合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル等)、半合成繊維(アセテート等)、再生繊維(レーヨン、テンセル、ポリノジック等)、これらの混紡品、混織品や、混編品等が挙げられる。
【実施例0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量(%)はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0030】
〔(A)成分〕
下記のA-1を使用した。
A-1:グリセリン(商品名:化粧品用グリセリン(85質量%)。阪本薬品工業(株)製)
【0031】
〔(B)成分〕
下記のB-1~B-7を使用した。B-1~B-4のPEGの数平均分子量は、HPLC法に従い測定した値である。
B-1:数平均分子量が200のPEG(商品名:PEG-200。三洋化成工業(株)製)
B-2:数平均分子量が400のPEG(商品名:PEG-400。三洋化成工業(株)製)
B-3:数平均分子量が600のPEG(商品名:PEG-600。三洋化成工業(株)製)
B-4:数平均分子量が1000のPEG(商品名:PEG-1000。三洋化成工業(株)製)
B-5:イソプレングリコール((株)クラレ製)
B-6:ジプロピレングリコール(旭硝子(株)製)
B-7:1,3-ブチレングリコール((株)ダイセル製)(比較例で使用)
【0032】
〔(C)成分〕
下記のC-1~C-2を使用した。
C-1:EOの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:ブラウノンRCW-40。青木油脂(株)製)
C-2:EOの平均付加モル数が60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:ブラウノンRCW-60。青木油脂(株)製)
【0033】
〔(D)成分:香料〕
下記表に示された組成を有する香料組成物D-1~D-7を使用した。表中の各香料成分の数値は、香料組成物の総質量に対する質量%である。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
〔その他の成分〕
下記の共通成分A~Bを使用した。表中の含量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する値である。
【0042】
【0043】
【0044】
〔液体繊維処理剤組成物の調製方法〕
後記の表1に示す組成を有する繊維処理剤組成物を調製した。表1中、各成分の数値の単位(%)は、繊維処理剤組成物の総質量に対する質量%である。
表1中の「A/B比」は、(A)成分と(B)成分との質量比を示す。
【0045】
繊維処理剤組成物を、次の手順により調製した。
(C)成分及び(D)成分をイオン交換水10gへ添加して混合し、更に(A)成分及び(B)成分を添加して均一になるまで混合した。得られた混合液へ共通成分を添加して混合してpH5.0(25℃)に調整し、更に全体質量が100gとなるようにイオン交換水を添加混合して繊維処理剤組成物を得た。
【0046】
繊維処理剤組成物の評価
繊維処理剤組成物を、「肌保湿機能の繊維製品への付与」、「処理された繊維製品のべたつき」及び「噴霧性状(均一な噴霧のしやすさ)」の観点で評価した。
【0047】
1.肌保湿機能の繊維製品への付与
肌の保湿性を、その水分量の変化を指標として評価した。
はじめに、評価者の「肌水分量(初期)」を下記手順に従い測定した。被験者の前腕部を洗浄剤で洗浄し、流水ですすいだ後、タオルで十分に水分を吸い取った。その後、恒温室(20℃、40%RH)内で10分間安静にした後、コルネオメーター((株)インテグラル製)で肌水分量を測定した。
次に、繊維処理剤で処理した繊維製品を6時間適用した後の評価者の「肌水分量(6時間後)」を下記手順に従い測定した。化学繊維(ポリエステル38%、アクリル32%、レーヨン21%、ポリウレタン9%)製のヒートテックインナー((株)ユニクロ製)から試験布(10cm×10cm)を調製した。市販品(アロマリッチ香りミスト。ライオン(株)製)のディスペンサーボトル(噴霧機構付)を用いて、繊維処理剤組成物0.2gを試験布へ均一に噴霧し、30分間以上乾燥させて、処理済試験布を調製した。処理済試験布を評価者の前腕部に貼付して6時間経過後、貼付部の肌水分量を測定した。測定は、恒温室(20℃、40%RH)内で10分間安静にした後、コルネオメーター((株)インテグラル製)を用いて行った。
前記の手順を評価者4名の左右の腕にて実施した。測定値を下記式に当てはめて肌の水分変化率(%)を算出した。
水分変化率(%)=肌水分量(6時間後)/肌水分量(初期)×100
評価者4名の水分変化率(%)の平均値を下記の判定基準へ適用して、「肌保湿機能を繊維製品へ付与する性能」の評価とした。結果を、表1の「保湿性」欄に示す。◎及び○を合格とした。
<判定基準>
◎:平均値が130%以上
○:平均値が110%以上130%未満
×:平均値が110%未満
【0048】
2.処理された繊維製品のべたつき
前記1に記載の手順に従い試験布(10cm×10cm。1.4g)を調製した。市販品(アロマリッチ香りミスト。ライオン(株)製)のディスペンサーボトル(噴霧機構付)を用いて、繊維処理剤組成物を試験布へ噴霧(噴霧量:15%o.w.f)して、処理済試験布を調製した。
噴霧した繊維処理剤組成物が乾燥する前に処理済試験布を手で触り、手になじませたときに評価者が感じるべたつき感を、下記の基準に従い官能評価した。評価者4名の平均点(小数点第1位まで算出)を、下記の判定基準に適用して、「処理された繊維製品のべたつき」の評価とした。結果を、表1の「べたつき」欄に示す。◎及び○を合格とした。
<評価基準>
5点:非常にべたつきがある
4点:かなりべたつきがある
3点:べたつきがある
2点:ややべたつきがある
1点:べたつきがない
<判定基準>
◎:平均点が2.0点未満
○:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が3.0点以上
【0049】
3.繊維処理剤組成物の噴霧性状
市販品(アロマリッチ香りミスト。ライオン(株)製)のディスペンサーボトル(噴霧機構付)を用いて、繊維処理剤組成物を、カラーブロード(青色。20cm×20cm)の中心部に1回全引き噴霧した。噴霧は、カラーブロードから20cm離れた距離から行った。
均一な噴霧という観点からの噴霧性状を、下記の基準に従い評価した。評価者4名の平均点(小数点第1位まで算出)を、下記の判定基準に適用して、「繊維処理剤組成物の噴霧性状」の評価とした。結果を、表1の「噴霧性状」欄に示す。◎及び○を合格とした。
<評価基準>
2点:均一に噴霧できる
1点:やや均一に噴霧できる
0点:均一に噴霧できない
<判定基準>
◎:平均点が2.0点○:平均点が1.0点以上2.0点未満
×:平均点が1.0点未満
【0050】
4.その他の評価