(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156548
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】農業用送風機
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20221006BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20221006BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20221006BHJP
【FI】
A01G9/24 G
A01G7/02
A01G9/02 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060292
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】久野 幸男
(72)【発明者】
【氏名】上野 武司
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
2B327
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B029PA02
2B029PA05
2B327ND01
2B327UB21
2B327VA20
(57)【要約】
【課題】比較的小型で、温室内のプランターに植栽された植物の生育を促進することができ、省エネルギーを図ることができる農業用送風機を提供する。
【解決手段】農業用送風機10は、温室内に配置された箱体状のプランター4に植栽された植物Pに対して空気流を供給するための電動ファン1と、プランター4を形成する周壁5の上縁部5aに電動ファン1を着脱可能に係止するためのクリップ2と、電動ファン1に給電するための電池3と、を備え、農業用送風機10は、プランター4の周壁5の上縁部5aをクリップ2で挟持することにより、プランター4に植栽された植物Pの葉Lの裏側に向かって空気流を送風可能な位置に係止されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内のプランターに植栽された植物に対して空気流を供給する電動ファンを備えた小型の農業用送風機であって、
前記プランターに植栽された植物の葉の裏側に向かって空気流を送風可能な位置に前記電動ファンが着脱可能である農業用送風機。
【請求項2】
前記プランターの周縁に沿って設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記電動ファンを移動させる移動手段と、を備えた請求項1記載の農業用送風機。
【請求項3】
前記電動ファンによる空気流の送風方向を変更可能な首振り機構を設けた請求項1または2記載の農業用送風機。
【請求項4】
前記プランターにて植栽される植物の周囲の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーと、前記二酸化炭素センサーの測定値に応じて前記電動ファンの送風量若しくは前記電動ファンの位置の少なくとも一方を設定する制御手段を設けた請求項1~3の何れかの項に記載の農業用送風機。
【請求項5】
前記電動ファンに給電する太陽光発電パネルを設けた請求項1~4の何れかの項に記載の農業用送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内のプランターに植栽された植物に空気流を供給するために使用する比較的小型の農業用送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
温室内で栽培される植物に空気流を供給するために使用される農業用送風機については、従来、多種多様な機器が提案されているが、本発明に関連する機能を有するものとして、例えば、特許文献1に記載された「移動送風機」あるいは特許文献2に記載された「作物栽培のための気動制御及び空気源装置」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「移動送風機」は、モータと該モータによって駆動される回転軸とを備えた基台に、送風機を取り付けると共に、基台の回転軸に、床面走行用の車輪と空中懸架材に組み合う空中移動用のプーリーとを取り付けたものである。
【0004】
特許文献2に記載された「作物栽培のための気動制御及び空気源装置」は、作物栽培のための気流速度保持装置または空気源装置の少なくとも一方を固定的に設置して気動制御を行うプロセスにより、植栽されたエリアに、光合成プロセスから生じた二酸化炭素と生成物を分配、供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5-85245号公報
【特許文献2】特表2020-513240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「移動送風機」は、室内を移動して、温室ハウスや乾燥室などの室内の空気を均一に循環させることにより、室内環境の調整を図ることができるが、サイズが比較的大型であり、コンパクト化することが困難である。
【0007】
特許文献2に記載された「作物栽培のための気動制御および空気源装置」は、植栽された作物の上方から下方に亘って二酸化炭素などを供給できるが、連続運転を前提とするものであるため、エネルギーロスが多く、省エネルギーを図ることが極めて困難である。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、比較的小型で、温室内のプランターに植栽された植物の生育を促進することができ、省エネルギーを図ることができる農業用送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る農業用送風機は、温室内のプランターに植栽された植物に対して空気流を供給する電動ファンを備えた小型の農業用送風機であって、
前記プランターに植栽された植物の葉の裏側に向かって空気流を送風可能な位置に前記電動ファンが着脱可能であることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、植物の光合成により生成され、植物の葉の裏側に滞留する酸素が、葉の裏側に空気流を当てることによって除去され、別途温室内に供給されている二酸化炭素を効率良く葉の裏側に供給することができるので、植物の光合成が促進され、植物の生育効率を向上させることができる。
【0011】
前記農業用送風機においては、前記プランターの周縁に沿って設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記電動ファンを移動させる移動手段と、を備えたものとすることができる。
【0012】
このような構成とすれば、プランターにて植栽されている植物に対し、電動ファンの空気流が順次、満遍なく供給されるので、安定した植物の生育を実現することができる。移動手段としては、ガイドレール側に設けたラックギアと、電動ファン側に設けたピニオンギアとの組み合わせ、あるいは、ガイドレールに沿って走行可能な車輪を電動ファン側に設けるなどが採用可能である。
【0013】
前記農業用送風機においては、前記電動ファンによる空気流の送風方向を変更可能な首振り機構を設けることができる。
【0014】
このような構成とすれば、水平方向に首振りすることによりプランターに植栽された植物全体に空気流を送ることができ、垂直方向に首振りすることにより植物の高さ方向全体に亘って空気流を送ることができる。
【0015】
前記農業用送風機においては、前記プランターにて植栽される植物の周囲の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサーと、前記二酸化炭素センサーの測定値に応じて前記電動ファンの送風量及び前記電動ファンの位置を設定する制御手段を設けることができる。
【0016】
このような構成とすれば、二酸化炭素センサーが検知した二酸化炭素濃度(特に葉の裏側付近の濃度)が規定値以下となった場合に、電動ファンの運転を開始したり、二酸化炭素濃度に応じて電動ファンの送風量を増減させたりすることができ、並びに、二酸化炭素濃度が規定値以下となった場所へ電動ファンを移動させて送風することができるので、植物付近の二酸化炭素濃度が一定となり、植物の生育の安定化を図ることができる。
【0017】
前記農業用送風機においては、前記電動ファンに給電する太陽光発電パネルを設けることができる。
【0018】
このような構成とすれば、自然エネルギーを利用することにより、省エネルギーを図ることができ、自然環境への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、比較的小型で、温室内のプランターに植栽された植物の生育を促進することができ、省エネルギーを図ることができる農業用送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態である農業用送風機の使用状態を示す一部省略斜視図である。
【
図2】
図1中の矢線A方向から見た一部省略側面図である。
【
図3】
図1中の矢線B方向から見た一部省略平面図である。
【
図4】その他の実施形態である農業用送風機の使用状態を示す一部省略側面図である。
【
図5】その他の実施形態である農業用送風機の使用状態を示す一部省略側面図である。
【
図6】その他の実施形態である農業用送風機の使用状態を示す一部省略斜視図である。
【
図7】
図6中の矢線C方向から見た農業用送風機の一部省略側面図である。
【
図8】
図7中のD-D線における一部省略断面図である。
【
図9】その他の実施形態である農業用送風機の使用状態を示す一部省略斜視図である。
【
図10】
図9中の矢線E方向から見た農業用送風機の一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図11に基づいて、本発明の実施形態である農業用送風機10,20,30,40,50について説明する。
【0022】
初めに、
図1~
図3に基づいて、本発明の実施形態である農業用送風機10について説明する。
図1に示すように、小型の農業用送風機10は、二酸化炭素供給手段を備えた温室(図示せず)の内部に配置された箱体状のプランター4に植栽された植物Pに対して空気流を供給するための電動ファン1と、プランター4を形成する周壁5の上縁部5aに電動ファン1を着脱可能に係止するためのクリップ2と、電動ファン1に給電するための電池3と、を備えている。農業用送風機10は、プランター4の周壁5の上縁部5aをクリップ2で挟持することにより、上縁部5aのどの位置にも係止可能であるが、本実施形態ではプランター4に植栽された植物Pの葉Lの裏側に向かって空気流を送風可能な位置に係止されている。
【0023】
農業用送風機10は、電動ファン1による空気流の送風方向を、
図2に示すように垂直方向に変更させたり、
図3に示すように水平方向に変更させたりする首振り機構を備えている。電動ファン1の羽根1aの回転直径は限定しないので、プランター4や植物Pのサイズ、形状などに基づいて設定することができるが、電動ファン1は比較的小型であるため、電動ファン1の占有スペースを最小限に抑制しながら、温室内のプランター4に植栽された植物Pに対して適切な風量の空気流を供給することができる。
【0024】
図1に示すように、プランター4の周壁5の上縁部5aに配置された農業用送風機10を稼働させると、植物Pの光合成で生成され、植物Pの葉Lの裏側に滞留する酸素が、電動ファン1の回転で生じた空気流を葉Lの裏側付近に当てることによって除去され、別途温室内に供給されている二酸化炭素を効率良く葉Lの裏側に供給することができるので、植物Pの光合成が促進され、植物Pの生育効率を向上させることができる。
【0025】
また、二酸化炭素制御を行うことなく、電動ファン1を間欠運転すること(電動ファン1を定期的若しくは周期的にON・OFF運転すること)も可能であり、電動ファン1の回転数を周期的に変化させることにより、風量を一定リズムで増減させ、気流に揺らぎを与えることも可能である。
【0026】
また、
図1に示す農業用送風機10は、電動ファン1による空気流の送風方向を、水平方向並びに垂直方向に変更させる首振り機構を備えているので、
図2に示すように、電動ファン1を垂直方向に首振りすることにより植物Pの高さ方向全体に亘って空気流を送ることが可能であり、
図3に示すように、電動ファン1を水平方向に首振りすることによりプランター4に植栽された植物P全体に空気流を送ることができる。
【0027】
なお、電動ファン1の首振り方向は、前述した水平方向並びに垂直方向のほか、これらを組み合わせた三次元方向の首振り機構を設けることもできる。また、これらの首振り機構に、前述した、電動ファン1の間欠回転機構や電動ファン1の回転数変化機構などを組み合わせて運転することも可能である。
【0028】
次に、
図4~
図11に基づいて、本発明のその他の実施形態である農業用送風機20,30,40,50について説明する。なお、
図4~
図11に示す農業用送風機20,30,40,50において、
図1~
図3に示す農業用送風機10と共通する部分については
図1~
図3中の符号と同符号を付して説明を省略することがある。
【0029】
図4に示す農業用送風機20は、電動ファン1に給電する太陽光発電パネル21を備えている。太陽光発電パネル21よって得られる電気(自然エネルギー)を利用することにより、省エネルギーを図ることができ、自然環境への影響を抑制することができる。また、植物Pの光合成が行われる時間帯と、太陽光発電パネル21の発電作用が生じる時間帯とは重なり合っているので、光合成が行われる時間帯に電動ファン1を作動させるような使い方をすることも可能である。
【0030】
次に、
図5に示す農業用送風機30は、プランター4にて植栽される植物Pの周囲の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素センサー31と、二酸化炭素センサー31の測定値に応じて電動ファン1のON・OFF操作及び電動ファン1の送風量を増減する制御手段(図示せず)と、を備えている。
【0031】
図5に示す農業用送風機30においては、二酸化炭素センサー31が検知した二酸化炭素濃度(特に植物Pの葉Lの裏側付近の濃度)が規定値以下となった場合に、電動ファン1の運転を開始したり、二酸化炭素濃度に応じて電動ファン1の送風量を増減させたりすることができるので、植物P付近の二酸化炭素濃度が一定となり、植物Pの生育の安定化を図ることができる。
【0032】
図5中には図示していないが、農業用送風機30において、二酸化炭素センサー31の測定値に応じて電動ファン1の位置を設定する制御手段を設ければ、二酸化炭素センサー31が検知した二酸化炭素濃度が規定値以下となった場所へ電動ファン1を移動させて送風することが可能となるので、植物P付近に安定して二酸化炭素を供給することができ、植物Pの生育の安定化を図ることができる。
【0033】
次に、
図6~
図8に基づいて農業用送風機40について説明する。
図6に示すように、農業用送風機40においては、プランター4の周縁(周壁5の上縁部5a)の長手方向に沿って断面凹溝状のガイドレール41が配置され、ガイドレール41の内部に電動ファン1及び電池3などを備えた送風ユニット42が収容されている。また、
図7,
図8に示すように、送風ユニット42の下方にはガイドレール41の底部41a上に沿って転動可能な複数の車輪43が取り付けられている。
【0034】
図6に示すように、農業用送風機40においては、送風ユニット42がガイドレール41の長手方向に沿って移動可能であり、ガイドレール41上の任意の位置に設置可能であるため、植物Pの生育状態などに応じて送風ユニット42の設置場所を変更することができる。
【0035】
なお、図示していないが、車輪43を回転駆動するモータと、送風ユニット42の往復移動範囲をガイドレール41の長さの範囲内に限定する制御手段などを設ければ、送風ユニット42をガイドレール41の長手方向に沿って自動的に往復移動させながら植物Pに向かって送風することも可能となる。このような構成とすれば、プランター4にて植栽されている植物Pに対し、電動ファン1の空気流が順次、満遍なく供給されるので、安定した植物Pの生育を実現することができる。
【0036】
次に、
図9~
図11に基づいて農業用送風機50について説明する。
図9に示すように、農業用送風機50においては、プランター4の周縁(周壁5の上縁部5a)の長手方向に沿って断面凹溝状のガイドレール51が配置され、ガイドレール51内の側壁部51a,51aの底部51b寄りの部分には一対のラックギア53が設けられ、ガイドレール51内のラックギア53上に、電動ファン1及び電池3などを備えた送風ユニット52が配置されている。また、
図10,
図11に示すように、送風ユニット52の下方にはラックギア53の長手方向に沿って走行可能な複数のピニオンギア54が取り付けられている。ピニオンギア54は送風ユニット52に内蔵されたモータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0037】
図9に示すように、農業用送風機50においては、送風ユニット52がガイドレール51の長手方向に沿って移動可能であるため、プランター4にて植栽されている植物Pに対し、電動ファン1の空気流が順次、満遍なく供給され、安定した植物Pの生育を実現することができる。
【0038】
なお、
図9中には図示していないが、
図5中に示す二酸化炭素センサー31と、二酸化炭素センサー31の測定値に応じてピニオンギア54の回転方向及び回転時間(回転量)を設定する制御手段を設ければ、二酸化炭素センサー31が検知した二酸化炭素濃度が規定値以下となった場所へ送風ユニット52を自動的に移動させて電動ファン1から送風することが可能となるので、植物P付近の二酸化炭素濃度を一定化させ、植物Pの生育の安定化を図ることができる。
【0039】
なお、
図1~
図11に基づいて説明した農業用送風機10,20,30,40,50は、本発明に係る農業用送風機を例示するものであり、本発明に係る農業用送風機は前述した農業用送風機10,20,30,40,50に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る農業用送風機は、温室内のプランターにおいて栽培されている様々な植物の育成促進のための農業用機材として、農業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電動ファン
1a 羽根
2 クリップ
3 電池
4 プランター
5 周壁
5a 上縁部
10,20,30,40,50 農業用送風機
21 太陽光発電パネル
31 二酸化炭素センサー
41,51 ガイドレール
41a,51b 底部
42,52 送風ユニット
43 車輪
51a 側壁部
53 ラックギア
54 ピニオンギア