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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156549
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63J 2/02 20060101AFI20221006BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B63J2/02
F24F7/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060293
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BE08
(57)【要約】
【課題】区画内の機器を浸水させることなく区画内及び区画外において作業者がアンモニアに接触することを抑制できる船舶を提供する。
【解決手段】アンモニア関連機器が収容された区画を有する船体と、前記区画にそれぞれ連通する第一開口及び第二開口を有するダクトと、前記ダクトの前記第一開口から前記第二開口に向かって送風する循環用ファンと、前記ダクトの中途に設けられて、前記循環用ファンによって送風される前記区画の内部の空気に含まれるアンモニアを除去可能なアンモニア除去部と、を備える船舶。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア関連機器が収容された区画と、
前記区画にそれぞれ連通する第一開口及び第二開口を有するダクトと、
前記ダクトの前記第一開口から前記第二開口に向かって送風する循環用ファンと、
前記ダクトの中途に設けられて、前記循環用ファンによって送風される前記区画の内部の空気に含まれるアンモニアを除去可能なアンモニア除去部と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記ダクトは、前記区画の外部に設けられている請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記アンモニア除去部は、
前記アンモニアに水を噴霧するスクラバと、
前記アンモニアが溶解した前記水を排出する排出ラインと、
を有する請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記アンモニア除去部は、前記アンモニアを分解する触媒を有する請求項1または2に記載の船舶。
【請求項5】
前記区画の内部及び前記ダクトの内部の少なくとも一方の前記空気のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサと、
前記区画の外部の空気を内部へ給気する給気ダンパと、
前記ダクトにおける前記アンモニア除去部よりも前記空気の流れ方向下流側に設けられて、前記空気を大気へ放出する大気開放部と、
をさらに備える請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記第一開口に接続され、前記第一開口から前記区画内に延びて該区画の内部に開口する吸込ダクトをさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
国際的な脱炭素燃料に関する機運が高まってきており、石炭火力発電所でのアンモニア混焼ボイラー導入等が検討されている。船舶においても、主機の燃料としてアンモニアを用いることが検討されている。発電所向け燃料としてのアンモニアを運搬する場合や、主機の燃料としてアンモニアを用いる場合に、アンモニアを取扱う機器を収容する機器室などの区画で、アンモニアの漏洩が生じる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、アンモニアを冷媒として使用する機器が収容されている区画において、突発的な事象により機器からアンモニアが漏洩した場合に、この区画内で気化したアンモニアが区画外に漏出することを防止する技術が開示されている。
この特許文献1では、区画内に散水すると機器が浸水してしまうため、区画内に連通する密閉されたダクトを設けて、このダクト内で水を散布している。これにより、ダクト内においてアンモニアが水に吸収されて区画内が負圧になり、区画外へのアンモニアの漏出が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4356939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、区画外へのアンモニアの漏出が防止されるものの、区画内にはアンモニアが残留するため、作業者がアンモニアに接触してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、区画内の機器を浸水させることなく区画内及び区画外において作業者がアンモニアに接触することを抑制できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、アンモニア関連機器が収容された区画と、前記区画にそれぞれ連通する第一開口及び第二開口を有するダクトと、前記ダクトの前記第一開口から前記第二開口に向かって送風する循環用ファンと、前記ダクトの中途に設けられて、前記循環用ファンによって送風される前記区画の内部の空気に含まれるアンモニアを除去可能なアンモニア除去部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、区画内の機器を浸水させることなく区画内及び区画外において作業者がアンモニアに接触することを抑制できる船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る船舶の区画内のアンモニアの除去に係る構成を示す図である。
図3】本開示の第二実施形態に係る船舶の区画内のアンモニアの除去に係る構成を示す図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る船舶の区画内のアンモニアの除去に係る構成において、各種ダンパの開閉状態を変更した時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
(船舶)
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。
図1図2に示すように、本実施形態の船舶は、アンモニアを貨物として、または燃料として保有する船舶1であり、船体2と、上部構造4と、主機8と、燃料タンク10と、配管系統20と、区画30と、ダクト50と、循環用ファン60と、アンモニア除去部48と、アンモニアセンサS1と、給気ダンパ31と、排気ダンパ32と、吸込ダクト33と、を備えている。
【0011】
(船体)
図1に示すように、本実施形態の船体2は、舷側5A、5Bと、船底6と、上甲板7と、を有している。舷側5A、5Bは、左右の舷側5A、5B及び舷側5A、5Bをそれぞれ形成する一対の舷側5A、5B外板を有している。船底6は、これら舷側5A、5Bを接続する二重底の船底6外板を有している。上甲板7は、一対の舷側5A、5B外板の上下方向Dvの上方側端部にわたって設けられている。本実施形態における船首尾方向FAとは、船体2の船尾3bから船首3aにかけて延びる方向である。即ち、船首尾方向FAは、船舶1の航行方向(進行方向)である。
【0012】
(上部構造)
上部構造4は、上甲板7上に設けられている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。本実施形態の船舶1においては、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首3a側に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0013】
(燃料タンク)
燃料タンク10は、主機8用の燃料としてのアンモニアを内部に貯留している。本実施形態の燃料タンク10は、上部構造4よりも船首尾方向FAにおける船尾3b側の上甲板7上に設けられている。
【0014】
(主機)
主機8は、少なくとも燃料タンク10に貯留されたアンモニアを燃料として船舶1を推進させる。本実施形態の主機8は、アンモニアを燃料とした内燃機関であって、例えば、上甲板7よりも下の階層に設けられた機関室(図示せず)に設置されている。
【0015】
(配管系統)
配管系統20は、主機8と燃料タンク10とを接続している。配管系統20は、燃料としてのアンモニアを少なくとも燃料タンク10から主機8に流通させることが可能となっている。
【0016】
(区画)
区画30は、船体2の上甲板7上に設けられている。区画30は、アンモニア関連機器を収容している。本実施形態の区画30は、配管系統20における燃料タンク10と主機8との間に介在している。上述した配管系統20は、この区画30を経由して燃料としてのアンモニアを流通させている。本実施形態で例示する区画30は、船舶1のアンモニア燃料供給装置室(アンモニア燃料調圧弁室を含む)であって、燃料タンク10から主機8へとアンモニアを圧送するポンプや、主機8へ送られるアンモニアを加熱して気化させるためのヒーター、電動弁等、アンモニアを取扱うアンモニア燃料機器(図示無し)が設置されている。
なお、アンモニア関連機器は、アンモニア燃料機器に限られない。さらに、アンモニア関連機器は、アンモニアを取扱う機器であればよく、上記ポンプ、ヒーター、及び電動弁に限られない。さらに、区画30は、アンモニア関連機器として、貨物としてのアンモニアを取り扱うアンモニア貨物機器を収容してもよい。
【0017】
(ダクト)
図2は、区画30内のアンモニアの除去に係る構成を示した図である。
図2に示すように、ダクト50は、区画30にそれぞれ連通する第一開口50a及び第二開口50bを有している。本実施形態のダクト50は、第一開口50a及び第二開口50bを繋ぐ流路を形成している。本実施形態のダクト50は、区画30の外部に設けられており、第一開口50aと第二開口50bとが形成されたダクト50の両端は、それぞれ区画30の壁に接続されている。このダクト50は、例えば、第一開口50aから流入した区画30内の空気を該第二開口50bからダクト50内部に戻すことが可能に形成されている。なお、本実施形態のダクト50は、第一開口50a及び第二開口50b以外から空気が流出しないように構成されている。
【0018】
(循環用ファン)
循環用ファン60は、第一開口50aから第二開口50bに向かって送風する。本実施形態の循環用ファン60は、ダクト50内部に設けられている。この循環用ファン60を動作させることで、区画30内の空気が第一開口50aからダクト50内部に流入し、ダクト50内の流路を流通した後、第二開口50bから区画30内へと戻される。つまり、循環用ファン60によって、区画30内の空気を、ダクト50によって循環させることが可能となっている。なお、本実施形態において、循環用ファン60が第一開口50a付近のダクト50内部に設けられている場合を例示した。しかし、循環用ファン60の配置は、ダクト50を介して区画30内の空気を循環させることが可能な配置であれば上記配置に限られない。
【0019】
(アンモニア除去部)
アンモニア除去部48は、区画30内の空気に気化したアンモニアが含まれている場合に、当該アンモニアを除去する装置である。アンモニア除去部48は、ダクト50の中途に設けられており、循環用ファン60によって送風される区画30内部を流れる空気に含まれるアンモニアを除去する。本実施形態におけるアンモニア除去部48は、例えば循環用ファン60よりも空気の流れ方向下流側(第二開口50b側)に設けられている。
【0020】
アンモニア除去部48は、スクラバ40と、スクラバライン70と、スクラバポンプ71と、水分除去装置44と、排出ライン45と、を有している。
スクラバ40は、筐体41と、ノズル42と、を有している。筐体41は、循環用ファン60によって送風された空気が導入される空間を形成している。ノズル42は、筐体41内部に設けられ、スクラバライン70を介して送水される清水を筐体41の内部に噴霧する。本実施形態におけるノズル42は、筐体41の上部から下部に向かって清水を噴霧している。このようにノズル42から清水を噴霧することで、この噴霧された清水と空気中のアンモニアとが接触し、アンモニアが清水に溶解する。そして、このアンモニア水が自重により筐体41の下部へ移動する。
【0021】
スクラバライン70は、ノズル42へ送水するための流路を形成している。スクラバライン70の一端は、スクラバ40のノズル42に接続されている。スクラバライン70の他端は、例えば、船体2に設けられて清水が貯留されている清水タンク(図示無し)等に接続されている。
【0022】
スクラバポンプ71は、スクラバライン70に設けられている。スクラバポンプ71は、スクラバライン70内部の清水をノズル42に向かって圧送している。つまり、上記スクラバポンプ71を動作させることによって、清水タンクからスクラバライン70を介してノズル42へ清水が供給され、ノズル42から清水が噴霧される。
【0023】
水分除去装置44は、筐体41よりも空気の流れ方向下流側のダクト50に設けられている。水分除去装置44は、アンモニア除去部48を通過した後のダクト50内を流通する空気に含まれる水分を除去する装置である。より具体的には、水分除去装置44は、筐体41内部において噴霧された清水のうち、循環用ファン60の送風によって筐体41からダクト50の第二開口50b側に送り出されてしまった水を除去する。本実施形態における水分除去装置44は、アンモニア除去部48に隣接して設けられている場合を例示しているが、第二開口50bに至るまでに除湿できる配置であれば良く、例えば、水分除去装置44とアンモニア除去部48とを間隔をあけて配置してもよい。なお、ダクト50内を流通する空気にアンモニアが含まれる場合、筐体41からダクト50の第二開口50b側に送り出されてしまった水にはアンモニアが溶解している。
【0024】
排出ライン45は、アンモニア除去部48の下部に移動したアンモニア水を、ダクト50による空気循環系の外へ排出する。さらに、排出ライン45は、水分除去装置44により除去した水を、ダクト50による空気循環系の外へ排出する。例えば、排出ライン45は、上記空気循環系の外において、アンモニア水を貯留するアンモニア吸収水タンク(図示無し)に接続することができる。なお、本実施形態における排出ライン45は、アンモニア除去部48からのアンモニア水と、水分除去装置44により除去した水と、を合流させるように形成しているが、合流させずにそれぞれをアンモニア吸収水タンク(図示無し)に流入させるようにしてもよい。
【0025】
(アンモニアセンサ)
アンモニアセンサS1は、周囲の空気に含まれるアンモニア濃度を測定するセンサである。本実施形態において、アンモニアセンサS1は、例えば区画30内部に設けられ、区画30内部の空気のアンモニア濃度の検知または計測する。アンモニアセンサS1による計測結果は、例えば、区画30の外部に設けられたディスプレイ等を介して視認可能となっている。
【0026】
(給気ダンパ)
給気ダンパ31は、区画30の外部から区画30の内部へ外部の空気を給気するためのダンパである。本実施形態の給気ダンパ31は、区画30の壁部(天井壁部、底壁部を含む)に設けられている。給気ダンパ31は、例えば、区画30の換気時に開放される。加えて、給気ダンパ31は、アンモニアセンサS1により計測されたアンモニア濃度の計測結果に基づいて開閉状態を制御される。
【0027】
給気ダンパ31は、アンモニアセンサS1により計測されたアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で、かつ区画30内の気圧が所定の基準値よりも低くなる場合(例えば、大気圧よりも低い負圧状態の場合)に開放状態とされる。また、給気ダンパ31は、アンモニアセンサS1により計測されたアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で、かつ区画30内の換気が必要な場合に開放される。
【0028】
(排気ダンパ)
排気ダンパ32は、区画30の内部から区画30の外部へ空気を排出するためのダンパである。本実施形態の排気ダンパ32は、区画30の壁部(天井壁部、底壁部を含む)に設けられている。排気ダンパ32は、例えば、区画30の内圧調整時や換気時に開放される。加えて、排気ダンパ32は、アンモニアセンサS1により計測されたアンモニア濃度の計測結果に基づいて開閉状態が制御される。
【0029】
排気ダンパ32は、アンモニアセンサS1が計測するアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で開放状態とされ、排気ダンパ32は、アンモニアセンサS1が計測するアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で、かつ区画30内の換気が必要な場合に排気ダンパ32は給気ダンパ31とともに開放される。
【0030】
(吸込ダクト)
吸込ダクト33は、ダクト50の第一開口50aから区画30内に延びる筒状をなしている。吸込ダクト33は、区画30内部で開口している。本実施形態においては、吸込ダクト33の基部が第一開口50aに接続され、端部が区画30内部に開口している。さらに、本実施形態における吸込ダクト33は、例えば、区画30内に延びる途中で二方向に分岐している。
【0031】
本実施形態における吸込ダクト33は、区画30内部のうち、空気の流れが滞留し易い箇所で少なくとも開口している。ここで、空気の流れが滞留し易い箇所とは、仮に吸込ダクト33を設けずに循環用ファン60を作動させて空気を循環させた際に、空気の動きが生じ難い箇所である。このような空気の流れが滞留し易い箇所としては、例えば、区画30の隅の近傍や、区画30内の機器等が入り組んでいる場所の近傍を例示できる。このような吸込ダクト33を設けることで、循環用ファン60の作動時に、吸込ダクト33の開口近傍の空気が吸引されて、この吸引された空気がダクト50内部に導かれる。
【0032】
(作用効果)
上記第一実施形態に係る船舶1は、アンモニア燃料機器が収容された区画30と、区画30にそれぞれ連通する第一開口50a及び第二開口50bを有するダクト50と、ダクト50の第一開口50aから第二開口50bに向かって送風する循環用ファン60と、ダクト50の中途に設けられて、循環用ファン60によって送風される区画30内部の空気に含まれるアンモニアを除去可能なアンモニア除去部48と、を備えている。
【0033】
このような構成によれば、区画30内部の空気は、ダクト50の第一開口50aからダクト50内へ流入し、循環用ファン60によって第一開口50aから第二開口50bに向かって送風される。そして、ダクト50内で送風された空気は、ダクト50の中途に設けられたアンモニア除去部48によってアンモニアが除去される。その後、アンモニアが除去された後の空気は、第二開口50bを通じて区画30内部へと流入する。そして、上記一連の作用が繰り返されることにより、区画30とダクト50との間に空気の循環が生じる。
【0034】
区画30内とダクト50内とを空気が循環するため、区画30内部のアンモニアを含む空気がアンモニア除去部48に繰り返し導入される。これにより、区画30内部の空気に含まれるアンモニアを繰り返し除去することができる。
また、アンモニア除去部48がダクト50に設けられているため、区画30内のアンモニアを除去するために区画30内に散水する必要がない。
したがって、区画30内の機器を浸水させることなく区画30内及び区画30外において作業者がアンモニアに接触することを抑制できる。
【0035】
また、上記第一実施形態のダクトは、区画30の外部に設けられている。
このような構成によれば、区画30内における機器が設置されるスペースを広くとることができる。
【0036】
また、上記第一実施形態のアンモニア除去部48は、ダクト50内を流通するアンモニアを含む空気に水を噴霧するスクラバ40と、アンモニアが溶解した水を排出するための排出ライン45と、を有している。
このような構成によれば、アンモニアが水に溶解しやすい性質を利用するため、アンモニアを含む空気からアンモニアを効果的に除去することが可能となる。
【0037】
また、上記第一実施形態に係る船舶1は、更に、第一開口50aに接続され、第一開口50aから区画30内に延びて区画30内部に開口する吸込ダクト33を備えている。
これにより、開口近傍の空気を、吸込ダクト33を介してダクト50内部へ導入することが可能となる。したがって、例えば、吸込ダクト33の開口を空気の滞留し易い箇所等に配置すれば、区画30内で漏洩したアンモニアを区画30内に滞留させることなく効果的に除去できる。
【0038】
また、上記第一実施形態に係る船舶1は、区画30内部の空気におけるアンモニア濃度の検知及び計測をするアンモニアセンサS1と、区画30の外部から内部へ外部の空気を給気する給気ダンパ31と、区画30の内部から外部へ空気を排出する排気ダンパ32と、を備えている。これにより、区画30内におけるアンモニアの検知により、給気ダンパ31と排気ダンパ32がともに閉塞状態とすることができる。したがって、区画30の内部から外部へアンモニアが漏出することがない。
【0039】
[第二実施形態]
以下、本開示の第二実施形態の船舶の構成について図3及び図4を参照して説明する。第二実施形態では、船舶1が備えるダクト50及びアンモニア除去部48の構成が異なる。また、第二実施形態の船舶1は、大気開放部55と、酸素センサS2と、をさらに備える。第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図3は、区画30内のアンモニアの除去に係る構成を示した図である。
【0040】
(ダクト)
この第二実施形態におけるダクト50は、第一開口50aと第二開口50bとの間にダクトダンパ51を有している。図3に示すように、ダクトダンパ51は、平常時は開放状態とされている。ダクトダンパ51が開放状態のときは、第一実施形態と同様に、循環用ファン60が駆動されることで、区画30内の空気は、第一開口50aからダクト50内に流入してダクト50内を第二開口50bに向かって送風された後、第二開口50bから区画30内に戻る。
【0041】
(アンモニア除去部)
アンモニア除去部48は、第一実施形態のアンモニア除去部48と同様に、区画30内で漏洩したアンモニアを除去する。すなわち、アンモニア除去部48は、ダクト50の中途に設けられて、循環用ファン60によって送風される区画30内部の空気に含まれるアンモニアを除去する。本第二実施形態のアンモニア除去部48は、例えば循環用ファン60よりも空気の流れ方向下流側及びダクトダンパ51よりも空気の流れ方向上流側(第一開口50a側)に設けられている。
【0042】
本第二実施形態のアンモニア除去部48は、除去部本体46と、触媒47と、を有している。
除去部本体46は、ダクト50の中途において該ダクト50と連通するように設けられている。除去部本体46は、循環用ファン60によって送風される区画30内のアンモニアを含む空気が導入される空間を形成している。
【0043】
触媒47は、除去部本体46内部において、導入されるアンモニアを含む空気と接触する位置に設けられている。本実施形態において、触媒47は、アンモニアと接触することで、アンモニア(NH)を、窒素ガス(N)や水素ガス(H)等へ分解するアンモニア分解触媒である。
【0044】
(大気開放部)
大気開放部55は、区画30内の空気の換気が必要な時に、ダクト50の中途において、区画30内及びダクト50内の空気を大気中へ放出する換気機構である。大気開放部55は、大気開放ダクト53と、大気開放ダンパ52と、を有している。
【0045】
大気開放ダクト53は、ダクト50の中途から分岐するように形成されている。より具体的には、大気開放ダクト53の一端は、アンモニア除去部48とダクトダンパ51との間のダクト50から分岐している。言い換えれば、大気開放ダクト53は、アンモニア除去部48よりもダクト50内部の空気の流れ方向下流側で、かつダクトダンパ51よりも空気の流れ方向上流側に接続されている。そして、この大気開放ダクト53の他端は、船外の大気中に開口している。
【0046】
大気開放ダンパ52は、大気開放ダクト53の中途に設けられている。大気開放ダンパ52は、平常時は閉塞状態とされており、ダクト50内の空気が大気中へ放出されないようになっている。
【0047】
上記の大気開放ダンパ52は、アンモニアセンサS1が計測するアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で、かつ区画30内の空気を換気する必要がある場合に、給気ダンパ31とともに開放状態とされる。
また、大気開放ダンパ52は、アンモニアセンサS1が計測するアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い状態で、かつ区画30内で後述の酸素センサS2が計測する酸素濃度が所定の基準値よりも低い酸欠状態の場合にも、給気ダンパ31とともに開放状態とされる。
【0048】
大気開放ダンパ52及び給気ダンパ31が開放状態にされると、ダクトダンパ51は閉塞状態とされる。ダクトダンパ51は、閉塞状態になることで、ダクト50内の空気が区画30内へ戻ることを不可能にする。
【0049】
図4に示すように、給気ダンパ31及び大気開放ダンパ52が開放状態になり、ダクトダンパ51が閉塞状態になり、循環用ファン60が駆動状態になると、区画30内の空気はダクト50を通って大気開放ダクト53へと流入する。そして、大気開放ダクト53へ流入した空気は強制的に大気へ放出される。空気の大気への流出に伴って、給気ダンパ31を介して外部の空気が区画30内へ流入する。したがって、循環用ファン60が駆動され、大気開放ダンパ52と給気ダンパ31とが開放状態、及びダクトダンパ51が閉塞状態とされることで、区画30内の空気を区画30外の空気と強制的に置換することが可能となる。
【0050】
(酸素センサ)
酸素センサS2は、周囲の空気に含まれる酸素濃度を測定するセンサである。本実施形態において、酸素センサS2は、区画30内が酸欠になることを防止するために、例えば区画30内部に設けられ、区画30内部の空気の酸素濃度を検知または計測する。
【0051】
(作用効果)
第二実施形態に係る船舶1のアンモニア除去部48は、アンモニアを分解する触媒47を有している。これにより、ダクト50の内部の空気中に含まれるアンモニアを触媒47が分解するため、水分を用いることなく空気中からアンモニアが除去される。したがって、区画30内に漏洩したアンモニアの除去に水分を用いないため、区画30内の機器に浸水することがない。したがって、機器への浸水による故障や漏電が生じることがない。また、区画30内の機器の防水規格(IPコード)に係る設計制約を緩和することができる。
【0052】
また、上記構成では、船舶1は、区画30内部の空気のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサS1と、区画30外部の空気を内部へ給気する給気ダンパ31と、ダクト50の空気を大気へ放出する大気開放ダンパ52と、を備えている。
【0053】
これにより、区画30内空気のアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い場合に、給気ダンパ31及び大気開放ダンパ52を開放状態にすることができる。したがって、区画30内の空気を大気へ放出し、区画30内の空気を区画30外の空気に置換できる。これにより、作業員が区画30内に立ち入った際にアンモニアに接触することを抑制でき、安全に作業することができる。
【0054】
さらに、第二実施形態では、触媒47を用いるアンモニア除去部48を備える構成において、ダクトダンパ51、及び大気開放部55を備えている。
これにより、アンモニアと触媒47との接触によって窒素ガス及び水素ガス等が発生して区画30内の酸素濃度が低下した場合であっても、アンモニア濃度が十分に低下した後に、循環用ファン60を駆動させて、区画内の酸素濃度を回復させることができる。したがって、より迅速に作業者が区画30内に入り作業を行うことが可能となる。
【0055】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはない。
【0056】
上記第一実施形態では、スクラバ40の筐体41内部において、ノズル42が清水を噴霧する構成であるが、清水に限定されることはなく、海水を噴霧してもよい。ノズル42が海水を噴霧する構成である場合は、スクラバライン70は清水タンクではなく、船体2に設けられた海水が貯留されている海水タンク(図示無し)に接続されているか、直接海中に開口していればよい。そして、水分除去装置44は、ダクト50内を流通する空気に含まれる水分だけでなく、塩分も除去可能な構成であればよい。これにより、船舶1の運航中において使用できる量に制限がある清水ではなく、容易に入手可能な海水を使用することができる。
【0057】
また、上記第一実施形態では、筐体41内部のアンモニア水をアンモニア吸収水タンクに排出可能であることを例示しているが、この構成に限定されることはない。排出ライン45は、船外に開口し、アンモニア水を直接海に排出する構成であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、アンモニアセンサS1は、区画30内部に設けられ、区画30内部の空気のアンモニア濃度を計測することを例示しているが、この構成に限定されることはない。アンモニアセンサS1は、例えば、ダクト50内部に設けられ、ダクト50内部を流通する空気のアンモニア濃度を計測してもよい。また、アンモニアセンサS1は、例えば、排出ライン45の中途に設けられ、排出ライン45内の空気及び排出されるアンモニア水のアンモニア濃度を計測してもよい。したがって、アンモニアセンサS1は、区画30内部、ダクト50内部、及び排出ライン45内部の少なくとも一か所に設けられていればよい。
【0059】
さらに、上記各実施形態では、区画30内に吸込ダクト33を設ける場合について説明した。しかし、吸込ダクト33は、区画30内において空気の流れが滞留し易い箇所が有る場合にのみ設ければよい。すなわち、区画30内において空気の流れが滞留し易い箇所が無い場合には、吸込ダクト33を省略してもよい。
【0060】
また、上記実施形態で示される船舶1は、それぞれ独立した構成に留まることはなく、各実施形態に記載の構成要素を適宜組み合わせて船舶1を構成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、船舶1の船種が液化ガス運搬船とされているが、液化ガス運搬船に限定されることはない。船種は、コンテナ船、タンカー、ばら積み船、自動車運搬船、RO-RO貨物船、貨客船(フェリー)、旅客船、漁船、特殊船、軍艦等であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、区画30は、船体2の上甲板7上に設けられているが、上甲板7上に設けられている構成に限定されることはない。区画30は、船体2内部に設けられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、区画30は、配管系統20における燃料タンク10と主機8との間に介在しているが、アンモニア関連機器を収容する区画30でありさえすれば、燃料タンク10と主機8との間に介在していなくてもよい。
【0064】
[付記]
実施形態に記載の船舶は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)第1の態様に係る船舶1は、アンモニア関連機器が収容された区画30と、前記区画30にそれぞれ連通する第一開口50a及び第二開口50bを有するダクト50と、前記ダクト50の前記第一開口50aから前記第二開口50bに向かって送風する循環用ファン60と、前記ダクト50の中途に設けられて、前記循環用ファン60によって送風される前記区画30内部の空気に含まれるアンモニアを除去可能なアンモニア除去部48と、を備える。
【0066】
上記構成により、区画30内部の空気がダクト50内へ流入し、循環用ファン60によって第一開口50aから第二開口50bに向かって送風される。ダクト50内で送風された空気は、ダクト50の中途に設けられたアンモニア除去部48によって空気中に含まれるアンモニアが除去され、第二開口50bを通じて区画30内部へと戻る。そして、上記一連の作用が繰り返されることで、区画30とダクト50との間に空気の循環が生じる。
これにより、空気が区画30内とダクト50内とを循環する構成であるため、アンモニアを含む空気がアンモニア除去部48に繰り返し導入される。したがって、区画30内の空気中のアンモニアが次第に除去されていく。また、アンモニア除去部48はダクト50に設けられているため、区画30内のアンモニアを除去するために区画30内に散水する必要がない。したがって、突発的な事象によりアンモニア燃料機器からアンモニアが漏洩した場合においても、区画30内の機器を浸水させることなく区画30内及び区画30外において作業者がアンモニアに接触することを抑制できる。
【0067】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記ダクト50は、前記区画30の外部に設けられていてもよい。
【0068】
これにより、区画30内における機器が設置されるスペースを広くとることができる。
【0069】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)または(2)の船舶1であって、前記アンモニア除去部48は、前記アンモニアに水を噴霧するスクラバ40と、前記アンモニアが溶解した前記水を排出する排出ライン45と、を有してもよい。
【0070】
これにより、アンモニアが水に溶解しやすい性質を利用するため、アンモニアを含む空気からアンモニアを効果的に除去できる。
【0071】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(1)または(2)の船舶1であって、前記アンモニア除去部48は、前記アンモニアを分解する触媒47を有してもよい。
【0072】
これにより、ダクト50の内部の空気中に含まれるアンモニアを触媒47が分解するため、水分を用いることなく空気中からアンモニアが除去される。したがって、区画30内に漏洩したアンモニアの除去に水分を用いないため、区画30内の機器に浸水することがない。
【0073】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(4)の船舶1であって、前記区画30内部及び前記ダクト50内部の少なくとも一方の前記空気のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサS1と、前記区画30外部の空気を内部へ給気する給気ダンパ31と、前記ダクト50における前記アンモニア除去部48よりも前記空気の流れ方向下流側に設けられて、前記空気を大気へ放出する大気開放ダンパ52と、をさらに備えてもよい。
【0074】
これにより、区画30内空気のアンモニア濃度が所定の基準値よりも低い場合に、給気ダンパ31及び大気開放ダンパ52を開放状態にすることができる。したがって、区画30内の空気を区画30外の空気に置換できる。
【0075】
(6)第6の態様に係る船舶1は、(1)から(5)のいずれかの船舶1であって、前記第一開口50aに接続され、前記第一開口50aから前記区画30内に延びて該区画30内部に開口する吸込ダクト33をさらに備えてもよい。
【0076】
これにより、開口近傍の空気を、吸込ダクト33を介してダクト50内部へ導入することが可能となる。したがって、例えば、吸込ダクト33の開口を空気の滞留し易い箇所等に配置すれば、区画30内で漏洩したアンモニアを区画30内に滞留させることなく効果的に除去できる。
【符号の説明】
【0077】
1…船舶 2…船体 3a…船首 3b…船尾 4…上部構造 5A、5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…主機 10…燃料タンク 11…カーゴタンク 14…機関室 20…配管系統 30…区画 31…給気ダンパ 32…排気ダンパ 33…吸込ダクト 40…スクラバ 41…筐体 42…ノズル 44…水分除去装置 45…排出ライン 46…除去部本体 47…触媒 48…アンモニア除去部 50…ダクト 50a…第一開口 50b…第二開口 51…ダクトダンパ 52…大気開放ダンパ 53…大気開放ダクト 55…大気開放部 60…循環用ファン 70…スクラバライン 71…スクラバポンプ Dv…上下方向 FA…船首尾方向 S1…アンモニアセンサ S2…酸素センサ
図1
図2
図3
図4