(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156564
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20221006BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221006BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221006BHJP
B41J 3/38 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J29/00 Z
B41J3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060317
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】野津 知広
【テーマコード(参考)】
2C055
2C056
2C057
2C061
【Fターム(参考)】
2C055EE00
2C055EE05
2C055JJ07
2C056EB20
2C056EB45
2C056EB49
2C056EB56
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC42
2C056ED01
2C056FA10
2C057AM15
2C057AM16
2C057AN01
2C057AR08
2C061AP01
2C061AQ05
2C061CL10
2C061HK15
2C061HK23
(57)【要約】
【課題】締結された契約内容に応じて柔軟性をもって最適化した印刷サービスを実行する。
【解決手段】プリンタ1は、インクを収容したインクカートリッジ32から導入されたインクを吐出するインクジェットヘッド3を備え、記録用紙Pにインクにより印刷を行うキャリッジ2及びインクジェットヘッド3と、CPU51と、備え、CPU51は、S130,S160,S170,S190において、プリンタ1に対して若しくはプリンタ1のユーザの使用に対して締結された契約情報に応じて、インクジェットヘッド3を駆動する駆動信号パターンを自動的に設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容した収容体から導入されたインクを吐出する吐出ヘッドを備え、被印刷媒体に前記インクにより印刷を行う印刷部と、
制御部と、
備えた印刷装置であって、
前記制御部は、
前記印刷装置に対して若しくは前記印刷装置の使用者の使用に対して締結された契約情報に応じて、前記吐出ヘッドを駆動する駆動信号パターンを自動的に設定する信号パターン設定処理
を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記信号パターン設定処理では、
前記契約情報に応じて前記印刷装置の装着部に装着されるべき前記収容体の種類に基づいて、前記駆動信号パターンを設定する、
請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
少なくとも1種類の前記駆動信号パターンを予め記憶する第1記憶部をさらに備え、
前記信号パターン設定処理は、
前記第1記憶部に予め記憶された第1駆動信号パターンを、前記契約情報に応じた第2駆動信号パターンに自動的に変更する信号パターン変更処理である、
請求項1又は請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1記憶部は、
前記契約情報に関係なく固定的に設定されたデフォルト駆動信号パターンと、前記デフォルト駆動信号パターンとは異なる前記第1駆動信号パターンと、を予め記憶しており、
前記信号パターン変更処理では、
前記第1記憶部に予め記憶された前記デフォルト駆動信号パターンを変更することなく前記第1駆動信号パターンを前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
外部機器と通信可能な通信部をさらに備え、
前記制御部は、さらに、
前記通信部を介した通信により前記第2駆動信号パターンを前記外部機器から取得する信号パターン取得処理を実行する、請求項3又は請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記信号パターン変更処理では、
前記契約情報に対応する契約が成立した所定の第1タイミング以降の所定の第2タイミングにおいて、前記第1駆動信号パターンを前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記信号パターン変更処理では、
前記第2タイミングにおいて、印刷枚数又はインク使用量が閾値を超えた場合に、前記第1駆動信号パターンを前記信号パターン取得処理で取得された前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、
前記印刷装置の装着部に装着された前記収容体の種類を識別する収容体識別処理と、
前記収容体識別処理で識別された前記収容体の種類が、前記契約情報に応じて前記装着部に装着されるべき前記収容体の種類と合致しているか否かを照合する収容体照合処理と、
を実行する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項9】
前記収容体識別処理では、
前記収容体に備えられた第2記憶部に記憶された収容体種類情報を取得して前記識別を行う、請求項8記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、さらに、
前記通信部を介し前記外部機器からのパターン変更指令を受信する変更指令受信処理を実行し、
前記信号パターン変更処理では、
前記変更指令受信処理により前記パターン変更指令が受信されたことを契機に前記第1駆動信号パターンを前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項11】
操作者が操作可能な操作部をさらに備え、
前記制御部は、さらに、
前記操作部を介した所定のパターン変更操作を受け付ける変更操作受付処理を実行し、
前記信号パターン変更処理では、
前記変更操作受付処理により前記パターン変更操作が受け付けられたことを契機に前記第1駆動信号パターンを前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項3~7,10のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項12】
操作者が操作可能な操作部をさらに備え、
前記制御部は、さらに、
前記通信部を介し前記外部機器からのパターン変更指令を受信する変更指令受信処理と、
前記操作部を介した所定のパターン変更操作を受け付ける変更操作受付処理と、
を実行し、
前記信号パターン変更処理では、
前記変更指令受信処理により前記パターン変更指令が受信され、かつ、前記変更操作受付処理により前記パターン変更操作が受け付けられたことを契機に、前記第1駆動信号パターンを前記第2駆動信号パターンに変更する、
請求項5又は請求項10記載の印刷装置。
【請求項13】
インクを収容した収容体から導入されたインクを吐出する吐出ヘッドを備え、被印刷媒体に前記インクにより印刷を行う印刷部と、制御部と、を備えた印刷装置の前記制御部に対し、
前記印刷装置に対して若しくは前記印刷装置の使用者の使用に対して締結された契約情報に応じて、前記吐出ヘッドを駆動する駆動信号パターンを自動的に設定する信号パターン設定ステップ
を実行させるための、印刷制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する吐出ヘッドを備えた印刷装置及びその印刷装置の印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、インクカートリッジのメモリチップに記憶された吐出波形の制御情報を取得して、インクの吐出を行う制御するプリンタ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷装置を使用するユーザが、印刷装置を所有するサービス業者に対して印刷内容に応じた課金料金を支払う、所定の契約が結ばれる場合がある。近年このような契約は大量の印刷を伴うものであったり、低コストが求められるものであったり、多様化しつつある。したがって、多様な契約内容に適したインクの吐出制御を行う必要性が生じてきている。特許文献1に記載の技術では、多様な契約に応じて柔軟性をもって最適化した印刷サービスを実行できないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、締結された契約内容に応じて柔軟性をもって最適化した印刷サービスを実行できる印刷装置及び印刷制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、インクを収容した収容体から導入されたインクを吐出する吐出ヘッドを備え、被印刷媒体に前記インクにより印刷を行う印刷部と、制御部と、備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記印刷装置に対して若しくは前記印刷装置の使用者の使用に対して締結された契約情報に応じて、前記吐出ヘッドを駆動する駆動信号パターンを自動的に設定する信号パターン設定処理を実行することを特徴とする。
【0007】
本願発明の印刷装置においては、装着部に装着された収容体から印刷部の吐出ヘッドにインクが導入され、吐出ヘッドからインクが吐出されて被印刷媒体に印刷が行われる。インクを吐出する吐出ヘッドは駆動信号パターンによって駆動される。本願発明の印刷装置に対し、若しくは、印刷装置の使用者の使用に対し、予め所定の契約が締結されている。駆動信号パターンは、制御部が実行する信号パターン設定処理において、上記契約の契約情報に応じて自動的に設定される。本願発明によれば、締結された契約内容に応じた駆動信号パターンで吐出ヘッドが駆動されるので、契約に対応して柔軟性をもって最適化された印刷サービスを提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、締結された契約内容に応じて柔軟性をもって最適化した印刷サービスを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態によるプリンタの概略構成図である。
【
図2】プリンタの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】CPUが実行する制御手順を表すフローチャートである。
【
図4】
図3のS100の詳細手順を表すフローチャートである。
【
図5】大玉、中玉、小玉、微小玉それぞれに係る駆動信号パターンを表す説明図である。
【
図6】契約と各駆動信号パターンとの対応付けの一例を表す表である。
【
図7】契約と各駆動信号パターンとの対応付けの別の例を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態は、ユーザが自ら印刷装置を購入しインクカートリッジを装着し使用するリテールビジネス、及び、ユーザが印刷装置を所有するサービス業者に対し課金料金を支払うサブスクリプションビジネス、のいずれの態様でも使用可能なプリンタの実施形態である。
【0011】
<プリンタの全体構成>
上記ユーザが利用するプリンタ1を、
図1及び
図2により説明する。なお、このプリンタ1は、例えば、上記印刷サービスを提供する事業者によって保有される。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、キャリッジ2と、インクジェットヘッド3と、プラテン4と、搬送ローラ5,6と、等を備えている。なお、プリンタ1が印刷装置の一例であり、キャリッジ2及びインクジェットヘッド3が印刷部の一例であり、インクジェットヘッド3が吐出ヘッドの一例である。
【0012】
キャリッジ2は、図示しないベルト等を介しキャリッジモータ56(後述の
図2参照)に接続されており、キャリッジモータ56が駆動することでガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。
【0013】
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されている。インクジェットヘッド3は、流路ユニット13と、アクチュエータ14と、を有する。
【0014】
流路ユニット13には、その下面であるノズル面13aに形成された複数のノズル10を含むインク流路が形成されている。複数のノズル10は、図示左右方向である走査方向と直交する、図示上下方向である搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成している。ノズル面13aには、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、一例として、図示右側から左側に向かって順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0015】
アクチュエータ14は、例えば複数の電極を備えており、各電極に対し駆動パルス信号が与えられることにより、各ノズル10内のインクに対し個別に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0016】
インクジェットヘッド3は、4本のチューブ31と接続されている。4本のチューブ31は、プリンタ1において走査方向に並んだ4つのインクカートリッジ32とそれぞれ接続されている。4つのインクカートリッジ32に貯留されたブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがチューブ31を介してインクジェットヘッド3に供給される。4つのインクカートリッジ32は、それぞれ、カートリッジホルダ35に対し、着脱可能に装着されている。インクカートリッジ32が収容体の一例であり、カートリッジホルダ35が装着部の一例である。
【0017】
プラテン4は、インクジェットヘッド3の下方に位置し、印刷時にノズル面13aと対向する。プラテン4は、走査方向に記録用紙Pの全幅にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。記録用紙Pが被印刷媒体の一例である。搬送ローラ5,6は、図示しないギヤ等を介し搬送モータ57(後述の
図2参照)に接続され、搬送モータ57の駆動により回転して記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0018】
上記構成により、プリンタ1は、搬送ローラ5,6により記録用紙Pを所定距離ずつ搬送する毎に、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3の複数のノズル10からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0019】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について、
図2により説明する。プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御されている。
【0020】
制御装置50は、CPU51と、ROM52と、RAM53と、EEPROM54と、特定用途向け集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)55と、カートリッジ通信部85と、外部通信I/F87、等を備える。制御装置50のCPU51が制御部の一例であり、EEPROM54及びRAM53が第1記憶部の一例である。制御装置50は、これらの構成を備えることにより、キャリッジモータ56、アクチュエータ14、搬送モータ57などの制御を行う。
【0021】
ROM52には、プリンタ1の印刷制御プログラム等が記憶されている。RAM53には、一時的な処理データ等が記憶される。EEPROM54には、電源OFFされても保持すべきデータ等が記憶される。
【0022】
カートリッジ通信部85は、カートリッジホルダ35に装着されたインクカートリッジ32との間で適宜の手法により通信を行う。すなわち、前述したように、本実施形態のプリンタ1は、リテールビジネス及びサブスクリプションビジネスのいずれにも使用される。これに対応して、インクカートリッジ32にはそれぞれカートリッジメモリ65が備えられており、このカートリッジメモリ65には、当該インクカートリッジ32がリテールビジネス用であるかサブスクリプションビジネス用であるか、を表す、カートリッジ種類情報が記憶されている。またこのカートリッジ種類情報には、当該インクカートリッジ32内のインクの属性及び価格等も含まれている。カートリッジ通信部85は、上記通信により、各インクカートリッジ32のカートリッジメモリ65から上記カートリッジ種類情報を取得することができる。なお、カートリッジメモリ65が第2記憶部の一例であり、カートリッジ種類情報が収容体種類情報の一例である。
【0023】
外部通信I/F87は、適宜の通信形態により、外部機器150と通信可能に接続される。外部機器150の例としては、前述の印刷サービスを提供する事業者、プリンタ1のメーカ、プリンタ1の販売会社等の事業者に配置されたサーバ、若しくは、ユーザの携帯端末、等である。通信形態の例としては、無線LANやネットワーク通信を含む適宜の無線通信、若しくは、USBケーブル等を介した有線通信である。また無線通信の類型も特に限られるものではなく、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等、適宜の態様で行えば足りる。
【0024】
なお、
図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50がCPU51を複数備え、それら複数のCPU51が分担して処理を行ってもよい。また、
図2では、ASIC55を1つだけ図示しているが、制御装置50がASIC55を複数備え、それら複数のASIC55が分担して処理を行ってもよい。
【0025】
<実施形態の特徴>
本実施形態では、最大の特徴として、上記装着されたインクカートリッジ32がサブスクリプションビジネス用である場合に、その契約内容に対応して、上記アクチュエータ14を駆動するための駆動パルス信号(後述)を決定することにある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0026】
<駆動パルス信号>
アクチュエータ14は、常態においては、前述の電極が正の所定電位とされることで、インクが貯留される圧力室側が凸となるように湾曲されている。適切なタイミングで電極がグランド電位とされることで圧力室の容積が拡大されて圧力波が生じた後、圧力波が正圧となるタイミングで再び正の所定電位とされることで、圧力室内のインクに圧力が付与される。本実施形態では、例えばこのようないわゆる引き打ちの手法により、比較的小さな駆動電圧で大きなインク吐出速度を得ることができる。本実施形態のプリンタ1では、このときに電極に与えられる駆動パルス信号のパターンが予め複数種類用意されている。各駆動パルス信号は、ハイレベル及びローレベルを備えたパルスにより構成されており、ハイレベル期間及びローレベル期間が互いに異なっている(後述の
図5も参照)。以下適宜、駆動パルス信号のパターンを「駆動信号パターン」と略称する。本実施形態では、インクの属性や価格を参酌しつつ、契約内容に対し合致する駆動パルス信号を用いることで、契約に適した吐出制御が行われる。インクの属性への対応としては、例えばインクの粘度がある。インクの増粘の高低により実際に吐出されるインク滴が変わるため、使用されるインクの増粘度が高いか低いかに応じて、異なる駆動信号パターンを使用することができる。
【0027】
<契約内容と駆動パルス信号との関係>
前述のサブスクリプション契約は、近年、大量の印刷を伴うものであったり、低コストが求められるものであったり、多様化しつつある。典型的な例としては、所定期間ごと、例えば毎月ごとに一定金額を支払う期間課金方式、印刷量ごと、例えば印刷枚数あたりに一定金額を支払う枚数課金方式、等があり、それぞれの方式の中でも細かい制約条項や許容事項等が盛り込まれる場合がある。したがって、これらの多様な契約内容に適したインクの吐出制御を行う必要性が生じてきている。
【0028】
通常、プリンタの性能とインクの属性とは互いに対応付けられている。例えば、高性能機種のプリンタでは、一般に、耐久性の向上、高画質の実現、等を主眼として各部が構成されており、比較的高価なインクを用いることを前提に、当該インクを吐出するための上記駆動信号パターンがプリンタ内に設定されている。例えば、ユーザがそのような高性能のプリンタを用いた期間課金方式契約を希望した場合、そのままでは、高価なインクを用いて所定期間内はほぼ無制限に印刷できることとなるため、サービス業者の不利益が著しく大きくなるという不都合が生じる。本実施形態では、このような場合には、前述の高価なインクに代えて比較的安価なインクを使えるように、当該プリンタにおける駆動信号パターンの変更を行う。これにより、サービス業者の上記不利益を回避しつつ期間課金方式の契約による印刷サービスの提供が可能となる。
【0029】
また例えば、前述の枚数課金方式の契約の場合であっても、サービス業者が不利益を蒙らないためには、契約期間内におけるトータルの印刷枚数が極めて多い場合と比較的少ない場合とで契約価格を変える必要がある。その場合には、それら2つの場合でインクの吐出態様を異ならせたりインク自体を異なるものを用いたりする必要がある。したがって、本実施形態では、上記同様、互いに別々の駆動信号パターンに変えて吐出制御を行うことで、サービス業者の不利益を回避しつつ枚数課金方式の契約による印刷サービスの提供が可能となる。
【0030】
また、枚数課金方式の契約でも、1枚のシートに対し、例えば高画質の写真やグラフなどの精密図面画像等、ドットカウントが極めて大きくなる印刷が行われる場合には、テキストのみ等からなる通常の印刷と同様の吐出制御を行うとインクの消費が大きくサービス業者の不利益が大きくなる。本実施形態では、シートに対し上記のようなドットカウントが極めて大きくなる印刷が行われる時には、駆動信号パターンを低コスト側のものへ切り替えることにより、サービス業者の不利益を回避する。
さらに、実際にユーザが印刷を開始した後、契約当初にサービス業者側で想定した印刷枚数を超えて印刷が行われる場合があり、その場合、そのままではサービス業者の不利益が生じるため、インクの吐出態様を低コスト側へ変える必要がある。本実施形態では、このような場合、あるタイミングにおいて、駆動信号パターンを低コスト側のものへ切り替えることにより、サービス業者の不利益を回避しつつ印刷サービスの提供を継続する。
【0031】
サブスクリプション契約としては上記以外にも種々の内容の契約が存在している。いずれの場合も、そのプリンタに対して締結されたサブスクリプション契約の内容に対してプリンタにおいて予め用意された駆動信号パターンをそのまま用いると、サービス業者の不利益となる場合がある。これを回避するために一律に契約料金を高めに設定すると、本来なら低価格で受けられるサービス内容をユーザが不当に高価格にて負担しなければならない不都合が生じ得る。本実施形態及び後述の変形例は、このようなサービス業者及びユーザ双方の不利益及び不都合を防止するために、締結されたサブスクリプション契約の内容に応じて、プリンタ1における駆動信号パターンを設定するものである。以下、その手法の詳細を、説明する。
【0032】
<駆動信号パターンの記憶部>
本実施形態のプリンタ1においては、EEPROM54にデフォルトパターン記憶部54Aが設けられている。このデフォルトパターン記憶部54Aには、プリンタ1のメーカにおいて、当該プリンタ1に対し予め初期的に対応付けられた所定のデフォルトの駆動信号パターン(以下適宜、「デフォルトパターン」という)が書き換え不能に記憶されている。なお記憶されているデフォルトパターンは1つには限られず、複数であってもよい。一方、RAM53にサブパターン記憶部53Aが設けられている。このサブパターン記憶部53Aには、上記同様、プリンタ1のメーカにおいて、適宜に用意された、上記デフォルトの駆動信号パターンとは異なる別の駆動信号パターン(以下適宜、「サブパターン」という)が書き換え可能に記憶されている。このサブパターン記憶部53Aには、後述のように、プリンタ1を使用するユーザがどのような内容の契約を結んだかに応じて、その契約内容に応じた駆動信号パターンが上記サブパターンに代えて書き込まれ、上書き更新される。
【0033】
以上の手法を実現するために上記CPU51が実行する制御手順を、
図3及び
図4に示すフローチャートにより説明する。この制御手順は、上記ROM52に記憶された複数のプログラムに含まれる印刷制御プログラムにより実行され、その実行によって本実施形態による以下の印刷制御方法が実現される。
【0034】
まずS10で、プリンタ1に対し、新たに契約が締結された旨を表す所定の指示(以下適宜、「契約指示」と略称する)がなされたか否かが判定される。このときの契約は、プリンタ1に対し締結された契約である場合もあるし、プリンタ1の使用者すなわちユーザの使用に対し締結された契約である場合もある。この指示は、例えば前述した無線通信又は有線通信によって外部機器150から契約情報を受信することで取得される。あるいは、プリンタ1に備えられた適宜の操作部での操作により契約情報が入力されることで取得されてもよい。特にこの場合は、プリンタ1が上記外部通信I/F87を介し外部機器150に接続されていないいわゆるオフライン状態において上記操作部の操作がなされて契約情報が入力される態様であってもよい。なお、操作部を操作する操作者はユーザに限られず、前述の印刷サービスを提供する事業者やプリンタ1のメーカ・販売会社のサービスマン等であってもよい(以下、同様)。ここで取得される契約情報は、締結された契約の内容を表す情報であり、例えば前述の枚数課金方式や期間課金方式等のどのような支払態様であるかを表す情報、及び、その際にユーザがサービス業者等に支払金額情報、等が含まれる。契約指示が取得されたらS10がYes判定され、S20へ移行する。なお、S10がNo判定された場合、後述のS60へと移行する。
【0035】
S20では、S10で契約指示が取得された当該契約の内容が特定される。これにより、例えば枚数課金方式の契約(以下適宜、「枚数課金契約」と略称する)であるか、期間課金方式の契約(以下適宜、「期間課金契約」と略称する)であるか、等が特定される。
【0036】
その後、S30で、S20で特定された契約内容に対応した駆動信号パターンが特定される。例えば枚数課金契約である場合は、ユーザがある程度まとまった数の印刷を行う場合に対応して、相対的にインク濃度が薄くなるように上記駆動パルス信号が予めアレンジされた駆動信号パターン(以下適宜「高印刷量用パターン」と称する)がまず特定される。また、当該枚数課金契約の詳細内容に応じて、契約に定められた上限印刷枚数近くまでユーザが大量の印刷を行う場合に備えて、相対的に吐出量が低くなるように上記駆動パルス信号が予めアレンジされた駆動信号パターン(以下適宜「低吐出量化パターン」と称する)も併せて特定されてもよい。また、例えば期間課金契約である場合は、契約に定められた期間の間、ユーザがある程度まとまった印刷を行うことが想定されることから、上記同様、高印刷量用パターンが特定される。さらにその期間の間に印刷量に応じて駆動信号パターンを可変にできる契約である場合は、上記同様、低吐出量化パターンも併せて特定される。なお、例えば枚数課金契約でもなく期間課金契約でもない場合には、前述のデフォルトパターンが特定される。
【0037】
そして、S40へ移行し、例えば外部通信I/F87を介して外部機器150にアクセスが行われることで、S30で特定された上記駆動信号パターンが外部機器150よりダウンロードされて取得されるとともに、RAM53のサブパターン記憶部53Aにインストールされる。なお、上記S20で契約内容が特定された後、このS40が実行されるまでのタイミングが第1タイミングの一例であり、S40でCPU51が実行する処理が信号パターン取得処理の一例である。この実施形態では、例えばサブパターン記憶部53Aには、複数の上記サブパターン、すなわち高印刷量用パターン及び低吐出量化パターンがともに記憶される。なおサブパターン記憶部53Aのメモリ容量があまり大きくない場合には、いずれか1つのサブパターンのみがサブパターン記憶部53Aに記憶される。あるいは、デフォルトパターンを記憶する上記EEPROM54にデフォルトパターン記憶部54Aに記憶するのに代え、RAM53に記憶するようにしてもよい。この場合は、上記のようにサブパターン記憶部53Aのメモリ容量があまり大きくない場合には上記RAM53に記憶されたデフォルトパターンを消去し、この消去によって空いた容量分に対し、いずれかのサブパターンを記憶するようにしてもよい。
【0038】
その後、S50へ移行し、例えばカートリッジ通信部85を介した前述のカートリッジメモリ65との通信により得られた上記カートリッジ種類情報に基づき、カートリッジホルダ35に装着されているインクカートリッジ32の種類が特定される。なお、S50でCPU51が実行する処理が収容体識別処理の一例である。その後、S60へ移行する。
【0039】
そして、S60へ移行し、S20で特定された契約内容、及び、S30で特定された駆動信号パターン、に対して、S50で特定されたインクカートリッジ32の種類が適合しているか否かが判定される。言い換えれば、S60では、S50で特定されたインクカートリッジ32の種類が、S20で特定された契約内容に応じてカートリッジホルダ35に装着すべきインクカートリッジ32の種類と合致しているか否かが照合される。なお、S60でCPU51が実行する処理が収容体照合処理の一例である。適合していなければNo判定されてS70に移行し、プリンタ1に適宜に設けた表示部において、「インクカートリッジを交換すべき」旨の交換アラームが表示された後、S10に戻って同様の手順が繰り返される。なお、このアラーム表示は、外部通信I/F87を介して接続されている、外部機器150において行われてもよい。
【0040】
一方、S20で特定された契約内容及びS30で特定された駆動信号パターンに対してインクカートリッジ32の種類が適合していた場合はYes判定され、S100に移行して駆動信号パターン決定処理が行われる。この場合、S100の駆動信号パターン決定処理は、言い換えれば、S20で特定された契約内容に応じてカートリッジホルダ35に装着すべきインクカートリッジ32の種類に基づいて、駆動信号パターンが決定されることになる。
【0041】
上記S100の駆動信号パターン決定処理の詳細手順を、
図4のフローチャートにより説明する。
図4において、まずS110で、前述のS20で特定された契約内容が、上記枚数課金契約であるか否かが判定される。枚数課金契約でなければNo判定され、S120へ移行する。
【0042】
S120では、前述のS20で特定された契約内容が、上記期間課金契約であるか否かが判定される。期間課金契約でなければNo判定され、S130へ移行する。
【0043】
S130では、前述のS20で特定された契約内容が枚数課金契約でも期間課金契約でもないことに対応して、印刷に使用する駆動信号パターンが前述のデフォルトパターンに設定され、このルーチンを終了して前述のS10へ移行する。
【0044】
一方、S120において、前述のS20で特定された契約内容が上記期間課金契約であった場合はYes判定され、S140へ移行する。S140では、期間課金契約の詳細が、期間の間に印刷量に応じて駆動信号パターンを可変にできる契約であるか否かが判定される。駆動信号パターンを可変にできる契約であった場合はYes判定され、S150へ移行する。
【0045】
S150では、この時点における印刷済の記録用紙Pのページ数(以下適宜、単に「印刷量」と称する)が、事前に定められている所定の閾値を超えているか否かが判定される。この閾値は、例えば契約に定められた期間の間ユーザにより印刷が行われると想定された印刷量を大きく上回った際に生じうるサービス業者の不利益を防止するために、事前に適宜の値に定められているものである。この時点における印刷量が上記閾値を超えない間はNo判定され、S160へ移行する。
【0046】
S160では、前述のようにS40で取得されインストールされていた駆動信号パターンの中から、印刷に使用する駆動信号パターンが設定される。このS160では、具体的には、前述のように枚数課金契約に対応してユーザがある程度まとまった数の印刷を行う場合に対応して、印刷に使用する駆動信号パターンが、相対的にインク濃度が薄くなるように予めアレンジされた上記高印刷量用パターンに設定される。なお、この高印刷量用パターンの設定の前に、当該高印刷量用パターンとは別の駆動信号パターンが設定されていた場合は、このS160において、印刷に使用する駆動信号パターンが、当該別の駆動信号パターンから、上記高印刷量用パターンに自動的に変更されることとなる。なおここでいう「変更」とは、印刷に使用する駆動信号パターンを差し替えるという意味であり、前述のようにEEPROM54のデフォルトパターン記憶部54Aに記憶されたデフォルトパターンは差し替えられずにそのまま保持される。したがってこの場合は、上記別の駆動信号パターンが第1駆動信号パターンの一例であり、高印刷量用パターンが第2駆動信号パターンの一例である。その後、このルーチンを終了して前述のS10へ移行する。
【0047】
一方、S150においてこの時点における印刷量が上記閾値を超えた場合はYes判定され、S162へ移行する。S162では、印刷量が当初想定された印刷量を大きく上回る可能性があることに対応し、印刷に使用する駆動信号パターンを、相対的に吐出量が低くなるようにアレンジされた上記低吐出量化パターンに変更する旨の予告報知がユーザへと送信される。具体的には、予告報知は、例えば外部通信I/F87を介し、ユーザが当該予告報知を認識可能な上記外部機器150へと送信される。なお、ユーザがプリンタ1の近傍にいる等の場合には、プリンタ1に適宜に設けた表示部において上記予告報知を行ってもよい。
【0048】
予告報知を認識したユーザが上記低吐出量化パターンへの変更を了解した旨の適宜の操作を外部機器150で行うことで、当該操作に対応した指示が外部通信I/F87を介して取得される。なお、プリンタ1の表示部において予告報知が行われた場合は、プリンタ1に設けた適宜の操作部においてユーザが上記低吐出量化パターンへの変更を了解した旨の適宜の操作を行うことで、当該操作に対応した指示が取得される。この場合、この操作がパターン変更操作の一例であり、このときにCPU51が実行する処理が、変更操作受付処理の一例である。
【0049】
上記のような外部機器150からの指示の取得又は操作部の操作に対応した指示の取得により、S162の次のS165においてYes判定がなされ、S170へ移行する。なお、S165において上記操作部の操作に対応して取得される上記指示はパターン変更指令の一例であり、その場合にS165でCPU51が実行する処理は、変更指令受信処理の一例である。
【0050】
S170では、前述のようにS40で取得されインストールされていた駆動信号パターンの中から、印刷に使用する駆動信号パターンが設定される。具体的には、このS170では、印刷に使用する駆動信号パターンが、上記低吐出量化パターンに変更される。このS170が実行されるタイミングが、第2タイミングの一例である。この場合、S150がYes判定される直前まではS150がNo判定されてS160において上記高印刷量用パターンに設定されていたものが、S170で低吐出量化パターンに自動的に変更されることとなる。すなわちこの場合、S40においてダウンロードされサブパターン記憶部53Aにインストールされた高印刷量用パターン及び低吐出量化パターンのうち、最初は高印刷量用パターンが使用され、上記S170でYes判定された後は、使用される駆動信号パターンが低吐出量化パターンに自動的に変更される。なおここでいう「変更」とは、印刷に使用する駆動信号パターンを差し替えるという意味であり、前述のようにEEPROM54のデフォルトパターン記憶部54Aに記憶されたデフォルトパターンは差し替えられずにそのまま保持される。したがってこの場合は高印刷量用パターンが第1駆動信号パターンの一例であり、低吐出量化パターンが第2駆動信号パターンの一例である。S170の完了後はこのルーチンを終了して前述のS10へ移行する。
【0051】
一方、前述のS140で、期間課金契約の詳細が、期間の間に印刷量に応じて駆動信号パターンを可変にできる契約ではなかった場合はNo判定され、直接上記S170へ移行して、印刷に使用する駆動信号パターンが上記低吐出量化パターンに変更される。なおこの場合に、この低吐出量化パターンの設定の前に、当該低吐出量化パターンとは別の駆動信号パターンが設定されていた場合は、このS170において、印刷に使用する駆動信号パターンが、当該別の駆動信号パターンから、上記低吐出量化パターンに自動的に変更されることとなる。なおここでいう「変更」とは、印刷に使用する駆動信号パターンを差し替えるという意味であり、前述のようにEEPROM54のデフォルトパターン記憶部54Aに記憶されたデフォルトパターンは差し替えられずにそのまま保持される。したがってこの場合は上記別の駆動信号パターンが第1駆動信号パターンの一例であり、低吐出量化パターンが第2駆動信号パターンの一例である。
【0052】
また、前述のS110で、前述のS20で特定された契約内容が枚数課金契約であるか否かが判定される。枚数課金契約であればYes判定され、S180へ移行する。S180では、別途外部機器150等から取得されている印刷データに基づき、この時点で次に印刷を実行しようとしている記録用紙Pに対する印刷内容において、その印刷ドット数のカウント値(以下適宜、「ドットカウント」と略称する)が、事前に定められている所定の閾値を超えているか否かが判定される。この閾値は、前述したように、例えば高画質の写真やグラフなどの精密図面画像等、ドットカウントが極めて大きくなる印刷が行われる場合のサービス業者の不利益を防止するために事前に適宜の値に定められているものである。その際、カラー印刷の場合とモノクロ印刷の場合とで閾値の値を変えてもよい。なお、ドットカウントに限られず、インクの使用量に対応する物性値、状態量等であれば他の値を用いてもよい。すなわち、ドットカウントはインク使用量の一例である。上記写真・精密図面画像等の印刷ではなく上記閾値を超えない場合にはS180がNo判定され、前述のS160へ移行し、印刷に使用する駆動信号パターンが上記高印刷量用パターンに設定される。
【0053】
S180において、上記高画質の写真・精密図面画像等の印刷であり上記閾値を超える場合にはS180がYes判定され、S182へ移行する。S182では、上記S162と同様、ドットカウントが当初想定されたものを大きく上回る可能性があることに対応し、印刷に使用する駆動信号パターンを上記低吐出量化パターンに変更する旨の予告報知が例えば外部通信I/F87を介し外部機器150へと送信される。前述と同様、プリンタ1の表示部において上記予告報知を行ってもよい。
【0054】
S162と同様に、予告報知を認識したユーザが了解した旨の操作を外部機器150又は操作部において行うことで当該操作に対応した指示が取得され、これにより次のS185においてYes判定がなされ、S190へ移行する。なお、前述のS165と同様、S185において取得される上記指示がパターン変更指令の一例であり、S185でCPU51が実行する処理が、変更指令受信処理の一例である。なお、S185において上記操作部の操作に対応して取得される上記指示は前述と同様パターン変更指令の一例であり、その場合にS185でCPU51が実行する処理は、変更指令受信処理の一例である。
【0055】
S190では、前述のようにS40で取得されインストールされていた駆動信号パターンの中から、印刷に使用する駆動信号パターンが設定される。具体的には、このS190では、前述のS170と同様、印刷に使用する駆動信号パターンが上記高印刷量用パターンに設定される。S190では、この時点で印刷しようとしている記録用紙Pへの印刷内容が、想定されているドットカウント範囲を大きく上回ることに対応し、当該記録用紙Pへの印刷に使用する駆動信号パターンが、相対的に吐出量が低くなるようにアレンジされた上記低吐出量化パターンに設定される。このS190が実行されるタイミングが、第2タイミングの一例である。この場合、S180がYes判定される直前まではS180がNo判定されてS160において上記高印刷量用パターンに設定されていたものが、S190で低吐出量化パターンに自動的に変更されることとなる。すなわちこの場合、S40においてダウンロードされサブパターン記憶部53Aにインストールされた高印刷量用パターン及び低吐出量化パターンのうち、最初は高印刷量用パターンが使用され、上記S180でYes判定された後は、使用される駆動信号パターンが低吐出量化パターンに自動的に変更される。なおここでいう「変更」とは、印刷に使用する駆動信号パターンを差し替えるという意味であり、前述のようにEEPROM54のデフォルトパターン記憶部54Aに記憶されたデフォルトパターンは差し替えられずにそのまま保持される。したがってこの場合は高印刷量用パターンが第1駆動信号パターンの一例であり、低吐出量化パターンが第2駆動信号パターンの一例である。S190の完了後はこのルーチンを終了して前述のS10へ移行する。
【0056】
なお、前述のS130,S160,S170,S190においてCPU51が実行する処理が変更指令受信処理の一例であり、信号パターン設定処理の一例でもある。また、それらS130,S160,S170,S190は、信号パターン設定ステップの一例である。
【0057】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のプリンタ1においては、インクカートリッジ32からインクジェットヘッド3にインクが導入され、インクジェットヘッド3からインクが吐出されて記録用紙Pに印刷が行われる。
プリンタ1に対し、若しくは、プリンタ1のユーザの使用に対し、予め所定の契約が締結されている。インクを吐出するインクジェットヘッド3は駆動信号パターンによって駆動され、その駆動信号パターンは、上記契約に対応する契約情報に応じて自動的に設定される(
図4のS110~S190参照)。本実施形態によれば、締結された契約内容に応じた駆動信号パターンでインクジェットヘッド3が駆動されるので、契約に対応して柔軟性をもって最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0058】
また、本実施形態では特に、契約の内容を表す契約情報に対応して、カートリッジホルダ35に装着されるべきインクカートリッジ32の種類が予め決まっている(S50,S60参照)。信号パターン設定処理では、装着されるべきインクカートリッジ32の種類に対応して駆動信号パターンが設定される。本実施形態によれば、締結された契約で使用されるインクカートリッジ32の種類に対応し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0059】
また、本実施形態では特に、EEPROM54又はRAM53に少なくとも1種類の駆動信号パターンが予め記憶されている。
図4のS160,S170,S190では、EEPROM54又はRAM53に事前に記憶されていた駆動信号パターンが、契約情報に応じた別の駆動信号パターンに変更される。本実施形態によれば、EEPROM54又はRAM53に記憶された駆動信号パターンを契約に対応したものに変更することで、最適化された印刷サービスを提供することができる。なお、上記「変更」において、前述のように全く異なる駆動信号パターンに差し替えるのではなく、元々の駆動信号パターンの駆動パルス信号の波形の一部を変形したり調整したりすることにより当該「変更」を実現するようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では特に、EEPROM54又はRAM53に、デフォルトパターンと、デフォルトパターンではない別の駆動信号パターンと、が予め記憶されている。
図4のS160,S170,S190では、EEPROM54又はRAM53に記憶された上記デフォルトパターンは変更されずに、デフォルトパターンでない別の駆動信号パターンが、契約に対応した駆動信号パターンに変更される。本実施形態によれば、EEPROM54又はRAM53に記憶されたデフォルトパターンを変更することなく温存しつつ、最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、プリンタ1は外部通信I/F87を備えている。契約が成立しS20で契約内容が特定された後にS40が実行されることにより、外部通信I/F87を介した通信を介し、デフォルトパターンでない別の駆動信号パターンを外部機器150から取得することができる。なお、このように外部から新たな駆動信号パターンを取得して上記変更を行うのではなく、プリンタ1内に事前に用意されている駆動信号パターンどうしで、前述の差し替えを含む変更を行うようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では特に、S40でサブパターン記憶部53Aに駆動信号パターンをインストールしたタイミングよりも後のタイミングで実行される、S160,S170,S190において、それまで設定されていた駆動信号パターンが、S40で取得された駆動信号パターンに変更される。本実施形態によれば、通信によって外部機器150から取得された駆動信号パターンを用いて、契約に対応して最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0063】
また、本実施形態では特に、S150で印刷量が閾値を超えた場合又はS180でインク使用量としてのドットカウントが閾値を超えた場合に、それまで設定された駆動信号パターンが、契約に対応した別の駆動信号パターンに変更される(S170,S190参照)。本実施形態によれば、ユーザによる大量の印刷が行われたことを契機に、駆動信号パターンを契約に対応したものに切り替えることができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、カートリッジホルダ35にインクカートリッジ32が装着されると、S50においてそのインクカートリッジ32の種類が識別される。その後のS60において、識別されたインクカートリッジ32の種類が、契約情報に応じてカートリッジホルダ35に装着されるべきインクカートリッジ32の種類と合致しているか否かが照合される。装着されたインクカートリッジ32の種類が契約に対応したインクカートリッジ32と異なっていた場合にはS70で対応する警告報知が行われる。本実施形態によれば、不適当なインクカートリッジ32がカートリッジホルダ35装着されていることをユーザに認識させることができる。
【0065】
また、本実施形態では特に、インクカートリッジ32のカートリッジメモリ65にカートリッジ種類情報が記憶されている。S50においてそのカートリッジメモリ65に記憶されたカートリッジ種類情報が取得され、S60において前述の照合が行われる。本実施形態によれば、インクカートリッジ32側に記憶されたカートリッジ種類情報に基づき、高精度かつ確実に照合を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では特に、例えばプリンタ1のメーカ・販売会社や印刷サービスを提供する事業者のサーバ若しくはユーザの情報端末等である、外部機器150から低吐出量化パターンへの変更を了解した旨の指示が受信される(S165,S185参照)。この受信を契機としてS170,S190が行われて、もともと設定されていた駆動信号パターンが、契約に対応した別の駆動信号パターンに変更される。本実施形態によれば、外部機器150の操作に基づいて駆動信号パターンの変更を実行し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
また、特に、前述のS165,S185においてプリンタ1の操作部におけるユーザの適宜の操作に対応して取得された指示に基づきS170,S190での駆動信号パターンが設定される場合には、プリンタ1の操作部の操作に基づいて駆動信号パターンの変更を実行し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0067】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0068】
(1)液滴の大きさに基づく駆動信号パターンの具体例
すなわち、上記駆動信号パターンの類型として、インクの液滴の合計体積に応じて、大玉、中玉、小玉、微小玉の4つを用いてもよい。これら大玉、中玉、小玉、微小玉それぞれに係る駆動信号パターンを
図5(a)~(d)により説明する。
【0069】
例えば
図5(a)は、大玉用の駆動信号パターンを描いたものである。この駆動信号パターンは、4つのハイレベル期間すなわち前述の圧力室の容積拡大期間と、その前後のローレベル期間すなわち前述の圧力室の容積縮小期間と、から構成されている。それぞれが吐出パルスである始めの3つのハイレベル期間H11,H12,H13の終了後には、上述した引き打ちによって、ノズル10からインク滴(例えば体積12pl)がそれぞれ吐出され、3つのインク滴が重なることで記録用紙P上に大玉ドットが形成される。そして、キャンセルパルスである4つ目のハイレベル期間H14には、ノズル10からインクが吐出されるのではなく、圧力室内に残留するインク圧力の変動が相殺される。これにより、次のインク吐出に悪影響がでないようにされる。
【0070】
図5(b)は、中玉用の駆動信号パターンを描いたものである。この駆動信号パターンは、3つのハイレベル期間とその前後のローレベル期間とから構成されている。それぞれが吐出パルスである始めの2つのハイレベル期間H21,H22の終了後には、上述した引き打ちによって、ノズル10からインク滴(例えば体積12pl)がそれぞれ吐出され、2つのインク滴が重なることで記録用紙P上に中玉ドットが形成される。そして、キャンセルパルスである3つ目のハイレベル期間H23には、ノズルからインクが吐出されるのではなく、圧力室内に残留するインク圧力の変動が相殺される。
【0071】
図5(c)は、小玉用の駆動信号パターンを描いたものである。この駆動信号パターンは、2つのハイレベル期間とその前後のローレベル期間とから構成されている。吐出パルスである始めの1つのハイレベル期間H31の終了後には、上述した引き打ちによって、ノズル10からインク滴(例えば体積12pl)が吐出されることで記録用紙P上に小玉ドットが形成される。そして、キャンセルパルスである2つ目のハイレベル期間H32には、ノズルからインクが吐出されるのではなく、圧力室内に残留するインク圧力の変動が相殺される。
【0072】
図5(d)は、微小玉用の駆動信号パターンを描いたものである。この駆動信号パターンは、3つのハイレベル期間とその前後のローレベル期間とから構成されている。吐出パルスである最初のハイレベル期間H41の終了後には、上述した引き打ちによって、ノズル10からインク滴(例えば体積12pl)が吐出されようとするが、その後比較的短時間のうちに引き込みパルスである2つ目のハイレベル期間H42となるためにノズル10から吐出されようとするインク滴の後端側の一部がノズル内側に引き込まれる。これによって、ノズル10から実際に吐出されるインク滴の体積は例えば5pl程度となり、その結果として記録用紙P上に微小玉ドットが形成される。そして、キャンセルパルスである3つ目のハイレベル期間H43には、ノズルからインクが吐出されるのではなく、圧力室内に残留するインク圧力の変動が相殺される。
【0073】
前述したように契約内容に応じて駆動信号パターンを変える手法において、契約と、上記大玉用の駆動信号パターン、中玉用の駆動信号パターン、小玉用の駆動信号パターンとの対応付けの一例を
図6に示す。この例では、小玉用の駆動信号パターンとして、互いに異なる3つの駆動信号パターンa,p,xが用意され、中玉用の駆動信号パターンとして、互いに異なる3つの駆動信号パターンb,q,yが用意され、大玉用の駆動信号パターンとして、互いに異なる3つの駆動信号パターンc,r,zが用意されている。すなわち、これら9つの駆動信号パターンa~c,p~r,x~zは、互いに異なる駆動信号パターンとなっている。
【0074】
図6の例では、契約Iが締結された場合には、小玉用として駆動信号パターンaが設定され、中玉用として駆動信号パターンbが設定され、大玉用として駆動信号パターンcが設定される。契約IIが締結された場合には、小玉用として駆動信号パターンpが設定され、中玉用として駆動信号パターンqが設定され、大玉用として駆動信号パターンrが設定される。契約IIIが締結された場合には、小玉用として駆動信号パターンxが設定され、中玉用として駆動信号パターンyが設定され、大玉用として駆動信号パターンzが設定される。
【0075】
また
図7には、別の対応付けの例を示す。この例では、契約と、大玉用の駆動信号パターン、中玉用の駆動信号パターン、小玉用の駆動信号パターン、微小玉用の駆動信号パターンとの対応付けがなされている。
図7に示す例では、小玉用の駆動信号パターンとして1つの駆動信号パターンgが用意され、中玉用の駆動信号パターンとして1つの駆動信号パターンhが用意され、大玉用の駆動信号パターンとして1つの駆動信号パターンiが用意されている。また、微小玉用の駆動信号パターンとして1つの駆動信号パターンsが用意されている。これら4つの駆動信号パターンg,h,i,sは、互いに異なる駆動信号パターンとなっている。
【0076】
図7の例では、契約IVが締結された場合には、小玉用として駆動信号パターンgが設定され、中玉用として駆動信号パターンhが設定され、大玉用として駆動信号パターンiが設定される。契約Vが締結された場合には、微小玉用として駆動信号パターンsが設定される一方、小玉用及び中玉用として契約IVと同様の駆動信号パターンg,hがそれぞれ設定される。すなわちこの例では、事前に準備された駆動信号パターンg,h,i,sのうち、使用するパターンを契約ごとに組み替えることとなる。
【0077】
以上の
図6、
図7に示した変形例においては、上記のように、予めプリンタ1において用意されている駆動信号パターンのうち、契約内容に応じて選択されたものが、印刷に使用する駆動信号パターンとして設定されることにより、上記実施形態と同等の効果を得る。
【0078】
なお、
図6又は
図7に例示したように大玉用、中玉用、小玉用、微小玉用の駆動信号パターンが用意されている場合には、例えば前述の
図4のS180でドットカウントが前述のしきい値を超えYes判定されたとき、その後のS190で玉の大きさはそのままで玉どうしの間隔を広くして全体の分布を疎にしたり、駆動信号パターンをより小玉化してもよい。
【0079】
(2)デフォルトパターンを設けない場合
以上においては、プリンタ1のEEPROM54のデフォルトパターン記憶部54Aにデフォルトパターンが設けられ、契約に応じた駆動信号パターンが設定される際も、そのデフォルトパターンは変更されず保持される場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばプリンタ1が、メモリ容量のもともとあまり多くない機種である場合には、デフォルトパターンは設けなくてもよい。この場合は、契約に基づき印刷が行われる都度、対応する駆動信号パターンを外部機器150等から取得してRAM53のサブパターン記憶部53Aに記憶し、印刷において使用する駆動信号パターンとして設定すればよい。
【0080】
(3)プリンタの操作部の操作等を契機に駆動信号パターンを変更する場合
以上においては、契約が締結されS20で内容が特定された後、S150,S180で閾値を超えたときに、S165,S185において駆動信号パターンの変更を了解した旨の指示が取得されるのを待って駆動信号パターンの変更を行ったが、これに限られない。すなわち上記S150,S180で閾値を超える場合以外の場合でも、S130,S160,S170,S190において駆動信号パターンの設定を行う際に常に上記同様の指示の取得を契機に設定を行うようにしてもよい。この場合、前述したように、外部機器150の操作に基づいて駆動信号パターンの変更を実行し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
またその場合に、前述と同様、プリンタ1に設けた適宜の操作部における操作に対応した指示の取得を契機にしてもよい。この場合、プリンタ1の操作部の操作に基づいて駆動信号パターンの変更を実行し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0081】
さらに、上記のような外部機器150からの指示が受信され、さらにこれに加えて上記操作部の操作に対応した指示の取得と、の両方があったことを条件に、駆動信号パターンの変更を行うようにしてもよい。この場合は、外部機器150の操作とプリンタ1の操作部の操作とに基づいて駆動信号パターンの変更を実行し、最適化された印刷サービスを提供することができる。
【0082】
(4)その他
なお、以上においては、収容体として、カートリッジホルダ35に着脱可能なインクカートリッジ32が用いられる場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、プリンタ1に対し固定的に設けられて内部にインクが貯留されるタンクを、上記収容体として用いてもよい。
また、以上においては、
図3、
図4に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0083】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0084】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 プリンタ(印刷装置の一例)
2 キャリッジ
3 インクジェットヘッド(吐出ヘッドの一例)
32 インクカートリッジ(収容体の一例)
35 カートリッジホルダ(装着部の一例)
51 CPU(制御部の一例)
P 記録用紙(被印刷媒体の一例)