(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156569
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】グリッドシステム、電力授受方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20221006BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221006BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221006BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/00 P
H02J3/38 130
H02J7/35 K
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060323
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 典行
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA07
5G503DA08
5G503DA13
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】第1蓄電池と第2蓄電池との間で電力が授受される際に、所定の機能を維持できるグリッドシステム及びグリッドシステムで実行される方法を提供すること。
【解決手段】グリッドシステムは、第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ第1蓄電池と第2蓄電池との間で電力を授受できる。第1蓄電池は住宅に設けられた住宅用蓄電池であり、第2蓄電池は車両に設けられた車両用蓄電池である。グリッドシステムは、第1蓄電池と第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行う電力授受制御部と、車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、車両用蓄電池のSOCが、所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部によって授受される電力量を調整する車両機能保証制御を行う機能保証制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で電力を授受できるグリッドシステムであって、
前記第1蓄電池は住宅に設けられた住宅用蓄電池であり、前記第2蓄電池は車両に設けられた車両用蓄電池であり、
前記グリッドシステムは、
前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行う電力授受制御部と、
前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOCが、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力授受制御部によって授受される電力量を調整する車両機能保証制御を行う機能保証制御部と
を備える、グリッドシステム。
【請求項2】
前記住宅用蓄電池は、住宅に設けられた太陽光発電装置によって発電された電力を蓄電し、
前記車両用蓄電池は、車両に設けられた太陽光発電装置によって発電された電力を蓄電する、請求項1に記載のグリッドシステム。
【請求項3】
前記電力授受制御部は、第1需要家が有する車両用蓄電池と、第2需要家が有する第3蓄電池又は所定の地理的範囲を電気的に接続する地域内電力線との間で電力を授受する、請求項1又は請求項2に記載のグリッドシステム。
【請求項4】
前記機能保証制御部は、所定の機能が動作している間は、前記車両用蓄電池に接続されている電力線の離脱を禁止する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のグリッドシステム。
【請求項5】
前記機能保証制御部は、前記車両の所定の機能の動作スケジュールに基づいて複数の機能について優先度を設定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のグリッドシステム。
【請求項6】
前記機能保証制御部は、前記地域内電力線によって電気的に接続される所定の地理的範囲で所定の機能が動作している間は、該所定の機能を実行するための電力を供給する第2蓄電池のSOCが、該所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力授受制御部によって授受される電力量を調整するグリッド内機能保証制御を行う、請求項3に記載のグリッドシステム。
【請求項7】
第1地理的範囲を電気的に接続する第1地域内電力線と、第2地理的範囲を電気的に接続する第2地域内電力線とが接続され、
前記機能保証制御部は、前記第1地域内電力線と前記第2地域内電力線とが接続されている間は、接続を維持するグリッド間接続維持制御を行う、請求項6に記載のグリッドシステム。
【請求項8】
前記機能保証制御部は、前記車両機能保証制御、前記グリッド内機能保証制御、前記グリッド間接続維持制御の順で優先する、請求項7に記載のグリッドシステム。
【請求項9】
第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で電力を授受できるグリッドシステムで実行される電力授受方法であって、
前記第1蓄電池は住宅に設けられた住宅用蓄電池であり、前記第2蓄電池は車両用蓄電池であり、
前記グリッドシステムで実行される方法は、
前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行うステップと、
前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOC(State Of Charge)が、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力量の調整を行うステップで授受される電力量を調整するステップと
を有する、グリッドシステムで実行される電力授受方法。
【請求項10】
コンピュータに、
住宅に設けられた住宅用蓄電池である第1蓄電池と車両に設けられた車両用蓄電池である第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行うステップと、
前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOCが、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力量の調整を行うステップで授受される電力量を調整するステップと
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッドシステム、電力授受方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、ホームエネルギーマネジメントシステム(Home Energy Management System: HEMS)において、車載蓄電池を備え、家庭用電源(系統電源)と接続する機能を持つ給電機能付きEV(Electric Vehicle)などの電動車両はあまり想定されていなかった。
【0003】
電動車両に関して、電気自動車の駆動用に必要な電力量をユーザの用途に応じて蓄えておきながら、太陽光発電で発生する余剰電力を柔軟に活用する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術は、太陽光発電システムが導入された住宅において電動車両に搭載された蓄電池の充電および放電を行う充放電装置である。充放電装置は、蓄電池の充電および放電を行う電力変換部と、蓄電池の目標充電量を示す目標充電量情報を管理する充電量管理部と、蓄電池を充電または放電させて蓄電池の充電量を目標充電量に近づける動作を行う時間帯を示す充電量調整時間情報を管理する時間管理部と、目標充電量情報および充電量調整時間情報に基づいて電力変換部を制御する動作制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EV車のSOC(State Of Charge)が低い場合でも放電要求したり、SOCが高くても充電要求したりするなど、車両充放電制御との協調が取れていない場合、種々の不都合が生じる場合がある。
一人世帯や核家族世帯でHEMSを使用する場合、使用者が家屋中に居り車両内に不在の場合や、使用者が車両内に居り家屋内に不在の場合など、HEMSの制御が、使用者が不在にも関わらずエネルギー使用の制約となることが想定され、不経済非効率な状況が生じることも考えられる。
これらの問題は、家屋などの住宅と車両とが一対一で接続される状況で起こり得るが、さらに車両同士、住宅同士を接続してエネルギー連携可能に構成したグリッドシステムにおいても顕著になると考えられる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、電力が授受される際に、所定の機能を維持できるグリッドシステム、電力授受方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るグリッドシステムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係るグリッドシステムは、第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で電力を授受できるグリッドシステムであって、前記第1蓄電池は住宅に設けられた住宅用蓄電池であり、前記第2蓄電池は車両に設けられた車両用蓄電池であり、前記グリッドシステムは、前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行う電力授受制御部と、前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOCが、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力授受制御部によって授受される電力量を調整する車両機能保証制御を行う機能保証制御部とを備える、グリッドシステムである。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記住宅用蓄電池は、住宅に設けられた太陽光発電装置によって発電された電力を蓄電し、前記車両用蓄電池は、車両に設けられた太陽光発電装置によって発電された電力を蓄電する。
【0009】
(3):上記(1)又は上記(2)の態様において、前記電力授受制御部は、第1需要家が有する車両用蓄電池と、第2需要家が有する第3蓄電池又は所定の地理的範囲を電気的に接続する地域内電力線との間で電力を授受する。
【0010】
(4):上記(1)から(3)のいずれか一項の態様において、前記機能保証制御部は、所定の機能が動作している間は、前記車両用蓄電池に接続されている電力線の離脱を禁止する。
【0011】
(5):上記(1)から(4)のいずれか一項の態様において、前記機能保証制御部は、前記車両の所定の機能の動作スケジュールに基づいて複数の機能について優先度を設定する。
【0012】
(6):上記(3)の態様において、前記機能保証制御部は、前記地域内電力線によって電気的に接続される所定の地理的範囲で所定の機能が動作している間は、該所定の機能を実行するための電力を供給する第2蓄電池のSOCが、該所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力授受制御部によって授受される電力量を調整するグリッド内機能保証制御を行う。
【0013】
(7):上記(6)の態様において、第1地理的範囲を電気的に接続する第1地域内電力線と、第2地理的範囲を電気的に接続する第2地域内電力線とが接続され、前記機能保証制御部は、前記第1地域内電力線と前記第2地域内電力線とが接続されている間は、接続を維持するグリッド間接続維持制御を行う。
【0014】
(8):上記(7)の態様において、前記機能保証制御部は、前記車両機能保証制御、前記グリッド内機能保証制御、前記グリッド間接続維持制御の順で優先する。
【0015】
この発明に係るグリッドシステムで実行される方法は、以下の構成を採用した。
(9):この発明の一態様に係るグリッドシステムで実行される電力授受方法は、第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で電力を授受できるグリッドシステムで実行される方法であって、前記第1蓄電池は住宅に設けられた住宅用蓄電池であり、前記第2蓄電池は車両用蓄電池であり、前記グリッドシステムで実行される方法は、前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行うステップと、前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOCが、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力量の調整を行うステップで授受される電力量を調整するステップとを有する、グリッドシステムで実行される方法である。
【0016】
この発明に係るコンピュータプログラムは、以下の構成を採用した。
(10):この発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、住宅に設けられた住宅用蓄電池である第1蓄電池と車両に設けられた車両用蓄電池である第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行うステップと、前記車両用蓄電池が搭載された車両が有する所定の機能が動作している間、前記車両用蓄電池のSOCが、前記所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように前記電力量の調整を行うステップで授受される電力量を調整するステップとを実行させる、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
(1)から(10)によれば、電力が授受される際に、所定の機能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例1を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るグリッドシステムに含まれる住宅と車両との一例を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係るグリッドシステムの動作の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るグリッドシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例2を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例3を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本実施形態のグリッドシステム及びグリッドシステムで実行される方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0020】
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0021】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例1を示す図である。
本実施形態に係るグリッドシステム1は、地域内電力線50を備える。地域内電力線50は、所定の地理的範囲を電気的に接続する。地域内電力線50は、地域内で使用可能な電力を各住宅で相互に融通するための送電線を含む。地域内電力線50には、住宅100-1から住宅100-5の各々が電力線を介して接続される。住宅100-1から住宅100-5の各々は、地域内電力線50から電力の供給を受ける。住宅100-1から住宅100-5の各々は、地域内電力線50と電力線とを介して電力線搬送通信を行う。
【0022】
系統電力は地域変圧器(図示なし)へ電力を供給する。地域変圧器は系統電力が供給した電力を、地域内電力線50での送電に適した電圧及び電流に変換する。地域内電力線50での電圧及び電流の一例は、三相3線式200V、単相2線式200V又は単相2線式100V等である。地域変圧器は、地域内電力線50での送電に適した電圧及び電流に変換した電力を、地域内電力線50へ供給する。地域内電力線50の一例は、環状方式、樹枝状方式、低圧バンキング方式又はレギュラーネットワーク方式である。本実施形態では、一例として、地域内電力線50が環状方式である場合について説明を続ける。
【0023】
住宅100-1から住宅100-5の各々は、太陽光発電装置と住宅用蓄電池とを備える。住宅用蓄電池は、太陽光発電装置が発電した電力を蓄電する。
地域内電力線50には、電気自動車(EV: Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHV: Plug-in Hybrid Vehicle)などの電動車両が電力線を介して接続可能に構成されている。
図1に示される例では、住宅100-1の近傍の地域内電力線50には車両200-1が電力線を介して接続され、住宅100-2の近傍の地域内電力線50には車両200-2が電力線を介して接続され、住宅100-3の近傍の地域内電力線50には車両200-3が電力線を介して接続され、住宅100-4の近傍の地域内電力線50には車両200-4が電力線を介して接続されている。
車両200-1から車両200-4の各々は、車両用蓄電池を備える。車両200-1から車両200-4のうち、車両200-1と車両200-2と車両200-4とは、太陽光発電装置を備える。車両200-1と車両200-2と車両200-4とは、太陽光発電装置が発電した電力を車両用蓄電池に蓄電する。
【0024】
車両200-1から車両200-4の各々は地域内電力線50と接続することで、住宅100-1から住宅100-5の各々との間で地域内電力線50を経由して電力を授受することと電力線搬送通信を行うこととができる。車両200-1から車両200-4の各々は、住宅100-1から住宅100-5の各々との間で電力を授受する場合に、所定の機能が動作している間は、その所定の機能を実行し続ける制御を行う。
車両200-1から車両200-4の各々同士は地域内電力線50と接続することで、地域内電力線50を経由して電力を授受することと電力線搬送通信を行うこととができる。車両200-1から車両200-4の各々同士は電力を授受する場合に、所定の機能が動作している間は、その所定の機能を実行し続ける制御を行う。
住宅100-1から住宅100-5の各々同士は、地域内電力線50を経由して電力を授受することと電力線搬送通信を行うこととができる。
【0025】
以下、住宅100-1から住宅100-5のうち任意の住宅を住宅100と記載する。車両200-1から車両200-4のうち任意の車両を車両200と記載する。住宅100と車両200とについて順次説明する。
図2は、本実施形態に係るグリッドシステムに含まれる住宅と車両との一例を説明するための図である。
【0026】
(住宅100)
住宅100は、分電盤104と、HEMS106と、住宅用蓄電池108と、太陽光発電装置111と、電力授受制御部112と、記憶部114と、連結部116とを備える。
分電盤104には、電力会社から供給される系統電力が、地域変圧器と地域内電力線50と電力線とを介して供給される。分電盤104は、系統電力から供給される電力を電力供給先に供給する。例えば、分電盤104には、電力供給先として、住宅100に設けられた家電機器(図示なし)、住設機器(図示なし)などが接続されている。分電盤104は、系統電力からの電力を、家電機器、住設機器などに供給する。
【0027】
分電盤104には、太陽光発電装置111と住宅用蓄電池108とが接続されている。分電盤104は、太陽光発電装置111が発電した電力を、住宅用蓄電池108に供給する。住宅用蓄電池108は、分電盤104が供給した電力を蓄電する。
分電盤104には、ケーブルを介して連結部116が接続されている。連結部116は、地域内電力線50と電力線を介して接続することが可能である。連結部116は、電力線によって地域内電力線50と接続されることにより、分電盤104と地域内電力線50とを電気的に接続するコネクタである。コネクタは、分電盤104からの電力を地域内電力線50に供給する電力線の端子を備える。コネクタは、地域内電力線50から供給される電力を分電盤104に供給するための電力線の端子を備える。また、コネクタを介して、HEMS106と、地域内電力線50に接続されている他の住宅に設置されているHEMS106及び車両200とが電力線搬送通信を行うことが可能である。
【0028】
車両200が地域内電力線50に電力線を介して接続された場合に、住宅100の住宅用蓄電池108に蓄電された電力を、分電盤104と連結部116と地域内電力線50とを経由して、車両200に供給することが可能である。
車両200が地域内電力線50に電力線を介して接続された場合に、車両200に蓄電された電力を、地域内電力線50と連結部116と分電盤104とを経由して、住宅100の住宅用蓄電池108に供給することが可能である。ここで、車両200から取り出される電力は直流であるが、車両200が備えるインバータ(図示せず)によって、単相2線式100Vで50Hz又は60Hzの交流に変換されて、地域内電力線50へ供給される。
【0029】
HEMS106の制御によって、住宅用蓄電池108は放電し、住宅用蓄電池108が放電することによって得られる電力は、分電盤104、連結部116、地域内電力線50を経由して車両200へ供給される。車両200において、車両用蓄電池208は、地域内電力線50からの電力を蓄電する。
また、HEMS106の制御に従って、車両200の車両用蓄電池208は放電し、車両用蓄電池208が放電することによって得られる電力は、地域内電力線50、連結部116、分電盤104を経由して、住宅100へ供給される。住宅100において、住宅用蓄電池108は、分電盤104からの電力を蓄電する。
【0030】
HEMS106は、住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報と、車両用蓄電池208の識別情報(以下「車両用蓄電池ID」という)と車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報とを取得する。車両用蓄電池IDの一例は、MACアドレス(Media Access Control address)である。以下、車両用蓄電池IDとして、MACアドレスを適用した場合について説明を続ける。
HEMS106は、取得した住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報と車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、住宅用蓄電池108へ充電を要求し、車両用蓄電池IDに該当する車両用蓄電池208へ放電を要求する。
又は、HEMS106は、取得した住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報と車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、住宅用蓄電池108へ放電を要求し、車両用蓄電池IDに該当する車両用蓄電池208へ充電を要求する。
【0031】
図3は、本実施形態に係るグリッドシステムの動作の一例を示す図である。
図3において、AとBとは住宅100の住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を示し、CとDとは車両200の車両用蓄電池208のSOCを示す。住宅用蓄電池108に蓄電される電力は、下限電力と基準電力と上限電力とに基づいて管理される。ここで、下限電力、基準電力、上限電力の順に蓄電量が少ない方から多くなる。基準電力は、一定であることが好ましい。
【0032】
Aは、蓄電量が基準電力よりも多く上限電力よりも少ない場合である。この場合、HEMS106は、住宅用蓄電池108に蓄電された電力を供給するために、住宅用蓄電池108に放電を要求するとともに車両200の車両用蓄電池208に充電を要求する。これによって、住宅用蓄電池108は放電し、住宅用蓄電池108が放電することによって得られる電力は、車両200へ供給される。車両200において、車両用蓄電池208は、住宅用蓄電池108から供給された電力を蓄電する。
Bは、蓄電量が基準電力よりも少なく下限電力よりも多い場合である。この場合、HEMS106は、住宅用蓄電池108に電力を蓄電するために、住宅用蓄電池108に充電を要求するとともに車両200の車両用蓄電池208に放電を要求する。これによって、車両用蓄電池208は放電し、車両用蓄電池208が放電することによって得られる電力は、住宅100へ供給される。住宅100において、住宅用蓄電池108は、車両用蓄電池208から供給された電力を蓄電する。
このように構成することによって、住宅用蓄電池108に蓄積された電力を車両200の車両用蓄電池208に供給し、車両200の車両用蓄電池208に供給された電力を、他の住宅用蓄電池108に供給ができるため、車両200を電力のバッファとして使用することができる。
図2に戻り説明を続ける。
【0033】
HEMS106は、連結部116と連結部116に接続されている地域内電力線50との間の電流をモニターして、連結部116と地域内電力線50とを介して車両200の車両用蓄電池が充電されているか、又は車両200の車両用蓄電池の放電により、車両200の車両用蓄電池に蓄電された電力が地域内電力線50と連結部116とを経由して分電盤104に供給され、供給された電力が住宅用蓄電池108に蓄電されているかを把握している。
HEMS106は、コンピュータを含んで構成されており、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力ポートを備え、CPUとROMとRAMと入出力ポートとがアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバスを介して互いに接続されている。
【0034】
電力授受制御部112は、車両200の電力授受制御部212との間で電力の授受を行う。具体的には、電力授受制御部112は、住宅用蓄電池108に蓄電された電力を車両200に供給する。電力授受制御部112は、車両200の車両用蓄電池208に蓄電された電力が住宅100に供給される場合には、供給された電力を住宅用蓄電池108に蓄電させる制御を行う。
記憶部114は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより実現される。
【0035】
電力授受制御部112は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサが記憶部114に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0036】
(車両200)
車両200は、管理部206と、車両用蓄電池208と、機能保証制御部210と、太陽光発電装置211と、電力授受制御部212と、記憶部214とを備える。
管理部206は、車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報と、住宅用蓄電池108の識別情報(以下「住宅用蓄電池ID」という)と住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報とを取得する。住宅用蓄電池IDの一例は、MACアドレスである。以下、住宅用蓄電池IDとして、MACアドレスを適用した場合について説明を続ける。
管理部206は、取得した車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報と住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、車両用蓄電池208へ放電を要求し、住宅用蓄電池108へ充電を要求する。
又は、管理部206は、取得した車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報と住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、車両用蓄電池208へ充電を要求し、住宅用蓄電池108へ放電を要求する。
【0037】
管理部206は、車両用蓄電池208と地域内電力線50との間の電流をモニターして、車両用蓄電池208が充電されているか、又は車両用蓄電池208が放電されているかを把握している。
太陽光発電装置211が発電した電力は、車両用蓄電池208に供給される。車両用蓄電池208は、太陽光発電装置211が供給した電力を蓄電する。
【0038】
電力授受制御部212は、住宅100の電力授受制御部112との間で電力の授受を行う。具体的には、電力授受制御部212は、車両用蓄電池208に蓄電された電力を住宅100に供給する。電力授受制御部212は、住宅100の住宅用蓄電池108に蓄電された電力を車両200の車両用蓄電池208に供給する。
機能保証制御部210は、電力授受制御部212によって住宅100との間で電力が授受される場合に、車両200が有する所定の機能が動作している間、車両200の車両用蓄電池208のSOCが、その所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部212によって授受される電力量を調整する制御を行う。以下、車両200の車両用蓄電池208のSOCが、その所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように授受される電力量を調整する制御を「車両機能保証制御」という。
所定の機能の一例は、車両200を保護するために重要な機能であり、車両用蓄電池208を充電する機能、車両用蓄電池208を放電する機能、車両200のセキュリティを維持する機能が含まれる。このように構成することによって、車両用蓄電池208の充放電が途中でできなくなることを防止できる。また、車両200のセキュリティが低下して、問題が生じることを防止できる。
記憶部214は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。
【0039】
管理部206、機能保証制御部210、及び電力授受制御部212は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサが記憶部214に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0040】
(グリッドシステム1の動作)
図4は、本実施形態に係るグリッドシステムの動作の一例を示すフローチャートである。一例として、車両200の車両用蓄電池208に蓄電された電力を、住宅100の住宅用蓄電池108に供給する処理について説明する。
住宅100において、HEMS106は、住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報と、車両用蓄電池IDと車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報とを取得し、取得した住宅用蓄電池108に蓄電されている電力を特定する情報と車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、車両用蓄電池208へ放電を要求し、住宅用蓄電池108へ充電を要求する場合について説明する。
【0041】
(ステップS1-1)
住宅100において、HEMS106は、住宅用蓄電池IDと放電を要求する情報とを含む、車両200を宛先とする電力要求を作成する。
(ステップS2-1)
住宅100において、HEMS106は、作成した電力要求を電力線に出力する。電力線に出力された電力要求は、分電盤104と連結部116と地域内電力線50とを経由して、車両200へ送信される。
【0042】
(ステップS3-1)
車両200において、管理部206は、住宅100が送信した電力要求を取得する。管理部206は、取得した電力要求に含まれる放電を要求する情報を取得する。管理部206は、放電を要求する情報に基づいて、車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報を取得する。
管理部206は、取得した車両用蓄電池208に蓄電されている電力を特定する情報に基づいて、車両用蓄電池208に所定以上の電力が蓄電されているか否かを判定する。管理部206は、車両用蓄電池208に蓄電されている電力が所定以上である場合には放電することによって電力を供給できると判定し、所定未満である場合には放電できないため電力を供給できないと判定する。
【0043】
(ステップS4-1)
車両200において、管理部206は、電力を供給できるか否かを特定する情報を含む電力応答を作成する。
(ステップS5-1)
車両200において、管理部206は、作成した電力応答を電力線に出力する。電力線に出力された電力応答は、地域内電力線50と連結部116と分電盤104とを経由して、住宅100へ送信される。
【0044】
(ステップS6-1)
住宅100において、HEMS106は、車両200が送信した電力応答を取得する。HEMS106は、電力応答に含まれる電力を供給できるか否かを特定する情報を取得する。ここでは、電力応答に電力を供給できることを特定する情報が含まれる場合について説明を続ける。ここで、電力応答に電力を供給できないことを特定する情報が含まれる場合にはステップS1-1に戻り、他の車両を宛先とする電力要求を作成してもよい。
HEMS106は、取得した電力を供給できることを特定する情報に基づいて、車両200から電力の供給を受ける処理を開始する。電力授受制御部212は、電力の供給を受けることを特定する情報を含む、電力供給要求を作成する。
(ステップS7-1)
住宅100において、電力授受制御部112は、作成した電力供給要求を電力線へ出力する。電力線へ出力された電力供給要求は、分電盤104と連結部116と地域内電力線50とを経由して、車両200へ送信される。
【0045】
(ステップS8-1)
車両200において、電力授受制御部212は、住宅100が送信した電力供給要求を取得する。電力授受制御部212は、取得した電力供給要求に基づいて車両用蓄電池208を放電させる。車両用蓄電池208が放電することによって、車両用蓄電池208に蓄電された電力は、地域内電力線50、連結部116、分電盤104を経由して、住宅100の住宅用蓄電池108に供給される。住宅用蓄電池108は、供給された電力を蓄電する。
(ステップS9-1)
車両200において、機能保証制御部210は、所定の機能が動作しているか否かを判定する。所定の機能が動作していない場合には、ステップS11-1へ移行する。
【0046】
(ステップS10-1)
車両200において、機能保証制御部210は、所定の機能が動作していると判定した場合に、その所定の機能が動作している間、車両用蓄電池208のSOCが、その所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないよう放電されることによって住宅100に供給される電力量を調整する。
(ステップS11-1)
車両200において、電力授受制御部212は、放電が終了したか否かを判定する。放電が終了していない場合にはステップS9-1へ戻り、放電が終了した場合には終了する。
【0047】
図4に示すフローチャートにおいて、住宅100が電力要求を送信できる車両が複数の場合には、HEMS106は、複数の車両の各々が太陽光発電装置を備えているか否かに基づいて、電力要求を送信する車両を決定してもよい。この場合、車両200は、事前に、太陽光発電装置を備えているか否かを特定する情報を住宅100へ送信する。
具体的には、HEMS106は、太陽光発電装置を備えていない車両より、太陽光発電装置を備えている車両を優先してもよい。このように構成することによって、住宅100が電力要求を送信できる車両が複数の場合に太陽光発電装置を備えている車両に優先的に電力を供給する権利を与えることができるため、車両200に太陽光発電装置を備えることを促すことができる。
図4では、一例として、住宅用蓄電池108へ充電を要求し、車両用蓄電池208へ放電を要求する場合について説明したが、住宅用蓄電池108へ放電を要求し、車両用蓄電池208へ充電を要求する場合についても適用できる。
【0048】
前述した実施形態では、住宅100と車両200との間が電力線で接続され、電力線で電力線搬送通信を行う場合について説明したが、この例に限られない。例えば、住宅100と車両200との間で情報線を用いて通信が行われてもよいし、無線通信が行われてもよい。
【0049】
前述した実施形態では、車両200の車両用蓄電池208がケーブルを介して電力の供給を受ける場合について説明したが、この例に限られない。例えば、地域内電力線50と車両200とを非接触で電気的に接続して住宅100から電力供給し、車両用蓄電池208に充電を行うようにしてもよい。
具体的には、駐車スペース等にコイルを備えた送電受電回路(図示なし)を備え、送電受電回路は地域内電力線50を介して分電盤104と接続されている。車両200はコイルを備えた送電受電回路を備え、送電受電回路は車両用蓄電池208と接続されている。
車両用蓄電池208を充電する際には、駐車スペース側の送電受電回路へ分電盤104から電力を供給してコイルに通電することにより、電磁誘導作用により車両側のコイルへ電力を供給して送電受電回路を介して車両用蓄電池208を充電する。
また、車両用蓄電池208から電力を供給する際には、車両用蓄電池208の電力を用いて車両側のコイルに通電することにより、電磁誘導作用により駐車スペース側のコイルへ電力を供給して送電受電回路を介して分電盤104へ電力を供給する。
【0050】
前述した実施形態において、機能保証制御部210は、車両機能保証制御の実行中は、車両用蓄電池208に接続されている電力線の離脱を禁止する。例えば、機能保証制御部210は、車両用蓄電池208から電力線が離脱しないように電力線との接続がロックされてもよい。このように構成することによって、車両機能保証制御の実行中換言すれば電力の授受が行われている間に、電力線が離脱し、電力の授受ができなくなることを防止できる。
前述した実施形態において、機能保証制御部210は、地域内電力線50によって電気的に接続される所定の地理的範囲で所定の機能が動作している間は、その所定の機能を実行するための電力を供給する車両用蓄電池208のSOCがその所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように授受される電力量を調整するようにしてもよい。
以下、地域内電力線50によって電気的に接続される所定の地理的範囲で所定の機能が動作している間、その所定の機能を実行するための電力を供給する車両用蓄電池208のSOCがその所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように授受される電力量を調整する制御を「グリッド内機能保証制御」という。
ここで、地域内電力線50によって電気的に接続される所定の地理的範囲で動作している所定の機能の一例は、生命維持などに関するものであってもよい。具体的には、所定の機能の一例は、エレベータの動作、重要な会議中に使用している電力が含まれる。このように構成することによって、車両200の車両用蓄電池208に蓄電された電力を電源として使用している場合に、車両200が地域内電力線50から離脱して電力を供給できなくなり、所定の機能を実行できなくなるのを防止できる。
【0051】
前述した実施形態では、地域内電力線50に接続された住宅100-1から住宅100-4との各々と車両200-1から車両200-4との各々との間で電力の授受が行われる場合について説明したが、この例に限られない。
例えば、車両200は、地域内電力線50の内部で使うために外部グリッド電力を取得し、取得した外部グリッド電力を地域内電力線50に供給してもよい。ここで、外部グリッド電力とは、地域内電力線50によって接続される所定の地理的範囲とは異なる地理的範囲を電気的に接続する他の地域内電力線から地域内電力線50に供給される電力である。
【0052】
図5は、本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例2を示す図である。住宅100-1から住宅100-4の各々は、第1地域内電力線50-1と接続され、第1地域内電力線50-1から電力の供給を受ける。住宅100-1の近傍の第1地域内電力線50-1には車両200-1が接続され、住宅100-2の近傍の第1地域内電力線50-1には車両200-2が接続され、住宅100-3の近傍の第1地域内電力線50-1には車両200-3が接続され、住宅100-4の近傍の第1地域内電力線50-1には車両200-4が接続されている。
【0053】
車両200-1から車両200-4のうち車両200-3は、第1地域内電力線50-1に加え第2地域内電力線50-2と接続されている。車両200-3は、第2地域内電力線50-2から供給される外部グリッド電力を車両用蓄電池208に蓄電する。車両200-3は、車両用蓄電池208に蓄電した電力を第1地域内電力線50-1に供給できる。車両200-3によって第1地域内電力線50-1に供給された電力は、第1地域内電力線50-1に接続されている住宅100-1から住宅100-4と車両200-1と車両200-2と車両200-4とのいずれかに供給できる。
換言すれば、車両200-3は、第1地域内電力線50-1と第2地域内電力線50-2との間で、電力を中継する。車両200-3は、車両用蓄電池208に蓄電されている外部グリッド電力を第1地域内電力線50-1に供給する。グリッド外部電力は、車両200-3などの中継装置を介して第2地域内電力線50-2から第1地域内電力線50-1に供給される。
この場合、機能保証制御部210は、車両用蓄電池208が第1地域内電力線50-1と第2地域内電力線50-2と接続されている間は、接続を維持する。以下、車両用蓄電池208が第1地域内電力線50-1と第2地域内電力線50-2と接続されている間は、接続を維持する制御を「グリッド間接続位置制御」という。
【0054】
前述した実施形態において、車両200に所定の機能の動作スケジュールが設定されている場合には、機能保証制御部210は、車両200の所定の機能の動作スケジュールに基づいて複数の機能について優先度を設定してもよい。このように構成することによって、車両200の動作スケジュールに基づいて設定される複数の機能の優先度に基づいて、所定の機能の実行を保証できる。
前述した実施形態において、車両200を使用して電力を移送するようにしてもよい。
図6は、本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例3を示す図である。
図6には、第1地域内電力線50-1と、第2地域内電力線50-2と、第3地域内電力線50-3とが示されている。
車両200aは、前述した車両200を適用できる。第1地域内電力線50-1と接続されている車両200aは第1地域内電力線50-1を介して電力を供給され、供給された電力は車両用蓄電池208に蓄電される。その後、車両200aは移動して、第3地域内電力線50-3と接続し、第3地域内電力線50-3に電力を供給する。このように構成することによって、車両200aを使用して、第1地域内電力線50-1によって接続される所定の地理的範囲から第3地域内電力線50-3によって接続される所定の地理的範囲へ電力を移送できる。
【0055】
さらに、車両200bは、前述した車両200を適用できる。第2地域内電力線50-2と接続されている車両200bは第2地域内電力線50-2を介して電力を供給され、供給された電力は車両用蓄電池208に蓄電される。その後、車両200bは移動して、第3地域内電力線50-3と接続し、第3地域内電力線50-3に電力を供給する。このように構成することによって、車両200bを使用して、第2地域内電力線50-2によって接続される所定の地理的範囲から第3地域内電力線50-3によって接続される所定の地理的範囲へ、電力を移送できる。
第3地域内電力線50-3によって接続される所定の地理的範囲では、車両200aを使用して移送された電力と車両200bを使用して移送された電力との供給を受けることができる。
【0056】
図7は、本実施形態に係るグリッドシステムの概略構成の例4を示す図である。
図7には、第1地域内電力線50-1と、第2地域内電力線50-2とが示されている。第1地域内電力線50-1には、住宅100-1から住宅100-4が電力線を介して接続されている。第2地域内電力線50-2には、車両200-1が電力線を介して接続されている。
仮に、車両200-1が、第1地域内電力線50-1を介して電力を供給され、供給された電力は車両用蓄電池208に蓄電され、その後、移動して、第2地域内電力線50-2によって接続される所定の地理的範囲へ移動した。この場合、車両200-1は、第2地域内電力線50-2と接続することによって、第2地域内電力線50-2へ電力を供給できる。
機能保証制御部210は、車両機能保証制御と、グリッド内機能保証制御と、グリッド間接続位置制御とを実行する場合に、優先順位をつけて実行してもよい。具体的には、機能保証制御部210は、車両機能保証制御を最も優先して実行し、グリッド内機能保証制御を次に優先して実行し、グリッド間接続位置制御を次に優先して実行してもよい。
【0057】
本実施形態に係るグリッドシステム1によれば、グリッドシステム1は、第1蓄電池と第2蓄電池とが接続可能であり、且つ第1蓄電池と第2蓄電池との間で電力を授受できる。第1蓄電池は住宅100に設けられた住宅用蓄電池108であり、第2蓄電池は車両200に設けられた車両用蓄電池208である。
グリッドシステム1は、第1蓄電池と第2蓄電池との間で授受される電力量の調整を行う電力授受制御部(112、212)と、車両用蓄電池208が搭載された車両200が有する所定の機能が動作している間、車両用蓄電池208のSOCが、所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部(112、212)によって授受される電力量を調整する車両機能保証制御を行う機能保証制御部210とを備える。
このように構成することによって、第1蓄電池と第2蓄電池との間で電力の授受が行われている間、車両用蓄電池208のSOCが、所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部(112、212)によって授受される電力量が調整されるため、車両200の所定の機能の実行を保証できる。
【0058】
また、住宅用蓄電池108は、住宅100に設けられた太陽光発電装置111によって発電された電力を蓄電し、車両用蓄電池208は、車両200に設けられた太陽光発電装置211によって発電された電力を蓄電する。このように構成することによって、天候によってSOCが左右されやすく影響の大きい太陽光発電装置を備える住宅100、車両200の場合にも、車両200の所定の機能の実行を保証できる。
【0059】
また、電力授受制御部(112、212)は、第1需要家が有する車両用蓄電池208と、第2需要家が有する第3蓄電池又は所定の地理的範囲を電気的に接続する地域内電力線との間で電力を授受する。このように構成することによって、他の需要家やグリッドを使って車両200の所定の機能の実行を保証できる。
【0060】
また、機能保証制御部210は、所定の機能が動作している間は、車両用蓄電池208に接続されている電力線の離脱を禁止する。このように構成することによって、車両機能保証制御の実行中に、電力線が離脱し、電力の授受ができなくなることを防止できる。
【0061】
また、機能保証制御部210は、車両200の所定の機能の動作スケジュールに基づいて複数の機能について優先度を設定する。このように構成することによって、車両内の所定の機能の優先度に基づいて、車両200の所定の機能の実行を保証できる。
【0062】
また、機能保証制御部210は、地域内電力線50によって電気的に接続される所定の地理的範囲で所定の機能が動作している間は、該所定の機能を実行するための電力を供給する第2蓄電池のSOCが、該所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部によって授受される電力量を調整するグリッド内機能保証制御を行う。このように構成することによって、所定の機能が動作している間は、第2蓄電池のSOCが、該所定の機能を実行可能なSOC下限値を下回ることがないように電力授受制御部によって授受される電力量が調整されるため、グリッド内の所定の機能の使用を保証できる。
【0063】
また、第1地理的範囲を電気的に接続する第1地域内電力線50-1と、第2地理的範囲を電気的に接続する第2地域内電力線50-2とが接続され、機能保証制御部210は、第1地域内電力線50-1と第2地域内電力線50-2とが接続されている間は、接続を維持するグリッド間接続維持制御を行う。このように構成することによって、複数のグリッド間の連携(接続)を維持できる。
【0064】
また、機能保証制御部210は、車両機能保証制御、グリッド内機能保証制御、グリッド間接続維持制御の順で優先する。このように構成することによって、各機能保証の優先度に基づいて、所定の機能の実行を保証できる。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…グリッドシステム
50…地域内電力線
50-1…第1地域内電力線
50-2…第2地域内電力線
50-3…第3地域内電力線
100-1、100-2、100-3、100-4、100…住宅
104…分電盤
106…HEMS
108…住宅用蓄電池
111…太陽光発電装置
112…電力授受制御部
114…記憶部
116…連結部
200-1、200-2、200-3、200-4、200…車両
206…管理部
208…車両用蓄電池
210…機能保証制御部
211…太陽光発電装置
212…電力授受制御部
214…記憶部