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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156570
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】アンテナ無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20221006BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20221006BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20221006BHJP
   H01Q 3/34 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B7/08 982
H01Q21/06
H01Q3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060324
(22)【出願日】2021-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 智之
(72)【発明者】
【氏名】秋月 泰司
(72)【発明者】
【氏名】鴇 和哉
(72)【発明者】
【氏名】外山 隆行
(72)【発明者】
【氏名】安達 尚季
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB01
5J021FA07
5J021FA17
5J021FA18
5J021FA26
5J021FA31
5J021HA04
(57)【要約】
【課題】高いビームフォーミング精度で駆動することができるアンテナ無線装置を提供すること。
【解決手段】本開示の一実施例に係るアンテナ無線装置は、複数のアンテナ素子と各アンテナ素子に対応する給電ポートと複数のアンテナ素子の一部又は全部に対応する検出ポートと各給電ポートに接続された送受信回路と各検出ポート又は複数の検出ポートに接続された基準送受信回路とを備え、各アンテナ素子について、送受信回路は、第1の信号に対して処理を行うことで第2の信号を生成し、第2の信号を給電ポートに給電し、給電ポートに給電された第2の信号は検出ポートを介して基準送受信回路に出力され、基準送受信回路は、第2の信号に対して処理を行うことで第3の信号を生成し、第1の信号及び第3の信号に基づいて振幅・位相偏差を検出し、振幅・位相偏差を送受信回路に出力し、送受信回路は、振幅・位相偏差に基づいて送信信号の位相・振幅を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板で構成されている複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子の各々に対応付けられている給電ポートと、
前記複数のアンテナ素子の一部又は全部に対応付けられている検出ポートと、
前記給電ポートの各々に接続されている送受信回路と、
前記検出ポートの各々又は複数の前記検出ポートに接続されている基準送受信回路と、
を備えており、
前記複数のアンテナ素子の各アンテナ素子について、
前記送受信回路は、第1の信号に対してデジタル-アナログ変換及びアップコンバートを含む送信処理を行うことによって第2の信号を生成し、前記第2の信号を前記送受信回路に接続されている前記給電ポートに給電し、
前記給電ポートに給電された前記第2の信号は、前記給電ポートに対応付けられている当該アンテナ素子に対応付けられている前記検出ポートを介して、前記検出ポートに接続されている前記基準送受信回路に出力され、
前記基準送受信回路は、前記第2の信号に対してアナログ-デジタル変換及びダウンコンバートを含む処理を行うことによって第3の信号を生成し、前記第1の信号及び前記第3の信号に基づいて、第1の振幅・位相偏差を検出し、前記第1の振幅・位相偏差を前記送受信回路に出力し、
前記送受信回路は、前記第1の振幅・位相偏差に基づいて、送信信号の位相・振幅を調整する、
アンテナ無線装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナ素子の各アンテナ素子について、
前記基準送受信回路は、第4の信号に対してデジタル-アナログ変換及びアップコンバートを含む受信処理を行うことによって第5の信号を生成し、前記第5の信号を前記基準送受信回路に接続されている前記検出ポートに給電し、
前記検出ポートに給電された前記第5の信号は、前記検出ポートに対応付けられている当該アンテナ素子に対応付けられている前記給電ポートを介して、前記給電ポートに接続されている前記送受信回路に出力され、
前記送受信回路は、前記第5の信号に対してアナログ-デジタル変換及びダウンコンバートを含む処理を行うことによって第6の信号を生成し、前記第4の信号及び前記第6の信号に基づいて、第2の振幅・位相偏差を検出し、前記第2の振幅・位相偏差に基づいて、受信信号の位相・振幅を調整する、
請求項1に記載のアンテナ無線装置。
【請求項3】
第1の符号系列を生成する第1の符号系列発生器と、
第2の符号系列を生成する第2の符号系列発生器と、
をさらに備えており、
前記第1の信号は、前記第1の符号系列発生器によって生成された前記第1の符号系列であり、
前記基準送受信回路は、前記第3の信号と前記第1の符号系列との相関から前記第1の振幅・位相偏差を検出し、
前記第4の信号は、前記第2の符号系列発生器によって生成された前記第2の符号系列であり、
前記送受信回路は、前記第6の信号と前記第2の符号系列との相関から前記第2の振幅・位相偏差を検出する、
請求項2に記載のアンテナ無線装置。
【請求項4】
前記検出ポートは、前記基板の表面のアンテナパターンと前記基板の裏面のGND面との間の貫通ビアホールにより、前記基板の表面で前記アンテナパターンと分離されて構成されている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【請求項5】
前記基板は、前記基板の表面にアンテナパターンを有する多層基板であり、
前記検出ポートは、前記多層基板と前記基板の裏面のGND面との間のインナービアホールにより、前記アンテナパターンと分離されて構成されている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【請求項6】
前記検出ポートは、前記基板の裏面のGND面に配置されており、前記基板の表面のアンテナパターンと分離されている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【請求項7】
前記検出ポートは、前記複数のアンテナ素子のうちの隣接する2つのアンテナ素子の間の略中間に配置されている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【請求項8】
前記検出ポートは、パッドパターンを備えている、
請求項7に記載のアンテナ無線装置。
【請求項9】
前記複数のアンテナ素子の各々は、
第1の偏波に対応する第1の給電ポートと、
第2の偏波に対応する第2の給電ポートと、
前記第1の給電ポートに対する第1の検出ポートと、
前記第2の給電ポートに対する第2の検出ポートと、
に対応付けられている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【請求項10】
前記複数のアンテナ素子は、2×2の矩形格子状に配列されている4つのアンテナ素子であり、
前記検出ポートは、前記4つのアンテナ素子の間の略中間に配置されており、前記4つのアンテナ素子に対応付けられている、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のアンテナ無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信電力増幅器の直後に検出部を備えているアンテナ無線装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-263632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、検出部は、アンテナ素子に入力されるまでの送信経路での通過特性差を検出するので、アンテナ素子と検出部との間で、温度の違いや配線長の違いにより、検出値に誤差が含まれてしまう。その結果、ビームフォーミング精度が低下するという課題があった。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、高いビームフォーミング精度で駆動することができるアンテナ無線装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係るアンテナ無線装置は、基板で構成されている複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子の各々に対応付けられている給電ポートと、前記複数のアンテナ素子の一部又は全部に対応付けられている検出ポートと、前記給電ポートの各々に接続されている送受信回路と、前記検出ポートの各々又は複数の前記検出ポートに接続されている基準送受信回路と、を備えており、前記複数のアンテナ素子の各アンテナ素子について、前記送受信回路は、第1の信号に対してデジタル-アナログ変換及びアップコンバートを含む送信処理を行うことによって第2の信号を生成し、前記第2の信号を前記送受信回路に接続されている前記給電ポートに給電し、前記給電ポートに給電された前記第2の信号は、前記給電ポートに対応付けられている当該アンテナ素子に対応付けられている前記検出ポートを介して、前記検出ポートに接続されている前記基準送受信回路に出力され、前記基準送受信回路は、前記第2の信号に対してアナログ-デジタル変換及びダウンコンバートを含む処理を行うことによって第3の信号を生成し、前記第1の信号及び前記第3の信号に基づいて、第1の振幅・位相偏差を検出し、前記第1の振幅・位相偏差を前記送受信回路に出力し、前記送受信回路は、前記第1の振幅・位相偏差に基づいて、送信信号の位相・振幅を調整する。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施例によれば、アンテナ素子と位相・振幅偏差を検出する検出部との間の経路特性差を補正することができるので、高いビームフォーミング精度で駆動することができる。
【0009】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置の一例を示すブロック図
図2】本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置の一例を示す別のブロック図
図3A】本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成の一例を示す図
図3B図3AにおけるA-A断面図
図4】本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成の別の例の断面図
図5】本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成のさらに別の例の断面図
図6】本開示の実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の一例を示す斜視図
図7】本開示の実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の別の例を示す斜視図
図8】本開示の実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板のさらに別の例を示す斜視図
図9】本開示の実施の形態3におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(実施の形態1)
<アンテナ無線装置の構成>
図1及び図2を参照して、本開示の実施の形態1におけるアンテナ無線装置10について説明する。アンテナ無線装置10は、ビームフォーミング可能なフェイズドアレイアンテナを備えている。
【0014】
図1は、実施の形態1におけるアンテナ無線装置10の一例を示すブロック図である。
【0015】
アンテナ無線装置10は、アンテナ基板101と、水平(以下、「H」と呼ぶ)偏波送受信回路106と、垂直(以下、「V」と呼ぶ)偏波送受信回路107と、基準送受信回路108と、を備えている。
【0016】
アンテナ基板101は、アンテナ基板101上に形成されている複数のパッチアンテナ素子102(m,n)と、H偏波信号のH偏波給電ポート103(m,n)と、V偏波信号のV偏波給電ポート104(m,n)と、検出ポート105(m,n)と、を有する。ここで、mは1以上M以下の整数であり、nは1以上N以下の整数である。
【0017】
なお、複数のパッチアンテナ素子102(m,n)全体又は複数のパッチアンテナ素子102(m,n)のうちの代表的な1つについて言及するときには、パッチアンテナ素子102と呼ぶことがある。H偏波給電ポート103(m,n)、V偏波信号のV偏波給電ポート104(m,n)及び検出ポート105(m,n)のそれぞれについても同様に、全体又は代表的な1つについて言及するときには、H偏波給電ポート103、V偏波給電ポート104及び検出ポート105と呼ぶことがある。
【0018】
パッチアンテナ素子102(m,n)は、例えば、電磁結合給電される矩形平面アンテナ素子である。パッチアンテナ素子102(m,n)は、一例として、X軸方向及びY軸方向に並ぶ矩形格子状に配列されて、M×N平面アンテナアレイを構成している。すなわち、X軸方向に配列されたM個のパッチアンテナ素子102(1,n)~パッチアンテナ素子102(M,n)は、パッチアンテナ行を構成しており、Y軸方向に配列されたN個のパッチアンテナ素子102(m,1)~パッチアンテナ素子102(m,N)は、パッチアンテナ列を構成している。複数のパッチアンテナ素子102は、例えばRF信号の波長をλとすると、λ/2又は略λ/2の間隔で配列されている。
【0019】
検出ポート105(m,n)は、パッチアンテナ素子102(m,n)の中央又は略中央に配置されている。パッチアンテナ行を構成しているパッチアンテナ素子102(1,n)~パッチアンテナ素子102(M,n)のそれぞれの中央又は略中央に配置されている検出ポート105(1,n)~検出ポート105(M,n)は、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に同一間隔又は略同一間隔で配置されている。同様に、パッチアンテナ列を構成しているパッチアンテナ素子102(m,1)~パッチアンテナ素子102(m,N)のそれぞれの中央又は略中央に配置されている検出ポート105(m,1)~検出ポート105(m,N)は、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に同一間隔又は略同一間隔で配置されている。
【0020】
H偏波給電ポート103(m,n)は、パッチアンテナ素子102(m,n)の中央又は略中央からX軸方向正側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子102(m,n)に配置されている。これに代えて、H偏波給電ポート103(m,n)は、パッチアンテナ素子102(m,n)の中央又は略中央からX軸方向負側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子102(m,n)に配置されていてもよい。パッチアンテナ行を構成しているパッチアンテナ素子102(1,n)~パッチアンテナ素子102(M,n)のそれぞれに配置されているH偏波給電ポート103(1,n)~H偏波給電ポート103(M,n)は、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に同一間隔又は略同一間隔で配置されている。したがって、H偏波給電ポート103(1,n)~H偏波給電ポート103(M,n)と検出ポート105(1,n)~検出ポート105(M,n)とは、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に配置されている。
【0021】
V偏波給電ポート104(m,n)は、パッチアンテナ素子102(m,n)の中央又は略中央からY軸方向負側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子102(m,n)に配置されている。これに代えて、V偏波給電ポート104(m,n)は、パッチアンテナ素子102(m,n)の中央又は略中央からY軸方向正側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子102(m,n)に配置されていてもよい。パッチアンテナ列を構成しているパッチアンテナ素子102(m,1)~パッチアンテナ素子102(m,N)に配置されているV偏波給電ポート104(m,1)~V偏波給電ポート104(m,N)は、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に同一間隔又は略同一間隔で配置されている。したがって、V偏波給電ポート104(m,1)~V偏波給電ポート104(m,N)と検出ポート105(m,1)~検出ポート105(m,N)とは、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に配置されている。
【0022】
H偏波送受信回路106は、H偏波信号を送受信するための回路である。1つのH偏波送受信回路106が、複数のH偏波給電ポート103の各々に接続されている。すなわち、M×N個のH偏波送受信回路106が存在する。
【0023】
V偏波送受信回路107は、V偏波信号を送受信するための回路である。1つのV偏波送受信回路107が、複数のV偏波給電ポート104の各々に接続されている。すなわち、M×N個のV偏波送受信回路107が存在する。
【0024】
基準送受信回路108は、送信系については、H偏波送受信回路106及びV偏波送受信回路107がそれらの送信信号の振幅・位相を調整するために、パッチアンテナ素子102毎に、後述するキャリブレーション用のH系符号系列及びV系符号系列のそれぞれの電力及び遅延時間を検出し、パッチアンテナ素子102毎の所定の値との振幅・位相偏差を検出/取得する回路である。
【0025】
また、基準送受信回路108は、受信系については、H偏波送受信回路106及びV偏波送受信回路107がそれらの受信信号の振幅・位相を調整するために、パッチアンテナ素子102毎に、後述するキャリブレーション用のH系符号系列及びV系符号系列をH偏波送受信回路106及びV偏波送受信回路107にそれぞれ出力する回路である。
【0026】
実施の形態1において、1つの基準送受信回路108は、複数の検出ポート105の各々に接続されている。すなわち、M×N個の基準送受信回路108が存在する。
【0027】
H偏波送受信回路106、V偏波送受信回路107及び基準送受信回路108は、平面アンテナアレイ面の裏側(Z軸方向において平面アンテナアレイ面よりも下側)に配置されていてもよい。
【0028】
図2は、実施の形態1におけるアンテナ無線装置10の一例を示す別のブロック図である。
【0029】
図2にはまた、H偏波送受信回路106、V偏波送受信回路107及び基準送受信回路108の内部構成の例が示されている。
【0030】
図2に示されているように、アンテナ無線装置10は、H系Rxキャリブレーション(CAL)符号系列発生器114aと、V系Rx CAL符号系列発生器114bと、H系Tx CAL符号系列発生器115aと、V系Tx CAL符号系列発生器115bと、をさらに備えている。なお、CAL符号系列を相関符号系列と呼ぶこともある。
【0031】
H系Rx CAL符号系列発生器114aは、M系列や、ゴールド符号等の疑似雑音(PN)符号といった、H偏波受信系のキャリブレーション用のCAL符号系列を生成する。そして、H系Rx CAL符号系列発生器114aは、生成されたCAL符号系列を、後述する基準送受信回路108のCAL符号発生器141及びH偏波送受信回路106のH系Rx CAL符号相関器131aに出力する。
【0032】
V系Rx CAL符号系列発生器114bは、M系列や、ゴールド符号等のPN符号といった、V偏波受信系のキャリブレーション用のCAL符号系列を生成する。そして、V系Rx CAL符号系列発生器114bは、生成されたCAL符号系列を、後述する基準送受信回路108のCAL符号発生器141及びV偏波送受信回路107のV系Rx CAL符号相関器131bに出力する。
【0033】
H系Tx CAL符号系列発生器115aは、M系列や、ゴールド符号等のPN符号といった、H偏波送信系のキャリブレーション用のCAL符号系列を生成する。そして、H系Tx CAL符号系列発生器115aは、生成されたCAL符号系列を、後述する基準送受信回路108の符号相関器149に出力するとともに、H偏波送受信回路106のスイッチ122aを介して位相・振幅調整回路123aに出力する。
【0034】
V系Tx CAL符号系列発生器115bは、M系列や、ゴールド符号等のPN符号といった、V偏波送信系のキャリブレーション用のCAL符号系列を生成する。そして、V系Tx CAL符号系列発生器115bは、生成されたCAL符号系列を、後述する基準送受信回路108の符号相関器149に出力するとともに、V偏波送受信回路107のスイッチ122bを介して位相・振幅調整回路123bに出力する。
【0035】
H偏波送受信回路106は、スイッチ122aと、位相・振幅調整回路123aと、IQ デジタル-アナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)124aと、周波数変換器125aと、電力増幅器126aと、入出力結合部127aと、LNA(Low Noise Amplifier)128aと、直交復調器129aと、IQ アナログ-デジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)130aと、H系Rx CAL符号相関器131aと、位相・振幅調整回路132aと、を有する。
【0036】
スイッチ122aは、H偏波送信系のキャリブレーションを行うときには、H系Tx CAL符号系列発生器115aによって生成されたCAL符号系列(第1の信号)を位相・振幅調整回路123aに出力する。また、スイッチ122aは、H偏波信号を送信するときには、例えば外部から入力された送信信号121aを位相・振幅調整回路123aに出力する。
【0037】
位相・振幅調整回路123aは、H偏波送信系のキャリブレーションを行うときには、スイッチ122aから入力されたCAL符号系列をIQ DAC124aに出力する。また、位相・振幅調整回路123aは、H偏波信号を送信するときには、後述する基準送受信回路108の符号相関器149によって検出されて位相・振幅調整回路123aに入力された相関データ(H偏波系の振幅・位相偏差)を用いて、スイッチ122aから入力された送信信号の送信電力及び送信位相を調整する。そして、位相・振幅調整回路123aは、調整された送信信号をIQ DAC124aに出力する。
【0038】
IQ DAC124a、周波数変換器125a及び電力増幅器126aについては、H偏波送信系のキャリブレーションを行うときの各部の動作について説明する。
【0039】
IQ DAC124aは、位相・振幅調整回路123aから入力されたCAL符号系列をDA変換した後に直交変調し、CAL符号系列のアナログ信号を周波数変換器125aに出力する。
【0040】
周波数変換器125aは、IQ DAC124aから入力されたCAL符号系列のアナログ信号に対して周波数変換(アップコンバート)を行うことで、送信キャリブレーション信号(第2の信号)に変換し、送信キャリブレーション信号を電力増幅器126aに出力する。
【0041】
電力増幅器126aは、送信キャリブレーション信号のレベルを所望の送信レベルまで増幅し、入出力結合部127aを介して、送信キャリブレーション信号を、H偏波給電ポート103(m,n)のうちの対応するH偏波給電ポート103に給電する。H偏波給電ポート103に給電された送信キャリブレーション信号は、H偏波給電ポート103に対応付けられているパッチアンテナ素子102を介して、対応する検出ポート105に出力される。
【0042】
LNA128aは、H偏波給電ポート103から入出力結合部127aを介して入力された所望のCAL符号系列である受信キャリブレーション信号(H偏波受信系のキャリブレーションを行うとき)又は受信信号(H偏波信号を復号するとき)のレベルを増幅して直交復調器129aに出力する。
【0043】
直交復調器129aは、LNA128aから入力された受信キャリブレーション信号又は受信信号を周波数変換(ダウンコンバート)し、周波数変換された信号をIQ ADC130aに出力する。
【0044】
IQ ADC130aは、直交復調器129aから入力された信号をAD変換することで、デジタルデータ信号(H偏波受信系のキャリブレーションを行うときのデジタルデータ信号:第6の信号)に変換し、デジタルデータ信号をH系Rx CAL符号相関器131a及び位相・振幅調整回路132aに出力する。
【0045】
H系Rx CAL符号相関器131aは、H偏波受信系のキャリブレーションを行うときには、符号相関をとることによって、IQ ADC130aから入力されたデジタルデータ信号とH系Rx CAL符号系列発生器114aによって生成されて入力されたCAL符号系列(H系符号系列)との相関を検出する。その結果、H系Rx CAL符号相関器131aは、CAL符号系列(H系符号系列)の電力及び遅延時間を検出し、所定の値との振幅・位相偏差を検出する。そして、H系Rx CAL符号相関器131aは、相関データである振幅・位相偏差を位相・振幅調整回路132aに出力する。
【0046】
位相・振幅調整回路132aは、H偏波信号を復号するときには、H系Rx CAL符号相関器131aから入力された振幅・位相偏差を用いて、IQ ADC130aから入力された受信信号のデジタルデータ信号に対して電力及び位相を調整する。その結果、位相・振幅調整回路132aは、受信信号133aを復号して、例えば外部に出力する。
【0047】
V偏波送受信回路107は、スイッチ122bと、位相・振幅調整回路123bと、IQ DAC124bと、周波数変換器125bと、電力増幅器126bと、入出力結合部127bと、LNA128bと、直交復調器129bと、IQ ADC130bと、V系Rx CAL符号相関器131bと、位相・振幅調整回路132bと、を有する。
【0048】
スイッチ122bは、V偏波送信系のキャリブレーションを行うときには、V系Tx CAL符号系列発生器115bによって生成されたCAL符号系列(第1の信号)を位相・振幅調整回路123bに出力する。また、スイッチ122bは、V偏波信号を送信するときには、例えば外部から入力された送信信号121bを位相・振幅調整回路123bに出力する。
【0049】
位相・振幅調整回路123bは、V偏波送信系のキャリブレーションを行うときには、スイッチ122bから入力されたCAL符号系列をIQ DAC124bに出力する。また、位相・振幅調整回路123bは、V偏波信号を送信するときには、後述する基準送受信回路108の符号相関器149によって検出されて位相・振幅調整回路123bに入力された相関データ(V偏波系の振幅・位相偏差)を用いて、スイッチ122bから入力された送信信号の送信電力及び送信位相を調整する。そして、位相・振幅調整回路123bは、調整された送信信号をIQ DAC124bに出力する。
【0050】
IQ DAC124b、周波数変換器125b及び電力増幅器126bについては、V偏波送信系のキャリブレーションを行うときの各部の動作について説明する。
【0051】
IQ DAC124bは、位相・振幅調整回路123bから入力されたCAL符号系列をDA変換した後に直交変調し、CAL符号系列のアナログ信号を周波数変換器125bに出力する。
【0052】
周波数変換器125bは、IQ DAC124bから入力されたCAL符号系列のアナログ信号に対して周波数変換(アップコンバート)を行うことで、送信キャリブレーション信号(第2の信号)に変換し、送信キャリブレーション信号を電力増幅器126bに出力する。
【0053】
電力増幅器126bは、送信キャリブレーション信号のレベルを所望の送信レベルまで増幅し、入出力結合部127bを介して、送信キャリブレーション信号を、V偏波給電ポート104(m,n)のうちの対応するV偏波給電ポート104に給電する。V偏波給電ポート104に給電された送信キャリブレーション信号は、V偏波給電ポート104に対応付けられているパッチアンテナ素子102を介して、対応する検出ポート105に出力される。
【0054】
LNA128bは、V偏波給電ポート104から入出力結合部127bを介して入力された所望のCAL符号系列である受信キャリブレーション信号(V偏波受信系のキャリブレーションを行うとき)又は受信信号(V偏波信号を復号するとき)のレベルを増幅して直交復調器129bに出力する。
【0055】
直交復調器129bは、LNA128bから入力された受信キャリブレーション信号又は受信信号を周波数変換(ダウンコンバート)し、周波数変換された信号をIQ ADC130bに出力する。
【0056】
IQ ADC130bは、直交復調器129bから入力された信号をAD変換することで、デジタルデータ信号(V偏波受信系のキャリブレーションを行うときのデジタルデータ信号:第6の信号)に変換し、デジタルデータ信号をV系Rx CAL符号相関器131b及び位相・振幅調整回路132bに出力する。
【0057】
V系Rx CAL符号相関器131bは、V偏波受信系のキャリブレーションを行うときには、符号相関をとることによって、IQ ADC130bから入力されたデジタルデータ信号とV系Rx CAL符号系列発生器114bによって生成されて入力されたCAL符号系列(V系符号系列)との相関を検出する。その結果、V系Rx CAL符号相関器131bは、CAL符号系列(V系符号系列)の電力及び遅延時間を検出し、所定の値との振幅・位相偏差を検出する。そして、V系Rx CAL符号相関器131bは、相関データである振幅・位相偏差を位相・振幅調整回路132bに出力する。
【0058】
位相・振幅調整回路132bは、V偏波信号を復号するときには、V系Rx CAL符号相関器131bから入力された振幅・位相偏差を用いて、IQ ADC130bから入力された受信信号のデジタルデータ信号に対して電力及び位相を調整する。その結果、位相・振幅調整回路132bは、受信信号133bを復号して、例えば外部に出力する。
【0059】
基準送受信回路108は、CAL符号発生器141と、IQ DAC142と、周波数変換器143と、電力増幅器144と、送受信共用器又はスイッチ145と、LNA146と、直交復調器147と、IQ ADC148と、符号相関器149と、を有する。
【0060】
CAL符号発生器141は、H系Rx CAL符号系列発生器114aによって生成されたCAL符号系列とV系Rx CAL符号系列発生器114bによって生成されて入力されたCAL符号系列とを合成して合成信号(第4の信号)を生成する。そして、CAL符号発生器141は、合成信号をIQ DAC142に出力する。
【0061】
IQ DAC142は、CAL符号発生器141から入力された合成信号(デジタル信号)をDA変換した後に直交変調し、合成信号のアナログ信号を周波数変換器143に出力する。
【0062】
周波数変換器143は、IQ DAC142から入力された合成信号のアナログ信号に対して周波数変換(アップコンバート)を行うことで、受信キャリブレーション信号(第5の信号)に変換し、受信キャリブレーション信号を電力増幅器144に出力する。
【0063】
電力増幅器144は、受信キャリブレーション信号のレベルを所望の送信レベルまで増幅し、送受信共用器又はスイッチ145を介して、受信キャリブレーション信号を、パッチアンテナ素子102(m,n)のうちの対応するパッチアンテナ素子102に対応付けられている検出ポート105に給電する。
【0064】
検出ポート105に給電された受信キャリブレーション信号は、検出ポート105に対応付けられているパッチアンテナ素子102を介して、対応するH偏波給電ポート103及びV偏波給電ポート104に出力される。
【0065】
上述したH偏波給電ポート103に給電された送信キャリブレーション信号及びV偏波給電ポート104に給電された送信キャリブレーション信号は、符号相関器149によって検出される、H系信号とV系信号との合成信号(第2の信号:以下、検出信号と呼ぶ)として、複数の検出ポート105のうちの対応する検出ポート105に出力される。
【0066】
LNA146は、複数の検出ポート105のうちの対応する検出ポート105から送受信共用器又はスイッチ145を介して入力された所望の検出信号のレベルを増幅して直交復調器147に出力する。
【0067】
直交復調器147は、LNA146から入力された検出信号を周波数変換(ダウンコンバート)し、周波数変換された信号をIQ ADC148に出力する。
【0068】
IQ ADC148は、直交復調器147から入力された信号をAD変換することで、デジタルデータ信号(第3の信号)に変換し、デジタルデータ信号を符号相関器149に出力する。
【0069】
符号相関器149は、デジタルデータ信号をH偏波成分とV偏波成分とに分離する。そして、符号相関器149は、符号相関をとることによって、IQ ADC148から入力されたデジタルデータ信号と、H系Tx CAL符号系列発生器115aによって生成されて入力されたCAL符号系列と、の相関を検出する。同様に、符号相関器149は、符号相関をとることによって、IQ ADC148から入力されたデジタルデータ信号と、V系Tx CAL符号系列発生器115bによって生成されて入力されたCAL符号系列と、の相関を検出する。その結果、符号相関器149は、H偏波成分及びV偏波成分のそれぞれの電力及び遅延時間を検出し、相関データである振幅・位相偏差を検出する。そして、符号相関器149は、検出されたH偏波成分の相関データ及びV偏波成分の相関データを、H偏波送受信回路106の(送信系)位相・振幅調整回路123a及びV偏波送受信回路107の(送信系)位相・振幅調整回路123bにそれぞれ出力する。
【0070】
なお、図2の例において、入出力結合部127a及び127bは、アンテナ無線装置アクセス方式がFDD方式の場合はデュプレクサ等の共用器であり、TDD方式の場合はスイッチである。
【0071】
次いで、図3図5を参照して、実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成の例について説明する。
【0072】
図3Aは、実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板201の構成の一例を示す斜視図である。
【0073】
なお、図3Aにおけるアンテナ基板201、パッチアンテナ素子200、H偏波給電ポート205、V偏波給電ポート206及び検出ポート207は、それぞれ、図1におけるアンテナ基板101、パッチアンテナ素子102、H偏波給電ポート103、V偏波給電ポート104及び検出ポート105に対応する。
【0074】
アンテナ基板201は、アンテナパターン202と、誘電体203と、GNDパターン204と、から構成されている多層基板である。H偏波給電ポート205、V偏波給電ポート206及び検出ポート207は、アンテナパターン202に接続されている。
【0075】
H偏波給電ポート205は、パッチアンテナ素子200の中央又は略中央からX軸方向正側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子200に配置されている。
【0076】
V偏波給電ポート206は、パッチアンテナ素子200の中央又は略中央からY軸方向負側に所定の間隔だけ離間されて、パッチアンテナ素子200に配置されている。
【0077】
検出ポート207は、パッチアンテナ素子200の中央又は略中央に配置されている。
【0078】
図3Bは、図3AにおけるA-A断面図である。
【0079】
図3Bに示されているように、検出ポート207は、アンテナ基板201の表面のアンテナパターン202とアンテナ基板201の裏面のGND面との間の貫通ビアホールにより構成されている。そして、検出ポート207とアンテナパターン202との間にはギャップが設けられている。このようなギャップを設けて検出ポート207とアンテナパターン202とを分離することで、結合量を制御し、減衰量を確保することができる。このようなギャップは、一例として、誘電体203の比誘電率による実効電気長の5%程度であることが望ましい。この場合、減衰量は20dB程度になる。
【0080】
なお、広すぎるギャップ(例えば、誘電体203の比誘電率による実効電気長の10%)は、検出ポート207に対するアンテナパターン202の大きな面積減少をもたらしてしまう。したがって、パッチアンテナ素子200の動作への影響が増大するため、広すぎるギャップは望ましくない。
【0081】
H偏波給電ポート205は、アンテナ基板201の表面のアンテナパターン202とアンテナ基板201の裏面のGND面との間のビアホールにより構成されており、アンテナパターン202と直接接続されている。
【0082】
図示されていないが、同様に、V偏波給電ポート206は、アンテナ基板201の表面のアンテナパターン202とアンテナ基板201の裏面のGND面との間のビアホールにより構成されており、アンテナパターン202と直接接続されている。
【0083】
図4は、実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成の別の例の断面図である。
【0084】
図4の例において、図3A及び図3Bの検出ポート207の代わりに、検出ポート211が用いられている。
【0085】
検出ポート211は、GND面から誘電体203の中間層までの内層(インナー)ビアホール(IVH)により構成されており、誘電体203をはさんでアンテナパターン202と分離されている。
【0086】
図5は、実施の形態1におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板の構成のさらに別の例の断面図である。
【0087】
図5の例において、図3A及び図3Bの検出ポート207の代わりに、検出ポート212が用いられている。
【0088】
検出ポート211は、GND面に配置されており、誘電体203をはさんでアンテナパターン202と分離されている。
【0089】
<アンテナ無線装置のキャリブレーション動作>
次いで、実施の形態1における送信系のキャリブレーション動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0090】
H系Tx CAL符号系列発生器115aによって生成されたCAL符号系列は、スイッチ122a及び位相・振幅調整回路123aを経て、IQ DAC124aによって直交変調され、周波数変換器125aによって送信キャリブレーション信号に変換される。
【0091】
送信キャリブレーション信号は、電力増幅器126a及び入出力結合部127aを経て、H偏波給電ポート103に給電される。
【0092】
同様に、V系Tx CAL符号系列発生器115bによって生成されたCAL符号系列は、スイッチ122b及び位相・振幅調整回路123bを経て、IQ DAC124bによって直交変調され、周波数変換器125bによって送信キャリブレーション信号に変換される。
【0093】
送信キャリブレーション信号は、電力増幅器126b及び入出力結合部127bを経て、V偏波給電ポート104に給電される。
【0094】
なお、キャリブレーション用に使用されるCAL符号系列に関して、H系とV系とで異なる相関符号系列が使用される。これらのCAL符号系列は、直交系列であることが望ましい。
【0095】
H偏波給電ポートに給電された送信キャリブレーション信号及びV偏波給電ポートに給電された送信キャリブレーション信号は、検出信号として検出ポート105に出力される。
【0096】
ここで、検出ポート105は、パッチアンテナ素子102の中央又は略中央に配置されているので、検出ポート105に給電された検出信号は、H偏波給電ポート103及びV偏波給電ポート104を経たそれぞれの信号と比較して励振電流が小さい。また、検出ポート105は、上述したようにパッチアンテナ素子102のアンテナパターンと直接接続されないことから、検出ポート105に給電された検出信号は、送信電力と比較して微小な電力の信号として検出される。したがって、これらにより、アンテナの放射特性への影響は小さくなる。
【0097】
次いで、検出ポート105に給電された検出信号は、基準送受信回路108に出力され、送受信共用器又はスイッチ145、LNA146、直交復調器147、Tx CAL信号復号系で受信され、周波数変換された後にIQ ADC148によってAD変換によりデジタルデータ信号に変換される。
【0098】
符号相関器149は、デジタルデータ信号をH偏波成分とV偏波成分とに分離する。そして、符号相関器149は、デジタルデータ信号と、H系Tx CAL符号系列発生器115aによって生成されたCAL符号系列と、の相関を検出する。同様に、符号相関器149は、デジタルデータ信号と、V系Tx CAL符号系列発生器115bによって生成されたCAL符号系列と、の相関を検出する。これにより、符号相関器149は、H偏波成分及びV偏波成分それぞれの電力及び遅延時間を検出し、振幅・位相偏差を検出する。
【0099】
符号相関器149によって検出されたH偏波成分の振幅・位相偏差は、H偏波送受信回路106の位相・振幅調整回路123aに出力される。同様に、符号相関器149によって検出されたV偏波成分の振幅・位相偏差は、V偏波送受信回路107の位相・振幅調整回路123bに出力される。
【0100】
位相・振幅調整回路123aと位相・振幅調整回路123bとは、H偏波成分の振幅・位相偏差とV偏波成分の振幅・位相偏差とをそれぞれ用いて、所定の値になるように送信信号121aと送信信号121bとの送信電力及び送信位相を調整することが可能になる。
【0101】
複数のパッチアンテナ素子102(1,1)~(M,N)の各々について、H偏波送受信回路106、V偏波送受信回路107及び基準送受信回路108は、上記と同様の動作を行うことができる。したがって、パッチアンテナ素子102毎にH偏波送信系及びV偏波送信系それぞれの電力及び遅延時間を検出し、パッチアンテナ素子102毎の振幅・位相偏差を検出/取得することで、パッチアンテナ素子102毎に偏差を補正することが可能になり、送信ビームフォーミング精度を向上させることができる。
【0102】
さらに、パッチアンテナ素子102と、H偏波送受信回路106(H系Rx CAL符号相関器131a)、V偏波送受信回路107(V系Rx CAL符号相関器131b)及び基準送受信回路108(符号相関器149)と、の間で温度変動等による送信電力変動が発生しても、送信信号の送信電力を適切な電力に補正することが可能になる。
【0103】
次いで、実施の形態1における受信系のキャリブレーション動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0104】
CAL符号発生器141は、H系Rx CAL符号系列発生器114aによって生成されたCAL符号系列とV系Rx CAL符号系列発生器114bによって生成されたCAL符号系列とを合成して合成信号を生成する。
【0105】
合成信号は、IQ DAC142によってDA変換された後に直交変調され、周波数変換器143によって受信キャリブレーション信号に変換される。
【0106】
受信キャリブレーション信号は、パッチアンテナ素子102に対応付けられている検出ポート105に給電される。
【0107】
検出ポート105に給電された受信キャリブレーション信号は、パッチアンテナ素子102を介して、H偏波給電ポート103及びV偏波給電ポート104に出力される。
【0108】
送信系の動作と同様に、検出ポート105は、パッチアンテナ素子102の中央又は略中央に配置されているので、検出ポート105に給電された受信キャリブレーション信号は、H偏波給電ポート103及びV偏波給電ポート104を経たそれぞれの信号と比較して励振電流が小さい。また、検出ポート105は、上述したようにパッチアンテナ素子102のアンテナパターンと直接接続されないことから、検出ポート105に給電された受信キャリブレーション信号は、当該受信キャリブレーション電力に対して減衰した信号としてH偏波給電ポート103及びV偏波給電ポート104に出力される。
【0109】
H偏波給電ポート103に出力された受信キャリブレーション信号は、H偏波送受信回路106のLNA128aを経て、H系Rx CAL信号復号系で受信され、直交復調器129aによって周波数変換された後に、IQ ADC130aによってAD変換されてデジタルデータ信号に変換される。
【0110】
H系Rx CAL符号相関器131aは、デジタルデータ信号とH系CAL符号系列との相関を検出することで、H偏波成分の電力及び遅延時間を検出し、振幅・位相偏差を検出する。
【0111】
同様に、V偏波給電ポート104に出力された受信キャリブレーション信号は、V偏波送受信回路107のLNA128bを経て、V系Rx CAL信号復号系で受信され、直交復調器129bによって周波数変換された後に、IQ ADC130bによってAD変換されてデジタルデータ信号に変換される。
【0112】
V系Rx CAL符号相関器131bは、デジタルデータ信号とV系CAL符号系列との相関を検出することで、V偏波成分の電力及び遅延時間を検出し、振幅・位相偏差を検出する。
【0113】
複数のパッチアンテナ素子102(1,1)~(M,N)の各々について、H偏波送受信回路106、V偏波送受信回路107及び基準送受信回路108は、上記と同様の動作を行うことができる。したがって、パッチアンテナ素子102毎にH偏波受信系及びV偏波受信系それぞれの電力及び遅延時間を検出し、パッチアンテナ素子102毎の振幅・位相偏差を検出/取得することで、パッチアンテナ素子102毎に偏差を補正することが可能になり、受信ビームフォーミング精度を向上させることができる。
【0114】
さらに、1つの検出ポートを用いてH偏波系及びV偏波系の電力及び遅延時間(したがって振幅・位相偏差)を検出することで、小型なフェイズドアレイの構成が可能になる。
【0115】
以上説明したように、実施の形態1における構成によれば、パッチアンテナ素子102と、位相・振幅偏差を検出する符号相関器149(基準送受信回路108)、H系Rx CAL符号相関器131a(H偏波送受信回路106)及びV系Rx CAL符号相関器131b(V偏波送受信回路107)と、の間の経路特性差を補正することができる。すなわち、パッチアンテナ素子102とこれらの検出部との間で、温度の違いや配線長の違いによる経路特性差を補正することができる。これにより、送受信経路でのパッチアンテナ素子102毎の振幅・位相偏差を補正することが可能になり、ビームフォーミング精度を向上させることができる。
【0116】
また、パッチアンテナ素子102を含めた送受信経路毎の振幅・位相偏差を検出し、H偏波及びV偏波等の複数の偏波に共用される1つの検出ポートを設けることで、面積効率を向上させることができる。これにより、例えば平面アレイアンテナ面の裏側に送受信系を配置したパネル状のフェイズドアレイアンテナを提供することができる。
【0117】
なお、実施の形態1では、1つのパッチアンテナ素子102に、1つのH偏波給電ポート103及び1つのV偏波給電ポート104が対応付けられている例が説明されているが、本開示はこの例に限定されるものではない。例えば、1つのH偏波給電ポート103が存在せず、1つのパッチアンテナ素子102に1つのV偏波給電ポート104のみが対応付けられていてもよいし、1つのV偏波給電ポート104が存在せず、1つのパッチアンテナ素子102に1つのH偏波給電ポート103のみが対応付けられていてもよい。
【0118】
このように、1つのパッチアンテナ素子102に1つのH偏波給電ポート103又は1つのV偏波給電ポート104のみが対応付けられている場合、1つのCAL符号系列のみが使用されればよい。
【0119】
また、上述した送信系のキャリブレーションは、複数のパッチアンテナ素子102について並列に実行されてもよいし、順次に実行されてもよい。同様に、上述した受信系のキャリブレーションは、複数のパッチアンテナ素子102について並列に実行されてもよいし、順次に実行されてもよい。
【0120】
また、実施の形態1では、スイッチ122a及び122bが用いられている例が説明されているが、本開示はこの例に限定されるものではない。例えば、スイッチ122a及び122bの代わりに加算器を用いてもよい。加算器を用いる場合、CAL符号系列が付加された送信信号121a及び121bが、それぞれ、位相・振幅調整回路123a及び123bを経て、IQ DAC124a及び124bによって直交変調され、周波数変換器125a及び125bによって送信キャリア周波数信号に変換されることになる。このような送信キャリア周波数信号が、送信キャリブレーション信号として用いられてもよい。
【0121】
(実施の形態2)
図6図8を参照して、本開示の実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板について説明する。実施の形態1におけるアンテナ無線装置と同じ構成については、説明を省略する。
【0122】
実施の形態2では、複数のパッチアンテナ素子の数は4つである。すなわち、MもNも2である。
【0123】
[第1の例]
図6は、実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板301の一例を示す斜視図である。
【0124】
図6の例において、アンテナ基板301は、パッチアンテナ素子302a、パッチアンテナ素子302b、パッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dを有する。
【0125】
なお、複数のパッチアンテナ素子302a~302d全体又は複数のパッチアンテナ素子302a~302dのうちの代表的な1つについて言及するときには、パッチアンテナ素子302と呼ぶことがある。
【0126】
パッチアンテナ素子302aには、図1に示したパッチアンテナ素子102と同一の位置にH偏波給電ポート303a及びV偏波給電ポート304aが配置されている。
【0127】
一方、パッチアンテナ素子302b~302dには、それぞれのH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304が、パッチアンテナ素子302b~302d内で外側に位置するように配置されている。すなわち、これら4つのパッチアンテナ素子302のH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304は、その位置を回転させた関係になっている。
【0128】
なお、複数のH偏波給電ポート303a~303d全体又は複数のH偏波給電ポート303a~303dのうちの代表的な1つについて言及するときには、H偏波給電ポート303と呼ぶことがある。同様に、複数のV偏波給電ポート304a~304d全体又は複数のV偏波給電ポート304a~304dのうちの代表的な1つについて言及するときには、V偏波給電ポート304と呼ぶことがある。
【0129】
図6の例において、アンテナ基板301は、検出ポート305a、検出ポート305b、検出ポート305c及び検出ポート305dをさらに有する。
【0130】
なお、複数の検出ポート305a~305d全体又は複数の検出ポート305a~305dのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート305と呼ぶことがある。
【0131】
検出ポート305aは、X方向に隣接するパッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302bの間の中間又は略中間の位置に配置されている。
【0132】
さらに、検出ポート305aとH偏波給電ポート303aとH偏波給電ポート303bとは、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0133】
同様に、検出ポート305bは、X方向に隣接するパッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dの間の中間又は略中間の位置に配置されている。
【0134】
さらに、検出ポート305bとH偏波給電ポート303cとH偏波給電ポート303dとは、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0135】
検出ポート305aは、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302bのH偏波系のキャリブレーションを行うために共用される、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0136】
同様に、検出ポート305bは、パッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dのH偏波系のキャリブレーションを行うために共用される、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0137】
検出ポート306aは、Y方向に隣接するパッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302cの間の中間又は略中間の位置に配置されている。
【0138】
さらに、検出ポート306aとV偏波給電ポート304aとV偏波給電ポート304cとは、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0139】
同様に、検出ポート306bは、Y方向に隣接するパッチアンテナ素子302b及びパッチアンテナ素子302dの間の中間又は略中間の位置に配置されている。
【0140】
さらに、検出ポート306bとV偏波給電ポート304bとV偏波給電ポート304dとは、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0141】
検出ポート306aは、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302cのV偏波系のキャリブレーションを行うために共用される、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0142】
同様に、検出ポート306bは、パッチアンテナ素子302b及びパッチアンテナ素子302dのV偏波系のキャリブレーションを行うために共用される、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0143】
したがって、第1の例では、4つの基準送受信回路108が存在する。
【0144】
なお、複数の検出ポート305a~305b全体又は複数の検出ポート305a~305bのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート305と呼ぶことがある。同様に、複数の検出ポート306a~306b全体又は複数の検出ポート306a~306bのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート306と呼ぶことがある。
【0145】
検出ポート305aに接続されている基準送受信回路108は、送信系及び受信系の各々について、図2に示したH系Tx CAL符号系列発生器115a及びH系Rx CAL符号系列発生器114aによってそれぞれ生成された同一の1つのCAL符号系列を用いて、上述したように、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302bの各々のH偏波系のキャリブレーションを順次に行うことできる。あるいは、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302bの各々のH偏波系のキャリブレーションを並列に行う場合には、パッチアンテナ素子302aとパッチアンテナ素子302bとで、異なるCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302bの間のH偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0146】
同様に、検出ポート305bに接続されている基準送受信回路108は、同一の1つのCAL符号系列を用いて、パッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dの各々のH偏波系のキャリブレーションを順次に行うことできる。あるいは、キャリブレーションを並列に行う場合には、異なるCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dの間のH偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0147】
検出ポート306aに接続されている基準送受信回路108は、送信系及び受信系の各々について、図2に示したV系Tx CAL符号系列発生器115b及びV系Rx CAL符号系列発生器114bによってそれぞれ生成された同一の1つのCAL符号系列を用いて、上述したように、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302cの各々のV偏波系のキャリブレーションを順次に行うことできる。あるいは、キャリブレーションを並列に行う場合には、異なるCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子302a及びパッチアンテナ素子302cの間のV偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0148】
同様に、検出ポート306bに接続されている基準送受信回路108は、同一の1つのCAL符号系列を用いて、パッチアンテナ素子302b及びパッチアンテナ素子302dの各々のV偏波系のキャリブレーションを順次に行うことできる。あるいは、キャリブレーションを並列に行う場合には、異なるCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子302b及びパッチアンテナ素子302dの間のV偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0149】
さらに、パッチアンテナ素子302a、パッチアンテナ素子302b、パッチアンテナ素子302c及びパッチアンテナ素子302dの間のH偏波系及びV偏波系の振幅・位相偏差は相関をもつため、これらの4つのパッチアンテナ素子間での偏差を、より精度よく検出することが可能になる。
【0150】
[第2の例]
図7は、実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板301の別の例を示す斜視図である。
【0151】
図7に示されているように、図6に示されている検出ポート305a~305b及び306a~306bに代えて、表層パターンの形状を変えた、パッドパターンを備えている検出ポート307a~307b及び308a~308bが用いられてもよい。
【0152】
なお、複数の検出ポート307a~307b全体又は複数の検出ポート307a~307bのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート307と呼ぶことがある。同様に、複数の検出ポート308a~308b全体又は複数の検出ポート308a~308bのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート308と呼ぶことがある。
【0153】
このように表層パターンの形状を変えることで、検出ポートと給電ポートとの間の結合量を調整することができる。
【0154】
以上説明したように、実施の形態2の第1の例及び第2の例における構成によれば、隣接するパッチアンテナ素子間で共用される検出ポートを設けることで、隣接するパッチアンテナ素子間の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。例えば2×2パッチアンテナ素子を基本ユニットとしてアレイアンテナを構成する場合の、ユニット単位でのビームフォーミング精度を向上させることができる。
【0155】
[第3の例]
図8は、実施の形態2におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板301のさらに別の例を示す斜視図である。
【0156】
図8の例におけるパッチアンテナ素子302dには、図6に示したパッチアンテナ素子302dと同一の位置にH偏波給電ポート303d及びV偏波給電ポート304dが配置されている。
【0157】
図8の例におけるパッチアンテナ素子302a~302cのそれぞれのH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304も、図8の例におけるパッチアンテナ素子302dのH偏波給電ポート303d及びV偏波給電ポート304dと同一の位置関係になるように配置されている。すなわち、これら4つのパッチアンテナ素子302のH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304は、その位置を回転させていない関係になっている。
【0158】
このようにパッチアンテナ素子302のH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304の位置を回転させることが困難な場合には、図8に示されているように、H偏波用に検出ポート309a、検出ポート309b、検出ポート309c及び検出ポート309dを設け、V偏波用に検出ポート310a、検出ポート310b、検出ポート310c及び検出ポート310dを設けてもよい。
【0159】
なお、複数の検出ポート309a~309d全体又は複数の検出ポート309a~309dのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート309と呼ぶことがある。同様に、複数の検出ポート310a~310d全体又は複数の検出ポート310a~310dのうちの代表的な1つについて言及するときには、検出ポート310と呼ぶことがある。
【0160】
図8の例において、検出ポート309aとH偏波給電ポート303aと検出ポート309bとH偏波給電ポート303bとは、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0161】
同様に、検出ポート309cとH偏波給電ポート303cと検出ポート309dとH偏波給電ポート303dとは、X軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0162】
また、検出ポート310aとV偏波給電ポート304aと検出ポート310cとV偏波給電ポート304cとは、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0163】
同様に、検出ポート310bとV偏波給電ポート304bと検出ポート310dとV偏波給電ポート304dとは、Y軸方向に沿って同一直線又は略同一直線上に存在するように配置されている。
【0164】
そして、検出ポート309a及び検出ポート310aは、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0165】
同様に、検出ポート309b及び検出ポート310bは、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0166】
同様に、検出ポート309c及び検出ポート310cは、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0167】
同様に、検出ポート309d及び検出ポート310dは、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0168】
したがって、第3の例でも、4つの基準送受信回路108が存在する。
【0169】
(実施の形態3)
図9を参照して、本開示の実施の形態3におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板について説明する。実施の形態1におけるアンテナ無線装置と同じ構成については、説明を省略する。
【0170】
実施の形態3でも、複数のパッチアンテナ素子の数は4つである。すなわち、MもNも2である。
【0171】
図9は、実施の形態3におけるアンテナ無線装置のアンテナ基板330の一例を示す斜視図である。
【0172】
図9の例において、アンテナ基板330は、パッチアンテナ素子311a、パッチアンテナ素子311b、パッチアンテナ素子311c及びパッチアンテナ素子311dを有する。
【0173】
なお、複数のパッチアンテナ素子311a~311d全体又は複数のパッチアンテナ素子311a~311dのうちの代表的な1つについて言及するときには、パッチアンテナ素子311と呼ぶことがある。
【0174】
パッチアンテナ素子311のH偏波給電ポート312及びV偏波給電ポート313の配置は、図6に示したパッチアンテナ素子302のH偏波給電ポート303及びV偏波給電ポート304の配置と同一である。
【0175】
なお、複数のH偏波給電ポート312a~312d全体又は複数のH偏波給電ポート312a~312dのうちの代表的な1つについて言及するときには、H偏波給電ポート312と呼ぶことがある。同様に、複数のV偏波給電ポート313a~313d全体又は複数のV偏波給電ポート313a~313dのうちの代表的な1つについて言及するときには、V偏波給電ポート313と呼ぶことがある。
【0176】
一方、図9の例において、アンテナ基板330は、1つの検出ポート331のみをさらに有する点で、図6に示したアンテナ基板301と構成が異なる。
【0177】
検出ポート331は、X方向及びY方向に隣接する4つのパッチアンテナ素子311a~311dの間の中間又は略中間の位置に配置されている。
【0178】
検出ポート331は、4つのパッチアンテナ素子311a~311dのH偏波系及びV偏波系のキャリブレーションを行うために共用される、図1及び図2に示した1つの基準送受信回路108に接続されている。
【0179】
したがって、図9の例では、1つの基準送受信回路108しか存在しない。
【0180】
検出ポート331に接続されている基準送受信回路108は、送信系及び受信系の各々について、図2に示したH系Tx CAL符号系列発生器115a及びH系Rx CAL符号系列発生器114aによってそれぞれ生成された同一の1つのCAL符号系列を用いて、上述したように、パッチアンテナ素子311a~311dの各々のH偏波系のキャリブレーションを順次に行うことできる。あるいは、キャリブレーションを並列に行う場合には、異なる8つのCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子311a~311dの間のH偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0181】
また、検出ポート331に接続されている基準送受信回路108は、送信系及び受信系について、図2に示したV系Tx CAL符号系列発生器115b及びV系Rx CAL符号系列発生器114bによってそれぞれ生成された同一の1つのCAL符号系列を用いて、上述したように、パッチアンテナ素子311a~311dの各々のV偏波系のキャリブレーションを行うことできる。あるいは、キャリブレーションを並列に行う場合には、異なる8つのCAL符号系列を用いる。その結果、パッチアンテナ素子311a~311dの間のV偏波系の振幅・位相偏差の検出精度を向上させることができる。
【0182】
以上説明したように、実施の形態3における構成によれば、基準送受信回路の数を削減し、小型省電力性を向上させるとともに、順次にキャリブレーションを行う場合には同一の1つのCAL符号系列を用いることで、4パッチアンテナ素子間の偏差を削減し、ビームフォーミング精度を向上させることができる。
【0183】
また、検出ポートの数が全体で1つに削減されるため、アンテナ基板の面積効率を向上させることができる。
【0184】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0185】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例又は修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本開示の一実施例は、フェイズドアレイアンテナのビームフォーミング精度を向上させることができ、ビーム走査を行う無線通信装置等として有用である。また、レーダ装置等の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0187】
10 アンテナ無線装置
101、201、301、330 アンテナ基板
102、200、302、311 パッチアンテナ素子
103、205、303、312 H偏波給電ポート
104、206、304、313 V偏波給電ポート
105、207、211、212、305、306、307、308、309、310、331 検出ポート
106 H偏波送受信回路
107 V偏波送受信回路
108 基準送受信回路
114a H系Rx CAL符号系列発生器
114b V系Rx CAL符号系列発生器
115a H系Tx CAL符号系列発生器
115b V系Tx CAL符号系列発生器
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9