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特開2022-156571繊維強化樹脂組成物、積層体および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156571
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂組成物、積層体および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/10 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
C08J5/10 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060335
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】牧口 航
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 功
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AD44
4F072AE11
4F072AE12
4F072AF13
4F072AF26
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH04
4F072AH06
4F072AH13
4F072AH18
4F072AH19
4F072AH46
4F072AH49
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL03
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL07
4F072AL08
4F072AL11
4F072AL16
4F072AL17
(57)【要約】
【課題】強化線維にポリアミド樹脂を含浸させてなり、かつ複数層に積層して融着させた積層体の層間せん断強度を高めることもできる、繊維強化樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)、有機系滑剤、および分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤、からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む、繊維強化樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数の強化繊維と、
結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、
非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)、有機系滑剤、および分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤、からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む、
繊維強化樹脂組成物。
【請求項2】
前記添加剤として、前記非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)を含み、
前記非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)の含有量は、前記繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、1.0質量部以上30.0質量部以下となる量である。
請求項1に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項3】
前記添加剤として、前記有機系滑剤を含み、
前記有機系滑剤は、金属石鹸である、
請求項1または2に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属石鹸は、ヒドロキシ基を含む、請求項3に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機系滑剤の含有量は、前記繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下となる量である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項6】
前記添加剤として、前記粘度調整剤を含み、
前記粘度調整剤は、モノカルボン酸である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項7】
前記モノカルボン酸は、安息香酸または酢酸である、請求項6に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項8】
前記粘度調整剤の含有量は、前記繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、0.01質量部以上10.0質量部以下となる量である、請求項6または7に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項9】
前記複数の強化繊維は、一方向に配向して配列されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項10】
前記複数の強化繊維は、織り込まれている、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂組成物を積層し、互いに溶着させてなる積層体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂組成物、積層体および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸された樹脂組成物(マトリクス樹脂)と、を含む薄膜状の繊維強化樹脂(以下、単に「Uni-Direction (UD)シート」ともいう。)が知られている。このUDシートは、金属よりも軽量であり、一方で機械的強度が高いため、樹脂成形体の表面を被覆する補強材などとしての用途が検討されている。また、一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸された樹脂組成物(マトリクス樹脂)と、を含むペレット状の樹脂組成物(Long Fiber Thermoplastics:LFT)も、各種用途への使用が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ジアミン成分としてテレフタル酸またはイソフタル酸に由来する成分単位を有する半結晶性ポリアミドを、互いに平行にアラインメントされた、あるいは織り込んだ炭素繊維の間に拡散させた、熱可塑性複合材料が記載されている。特許文献1によれば、上記熱可塑性複合材料は、ひびが生じにくいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-512453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、炭素繊維に半結晶性ポリアミド樹脂を含浸させた複合材料が記載されている。しかし、本発明者らの知見によると、特許文献1に記載の複合材料を複数層に積層して融着させた積層体は、層間せん断強度に劣る、という問題があった。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、強化線維にポリアミド樹脂を含浸させてなり、かつ複数層に積層して融着させた積層体の層間せん断強度を高めることもできる、繊維強化樹脂組成物、これを積層してなる積層体、およびこれを成形してなる成形体を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一態様に関する繊維強化樹脂組成物は、配列された複数の強化繊維と、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)、有機系滑剤、および分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤、からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の一態様に関する積層体は、前記繊維強化樹脂組成物を積層し、互いに溶着させてなる。
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一態様に関する成形体は、前記繊維強化樹脂組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強化線維にポリアミド樹脂を含浸させてなり、かつ複数層に積層して融着させた積層体の層間せん断強度を高めることもできる、繊維強化樹脂組成物、これを積層してなる積層体、およびこれを成形してなる成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲について、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値にそれぞれ置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
本発明者らは、特許文献1に記載の複合材料が層間せん断強度に劣る理由を種々研究した結果、上記複合材料では、炭素繊維へのポリアミド樹脂の含浸性が低く、複合材料中にポリアミド樹脂が十分に含浸されないことを見出した。そのため、積層して融着させようとしても、層間のポリアミド樹脂同士が十分に融合せず、このために層間せん断強度が低いと考えられる。上記知見に基づき、本発明者らは、ポリアミド樹脂の流動性を高めて繊維強化樹脂組成物中にポリアミド樹脂を十分に含浸させ、これによって、上記繊維強化樹脂組成物を積層して互いに融着させてなる積層体の層間せん断強度を高める方法を鋭意検討した結果、本発明に想到した。
【0014】
本発明の一実施形態は、配列された複数の強化繊維と、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂と、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂、有機系滑剤、および分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤、からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む、繊維強化樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)に関する。典型的には、上記樹脂組成物は、上記強化線維と、上記強化線維に含浸されるマトリクス樹脂としての、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂および上記添加剤と、を含む。
【0015】
[強化繊維]
上記強化繊維の材料は、特に限定されない。たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、および金属繊維などを、上記強化繊維として用いることができる。これらのうち、力学特性に優れ、かつ成形品をより軽量化できる点から、炭素繊維が好ましい。上記炭素繊維の例には、PAN系の炭素繊維、ピッチ系の炭素繊維およびレーヨン系の炭素繊維が含まれる。これらのうち、強度と弾性率とのバランスに優れることから、PAN系の炭素長繊が好ましい。
【0016】
上記炭素繊維は、X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.08以上0.4以下であることがより好ましく、0.1以上0.3以下であることがさらに好ましい。上記表面酸素濃度比が0.05以上であると、炭素繊維表 面に十分な量の官能基を確保して、マトリクス樹脂との接着性をより高めることができる。上記表面酸素濃度比が0.5以下であると、炭素繊維の取扱い性および生産性に優れる。上記表面酸素濃度比[O/C]は、国際公開第2017/183672号に記載の方法により測定できる。上記表面酸素濃度比[O/C]は、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などを含む公知の方法により制御できるが、電解酸化処理による制御が好ましい。
【0017】
上記強化繊維は、強化繊維による強度の向上効果を十分に高める観点からは、平均直径が1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、4μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
上記強化繊維の長さは、通常15mm以上である。上記強化繊維の長さの下限値は、20mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。上記強化繊維の長さの上限値の最大値は、UDシートの長さの最大値と同じであることが好ましく、例えば50mである。通常、後述の樹脂成形体に用いられるUDシートは、UDシートを製造後に所望の長さに裁断されたものが用いられる。そのため、樹脂成形体が含むUDシートが含む強化繊維の長さは、上述の長さの最小値によりも小さくなることがあり得る。
【0019】
上記強化繊維は、集束剤(サイズ剤)により集束された繊維束が開繊されたものであることが好ましい。上記繊維束の単糸数は特に制限されないが、通常は100本以上350,000本以下であり、1,000本以上250,000本以下であることが好ましく、5,000本以上220,000本以下であることがより好ましい。
【0020】
上記集束剤は、オレフィン系エマルション、ウレタン系エマルション、エポキシ系エマルション、およびナイロン系エマルションなどを含む公知の集束剤であれはよい。
【0021】
上記強化繊維は、複数の強化繊維が配列されていればよく、一方向のみに配向して配列された強化繊維のみが繊維強化樹脂組成物に含まれていてもよいし、互いに異なる複数の方向に配列された強化繊維が繊維強化樹脂組成物に含まれていてもよい。複数の方向に配列された強化繊維が含まれるとき、これらの強化繊維は織り込まれていてもよい。
【0022】
[結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)]
結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)(以下、単に「ポリアミド樹脂(A)ともいう。」)は、結晶性を有する、半芳香族ポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂(A)は、繊維強化樹脂組成物や当該繊維強化樹脂組成物の積層体および成形物の引張強度およびヤング率などの機械的強度を高めることができる。
【0023】
なお、本明細書において、ポリアミド樹脂が結晶性を有するとは、後述の測定方法により測定される融解熱量(ΔH)が20.0J/g以上であることを意味する。
【0024】
本明細書において、半芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香環を有する構造単位と、脂肪族鎖を有する構造単位とを含むポリアミド樹脂を意味する。ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)と、ジアミンから誘導される成分単位(Ab)とを含む構造であることが好ましい。このとき、ポリアミド樹脂の結晶性を高めるため、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)は、芳香族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸から誘導される成分単位を含むことが好ましい。
【0025】
(ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa))
より具体的には、本実施形態において、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)は、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種から誘導される成分単位(Aa1)を含むことが好ましい。これらの成分単位(Aa1)は、たとえばイソフタル酸から誘導される成分単位とは異なり、ポリアミドの結晶性を高めることができる。中でも、結晶性が高く、耐熱性が高いポリアミド樹脂を得る観点などから、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)は、テレフタル酸から誘導される成分単位を含むことが好ましい。成分単位(Aa)がテレフタル酸から誘導される成分単位を含むと、層間せん断強度をより向上できる傾向にあるため、好ましい。
【0026】
これらの成分単位(Aa1)の含有量は、ポリアミド樹脂の結晶性を確保する観点から、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して20モル%より多く100モル%以下とすることが好ましい。ポリアミド樹脂の結晶性をより高める観点および繊維強化樹脂組成物の積層体の層間せん断強度をより向上させる観点から、これらの成分単位(Aa1)の含有量は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して45モル%~100モル%が好ましく、50モル%~100モル%がより好ましく、60モル%~100モル%がさらに好ましく、80モル%~100モル%が特に好ましい。また、樹脂組成物の含浸性をより向上させる観点から、これらの成分単位(Aa1)の含有量は、25モル%~99モル%が好ましく、40モル%~80モル%がより好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。
【0027】
ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分単位(Aa1)以外の芳香族カルボン酸成分単位(Aa2)または脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa3)を含んでいてもよい。
【0028】
成分単位(Aa1)以外の芳香族ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa2)の例には、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、オルトフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、フランジカルボン酸および5-ナトリウムスルホイソフタル酸から誘導される成分単位などが含まれる。これらの中でも、成分単位(Aa2)は、イソフタル酸から誘導される成分単位を含むことが好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。成分単位(Aa2)は、樹脂組成物の含浸性を調整することができる。
【0029】
ポリアミド樹脂(A)が成分単位(Aa2)を含むときのこれらの成分単位(Aa2)の含有量は、ポリアミド樹脂の結晶性を確保する観点、および樹脂組成物の含浸性をより向上させる観点から、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して1モル%以上50モル%以下であることが好ましく、10モル%以上40モル%以下であることがより好ましく、15モル%以上40モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以上40モル%以下であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂(A)が成分単位(Aa2)を含むときのこれらの成分単位(Aa2)の含有量は、ポリアミド樹脂の結晶性を確保する観点、および繊維強化樹脂組成物の積層体の層間せん断強度を高める観点から、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して0モル%を超えて50モル%以下が好ましく、0モル%を超えて20モル%以下がより好ましく、0モル%を超えて10モル%がさらに好ましい。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa3)は、炭素原子数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位であることが好ましい。ジ脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa3)の例には、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、およびドデカンジカルボン酸から誘導される成分単位などの直鎖または分岐鎖状の脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位が含まれる。また、脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa3)には、シクロヘキサンジカルボン酸、およびシクロペンタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から誘導される成分単位などが含まれる。これらの中でも、成分単位(Aa3)は、アジピン酸およびセバシン酸から誘導される成分単位を含むことが好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。成分単位(Aa3)は、樹脂組成物の融点や結晶性を調整して成形性をより向上できる傾向がある。
【0031】
ポリアミド樹脂(A)が成分単位(Aa3)を含むときのこれらの成分単位(Aa3)の含有量は、ポリアミド樹脂の結晶性を確保する観点から、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して0モル%より多く40モル%以下であることが好ましく、0モル%より多く20モル%以下であることがより好ましく、1モル%以上10モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以上5モル%以下であることが特に好ましい。
【0032】
ポリアミド樹脂(A)は、上述した成分単位(Aa1)、成分単位(Aa2)、および成分単位(Aa3)の外に、少量の、トリメリット酸およびピロメリット酸これらの一無水物のような三価以上の多価カルボン酸成分単位をさらに含有していてもよい。ポリアミド樹脂(A)のゲル化を抑制する観点から、このような多価カルボン酸成分単位の含有量は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)の総モル数に対して、0モル%以上5モル%以下とすることができる。
【0033】
(ジアミンから誘導される成分単位(Ab))
ジアミンから誘導される成分単位(Ab)は、炭素原子数4以上18以下の直鎖状アルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab1)を含むことが好ましく、側鎖アルキル基を有する炭素原子数4以上18以下のアルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab2)や、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアミンから誘導される成分単位(Ab3)をさらに含んでもよい。
【0034】
なお、本明細書において、側鎖アルキル基を有するアルキレンジアミンから誘導される成分単位における炭素原子数は、特に限定しない限り、主鎖アルキレン基の炭素原子数と側鎖アルキル基の炭素原子数との合計である。
【0035】
炭素原子数4以上18以下の直鎖状アルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab1)の例には、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカンおよび1,12-ジアミノドデカンなどから誘導される成分単位が含まれる。これらの中でも、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカンおよび1,12-ジアミノドデカンから誘導される成分単位が好ましく、1,6-ジアミノヘキサン成分単位がより好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。
【0036】
ジアミンから誘導される成分単位(Ab)は、ポリアミド樹脂(A)に含まれるジアミンから誘導される成分単位の総モル数を100モル%としたとき、炭素原子数4以下18以下の直鎖状アルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab1)の量が、20モル%以上100モル%以下であることが好ましく、20モル%以上80モル%以下であることがより好ましい。上記成分単位の含有量が20モル%以上であると、結晶化速度が遅くなりすぎないため、ポリアミド樹脂(A)の結晶性や機械的強度を適度に高めやすい。上記成分単位の含有量が100モル%以下、好ましくは80モル%以下であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度が高くなりすぎないため、マトリクス樹脂の流動性を高めて層間せん断強度を高めやすい。同様の観点から、直鎖状の脂肪族ジアミンから誘導される成分単位の含有量は、上記合計に対して30モル%以上60モル%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
側鎖アルキル基を有する炭素原子数4以上18以下のアルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab2)の例には、1-ブチル-1,2-ジアミノ-エタン、1,1-ジメチル-1,4-ジアミノ-ブタン、1-エチル-1,4-ジアミノ-ブタン、1,2-ジメチル-1,4-ジアミノ-ブタン、1,3-ジメチル-1,4-ジアミノ-ブタン、1,4-ジメチル-1,4-ジアミノ-ブタン、2,3-ジメチル-1,4-ジアミノ-ブタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン、2-メチル-1,11-ジアミノウンデカン、2,5-ジメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,4-ジメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、3,3-ジメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,2-ジメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,4-ジエチル-1,6-ジアミノ-ヘキサン、2,3-ジメチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2,4-ジメチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2,5-ジメチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2,2-ジメチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2-メチル-4-エチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2-エチル-4-メチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、2,2,5,5-テトラメチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、3-イソプロピル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、3-イソオクチル-1,7-ジアミノ-ヘプタン、1,3-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、1,4-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、2,4-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、3,4-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、4,5-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、2,2-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、3,3-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、4,4-ジメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、3,3,5-トリメチル-1,8-ジアミノ-オクタン、2,4-ジエチル-1,8-ジアミノ-オクタン、および5-メチル-1,9-ジアミノ-ノナンから誘導される成分単位が含まれる。これらのうち、繊維強化樹脂組成物の積層体の層間せん断強度をより向上させる観点から、炭素原子数1以下2以下の側鎖アルキル基を1~2個有すると共に、主鎖の炭素原子数が4以下10以下である側鎖アルキルジアミンから誘導される成分単位が好ましく、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンおよび2-メチル-1,8-ジアミノオクタンから誘導される成分単位がより好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。
【0038】
炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアミンから誘導される成分単位(Ab3)の例には、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α′-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサン、およびα,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,3-シクロヘキサンから誘導される成分単位が含まれる。これらの中でも、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、および4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンから誘導される成分単位が好ましく、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、および1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導される成分単位がより好ましい。これらの成分単位は、ポリアミド樹脂(A)中に複数種類含有されていてもよい。
【0039】
ポリアミド樹脂(A)が側鎖アルキル基を有する炭素原子数4以上18以下のアルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab2)または炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアミンから誘導される成分単位(Ab3)を含むときのこれらの成分単位の含有量の合計は、ポリアミド樹脂(A)に含まれるジアミンから誘導される成分単位の総モル数を100モル%としたとき、20モル%以上80モル%以下であることが好ましい。上記成分単位の含有量の合計が20モル%以上であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶化速度が適度に遅くなりやすいため、マトリクス樹脂の流動性を高めて層間せん断強度を高めやすい。上記成分単位の含有量が80モル%以下であると、ポリアミド樹脂(A)の結晶性や機械的強度が損なわれにくい。同様の観点から、これらの成分単位の含有量の合計は、上記合計に対して40モル%以上70モル%以下であることがより好ましい。
【0040】
なお、ポリアミド樹脂(A)が3官能以上の多官能アミン化合物から誘導される成分単位を含むとき、上記成分単位の添加量は、樹脂がゲル化しないような添加量、具体的にはアミンから誘導される全成分単位の合計100モル%中10モル%以下にすることが好ましい。
【0041】
また、ポリアミド樹脂(A)は、上述した炭素原子数4以上18以下の直鎖状アルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab1)、側鎖アルキル基を有する炭素原子数4以上18以下のアルキレンジアミンから誘導される成分単位(Ab2)、および炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアミンから誘導される成分単位(Ab3)の外に、少量のメタキシリレンジアミンから誘導される成分単位などの他のジアミンから誘導される成分単位を含んでもよい。このような他のジアミンから誘導される成分単位の含有量は、ジアミンから誘導される成分単位(Ab)の合計量に対して50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下でありうる。
【0042】
(末端封止剤)
ポリアミド樹脂(A)は、コンパウンドや成形時の熱安定性を高めたり、機械的強度をより高めたりする観点から、少なくとも一部の分子の末端基が末端封止剤で封止されていてもよい。末端封止剤は、例えば分子末端がカルボキシル基の場合は、モノアミンであることが好ましく、分子末端がアミノ基である場合は、モノカルボン酸であることが好ましい。
【0043】
モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、およびブチルアミンなどを含む脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、およびジシクロヘキシルアミンなどを含む脂環式モノアミン、ならびに、アニリン、およびトルイジンなどを含む芳香族モノアミンなどが含まれる。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ-ル酸などを含む炭素原子数2以上30以下の脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などを含む芳香族モノカルボン酸、ならびにシクロヘキサンカルボン酸などを含む脂環式モノカルボン酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸および脂環式モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
【0044】
(物性等)
ポリアミド樹脂(A)は、融点(Tm)を270℃以上340℃以下とすることができる。ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が270℃以上であると、樹脂組成物や成形体の高温域における機械的強度や耐熱性などが損なわれにくく、340℃以下であると、成形温度を過剰に高くする必要がないため、樹脂組成物の成形加工性が良好となりやすい。上記観点から、ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、290℃以上340℃以下であることがより好ましく、315℃以上340℃以下であることがさらに好ましい。
【0045】
ポリアミド樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)を80℃以上150℃以下とすることができる。
【0046】
ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、20.0J/g以上であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)が20.0J/g以上であると、結晶性を有するため、樹脂部材の耐熱性を高めやすい。上記観点から、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)は、25.0J/g以上であることが好ましく、30.0J/g以上であることがより好ましい。なお、ポリアミド樹脂(A)の融解熱量(ΔH)の上限値は、特に制限されないが、成形加工性を損なわないようにする観点からは、130J/gとすることができ、100J/g以下であることが好ましい。
【0047】
ポリアミド樹脂の融解熱量(ΔH)、融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定することができる。
【0048】
具体的には、約5mgの結晶性ポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱する。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却する。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行う。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)を結晶性ポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。融解熱量(ΔH)は、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での融解時の吸熱ピークの面積から求める。
【0049】
ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および融解熱量(ΔH)は、たとえば上述したジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa1)の組成や、ジアミンから誘導される成分単位(Ab1)1つあたりの炭素原子数などによって調整されうる。ポリアミド樹脂(A)の融点を高めるためには、たとえばテレフタル酸から誘導される成分単位の含有比率を多くすればよい。
【0050】
ポリアミド樹脂(A)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.5dl/g以上1.25dl/g以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が0.5dl/g以上であると、成形体の機械的強度(靱性など)を十分に高めやすく、1.25dl/g以下であると、樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]は、同様の観点から、0.6dl/g以上1.15dl/g以下であることがより好ましく、0.6dl/g以上1.05dl/g以下であることがさらに好ましい。極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)の末端封止量などによって調整することができる。
【0051】
ポリアミド樹脂(A)の極限粘度は、JIS K6810(1977年)に準拠して測定することができる。具体的には、ポリアミド樹脂(A)0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解して試料溶液とする。この試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して、25±0.05℃の条件下で測定し、得られた値を下記式に当てはめて算出することができる。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
【0052】
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
【0053】
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t-t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
【0054】
(製造方法)
ポリアミド樹脂(A)は、例えば前述のジカルボン酸と、前述のジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。
【0055】
ポリアミド樹脂の極限粘度を調整する観点などから、反応系に前述の末端封止剤を添加してもよい。末端封止剤の添加量により、ポリアミド樹脂の極限粘度[η](または分子量)を調整することができる。
【0056】
末端封止剤は、ジカルボン酸とジアミンとの反応系に添加される。添加量はジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。
【0057】
ポリアミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、60質量部以上99.99質量部以下となる量であることが好ましく、70質量部以上99.9質量部以下となる量であることがより好ましく、75質量部以上99.0質量部以下となる量であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(A)の上記含有量が上記下限値以上であると、繊維強化樹脂組成物や当該繊維強化樹脂組成物の積層体および成形体の引張強度やヤング率がより向上する傾向がある。ポリアミド樹脂(A)の上記含有量が上記上限値以下であると、層間せん断強度がより向上する傾向がある。
【0058】
[添加剤]
上記添加剤は、ポリアミド樹脂(A)の流動性を高めて、樹脂組成物中にポリアミド樹脂(A)をより十分に含浸させる。これにより、樹脂組成物を積層して融着させるときに、上下の樹脂組成物から染み出すポリアミド樹脂(A)の量が増大し、上記染み出したポリアミド樹脂(A)によって互いの樹脂組成物同士がより強固に融着できると考えられる。
【0059】
本実施形態において、上記添加剤は、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)、有機系滑剤、または分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤(以下、単に「粘度調整剤」ともいう。)である。樹脂組成物は、これらのうち1種のみを含んでいてもよいし、複数種を含んでいてもよい。本発明者らの知見によると、上記3種類の添加剤のうち2種類以上を組み合わせると、層間せん断強度の向上効果がより顕著である。また、上記3種類の添加剤のうち、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)と、有機系滑剤または粘度調整剤との2種を組み合わせると、層間せん断強度の向上効果がより顕著である。これらの添加剤により、層間せん断強度が向上する理由は明らかではないが、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)とこれらの添加剤の相溶性が高いため、均一な相が形成されやすく、層間せん断強度がより向上するものだと推測される。
【0060】
(非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B))
非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)(以下、単に「ポリアミド樹脂(B)ともいう。」)は、結晶性を有さない、半芳香族ポリアミド樹脂である。
【0061】
なお、本明細書において、ポリアミド樹脂が結晶性を有さないとは、ポリアミド樹脂(A)と同様の測定方法で測定される融解熱量(ΔH)が5.0J/gであることを意味する。ポリアミド樹脂(B)の融解熱量(ΔH)は、1.0J/g以下が好ましく、0J/gがより好ましい。
【0062】
ポリアミド樹脂(B)は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)と、ジアミンから誘導される成分単位(Bb)とを含む構造であることが好ましい。ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)は、ポリアミド樹脂(A)におけるジカルボン酸から誘導される成分単位(Aa)について例示したジカルボン酸と同様のジカルボン酸から誘導される成分単位とすることができる。ジアミンから誘導される成分単位(Bb)は、ポリアミド樹脂(A)におけるジアミンから誘導される成分単位(Ab)について例示したジアミンと同様のジアミンから誘導される成分単位とすることができる。
【0063】
なお、ポリアミド樹脂(B)は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)として、少なくともイソフタル酸から誘導される成分単位を含むことが好ましい。イソフタル酸から誘導される成分単位は、ポリアミド樹脂(B)の結晶性を低くしうる。
【0064】
イソフタル酸から誘導される成分単位の含有量は、ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)の合計量に対して40モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましい。イソフタル酸から誘導される成分単位の含有量が40モル%以上であると、ポリアミド樹脂(B)を非晶性にしやすい。イソフタル酸から誘導される成分単位の含有量の上限は特に限定されないものの、100モル%以下とすることができ、90モル%以下とすることが好ましい。
【0065】
ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)は、本発明の効果を損なわない範囲で、イソフタル酸から誘導される成分単位以外の他のジカルボン酸から誘導される成分単位をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸の例には、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸などのイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ならびに脂環族ジカルボン酸が含まれる。脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸は、前述の脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸とそれぞれ同様でありうる。中でも、イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。より具体的には、下記のいずれかの態様が好ましい。
態様1:ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)は、イソフタル酸から誘導される成分単位、テレフタル酸から誘導される成分単位、およびアジピン酸から誘導される成分単位の3種のみを実質的に含む態様。
態様2:ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)は、イソフタル酸から誘導される成分単位、およびテレフタル酸から誘導される成分単位の2種のみを含む実質的に含む態様。
なお、実質的に含むとは、不可避的混入される場合や、物性に影響を与えない極微量を含む場合を許容するものである。
【0066】
ジカルボン酸から誘導される成分単位(Ba)における、イソフタル酸から誘導される成分単位とイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)から誘導される成分単位のモル比は、イソフタル酸から誘導される成分単位/イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはテレフタル酸)から誘導される成分単位=55/45~100/0(モル比)であることが好ましく、60/40~90/10(モル比)であることがより好ましい。イソフタル酸から誘導される成分単位の量が一定以上であると、ポリアミド樹脂(B)は非晶性となりやすく、ポリアミド樹脂(B)によってマトリクス樹脂の結晶化速度を遅くしてポリアミド樹脂(A)をより十分に含浸させ、上記樹脂組成物を積層して互いに融着させてなる積層体の層間せん断強度をより高めることができる傾向がある。
【0067】
ジアミンから誘導される成分単位(b-1)は、1,6-ジアミノヘキサンから誘導される成分単位であることが好ましい。
【0068】
なお、ポリアミド樹脂(B)は、M.I.Kohan Nylon plastics handbook,Hanser,Munich(1995年),377~380頁に記載された各種非晶性ポリアミド樹脂であってもよい。
【0069】
ポリアミド樹脂(B)は、ガラス転移温度(Tg)を80℃以上150℃以下とすることができる。
【0070】
ポリアミド樹脂(B)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.5dl/g以上1.25dl/g以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂(B)の極限粘度[η]が0.5dl/g以上であると、成形体の機械的強度(靱性など)を十分に高めやすく、1.25dl/g以下であると、樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。ポリアミド樹脂(B)の極限粘度[η]は、同様の観点から、0.6dl/g以上1.15dl/g以下であることがより好ましく、0.6dl/g以上1.05dl/g以下であることがさらに好ましい。極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂(A)の末端封止量などによって調整することができる。
【0071】
ポリアミド樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、1質量部以上30質量部以下となる量であることが好ましく、5質量部以上27質量部以下となる量であることがより好ましく、10質量部以上25質量部以下となる量であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(B)の上記含有量が1質量部以上であると、マトリクス樹脂の結晶化速度を遅くしてポリアミド樹脂(A)をより十分に含浸させ、上記樹脂組成物を積層して互いに融着させてなる積層体の層間せん断強度をより高めることができる傾向がある。ポリアミド樹脂(B)の上記含有量が30質量部以下であると、上記線維強化樹脂組成物や当該繊維強化樹脂組成物の積層体および成形体の引張強度やヤング率をより高めることができる傾向がある。
【0072】
(有機系滑剤)
上記有機系滑剤の例には、
流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、および合成パラフィンなどを含む高級脂肪族炭化水素系滑剤、
ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、および硬化ひまし油などを含む脂肪酸系滑剤
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、およびヒドロキシステアリン酸カルシウムなどを含む炭素原子数8以上の脂肪酸金属塩である金属石鹸
モンタンワックス等の長鎖エステルワックス類
炭素原子数12以上30以下の高級脂肪族アルコール化合物
炭素原子数12以上30以下の高級脂肪族アミド化合物、および
これらを複合した複合滑剤
などが含まれる。
【0073】
これらのうち、層間せん断強度をより向上させる観点から、上記有機系滑剤は、分子内滑剤効果を有する有機系滑剤が好ましい。分子内滑剤効果を有する有機系滑剤は、金属石鹸を含むことが好ましい。すなわち、層間せん断強度をより向上させる観点から、上記有機系滑剤は、金属石鹸を含むことが好ましい。
【0074】
上記金属石鹸は、炭素原子数8以上の脂肪酸と、金属との塩である。上記脂肪酸は、ジカルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよい。上記脂肪酸の例には、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セバシン酸、およびリシノール酸などが含まれる。
【0075】
上記金属の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛およびアルミニウム、ならびにこれらのうち2種類以上を含む混合金属などが含まれる。
【0076】
上記金属石鹸の具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸バリウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸リチウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、およびパルミチン酸亜鉛などが含まれる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0077】
これらのうち、層間せん断強度をより向上させる観点から、上記金属石鹸は、脂肪族鎖がヒドロキシ基を含むものであることが好ましい。より具体的には、層間せん断強度をより向上させる観点から、上記金属石鹸は、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムを含むことが好ましい。
【0078】
有機系滑剤(好ましくは金属石鹸)の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下となる量であることが好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下となる量であることがより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下となる量であることがさらに好ましい。有機系滑剤の上記含有量が0.1質量部以上であると、ポリアミド樹脂(A)をより十分に含浸させ、上記樹脂組成物を積層して互いに融着させてなる積層体の層間せん断強度をより高めることができる。有機系滑剤の上記含有量が10.0質量部以下であると、上記線維強化樹脂組成物や当該繊維強化樹脂組成物の積層体および成形体の引張強度やヤング率に優れる傾向がある。
【0079】
(粘度調整剤)
粘度調整剤は、分子内にカルボキシ基を有する化合物である。上記粘度調整剤は、分子内にカルボキシ基を有する化合物であればよく、この限りにおいて、分子内に有するカルボキシ基の数は特に限定されない。
【0080】
粘度調整剤の例には、モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびカルボキシ基の数が3以上の多価カルボン酸などが含まれる。なお、上記多価カルボン酸が有するカルボキシル基の数の上限は特に限定されないが、8以下とすることができる。
【0081】
上記モノカルボン酸の例には、炭素原子数2以上30以下の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸などが含まれる。なお、上記芳香族モノカルボン酸および上記脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
【0082】
上記脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ-ル酸などが含まれる。
【0083】
上記芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などが含まれる。
【0084】
上記ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ならびに、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが含まれる。
【0085】
上記カルボキシ基の数が3以上の多価カルボン酸の例には、トリメリット酸およびピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸が含まれる。
【0086】
粘度調整剤の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量部としたとき、0.01質量部以上10.0質量部以下となる量であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下となる量であることがより好ましく、0.1質量部以上3.0質量部以下となる量であることがさらに好ましい。粘度調整剤の上記含有量が0.01質量部以上であると、ポリアミド樹脂(A)をより十分に含浸させ、上記樹脂組成物を積層して互いに融着させてなる積層体の層間せん断強度をより高めることができる。粘度調整剤の上記含有量が10.0質量部以下であると、上記線維強化樹脂組成物や当該繊維強化樹脂組成物の積層体および成形体の引張強度やヤング率がより向上する傾向がある。
【0087】
[その他の成分]
上記樹脂組成物は、マトリクス樹脂中に、ポリアミド樹脂組成物に含まれ得るその他の成分を含んでもよい。上記その他の成分の例には、結晶核剤、難燃剤、耐腐食性向上剤、ドリップ防止剤、イオン捕捉剤、エラストマー(ゴム)、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類およびリン類など)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅およびヨウ素化合物など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類およびオギザニリド類など)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂およびLCPなど)などが含まれる。
【0088】
[樹脂組成物の製造・形状]
上記樹脂組成物は、一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸されたマトリクス樹脂と、を含めばよく、一方向に配列された複数の強化繊維に樹脂組成物が含浸された薄膜状の繊維強化樹脂(UDシート)や、一方向に配列された複数の強化繊維の織物に樹脂組成物が含浸された薄膜状の繊維強化樹脂(クロスシート)や、ペレット状の樹脂組成物(LFT)とすることができる。
【0089】
上記樹脂組成物の全質量に対する、上記強化繊維の含有量は、例えば10質量%以上90質量%以下とすることができる。また、上記樹脂組成物の全質量に対する、上記マトリクス樹脂の含有量は、10質量%以上90質量%以下とすることができる。また、上記樹脂組成物の全体積に対する、上記強化繊維の含有量は、10体積%以上70体積%以下とすることができる。
【0090】
(UDシート)
UDシートは、公知の方法で上記強化繊維に上記マトリクス樹脂を含浸させて、作製することができる。
【0091】
たとえば、溶融状態の上記マトリクス樹脂で表面がコーティングされた含浸ロールに、開繊されて一方向に配列された複数の上記強化繊維を同時に接触させるようにして、上記含浸ロールを回転させ、かつ上記複数の強化繊維を上記回転方向に沿って移動させることで、上記強化繊維に上記マトリクス樹脂を含浸させることができる。
【0092】
あるいは、樹脂の含浸方法は上記方法に限定されず、溶融した上記マトリクス樹脂に上記強化繊維を浸漬させるなど方法によってもよい。
【0093】
炭素繊維に樹脂を含浸させた後、樹脂を冷却固化させることで、一方向に配向して配列された複数の強化繊維に上記マトリクス樹脂が含浸してなるUDシートを得ることができる。
【0094】
UDシートの全質量に対する、上記強化繊維の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。また、UDシートの全質量に対する、上記マトリクス樹脂の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。
【0095】
UDシートの全体積に対する、上記強化繊維の含有量(繊維体積含有率:Vf)は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
UDシートの厚みは特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上400μm以下であることがより好ましく、5μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
【0097】
UDシートの使用時の態様も特に限定されず、単独のUDシートをそのまま使用してもよいし、複数のUDシートを積層体として使用してもよい。また、UDシートを適宜切断してテープ状にして使用してもよい。
【0098】
UDシートは、レーザーによる融着およびプレス成型などの方法により、積層して互いに融着させた積層体とすることができる。上記積層体は、他の成形体の表面に融着または接着していてもよい。このとき、他の成形体の表面にUDシートの積層体をレーザーによって順次融着させていってもよいし、インサート成形などの方法で他の成形体の表面にUDシートの積層体を融着させてもよい。あるいは、マンドレルの周囲にUDシートを巻き付けながら互いに溶着させていって、UDシートの積層体からなるパイプとしてもよい。
【0099】
レーザーにより融着させて積層体を形成するとき、上記樹脂組成物は、レーザーの吸収効率を高めて融着効率をより高めるための色素をマトリクス樹脂に含有することが好ましい。上記色素は、公知の顔料または染料とすることができる。上記顔料および染料は、上記照射されるレーザーの波長と同一の波長の吸光度がより大きい顔料および染料であることが好ましく、具体的には、吸収極大波長が300nm以上3000nm以下である顔料および染料であることが好ましく、吸収極大波長が500nm以上2000nm以下である顔料および染料であることがより好ましく、吸収極大波長が700nm以上1500nm以下である顔料および染料であることがさらに好ましい。逆に、レーザーの波長の選択をより自由にする観点からは、上記顔料および染料は、より広い範囲の波長を吸収できる顔料および染料(あるいはその組み合わせ)であることが好ましく、具体的には、黒色系の顔料および染料(あるいはその組み合わせ)であることが好ましく、カーボン系の顔料を含むがより好ましく、カーボンブラックを含むことがさらに好ましい。
【0100】
上記顔料および染料の含有量は、レーザーの吸収効率を十分に高め、かつ、積層体の強度などの他の特性に顕著な影響を与えない程度であればよい。たとえば、上記のカーボンブラックの含有量は、樹脂組成物の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0101】
(クロスシート)
クロスシートは、公知の方法で上記強化繊維を織り込み、この織物に上記マトリクス樹脂を含浸させて、作製することができる。たとえば、溶融した上記マトリクス樹脂に上記強化繊維を浸漬させるなど方法によってもよい。
【0102】
クロスシートの全質量に対する、上記強化繊維の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。また、UDシートの全質量に対する、上記マトリクス樹脂の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。
【0103】
クロスシートの全体積に対する、上記強化繊維の含有量(繊維体積含有率:Vf)は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
【0104】
クロスシートの厚みは特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上400μm以下であることがより好ましく、5μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
【0105】
クロスシートの使用時の態様も特に限定されず、単独のクロスシートをそのまま使用してもよいし、複数のクロスシートを積層体として使用してもよい。また、クロスシートを適宜切断してテープ状にして使用してもよい。
【0106】
(LFT)
LFTは、炭素繊維と半芳香族ポリアミドを含む芯鞘型の長繊維含有ペレットであり、公知の方法で上記強化繊維に上記マトリクス樹脂を含浸させて得たストランドを、所定の長さに切断する方法で、作製することができる。
【0107】
LFTの全質量に対する、上記強化繊維の含有量は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。また、LFTの全質量に対する、上記マトリクス樹脂の含有量は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0108】
LFTの全体積に対する、上記強化繊維の含有量は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
【0109】
LFTの長さは特に限定されないが、3mm以上100mm以下であることが好ましく、5mm以上50mm以下であることがより好ましい。
【0110】
LFTは、射出成型やプレス成形などにより所定の形状に成形してもよい。また、LFTの製造と成形とを連続して行う、ダイレクト成形により所定の形状に成形してもよい。
【0111】
[その他の実施形態]
なお、上述の各実施形態はそれぞれ本発明の一例を示すものであり、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、他の種々多様な各実施形態も可能であることは言うまでもない。
【0112】
[用途]
上記樹脂成形体の用途は限定されないが、他の構造材料の補強材として有用である。
【0113】
上記樹脂成形体の用途の具体例には、主翼、垂直および水平尾翼などを含む一次構造材、補助翼、方向舵および昇降舵などを含む二次構造材、座席およびテーブルなどを含む内装材、動力装置、油圧シリンダー、ならびにコンポジットブレーキなどを含む、航空機およびヘリコプターなどの一般的な飛行体の部品部材、ノズルコーンおよびモーターケースなどを含むロケット部品部材、アンテナ、構造体、太陽電池パネル、バッテリーケースおよび望遠鏡などを含む人工衛星部品部材、フレーム、シャフト、ローラー、板バネ、工作機械ヘッド、ロボットアーム、搬送ハンドおよび合成繊維ポットなどを含む機械部品部材、遠心分離機ローターおよびウラン濃縮筒などを含む高速回転体部品部材、パラボラアンテナ、電池部材、レーダー、音響スピーカーコーン、コンピューター部品、プリンター部品、パソコン筐体およびタブレット筐体などを含む電子電機部品部材、骨格部品、準構造部品、外板部品、内外装部品、動力装置、他機器-油圧シリンダー、ブレーキ、バッテリーケース、ドライブシャフト、エンジンパーツ、スポイラー、レーシングカーボディー、クラッシュコーン、イス、タブレット、電話カバー、アンダーカバー、サイドカバー、トランスミッションカバー、バッテリートレイ、リアステップ、スペアタイア容器、バス車体壁およびトラック車体壁などを含む自動車・バイク部品部材、内装材、床板パネル、天井パネル、リニアモーターカー車体、新幹線・鉄道車体、窓拭きワイパー、台車および座席などを含む車両部品部材、ヨット、クルーザーおよびボートなどを含む船舶船体、マスト、ラダー、プロペラ、硬帆、スクリュー、軍用艦胴体、潜水艦胴体および深海探査船などを含む船舶部品部材・機体、アクチュエーター、シリンダー、ボンベ、水素タンク、CNGタンクおよび酸素タンクなどを含む圧力容器部品部材、攪拌翼、パイプ、タンク、ピットフロアーおよびプラント配管などを含む科学装置部品・部材、ブレード、スキン、骨格構造および除氷システムなどを含む風力発電部品部材、X線診断装置部品、車椅子、人工骨、義足・義手、松葉杖、介護補助器具・ロボット(パワーアシストスーツ)、歩行機および介護用ベッドなどを含む医療・介護機器部品部材・用品、CFコンポジットケーブル、コンクリート補強部材、ガードレール、橋梁、トンネル壁、フード、ケーブル、テンションロッド、ストランドロッドおよびフレキシブルパイプなどを含む土木建築・インフラ部品部材、マリンライザー、フレキシブルジャンパー、フレキシブルライザーおよびドリリングライザーなどを含む海底油田採掘用部品部材、釣竿、リール、ゴルフクラブ、テニスラケット、バドミントンラケット、スキー板、ストック、スノーボード、アイスホッケースティック、スノーモービル、弓具、剣道竹刀、野球バット、水泳飛び込み台、障害者用スポーツ用品およびスポーツヘルメットなどを含むスポーツ・レジャー用品。)フレーム、ディスクホイール、リム、ハンドルおよびサドルなどを含む自転車部品、メガネ、鞄、洋傘およびボールペンなどを含む生活用品、ならびに、プラスチックパレット、コンテナ、物流資材、樹脂型、家具、洋傘、ヘルメット、パイプ、足場板、安全靴、プロテクター、燃料電池カバー、ドローンブレード、フレーム、ジグおよびジグフレームなどを含むその他産業用途の部品部材・用品などが含まれる。
【実施例0114】
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0115】
なお、ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は、ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させ、得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、「数式:[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))」に基づき算出した。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t-t0)/t0
【0116】
また、ポリアミド樹脂の融点Tm、ガラス転移温度Tgおよび融解熱量(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、示差走査熱量計にセットした。そして、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。当該樹脂を完全融解させるために、360℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで360℃まで2度目の加熱を行った。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。融解熱量ΔHは、JIS K7122に準じて、1度目の昇温過程での結晶化の吸熱ピークの面積から求めた。
【0117】
1.材料の合成・用意
1-1.ポリアミド樹脂の合成
1-1-1.結晶性ポリアミド樹脂(A-1)(PA6TDT)の合成
テレフタル酸3655g(22.0モル)、1,6-ジアミノヘキサン1312g(11.3モル)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン1312g(11.3モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.5g(5.2×10-2モル)及び蒸留水640mlを、内容量1Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけてオートクレーブの内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。抜き出された低縮合物を、室温(23℃)まで冷却した後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は、4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換した後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分反応させ、室温(23℃)まで降温した。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、10Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、結晶性ポリアミド樹脂(A-1)を得た。
【0118】
得られた結晶性ポリアミド樹脂(A-1)の極限粘度[η]は0.9dl/g、融点Tmは300℃、融解熱量(ΔH)は42J/gであった。
【0119】
1-1-2.結晶性ポリアミド樹脂(A-2)(PA6T6I)の合成
テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、1,6-ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、安息香酸36.6g(0.3モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g(5.4×10-2モル)及び蒸留水545gを、内容量1Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけてオートクレーブの内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。抜き出された低縮合物を、室温(23℃)まで冷却した後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は、4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換した後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分反応させ、室温(23℃)まで降温した。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、10Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、結晶性ポリアミド樹脂(A-2)を得た。
【0120】
得られた結晶性ポリアミド樹脂(A-2)の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは330℃、融解熱量(ΔH)は51J/gであった。
【0121】
1-1-3.非晶性ポリアミド樹脂(B-1)(PA6I6T)の合成
テレフタル酸1390g(8.4モル)、イソフタル酸2581g(15.5モル)、1,6-ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、安息香酸109.5g(0.9モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g(5.4×10-2モル)及び蒸留水545gを、内容量1Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけてオートクレーブの内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。抜き出された低縮合物を、室温(23℃)まで冷却した後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低縮合物の水分量は、4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換した後、約1時間30分かけて180℃まで昇温した。その後、1時間30分反応させ、室温(23℃)まで降温した。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、10Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、非晶性ポリアミド樹脂(B-1)を得た。
【0122】
得られた非晶性ポリアミド樹脂(B-1)の極限粘度[η]は0.65dl/g、ガラス転移温度(Tg)は125℃、及び融解熱量(ΔH)は0J/gであった。
【0123】
1-2.強化繊維の用意
炭素繊維束として、T700SC(東レ株式会社製、フィラメント数24000本)を用意した。
【0124】
1-3.添加剤の用意
1-3-1.非晶性半芳香族ポリアミド樹脂
上記合成した非晶性ポリアミド樹脂(B-1)を用いた。
【0125】
1-3-2.有機系滑剤
金属石鹸(12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム:日東化成工業株式会社製、CS-6CP)を用いた。
【0126】
1-3-3.粘度調整剤
安息香酸を用いた。
【0127】
1-4.その他の成分
流動滑剤として、三井化学株式会社製、ハイワックス100P(低分子ポリエチレン、分子量900)を用いた。
【0128】
2.UDシートの作製
2-1.ポリアミド樹脂組成物の作製
結晶性半芳香族ポリアミド樹脂、添加剤(非晶性半芳香族ポリアミド樹脂、有機系滑剤もしくは粘度調整剤)または上記その他の成分を、表1および表2に記載の割合で、バレル温度を335℃に設定した30mmφベント付二軸押出機で混練し、押し出した後にペレタイザーでペレット化して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0129】
2-2.UDシートの作製
炭素繊維束を開繊し、一方向に配向して配列するように引き揃えた。金型内で、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂の融点Tmよりも10℃高い温度に加熱して溶融状態とした上記ポリアミド樹脂組成物を上記炭素繊維束に接触させ、含浸させた。なお、金型の温度も、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂の融点Tmよりも10℃高い温度とした。
【0130】
含浸後、冷却して得られたUDシートは、それぞれ、UDシートの全質量に対して63質量%の炭素繊維と、37質量%のポリアミド樹脂組成物と、を有していた。また、得られたUDシート中の厚みは、200μmだった。
【0131】
3.評価
3-1.層間せん断強度(ILSS)
得られたUDシートを、繊維方向が平行に配向するように11枚積層し、340℃3分間8MPaの条件で熱プレス成形を実施し、その後、15℃3分間8MPaの条件で冷却プレスを実施することで積層体を得た。複合材の厚みは2mmであった。
【0132】
この複合材から、幅4mm、長さ12mm、厚さ2mmの試験片を用意し、ASTM D2344に準拠して、島津製作所社製オートグラフAG-Xを用い、23℃、試験速度1mm/分で、層間せん断強度(ILSS)を測定した。
【0133】
3-2.含浸性
炭素繊維束(幅:9mm)を開繊して、幅12mmとなるように、一方向に配向して配列するように引き揃えた。
【0134】
上記作製したポリアミド樹脂組成物のペレットを、200μmのスペーサーを用いて、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂の融点Tmよりも10℃高い温度での熱プレスを3分間実施することにより、200μmのフィルムに成型した。
【0135】
得られたフィルム上に、上記開繊して引き揃えた炭素繊維を重ね合わせ、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂の融点Tmよりも10℃高い温度で5分間プレスした。プレス操作後、炭素繊維側の表面を観察し、以下の基準で、樹脂組成物の含浸状態を評価した。
〇:樹脂の染み出しが観察された
×:樹脂の染み出しが観察されなかった
【0136】
UDシートの作製に使用した各材料の種類および配合量(ポリアミド樹脂組成物の量を100質量部としたときの値)、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂の融点Tm、繊維体積含有率Vf、および層間せん断強度(ILSS)の測定結果、ならびに含浸性の評価結果を、表1~表3に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
表1~表3から明らかなように、マトリクス樹脂が、結晶性半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、非晶性半芳香族ポリアミド樹脂(B)、有機系滑剤、および分子内にカルボキシ基を有する化合物を含む粘度調整剤、からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含むと、マトリクス樹脂の含浸性が向上し、層間せん断強度(ILSS)が高まっていた。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の筒状体は、軽量であり、かつ積層体としたときの層間せん断強度が高い。そのため、本発明の筒状体は、各種補強材、筒状体、成形体として好適に使用できる。