(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156573
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】容器詰発泡性飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20221006BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20221006BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L2/00 T
A23L2/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060339
(22)【出願日】2021-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.株式会社伊藤園のウェブサイトでの発表 https://www.itoen.co.jp https://www.itoen.co.jp/whatsnew/detail.php?id=25680 発表日:令和3年2月2日 2.販売 販売した場所:全国 公開者:株式会社伊藤園 販売開始日:令和3年2月15日 3.ウェブサイトでの公開 https://www.amazon.co.jp/伊藤園-Gets-Vitamin-ゲッツビタミン-500ml/dp/B08V2BXM5J/ 公開者:Amazon(アマゾンジャパン合同会社) ウェブサイトの掲載日 令和3年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 史明
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大奨
(72)【発明者】
【氏名】川崎 真澄
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC04
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK04
4B117LK16
4B117LK30
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】 無糖・無果汁・無香料かつビタミン類が配合された発泡性飲料であって、ビタミン由来の臭気や酸味が抑制され、また経時の劣化臭が抑制された発泡性飲料を提供する。
【解決手段】 無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料であって、ガスボリュームが3.8~6.0であり、ポリフェノールを含有し、ビタミン類を50~1350ppm含有する、容器詰発泡性飲料。さらに本発明は、容器詰発泡性飲料の製造方法、無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法および劣化抑制方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料であって、
ガスボリュームが3.8~6.0であり、
ポリフェノールを含有し、
ビタミン類を50~1350ppm含有する、
容器詰発泡性飲料。
【請求項2】
前記ビタミン類が水溶性ビタミン類であり、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸およびビオチンからなる群から選ばれる1種または2種以上である、
請求項1に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項3】
前記ビタミン類として少なくともビタミンCを含有し、
前記ビタミンCの含有量に対する前記ビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ビタミンC含有量)が1.06~2.00である
請求項1または2に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項4】
前記ポリフェノールの含有量が9~50ppmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項5】
前記ポリフェノールが、柑橘果実由来である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項6】
前記柑橘果実がユズである、請求項5に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項7】
前記ポリフェノールの含有量に対する前記ビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量)が6.3~35.2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項8】
無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料の製造方法であって、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、ポリフェノールを添加し、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整する、
容器詰発泡性飲料の製造方法。
【請求項9】
無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法であって、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整するとともに、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、かつポリフェノールを添加する、
容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法。
【請求項10】
無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料における劣化抑制方法であって、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整するとともに、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、かつポリフェノールを添加する、
容器詰発泡性飲料における劣化抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰発泡性飲料に関し、より詳細には、無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料であって、ビタミン臭味がマスキングされ、さらに劣化が抑制された容器詰発泡性飲料に関する。さらに本発明は、容器詰発泡性飲料の製造方法、容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法、容器詰発泡性飲料における劣化抑制方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性飲料は、その味わいのみならず、飲用した時に炭酸ガスの刺激によって爽快感を得ることができ、その市場はますます拡大をしている。また、市場拡大とともに消費者ニーズも多様化してきており、従来の果汁系発泡性飲料やコーラ系発泡性飲料だけではなく、健康志向を背景に無糖系発泡性飲料の市場が近年急速に成長しており、無糖系発泡性飲料もいくつか提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、健康志向などの観点から、ビタミンを添加した発泡性飲料も種々提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-103945号公報
【特許文献1】特開平11-313646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料にビタミン類を添加すると含有量が増えるにつれビタミン特有の臭気の主張が強くなり、飲みにくくなるという問題点があった。また、水に溶けた状態のビタミン類は劣化が早く、経時劣化によって発生した異味異臭は商品の香味にとても影響を及ぼすという問題があった。従来、問題点は、糖類、果汁、香料等を配合することによって対処されており、ビタミンの健康性を兼ね備えた無糖・無果汁・無香料の発泡性飲料に関する提案は、充分とはいえなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、無糖・無果汁・無香料かつビタミン類が配合された発泡性飲料であって、ビタミン由来の臭気や酸味が抑制され、また経時の劣化臭が抑制された発泡性飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者等が鋭意検討したところ、ビタミン類の配合量を所定範囲に調整するとともに、発泡性飲料におけるガスボリュームを所定値以上とし、かつポリフェノールを配合することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕 無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料であって、
ガスボリュームが3.8~6.0であり、
ポリフェノールを含有し、
ビタミン類を50~1350ppm含有する、
容器詰発泡性飲料。
〔2〕 前記ビタミン類が水溶性ビタミン類であり、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸およびビオチンからなる群から選ばれる1種または2種以上である、
〔1〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔3〕 前記ビタミン類として少なくともビタミンCを含有し、
前記ビタミンCの含有量に対する前記ビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ビタミンC含有量)が1.06~2.00である
〔1〕または〔2〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔4〕 前記ポリフェノールの含有量が9~50ppmである、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
〔5〕 前記ポリフェノールが、柑橘果実由来である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
〔6〕 前記柑橘果実がユズである、〔5〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔7〕 前記ポリフェノールの含有量に対する前記ビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量)が6.3~35.2である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の容器詰発泡性飲料。
〔8〕 無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料の製造方法であって、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、ポリフェノールを添加し、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整する、
容器詰発泡性飲料の製造方法。
〔9〕 無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法であって、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整するとともに、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、かつポリフェノールを添加する、
容器詰発泡性飲料におけるビタミン臭味のマスキング方法。
〔10〕 無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料における劣化抑制方法であって、
ビタミン類の含有量を50~1350ppmに調整するとともに、
ガスボリュームを3.8~6.0に調整し、かつポリフェノールを添加する、
容器詰発泡性飲料における劣化抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器詰発泡性飲料は、無糖・無果汁・無香料でありながら、ビタミン由来の臭気が抑制され、また経時の劣化臭が抑制された、嗜好的に好ましいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、無糖、無果汁かつ無香料であって、ビタミン類を所定量含有するとともに、ポリフェノールを含有し、ガスボリュームが所定範囲にあるものである。
【0010】
(無糖)
本実施形態において「無糖」の飲料とは、糖類を実質的に含有しない飲料を意味する。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、飲料100mlあたり0.5g未満であれば無糖と表示することができる。本明細書においても当該表示基準と同様に、糖類の含有量が飲料100mlあたり0.5g未満である発泡性飲料を「無糖」の発泡性飲料とする。糖類含有量は、飲料100mLあたり0.1g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、糖類とは、単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものを意味し、果糖ぶどう糖液糖、砂糖などが包含される。
【0011】
(無果汁)
本実施形態において「無果汁」の飲料とは、果汁を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、果汁の含有量が飲料100mlあたり1.0g(ストレート換算)未満である発泡性飲料を「無果汁」の発泡性飲料とする。果汁の含有量は、飲料100mlあたり0.5g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、「果汁」とは、果実を粉砕して搾汁、裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものをいい、果実は日本標準商品分類による果実とする。果汁の含有量は、果実飲料の日本農林規格に定める測定方法に基づき測定可能である。
【0012】
(無香料)
本実施形態において「無香料」の飲料とは、香料を添加していない飲料を意味する。ここで、「香料」とは、食品の製造又は加工の工程で、香気を付与または増強するため添加される添加物及びその製剤をいい、容器詰発泡性飲料をはじめとする食品においては、香料を添加した場合はその旨の表示が義務付けられる。
【0013】
(ビタミン類)
本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ビタミン類を所定量含有する。
ビタミンとは、動物の正常な発育と栄養を保つ上に微量でよいが欠くことのできない特殊な有機物質の総称である。本実施形態におけるビタミン類には、水溶性および脂溶性の別、並びに天然および合成の別を問わず、あらゆるビタミンが包含される。
【0014】
一般に、ビタミン類を配合した飲料においては、ビタミン臭や経時の光劣化臭などのビタミン類に由来する異味異臭が生じやすく、無糖、無果汁かつ無香料の容器詰発泡性飲料においては、これらの異味異臭が特に顕著に感じられてしまう。
しかし、本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ポリフェノールを含有し、ガスボリュームが所定範囲にあるため、無糖、無果汁かつ無香料であるにもかかわらず、ビタミン類に由来する異味異臭がマスキングされ、嗜好的に好ましいものとなる。
【0015】
本実施形態において用いるビタミン類は、水溶性であることが好ましい。水溶性ビタミン類を用いることで、飲料を飲用したときに、後味の脂っぽさが抑制されてすっきりした後味となり、嗜好的に特に好ましいものとなる。
水溶性ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
なお、水に溶けた状態のビタミン類は劣化が早く、特に経時による光劣化によって発生した異味異臭が問題となっていたが、本実施形態によれば、かかる経時の異味異臭が抑制されたものとなる。また、特にビタミンCを含有する飲料においては、ビタミンCに由来する酸味も感じられるものとなるが、本実施形態によれば、かかる酸味も効果的にマスキングされた飲料とすることができる。
【0017】
(ビタミン類の含有量)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、ビタミン類の含有量が50ppm(質量/質量)以上であることが好ましく、100ppm以上であることがさらに好ましく、150ppm以上であることが特に好ましい。ビタミン類の含有量が上記下限値以上であることで、飲用者にとって十分な量のビタミン類を含んだ容器詰発泡性飲料とすることができる。
また、本実施形態の容器詰発泡性飲料は、ビタミン類の含有量が1350ppm以下であることが好ましく、1200ppm以下であることがさらに好ましく、900ppm以下であることが特に好ましい。ビタミン類の含有量が上記上限値以下であることで、ビタミン類に由来する異味異臭や経時劣化による異味異臭の抑制といった本実施形態の効果がより効果的に発揮される。
なお、本実施形態において、ビタミン類の総含有量とは、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に収載されるビタミン類のうち、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、およびビタミンEの含有量の合計である。ここで、ビタミンDの含有量とはビタミンD2とビタミンD3の合計量である。
【0018】
(ビタミンCの含有量)
本実施形態の容器詰発泡性飲料がビタミンCを含有する場合、ビタミンCの含有量は15ppm(質量/質量)以上であることが好ましく、30ppm以上であることがさらに好ましく、50ppm以上であることが特に好ましい。ビタミンCの含有量が上記下限値以上であることで、飲用者にとって十分な量のビタミンCを含んだ容器詰発泡性飲料とすることができる。
また、本実施形態の容器詰発泡性飲料は、ビタミンCの含有量が1300ppm以下であることが好ましく、1150ppm以下であることがさらに好ましく、850ppm以下であることが特に好ましい。ビタミンCの含有量が上記上限値以下であることで、特にビタミンCに由来する酸味を効果的に抑制することができる。
なお、ビタミンCの含有量は、L-アスコルビン酸(還元型)とL-デヒドロアスコルビン酸(酸化型)の含有量の合計値として算出するものとする。
【0019】
(ビタミン類含有量/ビタミンC含有量)
本実施形態の容器詰発泡性飲料がビタミンCを含有する場合、ビタミンCの含有量に対するビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ビタミンC含有量)は、1.06以上であることが好ましく、1.10以上であることがさらに好ましく、1.15以上であることが特に好ましい。ビタミン類を含有することで、長期保管後に飲料の香味が変化してしまうことがあり、例えば長期保管後に芋臭が感じられたり、舌に残るような苦みが感じられたりすることがあるが、ビタミン類含有量/ビタミンC含有量が上記下限値以上であることで、特に長期保管後における芋臭の発生が抑制され、長期保管後であっても嗜好的に好ましい状態を維持しやすくなる。
また、上記ビタミン類含有量/ビタミンC含有量は、2.00以下であることが好ましく、1.59以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることが特に好ましい。ビタミン類含有量/ビタミンC含有量が上記上限値以下であることで、長期保管後における舌に残るような苦みが抑制され、長期保管後であっても嗜好的に好ましい状態を維持しやすくなる。
【0020】
(ポリフェノール)
本実施形態においてポリフェノールとは、植物に由来する物質(フィトケミカル:phytochemical)の1種であり、1分子中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の総称である。ポリフェノールには、大別して分子量が1,000以下の単量体ポリフェノールと、単量体ポリフェノールが2つ以上結合した重合ポリフェノールが存在する。重合ポリフェノールは一般にタンニンとも称される。代表的な単量体ポリフェノールとしては、フラボノイド類(フラボノイド類には、フラボン、フラバノール、アントシアニジン、イソフラボノイド、ネオフラボノイド等を基本骨格とする化合物が含まれる)、クロロゲン酸、没食子酸、エラグ酸などがある。一方、重合ポリフェノールは単量体ポリフェノールが2個以上結合した化合物であり、ポリフェノール同士が炭素-炭素結合により重合した縮合型タンニンと、糖等由来の水酸基とのエステル結合により重合した加水分解型タンニンとに大別され、それぞれ代表的なポリフェノールとして縮合型タンニンとしてはプロアントシアニジン類、加水分解型タンニンとしてはガロタンニン、エラグタンニンが挙げられる。各ポリフェノールは単体以外にも、当該ポリフェノールの生理活性機能を失わない範囲であれば、例えば、重合体、配糖体等の所定の化合物状態であっても良い。ポリフェノールは重合度や結合位置で様々な種類のものが存在するが、極めて強い抗酸化作用を示す。
【0021】
本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ポリフェノールを含有することで、特に経時による光劣化臭が抑制され、嗜好的に好ましいものとなる。また、ポリフェノールを含有することにより、後述するガスボリュームの調整と相俟って、ビタミン類由来の臭味やビタミンC由来の酸味が効果的にマスキングされ、嗜好的に特に好ましいものとなる。
【0022】
本実施形態で用いることのできるポリフェノールとしては、柑橘果実由来、ブドウ科植物果実由来、バラ科果実由来のものなどが例示される。
ポリフェノールを含有する柑橘果実としては、ユズ、オレンジ、シークヮーサー、ミカン、グレープフルーツ、ポンカン、イヨカン、日向夏、柚子、カボス、スダチ、レモン、ライム等が挙げられ、ポリフェノールを含有するブドウ科植物果実としては、ブドウ、マスカット、白ブドウ、ヤマブドウ等が挙げられ、ポリフェノールを含有するバラ科植物果実としては、ウメ、モモ、イチゴ、リンゴ、ナシ、ビワ、カリン等を挙げることができる。
これらの中でも、柑橘果実由来のポリフェノールを用いることが好ましい。柑橘果実としては、ユズ、オレンジが好ましく、ユズが特に好ましい。
【0023】
(ポリフェノール含有量)
本実施形態の発泡性飲料は、ポリフェノールの含有量が4ppm以上であることが好ましく、9ppm以上であることがさらに好ましく、15ppm以上であることが特に好ましい。ポリフェノール含有量が上記下限値以上であることで、経時によるビタミン類の光劣化抑制効果がより効果的に発揮される。また、ビタミン類を含有する発泡性飲料は、ビタミン類に由来するビタミン臭や酸味に起因して、飲用したときの後味がややぼやけてしまい爽快感を感じにくくなる場合があるが、所定値以上のポリフェノールを含有させることで、ポリフェノール由来の苦渋みを飲料に付与することができ、飲用したときの後味が締まったものになり、爽快感を感じやすくなるとの効果も併せ奏することができる。
本実施形態の発泡性飲料は、ポリフェノールの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、40ppm以下であることが特に好ましい。ポリフェノール含有量が上記上限値以下であっても、経時による光劣化抑制効果は充分に発揮される。また、ポリフェノール含有量が所定値以下となることで、ポリフェノール由来の苦渋みが強くなりすぎず、飲用したときに爽快感のある後味を感じることができる。
なお、ポリフェノールは当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができ、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて求める方法が挙げられる。
【0024】
(ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量)
本実施形態の発泡性飲料は、ポリフェノールの含有量に対するビタミン類の含有量の比率(ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量)が6.3以上であることが好ましく、7.0以上であることがさらに好ましく、8.0以上であることが特に好ましい。ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量が上記下限値以上であることで、経時によるビタミン類の光劣化抑制効果がより効果的に発揮されるとともに、ポリフェノール由来の苦渋みにより後味が締まった飲料とすることができる。
また、上記ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量は、35.2以下であることが好ましく、25.0以下であることがさらに好ましく、20.0以下であることが特に好ましい。ビタミン類含有量/ポリフェノール含有量が上記上限値以下であることで、ポリフェノール由来の苦渋みが強くなりすぎず、飲用したときに爽快感のある後味を感じることができる。なお、かかる上限値以下であっても、経時によるビタミン類の光劣化抑制効果は充分に発揮される。
【0025】
(ガスボリューム)
本実施形態の発泡性飲料は、ガスボリュームが3.8以上であることが好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記下限値以上であることで、ビタミン類に由来する臭気を効果的にマスキングすることができる。また、炭酸の刺激感が強いものとなり、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができ、嗜好的に好ましい飲料とすることができる。
本実施形態の発泡性飲料は、ガスボリュームが6.0以下であることが好ましく、5.8以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記上限値以下であることで、ポリフェノールによる効果(特に、ビタミンC由来の酸味のマスキング効果)を損ねることなく、本実施形態の効果が効果的に発揮される。
なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、発泡性飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を発泡性飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0026】
(その他の成分)
本実施形態に係る発泡性飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、各種エステル類、着色料(色素)、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等があげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。
【0027】
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられるが、これらのうちイオン交換水または脱気水を用いるのが好ましく、特に脱気水を用いるのが好ましい。脱気水を用いることで、発泡性飲料の経時による品質の劣化や液色の褐変等の色調変化をより効果的に抑制することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
【0028】
(容器)
本実施形態の発泡性飲料は、容器に充填して提供される。本実施形態において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
なお、本実施形態においては、ビタミン類に由来する経時の光劣化が抑制されたものとなるため、容器の少なくとも一部分が透光性を有する容器であってよい。かかる観点において、PETボトルは本実施形態における好適な容器の一つである。
【0029】
(製造方法)
本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ビタミン類の含有量が所定範囲となるようビタミン類を添加するとともに、ポリフェノールを添加し、ガスボリュームを所定範囲に調整する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、ポリフェノールと、所定量のビタミン類とを添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0030】
以上の容器詰発泡性飲料は、ビタミン類を所定量含有し、さらに無糖、無果汁かつ無香料でありながら、ビタミン類に由来する臭味が抑制されたものとなる(本発明に係るビタミン臭味のマスキング方法に該当)。また、以上の容器詰発泡性飲料は、ビタミン類に由来する経時の光劣化臭が抑制されたものとなる(本発明に係る劣化抑制方法に該当)。
【0031】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0032】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0033】
〔製造例1〕容器詰発泡性飲料の製造
水に、容器詰発泡性飲料における最終濃度が表1に示す濃度(単位:ショ糖のみ質量%,ポリフェノールおよびビタミン類はppm(質量/質量))になるように、ショ糖、各種ビタミン類、およびゆず由来ポリフェノール(東洋精糖社製)を添加した後、95℃達温で殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填し、容器詰発泡性飲料を得た(試料1~17)。
【0034】
<試験例1>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1~17の各容器詰発泡性飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、FREE SHAKE V-CARBO(ビクスル社製,型式:DGV-1)を用いてガスボリュームを測定した。結果を表1に示す。
【0035】
<試験例2>ポリフェノール量の測定
試料1~17の各容器詰発泡性飲料(サンプル)を脱気した後、5mLを秤量し、50%エタノールで25mLに希釈した。下記条件によるHPLCに供して波長280nmで検出し、ナリンギン量に換算した。結果を表1に示す。
=HPLC条件=
カラム:Wakosil-II 5C18 HG 4.6mm×250mm(5μm)
流速:1.0mL/min
温度:40℃
移動相:アセトニトリル/水/酢酸=200/800/0.1
検出器:UV280nm
【0036】
<試験例3>官能評価
試料1~17の各容器詰発泡性飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、サンプル30mLを試飲することにより行った。ビタミン臭のマスキング、酸味のマスキング、光劣化臭(経時)の3項目に関し、それぞれ示す対照、保管条件および評価基準にて、5段階にて評価した。評価人数の多かった点数を評点として採用し、評価人数が同数の場合はパネラー間の協議により評点を決定した。を表1に示す。
【0037】
=ビタミン臭のマスキング=
陽性対照:各サンプルと同じガスボリュームの炭酸水
陰性対照:各サンプルと同量のビタミン類を溶かした水(ポリフェノール、炭酸ガスの添加なし)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
5点:陽性対照と同等にビタミン臭を感じない
4点:ビタミン臭は十分マスキングされているが、陽性対照よりやや劣る
3点:陽性対照よりビタミン臭のマスキングは劣るが、許容範囲である
2点:陰性対照よりビタミン臭がマスキングされているが、飲用にやや問題があり
1点:陰性対照と同等にビタミン臭を感じる、または、陰性対照と同等にビタミン臭を感じ飲用に適さない
【0038】
=酸味のマスキング=
陽性対照:各サンプルと同じガスボリュームの炭酸水
陰性対照:各サンプルと同量のビタミン類を溶かした水(ポリフェノール、炭酸ガスの添加なし)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
5点:陽性対照と同等に酸味を感じない
4点:酸味は十分マスキングされているが、陽性対照よりやや劣る
3点:陽性対照より酸味のマスキングは劣るが、許容範囲である
2点:陰性対照より酸味がマスキングされているが、飲用にやや問題があり
1点:陰性対照と同等に酸味を感じる、または、陰性対照と同等に酸味を感じ飲用に適さない
【0039】
=光劣化臭(経時)=
陽性対照:各サンプルの遮光保管品
陰性対照:各サンプルと同量のビタミン類を溶かした水(ポリフェノール、炭酸ガスの添加なし)
保管条件:
陽性対照は5℃・遮光にて14日日保管後、陽性対照以外のサンプルは5℃・10000ルクス連続照射下にて14日間保管後に、5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
5点:陽性対照と同等に光劣化臭を感じない
4点:光劣化臭はほとんど感じないが、陽性対照よりやや劣る
3点:陽性対照より光劣化臭を感じるが、許容範囲である
2点:陰性対照より劣化臭は抑制されているが、飲用にやや問題あり
1点;陰性対照と同等に光劣化臭を感じる、または、陰性対照と同等に光劣化臭を感じ飲用に適さない
【0040】
【0041】
表1に示すように、ビタミン類を所定量含有しつつも、ガスボリュームが所定範囲にあり、かつポリフェノールを含有する容器詰発泡性飲料(試料)は、ビタミン臭および酸味が効果的にマスキングされているとともに、経時の光劣化臭が抑制されたものであった。
【0042】
〔製造例2〕容器詰発泡性飲料の製造
各種ビタミン類の配合およびガスボリュームが表2に示す値になるように変更した以外は、製造例1と同様に製造し、容器詰発泡性飲料を得た(試料18~22)。
【0043】
得られた容器詰発泡性飲料(試料18~22)、および比較対象としての容器詰発泡性飲料(試料11)について、試験例1および2と同様にして炭酸ガスボリュームおよびポリフェノール量をそれぞれ測定した。また、官能評価において、上記試験例3と同じ3項目に加えて、後味(脂っぽさ)についても、以下に示す対照、保管条件および評価基準にて、4段階にて評価した。パネラー数、飲用方法、評点の決定方法は試験例3と同様とした。結果を表2に示す。
【0044】
=後味(脂っぽさ)=
陽性対照:炭酸水
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
4点:陽性対照と同等に後味に脂っぽさは感じず、すっきりとした後味である
3点:後味に脂っぽさは感じないが、後味のすっきり感は陽性対照よりやや劣る
2点:陽性対照と比べると後味に脂っぽさを少し感じ、すっきり感も陽性対照より劣る
1点:陽性対照と比べると後味に脂っぽさを感じ、すっきり感もあまりなく、後味に若干の違和感を感じる
【0045】
【0046】
表2に示すように、ビタミン類として水溶性ビタミンを用いた容器詰発泡性飲料は、後味に脂っぽさを感じにくくすっきりとしたものとなった。
【0047】
〔製造例3〕容器詰発泡性飲料の製造
各種ビタミン類の配合およびガスボリュームが表3に示す値になるように変更した以外は、製造例1と同様に製造し、容器詰発泡性飲料を得た(試料23~26)。
【0048】
得られた容器詰発泡性飲料(試料23~26)、および比較対象としての容器詰発泡性飲料(試料11)について、試験例1および2と同様にして炭酸ガスボリュームおよびポリフェノール量をそれぞれ測定した。また、官能評価において、上記試験例3と同じ3項目に加えて、香味変化(芋臭・苦み)についても、以下に示す対照、保管条件および評価基準にて、4段階にて評価した。パネラー数、飲用方法、評点の決定方法は試験例3と同様とした。結果を表3に示す。
【0049】
=香味変化(芋臭・苦み)=
陽性対照:炭酸水
保管条件:45℃・遮光にて14日日保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
4点:陽性対照と同等に芋臭と舌に残るような苦みを感じない
3点:陽性対照と比べると若干の芋臭、もしくは苦味を感じる。
2点:陽性対照と比べると芋臭、もしくは舌に残るような苦みを感じる
1点:陽性対照と比べると芋臭と舌に残るような苦みを感じ、後味に若干の違和感を感じる
【0050】
【0051】
表3に示すように、ビタミンCに対するビタミン類の比が所定範囲にある容器詰発泡性飲料は、香味変化が抑制されたものであった。
【0052】
〔製造例4〕容器詰発泡性飲料の製造
ポリフェノールの配合が表4に示す値になるように変更した以外は、製造例1と同様に製造し、容器詰発泡性飲料を得た(試料27~30)。
【0053】
得られた容器詰発泡性飲料(試料27~30)、および比較対象としての容器詰発泡性飲料(試料11)について、試験例1および2と同様にして炭酸ガスボリュームおよびポリフェノール量をそれぞれ測定した。また、官能評価において、上記試験例3と同じ3項目に加えて、苦渋みについても、以下に示す対照、保管条件および評価基準にて、4段階にて評価した。パネラー数、飲用方法、評点の決定方法は試験例3と同様とした。結果を表4に示す。
【0054】
=苦渋み=
陽性対照:炭酸水
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
4点:陽性対照と同等に苦渋みが気にならず、爽快感のある後味
3点:陽性対照と比べると若干苦渋みを感じるが、爽快感のある後味
2点:陽性対照と比べると少し苦渋みを感じ、後味の爽快感もやや劣る
1点:陽性対照と比べると苦渋みがやや強く最後まで苦渋みを感じ、後味の爽快感も陽性対照と比べると劣る、又は、陽性対照と比べると後味の締まりにやや欠け、爽快感も陽性対照と比べると劣る
【0055】
【0056】
表4に示すように、ポリフェノールの含有量やビタミン類との比率が所定範囲にある容器詰発泡性飲料は、苦渋みを感じにくいものであった。
本発明の容器詰発泡性飲料は、無糖・無果汁・無香料でありながら、ビタミン由来の臭気が抑制され、また経時の劣化臭が抑制されたものとなる。そのため、本発明は、近年の健康志向が遡及される状況において、嗜好的に好ましい新たな容器詰発泡性飲料を提供するものである。