(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022156579
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】搬送加熱装置及び検出装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/40 20060101AFI20221006BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20221006BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20221006BHJP
B23K 1/008 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
F27B9/40
F27D21/00 A
H02P29/024
B23K1/008 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021060351
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】特許業務法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇武
【テーマコード(参考)】
4K050
4K056
5H501
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050BA17
4K050CA13
4K050CC08
4K050CD16
4K050CG10
4K050EA04
4K050EA10
4K056AA09
4K056BB10
4K056CA18
4K056FA10
4K056FA13
4K056FA27
5H501AA08
5H501BB08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501LL22
5H501LL37
5H501LL53
5H501MM01
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】送風機のモータの回転軸が固着する可能性を検出する。
【解決手段】単一乃至複数の炉体を備え、炉体に送風機が設けられ、送風機によって被加熱物に対して熱風を吹きつけるように構成された加熱装置と、加熱装置に対してワークを搬入する搬送手段を有する搬送加熱装置において、送風機のモータに対して設けられたインバータと、インバータからモータの負荷の大小を示すモニタ信号が供給される制御装置を備え、制御装置が計測可能範囲か否かを判定し、計測可能範囲において、モータの回転開始直後のモニタ信号を閾値判定することによって、モータの固着の可能性を検出するようにした搬送加熱装置である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一乃至複数の炉体を備え、前記炉体に送風機が設けられ、前記送風機によって被加熱物に対して熱風を吹きつけるように構成された加熱装置と、前記加熱装置に対してワークを搬入する搬送手段を有する搬送加熱装置において、
前記送風機のモータに対して設けられたインバータと、
前記インバータから前記モータの負荷の大小を示すモニタ信号が供給される制御装置を備え、
前記制御装置が計測可能範囲か否かを判定し、前記計測可能範囲において、前記モータの回転開始直後の前記モニタ信号を閾値判定することによって、前記モータの固着の可能性を検出するようにした搬送加熱装置。
【請求項2】
前記モータの固着は、フラックスが前記モータの回転軸の周辺に付着することによって生じる請求項1に記載の搬送加熱装置。
【請求項3】
前記計測可能範囲は、前記モニタ信号の値が前記フラックスの量によって変化する範囲である請求項2に記載の搬送加熱装置。
【請求項4】
前記炉体に温度検出器が設けられ、
前記制御装置が前記温度検出器からの検出温度によって前記計測範囲か否かを判定するようにした請求項1から3のいずれかに記載の搬送加熱装置。
【請求項5】
前記炉体内で、前記モータの回転軸の周辺以外の箇所に前記温度検出器が配置された請求項1から4のいずれかに記載の搬送加熱装置。
【請求項6】
前記計測可能範囲において、前記モータの固着の可能性の検出処理を複数回行うようにした請求項1から5のいずれかに記載の搬送加熱装置。
【請求項7】
モータと前記モータによって回転される回転羽根を有する送風機と、
前記モータに対して設けられたインバータと、
前記インバータから前記モータの負荷の大小を示すモニタ信号が供給される制御装置を備え、
前記制御装置が計測可能範囲か否かを判定し、前記計測可能範囲において、前記モータの回転開始直後の前記モニタ信号を閾値判定することによって、前記モータの固着の可能性を検出するようにした検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリフロー装置に適用される搬送加熱装置及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー装置を稼働すると基板上に供給されたソルダペーストのフラックスが加熱段階でヒュームとなって発生し、ヒュームが液化して炉内に付着する。液化したフラックスが基板に付着して基板不良が発生する。炉内をクリーンに保つために、例えば冷却方式のフラックス回収装置が搭載されている。しかしながら、フラックス回収装置を使用していても、長期間リフロー装置が使用されるとフラックス汚れが蓄積される。
【0003】
熱風方式のリフロー装置には各ゾーンに熱風を供給、循環させる目的で送風機が一般的に設けられている。ケーシング内の送風機及びその周辺に徐々にではあるがフラックスが堆積付着する。付着したフラックスが冷却されることによって、送風機の回転軸が固着してしまうと、装置立ち上げ(再稼働)時に、運転ができない等の問題が発生する。
【0004】
例えば特許文献1には、気化したフラックスがファンを回転させるためのモータ回転軸に付着して固化することを防止するために、気化したフラックスが固化する前の流動性を有する液化の状態で効率的、かつ、確実に回収することが可能なフラックス回収装置が記載されている。具体的には、回転軸の周辺部に、リフロー処理により発生したフラックスを流入させて外部に排出するドレン部を設けるようにしている。
【0005】
また、特許文献2には、ドレン部とフラックス回収用器との間に配設される配管が斜めに延在しているので、ドレン部から流動したフラックスが配管の途中で停滞してしまい、配管の途中でフラックスが堆積して固着する問題を解決するために、フラックス回収部内を減圧させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5540680号
【特許文献2】特許第5565071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載のものは、送風機の回転軸の周辺において、フラックスが固化する前の液化の状態でフラックスを回収するものであるが、このようなフラックス回収装置を搭載していても、徐々にフラックスが堆積付着していき、回転軸が固着してしまうことがある。固着が生じると、リフロー装置の運転が不可能となり、モータを交換する作業が必要となる。従来では、固着の可能性を予め検出できず、リフロー装置の運転を開始して初めて固着が判明していた。そのため、リフロー装置による作業の中断が予期せずに起き、生産スケジュールが大幅に変更される問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、回転軸が固着する可能性を検出することができる搬送加熱装置及び検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単一乃至複数の炉体を備え、炉体に送風機が設けられ、送風機によって被加熱物に対して熱風を吹きつけるように構成された加熱装置と、加熱装置に対してワークを搬入する搬送手段を有する搬送加熱装置において、
送風機のモータに対して設けられたインバータと、
インバータからモータの負荷の大小を示すモニタ信号が供給される制御装置を備え、
制御装置が計測可能範囲か否かを判定し、計測可能範囲において、モータの回転開始直後のモニタ信号を閾値判定することによって、モータの固着の可能性を検出するようにした搬送加熱装置である。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも一つの実施形態によれば、送風機のモータの回転軸が固着する可能性を検出することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、以下の説明における例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるリフロー装置の一例の概略を示す略線図である。
【
図2】
図2は、リフロー時の温度プロファイルの例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、温度検出器により検出される雰囲気温度と固着箇所温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、トルク電流の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.リフロー装置の一例>
<2.フラックスによる汚れのメカニズム>
<3.モータ固着検出>
<4.変形例>
なお、以下に説明する一実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0013】
<1.リフロー装置の一例>
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置101の概略的構成を示す。リフロー装置101は、リフロー炉102と、被加熱物例えば両面に表面実装用電子部品が搭載されたプリント基板(以下、ワークと称する)Wをリフロー炉102内を通過させる搬送手段としての搬送チェーン103と、搬送チェーン103の移動経路を規定する回転体(アイドラー、スプロケットなど)105a、105b、105c、105dと、外板106とを備える。なお、
図1では、平行する2本の搬送チェーンの一方の搬送チェーン103のみが示されている。
【0014】
リフロー炉102は、ワークWを上下から加熱し、加熱後に冷却するためのものである。搬送チェーン103は、搬送方向に平行して配されている2本の搬送チェーンの一方である。例えば搬送チェーン103として、ローラチェーンが使用されている。外板106は、全体を覆うためのケースである。
【0015】
ワークWは、搬入口107からリフロー炉102内に搬入された後、搬送チェーン103によって所定速度で矢印方向(
図1に向かって左から右方向)へ搬送され、最終的に搬出口108から取り出される。図示しないが、搬入口107の前段には、ワークWを搬入するためのワーク搬入装置が設けられ、搬出口108の後段には、ワークWを外部へ送り出すためのワーク搬出装置が配置されている。
【0016】
搬入口107から搬出口108に至る搬送経路に沿って、リフロー炉102が例えば9個のゾーンZ1からZ9に順次分割され、これらのゾーンZ1~Z9がインライン状に配列されている。搬入口107側から7個のゾーンZ1~Z7が加熱ゾーンであり、搬出口108側の2個のゾーンZ8およびZ9が冷却ゾーンである。冷却ゾーンZ8およびZ9に関連して強制冷却ユニット(図示しない)が設けられている。なお、ゾーン数は、一例であって、他の個数のゾーンを備えても良い。複数のゾーンZ1~Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。
【0017】
ゾーンZ1~Z7のそれぞれは、上部炉体及び下部炉体を有する。ゾーンZ1~Z7のそれぞれに含まれる上部炉体及び下部炉体には、送風機(例えばターボファン)と温度検出器(例えば熱電対)が設けられている。冷却ゾーンZ8及びZ9にも送風機と温度検出器が設けられている。M1及びM11がゾーンZ1の送風機のモータである。M2~M9及びM12~M19も各ゾーンの送風機のモータを示す。
【0018】
上述した複数のゾーンZ1~Z9がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。
図2に温度プロファイルの一例の概略を示す。横軸が時間であり、縦軸がワークW例えば電子部品が実装されたプリント配線板の表面温度である。最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部R1であり、次の区間がほぼ一定温度のプリヒート(予熱)部R2であり、次の区間がリフロー(本加熱)部R3であり、最後の区間が冷却部R4である。
【0019】
昇温部R1は、常温からプリヒート部R2(例えば150℃~170℃)まで基板を加熱する期間である。プリヒート部R2は、例えば等温加熱を行い、フラックスを活性化し、電極、はんだ粉の表面の酸化膜を除去し、また、プリント配線板の加熱ムラをなくすための期間である。リフロー部R3(例えばピーク温度で220℃~240℃)は、はんだが溶融し、接合が完成する期間である。リフロー部R3では、はんだの溶融温度を超える温度まで昇温が必要とされる。リフロー部R3は、プリヒート部R2を経過していても、温度上昇のムラが存在するので、はんだの溶融温度を超える温度までの加熱が必要とされる。最後の冷却部R4は、急速にプリント配線板を冷却し、はんだ組成を形成する期間である。なお、鉛フリーはんだの場合では、リフロー部における温度は、より高温(例えば240℃~260℃)となる。
【0020】
図2において、曲線1は、鉛フリーはんだの温度プロファイルの一例を示す。Sn-Pb共晶はんだの場合の温度プロファイルの一例は、曲線2で示すものとなる。鉛フリーはんだの融点は、共晶はんだの融点より高いので、プリヒート部R2及びリフロー部R3における設定温度が共晶はんだに比して高いものとされている。
【0021】
図1に示すリフロー装置では、
図2における昇温部R1の温度制御を、主としてゾーンZ1及びZ2が受け持つ。プリヒート部R2の温度制御は、主としてゾーンZ3、Z4及びZ5が受け持つ。リフロー部R3の温度制御は、ゾーンZ6及びZ7が受け持つ。冷却部R4の温度制御は、ゾーンZ8及びゾーンZ9が受け持つ。
【0022】
図3を参照して、一つのゾーン例えばゾーンZ5の構成を説明する。上部炉体1と下部炉体11との対向間隙内で、プリント配線板の両面に表面実装用電子部品が搭載されたワークWが搬送コンベヤ21上に置かれて搬送される。上部炉体1内及び下部炉体11内は、雰囲気ガスである例えば窒素(N2)ガスが充満している。上部炉体1及び下部炉体11は、ワークWに対して熱風(熱せられた雰囲気ガス)を噴出してワークWを加熱する。なお、熱風と共に赤外線を照射しても良い。
【0023】
上部炉体1は、主加熱源2、副加熱源3、送風機4、蓄熱部材5、熱風循環ダクト6、開口部7等からなる。なお、下部炉体11は、例えば、上述した下部炉体1とほぼ同様に、主加熱源12、副加熱源13、送風機14、蓄熱部材15、熱風循環ダクト16、開口部17等を備えている。送風機4は、モータM5と、モータ取り付け板8と、回転羽根9を有する。モータ取り付け板8と回転羽根9の間に間隙10が存在する。同様に、送風機14は、モータM15と、モータ取り付け板18と、回転羽根19を有する。モータ取り付け板18と回転羽根19の間に間隙20が存在する。送風機としては、ターボファン、シロッコファンなどの遠心ファン、軸流ブロワなどを使用してもよい。なお、
図3に示す炉体の構成は、一例であり、他の構成をとりうる。
【0024】
開口部7及び17を通じて熱風がワークWに対して吹きつけられる。主加熱源2、主加熱源12、副加熱源3及び副加熱源13は、例えば電熱ヒータで構成される。蓄熱部材5及び蓄熱部材15は、例えばアルミニウムからなり、多数の孔が形成され、その孔を通じて熱風が通過してワークWに対して吹きつけられる。
【0025】
例えば上部炉体1において、熱風は、送風機4によって循環される。すなわち、(主加熱源2→蓄熱部材3→開口部7→ワークW→熱風循環ダクト6→副加熱源3→熱風循環ダクト6→送風機4→主加熱源2)の経路を介して熱風が循環する。下部炉体11においても同様に、熱風が循環する。
【0026】
ゾーンZ5内の雰囲気ガスが配管22を通じて図示しないフラックス回収装置に送られる。フラックス回収装置では、フラックスヒューム中のフラックスが除去及び回収され、フラックスが低減又は除去された浄化後の気体が生成される。フラックス回収装置により浄化された後の気体が配管23を通じて下部炉体11内に導入される。上部炉体1においても同様にフラックス回収装置により浄化された気体が導入される。
【0027】
<2.フラックスによる汚れのメカニズム>
上述したリフロー装置におけるフラックスによる汚れのメカニズムについて説明する。ここで、汚れとは、各炉体の送風機のモータの回転軸の周辺に付着するフラックスのことである。例えばモータ取り付け板8と回転羽根9の間の間隙10、並び各炉体の送風機のモータ取り付け板18と回転羽根19の間の間隙20に付着するフラックスを意味している。汚れは、フラックスに含まれるロジン等の樹脂を主成分としており、温度が低下すると粘度が増し、さらに、温度が低下するにしたがって粘度が高くなる性質を有し、フラックスが多く、且つフラックスが固化した場合には、送風機のモータの回転軸が固着する。間隙10及び20は、固着箇所である。なお、以下の説明における温度の値及び経過時間の値は、一例である。
【0028】
ステージ1.リフロー装置の運転中
送風機:回転中、汚れ:粘度低、負荷:低い、固着箇所温度:250℃
ステージ2.リフロー装置の停止直後
送風機:停止、汚れ:粘度低、負荷:低い、固着箇所温度:250℃
ステージ3.リフロー装置の停止30分後
送風機:停止、汚れ:粘度低、負荷:低い、固着箇所温度:200℃
ステージ4.リフロー装置の停止400分後
送風機:停止、汚れ:粘度中低、負荷:中、固着箇所温度:100℃
ステージ5.リフロー装置の停止800分後
送風機:停止、汚れ:粘度中、負荷:中、固着箇所温度:50℃
ステージ6.リフロー装置の停止1日後
送風機:停止、汚れ:粘度高、負荷:高い、固着箇所温度:30℃
【0029】
上述したステージ6において汚れが多い場合には、多量の汚れが固化することによって回転軸が固着し、送風機が回転できない状態となる。固着に至った段階では、モータの負荷に基づいて固着の可能性を計測することは不可能である。一方、ステージ1、ステージ2及びステージ3は、固着箇所温度が高いために、汚れの粘度が低く、送風機のモータの負荷が小さく、モータの負荷に基づいて固着の可能性を計測するのには不向きである。したがって、本発明は、モニタ信号(トルク電流)の値がフラックスの量によって変化する範囲(ステージ4及び/又はステージ5)において、モータの回転軸の固着の可能性を検出するものである。
【0030】
<3.固着可能性の検出装置>
図4を参照して本発明の一実施形態のシステム構成について説明する。
図4は、制御信号系統を示し、電力系統についての図示は省略されている。M1~M19は、
図1に示すリフロー装置の送風機のモータを示し、INV1~INV19は、各モータを駆動及び制御するインバータである。さらに、TH1~TH19は、炉体のそれぞれの内部温度を検出するための熱検出器(例えば熱電対)である。例えばゾーンZ5の上部炉体には、送風機の回転羽根を回転させるためのモータM5及び熱検出器TH5が設けられ、下部炉体には、送風機の回転羽根を回転させるためのモータM15及び熱検出器TH15が設けられている。
【0031】
インバータINV1~INV19は、制御装置例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ(programmable logic controller,
図4及び以下の説明ではPLCと称する)31とネットワーク32を介して接続されている。PLC31からインバータINV1~INV19のそれぞれに対して回転数を指令する制御信号が供給され、インバータINV1~INV19からはモニタ信号、アラーム信号などがPLC31に対して供給される。モニタ信号は、モータM1~M19の負荷の大小を示す信号であり、このモニタ信号をトルク電流と称する。トルク電流は、例えばモータの負荷に対応した値(レベル)の信号である。上述したステージ4又はステージ5においては、トルク電流の値が回転軸の周辺に存在するフラックスの量を示すものとなる。
【0032】
熱検出器TH1~TH19の検出温度がネットワーク33を介してPLC31に対して供給される。PLC31に対してパーソナルコンピュータ34が接続されている。パーソナルコンピュータ34は、ユーザーインターフェースとして機能する。例えばPLC31へ回転数を指令したり、警報画面を表示したりする。なお、インバータINV1~INV19を制御するためにPLC以外の制御装置を使用してもよい。
【0033】
図5のフローチャートを参照してPLC31によってなされる固着可能性の検出方法について説明する。この検出方法は、送風機のモータM1~M19のそれぞれに対して適用されるものである。
【0034】
ステップS1:リフロー装置の運転の停止によって送風機が停止する。
ステップS2:検出温度信号による検出温度が第1の閾値温度Tt1以下かどうかが判定される(閾値判定)。検出温度が閾値温度Tt1以下となると、計測可能範囲(上述したステージ4及びステージ5)になったと判定される。検出温度が閾値温度Tt1より高い場合には、未だ計測可能範囲に入っていないので、ステップS2の温度判定の処理がなされる。
ステップS3:ステップS2の判定結果が肯定の場合に、検出温度が第2の閾値温度Tt2より大かどうかが判定される(閾値判定)。検出温度が閾値温度Tt2より高い場合は、計測可能範囲内であると判定され、次の処理がなされる。検出温度が閾値温度Tt2以下である場合には、計測可能範囲から検出温度が外れたと判定され、終了処理がなされる。
【0035】
ステップS4:送風機の回転が開始され、インバータINV1~INV19からのトルク電流の値が計測される。計測されるトルク電流値は、回転開始直後の値である。
ステップS5:トルク電流値が閾値上限It1より大きいかどうかが判定される。トルク電流値が閾値上限電流以下であれば、固着の可能性が検出されないとして検出処理が終了する。この場合、固着の可能性が無い旨のメッセージをマイクロコンピュータ34の画面に表示してもよい。なお、1回の処理で終わらず、計測可能範囲で、複数回の検出処理を行うようにしてもよい。この場合には、所定時間後(例えば次の検出処理が可能となる時)に再びステップS2の閾値判定から処理が繰り返される。
【0036】
ステップS6:ステップS5において、トルク電流値が閾値上限It1より大と判定されると汚れ検知異常警報が発生し、汚れ検知異常警報がパーソナルコンピュータ34の画面に表示される。警報の音をパーソナルコンピュータ34によって発生するようにしてもよい。ステップS6の処理によって固着の可能性の検出処理が終了する。汚れ検知異常警報が発生した場合、ユーザーは、リフロー装置の運転を停止して警報が発生した送風機(又はモータ)を汚れのない送風機(又はモータ)へ交換するようになされる。
【0037】
上述したように、モータM1~M19の回転軸が固着する原因は、固着箇所(間隙10、間隙20)にフラックスが付着し、付着したフラックスが固化することである。しかしながら、間隙10、間隙20のスペースが小さく、熱検出器TH1~TH19を間隙10、間隙20に設けることは難しい。本発明の一実施形態は、炉体内部に熱検出器TH1~TH19を設けているので、熱検出器TH1~TH19が検出した温度(雰囲気温度)と固着箇所温度が厳密には一致しない。
【0038】
図6は、固着箇所温度(実線で示す曲線)と検出温度(破線で示す曲線)の測定例である。縦軸が温度(℃)で横軸が回転停止からの経過時間(min)である。回転停止から時間t1経過し、固着箇所温度が第1の閾値温度Tt1(例えば約80℃)以下となると、計測可能範囲(ステージ4)となる。すなわち、固着が発生してなく、且つ汚れによる負荷の変動がトルク電流に影響する範囲である。さらに、検出温度が第2の閾値温度Tt2(例えば約50℃)より低くなる時間t2以降では、固着が発生した場合には、トルク電流による負荷を計測することが不可能となる(ステージ6)。
【0039】
したがって、検出温度が閾値温度Tt1以下となる時間t1から検出温度が閾値温度Tt2より低くなる時間t2までの範囲が計測可能範囲である。一実施形態では、検出温度によって計測可能範囲となったことを判定するので、固着箇所温度を予め測定しておき、炉体の検出温度との差を予め測定しておき、この差を補正するようになされる。
図6に示す例では、検出温度が固着箇所温度よりやや高いので、検出温度又は閾値温度Tt1及びTt2を補正して判定がなされる。なお、計測可能範囲の判定は、検出温度を使用せずに、回転停止からの時間経過によって行うようにしてもよい。
【0040】
炉内の温度と付着したフラックスの状態を予め測定しておくことによって、第1の閾値温度Tt1(送風機の回転開始の温度の閾値)と第2の閾値温度Tt2の値(計測可能範囲の判定の閾値)が設定される。表1は、これらの関係を測定した結果の一例を示す。
【0041】
【0042】
表1の例では、炉内の温度が40℃~50℃の場合に、付着したフラックスが粘性体であって、粘度が中程度であり、この温度範囲が測定開始のタイミングとして最適なことが分かる。炉内の温度が30℃~40℃の場合が測定開始のタイミングとして2番目に適している。さらに、炉内の温度が50℃~60℃の場合が測定開始のタイミングとして2番目に適している。炉体内の温度が30℃未満点では、フラックスが固体化し、炉内の温度が60℃以上では、フラックスが液体状態であるため、測定開始する温度として適していない。したがって、表1の例では、例え炉内温度が40℃~50℃の範囲内で閾値温度Tt1が設定され、炉内温度の30℃よりやや高い温度が閾値温度Tt2とされる。
【0043】
トルク電流の測定結果の一例を
図7に示す。縦軸がトルク電流値(A)で横軸がモータの回転開始からの経過時間(10ms位)である。
図7には、閾値上限It1、閾値下限It2、正常値Ix及び異常値Iyが示されている。回転開始から1秒~2秒経過後までのトルク電流値が計測される。異常値Iyは、固着箇所に多くのフラックスが付着しているために、閾値上限It1より大となるトルク電流値である。正常値Ixは、閾値上限It1及び閾値下限It2の範囲内に納まっているトルク電流値である。なお、
図6及び
図7は、アナログ変化として温度変化及びトルク電流値の変化を表しているが、ネットワーク32及び33を通じてPLC31に対して伝送される信号は、デジタル信号である。
【0044】
表2は、トルク電流の変化と付着したフラックスの関係の一例を示す。新品時のトルク電流値は、例えば1.0(A)(5Hz モータ200W始動時)である。表2は一例としてこの値を正常値Ixとしている。このトルク電流値に対するトルク電流値の変化と付着したフラックスの状態の関係が表2に示されている。なお、トルク電流値は、回転開始直後の値である。
【0045】
【0046】
トルク電流値が正常値の+/-10%未満の場合では、付着したフラックスの状態は、フラックスが薄くコートされている程度であり、モータの始動に問題がない。トルク電流値が正常値の+/-10%~20%の場合では、付着したフラックスの状態は、フラックスが付着しているが、モータの始動が可能である。トルク電流値が正常値の20%以上の場合では、フラックスが固体化してモータの始動が困難となる。すなわち、モータの回転軸が固着している可能性がある。表2の例では、トルク電流値の閾値が例えば正常値の+/-20%に設定される。
【0047】
上述した本発明の一実施形態は、リフロー装置の送風機の固着箇所に多くのフラックスが付着した結果、送風機の回転軸が固着する可能性を前もって検出することができる。したがって、リフロー装置の運転を再稼働しようとした時に、固着が初めて分かる状況と異なり、リフロー装置の運転計画が予定から大幅に異なることを防止することができる。
【0048】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば本発明は、プリント基板に限らず、フレキシブル基板、リジッド基板とフレキシブル基板とを貼り合わせた基板、これらを組み合わせたリジッドフレキ基板のリフローに対しても適用できる。また、加熱炉が1段(1ゾーン)のリフロー装置に対して本発明を適用できる。さらに、リフロー装置に限らず、樹脂の硬化のための加熱装置等に対しても適用できる。また、上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。また、上述の実施の形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
101・・・リフロー装置、103・・・搬送チェーン、W・・・ワーク、
1・・・上部炉体、4・・・送風機、8・・・モータ取り付け板、9・・・回転羽根、
10・・・間隙、11・・・下部炉体、18・・・モータ取り付け板、
19・・・回転羽根、20・・・間隙、31・・・PLC、
M1~M19・・・送風機のモータ、INV1~INV19・・・インバータ、
TH1~TH19・・・温度検出器